目 次 ENTASIS 2009.11 第52回建築士会全国大会 報告 出羽の国から拓く、建築士の新時代 安藤 直和 やまがた大会に参加して 佐々木世希 ・・・・・・ 1 建築技術研修会 報告 ・・・・・・ 3 建築とリノベーション 報告 ・・・・・・ 4 木造3階建住宅「振動台実験」見学会 報告 「驚愕の倒壊実験」 ・・・・・・ 5 建築技術セミナー 案内 ・・・・・・ 9 研修旅行 案内 ・・・・・・ 10 忘年会 案内 編集後記 ・・・・・・ 11 「出羽の国から拓く、建築士の新時代」 ∼市民と支えあう地域づくり∼ を大会のテーマに山形にて開催された 第52回山形大会に参加して。 今回は、大阪地区に長期出張をしている合間を利用して、伊丹空港を出発 羽田空港に て愛媛よりの皆さんと合流。 今大会においては、新居浜支部より佐々木副支部長が連合会会長表彰を受賞されました。 “おめでとうございます“ 初日は、東京から山形まで、丸1日のバス 疲れた!! 温泉宿で身体を休め英気倍増。 二日目は、旧県庁舎(大正5年建設)及び今年話題の最上義光歴史館、山形城跡などを 見学後 全国大会に参加。 最終日は、銀山温泉街: 大正ロマンをただよわす木造三層・四層の旅館が軒を連ねる温泉街の散策と 本山慈恩寺本堂:桁行7間、梁間5間その4周に1間通りの縁をめぐらした大堂で、屋根 は入母屋造り、茅葺き、外観は重厚で有る。 天平18年(746)印度僧婆羅門僧正創建、現本堂は元和4年(1618)再建。 (国重要文化財) 身舎の柱、縁通りの柱ともに円柱で、縁通りは吹放ちとなる.虹梁上の蛙股、木鼻類、妻 飾りの懸魚など細部の装飾には桃山時代の様式的特徴がみられた。 大阪地区の雷雨(雲上から雷光を見たのは、初めてだった)などにより大幅な遅れがあ って松山空港に着陸したが、近鉄乗合シャトルに乗り遅れ、JRにて夜中過ぎに帰宅。 全国大会に参加しての報告です。 安藤 直和 第52回建築士会全国大会・やまがた大会 に参加して 佐々木世希 山形は、北は新庄神室連峰、東は蔵王連峰、南は飯豊吾妻連峰、西は朝日連峰に囲まれて、月山、 羽黒山、湯殿山を崇める個性豊かな地域である。我々山好きにはこたえられない所である。エドウィ ン・O・ライシャワー博士が山形を訪れ「山の向こうのもう一つの日本」と表現したように、美しい風景・ 自然が残る地域である。 この山形での建築士会全国大会に参加を決めたのは、幸運にも連合会会 長表彰を頂けるということ以外に、今テレビで人気の「天・地・人」直江兼嗣ゆかりの地でもあり、少し この地を見てみたいと思ったことも一因である。 10月16日愛媛会の出発より1日遅れて、一人山形に向かった。会場である山形総合スポーツセン ターには昼前に到着。すでに会場は熱気に包まれていた。 まちづくり交流プラザでは、他県の建築士会による、まちづくり・ものづくり・くらしづくりの展示があ る。この会場で特に目を引いたのが、地元企業の模型展示コーナーに置いてある、3点のお寺の模 型である。すばらしい出来映えに模型の前で記念撮影をする会員で大変な混雑であった。同じ会場 のステージでは青年建築士の活動報告について熱心に論議 をされ、山形にちなんだクイズの出題も交えながら、会場を 巻き込み随分にぎやかであった。 式典はというと、例年のごとくどこの大会もあまり変化は見 られないが、やはりお国自慢、その地域らしさを感じるのは、 大懇親会である。宴たけなわ「花笠音頭」が始まるや次年度開催県の佐賀会を巻き込み、愛媛会も 一部入り乱れての正調花笠踊りで会場は踊り一色。エンドレスな宴となり、会員一同楽しい時間を共 有することが出来た。 その夜は、今回会長表彰を同時受賞された今治支部の 山口さんご夫妻と、山形の郷土料理を食べながら日が変 わるまで、花笠音頭の余韻を味わった。 17日は愛媛会のツアーに合流。どことなく夢千代日記風 な銀山温泉街散策や、東北随一の巨刹・本山慈恩寺など の見学の後、松山への岐路についた。今回は、久しぶりの 全国大会参加ではあったが、刺激的な二日間であった。 建築技術研修会の報告 岩本 純一 去る 10 月 22 日(木)に四国電力㈱新居浜支店 営業提案センターの河江様を講師に『太陽 光発電設備について』の研修をして頂きました。 当日は、設計事務所・工務店・住宅メーカー・ 官公庁関係など多くの方が参加されました。 