住友林業と生物多様性

S u m i t o m o F o r es t r y a nd B i o d i v e r s i t y
表紙について
日本の森林では、ニホンジカが増え、生息域を拡げています。それに伴い、ニホンジカが、
新しい苗木や樹皮を食べて木を枯らせるなど、林業への被害も深刻化しています。中には、
下草を食べつくし、土がむき出しになって、集中豪雨により土砂崩れが起こる場合もあります。
ニホンジカの増 加は、生 態 系のバランスが崩れてきている現 象のひとつです。それは、
ニホンオオカミなど天敵の絶滅、人間の生活の変化による狩猟の減少、地球温暖化による
降雪量の減少で越冬しやすくなったことなど、
さまざまな人為的原因も指摘されているため、
人間が手を加えて適正なレベルに戻すことが必要とも考えられます。
表紙は、住友林業のシンボルキャラクター“きこりん”が、ニホンジカと向き合い、森林にお
ける生物多様性や生態系のバランスを考える様子をイメージしました。
住友林業の生物多様性への取り組みについて、
さらに詳しい情報は、環境・社会報告書をご覧ください。
環境・社会報告書 >> http://sfc.jp/information/kankyo/
住友林業株式会社 環境経営推進室
〒100-8270 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館
TEL:03-3214-3980 http://sfc.jp/
2011年10月 第2版
住友林業にとって
生物多様性とは?
山林・環境
事業
住 友 林 業は、さまざまな生 物の営みの中で、木という豊かな生 物
木材建材
事業
多 様性の恵みを得て事業を行っています。そのため、私たちは、生態系
が維持され、森の恵みが持続的に育まれなければ、事業の基盤を失う
リスクもあると考えています。
また、私たちは、生物の宝庫であり、
きれい
な 水や酸 素 、土 壌 など生 命 の 源を生み出す森 に直 接 関 わっており、
住宅事業
緑化事業
海外事業
不動産開発
事業
健全で持続可能な森を育てていく責任もあります。
私たち住友林業は、
これからも、生物多様性の保全に、正面から向き
研究開発
あって取り組んでいきます。
生物多様性とは、いろいろな生物が、地球上のさまざまな環境に
対応して存在し、つながりあっていることをさす言葉です。生物多
様性は、地球の長い長い歴史の中でそれぞれがさまざまに進化し
続けてつくられたものであり、一度失ってしまうと、再び同じものを
つくりだすことはほとんど不可能で取り返しのつかないものです。
Biodiversit y
現在、地球上では、急激に生物の生息地が失われ、多くの生物が
絶滅したり、減少したりしています。その結果、多くの生態系が衰退
しはじめ、自然資源そのものがなくなり、人間の生存をも脅かして
います。そのため、今、すべての人々が生物多様性の保全に取り組
む必要があるのです。
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いろいろな 生き物 が すみ、
ずっと木を 使 い 続 けられる森づくり
住友林業の社有林
Biodiversity
社有林の施業方法
住 友 林 業は国 土の約 9 0 0 分の1を占める社 有 林を持っています。私たちは、これらの社 有
住 友 林 業の社 有 林の約 半 分はスギやヒノキの人 工 林です。森 林 資 源を守るた
林について、豊かな森の恵みを得ながら生 物 多 様 性を保 全していくため、
「 生 物 多 様 性に関
め、木々を間引きする間 伐を実 施するとともに、森 林 資 源 が 十 分 確 保できつつ
する基本方針」を定め、それに基づき、管 理しています。
ある現 在では、小さな面 積ごとの伐 採( 小 面 積 皆 伐 )を樹 木の生 長力が 高い地
この基 本 方 針には、
