酵素によう細菌の変異に関する研究 - 金沢大学

681
酵素によう細菌の変異に関する研究
第2報 パンクレアチンによる研究
金沢大学医学部細菌学教室(主任 谷教授)
専攻生
窪
田
保
Tamotu. thbota.
(昭和27年6月25日受付)
第1章
緒
酵素に関する研究は最:近著しく盛んになり,
言
題と云うべし.
細菌学の領域に於いても,この研究は異常なる
宮永(1929年)1),鈴木(1930年)2)は,「カs
発展を遂げ,新しき方面を開拓しつつあり,
ラーゼ」を用い,青木(1929年)3)は,「リパー
今,有機触媒たる酵素を培養基に加えて,作
ゼ」及び「トリプシン」を用いて夫々研究発表
用せしむる時,酵素は種々なる条件の下に於い
せり.著者(1950年)4)も亦「ヂアスタ置潮」を
て,生活細胞たる細菌体に接触剤として作用し
用いて研究発表する所あり.
今般,膵臓酵素の混合物たる「パンクレアチ
或は助勢的に或は抑制的に作用して,細菌の生
活現象に相当の影響を与えるであろうと云う一こ
ン」を培養基に加え,種々実験を行いたるに脚
とは想像し得る所にして,その結果細菌に如何
か興味ある知見を得たり.依ってここに報告し
なる変異が惹起せられるかは,蓋し興味ある問
諸賢の御叱正を乞わんとす.
)
第2章
貿
験
第1節パンクレアチン液の調製
方 法
的に操作す)即ち,該濾液申の「ステアプシソ」は,水
局方「パンクレアチン」5)の3%:水溶液を作り,よ
の存在に於いて中性脂肪を分解して脂肪酸を分離せる
く溶解せる後,濾紙にて濾過す.濾液のPHを約8・0
によりPHほ酸性に傾きたるものと推定さる.従っ
とし,この液をSeitzの濾過器を以て濾過し,得たる
て,「パソクレアチy」をSeitzの濾過器を以て濾過す
滅菌濾液を実験に供す.
るも,作用力は失われざるものなり.
第2節 培養基の製法
次に,この滅菌濾液中に果して酵素の有効成分あり
ゃ否やを検せんがため,「ヂアスターゼ」及び「トリプ
3.7%普通寒天培地を作り(PH=7.2),中試験管に
シy」の定量を行い,不安定なる「ステアプシン」に就
7cc自分注して滅菌す,この寒天培地を加熱溶解し,
いては定性試験を行いたり.即ち,Wohlgemuthの法
45℃の浴槽中に保ち各試験管に前記の調製パンクレ
・・によりて「ヂアスターゼ」を寵すオ・ぱ,d二一256
アチン液を培地の半量即ち,3.5cc宛注加し混和して
となり,Grossの法6)によりて「トリプシン」を定量
斜面となし,無菌試験を経て実験に供す(Pn“培地と
すれば,・一lt;1 ==・28となる・「ステアプシソ」の離
称す)
上記の如くにして得た培地は,寒天約2.5%,PH約
試験f)として,中性牛乳0.5cc,蒸溜水1.Occ,該濾
液1.5ccを混じ(PH=約7.4),これを38℃30分
7.5なり.
浴槽中に保てばPH約6.4となり酸性に傾く.(無菌
【詔 】
対照培地としては,前記の「パンクレアチン」液を
682
窪
田
100℃15分聞加熱し,その作用を消失せしめたるもの
「ミロン反応8)9)lo)は,普通寒天斜面に37℃20時
を同様に用いて培地を作り実験に供す.(K∼培地と称
間培養せる菌の1mg/ccの蒸溜水浮游液に「ミロ:ゾ
す)
試薬を1−2滴加え火焔上で加熱沸騰せしむ.試験管
壁に沿い菌の凝塊の昇るを陽性とす.陽性度強き時は
第3節使用菌株
沈澱を生ず.凝塊が煉瓦色に着色することあり.
実験に使用せる菌殊は,金沢大学医学部細菌学教室
細菌集落がR型の時には,本反応が陽性に現る,
保存のものにして,使用に先立ちて形態的及び生物学
第6節 トリパフラビン反応10)11)
的性状を検せり.
1)
2)チ フ ス 菌
普通大腸菌
清心せそ,凝集反応用試験管に0.1%トリパフラビン
3)
パラチフスA菌
4) パラチフス1ヨ菌
溶液0.5 ccをとり,これに:普通寒天斜面に37℃20
5)
赤痢菌(志賀)
6)赤痢菌(駒込A)
時間培養せる菌の2m9/cc蒸溜水浮游液1・一2滴を
7)
赤痢菌(駒込BIII)
8)赤痢菌(大野)
9)
赤痢菌(箕田)
10)赤痢菌(中村)
11)
赤痢菌(川瀬)
12)赤痢菌(西貢)
コ レ ラ 菌
14) ゲルトネル菌
15)
鼠チフス菌
16)霊
18) 黄色ブドウ球菌
13)
17)
緑
19)
膿
白色ブドウ球菌
21)
枯
草
菌
滴下し,37℃の贈卵器に2時間収めて結果を判定す・
凝集起れるを陽性とす.