まず、 『今なぜ太陽光なのか?』の話があり、 もし地球全体に降り注ぐ太陽エネルギーを 100%変換できるとしたら、 世界の年間消費エネ ルギーをわずか 1 時間でまかなえるほどの巨大 エネルギーであり、枯渇する心配がないクリー ンエネルギーであることが説明されました。 また、太陽光のメリット・デメリットの話 もあり、設備利用率が低いため発電単価が 46 円程度になり、まだ原子力発電より 10 倍ほどのコスト高になっています。その後 は『太陽光のしくみ・太陽電池の種類・シ ステムについて』の話がありました。 最後に、 『新しい買取制度』の説明がありました。11 月からすでに設置している家庭も対象に 48 円/kWhで買取がスタートしました。金額は 10 年間固定で、設置した年度によって金額が 変わるそうです。 (約 5 年で半額まで引き下げる予定)この制度は国民全員参加型で標準家庭に おいて数十円から 100 円程度の負担が予定されています。 資源の乏しい日本にとっては無限のエネルギーであり温暖化防止に貢献できる設備です。将 来の子供たちの為にもみんなで協力していきましょう。 建築とリノベーション 日土小学校保存改修工事の意義 講演会参加報告 柚山一利 今年6月に保存改修工事を終えた八幡浜市立日土(ひづち)小学校校舎を通じ て建築のリノベーション(保存再生)について考える講演会が 10 月 31 日に愛媛 大学であり、改修の意義や手法などを学んできました。 同校舎は、八幡浜市職員だった建築家(故)松村正恒氏が設計を行い 1956 年 に中校舎、1958 年に東校舎が完成し、1999 年に「日本のモダニズム建築 20 選」 に選ばれ 2007 年には、市有形文化財に指定された建築物であります。 今回の工事は、国の重要文化財指定を目指し外見をほぼ変えない改修を行った そうです。 改修計画の責任者を努めた鈴木博之 東京大学名誉教授が、改修には、最小限 の工事と、いざとなれば取り外せる可逆 性の2点が重要と前置きし、国内外の建 物の改修例と日土小の改修をスクリー ンで比較し「同小の改修は、保存意識を 念頭に置き、大切に行われたのがわか る」と説明されました。 改修工事の設計を担当した和田耕一、武 智和臣 両氏に同校の 50 年前と改修後の 写真を比べながら保存改修の工法などを 紹介していただきました。 続いて、改修後の同校を見学された建築 家の青木淳氏が特別公演を行い「松村氏独 自の世界が校舎細部に表現されている。改 修した部材の新旧区別がつきにくい点が 面白い」と評価されました。 最後に、鈴木博之、花田佳明(神戸芸術 工科大学教授)、青木淳 各氏による鼎談が 行われ、保存再生の考え方を多方面から話 し合われていました。又各パネリストたち の趣味趣向まで発表され、にぎやかな内に 終演となりました。 (一部愛媛新聞の記事を参考としました) 木造3階建て軸組工法住宅の振動台実験の見学会に参加して 「驚愕の倒壊実験」 柚山 一利 10 月 27 日兵庫県三木市の(独)防災科学技術研究所(E−ディフェンス)において、 木造3階建て軸組工法住宅の振動台実験の一般公開がありましたので見学に行ってきま した。この実験は、長期優良住宅の認定基準に適合する耐震等級2の性能を有する建物 と、耐力壁量は耐震等級2相当を保有し柱頭柱脚の接合部性能が不十分な場合の2棟の 試験体(実物大)を振動台に並べ同時に加振を行うものです。 写真中の左側の建物 (試験体1)が耐震 等級2の性能を有す る建物であり、右側 の建物(試験体2) が柱頭柱脚の接合部 性能が不十分な建物 です。 この時点では、この 後起こる驚愕の出来 事など微塵も感じら れませんでした。 (試験体1) (試験体2) 【実験概要】 平面プランは、試験体1・2とも共通です。又振動台に用いる地震の入力波は、地震 による観測記録波を用いると特定の周期を持つ建物のみが大きく揺れる恐れがあり、こ れを避ける為に人工的に作成した地震波としているそうです。今回の実験では、建築基 準法で想定する 1.8 倍の地震力を試験体の短手方向のみに対して一方向の加振を行いま した。 