「 厳 格な保 護 地 域として指 定された地 域において法 規 制に則り適 正に
管 理する」、
「 天 然 林については、樹 種 転 換など生 態 系に大きな影 響を及ぼす極 端な施 業を
域で取り入れるなど、生 物 多 様 性 保 全と事 業 性 向 上を両 立させる施 業にも取り
組んでいます。
行わない」などの考え方がうたわれています。
環境保全を
重視する山林
小面積皆伐
水辺林
九州社有林
(宮崎県、熊本県、鹿児島県)
木材生産を
重視する山林
北海道社有林
(北海道)
ゾーニング
小さな面積ごとの伐採
すべての森林は、木材生産や
小 面 積 皆 伐 は 、小さな 面 積ごとに
水源涵養などの多くの機能を
和歌山社有林
(和歌山県)
持っています。樹 木の生 長力
などの基 準によって、森 林を
適 切にゾーニングし、経 済と
環境を両立させ、森林がその
四国社有林
(愛媛県、高知県)
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住友林業の社有林:北海道紋別市、和歌山県日高川
町、愛媛県新居浜市、宮崎県椎葉村などを中心に合わ
機能を効果的に発揮できるよ
水辺林を守る
多 様な生 物が 生 息する水 辺
伐 採する施 業 方 式です。伐 採 が 環
で は 、木 材 生 産 よりも 環 境
1カ所あたりの伐採面積は2~5ヘ
管 理 マニュアルを 作 成して、
また、伐 採した後は、その土 地に適
います。
境 へ 及 ぼす影 響を小さくするため 、 保 全 を 重 視し、水 辺 林 保 全
クター ルを目安 に設 定しています 。 水 辺の生 態 系 保 全に努めて
した 苗 木 を植え 、資 源 の 循 環 利 用
うな森林管理を行っています。 に努めています。
(2010年3月現在)
せて約42,600ヘクタールあります。
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いろいろな 生き物 が すみ、
ずっと木を 使 い 続 けられる森づくり
適正に管理している森林の証
住友林業は、2006年9月、国内のすべての社有林においてSGEC森林認
証を取得しました。SGEC認証は、森林が環境に配慮して適正に管理され
ている証です。SGEC認証に基づいた森林管理を行っていくことで、さまざ
まな動植物が生息でき、生物多様性の保全につながります。
Biodiversity
活動
社会貢献
富士山「まなびの森」プロジェクト
富 士 山「まなびの森 」自然 林 復 元 活 動 は、1 9 9 6 年の台 風 1 7 号で甚 大 な被 害
を受けた富 士 山 南 麓の国 有 林を、地 域 社 会との協 働で、生き物の豊 富な森に再
S G E C:日 本 の 森 林 において豊 か な自 然 環 境と、持 続 可 能 な 森 林 経 営・木 材
生 産 が 両 立していることを、第 三 者 機 関である「 緑の循 環 」認 証 会 議( S G E C:
Sustainable Green Ecosystem Council)が証明する森林認証制度です。
生する取り組みです。このプロジェクトでは、地 元の行 政 、学 識 経 験 者 などで構
成する「 富 士山『まなびの森 』企 画 懇 談 会 」を設 置し、その意 見を踏まえて活 動が
企画・運営され、富 士山固 有の樹 種の植 林やシカと共 生しつつその食 害から木を
守るチューブの設 置など、生 物 多 様 性に配 慮した森づくりを進めています。
キツネ
継続的な鳥獣類の生息調査
広いなわばりをもち
森林でも行動する。
(自動撮影による)
2 0 0 8 年 度から社 有 林にすむ鳥 獣 類の生 息 状 況
のモニタリング調査を実施しています。この調査に
より、皆 伐などの森 林 施 業が周辺の環 境に及ぼす
影 響を把 握し、社 有 林の生 物 多 様 性を保 全するた
