地場農産物(いちご)の残留農薬実態調査 - 静岡市

地場農産物(いちご)の残留農薬実態調査
稲葉彰乃 伊藤誠 小田真也 石川和子 杉山直子 中野昌枝 本澤聡
【はじめに】
当 所 では、行 政 依 頼 を受 け、生 鮮 野 菜 と地 場 農 産 物 (茶 、みかん、いちご)の残 留 農 薬 検 査 を行 ってい
る。その中 でもいちごは、他 の野 菜 等 と比 べ防 除 基 準 が緩 く、残 留 農 薬 基 準 値 が高 い傾 向 があるためか、
残 留 農 薬 検 出 率 の高 いものの一 つである。しかし、それが実 際 に農 薬 が多 めに使 われていることに 起 因
するのか、それともいちごという作 物 において残 量 農 薬 量 が減 少 しに くいためなのか、実 態 を掴 むことがで
きていなかった。この度 あ る農 家 の協 力 を得 て、農 薬 散 布 後 一 定 期 間 が経 過 し たいちご及 びそ の農 薬
使 用 履 歴 を入 手 することができた。そこで今 回 、いちご農 薬 使 用 実 態 並 びに測 定 可 能 であった農 薬 の
散 布 後 の経 過 日 数 と 残 留 濃 度 の関 係 につ いて調 査 検 討 を行 っ たので報 告 する。また、同 時 にいちご
を水 洗 いしたりジャム加 工 を行 ったりすることで残 留 農 薬 量 にどのような変 化 が見 られるかについての検
討 も行 ったので、併 せて報 告 する。
【調 査 方 法 】
1 調査対象
いちご(静 岡 市 葵 区 産 )
平 成 19 年 12 月 から平 成 20 年 5 月 までの間 に農 薬 を散 布 後 、出 荷 する商 品 を定 期 的 (最 盛 期
には 1 週 間 毎 )に採 取 した。
2 使用農薬調査
検 体 を採 取 する際 には、農 薬 使 用 履 歴 及 び使 用 農 薬 製 品 名 を同 時 に収 集 した。
3 残留農薬調査
検 査 対 象 農 薬 は、使 用 農 薬 のうち、平 成 17 年 1 月 24 日 付 け 食 安 発 第 0124001 号 「食 品 に 残
留 す る 農 薬 、飼 料 添 加 物 又 は動 物 用 医 薬 品 の成 分 である物 質 の試 験 法 について」第 2 章 一 斉 試
験法
GC/MS 、LC/MS による農 薬 等 の一 斉 試 験 法 (農 作 物 )対 象 品 目 で、標 準 品 の入 手 可 能 な
8 種 (アクリナトリン、アセタミプリド、シフルフェナミド、スピノサド、テトラコナゾール、フェンピロキシメー
ト、ミクロブタニル、メパニピリム)とした。
【試 験 方 法 】
1 サンプリング
・未 処 理 サンプル(N)
生 鮮 サンプル 4 パック(約 1kg)について、ヘタを除 去 し 4 等 分 にした後 、対 角 をとった。
・水 洗 いサンプル(W)
(N)を流 水 で 10 秒 間 洗 った。
・ジャム加 工 サンプル(J)
(N)を均 一 化 してから同 量 の砂 糖 を加 え約 150℃で 3 時 間 煮 詰 めた。
2 前処理
当 研 究 所 SOP 試 験 法 に従 った。
3 分析方法
農 薬 散 布 後 から測 定 対 象 の農 薬 について分 析 値 が ND(0.01ppm 未 満 )となるまで経 時 的 に採 取 し
分 析 を行 った。全 てn=3 で実 施 し、(W)、(J)サンプルは、農 薬 散 布 後 の初 回 のみ行 った。
4 分析装置
ガスクロマトグラフ質 量 分 析 計 (GC/MS)
Varian 社 製 : Saturn 2000
カラム:VF-5(EGguard10m 付 )
液 体 クロマトグラフ質 量 分 析 計 (LC/MS)
Waters 社 製 :micromassZQ
カラム:Mightysil RP-18 150-2.0(3μm)
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【結 果 】
今 回 のいちご調 査 では、1 シーズンで 26 種 類 (内 訳 :
