3. Speech 3. 講演 MOOCs in Japan --Is There Any Good Goal-日本における MOOCs ∼望ましいゴールはあるのか∼ Yoichi Okabe, President, The Open University of Japan 放送大学長 岡部洋一 Kumiko Aoki Welcome back. I will be consistent in speaking in English. The first speaker in the afternoon is the President of my university, the Open University of Japan, Professor Dr. Yoichi Okabe. Dr. Okabe became the President of the University in 2011. For four years before that he was the Vice-President of the University who was mainly in charge of the technological aspects of the University. Dr. Okabe has been the forefront of transformation of the University to move on to the online teaching and learning from the broadcast, somewhat industrial model. Today he will talk about MOOCs in Japan and probably the future of the Open University of Japan. Please welcome Professor Dr. Okabe. Yoichi Okabe Thank you Professor Aoki. First of all I’d like to give my great thanks to all of the invited guests, Professor Sir John Daniel, Professor Grace Alfonso, Mr. Andrew Law, and Professor Jan Herrington. Also I’d like to give our great thanks to all in the audience who have come from a lot of places. Unfortunately the weather is not so good and it is so cold. My talk will be given in Japanese because I’m Japanese and also most in the audience here are Japanese. I’m very sorry for our guests. Yoichi Okabe 日本の MOOCs(ムークス)の話をし たいと思います。先ほど通訳の方から 「ムークス」なのか「ムーク」なのか といった話がありましたが、もともと Massive Open Online Course なので、 複数で使うときは s をつけて単数で使 う時は s をつけないのが本当のルール なのですが、私も適当に混ぜて使いま すのであまり気にしないでいただきた いと思います。 1 みなさんにお渡ししてある印刷物には、この PPT の「1」の章がありません。私が 最初に考えた時には MOOCs だけの話をしようと思ったのですが、作っているうち に放送大学の話も、ここに聞きに来られる方は必ずしも全部理解していらっしゃら ないし、私がこれから話す日本の MOOCs の話をする時も、放送大学の特性を理解 いただいている方がわかりやすいと思いましたので、1 章つけました。うちが出し ているいろんな冊子に書いてあることを改めて紹介するので、たぶん配布資料には 記載がなくてもおわかりいただけると思います。 さて、MOOCs って一体どんなものなのだろう。以下はわりと John Daniel さんの話 と近いのですが、MOOCs の損益の話というのがあまり議論されてないので、その 話をしたいと思います。また、今までの伝統的な大学に対して MOOCs は脅威であ るという話がよく出ているのですが、それが特に日本においてどんなものだろうか、 さらにそうした条件で、一体 MOOCs の将来はどうすべきなのかというような話を したいと思っています。 まず、The Open University of Japan、放送大学はどんな大学かというと、どんな人 でも入れます。年齢制限がありまして 15 歳以上、中学卒業ぐらいの年齢からじゃな いと入れませんが、それ以上、いくらでも上まで入れます。特徴は、入学試験があ りません。「学生の質はどうやって保証しているの?」というと、最終の単位認定 試験がかなり厳しい。あまり厳しい、厳しいと言うと入ってくる学生さんが減って しまうのですが、それなりに厳しいという風に思っています。そんなわけで卒業で きた方はかなり優秀ではないかと思っています。 2番目の特長として、完全なる生涯学習型になっています。後からお見せしますが、 学生さんの年齢構成はほとんど日本の人口構成に近いと言えると思います。3つ目 の特長といたしまして、約 350 の講義が放送でなされています。学生さんはこの講 義から、およそ全講義の 80%を取らないと卒業要件を満たさない。それ以外にフェ イス・トゥ・フェイス、面接型の講義で残りの約 20%を取っていただいて卒業にな るという格好になっています。この 350 の科目はテレビとラジオで放送されていま し て 、 当 然 誰 で も 見 る こ と が で き る 。 