3.Properties of Binomial Coefficients(前半) 笹沼亮介 Ex3.1 互いに異なる40個の実数の列がある。 この列に”bubble pass”を1回適用した時に もとの20番目の数字が30番目に来ている確率を求めよ。 , r2 , r3 , r4 , , rn 列: r1 “babble pass”: 問題では n = 40 riと ri 1を比較して、 ri ri 1ならば交換する これを i 1から i n 1まで行う 1 9 8 7 ・”babble pass”1回の適用で(部分)列の 最大の数が(部分)列の右端に移動する。 ・ r20が r30に移動するには、元の 列の部分列 {r1 , r2 , r30}の中で r20が最大、かつ r20 r31 ・ r20より大きい数字が少な くとも1個 ・ r20より小さい数字が少な ・もとの列を降順に並 くとも29個 び換えた列を a1 , a2 ,, a40 とする 9 8 7 1 ak r20とおくと 2 k 11 また、 a1 r31 ak 1 ・ r31の候補は (k 1)個 ( k 1 通り 1 ) ・ r31の候補の残りは r31以降に並べる 9 ( k 2) 通り ・ a1から ak 以外の(40 k )個をランダムに (40 k!通り ) あるkについて ( k 1 1 ) 9 ( k 2 ) (40 k! ) 通り 全てのkについて足す ( ) 11 k 1 1 9 ( k 2 ) (40 k! ) 通り k 2 →条件を満たす全ての場合の数 列の全ての場合の数は→ 40!通り 求める確率は 11 1 40! k 2 ( k 1 ) 9 ( k 2 ) (40 k! 1 ) もっと簡単な方法は? ・最初の31個の数字のみを考える。 ・全ての並び方は 31!通り ・ r31を最大に、 r20を二番目に固定すると →29!通り 29! 31! ・求める確率は ・ r31以降は考えなくてよい 11 1 40! k 2 ( k 1 1 ) 9 (k 2) 29! (40 k! ) 31! 二項係数(binomial coefficient) ( x y ) を展開 n ( x y ) n a0 x n a1 x n 1 y an 1 xyn 1 an y n ak (0 k n) を二項係数という Ex3.2 1秒に1回駒を右か上に動かす。 5秒後に駒はどこにあるか?その確率は? 最初の位置は(0,0)とする。 到達点は(5,0),(4,1),(3,2),(2,3),(1,4),(0,5) ・ ( m,n ) : (m n)秒後に (m, n)に到達する場合の数 ( m , n ) ( m 1, n ) ( m , n 1) それぞれの場合の数を 求める。 1 1 5 1 4 10 1 3 6 10 ( 2,3) 10 1 2 3 4 5 (1, 4 ) 5 1 1 1 1 1 ( 5, 0 ) 1 ( 4,1) 5 (3, 2 ) 10 ( 0,5) 1 合計は32通り 1 確率は 1 (5,0) 32 10 5 ( 2,3) 32 16 5 ( 4,1) 32 5 (1,4) 32 10 5 (3,2) 32 16 1 (0,5) 32 パスカルの三角形 1 1 1 1 1 N行目が、 2 3 4 1 5 (r u ) N 1 1 6 10 1 3 4 10 1 5 を展開した時の係数 1 (r u )5 (r u )( r u )( r u )( r u )( r u ) rかuのどちらかを選ぶ、を5回繰り返す→ 2 通り r 3u 2 の係数は、5回のうち3回r、2回uを選ぶ 5 → 通り 5 (2 ) このようにして次の定理3.1が求められる。 定理3.1 ( x y) n n 0 () n n n1 n x y x y n 1 n () ( ) (nは正の整数) 係数はパスカルの三角形の行と対応 Ex3.3 格子点上で駒を上下左右に動かす。開始時は(0,0) 6ステップ以下で(2,2)に到達する確率は? 上下左右への移動をそれぞれ U,D,L,Rとする。 (1ステップでは距離1の移動) (2,2)に到達するには、最低で 4ステップ必要。 2 0 0 2 ・4ステップで(2,2)へ到達する場合 4 R,R,U,Uを並べる→ 2, 2 4 4! 6 2! 2! 通り 4 4つの全ての並べ方は、 通り よって、4ステップの場合の確率は 6 4 4 ・5(奇数)ステップで(2,2)に到達することはない。 奇数ステップでは、(偶数,奇数)または(奇数,偶数)にしか 行けない (2,2)が(偶数,偶数)の点のため、5ステップでは到達しな い。 ・6ステップで到達する場合を考える。 R,R,U,U,D,UかR,R,U,U,L,Rを並べる。 → 2 120通り 6 3, 2,1 ・Rが2個とUが2個が最初に現れたら 4ステップの場合になる。 そのため、6つをランダムに並べた場合から、4ステップ で到達する場合を引く必要がある。 4ステップで到達した後、UD・DU・LR・RLのどれかが入 る よって、 120 6 4 96通り 6つの全ての並べ方は、 4 6 通り 6ステップで(2,2)に到達する確率は→ 96 6 4 6ステップ以下で(2,2)に到達する確率は 6 96 3 6 4 4 4 64 Ex3.4 0から9までの数字を8つ使うプレートを作る。 (重複を許す。) 0が偶数個含まれるプレートはいくつあるか? 0の個数をkとすると、 k 0, 2,4,6,8 0以外の数字の数は(8-k)個 0の位置を決める → 8 通り k 0以外の数字を選ぶ よって、あるkに対して → 3 7 → 0 9 8 k 通り 9 8 k 3 8 k 通り 0 2 4 9 それぞれのkに関して足すと 9 8 0 8 9 8 2 6 9 8 4 4 9 8 6 2 9 8 8 0 定理3.1を利用して計算する。 