ダウンロード - 有機医薬品開発学分野

有機化学III
芳香族化合物の反応性
SBO55
芳香族化合物の求核置換反応に
ついて説明できる。
芳香族求核置換反応
化学反応のうち、ベンゼン環などの芳香環上にある置
換基が、求核剤の攻撃を受けて置き換えられる反応
のこと。一般にその形式は下式のように表され、基質
と求核剤の種類により SNAr機構、SN1機構、ベンザイ
ン機構など、いくつかの反応機構が知られる。
芳香族求核置換反応の例
ハロゲン化アリールは通常SN1,SN2反応は起こらない。
芳香族求核置換反応は付加-脱離の二段階機構で起こる。
O-およびp-カルボアニオン中間体のみは共鳴安定化
私の発明品です!
芳香族求核置換反応
SNAr機構
ニトロ基などの電子吸引基を持つ芳香族ハロゲン化物やピリミジンなど電子
欠如型複素芳香環ハロゲン化物に見られる反応機構。
ハロゲンが結合している炭素(イプソ炭素)へ求核剤が攻撃し、付加体を作
る。この付加体を「σ錯体」と呼ぶ。広義としてマイゼンハイマー錯体
(Meisenheimer complex)」と呼ぶこともある。σ錯体よりハロゲン化物
イオンが脱離し、置換生成物を与える。
ベンザイン機構
フルオロベンゼンやクロロベンゼンなど、前記の反応機構にお
いて不活性な基質に強塩基を作用させるとベンザインが発生
する。そこへ求核剤が付加すると、ハロゲンが置き換わった生
成物が得られる.
例
液体アンモニア中においてクロロベンゼンに金属アミドを作用さ
せるとアニリンに変わる。このとき、アミノ基が結合した炭素は、
元々塩素が結合していた炭素、またはその隣(オルト位)の炭
素ということになる。
ベンザイン
芳香族求核置換反応の報告例
ジアゾニウム塩を経由する求核置換反応
ジアゾニウム化合物は分子内に置換基
−N+≡N を含む有機窒素化合物である。
ジアゾニウムイオンを含む塩のことをジ
アゾニウム塩と呼ぶ。
ジアゾ化(diazotization)
一級アミンに亜硝酸ナトリウム(NaNO2) または亜硝酸エステル
(RONO) などを作用させ、ジアゾニウム化合物を得る反応
ジアゾニウム塩を経由する求核置換反応
ザンドマイヤー反応
ベンゼンジアゾニウムイオンと銅(I)塩を用いて、ジアゾニウムイオ
ンをハロゲン化物やシアン化物に変換する反応。
銅(I)塩以外の試薬を用いる反応もある。ジアゾニウムイオンをテ
トラフルオロホウ酸またはヨウ化カリウムで処理すると、フッ化物
やヨウ化物を与える。(シーマン反応)
ジアゾニウムイオンを銅触媒を用いて加水分解するとフェノールを
生成する。
中間体である塩化ベンゼンジアゾニウムからベンゼンの置換化合
物を得る上で重要な反応である。
おまけ
何故薬学で有機化学を学ぶのか!!
有機化学を通じて健康や医療に貢献するためである。
そのためには、医薬品をはじめとする特定の化学物質を
必要に応じて作り出す能力が必要である。
現在学んでいる反応は極めて単純な構造に対する単一
の反応例にすぎない。しかし、これらの知識・技量の積み
重ねが複雑な構造の化学物質を効率的に合成し、
医薬として安定供給する世界では必要なのである。
おまけ
東京大学大学院薬学系研究科
天然物合成化学教室
福山透教授(紫綬褒章受章)の研究例
合計35反応工程
市販されている原料
最終目的物(抗がん作用;臨床試験
をやりたいが、量が確保できない!)
おまけ
138 g
おまけ
おまけ
2.2 mg
置換ベンゼンの合成戦略
芳香環のスルホン化は可逆反応である。
Sulfonation is reversible.
Fuming sulfuric acid (8% SO3 in concentrated H2SO4) reacts with benzene to form
benzenesulfonic acid.
Because the reaction of SO3 with water is so exothermic, the sulfonation of
benzene can be reversed by heating benzenesulfonic acid in dilute aqueous acid.
Because sulfonation is reversible, it can be used as a blocking group to control
further aromatic substitution and then later removed.