Title Studies on the Production of Itaconic Acid by a Novel Fermentation Process( 内容の要旨 ) Author(s) 八尋, 一豊 Report No.(Doctoral Degree) 博士(農学) 乙第012号 Issue Date 1997-09-12 Type 博士論文 Version URL http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/2257 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。 氏 八 名(本籍) 尋 畳 一 学 位 の 種 類 博士(農学) 学 位 記 番 号 農博乙第12号 日 平成9年9月12日 学位授与年月 学位授与の要件 学 位 論 学位規則第4条第2項該当 文 題 Studies 目 a 査 委 旦 文 Production ofItaconic 学 教 授 岡 大 学 教 授 寄 副査 岐 阜 大 学 教 授 河 副査 静 岡 大 学 教 授 田 副査 静 岡 大 学 助教授 静 副査 信 州 の 岡 大 容 内 by 浦 康 Process NovelFermentation 主査 Acid の 要 高 合 啓 原 康 朴 能 光一孝 論 the on 都∵藤 審 (福 岡県) 津 旨 イタコン酸は二塩基性不飽和有機酸で、ポリエステルやプラスチックのような高分 子化合物の原料や可塑剤或いは、紙のコーディング剤として、広く工業的に用いられ ている。現在全世界で6000トン/年ほど生産されているが、その大半が糖蜜を原料と し通常の通気撹拝型の発酵槽で生産されている。しかしながら、環境保全が強く要求 される今日では、もはや糖蜜はその廃液処理の困難さから発酵原料として使用するこ とは困難となってきている。又、従来の通気境拝槽はその運転のため大量のエネルギ ーを必要とするので、これに代わる省エネルギー型のリアクターの開発が要求されて いる。本研究は、こうした背景.に立ち、従来の方法に代わる新しいイタコン酸の生産 方法の開発について論述したものである。 まず第一に、発酵生産にとって最も重要な生産菌の育種に関する研究を行った。親 株A5Peγgf眈5fme祝SⅣ06365の生産物(イタコン酸)耐性を調べたところ、イタ コン酸10g/L程度の濃度で増殖が阻害されることが判明した。そこで、新しく、考 案したイタコン酸濃度勾配法によるイタコン酸高生産突然変異株の誘導を試みた。す なはちNTG変異処理を行った後、イタコン酸の濃度勾配(0∼50g几)を有する寒天平 板培地に塗布し、30℃、7日間培養をおこなった。イタコン酸濃度が高いところで、 コロニーを形成した突然変異株を670株ピックアップし、イタコン酸の生産能を調 べたところ、その中のTN・484株が比較的高いイタコン酸生産能を示した。本棟での 培地培養条件の最適化をおこなったところ、初発グルコース140g/Lのところで最大 75g/Lのイタコン酸を生成した。この値は過去発表されたものとしては最も高い生産 性であった。 -105- つづいて、前記のスクリーニングで得られたイタコン酸の高生産株TN-484株を用 いて、エアリフト型培養槽によるイタコン酸発酵の可能性について検討した。通常の 空気と酸素富化空気を用いた培養を行い、酸素供給速度(OSR)という新しい基準を 導入し、エアリフト型発酵槽の評価を試みた。通常の空気であれ、酸素富化空気であ れ、OSRとイタコン酸生産量との間に相関関係が成立する事を見出した。エネルギー 消費量という観点から、通常の通気撹拝槽との比較を試みたところ、同一のイタコン 酸の生産量を確保するに必要なエネルギーはエアリフト型リアクターは通気撹拝槽 に比較して約1/6であった。 最後にイタコン酸発酵生産における原料転換に関する研究をおこなった.〕従来イタ コン酸は糖蜜あるいは結晶グルコースを原料として生産されているが、前者は環境保 全、後者はコスト面で今日の経済、社会情勢に適応出来なくなっている。そこで安定 供給が可能で、しかも低価格のコーンスターチに注目しコーンスターチからのイタコ ン酸生産の可能性を検討した。