9 9 9 9 9 9 9 9 1 (9 1) 9 9 9 9 9 9 9 9 1 8 (9 1) 8 8 8 1 7 8 2 6 8 3 5 8 4 4 8 5 3 8 6 2 8 7 8 8 1 7 8 2 6 8 3 5 8 4 4 8 5 3 8 6 2 8 7 この2つを足して2で割ればよい よって (9 1)8 (9 1)8 108 88 2 2 定理3.2 n,k : n≧k を満たす正の整数 n (a) n k nk n個からk個選ぶこと = n個から選ばないものをn-k個選ぶこと (b) ・パスカルの三角形から明らか 別の考え方 n個のうち、1つだけ特別なもの(FAT)を作る k+1個の選び方を、二つのグループに分ける (A)FATを含むもの (B)FATを含まないもの (A)→ n k 1 n 1 k n 1 k 1 (B)→ n 1 k n 1 k 1 この二つを足す (c) ( n 0 n 1 n 2 n 1 n nが偶数の時、 2 2 nが奇数の時、 n 1 n 1 2 n n 1 2 n ) ( n ) 2 2 n 1 0k から k 1 n k 1 2 (k 1)!(n k 1)! k 1 1 k!( n k )! nk n k n k 1 k n n k n 1 k 1 (d) (e) 式変形だけなので省略・・・ k (n k 1) n k n k 1 n 1 1 n 2 2 (f) (b)を何度も適用する。 (g) (f)に(a)を適用する。 n 0 n k 1 n k k n 1 k n n n 1 n nk n n k 1 k n 1 k 1 n k 1 n 1 (h) 2 n 0 (1 1) n 1 n n n n を展開 または集合S={1,2,・・・,n}の部分集合(要素数k)の数 (i) (1) 0 n 0 n 1 (1 1) n n 2 を展開 n n n 2 3 n n2 n 1 n 2 n 3 (j) (d)と(h)を適用する。 k n n k n 1 k 1 n n 2 n 0 n 1 n 1 n n n k n n n 2 n k 1 n n k k 1 n 1 k 1 n 1 k 0 n 1 k n 1 (k) 1 k n 1かつnが素数 はnで割り切れる n k n( n 1)! =整数 ( n k )! k! nが素数ならば、 ( n 1)! =整数 ( n k )! k! (a ) nk nn k (c ) ( n 0 (d ) k (f) (b) n 1 n 2 n n k n 1 k 1 n 1 1 n 0 n n 1 2 n 2 2 2 (h) 2 n 0 n (e ) k nk ( n k 1) k n1 n 1 n n 1 k ) ( n ) (g ) n n n 1 k 1 n k 1 n 1 nk n n n n k k n k 1 k n k 1 n 1 n (i ) (1) 0 ( j) 2 3 n n 2 (k) n 0 n 1 n k n 1 n 2 n 2 n n n n 3 n n はnで割り切れる(ただし、nは素数かつ1≦k≦n-1) n 1 n k の拡張 n, k : 0 k nを満たす整数 n, k : 整数( n 0) → 0 0 0 に拡張 ,kが負、またはk>nの時 0 n k この拡張後も、定理3.1,定理3.2は成り立つ。 Ex3.5 円周上に並んだ10個の点を結んで、いくつの凸多角 形が作れるか? 異なる点を用いた場合、形が同じでも区別する。 点をk個選ぶとする。 多角形を作るには 3 k 10 k角形は 10 通り k 通り 10 全部で k 3 10 k 10 3 10 4 10 10 10 0 10 1 10 10 10 0 10 1 (hを適用) 2 10 (1 10 45) 968 10 2 Ex3.6 以下の式(A)を計算せよ。 11 0 11 1 11 2 11 11 1 2 3 12 (d)を変形すると 1 k 1 11 k 12 k 1 k 1 12 n 1 k 1 n ( A) n k 1 (0 k 11) 11 1 12 k 0 12 k 1 1 12 12 k 0 12 k 12 0 1 12 2 1 12 (h)を適用 Ex3.7 以下の式(B)を証明せよ。nは正の整数とする。 (1) k k 1 n k 1 n k (1) Sn k k 1 n 1 1 1 2 n k 1 n k とする ( B) (1) k 1 k k 1 n Sn n k k 1 (1) k k 1 k 1 n 1 (1) k k 1 n 1 S n 1 (b) (d) n k k 1 (1) Sn n 1 k 1 n 1 n 1 k n k 1 n 1 k (1) k 1 k k 1 n Sn S n 1 n k 1 n 1 k Sn ( 1) n 1 k 1 n 1 k mを1以上の整数とすると S m 1 S m 1 m 1 k m 1 ( 1) k m 1 k 1 1 1 k m 1 (1) k m 1 m 1 k 0 m 1 (1) k 1 k k 1 n Sn n k (1) 0 m 1 (i)から k k 0 よって m 1 k 1 S m 1 S m m 1 m=1からm=n-1までについて足す S 2 S1 S3 S 2 1 11 1 2 1 S n S n 1 1 n (1) k 1 k k 1 n Sn S n S1 n k 1 1 1 1 2 3 4 n S1 1なので式 ( B)は成り立つ。 ところで、Ex3.1の式は 11 1 40! k 2 ( k 1 1 ) 9 (k 2) 29! (40 k! ) 31! 定理3.2を駆使することで(左辺)=(右辺)が確かめら れます。
© Copyright 2024 ExpyDoc