そ う い う 意 味 で 、 Open Educational Resources、OER という意味ではうちの大学は既にかなりの量を出しているという ことが言えると思います。 その他いろんなことが書いてありますが、まず OUJ、放送大学は、日本にある数十 の通信制の大学の中で唯一国が作った大学です。それが故にいろいろ変わっている ところがありまして、まず学部は一つ。リベラルアーツ。教養のみを教えている大 学になっています。学生さんは最大 10 年まで在学することができます。10 年間で 卒業できなかった人は再入学していただくと、前の単位を全部生かすことができま すので、はっきり言うと何年かかってでもいいですよということなのですが。そう いう意味でも生涯学習機関ということになると思います。学生数は現在9万人くら いです。さっきの繰り返しですが、ラジオとテレビで 350 科目。先ほどのフェイ ス・トゥ・フェイス、面接授業を、日本中に 50 の学習センター、各都道府県に最低 2 1ヶ所、学習センターというのがありまして、そこでやっておりまして、面接講義 の総数はおよそ 2500 です。 最初にお見せするのが年齢分布です。 非常にブロードバンドでして、所々ピ ークがあります。まず年齢は一番下が 先ほど申し上げましたように 15 歳で、 一番上が 95 歳まで学生さんがいます。 ピークが顕著なところは、まず真ん中 のピークが 40 歳前後です。日本の人 口の分布はもう少し高めで 45 歳前後 なのですが、ほとんど同じ。若干若手 のところにピークがあります。それか ら 60 歳から 65 歳は定年退職者、日 本では団塊の世代って言いますが、非 常に子供の多かった世代が今この年齢に達していてそこがひとつのピークである。 もうひとつは 20 代前後でこれは一般の大学とほぼ同じような世代が入っているとい うことで、こういう分布を持っています。 放送大学は、元々は放送と郵便だけで受けられる大学ということでスタートしまし たけれど、現在インターネットのアプリケーションを使うということをどんどん始 めています。まず、テレビとかラジオの講義をどんどんインターネットで見られる ようにしております。ただし、著作権等のいろんな知財、知的財産のためにお金を かなり払わなければならないので、完全にオープンではない、学生さんのみに公開 されています。現在、全テレビ・ラジオの講義のうちおよそ 90%くらいがオンライ ンで見られるようになっています。次に、科目登録や成績の結果をインターネット で見られるようにしました。3番目ぐらいに、ちょうど半期、1学期の半分くらい のところで中間試験みたいのをやるのですが、それをオンラインでやることもでき るようにしました。同時に電子掲示板も用意いたしました。4番目に Webinar って 書いてありますけど、これは「ウェブ・セミナー」ですね。修論とか卒論とかの指 導をウェブ越しでやることも可能になっています。学生さんのかなりの方は東京に 来ていただいてやっていますが、非常 に遠方の人についてはウェブ経由でゼ ミを受けることもできるようになって います。 最初にお見せするこのグラフは、テレ ビ・ラジオの番組はどのくらいネット で配信されているかというものです。 下の方のブルーのところはラジオ番組 です。ラジオ番組は著作権処理等にあ まりお金がかからないということで、 初めから全科目をネットで公開しまし 3 た。上の方の色のついたところはテレビ科目です。これは、先ほどの知財処理の経 費がかなりかかります。うちの学生にしか見せないという条件でもかなりかかるた め、いきなり全部をオンライン化するのは難しいので、新しく制作する科目毎にオ ンライン化しています。だいたいひとつの科目の寿命が平均5年くらいです。長い ものは6年。短いもので4年ということで、今スタートして7∼8年になります。 最初の年は0%でしたのでちょっとペースが遅かったのですが、あと1年後の 2015 年にほぼ 100%の講義がオンライン化されるということになります。 もうひとつは、学生のインターネット 化がどのくらい進んでいるのかという こと。これもなかなかちゃんとした調 査は難しいのですが、このグラフは現 在学生さんがネット配信も含めて、ど ういうメディアを使ってうちの講義を 聞いているか、というのを示したもの です。一番下がテレビ。放送大学の講 義は、東京地区では地上デジタルで見 ることができますが、日本全体ではB Sでしか見られません。それも含めて 現在三十数パーセントぐらいの学生さ んがテレビで見ている。それから真ん中のグレーっぽく見えるところは、インター ネット経由、オンライン配信で見ている学生さんの比率で、現在は3分の1ぐらい になったと。順調に数が増えていっております。それから一番上、アザーズと書い てあるのは何かというと、学習センターに行ってそこで聞くことができるような仕 掛けになっています。あるいはDVDを借りていって自宅で見ることができる。そ ういう人の数で、ここの部分が急速にインターネット化しているということがわか ると思います。 もうひとつ、インターネット化がど のくらい進んでいるかのグラフです が、先ほど中間に行う試験を今ウェ ブでやることができるとお話しまし たけれども、それがどのくらいウェ ブ経由で行われているかということ です。中間試験を受ける総人数、学 生数が述べ人数で 30 万人くらいいる のですが、そのうちインターネット で回答可能な総人数がこの縦の全部 のバーになっています。その中で本 当にインターネットを使って回答を してくれた人は一番下の方にある青 いところになっていまして、現在、全可能な学生さんのうちで 3 分の 1 ぐらいがイ ンターネット経由でやっていることになります。