地震力を 1.8 倍とした経緯は、耐震等級 2 の性能は、基準法の 1.25 倍の地震力に耐え る力を必要としており、この試験体の壁量は、基準法の約 1.44 倍を確保していること、 又、現実の建物は、それよりも若干強くできることを勘案して基準法の約 1.8 倍として いるそうです。 この図面から耐力壁の構成として筋交のみを取り上げて計算を行ってみたところ必要壁量 と存在壁量の比較ですが、X方向(梁間方向)は1階から 1.47 倍、1.76 倍、1.77 倍でY 方向(桁行方向)は1階から 1.30 倍、1.29 倍、1.55 倍と両方向とも上階に行くほど割合 が大きくなっています。剛性率は、やはり上階に行くほど大きくなり ら 0.58、0.96、1.45 であり X方向では1階か Y方向は1階から 0.71、0.85、1.42 となっております。特 に1階のX方向では、基準法で必要な、0.6 を下まわっております。 (筋交のみで評価して いる為かも知れません)偏心率では、1階のX方向が 0.043 と一番小さく2階のX方向が 0.105 が最大でありますので、偏心に関しては、バランスの取れた建物であるといえそう です。 実験の状況を簡単に説明します。(私見をはさんでおり ますがご容赦ください。詳しくは http://www.youtube.com/watch?v=4E4PyyKFRYs&fe ature=channel にて動画をご覧ください。) 実験開始から約10秒後に試験体2(写真右の建物)のアンカーボルトが破断を起こし、 基礎の立ち上がりが無く土台から下が平滑なため、ちょうど免震構造のような挙動を起こ し、1階接合部の弱い部分の柱が傾くなど「全壊」並みの損壊が見られました。そのころ 試験体1の建物は、持ちこたえていたようですが15秒を越えたあたりから1階が傾き始 め20秒過ぎに倒壊に至りました。試験体2の建物は、倒壊には至りませんでしたが、も し基礎の立ち上がりがあれば、GLとの段差は400以上あるはずですから、倒壊に近い 状態になったと思われます。建築基準法の 1.8 倍の地震力を与えたために倒壊したという 結果のようですが、上下階の剛性のバランスにも問題の一端があったと思います。 神戸新聞に速報としてコメントが出ておりましたので記載しておきます。 優良住宅は、通常基準の 1.25 倍以上の耐震性が必要とされるが、今回は 1.8 倍の 地震動を与えた。実験グループの大橋好光・東京都市大学教授は「1.8 倍まで耐え られると思ったが、壁が弱かった。基準はクリアしたが、今後データを詳しく分析 したい」と説明した。 今後、 (独)防災科学技術研究所などからこの実験の考察が、発表されると思われます。 それを待つこととします。 http://www.bosai.go.jp/hyogo/index.html 今回見学に行った(独)防災科学技術研究所、兵庫耐震工学研究センター (E−ディフェンス)の紹介をします。(HPより抜粋) 実験棟の外観 面積約 5,200 ㎡、高さ約43m 1995 年兵庫県南部地震でビル、木造家 屋、橋、道路、港湾など多くの構造物が未 曾有の被害を被りました。これを契機に、 今までの構造物の耐震性の評価方法を見 直す必要が認識され、その方向性の一つ に、構造物の破壊過程を調べることが重要 とされました。そのためのデータを取得で 2006 年 10 月に振動台実験を行った実大 きる既存の施設には、十分な性能を有した 3層鉄筋コンクリートの試験体を背景 施設はなく、新たな施設建設が必要となり ました。 2005 年4月からの研究開始に向けて建設された実験施設が、本研究センターの実大三次 元震動破壊実験施設(E−ディフェンス)です。 これまでの震動台は、小・中規模のものについては世界中至る所に数多く見られますが、 E−ディフェンスは、その名前から実大・三次元・破壊というキーワードで特徴づけられ、 実物大の構造物を破壊させるために必要な性能を有しています。そして、E−ディフェン スにおける実験以外に、実物と同じ大きさの構造物が壊れていく過程を調べる方法は、実 質的にないといえます。これが、E−ディフェンスを使った実験研究の大きなメリットで あり、防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センターは、究極的には「大地震から構造物 被害軽減に如何に貢献するか」を目指し、研究に取り組んでいます。 