ニホンテン
森林に生息し、
めの基 礎 情 報を得ることができます。
樹洞等に営巣する。
植林活動
(1998年
頃)
育林活動
下 草 刈 り など
(現在)
環境学習
支 援プロ
ジェクト
(現在
)
(自動撮影による)
活 動 のあゆみ
19 9 8 年
希少な動植物の保全
社有林に生息する可能性がある希少な動植物
をまとめた「レッドデ ータブック」を地 域 別に作
成しました。これを社 有 林 管 理の担当者や作 業
を行う関 係 者に配 布するとともに、希 少 種の保
全に関する勉強会を行っています。また、社有林
でこれらの動 植 物を見つけた場 合は、それを保
全できる施業方法を検討し、実行しています。
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住友林業レッドデータブック
ツガザクラ
四国社有林では、地元
自 治 体 等と協 議 会 を
設 立し、愛 媛 県 指 定の
天 然 記 念 物 で ある 高
富 士 山「まなびの森 」自
然林復元活動の開始。活
動 の5つ の キ ー ワ ード
のひとつに「バイオダイ
バ ー シ ティ( 生 物 多 様
性)」
を掲げました。
2006年
200
8年
未来を担う、地元の児童・
富 士山の環 境 保 全に大
学 生 を対 象とする「 環 境
きく貢献したことが評価
学習支援プロジェクト」を
され、住友林業は2008
開 始 。五 感を使って野 生
年 度 に「 富 士 山 憲 章 功
生物やその痕跡を観察し、 労 者 」として静岡県より
生物多様性の大切さを学
表彰されました。
びます。
山植物ツガザクラの保
護に取り組んでいます。
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生き生きとした
日本の森を再生するために
Biodiversity
国産材を普及させる技術開発
国産材の活用で日本の森を守る
住 友 林 業では、国内の森 林を守るために、国 産 材の活用を積 極 的に進めています。
国 産 材を普 及させるには、高 品 質で価 格 面
国 産 材を社 有 林だけではなく全 国の産 地から広く調 達することで、日本の各 地 域
も優 れた 構 造 用 木 材 の 供 給 が 必 要 です 。住
の山 林 保 全と林 業 活 性 化に寄 与しています。また、国 内の人 工 林を積 極 的に活 用
友 林 業 は 、従 来 の 乾 燥 法 に比 べ 、木 材 の 割
することは、生物 多様 性の豊かな国内外の天 然 林に手をつけずに保護することにも
れやねじれを抑 制 、歩 留まりを向 上させ 、乾
燥 時 間も短 縮した高 精 度 木 材 乾 燥システム
つながります。
「MIZDAS ®(ミズダス)」を開発しました。
また、建 材 製 造を手がける住 友 林 業クレス
ト㈱は、合 板や建 材の原 料として、スギやトド
住宅への国産材の利用
マツなどの国産材を積極的に利用しています。
合 板 製 造では、従 来のシベリア産 原 料よりも、
日本の森林資源を将来にわたって使い続け
高精度木材乾燥システム「MIZDAS® 」
輸送距離が短縮され、原材料調達から製造ま
られるようにするためには 、林 業 をビジネス
でのCO2 排出量も約30%削減しました。
として成り立たせることが重 要です。
「 住 友 林 業 の 家 」は 、国 内 林 業 の 活 性 化 の
ために国 産 材を積 極 的 に活 用する方 針を掲
げ 、国 産 ヒノキ の 構 造 用 集 成 材「 ス ー パ ー
国 産 材 合 板 にカ ー ボン
フットプリントを 表 示 し 、
CO2排出量を
「見える化」
スーパー檜
檜 」や 、国 産 の ス ギ など を 使 用 した 耐 力 面
“ 国 産 材 を 利 用 す ると な ぜ 森 が 守 ら れ る の?”
