査の実践報告と今後の課題

一般演題/口演:9群一3
NANDA−NIC−NOC監査の実践報告と今後の課題
一A病院作成の監査用紙を使用して一
O大井志穂 中野由美子 高塚由紀子
聖隷浜松病院
坪.考察
1.はじめに
A病院では2005年1月からNANDA−NIC−
NNN監査チェックリストの監査項目1より、
NOC(以下NNNと略す)を導入し、2006年3月
ほとんどの事例において診断名を選択した理由が
から電子カルテ上で使用している。看護部記録委
関連因子のコメント欄に入力できている。しかし、
員会は質の高い看護を目指し、NNNの適切性を
患者参画プランの立案が少ないため、患者参画の
評価するための監査を推奨している。B病棟で立
場合コメント欄に記載されているかについて、ほ
とんどの事例が該当なしとなっている。
案されたNNNを対象に監査を実施し、その結果
から見えたことおよび今後の課題を明らかにした
ので報告する。
丑.方法
1.監査期問:2007年9月∼2008年1月
2.対象:B病棟で立案された20事例のNNN
監査項目2より、NOCは、最低限必要なもの
が選択され、NANDAの診断指標を照合しなが
ら、診断指標がなくなることを考えてNOCを選
択しているため、重複することはなく診断指標
とむすびついている。NOCの測定尺度設定では、
3、監査者:看護師経験年数1年∼16年の病棟看
本来のNOCの測定尺度に準じていない事例もみ
護師6名
られたが、チームで共有しやすいように具体的な
4.A病院作成の監査チェックリストは6つのカ
表現に変更した結果である。また、電子カルテ上、
テゴリーでの形式的監査である。
入力方法が誤っている事例もみられた。これは、
5.倫理的配慮:NNN監査・監査結果集計は病
看護師全員にNNN作成運用マニュアルが浸透し
院内で行い、個人名が特定できないように配慮
ていないことが考えられる。
した。
監査項目3より、NOCとNICの整合性がある
皿.監査結果
かという項目では、経験から思いつく看護介入を
全て選択している傾向があり、一NOCとの整合性
n=20
x □
o
1,NANDA
17
3
2〉患者参画の場合、コメント欄に記載されているか
1
口
1〉実現可能な成果であるか
20
0
日
2〉他の成果と重複していないか
20
臼
日
3)適切な時期の成果になっているか
2日
0
日
1)診断名を選択した理由が閨漣因子のコメント欄に記載さ
日
れているか
2,NOC
4)選択した詮断指標がNOαこむすびついているか
14
19
6 0
(診断指標がなくなることを目指しているか〉
5)測定尺度の1と5が談憲されているか
6)設定された尺度は本の測定尺度に準じているか
7)立案した日瞬点が入力されてい魏・
20
10
18
臼
日
0
2 0
10
※評点1測定尺度の数値(1∼5)
8)次回目標値が決められた場所に入力されているか
9)評価予定日に評価でまているか
4.NIC
1)開連因子を肯定的変化させる方向に介入しているか
14
12
12
1
6
3)看護行為として具体的であるか
1〉評点が変1ヒした経過のフォーカス記録がされているか
2)評価日に解決・継続・変更など’が選択oれているか
6,モの他
12
9
1)コメントは、カルテ開示でざる表現で入力されているか
19
2ノヲリー入力は、マニュアルに沿コて行なわれているか
16
日
11
0
2﹃ ㎝5
5,評価
16
9
6
a 0
て2
Xリスク型看護診断は危険因子
2)看護行為として実践可能か
0
5066
34
3.NOCとN℃の関係 1)NOCとNICの整合性があるか
2)Nlqま、採用したNOCを達成するものとなコているか
8
莞3
1
4
日
0
O:できている X:できていない □:該当なし
のないNICが含まれている事例があった。これ
は、プラン立案時、13領域のアセスメントおよび
統合が思考過程の中から省略され、偏った情報を
もとにNNNを立案している傾向があるからだと
考えられる。しかし、看護師の経験から選択され
た介入は患者にとっては必要なものであり、あな
がち誤っているとはいえない。NOCとNICの整
合性がないということは、選択した診断指標すな
わち看護診断の妥当性が低い可能性もある。それ
を評価するためには、形式的な監査だけでなく、
13領域のアセスメント、全体像の描写を含めた質
的な監査が必要となる。
監査項目4より、選択されたNICが抽象的な
表現であるにも関わらず、具体的な行動が入力さ
れていないため、看護実践が困難な事例がみられ
た。
看護診断vol.13No.22008205
監査項目5より、評点が変化した経過のフォーカ
ス・チャーティング⑪記録があるにも関わらず
評価日に解決・継続・変更などが選択できていな
い。これは、入力忘れによるものと考えられる。
また、評価予定日前に退院した事例が該当しない
という結果に結びついている。
V.今後の課題
・NNN作成運用マニュアルの周知・徹底
・NNN立案までの看護展開を大切にする(13領
域のアセスメント、全体像の描写)
・抽象的なNICを誰が見てもわかるような行動
に変更する
・監査結果をチーム全員で共有するための公開方
法を検討する
・13領域のアセスメント、全体像の描写を含めた
質的な監査方法を検討する
lV.おわりに
今回は、A病院作成の監査チェックリストを使
用した形式的な監査であり、質的な内容には触
れていない。また、監査者もNNN監査に不慣れ
なため、監査の精度はそれほど高いとは言えな
い。しかし、今後は明らかになった課題をふまえ、
NNN監査を継続していくことで、質の高い看護
を目指していきたい。
206看護診断voL13No.22008