細菌集落がR型の場合に本反応は陽性に昂る,
第7節 重金属イオン反応12)
菌
:普通寒天斜面に37℃約20時閥培養iせる菌の,
1mg/ccの蒸溜水浮游液に,10%Cuso4,2%
20) =普通ジYガイモ菌
AgNO3溶液のIN2滴を加え,加熱沸騰せる後に判定す.
菌
試験管壁に沿い菌塊が昇る場合を陽性とす,陽性度
養 方 法
第4節培
強き時は沈澱を生ず.
細菌集落がR型の場合に本反態は陽性に現る.(第
P∼培地に前記の21株の細菌を隔日に継代培養す.
5,6,7節の反応をS∼R型鑑別反応と称す)
対照としてはk∼培地に同様に培養す、
第5節 ミロン反応
第3章
實
験
成 績
第2節 普通大腸菌1雪)1の1の
第1節 P∼培地上の菌発育状態
第1項集落の状態
P∼培地上に於ける細菌の発育状態を検せん
がため,P∼培地に各種細菌を培養し37℃24
P∼培地23代通過菌の集落は,灰白色円形に
時間培養のものに就いて,その発育状態を観察
す,
実験に供せし21菌株は何れもよく発育し,対
照と異る所なし,然れ共,継代培養を血ぬる時
して原型菌集落と全く一致す.然るにK∼培地
23代通過菌集落は,2種の集落に分れ,一つは
原型菌集落に一致し,他は灰白色類円形辺縁稽
e不規則なる集落にして,これを普通寒天培地
は,以下に記する数種の菌は発育不良となり継
に4代継代培養すれば原型に復帰す.P∼培;地
代培養不能となる.
93代通過菌は,大小2種の集落を生ず,小集落
ユ)コ レラ菌(31)
は原型菌集落に一致し,大集落は灰白色類円形
2)赤痢菌(志賀)(37)
3)赤痢菌(駒込:BIII)(41)
の辺縁梢ヒ不規則なる集落にして,小集落の約
4)赤痢菌(川瀬)(41)
培地に10代継代培養すれば,一部は原型菌集落
5)赤痢菌(駒込A)(53)
に一致し,一一部は大なる集落を作りて原型には
1.r)∼2.0倍大の直径を有す.これを普通寒天
(括弧内の数字は継代培養可能代数にして,
復帰し難し.K∼培地に培養せる菌の集落は,
それ以後は継代培養不能なり)
帯黄灰白色不正形辺縁鋸歯’状,内部凹凸不正,
【訓 】
酵素による細菌の変異に関する研究
原型菌集落の約2∼3倍大の直径を有す.
683
生物学的性状を観察するに,第2表に示す如く,
:P∼培地93代通過菌集落に就き,S∼R型鑑
P∼培地93代通過によりて生ぜし大集落菌は,
別反応を行えば第1表に示す如く,小集落に於
継代培養100代に於て,:Maltoseに対する分解
ては,3反応共に陰性,大集落及び対照集落に
能力を完全に消失し,普通寒天培地に1e代培養
着て著明なり.
するも,Maltose分解能力を復活するには至ら
White8), Pampana11),岡本12)等に従えば,
ず.P∼培地7(♪代通過菌は, Salii inを分:解す
小集落はS型,大集落及び対照菌集落はR型と
るに際し,24時間を要せしに,対照菌は10日を
云うべし.
要せり.
第1表 P∼培地93代通過菌集落
叉,前記2集落菌の100代目に於けるIndol
のS∼R型鑑別反応
熱容
小集落
反応,Methア1−red反応の発現には,第2表に示
Millon Trypaflavin 硫酸銅
硝酸銀
一十十沈
一十十沈
一十十沈赤
一十十沈
す如く,夫々2H,7日を要し,37代,70代に
於けるよりも遅延す.
第 2 表
蜿W落
菌
普通大腸菌
名
ホ照集落
『
:K∼培地
註;沈=沈澱,赤=沈澱煉瓦赤色(以下各菌
継代
共通)
類
一=・陰性,±こ弱陽性,+=陽性
第2項形態的観察
Alabinose
Xylose
一 一 一
一
小集
大嵐
大嵐
落命
落菌
四十
100
100
o∼培地
一碧寒
い70
右各世代 37
10
㊥
(D
①
㊥
①
①
㊥
㊦
(D
㊥
①
①
(D
㊦
①
1)∼培地93代通過菌集落の中,小集落は比較
Rhamnuse
㊥
(D
(D
的単在性の両端二三の桿菌なり,大集落は長短
Glucose
①
㊦
①
①
①
㊦
大小不同2∼3個連鎖をなすものあり,両端は
Galactose
㊥
e
①
(D
①
①
一般に濃染性なり,「グラム氏染色を行いたるに
Saccllarose
一
陰性なり.今井日高氏法によりて鞭毛染色を行
いたるに何れも鞭毛を有す.対照集落に於いて
も前記大集落と略it同じ所見を有す.
一
『
一
噛
隔
Malto臼e
e
Φ
㊥
㊥
一
一
Lact(,se
㊥
(D
㊤
(D
(D
㊥
Dulcit
e
㊥
㊥
㊥
①
④
㊥
㊦
㊥
⑦
(D
㊥
①
(D
①
㊥
①
㊥
Sorbit
第3項 糖類分解試験
Ma㎜it
使用せる糖類及び高級アルコール類は,13種
i類にして培養i基は変法:Barsiekow培地を使用
せり.
