1 ボックタック [ 佐賀県立高等学校 2001 年度 国語 ] 次の文章を読んで

ボックタック
1
一
佐
[ 賀県立高等学校
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
年度 国語
2001
身体の与える感動は全身的なものだ。たとえば体操選手が妙技を a披露するとき、
人はただ単に目に見える美しさに打たれるわけではない。 その呼吸、 呼吸が感じさ
せる生命の音楽に全身が反応し、感動するのだ。 1これが文字を持たない民族はあっ
ても、舞踊や遊戯を持たない民族はないことの理由である。
言うまでもなく、身体もまた自然である。舞踊であれ遊戯であれ、すなわちダンス
であれスポーツであれ、身体演技とは自然との対話にほかならない。人はそのとき、
自身の身体に、また他人の身体に、全身で聞きいっているのである。身体もまた考え
ているのだ。
また自然とは、 ソクラテス以前の自然哲学においては、 自身のうちに運動の原理
を内蔵し、 おのずから生成消滅するものとみなされていたが、 プラトン以降、 人間
の制作行為の単なる対象、 A無機的な材料に成り下がってしまった。この自然観はそ
のまま身体観でもありうる。 人間が自然を支配するように意識が身体を支配すると
いう考え方は、ヨーロッパ近代を貫通している。今なお常識として通用しているとさ
え言っていい。 だが、 この考え方は、 世界史をさかのぼり、 その全域を見直してみ
ると、逆にきわめて特殊なものに思えてくるのである。
たとえば年齢の問題がそうだ。 とはヨーロッパの発明であると述べたのは
吉田健一だが、そのとおりだろう。ヨーロッパ近代においては、老いはまさに負の要
素であり、負い目そのものだった。 を美徳とするこの考え方の背後に、生産
第一主義が b潜んでいることは疑いない。 cコウリツよく生産するには青年の方が適
している。だが、人生を豊かに過ごすという意味での消費第一主義の見地に立った場
合には、 事情が違ってくる。 2見事に老いたものもまた価値を有するのである。 事
はぐく
実、かつての日本においては、若く見られることの方が恥ずかしいことだったのだ。
ヨーロッパが 育 んだ舞踊の典型であるバレエも若さの芸術である。老いてしまって
は、 バレエは踊れない。スポーツと同じだ。 だが、 それが舞踊や遊戯に普通のこと
かと言えば、そうではない。
数年前、井上八千代の舞いを見てその呼吸に驚嘆したことがある。時を経るにした
がって印象がかえって鮮明になってくるのが不思議だが、 Bまるで幼子のようだった。
実際は、 米寿を越えていたのである。 こういうことはバレエにおいてはまずありえ
ない。ヨーロッパと日本では、身体についての考え方が根本的に違うと言うべきだろ
う。 身体観、 さらに言えば自然観が違うのである。 老いは身体の自然である。自然
を操作し支配しようとする姿勢と、 逆に、 おのずから生成消滅する自然の声に謙虚
に耳を傾ける姿勢との違いが、老いをめぐる考え方にもそのまま dハンエイしている
ように思われる。とはいえ今では逆に、 3日本の方がはるかにヨーロッパ近代を実現
してしまっていると言うべきかもしれない。日本の古典舞踊に eアツい視線を注いで
いるのは、むしろ欧米人の方ではないかとさえ思われる。
新体操やシンクロナイズドスイミング、フィギュアスケートなど、美しさを追求す
]
ボックタック
2
る芸術スポーツの登場が、オリンピックを変える契機になるかもしれない。身体の芸
が与える感動とは何かと真剣に問いはじめるならば、 オリンピックはいつまでも若
さの祭典であるわけにはいかないだろう。オリンピックが、本来的な意味での身体の
祭典であろうとするならば、 いまや老いの問題こそ最大の焦点でなければならない
だろう。
︵三浦雅士﹃考える身体﹄による︶