材「 きづ れ パ ネル 」を 開 発 、使 用しています 。
2 0 0 8 年 度には、主 要 構 造 材における国 産 材
木には、日光を求めて生長する性質があります。
この性質を活か
使 用比 率を7 0%まで 高めるという目標を達
きづれパネル
成しました。
して人工林は、過密に植林し、木の生長を促し、間引き
(間伐)を繰
り返しながら、真っ直ぐな太い木を育てます。
ところが、海外の安価
な木材の輸入による林業経営の採算悪化などで管理が長く放棄さ
れ、日本の人工林の一部では、荒廃が進んでいます。間伐などの手
入れがされなくなると、木々の生長とともに枝が重なり合い、太陽
荒廃した人工林
の光が十分届かなくなるために森に草も低木も茂らなくなり、鳥や哺乳類、昆虫もすめ
ない森に変わっていきます。大雨が降ると土砂崩れも起きやすくなります。人工林を伐
採し、植林するという持続可能なサイクルにより、国産材をさまざまな形で利用していく
ことが、動物も生息できる森の機能を生き返らせることになります。
主要構造材に国産材を100%使用した
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「MyForest-大樹」
日本の伝統的な木造軸組構造に
最先端の木の技術を結集したマルチバランス構法
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合法 性 の 確 認 を 徹 底 し、
森の生き物 にも 配 慮する木材 の 調 達
森林資源の持続可能な利用
住 友 林 業には、
「 木 材 調 達 理 念・方 針 」があります。これにより、国 内 外から調 達する木 材
Biodiversity
植林の拡大と植林木の活用
木 質 原 材 料の安 定 的な供 給を図るため、海 外で、
が 違 法 伐 採でないことを徹 底して確 認することや、生 物 多 様 性にも配 慮され 、持 続 可 能 な
積 極 的な植 林を進めています。適 切な植 林 地で生
森 林 から調 達された植 林 木 や森 林 認 証 材 の 取り扱いを増 加させることを取り決めていま
産される植 林 木は、天 然 林を伐 採するよりも生 態
す。また、同時に「木材調達 行 動 計 画 」を定め、具 体 的な目標に取り組んでいます。
系 への 影 響 が 少 なく、伐 採と植 林を繰り返すこと
で持 続 可 能な資 源 利用につながります。植 林 木の
取り扱う木 材 の 合 法 性を確 認 するしくみ
❶ 伐 採を行う取引先に対して、合 法 性
を証明する書類の提出を求める
伐採許可証
原産地証明書
● 輸出許可証
● 原木検査表
●
●
❷ 書 類などで合 法 性を
確 認できない場 合は、
担当者や現地の駐在
員 が 、必 要 に 応じて 、
伐採現場を実際に視
察に行き、調査レポー
トを作成する
効 率 的な生 産や品 質の確 保のために、生 長が早い
樹種の研究や商品 開 発にも力を入れています。
植林2~3年後のファルカタの植栽実験地。
ファルカタは7年程度で合板原料として使用できます。
❸ 住 友 林 業 の「 木 材 調
達 審 査 小 委 員 会 」で
提 出された 書 類 をも
とに審査を行う
森林認証材を使って
天然林を守る取り組み
持 続 可 能な森 林から調 達されたことを第
きこりんプライウッド
“ 海 外 に お ける 違 法 伐 採 の 状 況 ”
製品の出荷時に合板の側
面にマークを表示します。
違法伐採が問題となっている木材生産国では、政治的・経済的混乱により、法
積の5 0%以 上を占める合 板を「きこりんプ
ライウッド」として2 0 0 9 年から販 売してい
ます 。売り上 げ の 一 部 はインドネシアの 荒
律を守る体 制が弱まっていることや、木 材を持ち出すことで利 益が見 込まれる
地 等で森 林 再 生に使われるなど、ユーザ ー
ことから違法伐採が起こりやすい状況になっており、一部の国では、依然として、
が直 接 的にも、間 接 的にも生 物 多 様 性の保