Arabi nose, Xylose, Rhanmose, Glucose,
Galactose,’Saccharose, Ma}tose, Lactosc
In(》sit
一
一
『
一
一
唱
Sal量cin
㊥
㊥
㊥
(D
㊥
㊥
Indo1_R
十1
十1
十1
十2
十2
十2
Methyレred−R
十布
十5
十5
十7
十r
十7
’ lnosit, SaZicin,
Dulcit, Sorbit, Mlinnit,
普寒10=P∼培地100代通過菌を:普通寒天培池へ
糖類分解試験を行うに当りては,菌を一度パ
10代培養
ンクレアチン」を含有せざる普通寒天培地に37
℃24時間培養せる菌を使用す,観察期間は2
註: 十=分解,一=非分解,○=Gas形成,
十1,2,5,7=発現までに要する日数
その他,Voges−Proskauer反応陰性, Ci trat−
週聞とす.
medium上に発育せず,牛乳を凝固し,Gelatin
第1回試験は37代,第2回試験は70代,第13
回試験は100代に於いて行う.(以下愚生共通)
P∼培地通過菌の糖類分解試験及びその他の
を液化せず,硫化水素を発生せざる等の性状に
関しては,原型菌と異る所なし.
1 35 ]
684
窪
田
第4項血清学的観察
P∼培地93代通過菌の大小2集落菌は,両端
P∼培地93代通過によりて生ぜし大小2種の
梢ヒ濃染性にして「グラム陰性桿菌,懸滴標本
集落菌が,原型菌免疫血清に対して如何なる態
にてその運動性を見るに,余り活濃ならず.
度を示すかを知らんと欲し,凝集反応を行えば
第3項糖類分解試験
第3表に示す如く,1,600倍の凝集価を有する
P∼培地通過菌の糖類分解試験14)15)及びその
原型菌免疫血清に対して,小集落菌は豹0倍ま
他の生物学的性状を検:するに,第5表に示す如
で,大憲落忌は400倍まで,夫々凝集さる,か
く,P∼培地70代通過菌に於ては, Maltoseに
くの如く,変性集落菌は原型菌免疫血清に対し
対する分解能力を消失す.これを普通寒天培地
て,被凝集性が相当に低下するを知る,
に10代継代培養するも分解能力を復活するに至
らず.叉,Inosit分解に際し, P∼培地通過菌
第3表 変性大腸菌の凝集反応
\稀
ォ墾
小集落菌
は24時間にて完全に分解するも,K∼培地通過
50
100
200
400
800
柵宮垣
什十丹
什島台
十±什
十閥十
1600
菌は72時間を要す,
硫化水素を発生する点に於いては,対照菌と
鴨一命
相違する所なし.
蜿W落菌
第 5表
エ型菌
re1一一mpt 一r一:1;=:一::;;;一r:
第3節鼠チフス菌
第1項集落の状態
P∼培地37代通過によりて,大小2種の集落
粗
名
壁
地
無数
糖
を生ず,小集落は灰白色正円形の集落にして原
型菌集落に一致す,大集落は類円形灰白色光沢
なく不透明,辺縁不規則なる集落なり.これを
類
Arabinose
灘37
大集落を作る.更にP∼培地に累代培養するも,
Saccharose
略同様の変化を繰返す,
Ma] tose
これらの集落に就いて,S∼R型鑑別反応を
Lactose
行えば第4表に示す如く,大集落は3反日共に
陽性にして所謂R型の性状を示す,小集落は
Dulcit
Sorbit
Manni t
Inosit
塵L
集
落
二
loo 四
寒
ele o
e (DiCD e
o o e
o
eio o
O1(D
o o
Rhamnose
Glucose
100
集
落
一斗L
(IE)
([DI(iE)
Galactose
70
’1−da1 6
([E)
原型菌集落に復帰し,一部は前記同様の不正形
同様反応陰性にしてS∼型の性状を示す.
集
三里 P∼培地 落
菌
Xylose
普通寒天培地に7代継代培養する時は,一部は
Mi llon反応弱陽性に現るるの外は対照集落と
鼠チフス菌
集
落
兎
普
寒
10
({E)
(D
(ID
(ED
(ED
(ID
(D
c{D
E)
olo
Oj〈[D
’(ll) 1 ({D
elo
(iD
([D
(ll)
(D lO
(ID
十1十
十
o o
e e
(iD
(ID
([1)
([D
o o e
o
EE)
(lll)
Saliein
第4表
1)∼培地37イL℃通過菌「集落
H2S発生
のS∼R型鑑別反応
※
一小集落
蜿W落
ホ照集落
@一 一 一 一
?一
一
一
_ −
■ 了 一 __ 冒 _
±十鞠
十
一 一 一
培地へ10代培養
硝酸銀
硫酸銅
c 『
@『
@十
@一
第2項形態的観察
一十口
+1+
at :普寒10=P∼培地70代通過菌を普通寒天
Trypaflavin
Mi110n
十
一
第4項血清学的観察
一 一 一
@一
@十
@囎
P∼培地100代通過大小2集落菌が原型菌免
疫血清に対する態度を知らんと欲し,凝集反応
を試むれば第6表に示す如く,小集落菌は1,600
倍まで,大集落菌は400倍まで,対照菌は3,20(♪
( ss ]
685
酵素による細菌の変異に関する研究
第2項形態的観察
倍まで凝集さる.
