KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL Ce系の多重極相互作用と電子秩序(2002年度基研研究会「 軌道自由度を持つ強相関電子系の理論の進展」,研究会報 告) 倉本, 義夫 物性研究 (2003), 79(6): 988-989 2003-03-20 http://hdl.handle.net/2433/97468 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 研究会報告 Ce系の多重極相互作用 と電子秩序 東北大 学 理学部 倉本義夫 1 希土類元素 R を含む立方晶ホウ化物 RB6では,Rに含まれる f電子の自由度である軌道 とスピンがお互いに影響 しあい,磁気秩序を伴わない軌道秩序や,複雑な磁気構造が現れ る。RB6のうち,R あた り 1個の r電子を持つ Ce B6が最も詳細に研究されている。Ce B6 の結晶場基底状態 r8は 4重に縮退 している。 これまでの Ce B6における相互作用の研究 では,大川の S U( 4 )モデル 【 1 ]が先駆的である。大川は,4重縮退 した状態の交換が状態 によ らず一定であるとする仮定をおいて,Ce B6の Ⅰ Ⅰ相の磁場中相図の特徴 を説明 した。 斯波 ら 【 2 ]は,最隣接サイ トが 4回軸対称性 を持つ ことに注 目して微視的分析 を行 い,大 川のモデルを一般化 している。 これ らの研究では,Ceモーメン ト間の相互作用が 4/0の 中間状態を介すると仮定 している。このため有効スピン間の相互作用には異方性が現れな B6の Ⅰ Ⅰ Ⅰ相 の磁気パター ンを説明するために,楠瀬 ・倉本は,異方的相互作 い。一方,ce 用特に擬双極子相互作用の重要性を指摘 している 【 3 】 。そ こで,先方的相互作用が出現する B6における Ⅰ Ⅰ Ⅰ相の特徴を説明 し,サイ ト間相 微視的機構に興味がある。本講演では,Ce 互作用に関する最近の結果 [ 4 ]を報告 した。 Ce B6の I I相は 3. 2K 以下で現れ,4 f電子の四重極が 27 T / a( a:格子定数)を単位 とし 1 /2, 1 / 2, 1 /2)の波数 と r5対称性で秩序化する。温度を 2. 4 K以下にすると,さらに 2 て( 次転移で I I I相に秩序化するoⅠ I I相の磁気的秩序パ ラメータが小さい領域で,Gi nz bur g- Landau( GL)流の分子場理論を展開すると,有効ハミル トニアンのパ ラメータの大きさと 秩序パター ンの関係が求 まる。楠瀬 ・倉本は, このようにして I I I相の ( 1 /4, 1 /4, 1 / 2)檎 造が安定化するためには,次隣接サイ ト間に擬双極子相互作用があればよいことを論 じた 聞。すなわち擬双極子相互作用の形を, , 7 , I j 1 7 , I , : ) /1 2 Kl , " I- -Kr ( 6"ノー3 (1 , とする。 ここで, nlj はサイ ト再 を結ぶ方向の単位ベク トル,T, T'は x ) , y,Z成分をあ ら ,r4u2 は双極子 と八極子の混ざった もの,r5u わすorは立方晶点群の表現を意味 し,r4ul は純粋な八極子に対応するo Krが正であれば, nij方向にはモーメン トがそろいやす く, それに垂直に向いたモーメン トは反平行になったほうがエネルギ-が下がる. これは電気 双極子の配置にともなるエネルギーと類似 しているので擬双極子 と呼ぶ。一方,〟Fが負 であれば,ni j方向に反平行のモー メン トが好 まれる。 I I I相の配置は 1i ' 4 V>0,K5 u<0で好まれるO実験的には,異なるパター ンの転移が 1 . 5T程度の磁場で起 こるので,両者のエネルギー差は単位格子あた り 1 K程度 と,非常に 1Emai l :kur amot o@c mpt ・ pl l yS. t ・ 01 1 0ku. a c・ J P - 988 - 「 軌道自由度を持つ強相関電子系の理論の進展」 小さいはずである. これか ら,K4u と I K5 uI は同程度の大きさであることが推察される。 