違法伐採が行われているといわれています。生物多様性に大きなダメージを与
全に貢献できます。
える違法伐採を防ぐには、まず、そうした木材を流通させない、つまり、私たちが
また、
「 住 友 林 業 の 家 」では 、森 林 認 証 材
使わないようにするということが重要です。
の供給体制を整えた北海道で、道産の森林
建築中の森林認証材の柱
9
三者が証明する森林認証材や、植林木が材
認証材を使用した住宅を提供しています。
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生 物多様性 に 配慮 した
さまざまな 海外植林事業 を 展開
Biodiversity
世界各地で植林事業を行っています
地域住民との共同事業
世 界 的に、森 林 減 少 対 策や持 続 可 能 な 森づくりの必 要 性 が 叫 ば れる中 、住 友 林
業では、約30年前から海外でのさまざまな植 林や熱 帯 林 再生に取り組んでいます。
パプアニューギニア
パプアニューギニアでは、現在12,000ヘクタール
の植林した森林を管理しています。従業員約1,000人
の多くは現地住民を採用しており、学校設立をはじめ、
道路や病院などの整備に貢献し、地域経済の発展を含
めた持続可能な社会づくりを進めています。
インドネシア
急 増する木 材 資 源 への 需 要 に対 応す
るため、現地企業と共同で、2010年から
大規模産業植林事業を開始し、将来的に
は2 8 万 ヘクタール( 東 京 都の約 1 . 3 倍 )
に拡 張する予 定です。違 法 伐 採や焼 畑に
よって荒 廃した 低 地 林 や 泥 炭 湿 地 林 を
対 象 に、地 域 の 人々とともに植 林を行う
ことで、人々の暮らしにも配慮した豊かな
森づくりを進めています。また、
( 独)宇宙
航 空 研 究 開 発 機 構( J A X A )が 提 供する
衛 星 情 報を基に、保 護すべき森 林 、緩 衝
ゾ ーン、植 林 対 象 地 の 3つのゾ ーニング
を行い、在 来 種を積 極 的に導 入すること
で生物多様性に配慮した施業を行います。
ニュージーランド
ニュージーランドでは、南島ネルソン地方でラジ
アータパインを植林しています。ラジアータパイン
は生長が早く30年周期で伐採できるうえ、加工性
にも優れており、計画的に植林することで、半永久
的に利用できる持続可能な資材といえます。
活動
社会貢献
「スブル熱帯林再生プロジェクト」
住友林業は、インドネシア東カリマンタン州スブル地
ジェクトでは、違法伐採、焼畑や山火事で荒廃した広大
様性のモニタリング調査を行い、今後の植林事業におけ
る先行指標として貴重なデータが集積されています。
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れないことを学びました。
インドネシアでは、地 域 住 民に、苗 木を無 償で供
与、技術指導し、それぞれの畑などでそれを育成し
てもらい、成 長 後に木 材を買い取り保 証する方 法
などで 植 林 事 業を進めています。地 域 住 民にとっ
ては確 実な収 入の保 証となるので、安 心して大 切
な土 地 へ植 林することができます。2 0 0 8 年 1 2月、
地 域 住 民 2 5 9 名と設 立した植 林 共 同 組 合の植 林
信頼関係を築いた成果といえます。
「 熱 帯 林 再 生プロジェクト」を実 施しました。このプロ
熱帯林再生を行いました。現在、
このエリアでは、生物多
れば 、植 林 事 業は成 功せず 、地 域の生 態 系も守ら
地が 、森 林 認 証を受けました。これは、地 域 住 民と
区において、1991年から2004年まで13年間に及ぶ
な実験林を舞台に、累積植栽面積約503ヘクタールの
住友林業は、これまで多くの植林事業を行ってき
た経 験から、その地 域に住む人たちの協力がなけ
森林が再生され、オランウータン
やシカ 、野 ブ タなどの 野 生 動 物
が戻ってきています(写真中央は、
この エリアで 確 認 され たオラン
ウータンの巣)。
