長野市・上水内教育課程研究協議会(外国語活動) 動 - 長野県

◆◆現場レポート No.10◆◆
長野市・上水内教育課程研究協議会(外国語活動)
動
学校の先生方の研修は、数多くありますが、その中でも、全県のほとんどの先生方が一斉
(期日は、郡市によって異なります)に集まって、授業を参観しながら研修を積んでいるの
が教育課程研究協議会です。今回、10 月 11 日に長野市立徳間小学校で行われた長野市・
上水内教育課程研究協議会を取材させていただき、先生方の研鑽の様子をレポートします。
■先生方の目が一斉に光り始める?
会が開催され、具体的授業実践をもとにした
研究授業を見学していた時のことです。そ 教育課程の編成及び実施、評価にかかわる研
れまでは、授業を担当している先生の話に聞 究協議が行われます(H24実績:267会場
き入っていた先生方が一斉に目を輝かせ始め、 12,851人参加)。会場となる学校での研究授
メモをとるスピードが速くなり、子どもたち 業をもとに、授業についての意見や、日頃、
への距離感も一斉に近くなりました。
先生方が教科で悩んでいることや解決策など
授業で子どもたち同士の会話(インタビュ を地域の先生方で共有し、研究を重ねている
ー)が始まったときのことです。
ものです。
なかには、子
今回見学させていただいたのは、長野市・
ど も に 顔 が く 上水内地区で行われた外国語活動の研究授業
っ つ く く ら い と授業研究会です。主な日程は、次のとおり
近寄り、どんな でした。
会 話 を し て い [午前]
るのか、どのよ
オリエンテーション 9:15~9:25
うな口調で話
☆研究授業
9:40~10:25
子どもたちの会話に聞き入る先
しているのか
☆授業研究会 10:40~12:00
生方
を 聞 き 取 ろ う [午後]
としている先生方もいます。
県教委からの指導・説明 13:00~14:20
子どもたちの会話に耳を傾け、子どもたち
研究協議
14:40~16:20
の感想文を
見て、先生方
がその言葉
や様子を一
生懸命にメ
モしていま
す。
子 ど も た 子どもたちの感想文に見入る先生
方
ちの行動や
反応が活発になるのとあわせて、参観してい
た先生方の手の動きも速くなります。先生方
教育課程研究協議会の日程表(各地区、各教科で日程
がびっしりつまっています。
)
は、子どもたちの一挙手一投足を非常に注目
しています。
研究授業の流れは、次のような形で行われ
■教育課程研究協議会とは?
ました。
今回、見学させていただいた教育課程研究
当日の授業は、教材である「Hi, friends2!
協議会は、県下小・中学校全教員を対象とし Lesson6」
(「一日の生活を紹介しよう」)の単
て、郡市校長会、市町村教育委員会、県教育 元の全5時間扱いの第3時です。
「クラスで一
委員会が共催して各郡市単位で開催している 番早く寝る人・一番早く起きる人を調べよう」
研究協議会です。
というタイトルで授業が行われました。
9月・10月に13地域ごとに教科ごとの分科
最初に、導入としてジェスチャーゲームで
前に出た人の表現しようとする内容を当てる
ゲームを行います。これは、次にインタビュ
ーをする時に、
言葉だけでなく
ジェスチャー
(身振り)も含
めて表現できる
ように、先生が
取り入れたもの 導入部分のジェスチャーゲーム
です。
次に、先生がインタビューの仕方を簡単に
伝えます。その後、いよいよ子どもたち同士
でのインタビューが始まります。
途中で、前半のインタビューのよかった点
などの振り返
りが入ります。
子どもたちが
よかったこと
などを発表し
ます。先生は、
パペット(指人
担任の先生のパペットによる見本
形)を使った見
本なども見せ、子どもたちが具体的にイメー
ジできるようにします。
後半のイン
タビューも引
き続き行われ、
子どもたちの
会話がより活
発になります。
子どもたち同士のインタビュー
最後は、感想
を書いて終わります。
■子どもたちへのオーダーメイドの授業
先生方には研究授業用に子どもたちの個々
の課題や特性を示した座席表が配られていま
す。その座席表をもとに、参観している先生
は、個々の子どもの動き、反応を見て、気づ
い た点
を メモ
し てい
ます。
研究授業の中で座席表を参考にメモを
とる先生方
先生の声かけや提示された課題に対しての
子どもたちの反応は、多種多様であり、その
個性が現れます。ある児童が、一つの言葉を
発したとしても、その解釈の仕方はその背景
をめぐって様々に捉えられます。
その解釈の仕方を一人ひとり、先生方はメ
モをとり、授業研究の意見交換に備えている
のです。比較的同じような反応と見る言葉も
あれば、解釈も分かれる言葉もあります。
これらの授業への子どもたちの反応の解
釈とその反応を引き出す支援の研究が、子ど
もたちへのオーダーメイドの授業と言っても
よいと感じました。
研究授業のあとの授業研究会での先生方の議論の
様子(この協議会ではKJ法が採られていました。)
■子どもを真ん中においた「子どもと共に創
る授業」
長野県教育の特徴として「子どもを真ん中
においた『子どもと共に創る授業』」が多く
の先生方から語られることがあります。
なかなか実感としてイメージが湧かなか
ったのですが、今回研究授業を見させていた
だき、子どもの反応をきちんととらえて、そ
の反応に則した授業をしていくというオーダ
ーメイドの授業が、
「子どもを真ん中においた
