PowerPoint プレゼンテーション

2006年12月1日
物性研短期研究会
JPSJの現状と課題
JPSJ 編集委員会
斯波弘行
JPSJの最近の数年間の状況をレビューする。
JPSJでは、学術誌の出版、閲読などの形態が電子的手
段に移行している状況を踏まえ、この2年間に急ピッチ
で改革を進めてきた。
その結果、電子版のDL数が順調に伸び、JPSJの存在感
は
着実に増しているよう見える。
それにも拘らず、投稿数は伸びていない。これはJPSJの
改革が足りないことを示しているのか?それとも他に
原因があるのであろうか?
2004年4月におけるJPSJの状況
すべての面において海外誌に対して立ち遅れていた。
1.閲読はすべて郵便
2.電子版は1986年位より最近の論文だけに限られる。
3.掲載可否の決定は月1回の編集委員会で決める。
4.閲読について研究者の不満があった
これらが投稿数の減少という「JPSJの危機」の原因である
と思われていた。
編集、閲読でのこの2年半の改革
1.適切な閲読者の選択と早い閲読
編集部のデータベースに過去の閲読記録を持ち、それを活用し
ている。編集委員と編集委員長で迅速に判断。
2.掲載論文の質を重視した判断を閲読者にお願いしている。
3.論文にも依るが、信頼できる外国人(アジア、欧米)にも閲読を依頼
4.ウェブによる閲読(2006年6月から)
現在では、海外誌と比べ、出版は早い。
5.創刊号からの電子版の完成(2005年7月)
6. JPSJのHPをなるべく魅力的にするよう編集部で心がけている
7. 「注目論文」を選び、電子版で宣伝。プレスに紹介文を送っている。
また、会誌に「JPSJの最近の注目論文から」という記事を掲載を開始
(2006年2月から)
特集 Special Topics の出版
新しい分野の論文を増やすための呼び水
日本が得意とする分野の研究者によるレビュー
海外の研究者もふくめた、公平で、国際的な視点での編集
別刷を集めた別冊を作る可能性あり(物理学会の論文選集の代
わりになる)
1.
Kondo Effect – 40 Years after the Discovery (2005.1)
2.
Photo-induced Phase Transitions and their Dynamics (2006.1)
3.
Organic Conductors (2006.5)
4.
Neutron and X-ray Scattering at the Frontiers and Gen Shirane (2006.11)
5.
Frontiers of Novel Superconductivity in Heavy Fermion Compounds (2007.5?)
6.
Elementary Particle Physics : The Standard Model and Beyond (2007. 10?)
7.
Spintronics (2008.1?)
年に2つ位のペースで出版を予定
日本人の海外誌への投稿とJPSJへの投稿 の関係
外国誌に掲載された日本人を含む論文数とJPSJ論文数
900
800
700
600
500
JPSJ
PRB
PRL
J.PhysCM+C+F
400
300
200
100
佐宗哲郎氏作成
2005
2000
1995
1990
1985
1980
1975
1970
0
年
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
投稿論文数
1989
1988
1987
1986
1985
1984
論文数
JPSJ 投稿/掲載論文数の推移
1100
掲載論文数
1000
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
JPSJ分野別投稿数の推移
220
200
180
投稿論文数 (編)
160
140
120
100
80
60
40
20
0
LT Both
2006
2002 2002 2002 2002 2003 2003 2003 2003 2004 2004 2004 2004 2005 2005 2005 2005 2006 2006 2006
年10
年Q1 年Q2 年Q3 年Q4 年Q1 年Q2 年Q3 年Q4 年Q1 年Q2 年Q3 年Q4 年Q1 年Q2 年Q3 年Q4 年Q1 年Q2 年Q3
月
2
5
1
1
1
1
2
3
2
1
2
2
4
2
5
1
5
2
1
1
LT Theory(Other)
7
2
3
5
2
6
4
4
3
2
5
5
5
6
2
4
3
3
2
0
LT Theory(Japan)
23
22
14
25
18
26
20
28
24
25
16
30
23
34
26
27
20
17
20
8
LT Exper.
21
22
22
18
14
19
25
14
23
29
30
12
33
34
28
30
16
20
20
7
FP Both
5
10
6
5
11
14
10
14
9
8
11
4
8
8
13
4
8
13
5
3
FP Theory(Other)
24
19
20
24
22
26
31
26
32
37
33
27
26
33
19
21
21
17
29
10
FP Theory(Japan)
53
60
44
56
54
55
63
45
73
63
48
63
42
39
60
48
49
51
60
21
FP Exper.
30
38
43
50
49
47
47
42
48
42
37
34
41
47
36
36
43
43
45
11
国内/海外は代表著者の所属機関の国名で分類した
国内
海外
2006-10
2006-07
2006-04
2006-01
2005-10
2005-07
2005-04
2005-01
2004-10
2004-07
20000
2004-04
2004-01
JPSJの論文のダウンロード数は順調
に増加
25000
JPSJ
15000
10000
5000
0
国内
海外
2006-10
2006-07
2006-04
2006-01
2005-10
2005-07
2005-04
2005-01
2004-10
2004-07
70000
2004-04
2004-01
JJAPのダウンロード数の増加
80000
JJAP
60000
50000
40000
30000
20000
10000
0
JPSJのDLの多い国は?多い大学は?