GL理論か ら,おおむね実験を説明するパ ラメータが妥当な範囲で存在することが確認さ 。 . 7 5 La 。 . 2 5 B6で観測されている Ⅰ Ⅴ相は,Ce B6との微妙なパラメータの違 れた。また,Ce 5 uの八極子が安定化されている状態 と解釈される 【 3 ] 。 いで r 異方的交換相互作用が出現するためにはスピン軌道相互作用が重要であるoAnde r s on mode lのように混成を介 して局在電子 と伝導電子が相互作用する場合には,中間状態に異 2 ] ,中間状態 として 4 JOのみが取 り 方性がないとこの効果が現れない。斯波 らの理論では 【 入れ られた結果,有効スピン間の相互作用は等方的になっている。一方,光電子分光逆光 電子分光などによって,4 JO, 4才2の準位を観測すると,フェルミ面をはさんで同程度の励 2-3 e V)を持 っている。そ こで我々は,4 f2の中間状態 として Hund則基 起エネルギー ( 4 ] 。これは異方性を最 も強調 した結果になるはずで 底状態 J-4を考慮 した計算を行った 【 ある。 この要素を含んだモデルとして以下のような最 も単純なものを採用 した。伝導帯は 平面波 とし,f電子 とは等方的な混成相互作用 V をする。f電子の基底状態は 471 , ∫ -5 / 2 であり,混成によ り f電子が出ていけば 4fO ,伝導電子が 4f殻に入って くれば 4f2 , J-4 の状態になる。中間状態の最低励起エネルギーをそれぞれ Eo , E2とすると,サイ ト間相互 作用は V4/( EiEj) ( i , i-0, 2 )でスケールされる。 この因子を取 り去 った残 りの部分は 4f 殻の対称性を反映 した行列要素で決め られる。詳細な計算の結果,Ce B6の最隣接サイ ト 及び次隣接サイ ト間の相互作用 として,K4u と K5u に対応するサイ ト間相互作用が,等 方的な相互作用 とあま り変わ らない大きさで現れることがわかった 【 4 ] 。 最近我々は RB6系で実現する ( 1 /4, 1 /4, 1 / 2)長周期構造を説明するには,バン ド構造の 特徴特にバ ン ド間遷移による RKKY型相互作用が重要であることを指摘 している 【 5 ] 。こ の構造は,軌道 自由度のない GdB6で も観測 されている。さらにサイ ト間相互作用には, 混成の高次効果か ら来るものとともに,4 f 5 dのフン ト則交換相互作用に由来するものが ある。特に GdB6などでは,後者が支配的と考えられる。RB6系の秩序温度の系統性を de Ge nne s別やその一般化で理解することが難 しいのは,混成 と交換の両方の相互作用が効 いているためと考えられる。 これ らについて,直感的な描像を作ることができれば,軌道 自由度の効果について も理解が深まると期待 される。 参考文献 l l ]F・J・Ohk a wa・J・Phys ・Soc.Jpn.52( 1 9 8 3)3 897・ ,i b i d・54( 1 985)39 09・ [ 2]HIShi ba,0・Sak aiandR・Shi i na・ .J・Phys ・Soc・Jpn・68( 1 99 9)1 988・ 聞 H・Kus unos eandY・Kur amot o:J・Phys ・Soc・Jpn.70( 20 01 )1 751・ [ 4]G・Sa , kur aia ndY・Kur amot o,8 aXC3att heAnnualme e t i ngoft hePh ys i c alSoc i e t y ofJapan,Se pt e mbe r ,2002. 【 5 】Y.I (ur a ・ mot oa ・ ndK.Kubo‥J.Phys .Soc.Jpn.71( 20 02)26 33とその引用文献。 -9 8 9-
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