1これが文字を持たない民族はあっても、舞踊や遊戯を持たない民族はないこと
らそれぞれ一つ選び、記号を書きなさい。

ア、抵抗がなく、加工しやすいもの


イ、どこにも存在する、ありふれたもの
A 

ウ、温かみや潤いを失ったもの
エ、規則性のない、無秩序なもの

ア、のびやかでみずみずしい感じがした


イ、幼稚で未熟な感じがした
B 

ウ、無邪気でわがままな感じがした
エ、静かで落ち着いた感じがした

二重傍線A、 Bの本文中での意味として最も適当なものを、 次のア∼エの中か
漢字に直しなさい。
波線a、bの漢字の読みをひらがなで書き、波線c、d、eのカタカナの部分を
1
2
舞踊や遊戯は、身体演技の原型であり、集団に活力をもたらす営みであ
るから。
舞踊や遊戯は、人間の全身体を使った、生そのものにかかわる行為であ
るから。
舞踊や遊戯は、人間の身体運動の中に、音楽的な要素を採り入れた営み
であるから。
舞踊や遊戯は、民族を超えて楽しめるよう、単純な動作で構成された行
為であるから。
書きなさい。
2見事に老いたものもまた価値を有するのである
ウ、
イ、
ア、
しい落ち着きが感じられるもの
世間から離れて澄みきった心境に達し、その人の持つ雰囲気に年長者ら
いかにも老人らしく変化したもの
若かったころのおもかげをもはや想起させないほどに、その人の容姿が
が第一級のものとして評価されるもの
習練によって老いを感じさせぬほど高度な技を身に付け、その人の能力
なさい。
の﹂の説明として最も適当なものを、次のア∼エの中から一つ選び、記号を書き
とあるが、﹁見事に老いたも
には、ともに同じ言葉が入る。その言葉を本文中から一語で抜き出し、
エ、
ウ、
イ、
ア、
て最も適当なものを、次のア∼エの中から一つ選び、記号を書きなさい。
の理由である とあるが、舞踊や遊戯を持たない民族はない﹁理由﹂の説明とし
3
4
5
ボックタック
3
エ、
とは、この場合
長年の経験がおのずと蓄積され、これまでのその人の生き方が重みのあ
る独特な個性として感じられるもの
3日本の方がはるかにヨーロッパ近代を実現してしまっている
どういうことか。本文中の語句を使って四十字以内で説明しなさい。
本文の趣旨として最も適当なものを、 次のア∼エの中から一つ選び、 記号を書
身体を単なる肉体としてではなく、精神と融合されたものとしてとらえ
よって、オリンピックもより一層近代的なものに発展していく。
身体を単に感動の対象としてではなく、 美の面からとらえ直すことに
ことによって、オリンピックも人類にとって意義のある祭典になる。
身体を生産のためではなく、人生を楽しむための手段としてとらえ直す
よって、オリンピックも身体の祭典として新たな展開が可能である。
身体を物としてではなく、 一つの生命や自然としてとらえ直すことに
きなさい。
ア、
イ、
ウ、
エ、
直すことによって、オリンピックも大衆的なものになりうる。
本文における論の展開の特色を説明したものとして最も適当なものを、 次のア
複数の具体例から論を起こして分析を加え、そこに共通する課題を提示
深めている。
対照的な考え方の比較検討を繰り返しながら、問題の本質にまで考察を
うとしている。
冒頭に示した結論を最後にもう一度繰り返し、自己の主張を印象づけよ
になっている。
問題提示から始まって最後の結論に至るまで、起承転結を踏まえた構成
∼エの中から一つ選び、記号を書きなさい。
ア、
イ、
ウ、
エ、
している。
毎日野球に行くことを私の目から見ても、とても楽しみにしていました。きっと野球
の野球を見ていて﹂そこまで言って、由美は言葉を切った。
﹁ごめんなさい。息子は
﹁いえ、仕事へ出かける前にちょっとのぞいただけですから⋮⋮。それで私、息子
﹁お見えになってたんですか。ベンチの方へ来てくださればよかったのに﹂
物に行ったんです﹂
﹁ 1親ばかだと思うんですが、実は私、先月から二度ばかり息子の野球の試合を見
うに思えてきた。
間近に冷泉に接してみると、 由美は自分が考えていた印象と彼が違った人柄のよ
は、この日、チームの監督の 冷泉 に会いに行った。
︶
れいぜい
い る 小 学 校 四 年 生 の 茂 と 暮 ら し て い る。 茂 の 野 球 の 試 合 を 見 物 し た 由 美