これはポシビリティを示したので 4 はなくて、現在本当にアクセスしている人でして、インターネットでないと回答で きないということにしたらこの数をもっと増やすことができると思っていますが、 現在は特にこちらが強くプッシュしないでも 3 分の 1 ぐらいの学生が受けている、 ということです。しかし、受けていない学生もかなり多いということは、放送大学 は設立当初から、当時としては非常にありがたかったのですが、放送の1チャンネ ルをテレビとしていただけたということがありまして、逆に言うと学生さんはイン ターネットなどのテクノロジーがなくてもちゃんと習得できる環境にあるわけです。 そのためどうしてもインターネット化はゆっくりとしか進まないところが問題にな っています。 さらに放送大学の説明をいたしますと、放送大学のいいことと悪いことについて書 きました。いいことは入学試験がないこと。日本のほとんどの大学では、学生さん は入学試験を目指して頑張るわけです。また後から申し上げますが、入学試験が終 わってしまうと学生生活を楽しむことに精を出してしまってあまり勉強しないとい う問題があるのですが、うちはちょうど反対で、入る方はまったく自由ですが、そ の代わり、卒業する前に受ける試験がかなり厳しいという構造になっています。そ れが何故いいかというのは段々わかってくると思いますが、私としては非常にいい システムだと思っています。悪い点は、当然ですが、放送による授業が中心になっ ていますので、どうしても授業が単方向になりやすい。ちなみに日本の普通の大学 でも講義はほとんど単方向になっています。先生がこういうところでずっとしゃべ っていて、最後にちょっとだけ質問と回答の時間が設けられますが、現在の日本の 大学では、ほとんどの学生が質問しません。ということで、事実上単方向になって いると思っています。そのため、日本の大学との比較では、あまりまずいことでは ないと思いますが、世界の教育の方向を見ると、段々、双方向型の講義が主流にな ってきていますので、遅れている部分ではないかと思っています。 2番目のポイントは、通信制の大学はみんな平均的にそうだと思いますが、学生さ ん同士、あるいは学生と教員との間のコミュニケーションが非常に足らないという 問題があります。3番目は、学習センターは比較的学生さんがアクセスし易いので すが、ほとんどの図書がここ幕張の中央に偏在していて、学生さんが地方で借りよ うとすると、貸出票みたいなものを提出して、それで送ってもらうしかなく、大き なライブラリが各地方の学習センターにないというのが非常に問題だと思っていま す。 しかし、これらの問題はほとんどICT、情報通信技術を使うと解決するだろうと 思っていまして、今、そちらの方向に向かっています。もっと放送大学も ICT を入 れられないかというので、いくつかの試みをやっています。先ほどのような配信、 それから簡単なドリルを解く、ということ以外に最近始めたものは、私が個人的に テストとしてやっているのですが、SNS を使ってバーチャルキャンパスができない か、ということです。2011 年度から始めていますが、Twitter と Facebook を使って こういう活動をしています。今のところ私が個人的にやっています。Twitter は日本 中のいろんな人で放送大学に関心を持った人が、放送大学がどうのこうのと書きま すと、私がそれに対してすかさず「放送大学について誤解があります」とか「頑張 っていますね」とかそういうことをつぶやくという Twitter 業務。それからもうひと 5 つ、Facebook 上で、まさにバーチャルキャンパスを作ったと思っていますが、放送 大学の学生さんが中心のグループを作りまして、その中で学生さんたちが相互で話 ができるようにしました。9万人に比べるとまだ少ないのですが、現在、1200∼ 1300 人がエントリーしていまして、本当のキャンパスみたいな雰囲気があります。 学生さん同士で、昨日会った人たちが別のサークルを作ってみるとか、全部で既に 数十のバーチャルなサークルが生まれているということで、私はこのバーチャルキ ャンパスが有効ではないかと思っています。 2014 年度の4月から始める予定ですが、段々オンラインの講義を作っていこうと思 っています。放送大学は先ほども言いましたように、元々できた趣旨が放送を使っ てやるというので、長いことオンライン教育は手を出すな、という風潮が強かった のですが、さすがに、これこそ先ほどの John Daniel さんがお話をされたように MOOCs が後ろ盾になりまして、文科省も了解の上で、オンライン教育を始めるこ とになりました。これの特長は双方向であること。これが一番の大きな特長だと思 っています。しかしながら元々放送大学は、放送と郵便でやれると宣言してしまっ ていますので、かなりたくさんの学生さんがデジタルデバイドに引っ掛かりまして、 その人たちを今後どうするかということを考えながら進めていかなければならない のが難しいところです。当面は、どうしても聞いていただかなければならない講義 はやはりテレビ・ラジオでやらざるを得なくて、少し専門、特に情報とか自然科学 とか、比較的オンラインユーザの多いところで始めていくという格好でスタートし ようと思っています。 ここから本題に入ります。まず、MOOCs という概念なのですが、これは何かとい うと、Massive であるということ。相手が大量であるということです。それから Open である。オープンであるけど、実はお金をかけないで作るというのが何となく 前提になっていまして、そのお金を誰が払うかということは真剣に考えなければな らないと思っています。2番目の O が Online ですね。それ以外に入っている概念と して、多くの MOOCs のコースはインタラクティブである。お互いにコミュニケー ションが取れること。ということはつまりバイラテラル、双方向であることが条件 になっています。