『子どもと共に創る授業』」が一つのイメージ
と思えました。
先生方が使用する通称
「青本」(「教育課程編成・
学習指導・学級づくりの基
本」長野県教育委員会教学
指導課)には、
「教師の役割」
の一つとして、
「子どもの意
識の流れをとらえた、具体
的な手立ての提案」が掲げ
通称「青本」
られています。
今回の外国語活動の研究
協議会では、意見交換会でも子どもたちの反
応についての意見が交わされたところも数多
くありました。特に外国語活動は、日の浅い
領域であり、先生方も「具体的な手立て」を
日々工夫しながら授業を実践しているようで
した。
【ここから厳しめ?の意見】
意見4
「子どもたちのやりとりの中で、会話のとこ
ろで驚きがなかった。驚きができるような質
問を設定することも必要ではないか。」
■提案授業をもとに授業法を考え合う
研究授業の後には、モデルとなった授業に
対して4つの分散会に分かれて、様々な意見 意見5
が述べられます。提案された授業をもとに、 「質問内容に必要感が出なかった。本当に知
本時のあり方を考え合うのが授業研究会です。 りたいという状況を作り出すことも必要では
以下、先生方から出されていた意見をかい ないか。」
つまんで紹介します。
←他の先生から提案
「他に子どもたちが聞きたいことも追加させ
意見1
たらどうか。」
「Aさんは、はじめは緊張気味で積極的に話
しかけていなかったが、だんだん慣れていっ
事例6
て友だちに話しかけるようになっていった。」 「黒板のセンテンスが気になっている。先生
「Bさんは、「メモするんだよ。」と、友だち が書くことをもう尐しやめるようにして、子
へのアドバイスもしていた。」
どもに発話させるようにしたらよいのではな
いか。」
子どもたち同士のインタビュー
意見2
「Cさんは、はじめは下を向いていたが、最
後はしっかりと目を見てインタビューができ
るようになっていた。途中での担任の先生の
振り返りがあったことがよかった。それによ
って、子どもたちのよい関わりの仕方が増え
た。」
意見3
「オレンジのコップを置いておくことによっ
て、1人だけに
なる子どもがい
なかった。一人
ひとりの子ども
たちが取り残さ
れないような仕
掛けがあった。
」 机に置かれたオレンジのコップ
【意見が交錯】
意見7
「授業やクラスがもう尐し元気に発言するよ
うな状況を作り出してもよいのではないか。」
←他の先生から指摘
「自分は、逆に落ち着いた雰囲気の中で授業
ができていると感じた。普段の担任の先生の
学級づくりがうまくいっている表れであり、
よいのではないか。」
担当した先生への要求という形ではなく、
授業研究なのですが、もっとこうしたらよい
のではという意見が様々に出てきます。
■先生方は時間勝負
この他に、授業研究会でしきりとでた意見
は、この取組にはもう尐し時間をかけたほう
がよい。あるいは、この子どもたちの状態を
作り出すのに、普段の時間の使い方はどのよ
うにしているのか、という意見でした。
確かに、先生方に与えられた時間は限りが
あります。1年で○時間、1ヶ月で○時間、
1週間で○時間、1日で○時間。先生方が子
どもたちを目標とする状態にもっていくため
に、教育課程をもとに配分された時間をどの
ように使うかが大きな課題となります。丁寧
にやればやっただけよいのですが、1日何時
間あっても足りないことになります。
理想は、いくらでも時間があり、様々なこ
とを覚えさせ
たいのが大人
ですが、現実
には時間も限
られ、子ども
たちの意欲も
続きません。
いかに、重要 午後の県教育委員会からの説明
な取組を選び出し、子どもたちへの具体的な
取組につなげていくか、限られた時間をいか
に使っていくか、1時間の授業、1週間の時
間割、1年間、全学年を通じた教育課程の編
成に繋がっているのだなと感じます。
■最後に
前回担当した伊那小学校の現場レポートで、
文教大学の嶋野教授が話された、
「教育は子ど
もをとらえ続けることをやめることはできな
い。『授業は教える場』ではなく、
『授業は子
どもをさぐる場』
」という言葉が思いだされま
す。
子どもたちは、小学校に上がるまでに、本
来の資質、様々な影響を周りから受けて、一
人の人間として、入学してきています。その
子たちが、どのような意識を持ち、どのよう
な言葉を発し、どのような行動をとるのかは、
まさに、毎年、毎日、毎人、異なっているの
です。
その個性
あふれる
子どもた
ちを一度
に何十人
も相手に
しながら、
理想とす
様々な反応を示す子どもたち
る力・能
力・行動を身につけさせることは容易ではな
いことかと思います。
一方で、平成 23 年度から検討してきた第2
次長野県教育振興基本計画策定に向けた「学
ぶちから・学校力専門委員会」からの提言も
思い出されます。「同一の教科を専門とする
教員が学校を超えて一緒に研修することや、
学校だけに任せるだけの研修ではなく、一定
のレベルを持った指導者が一緒に授業づくり
を行う研修等が有効である。」との指摘です。
富山県では、すべての先生方が授業を早めに
切り上げて、午後一堂に会して、このような
研修会が年間6回行われるとのことで、長野
県も参考にされたいとの指摘でした。
今回の研修では、モデルとなった学校の授
業に対しては参考となる情報共有が先生方の
間でできたと思うと同時に、専門委員会から
指摘されたように、全員が参加して授業づく
りを行う研修に繋がっていけばよいなと思
わせていただいた一日となりました。
(文責:教育総務課 島田俊彦)