コーンスターチは培地の殺菌のため加温すると、糊化 して培地全体が固まり、殺菌の継続が不可能となるが、培地殺菌時に酵素処理、或い は硝酸による処理をおこなう事により、培地が糊化する事なく殺菌が可能となり、し かも培養が可能で高いイタコン酸の生産性を認めた。ことに硝酸による処理は安価で しかも簡便であることから工業的に利用価値の高い技術であると考えた。フラスコ培 養での結果を確認するため、先に述べたエアリフト型の培養槽での生コーンスターチ からのイタコン酸発酵をおこなったところ、結晶グルコースと大差ない、高いイタコ ン酸の生産が認められた。コーンスターチを原料とする発酵では培養液が極めてクリ ーンなことから、その培養濾液を濃縮冷却するだけで、イタコン酸の結晶が得られた。 クリーンな原料を使用することはダウンストリームを簡略化するという面でも極め て効果が高いことを示した。 以上の研究により、省エネルギー型のエアリフト型バイオリアクターを用いてクリ ーンなコーンスターチからのイタコン酸の高収畢生産の可能性を実証することが出 来た。 審 査 結 果 の 要 旨 平成9年8月4日14時より静岡大学農学部において、審査委貞全員出席のもとで 約40分間の口頭による公開論文発表の後、審査委貞により本論文を審査した。なお、 各審査委貞は、あらかじめ各自に配布された論文(写)を発表会に先だって閲覧した。 論文要旨は、ポリエステルヤプラスチックのような高分子化合物の原料や可塑剤或 いは、紙のコーディング剤として、広く工業的に用いられているイタコン酸の発酵生 産プロセスに関する研究である。内容は、1)イタコン酸濃度勾配法によるイタコン 酸高生産菌の育種に関する研究、2)得られたイタコン酸の高生産株TN-484株を用 いたエアリフト型培養槽によるイタコン酸発酵の可能性についての検討、3)イタコ ン酸発酵生産におけるグルコースから低価格のコーンスターチへの炭素源転換に関 する研究、である。 -106- 1)では、親株Aspe頑仇s亡erreu5IFO6365の生産物(イタコン酸)耐性を調べ たところ、イタコン酸10g/L程度の濃度で増殖が阻害されることが判明した。そこ で、イタコン酸高生産株の獲得を目的に、イタコン酸濃度勾配法によるイタコン酸耐 性株のスクリーニングを行った。すなはちNTG変異処理を行った後、イタコン酸の 濃度勾配(0∼50g/L)を有する寒天平板培地に塗布し、30℃、7日間培養をおこなっ た。イタコン酸濃度が高いところで、コロニーを形成した突然変異株を670株ピッ クアップし、イタコン酸の生産能を調べたところ、その中のTN-484株が比較的高い イタコン痩生産能を示した。本棟での培地培養条件の最適化をおこなったところ、初 発グルコース140g/Lのところで最大75g/Lのイタコン酸を生成した。この値は過 去発表されたものとしては最も高い生産性であった。 2)では、前記のスクリーニングで得られたイタコン酸の高生産株TN-484株を用 いて、エアリフト型培養槽によるイタコン酸発酵の可能性について検討した。通常の 空気と酸素富化空気を用いた培養を行い、酸素供給速度(OSR)という新しい基準を 導入し、エアリフト型発酵槽の評価を試みた。通常の空気であれ、酸素富化空気であ れ、OSRとイタコン酸生産量との間に相関関係が成立する事を見出した。エネルギー 消費量という観点から、通常の通気境拝槽との比較を試みたところ、同一のイタコン 酸の生産量を確保するに必要なエネルギーはエアリフト型リアクターは通気撹拝槽 に比較して約1/6であった。 3)では、イタコン酸発酵生産における原料転換に関する研究をおこなった。従来 イタコン酸は糖蜜あるいは結晶グルコースを原料として生産されているが、前者は環 境保全、後者はコスト面で今日の経済、社会情勢に適応出来なくなっている。そこで 我々は安定供給が可能で、しかも低価格のコーンスターチに注目しコーンスターチか らのイタコン酸生産の可能性を検討した。コーンスターチは培地の殺菌のため加温す ると、糊化して培地全体が固まり、殺菌の継続が不可能となるが、培地殺菌時に酵素 処理、或いは硝酸による処理をおこなう事により、培地が糊化する事なく殺菌が可能 となり、しかも培養が可能で高いイタコン酸の生産性を認めた。ことに硝酸による処 理は安価でしかも簡便であることから工業的に利用価値の高い技術であると考えた。 