殺 虫 剤 (11 種 )、殺 菌 剤 (15 種 ))の農 薬 を延 べ 33 回 使 用
しており、病 害 虫 防 除 を目 的 として多 くの農 薬 を用 いてい
ることが確 認 できた。これらの農 薬 は一 斉 法 の分 析 対 象
品 目 で ない も のが 多 か っ た た め 、 実 際 に 分 析 で き た 農 薬
は 8 種 類 (内 訳 :殺 虫 剤 (4 種 )、殺 菌 剤 (4 種 ))延 べ 14 回
と限 られたものとなった。
【農 薬 散 布 後 の経 過 日 数 と残 留 農 薬 濃 度 の関 係 】
全 ての農 薬 で減 衰 傾 向 が みら れた。また、個 々の農 薬
により残 留 濃 度 が異 なることや、挙 動 に違 いがあることが
わかった。その一 例 を図 1 に示 す。(図 1 は見 やすいよう
に残 存 率 で示 した)減 衰 の要 因 としては、農 薬 自 体 が分
解 、 飛 散 又 は 蒸 発 をし た こ とや、 いちご の成 長 に よ り見 か
け上 の 単 位 重 量 当 た りの 残 留 量 が 減 ったこ と 等 が 考 え ら
れる。
【水 洗 いとジャムへの加 工 による残 留 農 薬 の変 化 】
一 例 を図 2、3 に示 す。今 回 の調 査 では、アセタミプリド
のように、水 溶 性 が高 く水 洗 いで残 留 量 が減 るもの、熱 に
不 安 定 でジャム加 工 時 に熱 で分 解 し残 留 量 が減 るものが
あった。水 洗 いをし たものでは、しなか ったものと比 べて 8
農 薬 中 7 農 薬 で効 果 が認 められ、減 少 率 は平 均 22%で
あった。このことから、表 面 に散 布 された農 薬 がその後 もあ
る程 度 表 面 に 残 留 し てい るこ とが 示 唆 さ れる。ジ ャ ムに加
工 した検 体 では、8 農 薬 中 7 農 薬 に効 果 が認 められ、減
少 率 は平 均 39%であったが、効 果 は農 薬 によりばらつき
がみら れた 。 ジ ャム 加 工 で は 熱 を 加 え る 工 程 が あ る た め、
熱 に不 安 定 な農 薬 については減 少 率 が高 かったのでは
ないかと推 測 される。
これ らの こ と か ら 食 べ る 前 に 水 洗 い や 加 熱 処 理 等 を す
ることは、残 留 農 薬 の量 を減 ら すこ とに一 定 の効 果 がある
ことがわかった。
【考 察 】
今 回 の調 査 の結 果 、農 薬 は、その使 用 方 法 を守 り適 正 に使 用 されている限 り、様 々な栽 培 要 因 が
加 わっても基 準 値 を超 えることはなく、安 全 に使 用 できることが示 唆 された。
さらに今 回 、日 常 業 務 で は 知 りえ ない 生 産 者 の 立 場 からの 農 薬 の 使 用 状 況 を知 る機 会 を得 た 。 農
家 の 方 は できる たけ 農 薬 を使 用 し ない よう 、 虫 や 病 気 が 発 生 し に く い環 境 づ くり を工 夫 し て いた 。必 要
時 もやみくもに使 用 するのではなく、薬 剤 耐 性 や残 留 に配 慮 して投 与 間 隔 をあける、生 物 農 薬 を使 う、
有 効 なものを最 小 限 に散 布 するなど、適 正 に使 用 している現 状 がわかった。
ハウス栽 培 のいちごは、他 からのドリフト等 の 心 配 が 少 な い 。一 斉 法 の よ う な ス ク リ ー ニ ン グ 検 査
のほかに、農薬使用履歴に沿った検査や個別試験で対応するなど、より柔軟で確実な対応が
有効であると考える。しかし今回のように一斉法のみによる検査であっても、一部を見るこ
とである程度その全体を把握できることがわかった。よって、農家の方が使用方法を守り適
正に使用しているかの確認は充分できるのではないかと考えられる。
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