http://www.bosai.go.jp/hyogo/index.html 建築技術セミナー 案内 日時 :平成21年12月10日(木) 18:30∼19:45 場所 :新居浜市民文化センター 3階 視聴覚室 テーマ : 「コンクリート表面保護工法の比較検討」 内 容 :コンクリート構造物には、様々な原因によって不具合が生じます。 「鉄筋コンクリー ト造建築物の劣化診断技術指針・同解説」では劣化現象として中性化・鉄筋腐食・ ひび割れ・漏水・強度劣化・撓み・凍害及び表面劣化をあげています。 劣化現象と原因の間には因果関係があり、 単一の原因/結果だけでは論じきれません。 今回のセミナーでは、複合的な劣化抑制に必要な表面処理工法について表面被覆工法 (有機系・無機系等)及び表面含侵工法(シラン系・珪酸系・ガラス系等)を「コン クリート表面保護工法比較検討表」を用い、解り易く解説していきます。このセミナ ーを受講していただくことで、コンクリート造建築物の美観確保及び維持補修費の 軽減に役立てていただければと思います。 講師 :横見 知郎(クリスタルコンクリート協会中国・四国支部会長) 申込先 :建築士会新居浜支部事務局 宮﨑 090-1170-5163 新居浜市役所 建築住宅課 越智 0897-65-1277 申し込み締め切り:12月4日(金) 参加は無料ですが、資料準備の都合上、受講予約が必要です。 建築士会活動は皆様からの会費により運営されています。 2009年度会費の納入にご協力下さい。 研修旅行 案内 日程:平成 22 年 2 月 6 日(土) 7 日(日) 行先:北九州・福岡方面 2 月 6 日(土) 6:30(予定) 新居浜市役所集合 ↓ 貸切バスにて移動 ↓ 北九州 「門司港レトロ」見学 ↓ 貸切バスにて移動 ↓ 福岡着 チェックイン ↓ 「キャナルシティ博多」見学 ↓ 食事会:キャナルシティ博多近辺にて検討中(現地解散) 2 月 7 日(日) 8:30 集合 ↓ 貸切バスにて福岡市内見学 ・ワールドネクサス ・ホテルイルパラッツォ「アルドロッシ」 ・博多小学校「シーラカンス」 ・福岡銀行本店「黒川紀章」 他 等を検討中 ↓ 21:00 頃 (予定) 新居浜着 解散 参加費:30,000 円(予定) 締切:12 月 17 日(木) 連絡先:株式会社 ハウジングプラス 政石 信行 tel:090-2858-1547 参加希望者の皆様には後日旅行日程表をお渡しいたします。 忘年会のお知らせ 本年も残り少なくなってきましたが、会員の皆様の親睦をはかるととも に、来年への飛躍の糧としていただくため、恒例の建築士会新居浜支部忘 年会を行います。年末をひかえご多忙中とは存じますが、皆様お誘い合わ せの上ご出席いただきますようご案内申し上げます。 記 日時:12月17日(木)18:30∼20:30 場所:常富寿し 新居浜市八雲町9−4 TEL:0897−33−1615 会費:5,000円(税込) なお、駐車場が狭いため、出来るだけ車での参加はご遠慮下さいます様 宜しくお願いいたします。 ※申し込み期限:12月11日(金)迄 連絡先:建築士会新居浜支部事務局 新居浜市役所建築住宅課 宮﨑 越智 090−1170−5163 0897−65−1277 編集後記 季 節 も晩秋 と な り、山 々 も 赤や黄 に 美 しく色 づ き 、緑と の コ ント ラ ス ト が 素晴ら し い 今日こ の 頃 となり ま し たが、皆 様 はいか が お 過ご し で し ょ うか? 早 い もので 、今 年も残 す と ころも う 1 ヶ月を 切 り 師走と な り ました 。 建 設 業 界は非 常 に 厳しい 一 年 だった と 思 われま す が 、来年 は 如 何な も の で し ょうか 。建 築士会 の 行 事では 技 術 セミナ ー 、忘年会 ま た 来年 の こ と を 言うと「 鬼が 笑う 」と言 いま す が、2月 初 め には研 修 旅 行もあ り ま す ので、多 く の方々 に 参 加して 頂 き 、建築 士 会 の発展 に ご 協力 を お 願 い いたし ま す 。 編集委員 宮﨑秀俊
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