変性集落菌の形態は対照菌に比し,菌体は稻
第6表 変性鼠チフス菌の凝集反応
マ、
小集落菌
it太き感を与う.グラム陰性桿菌.
50
100 200 400 800 1600 3200
第5項糖類分解試験
P∼培地通過菌の糖類分解試験を行えば第8
柵甘柵
什十柵
十十什
十十十十、
十一甘
十一十
一鞠十
表に示す如し,37代,70代に於ては対照菌と異
蜿W落菌
る所なし.然るに100代に於ては,P∼培地通
ホ照集落菌
第4節ゲルトネル菌
過菌は3週間に亘って観察するもDulcitを分
解せず,対照菌は48時間にて分解す,蓋し
第1項集落の状態
Dulcitに対する分解能力消失すると云うべし.
第8表
P∼培地28代通過菌集落は,灰白色不透明に
して対照菌集落に比し稻ヒ大なり。これを普通
寒天培地に2代継代培養すれば原型菌集落に一・
i致す,
菌
名
培
地
ゲルトネル菌
鵜一
※数 「代
辺は稽セ不規則の集落にして,小集落の1.0∼
1.5倍大の直径を有す.小集落は正円形にして
対照菌集落tl=一一一致す.大集落は,これを普通寒
天培地に7代継代培養するも,同様の集落を生
じて原型菌集落に一致するに至らず.
集虞
大集
落菌
落菌
落菌
落菌
普寒10
普寒10
P飼培地
右各 37
P∼培地93代通過菌に於ては,大小2種のi集
落を作り,大集落は僅に帯黄灰白色類円形,周
小集
一100 一100
70
100
Arabinose
㊥
①ie
(D
㊥
①
(D
㊧
Xylose
㊥
(D
④
㊥
㊥
(D
(D
㊥
Rhammose
㊥
㊦
①
㊦
(D
㊥
①
㊧
Glucose
㊥
①
㊦
㊥
㊥
㊥
㊥
(D
Gala心tose
(D
㊥
④
①
㊥
㊥
㊥
④
Saccharose
これらの集落に就いてS∼R型鑑別反応を行
Ma星tose
一
一
嗣
一
陶
隅
噸
哺
(D
①
㊥
㊥
㊥
㊥
①
㊥
鞠
曙
哨
輔
一
一
軸
輸
一
碗
えば第7表に示す如く,P∼培地28代通過菌集
Lactose
暉
一
一
落は,Mi llon反応弱陽性, Trypaflavin反応陽
Dulcit
①
㊥
(D
性,重金属イオン反応弱陽性を示す.P∼培地
93代通過菌の小集落は,3反応共に陰性,大集
Sorbit
①
①
①
㊥
①
①
㊥
㊥
Manni t
㊥
⑤
㊥
(D
①
㊥
㊥
①
落は,3反応共に陽性,対照菌集落に於いては,
Inosi t
一
一
一
一
噛
一
一
一
噌
一
關
輸
一
幅
剛
一
Salicin
3反応陰性を示す,P∼培地28代通過菌集落は,
その状S型よりR型への移行型と見逸すべき
第4項血清学的観察
か.
P∼培地93代通過によりて生ぜる大小2集落
第7表 P∼培地通過菌集落の
に就きて血清学的観察を行えば第9表に示す如
S∼R型鑑別反応
く,原型菌免疫血清に対し,小集落菌は6,400
iillx>]xEl.1{ltui;1 “’{i1i”n
Trypaflavin 硫酸銅
硝酸銀
倍まで,大集落菌は800倍まで,対照菌は6,400
第9表変性ゲルトネル菌の凝集反応
P∼培地28代
集
落
主
十
±
豪
士
P一培地93代
小集落
P∼培地93代
大集落
100 200 400 800 1600 3200
小集瀦国大購劇什対照集落菌陣
十
十
十
十
K∼培地93代
集
50
落
【訂 】
構什柵
督什柵
什十朴
十士什
十輌十
十一十
土一十
晒
窪
田
倍まで凝集せられ,P∼培地通過菌は対照菌に
比し被凝集性が低下す.
性の成績を示す.Katalase反応陽性,牛乳を凝
固せず,Gelatinを液化せず,硫化水素を発生
第5節赤痢菌(中村)
せざる点に於いては,対照菌と異る日なし.
第1項集落の状態
第11表
:P∼培地58代通過によりて,大小2種の集落
を生ず.小集落は原型菌集落に一致し,正円形
にて稽ヒ粘稠性を有す.大集落は小集落の1.・5
∼2,0倍大の直径を有し,正円形或は類円形の
集落にして周辺はre e不規則なり.これを普通
寒天培地に7代培養すれば,一部は原型菌集落
に一一ikし,一部は完全には・一致せずして周辺稽
菌
名
赤痢菌(中村)
地
騙P一儀
小集
│
一 一
砂♂悔離
1十
Arabinose
Xylose
一
小集
呼集
落菌
落菌
集
落菌
} 一 一
落菌
』70 }『 }70
37
一100
V0
工00
u
十
十
十
十
十
十
『
鞘
『
殉
一
一
Rhamnose
e不規則なり,
一
一
剛
一
一
聞
廓
Glucose
十
十
十
十
十
十
十
これらの集落に就いて,S∼R型鑑別反応を
Galactose
十
十
十
十
十
十
十
行えば第110表に示す如く,小集落はMillon反
Saccha】ose
哨
一
唖
一
一
■一
一
応弱陽性,他は陰性,大集落はTrypaflavl n反
Maltose
十
一
一
『
喝
一
一
応弱陽性,他は陽性,対照菌集落は3反応共に
1.actose
咽
一
鞠
一
殉
一
一
陰性なり,これらの集落は継代培養して100代
Dulcit
噛
一
一
一
瑠
口
一
に至るも略ll同様の有様を繰返す.