次の行は、2つのことを書こうと思って間違えてしまったのです が、受講証明書を非公式に出す。ただしそれは単位認定なしです。つまり、ちゃん とした大学の単位として認められるような認証がない格好で証明書を出すというよ うな仕掛けになっていると理解いただければと思います。こういう世界的な潮流に 合わせて JMOOC を去年の 10 月に本学の理事長の白井先生が中核になって作りまし た。現在 10 を超える大学、まだ少ないのですが、当然放送大学はかなり中核的な役 割もしていますが、10 を超える大学。それに対して出資者として、10 を超える教育 系の企業、通信系の企業などが参画をしてスタートしました。今年の4月にいくつ か、たぶん4月は数個だと思いますが、数個の講義が出されると思っています。 話したいことは MOOCs の将来は明るいのかどうかという話です。2つ話題があり まして、これも先ほど John Daniel さんが上手にしゃべってしまったのでしゃべりづ らいのですが、要するにコストに見合う収入が得られるのかというのが非常に大き な問題だと思っています。2つ目のポイントは、一般の大学は MOOCs によって大 6 きな影響を受けるのではないかという話がよくあるのですが、それはどのくらいな のかという話をしたいと思います。 まず、MOOCs の収入・支出がどうなっているのかというと、支出側から言います とまず初期コスト。最初にお金が必要です。サーバーやビデオを撮る、コンテンツ 作りや、テキストブックを作る人もいるでしょう。演習問題を作る、試験も作らな ければならない。こういうものに対するコストは、いくら安く作っても数十万では たぶん済まなくて、百万円ぐらいから場合によっては1千万ぐらいかかります。そ れからランニングコスト。これはいろんなシステムのメンテナンス。それから講義 を維持するためにディスカッションの場を設けたり、レポートを出してそれをチェ ックしたり、場合によっては TA(ティーチングアシスタント)みたいなのを置かな ければならない。こういうもろもろのコストがあります。一方、利益はほぼないに 等しい。お金的にはほぼなし。お金は出るけれど、収入のないシステムになってい るのが非常に問題だと思っています。つまり長期的に永続させるのは容易ではない ということです。しかしアメリカの MOOCs を見ていると成功しているように見え る、という話でその仕掛けを調べますと、まずアメリカの場合は企業がお金を出し ています。ギブ&テイクと書いたのですが、企業は基金を出す。その代わり教育情 報、教育の履歴をビッグデータとして得ることができる。ここに参加をしている各 先生は、自分の分の教育情報は手に入りますが全体を取ることはたぶんできないよ うになっていると思いますので、これが企業としてはおいしいところなのではない かと思います。 最近のモデルとして就職と結びつけようというものもあります。各企業がここの部 分を勉強して欲しいというところで、証明書をもらった人を優先的に採用するとい うようなものに使う可能性があるということです。本当にどのくらい使っているか わかりませんが、その可能性があるということです。先生にはどういうギブ&テイ クがあるかというと、先生の場合は講義を与える。もらうものは名声ですか。あの 人の講義は立派だねという名声。それから講義のノウハウ。自分の講義が学生にど のくらい支持されるかということでノウハウを知ることができる。それから自分の 講義だけに対する教育情報を手に入れることができるということで、普通に考える と支出の方が多い格好になっていると思います。大学は先生方に、実は先生は MOOCs に関わる時間に対するサラリーは本来もらってはいけないはずだけれど、 たぶんその分を無償で払っているのではないかと思っています。一方で大学が手に 入れられるものは、例えば、スタンフォード大が「はじめましたよ」と言ったら大 学の名が上がるという宣伝効果。それから非常に限られた、参加した先生だけの教 育情報。それから3番目のカテゴリーとして、どれくらい効果的かはわかりません が、世界中から優秀な学生を集めることができるかもしれない、という構成になっ ています。ここには書いてありませんが、これを受講した学生さんはひたすらもら える方の役ですね。何も自分は払わないわけですから。というのでものすごく収 入・支出の関係の悪いことになっているのですが、一応こういう3つ、あるいは4 つが上手く組み合わせになっていて、アメリカではなんとなく上手く動いている形 になっていると思います。 7 他のモデルもあります。政府がお金を出すというケースです。企業の代わりに政府 になっただけですが、政府は何を与えて何がもらえるかというと、お金を出す、そ の代わり世界に対するその国の影響力が大きくなるというギブ&テイクが成立する でしょう。これもだいたい上手くいくケースですね。あとは収益モデルはほとんど 一緒です。 アメリカの MOOCs も段々こういう風に変わっていくと思うのですが、3番目のカ テゴリーは、世界横断的な MOOCs。つまり聴く学生さんが世界中にいるようなケ ースで、しかも企業が手を引いてしまってお金が入らないかもしれないという時に も上手くいくかどうかという話です。先生は同じように講義をして、名声とノウハ ウを得る。大学は先生の仕事量に対するサラリーと基金を出す。その代わりさっき と同じようなテイクがあるからなんとか成立するでしょうということです。 これに対し、段々日本の話に寄ってきますが、ローカルという言葉がいいかどうか わかりませんが、非常に地域性の高い MOOCs。何で地域性が高いかというとこの 一番下に書いてありますが、日本は日本語という大きなバリアがあります。ほとん どの講義がたぶん日本語で作られると思います。それを公開した場合、世界中の学 生で聴いてくれる人もいますが、かなりの部分日本人が聴くことになると思います。 最初からマーケットがかなり狭い、という条件でいろいろ考えると一番の問題は大 学側が得られるものが少ない。