フラスコ培養での結果を確認するため、先に述べたエアリフト型の培養槽での生コー ンスターチからのイタコン酸発酵をおこなったところ、結晶グルコースと大差ない、 高いイタコン酸の生産が認められた。コーンスターチを原料とする発酵では培養液が 極めてクリーンなことから、その培養濾液を濃縮冷却するだけで、イタコン酸の結晶 が得られた。クリーンな原料を使用することはダウンストリームを簡略化するという 面でも極めて効果が高いことを示した。 以上の業績は、省エネルギー型のエアリフト型バイオリアクターを用いてクリーン なコーンスターチからのイタコン酸の高収率生産の可能性を実証することが出来た。 また、硝酸処理だけでコーンスターチを発酵原料と使用できることは、工業的に利用 価値の高い技術であることを示した。 上記の理由により、審査委貞一同、討議の結果、本論文が岐阜大学大学院連合農学 研究科の学位論文として十分価値あるものと認めた。 -107- なお、本論文は、以下に示す課題で国際雑誌に掲載済または掲載予定である。 「基礎となる学術論文」 1)墜azutoyoYahiro′TetsushiTakahama′YongsooPark′andMitsuyasu Okabe:′′BreedingofAspe7giLlusterreusMutantTN-484forItacomicAdd ProductionwithHighYield"′JournalofFermentationandBioengineering′79′ 506-508′1995. 2)KazutoyoYahiro,TetsushiTakahama′Shi-ruJai′YongsooParkand MitsuyasuOkabe:"Comparisonofair-liftandstirredtar血reactorsforitaconic addproductionbyAspe7gilluster7・euS〝′Bioteclm0logyLetters,19′619-621′ 1997. 3)KazutoyoYahiro,ShinjiShibata′Shi-ruJia,YongsooPark,andMitsuyasu Okabe:WEffidentItaconicAddProductionfromRawCornStardl′′′Journalof FermentationandBioengineering′(inpress)・ 「既発表学術論文」 1)YongsooPark,Kou5ihoue′KazutoyoYahiro,andMitsuyasu Okabe‥′′ImprovementofCephamycinCProductionbyaMutantResistantto LinoleicAdd",JournalofFermentationandBioengineering,78′88-92′1994・ 2)NoriyasuOhta′YongsooPark,KazutoyoYahiro,andMitsuyasu Okabe:′′ComparisonofNeomydnProductionfromStreptomycesjhdiae CultivationUsingSoybeanOilastheSoleCarbonSourceinanAir-1ift BioreactorandaStirred-tankReactor",JournalofFermentationand Bioenglneenng′79′443W′1995・ 3)PeiminYin′NaokiNishina′YukoKosakai,KazutoyoYahiro′YongsooPark′ andMitsuyasuOkabe:"EnhancedProductionofL(+)-LacticAddfromCorn StarchinCultureofRhizopus?7yZaeUsingAir-1iftBioreactor′′′Journalof FermentationandBioengineenng′(inpress)・ 「口頭発表」 1)印 培民、八尋一畳、朴 龍沫、岡部満康:"エアリフトバイオリアクターでの 生デンプンからのL(+)-乳酸の直接発酵生産"、日本生物工学会乳酸菌工学研究 部会、1997年.。 -108-
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