S(♪rbit
Manni t
第10表 1)∼培地・58代通過菌の
Inosit
S∼R型鑑別反応
\ 反
_\麿
小集落
;
l’1㎞
o・幽㎞
Salicin
硫酸銅
硝酸銀
剛十曙
曙十一
軸
一
噛
十
十
十
1十
十
十
鴫
一
噛
一
殉
一
一
『
一
一
一
剛
一
閥
一
嘲
一
囎
一
一
第4項血清学的観察
±十閣
『±『
『
十
1+
IndoレR
1「『
嘲
蜿W落
ホ照画
W 落
P∼培地通過菌と原型菌免疫血清との間に凝
集反応を行えば第12表に示す如く,P∼培地37
代通過菌は3,200倍まで凝集せらるるに,’P
∼培地70及び100代通過菌は1,600倍まで凝集
第2項形態的観察
:P∼培地100代通過菌は,両端稽ヒ濃染性に
せらる.K∼培地通過菌は何れも6,400倍まで
して,「グラム陰性の桿菌なり,
凝集せられ,P∼培地に継代培養を続くるに従
第5項 糖類分解試験
第12表 P∼培地通過菌の凝集反応
P∼培地通過菌の糖類分解試験を行えば第」1
表に示す如く,P∼培地37代通過菌に於ては,
:Maltoseに対する分解能力を消失し,普通寒天
院主
培地に1〔戚継代培養するも分解能力を復活する
に至らず,この性質はP∼培地70及び】00代に
32001漣
50
?
37
一
100 200 400 800 1600
一
什骨i什柵
P∼培耽 V0
於ても同様なり.
督
{}‡ 『 一
十十±十十十十
十『一十十十
一一一十十十
一
P00
その他の生物学的性状を検するに,P∼培地
37代通過菌に於ては,Indo1反応は48時間培養
菌に就いて観察するも全く陰性の成績を得,然
るに対照菌に於いては,24時間培養菌にて強陽
( ss ]
? 一 一 『
? 一
一 一 一 一
一
37
脚半丹
K∼培地 V0
P00
刑柵
柵督什
}−
酵素による細菌の変異に関する研究
いて,被凝集性は次第に低下するが如し,
687
異る所なし.
第14表
第6節パラチフス:B菌14)の
第1項集落の状態
’
菌
P∼培地50代通過によりて2種の集落を生
ず.一つは正円形の微小集落にして殆んど透明
なり,他は半透明の少しく不正なる円形集落に
して原型菌より梢自大なり,これを普通寒天培
名
培
パラチブス:B菌
K{’
地
P∼培地
│地
』右各
\き数 「代
微集
小才
大集
微集
落菌
集
落菌
小才
『100 一100
30
70
100
70
70
Arabin⑪se
㊥
㊦
㊥
e
㊥
㊥
①
①
Xylose
㊥
㊥
㊦
(D
①
落を形成し始め,代を累ぬるに従いて大なる集
④
①
㊦
Rhamnose
(D
㊥
Φ
①
㊥
(D
Glucose
㊦
㊥
㊥
㊥
(D
①
㊥
これらの集落に就いてS∼R型鑑別反応を行
e
e
(D
落の数を増す,後者は次第に原型菌に近似す.
Galactose
①
㊥
(D
㊥
(D
㊦
㊥
えば第13表に示す如く,微小集落は3反応共に
Saccharose
弱陽性,大集落は硫酸銅に於いて弱陽性,他は
Maltose
陽性を示す.両集落共にR型への移行型と見倣
1.actose
地継代培養すれば,前者は5代目より大なる集
Dulcit
すべきか.
㊥
一
一
閣
剛
一
}
一
一
④
㊥
㊦
①
㊥
㊦
(D
e
一
一
一
一
一
帽
一
霜
㊥
①
㊦
①
①
㊦
①
④
Sorbit
㊦
㊥
㊥
㊥
㊦
Φ
Manni t
e
①
第13表 変性パラチフス:B菌のS∼R型鑑別反応
(D
㊥
(D
①
①
(D
①
(D
※応
Inuおit
㊥1
㊥2
一
『
圃
㊦2
㊦・ゆ・
微小集落
:MiHon
Trypaflavin
硫酸銅
硝酸銀
Sahcin
一
@一 一
±十±
±十“
±±一
「
一
一
一
(D2
e2
④2
±十幽
第4項 血清学的観察
P∼培地通過菌と原型菌免疫血清との間に凝
蜿W落
ホ照菌集落
集反応を行えば第15表に示す如く,P∼培地37
代通過菌は12,SOo倍まで凝集せらるるに反し,
第2項形態的観察
70代及び100代通過菌は1,60(,倍まで凝集さる
微小集落菌は両端鈍円の中等大桿菌なり,微
小集落菌,大集落菌共に両端濃染性,「グラム」
るのみ,継代培養を続くるときは,被凝集性が
次第に低下するを思考し得.