世界中から優秀な学生が集められない。国内からは 優秀な学生を集められるかもしれないけれど、その辺が上手くいかないだろうとい うことで、この局所的な MOOCs というのは上手くいかないのではないかと感じて います。 改めて日本という条件で考えてみると、特に JMOOC の話をしますと、まず今は企 業が支援してくれています。たぶん、この辺に参加しておくといいことがあるので はないかという期待を持って参加しているのだろうと思いますが、私の感じでは日 本の企業はだいたいこういう支援を長期間やりません。比較的短期に儲かるか、儲 からないかを見極めて降りてしまう可能性が非常に高いということをかなり心配し ています。またさっき言いました言語のバリアというのはどうしようもなくあって、 世界をマーケットにしないで日本だけの非常に小さな母数でやるには、いろんな意 味でのスケールメリットが得づらいところがあります。近いうちに支出の方が収入、 得るものよりもはるかに大きくなってしまって、多くの参加大学はやっていけなく なるのではないか、というのを非常に心配しています。ということで、日本の MOOCs は結構大変だということを認識していただければいいと思います。 次の話題は、今まで伝統的な大学に対して MOOCs がどういう影響を及ぼすだろう かです。影響の半分は世界中の大学に対してもあてはまることですが、取り敢えず 日本の大学に比較的特化した話をさせていただきたいと思います。まず、日本の伝 統的な大学における教育について少し説明をしておきます。放送大学もそうですが、 日本のほとんどの大学は、いわゆる知識伝達型講義というものをやっています。ほ とんど単方向的な講義だと理解いただければいいと思います。これが1つ目。2つ 目のポイントは、教養教育というのは日本ではどんどん小さくなっています。最大 の理由は国が大学に対してあまり大きなお金が出せなくなったこと。それから、学 生数が少子化ということで急激に減っていて、そのために収入が減ってきた。各大 8 学に入ってくるお金が減ってきたわけです。そうなるとどこを削るかというと、ど うしてもやらなければいけない専門教育の方を重視して、教養教育はどうしても先 にカットされるということが起きています。そのために教養教育が非常な勢いで減 ってきているということがあります。3番目の話として、学生の行動様式ですが、 日本は何故か不思議なことに大学生の卒業時の質より入る時の質をチェックすると いう。受け取る側の企業もそういう傾向にありまして、どのくらい有名な大学に入 ったかというので、学生の価値が決まってしまうという非常におかしな現象があり ます。ということで学生さんは入学試験の時は一生懸命勉強するのですが、最後に 述べますように、入学試験が終わってしまうとほぼキャンパスライフを楽しむ方に 努力を払うようになります。これが日本の大学の特徴の概要ではないかと思います。 一方、比較して我々の放送大学はどういう風になっているかと言いますと、さっき 申し上げましたように 80%の放送授業と 20%ぐらいの面接授業で成り立っています。 それから実は、放送部分については完全にオープンでしかも誰でも見られるという ことがありまして、先生方はいいかげんな講義が作れない。専門家が見ている可能 性があるということで非常に気を付けて丁寧に講義を作っているので、少なくとも 一方向の講義としては非常に高く評価されていると思っています。3つ目の話とし て基本的にうちの講義は全部教養教育であるということです。ということで、何を 言いたいかというと、実は放送大学は MOOCs をオンエアーでやっている。放送で もって MOOCs を今までやってきたというわけです。となると MOOCs の影響とい うのは、放送大学がこれまで日本の他の大学に対してどういう影響を及ぼしてきた かでわかるのではないか、ということが言えます。 そういうことで日本の大学に今まで放送大学がどのような影響を及ぼしてきたかと いう話をしたいと思います。まず、先ほどのような条件で考えますと、日本の伝統 的な大学というのは平均的に言うとリベラルアーツ、つまり教養教育の講義を欲し ています。さっきも言いましたように、教養教育を担う先生方が急速に減っている のですが、まず最近になって辞めた教養の先生を再雇用する。安い値段で雇用して その講義を続けるということをやっていました。段々それが辛くなってきて現在は、 本当だったら放送大学の講義を聴いてくれるとよさそうなのですが、何が起きてき たかというと、放送大学の講義は普通の大学の学生さんには難しすぎるという問題 が出てきました。先ほど言いましたように放送大学には入学試験はないけれど、卒 業試験、単位認定試験は非常に難しいということがありまして、普通の大学の平均 的な学生さんにとってはかなり難しい、ということでなかなかこれも上手くいかな くて、今ここで話が膠着状態になっていると思っています。一方で我々の放送大学 の学生さんは、もっと難しい講義が欲しいと思っている人がかなりいます。全員で はないと思いますが、かなりの学生がもう少し厳格な試験をやってくれと言ってい るくらいなので段々と格差が開いていっていると思います。ということで講義のレ ベルの違いというのがあって、どうも放送大学の他の大学に対する影響はそれほど 大きくなかった、また MOOCs の双方向教育も学生負担が高いため大きな影響がな いのではというのが最初の話です。 すみません、先ほどから伝統的な大学をかなり悪い言い方していますが、実は私自 身は、放送大学に入ったのは 2006 年ですが、それまでは伝統的な大学の代表である 9 東京大学の先生をしていました。また当然その間にいろんな大学の非常勤講師をや ってもいますので、いろんな大学を見てこのような話を申し上げています。