13年3月19日議事録

転院問題を考える会 議事録
日時:2013年3月19日(火)
場所:東京医科大学病院 総合相談支援センター1階会議室
出席者:安仁屋衣子、伊藤正子、川村博文、品田雄市、高山俊雄、増田真由美、山名友紀
子
1. シンポジウム報告(平成25年3月17日(日)イイノホール) 「わが国における障害認定の課題と今後の方向性」主催:厚生労働科学研究費補助
金「障害認定の在り方に関する研究」研究班(研究代表者 江藤文夫)
・・この研究
は H.22 年~24 年の 3 年計画のもの。このシンポジウムはちょうど総括的な意味を
もつ。
報告はこれまでの障害等級の考え方の見直しの議論。例えば心臓ペースメーカーを植込む
と、これまでは自動的に1級となった。(そのまま放置すれば死に至ることが想定できる場
合は、1 級にするという考え)しかし、ペースメーカーの植込みには絶対適応と相対適応が
あって、絶対適応の場合は「1級障害該当で問題ない」とするものの、相対適応の場合は、
「1級申請は問題あり」として、障害等級を見直す方向を検討しているというもの。H.25
年度に取り敢えず心臓から考えて、徐々に他の障害に移るという認識と見た。その意味で
2013 年度(H.25 年度)の動向は目が離せないだろう。
【このシンポジウムから考えられること】
・ これはおそらく財政的な問題が背景にあって、1級でも歩いてる人、手術すれば働ける
人がいるという現状に対する前々からある議論にもつながるものだろう。
・ 医師によっては、「手術をして健康にしてあげてるのに障がい者を作ってるようで不本
意だ」と言う人もいる。手帳の捉え方も違っていて、権利としてではなく、何かサービ
スが受けられるからの「お恵み手帳」として受け止められているから、1級でも杖つい
て歩いてる人を見て批判する人がいる。
・ シンポジウムでも、
「相対適応の人へ1級を適用することに反対する声がたくさんある」
と言っていました。でも、「たくさん」っていったいどのぐらいなんでしょう。その根
拠は示されていません。
・ 医学モデルから生活モデルへ転換をしようとして、身体障害という視点からよりは、生
活障害という視点から捉えようとしているのだろう。
・ 日本の「障害」の指標に大きくは二つあって、一つは体そのものの障害をその部位を限
定して部位毎に指標が作られている事。もう一つは、その障害状態を投薬によって、あ
るいは新しい技術を導入してハンディの幅を少なくしようとするが、それでも残された
日常生活上の障害をトータルに捉え、生活障害として作られた指標がある。実際の社会
の制度としては前者を「身体障害者手帳」後者は「障害厚生年金」あるいは「障害基礎
年金」あるいは労働災害における「後遺症認定」がある。今回の厚生労働科学研究は、
この二つある日本独特の制度を、後者に一元化しようとする初めのものと言える。従っ
て、心臓から始めて、全障害部位に行きつくと考えられる。
・ 生活モデルへ転換するなら、障がい者手帳なんて廃止すべきではないかと思うのに、診
断書を書くというところでは相変わらず医師が登場しているのはおかしい。身体障害者
手帳制度があるのは日本だけで、これを生活障害中心で考えようとするなら手帳も廃止
すべきだ。しかし、手帳があるのは日本独自のことでこれをどう捉えるかもある。
・
「全国心臓病の子供を守る会」では、今年の 1 月、この研究結果をもとに厚生労働省との
交渉を行っている。そこで患者団体は、
「ペースメーカーを入れても、それで健康状態に
戻るわけではなく、絶えず薬の世話になって不安な日々を送っている。だから、埋め込
んだ時に手帳 1 級を認定されたら、ずっと、それを維持できるようにして欲しい」と言
った趣旨の要望をしている。これに対する厚生労働省の回答は「あなたがたのようにこ
れまで認定された方は、そのままで良いのです。これから認定しようとする人に対する
考え方です。」と述べ、あたかも分断しているような発言をしている。しかし、その後次
のようにも発言している。
「手帳の発行は地方自治体の権限ですから、仮にこれまで得て
いた等級についても、新しい基準で適用するといた場合、国としては、それは容認した
いと思っています。」と。これは、2000 年 4 月に施行した「地方分権一括法」で、国は
地方自治体が決めたことに、とやかく言うことが出来ない法律があることが、このよう
な発言になっているだけで、容認とかいう問題ではない。このようなやり取りを見てい