陰性なり,
第15表 P∼培地通過菌の凝集反応
第3項 糖類分解試験
P∼培地通過菌の糖類分解試験を行えば第14
轟地
50
100 200 400
表に示す如く,P∼培地70代通過菌に於いては,
Inositに対する分解能力を消失す. P∼培地37
37
代通過菌に於いては,Inositを分解すべく2日
柵柵
柵二二
P∼ 蛯e
ケ地
す.即ち,P∼培地通過菌は,その分解能力を次
過菌は,Salicinに対する分解能力を有す.100
ァ地
V0
二十十
十十十
十一一
±一刷
卦十十
什十十
十十十
十十十
12800
B+
371柵
K’・》
1600 3200 6400
¥十 羽
号要するも,対照菌に於いては24時間にて分解
第に低下するものの如し,叉,P∼培地7(耽通
柵 十十
脚
柵柵珊
什什
柵三州什
柵
P100i柵
@1
代通過菌に於いても同様なり.
第7節 その他の菌の変性
その他の生物学的性状に於いては,Indol反
応陰性,Gelatinを液化せず,牛乳を凝固せず,
硫化水素を発生する等の点に於いて,対照菌と
[ 59 1
第1項 チフス菌
P∼培地93代通過菌は大小2種の集落を生
688
窪
田
ず.大集落は灰白色半透明の集落にして,小集
照菌と異る所なし.
落の1.5∼2.0倍大の直径を有す.小集落は小
その他の生物学的性状に於いても対照菌と異
円形透明の集落にして原型菌集落に一・致す.大
る所なし.即ち,Gelatinを液化せず,牛乳を
集落は,普通寒天培地に3代培養すれば原型菌
凝固せず,Indol反応陰性,硫化水素を発生す.
P∼培地100代通過菌と原型菌免疫血清との間
集落に一・i致す.
形態的には対照菌よりも僅に長き感を与う.
に凝集反応を行えば,P∼培地通過菌は3,200
倍まで凝集せらるるも,K∼培地同母通過菌は
「グラム陰性桿菌,今井H高時法により鞭毛を
認む.
6,400倍まで凝集せらる.P∼培地通過菌は対
糖類分解試験を行えば第16表に示す如く,対
照菌に比し僅に被凝集性が低下す.
第
菌
名
糖 継代数
類
チフス菌
P
93
K
93
Arabinose
Xylose
十
十
十
十
Rhamnose
Glucose
GalactDse
パラチフ
スA菌
P
K
16 表
赤痢菌
(箕 田)
P
K
loo
loo
100
lco
o
e
o
e
o
o
o
o
o
e
o
十
十
十
十
(D
十
十
十
十
o
e
e
(ED
o
o
o
赤痢菌
(志賀)
P
37
K
37
赤痢菌
(犬 野)
P
93
K
93
赤痢菌
(西 貢)
P
K
赤痢菌
(川瀬)
P
K
93
93
37
37
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
十
Saccharose
Maltose
Lactose
Dulcit
Sorbi t
Mannit
o
一1一
o
o
十
(i])
十
([D
十7
十i
十
下
Inosit
Salicin
郎:P=P∼培地
K=K∼培地
十7.t=分解に要する日数
第2項パラチフスA菌
P∼培地37代通過によりて2種の集落を生
応陰性,牛乳を凝固せず,Gelatinを液化せず,
硫化水素を発生せざる等,対照菌と異る所なし.
70代及び100代に於て検するも,この程度以
ず,一つは灰白色半透明の円形集落にして,原
型菌集落より梢ミ大なり.他は前者よりも僅に
上の変化を認め難し.
大にして灰白色不透明の周辺梢ヒ不規則なる集
血清学的には,P∼培地70代通過菌は,原型
落なり,これらの集落を普通寒天培地に5代培
菌免疫血清に対し,6,400倍まで凝集され,対
養するも夫kの特長を失わず.
照菌はユ2,800倍まで弱く凝集さる.即ち,P
∼培地通過菌の被凝集性は低下す.
形態的には両端略解なる小桿菌にして,「グラ
第3項赤痢菌(箕田)
P∼培地47代通過により大小2種の集落を生
ム陰性,鞭毛を有す.
糖類分解試験を行えば第16表に示す如く,対
ず,小集落は灰白色半透明円形集落にして,原
照菌と異る斜なし.
型菌集落に一致す.大集落は帯黄灰白色,不透
その他の生物学的性状に於いても,1皿dol反
( 40 ]
酵素による細菌の変異に関する研究
明にして小集落の1.5∼2.0倍大の集落なり,
689
これらの性状は100代通過菌に於いても同様
これを普通寒天培地に5代培養するも,それら
の性質を失わず.
なり.(赤痢菌(志賀),赤痢菌(川瀬)を除く)
夫々の原型菌免疫血清と凝集反応を行えばP
形態的には両端鈍円なる小桿菌にして,「グラ
∼培:地通過菌は,K∼培地通過菌に比し僅に低
ム陰性.