植林の一部を行うインドネシアの
ブロモ・トゥングル・スメル国立公園
「住友林業の家」は、主要構造材を対象に、木の伐採
から建築施工までの工程で排出されるCO2(1棟あた
り約6トン)を、延床面積の2倍の面積に植林し、10
年間、管理・育林することでオフセットしています。
この
植林地でも、動植物のモニタリングを行い、生物多様
性の推移と保全の方向性を明らかにしていきます。
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人と 森 をつなげるために、
都市 にも 緑 の 空間 を
Biodiversity
TM
地域の生態系を重視した「ハーモニックプランツ 」
「 住 友 林 業 の 家 」の 外 構・緑 化 を手
貴重な木を未来へ残す
熱 帯 林 再 生プロジェクトで培った育 苗
が ける住 友 林 業 緑 化 ㈱ では 、生 態 系
技 術 を応 用して、京 都・醍 醐 寺 のシダレ
の保 全レベルを考 慮した4つのエリア
ザクラで、日本 画 家の奥 村 土 牛 氏が描い
を定 義して、植 栽する植 物を選 択して
たことでも知られる、通 称「 土 牛の桜 」の
います 。住 宅 の 庭 づくりを行う「 街 区
増 殖 に成 功しました 。住 友 林 業 では 、こ
エリア」では、地 域の生 態 系に悪 影 響
のほかにも挿し木や接ぎ木といった従 来
を与える“ 侵 略 的 外 来 種 ”を除いて、自
の 技 術では 増 殖 が 難しい 文 化 的 価 値 の
生 種を中心とした緑 化 植 物を「ハーモ
高い名 木・貴 重 木の保 存に協力していま
ニックプランツ
す。貴 重な木を未 来へ残す増 殖 技 術をこ
TM
」
( 調 和 種 )として提
案しています。侵 略 的 外 来 種ではない、
のように 活 用していくことは 、多 様 な 品
海 外 から移 入された 華 やかな 樹 木も
種を守ることにつながります。
ご 提 案し、地 域 生 態 系 の 保 全と人 々
ハーモニックプランツTMを植栽した新宿展示場
の 潤 いとの 両 立 を図ります 。また 、お
新宿展示場に
飛来したメジロ
ハーモニックプランツTM
客 様にお渡しするリーフレットなどに
も、それぞれの 樹 種 に“自生 種 ” や “ 小
鳥 が 訪 れる木 ” など、生 物 多 様 性との
増殖した苗から育成された京都・醍醐寺のシダレザクラ
関 係性を示しています。
を紹介したリーフレット
地域の生態系と共存する街づくり
住 友 林 業 緑 化 ㈱では、生 物 多 様 性に配 慮した都
市 再 開 発にも、取り組んでいます。三 井 住 友 海 上
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三井住友海上駿河台ビル屋上庭園
工場緑化の取り組み
住友林業クレスト㈱の全国7工場では、2010年
4月の東洋プライウッド㈱との合併記念事業として、
駿 河 台ビル 再 開 発では 、エコアセットチー ムとし
「 地 域 に自 生 する植 生 の 保 全 などを通じて、身 近
て、連 携 する他 社とともに、皇 居 の 豊 かな 生 態 系
な生物の生息・休憩地を提供する」という統一目標
とのつながりを考えた、緑 豊 かな 街づくりを提 案 。
を掲 げ 、工 場 敷 地を中 心 に、それぞれの 地 域 環 境
現 在 、生き物と共 生する都 市 再 開 発が進 行中です。
に適した生物多様性保全活動を始めました。
また、既 存 の 企 業 緑 地を活 性 化し、地 域 生 態 系
住 友 林 業クレスト㈱ 鹿 島 工 場では、絶 滅 が 心 配
の質を高め、生 物 多 様 性を再 生する、緑 地 保 全 事
されている鹿 島 砂 浜の自生 種ハマボウフウの定 植
業にも、積極的に取り組んでいます。
を計画しています。
住友林業クレストの社員が神栖市役所から
ハマボウフウの種子を譲り受けている様子
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