決して 放送大学を良く言おうという目的ではなくて、伝統的な大学のこういう傾向を非常 に憂いていまして、なんとかならないかと思っているという立場からこういう話を しているという風に聞いていただければと思います。 2番目の話は学習意欲の話です。伝統的な大学の学生さんは、日本の場合特に、高 等学校を出るとすぐに大学に入るという、一番、学生さんの平均年齢が若い国のひ とつになっています。そのため、ほとんど学費は両親からサポートされるというの が原則になっています。それが故にだと思いますが、学習意欲はかなり低いと思っ ています。もちろん学習意欲が非常に高い学生さんもいます。あくまでも平均値で す。一方で放送大学の学生さんは、だいたい先ほどの年齢分布を見てわかるように、 仕事を持っている方が多いということもありますし、あるいは年齢が高い方も多い ので基本的に自分で支弁している人が多いということです。また、PPT には書き忘 れましたが、一般の大学は学費を年間の単位で払います。放送大学の場合は授業も 含めて総額いくらで払います。授業科目数とは無関係に決まった定額を払うという のが普通の大学です。一方、放送大学の入学料は極めて安い。その代わり科目毎に、 受講する度にお金を払うというシステムになっています。そういうこともありまし て、こういう言い方は失礼かもしれませんが、授業という言葉とお金が頭の中でパ ッと結びつくようでして、お金かけたからにはちゃんとした講義を聴きたい、ちゃ んと勉強しなければいけない。そういう意味で非常にモチベーションが高いという 風に理解しています。実際、各地方でやっている面接授業は、いろんな大学の先生 にお願いしてやってもらっているのですが、その先生方が各地方の学習センターで 講義をして、最初にびっくりされるのが、授業を受けている学生さんがものすごく 意欲的だということです。自分の大学で授業をした場合、学生さんはほとんど質問 もしないと。ほとんど一方向の講義になってしまうわけです。放送大学で講義をし ますと、必ず質問の時間は大騒ぎになるくらいわいわい質問が出てきますので、も のすごくみんなびっくりして帰るということがあります。非常にモチベーションが 高いのであろうと思っています。 では、伝統的な大学は一体、これからどういうことをやらなければいけないかとい うことですが、先ほど言ったように放送大学の影響は比較的少なかったということ は言えるのですが、しかしながらこれからは学生のモチベーション、勉強意欲をい かに掻き立てるかということにかなり努力をしてもらわないといけないだろうと思 っています。これは、もう一つの側面からも言えまして、今まで学生さんを採用す る企業は、入った時の成績だけに関心を持っていました。東大は非常に難しい大学 なので、東大の学生さんは自動的に良いという風に思っていたわけです。しかし採 用してみると思ったより使えない学生がいるということが段々わかってきまして、 大学の卒業時の成果に関心を持つように急速に変わりつつあります。そのため、勉 強意欲を掻き立てて、最終の試験でどのくらいの成績を取ったかということに、 段々重心が動いていくのではないかと思います。そういう意味で放送大学は今まで のシステムですとモチベーションは自然に高かったけれど、我々としてはモチベー 10 ションを上げる特別な工夫はしていなかった。それに対して伝統的な大学はそれが やれるというところで、存在意義が十分に高いのではないかと思っています。 MOOCs に話を戻しますと、MOOCs のシステムはかなり学生さんに学習意欲がない とできません。先ほどの講演にありましたように、最初はものすごい数の学生さん がいても、最終試験をパスする学生さんの数はものすごく低いわけです。というこ とで、MOOCs のプログラムで完全にこれを完了させようとすると非常に強い動機 がないと、あるいは意欲がないと続かないということになります。そういうことも ありまして、MOOCs 自身にモチベーション、動機や勉強意欲を高めるような仕掛 けをどんどん入れていかないと MOOCs は別の意味で大変なことになるのではない かという風に思っています。そんなこともあって、現状では一般の大学は、学生さ んはともかく、あまり勉強したくない学生さんもともかく教育させるというミッシ ョンを持っているし、それは今でも多少はあると思っています。それに対して MOOCs は、非常に強いモチベーションを持った人にしか適用できないシステムだ ということで、やはり MOOCs が今までの伝統的な大学を壊すことはまずないだろ うというのが私のひとつの結論になっています。 それでは MOOCs の将来はどういう風にしたらいいのかという話です。今のように MOOCs を他の大学と比較した時の優位性はそれほど高くないということが段々わ かってきたのですが、さりながら、日本人相手の MOOCs でも最低限日本の人口全 体を相手にしますので、登録者の数は決して無視できない、かなり大きいだろうと 思っています。そういう意味で MOOCs に講義を乗せるということは、我々として は学習に対するいろんな情報を得るというメリットは相変わらずあります。さっき も言いましたように、各先生は自分の講義に対するフィードバックしか MOOCs に 入ってももらえないだろうけど、それでもものすごい情報が手に入ります。それを 上手く有効に生かすべきではないかと思っています。 まずひとつは一方向的な講義。つまり知識伝達型の講義から日本の大学も段々双方 向性の講義に変わっていかなければならない。例えばプロジェクト型の学習とか、 参加型学習という方向に段々移っていかなければいけない。それをオンラインでや ることはかなり可能だと思いますので、そういうものを MOOCs に乗せてみる。そ ういうトライアルをするべきだと思っています。それから、いかにして学習者の意 欲を高めるか、というようなトライアルもすべきだということがありまして、私の MOOCs に対する期待はそういうものをデモンストレーションすると言いますか、 お互いにそういうものを見せ合ってどの教育法がいいということを、お互いに見る ことができる。