価に凝集さる.
糖類分解試験に於いては,対照菌と異る所
第5項緑膿菌ls)20)21)
なし,叉,その他の生物学的性状に於いては,
P∼培地93代通過によりて大小2種の異りた
Indol反応陰性,牛乳を凝固せず, Gelatinを
る集落を生ず.小集落は帯緑半透明円形集落な
液化せず硫化水素を発生せず.
り.大集落は帯緑灰白色不透明周辺梢不規則,
第70代,第100代に於いても同程度の変化な
内部稽セ不均等の集落なり.S∼R型鑑別反応
り.
を行えば,小集落は:Millon及び’rrypaflavin
P∼培地70代通過菌は原型菌免疫血清に対し
反応弱陽性,重金属イオン反応陰性,大集落は
1,600倍まで凝集され,K∼培地70代通過菌は
3,200倍まで凝集さる.
3反応共に陽性の成績を示す.
形態的には,両集落共に細長き桿菌にして
第4項赤痢菌(志賀)18)
2∼3個連鎖をなせるものあり.
赤痢菌(大野)
その他の生物学的性状として,Gelatinを液
赤痢菌(西貢)
化し,牛乳を凝固し次いで消化す.
赤痢菌(川瀬)
P∼培地通過菌の色素産生の程度は,K∼培
地通過菌に比し常に著明なり.(37℃24時間培
P∼培地93代通過により大小2種の集落を生
ず.小集落は微小集落にして灰白色半透明円形
なり.大集落は小集落より梢ヒ大にして,円形
養…)
第8節変性を認めざる菌
P∼培地100代通過に依りて何等の変性をも
灰白色半透明でngN it粘稠性なり.これを普通寒
来さざる菌は下記の如し.
天培地に5代培養するも夫々の特性を失わず.
(赤痢菌(志賀),赤痢菌(川瀬)は第37代にて
1)赤痢菌(駒込A)
検:す)
2)赤痢菌(駒込BIII)
3) コ レ ラ 菌
形態的には両端鈍円の桿菌にして両端は濃染
一4)黄色ブドウ球菌
性の傾向を有す.「グラム陰性,
糖類分解試験に於ては第16表に示す如く,赤
5)白色ブドウ球菌
6)霊
菌
痢菌(川瀬)を除き対照菌と異る所なし.
その他の生物学的性状に於いては,K:atalase
7) 普通ジャガイモ菌
反応は赤痢菌(志賀)陰性,他3菌陽性,Indol反
応は,赤痢菌(志賀),赤痢菌(川瀬)(10日観
8)枯 草 菌
(コレラ菌,赤痢菌(駒込A),赤痢菌
察)陰性,他2菌陽性,4菌共に牛乳を凝固せ
(駒込:BIII)は夫々3(状,40代に於て
ず,Gelati nを液化せず,硫化水素を発生せず,
検査せるものなり.)
第4章 総括並びに考按
1.細菌の発育状態
P∼培地に21種の細菌を培養しその発育状態
養を累ぬる申に数種の細菌は,発’育不良となり
を観察するに,大部分の細菌は発育良好にして,
継代培養は困難となる.即ち,「コレラ菌(31),
K∼培地に培養せる菌と異る所なきが,継代培
[ 41 1
6co
窪
田
4.糖i類分解能力の変化
赤痢菌(志賀)(37),赤痢菌(駒込:BIII)(41),
赤痢菌(川瀬)(41),赤痢菌(駒込A)(53)の5
普通大腸菌のP∼培地100代通過大集落菌
菌なり.(括弧内は継代培養可能代数にして,そ
は,Maltoseに対する分解能力を消失す.
れ以後は継代培養不能なり)
鼠チフス菌のP∼培地7⑪代通過菌は,:MaltOse
2.i集落の変化
に対する分解能力を消失す.又,Inositを分解
P∼培地に細菌を継代培養するとき,変性集
するに際し,24時間を要す.然るに対照菌は72
落を生ずるものあり.その大部分は腸内病原菌
時間を要す.
にして,非腸内病原菌としては,緑膿菌のみな
「ゲル}ネル菌のP∼培ttL 100代通過菌は,
Dulcitに対する分解能力を消失す.
り.
継代数と変性集落の固定性との関係を見る
赤痢菌(中村)の:P∼培地37代通過菌は,
と,37代前に於いて固定性を得るものはなし.
Maltoseに対する分解能力を消失す.
37代に於いては,鼠チフス菌,パラチフスA菌,
「パラチフス:B菌のP∼培地37代通過菌に於い
赤痢菌(志賀)及び赤痢菌(川瀬),47代に於い
ては,Inosit分解時間遅延し,70代以後に於い
ては,赤痢菌(箕田),50代に於いては,パラチ
ては分解能力消失す.P∼培地70代通過菌に於
フス:B菌,S8代に於いては,赤痢菌(中村),93
いてはSalicinに対する分解能力を獲得せるも
代に於いては,「ゲルFネル菌,チフス菌及び緑
のの如し.
膿菌が夫々相当に固定性を得.
赤痢菌(川瀬)のP∼培地37代通過菌に於い
普通大腸菌に於いては,93代に於いて固定性
ては,Sorbitを分解すべく,7日を要す。然る
ある集落を生ずれ共,K∼培地通過菌に於いて
に対照菌に於いては24時間にて分解す.ここ
も同様の所見を認む.