ると、明らかに来年度は実施するという事は間違いなさそうである。
2.事例検討・事例研究とは何か
報告者:川村博文さん
2年前に他県の医療ソーシャルワーカー協会での講演資料に基づいて、事例検討、事例
研究の方法についての説明。
<特徴>事例提出者が準備する資料は、ヒストリカル方式にまとめ、加えて独自のインシ
デントシートを必ず併用する。インシデント場面は報告者が最も重要な場面と判断した場
面を2〜3抽出する。インシデントシートは、一番左に<相談記録>を「事実経過」と「SW
の判断・対応」に分けて記述、真ん中列に<SW の判断・対応を観察しての言語化(観察語)
>を「(SW の)捉え方」「かかわり方・実行」、右列に<SW 理論・原理・モデル>に該当
する「価値・倫理・方法・技術」を記述するようになっている。事例は、検討会のメンバ
ーが読み上げ、本人は自分の事例なのに説明できない。そのことで、他者にわかりやすい
ように書くようになれる。
結果としては、これをやることで、ワーカーの捉え方、思いを暴く作業をすることになる。
そのことで、研究会メンバーと思いを共有することができるし、メンバーも納得度が高ま
り、その質疑応答のなかで新たな気づきを得たりすることができる。
<質疑応答>
○ 通常は、主訴があって、それに対してどう対応してきたか、ということが書かれている
が、この方法だと主訴というものはどこに書かれているのですか?
◎ それは、提出者がどの部分を切り取ってくるかによります。本人が検討したい場合
は主訴を出して、それの検討をすることもありますが、まったく出ない場合もあり
ます。
○ 制度との関わりについても同じことが言えるのでしょうか。例えば、制度に対する情報
が全く出てこないという場合があるのですか?
◎ そうです。これはあくまでも個人的な考えですが、この事例検討では、ワーカーが
一番出したいところを出して話し合うというもの。それがプラクティスのための事
例検討にとって重要だと思う。
○ インシデントを選んだ理由はここには書いてないが、それはないままにやるのですか。
◎ それは現在検討中で、実際は検討会の最中に確認をしたりします。
○ そうすると、他者からみたら、「こちらの方がインシデントなのではないか」と思うよ
うな箇所がでてくることもありますよね。
◎ その通りです。でも、今はまだそこまでの意見は出てきていません。自分自身はそ
れを狙っているんですが。
○ これを全部やるとどのぐらい時間がかかりますか?
◎ 2時間ぐらいです。
○都協会も事例検討会をしていますが、講師によっていろいろなやり方はありますが、た
いていはヒストリカル方式で事例が出されて、提出者が事例を読み、検討会のメンバーが
いろいろ聞いてグループの力で事例の内容をつかんでいくという方法ですが、この場合は、
あらかじめ講師と提出者が両者で完成させていて、それをインシデントとして検討会に提
出される、という方法ですね。
○こういうワーカーとしての思いを確認するものは、現場のなかで上司とやるよりは、職
場と関係のない方との中でやったほうがいいのかもしれませんね。
○最近は特に、事例を外部には決して出したがらないワーカーがいます。恥ずかしかった
り、何かを言われるのが怖いのだろうけれど、一度も提出しないワーカーはたくさんいま
す。
○でも、事例検討しないワーカーなんてありえない。個人情報保護とか言って出さないの
は傲慢。医者をみろと言いたいですよね。
○平日の夜ならまだ、参加するという人もいるが、土曜日、日曜日だとますます来ない。
○10年以上の人もまた事例を出さない。プライドが高くなるのか。
○もっと危機的なのは、協会をやめてしまう。夜間講座なら来るけど、GSV なんてことに
なってなら、辞めちゃおうって人もいる。
ところで、これをこの会で行うには、転院の業務に携わっている人が少ないのでかなり難
しい。
○ このメンバーは言いたいことを言うし、議事録にもなるということが外から入る人にと
って壁になっているのかもしれない。
○ 私たちが転院問題をやってから10年以上経っているので、最近の現場の話や困ってい
ることを聞きたいよね。議事録にしないという条件で、テーマをオープンにして呼びか
けたらどうだろうか。
○ 本日は時間がないので、次回はそのテーマをみんなで出し合って検討するところから始
めましょう。
次回は、4月16日(仮:日にちは未定)(火)19時より 会場も未定。