そういう環境を作ることによって教育手法、あるいは教育者の考え 方を変えるという意味で非常に大きな俎上になるのではないかと思っています。 最後に、結びになりますが、まず MOOCs について言いますと、改めて、収益構造 は全然上手くいっていない。これは非常に大きな問題で、特に日本の大学にとって は MOOCs の素材をどんどん出していくのは非常に辛いことだと思います。という ことで MOOCs を本当に維持しようと思うと、別の何かメリットがないととてもや っていけないというのが第1番目の結論です。2番目の結論は MOOCs ができた結 11 果、他の今までの日本の伝統的な大学がつぶれるだろうか、と言ったらそんなこと はありません。大した効果は実はないのではないかと思っています。そういうこと を踏まえて MOOCs の将来を考えると、3番目の結論ですが、MOOCs というのは 教育手法を研究するには非常にいいツールになりうると思っています。例えばさっ きの繰り返しになりますが、知識伝達型の教育から、もう少ししゃれた新しい教育 スタイルに移すための試行の土台になる。どうやって学習者の学習意欲を高めるか という場にもなります。それ以外にいろんな学習手法をお互いにデモしながら教育 者のやり方を高めていくというところで役に立つ。そういうメリットがあれば、収 支のバランスが多少悪くても MOOCs はちゃんと生きていけるのではないかという ふうに思っています。全般的に少し暗い話をしましたが、私から見ると非常に面白 い場ができてきたというふうに感じています。ということで講演を終わりたいと思 います。ご清聴ありがとうございました。 【質疑応答】 Kumiko Aoki 岡部先生どうもありがとうございました。日本語で質疑応答を続けます。 今回、いろいろなかたからご参加いただいています。放送大学の学生さんから、教 職員、他の大学の方、企業の方、いろいろな方がいらっしゃいますけれど、放送大 学の学長に質問をできるという機会はあまりないと思いますので、どうぞご質問の あるかたは挙手をお願いいたします。 [質問者1] 大学の名称を放送大学ではなく「日本放送大学」あるいは「東京放送大学」に改名 したらいいと思うのですがいかがでしょうか? Yoichi Okabe それは、放送の技術を教えている大学ではないということをはっきりとさせるため という意味でしょうか?よくいろんな人から提案を受けるのは「公開大学」にしろ ということなのですが、そういう質問だと思ってよろしいですか? [質問者1] 世界に羽ばたくといいますか、世界に周知してもらうといいますか、そういった意 味を含めて、単なる放送大学ではなくて「日本放送大学」あるいは「東京放送大 学」というような形にした方が世界的にも名称が素晴らしいのだと思うのですが。 Yoichi Okabe すみません。英語ではそうなっています。要するに日本人に対してどういう風な効 果があるのか、ということだと思うのですが、実は大学の名称を変えるのは大変な ことで、我々は国が作った大学なのでちゃんと国会で審議を受けないといけない可 能性があります。名称変更だけで話が収まればいいのですが、いろんな話が全部再 検討しようということになれば大変なことになるのでその辺は避けているというの をご理解いただければと思います。世界的にはイギリスの OU のように、単なる Open University では残念ながら通りませんけど、少なくとも Open University of 12 Japan と言っていますので、世界の人から誤解を受けていることはないと思ってい ます。 [質問者2] 先ほどの先生のお話で雇用とかビジネスの話が出てきました。今、そちらの先生か ら企業の人間もいるということ。私も企業の人間なのですが、これをどういう風に 使っていったらいいかというのは非常に大きいと思います。今、企業の中では、例 えば説明をするだとか、説得をするというのは非常に大事になっていまして、自分 の考え方があってもそれができない人が多いです。それがものすごく大変なのです が、放送大学の中でこれからどういう方向性でそれを見定めていらっしゃるのでし ょうか? Yoichi Okabe MOOCs ということではなくて放送大学のということでよろしいでしょうか? [質問者2] いえ、MOOCs を使って当然やっていくということになると思うのですが、放送大 学と両方だと思います。放送を使うのもそうだし MOOCs もそうだし。 Yoichi Okabe 私が MOOCs と言った時はタダということを前提にしゃべっていますし、放送大学 のオンライン授業という時はお金を取りますよ、という立場で話をするので若干違 いますけど、やり方はまずあるというお話をします。今、我々が考えているのは、 発表能力にはすぐに結びつきませんが、日本の大学の大学生は平均的に、特に放送 大学の学生はその傾向が強いのですが、長い文を書くのがあまり上手ではない人が 多いのです。そういうこともありまして、少しライティングの講義を作ろうかと思 っています。これをオンラインでやると。講義はオンラインで出すけれど、演習は 人間がちゃんと採点をして返す。こういうところを注意しなさいと。たぶん、同じ ようなことがプレゼンテーション、発表にも使えるのではないかと思っていまして、 将来的には何か考えなければならないと思っていますが、発表の大事な概念は講義 で教えるけれど、実際にプラクティスとしてしゃべらせるという。それをオンライ ン上でやってみる。リアルタイムでやらなければならないのでなかなか難しいと思 うのですが、そういうことが可能だと思っていますので段々そちらに切り変わって いくという風にご理解いただければと思います。