JPSJに掲載された優れた論文の例
線形応答の久保理論 [ 総引用数:3946 ]
R. Kubo: J. Phys. Soc. Jpn. 12 (1957) 570
骨のピエゾ効果(海外の医学分野で有名)[402]
E. Fukada and I. Yasuda: J. Phys. Soc. Jpn. 12 (1957) 1158
不純物ドープ半導体での負の磁気抵抗(Anderson局在が隠れていた! )[94]
W. Sasaki: J. Phys. Soc. Jpn. 20 (1965) 825
戸田ソリトンの発見 [354]
M. Toda: J. Phys. Soc. Jpn. 22 (1967) 431
スピンの揺らぎの先駆的な論文 [414]
T. Moriya and A. Kawabata: J. Phys. Soc. Jpn. 34 (1973) 639
量子ホール効果の先駆的論文 [180]
T. Ando, Y. Matsumoto, and Y. Uemura: J. Phys. Soc. Japan 39 (1975) 279.
マンガナイトの巨大磁気抵抗 [525]
Y. Tokura et al.: Giant Magnetotransport Phenomena in Filling-Controlled
System: La1-xSrxMnO3, J. Phys. Soc. Jpn. 63 (1994) 3931
Kondo Lattice
ラダー化合物の超伝導の発見 [431]
M. Uehara et al.: Superconductivity in the Ladder Material Sr0.4Ca13.6Cu24O41.84,
J. Phys. Soc. Jpn. 65 (1996) 2764
今年の投稿論文から見えるJPSJへの期待
1. 高精度の「光格子原子時計」(東大:香取グループ)
2.超音波による Si 中の欠陥の検出 (新潟大:後藤グループ)
3. Yb 化合物の量子臨界点はどこに? (フランス: Flouquet グループ)
JPSJのインパクトファクター
分野による雑誌のIFの違い
JPSJ
Phys. Rev. B
JPSJの投稿論文の傾向
1. 物性物理(電子状態、超伝導、磁性)の実験と理論の論文のレベルは高い。
希土類化合物(◎実験、◎理論)
有機導体(○実験、◎理論)
遷移金属酸化物( △実験、△理論)専ら海外誌?
半導体、ナノマテリアル( Χ実験、△理論)
2. 統計力学
非平衡統計力学(△)
ソフトマター (Χ)
3. 量子情報などの新分野(Χ実験、Χ理論)
4. 量子光科学(△実験、Χ理論)
5. 素粒子物理、原子核物理(Χ)
6. 流体、プラズマ(Χ)
◎:投稿が多い
Χ:投稿が少ない
会議録はJPSJ Supplement から出版
好評の既刊会議録の例
International Conf. on Strongly Correlated Electrons with
Orbital Degrees of Freedom (仙台、2001.9)
最新刊
Advances in the Physics and Chemistry of Actinide
Compounds (原研、2005.9.27-29)
出版予定
Novel Pressure-induced Phenomena in Condensed Matter
Systems (福岡、2006.8.27-29)
電子版はフリーアクセス。
特色ある国際会議の会議録に最適
JPSJをめぐる厳しい財政状況
1. JPSJは科研費の補助を受けている。
収入:科研費 約35%
投稿料 約25%
購読料 約40%
今年、財務省の会計監査があり、JPSJ(物理学会)は問題なかったが、一部の
雑誌で不適切な補助金処理があることが判明し、新聞に大きく報道された。このため、
今後科研費が減額される可能性があり、なるべく早く自立することが望ましい。
2. 大学の法人化のため、図書費削減の影響がある。
購読の形態について検討が必要である。
これらの問題については、物理学会の刊行委員会(高山委員
長)とIPAPと検討しているが、学術会議などのコミュニ
ティのサポートが望ましい。
まとめ:JPSJの存在意義
1. 物性実験の研究者は優れた成果を発表する場の確保が重要であろう。
(Bednorz-Muellerの例)
高エネルギ−実験の場合には大きいグループの研究だから、閲読で
問題が起きる可能性は少ないが。
2. 他の研究者の仕事を評価する気風を育てるべきである。海外誌崇拝は、結局、
自分の評価に自信がない証拠ではないか。
3. 過度の海外誌依存は研究スタイルにも影響する。
PRLは「PRL向きの書き方」をする論文が掲載され易い。
4. 「国内誌への投稿を研究費配分の条件にすべきだ」という声がある。
私自身は研究者の自主的な判断に任せたいと思っている。
5. 財政もふくめて、JPSJは日本の物性の研究者のサポートを受けているし、
今後もJPSJが必要であろう。