に於いて,P∼培地通過菌のSorbit分解能力
これらの集落に就いて,S∼R型鑑別反応を
の低下を推測し得.更に継代培養を続くれば,
分解能力は消失せんか.
行えば,陽性の成績を得るものあり.White,
Petmpana,岡本等に従えば,これらの変性集落
上記の如く,Maltoseに対する変化の多きは,
はR型と云うべし,又,「ゲルトネル菌のP∼培
Maltoseが不純或は不安定なるによるものなら
地28代集落の如く,弱陽性に現るはS∼型より
んか.
R∼型への移行型と見倣すべきか.
:Pbili p(1935)15)等は, Maltose非分解鼠チフ
「パラチフス:B菌のP∼培±de・50代通過菌集落の
ス菌に就いて報告す.著者も亦,鼠チフス菌の
如く,明にS型と思わる集落に拘らず,上記3
反応弱陽性に現るはS∼r型と見なすべきもの
変異菌としてMaltose非分解菌を分離せり,
集落の変性を来すことなくして糖類分解能力
ならん.
の変性を来すものはなし,集落の変性を来すも
糖分解能力の変性を来さざる菌多し.
使用菌数は少なるも,球菌及び有芽胞菌に於
5. その他の生物学的性状の変化
いては変性を認めず.
3.形態的変化
普通大腸菌のP∼培地100代通過菌は,
変性菌は,一般に菌体が太く両端濃染性の傾
Indol反応及びMethyl.red反応発現に夫々2日,
向を有す.普通大腸菌及び鼠チフス菌の如く数
個連鎖をなすものあり.
7日を要し対照菌に比し遅延す.
赤痢菌(中村)のP∼培地37代通過菌は,
「グラム染色,鞭毛染色に於いては,対照菌と
異りたるものなし.
Indol反応消失す.
牛乳凝固,Gelatin液化,硫化水素発生,
大小2種:の集落を生ぜし場合,小集落より大
Katalase反応等に関しては,何等の変化を認め
集落に於いて,その変化著明なるが如し.
ず,
( 42 ]
691
酵素による細菌の変異に関する研究
集せらる.特に,普通大腸菌,鼠チフス菌及び
6.変性菌の凝集反応
「ゲルトネル菌に於いて著明なり.
原型免疫血清に対し,変性菌は相当低価に凝
第5章
結
論
P∼培地に21株の細菌を培養し,細菌に如何
赤痢菌(川瀬)のSorbit分解時間は遅延し,
なる変異が現るかを検して次の結論を得たり.
鼠チフス菌のInosi t分:解時間は促進せらるる
1.多くの病原性腸内細菌は,「パンクレアチ
が如し.
ン」に依りてR型化を促進せらるるが如し.
「パラチフス:B菌は,Salicinに対する分解能
2.変性菌の形態は,両端濃染性なるもの多
力を獲得す.
5.赤痢菌(中村)は,Indo1を産生せざる
し,
3。球菌及び有芽胞菌に於いては,変性を来
に至り,普通大腸菌に於いては,Indol産生能
低下するものあり.
すものなし.
4.P∼培地に継代培養するとき,普通大腸
6.変性集落菌は,原型菌免疫血清に対して,
被凝集性が低下す.
菌,鼠チフス菌及び赤痢菌(中村)は,Maltose
に対する分解能力を失い,「ゲルトネル菌は,
摘筆するに当り終始御懇篤なる御指導並びに御校閲
Duleftに対する分解能力を失い,「パラチフス:B
を賜りたる恩師谷教授に潔謝す.
菌はInosi tに対する分解能力を失うに至る.
主
要
文
献
1)宮尿:日i新医学,18:1970,2155(192g)
894 (1943) 13) Anna:J. lnfecf. Dis.,
2)鈴木:愛知医学会雑誌,37二964(1930)
42:575 (1928) 14) Roberts Breed:
5)青木:衛生学伝染病学雑誌,32:485(1936)
Bevgey’s manual of detaminative Bacteriology.
4)窪田:十全医学会雑誌,54;94(1952)
6th Edition. 445, 501, 502 (1948) 15)
5)朝日奈:日本薬局方,6版=428(1951)東
Philip:J. Bact., so;465 (1935) 16)
京,南江堂. 6)金井:臨躰検査法提要,10
Sberman:J. Bact., ss:315 (1937) 17)
版・286287(1951) 東京,日本医書出版.
石山:福岡医科大学雑誌,Zl:1006(1929)
18)渡邊:衛生学伝染病学雑誌,18:214
7)大里,日ts :内科診断書,7版=241(1948)
東京,南山堂.
sa : 85 (1929)
6 : 15 (1951)
8) White;J. Path. Bact.,
(1922)
9)齋藤:日本細菌学雑誌,
(1929) mo) Maschman:Zbl., Bacter., 1.
10)晶晶=名古屋医学雑誌,
as : 95 (1949)
11) Pampana:J. Hyg,,
ss : 402 (1933)
12) 岡本:日新医学,32:
19) 梅田:慶応医学,9;949
o. 1ca:288(1937) 21)山本=日本微生物
学会雑i誌, 19 : 1582(1925)
( 45 ]