たぶん MOOCs でも、時間をシェ アしてもいいよと思われる先生があれば、同じ作り方でできると思います。ただす ごく手間がかかりますので、MOOCs 上でそれがでてくるかどうか私は保証できな いと思いますが可能性はあると思います。 [中里加奈恵] 放送大学大学院の学生で中里加奈恵と申します。よろしくお願いいたします。私は 帝京大学を卒業したのですが、こちらで 2012 年度生として大学院の社会経営科学プ ログラムで修士を取らせていただいて、その後、他大学で助教授ということで経済 学の指導にあたらせていただきました。そこの通信制の大学の e ラーニングのティ 13 ーチャーとして雇っていただきました。こちらで2年間通信制で働きながら修士を 取ったということで、働きながら勉強したいという学生さんたちの指導に最適であ ると判断していだだき雇っていただいたのです。放送大学のいい点は何年でも除籍 になってもずっと勉強したい人は再入学して勉学できるということですが、私を雇 用した大学ではそれはまずいと。私立でしたので「勉学に悩んだ時はサポートいた します」というのがそこの PR で、基本的には留年した方に特別に付く専属のコー チとして雇われました。確かに何年もかかって勉強するのも働きながらですから頑 張りがいがあるし、意義があるのですが、私自身は2年で働きながら修士を取るに あたって、やはりひとりでわからないことも大変多かったです。それについてこち らにも TA という制度がありますが、きっと本音はみなさん、いくつになっても、4 年でできれば卒業したいというのが本当だと思うので、学長として何かいいアイデ ィアがないか、ご意見を伺いたいのですが。 Yoichi Okabe 放送大学は他の国立大学と同じで、どんどん国からの補助金が減額されています。 そのため、経費とどれだけサービスができるかの兼ね合いがあって、一番理想的に は TA とかメンターとかそういう人を増やして丁寧にチェックしていくのはいいと思 うのですが、やはり多少マスプロダクション的な考えを持たざるをえなくて、さっ きご紹介しましたが、バーチャルなところで相談を受けるのが一番いいのではない かと思っています。実際私が作った放送大学のフェイスブックグループ上では、例 えば勉学でこういうところに悩んでいる、と言うと同級生がいっぱい支援してくれ ています。私も時たま必要に応じてコメントしています。そういう友達の仕掛けと いうのが、結構大事ではないかと思って。それでかなり救われるのだろうと思って います。それで今度救えない人をどうするかという議論ですが、それは経費との兼 ね合いで考えていきたいと思っています。 [中里加奈恵] 私自身は雇用された経験で、激安でもっといいお給料を頂きたかったというのと、 また新たな雇用先をゲットすべく、是非私を雇用していただきたいというのが私の 主張なのですが、それだけではなく、私自身が2年で修士を働きながら取れたとい うこの自分で培った力がそこのプロフェッサーとして雇用していただけた理由のひ とつだったので、やはり他のみなさんも雇用について学長もおっしゃっていたよう に、その後の就職を考えるとき、10 年かかって、20 年かかってというよりは、4年 卒業した方がいいような気がします。だから是非これについて、私も今後も修士を 取ったその上を勉強していきたいと思っていますので、是非制度等お考えくださっ て、私も是非雇用して欲しいと思います。よろしくお願いします。 Yoichi Okabe はい。頭に入れましたけれど、たぶん最初は激安の人でどこまで賄えるかをチェッ クすることになると思うので、今の話に結びつく可能性は、始めのうちは低いとい う風にお考えいただければありがたいと思います。 [杉田心平] 14 私も放送大学の学生で、放送大学の杉田と申しますが、お話の中で、日本語で学ぶ 学生となると日本国内に限られるのでは、というお話がありましたが、JMOOC で も放送大学が日本語の授業をやっていくと。外国人に日本語を勉強していただいて それで高等教育を日本語でやっていこうじゃないかということを、進めていくこと も一方ではやっていらっしゃると思うのですが、JMOOC なり放送大学を、先ほど 質問でもありましたが、東南アジアとかひょっとするとアフリカの方とか、そこら 辺で使っていただくというか、外国人研修制度とか、日本に来た人も含めて、日本 語母語話者じゃない人に日本語で高等教育の機会を提供していくという方向性につ いてはどうお考えでしょうか? Yoichi Okabe 長期的には考えていて、私の前任の学長の石先生の時に、海外にいる日本人をまず 試しに生徒としてお願いしてみてやれるかどうかのテストをしてみました。それは 含みには、最終的には外国人の学生でうちの講義を聴いてもらう人を考えていたの ですが、やはりある程度の学生数が集まらないとなかなか、お金はかかるけれどサ ービスはちゃんと渡せないということがわかってきました。そのため、やはりある 程度学生数が確保できるという見込みができることが必要です。一番大変なのは実 は試験なのですが、試験を完全に今はリモートでやるには日本の場合まだ危険だと 思われていますので、その辺が上手く解決しないと意外と難しいと考えています。 一方である程度の人数がいるのであれば、外注で向こうで監督をやってもらうとい うことはあるかもしれません。検討は当然しています。それから白井先生が言い出 して海外にいる日本に留学したいような人を相手に日本語教育を作ったらどうかと いう話については、私も賛同しており、今回の JMOOC に乗せています。さっき、 日本語がバリアだというのはあくまでも大局的な話でして、無論、はみ出ることは 少しずつならあるうると理解していただければと思います。 Kumiko Aoki 時間となりました。岡部先生、ありがとうございました。 END 15
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