︵小田由美は五年前に夫の悟を 亡 くし、現在は、野球のチームに入って
な
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
二
6
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ボックタック
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が面白くてしょうがないのだと思っていましたから、 どんな野球をしているのかと
かわいそう
思って出かけたんです。そうしたら息子は試合にも出られず、バットを片付けたりグ
ラウンドの石を拾ったりと、なんだか息子が 可哀相 になりまして⋮⋮﹂
﹁そうでしたか⋮⋮。 そうでしょうね、 奥さんがおっしゃることよくわかります
よ。 私もずっと野球をやっていたんですが、 私の野球に対する考えも奥さんと同じ
だったんです。私は子供の頃から野球選手になることだけが夢だったんです。高校へ
入った時はもうプロ野球へ行くことしか考えていませんでした。 私が一年生で野球
部へ入部したときのキャプテンが、あなたのご主人だった小田先輩でした。小田先輩
も神奈川県下では指折りの投手でした。 でも先輩はエースの座を監督さんに話して
おれ
私に譲ってくれたんです。夏の甲子園地区予選を三回戦で敗れた後で、先輩が私を呼
んで﹃冷泉、野球ってスポーツはいいだろう。 俺 は野球というゲームを考え出したの
は人間じゃなくて、 人間の中にいる神様のような気がするんだ。 いろんな野球があ
るものな。 おまえにもそのことをわかってほしいんだ。 自分だけのために野球をす
るなよ﹄って⋮⋮、何か変なことを言う人だなって、その時は思いました。正直に言
うと、自分にエースの座を奪われたくやしさを最後に話していったんだろうかって。
私は甲子園へ行くことができずに、 ノンプロチームに入りました。 何とかプロヘと
三年間頑張りました。 しかしうまくいきませんでした。 そんな時に先輩が訪ねてき
ました。
﹃帰ってこい冷泉、田舎へ帰ってまた野球をやろう﹄と言われました。野球
はもういいですよって、私が言ったら、
﹃そうだろう、 2つまらない野球はもうやめ
ろ。 神様がこしらえた野球をやろうや﹄ と笑って言われました。 それから半年、 先
あ
輩の言ったことを考えて、田舎に戻ってきたんです。そして何より楽しかったのは先
輩たちとやった草野球でした。自分はもし先輩に 逢 うことがなかったら、きっとつま
らない野球をした男で終わっていたでしょう。そんな野球と出逢えてから、この町が
ひどく好きになったんです﹂冷泉は空を流れる雲を眺めながら話を続けた。
﹁先輩に病室に呼ばれたのは、手術が終わってから二週間たった時でした。自分に
は先輩はひどく元気そうに見えました﹂ 冷泉が言っているのは悟が手術後二週間し
て一度驚くほど回復した時のことを言っているのだと由美は思った。
﹁先輩は自分に﹃俺の息子がもし野球をしたいと言いはじめたら、 冷泉、 おまえ
が教えてやってくれ﹄と笑って言われました。私は先輩の息子だとおっかないと言っ
て、先輩が教えた方が上達しますよと答えました。
﹃冷泉、おまえの野球にはもう神
様がついてるよ。 頼んだぞ﹄って手を握られました。 その時自分は先輩の身体がそ
んなだったとは気づかなかったんです。 3つくづく自分はばかだなって思いました。
いつもあとになって、わかるんですから⋮⋮﹂
せき
冷泉の目がうるんでいた。 それよりもスカートを必死で握りしめて涙をこらえて
つら
いた由美の手の甲に大粒の涙が 堰 を切ったようにこぼれ落ちた。
お えつ
﹁かんべんしてください、奥さん。 辛 いことを思い出させちゃって﹂
﹁す、すみません⋮﹂言葉は 鳴 咽 にしかならなかった。
﹁もうすぐですよ。もうすぐ小田三塁手もゲームに出られるようになります。先輩
の話をすると小田君は目がかがやきます。名選手にならなくったっていいんですよ。
自分のためだけに野球をしない人間になればいいと思っています﹂
ボックタック
5
由美は立ち上がって冷泉の前に起立すると、
﹁本当にすみませんでした。茂をよろ
しくお願いします﹂と言って 4公園を飛び出した。
ぼうず
つる
茂が楽しみにしていた日曜日のゲームが雨で中止になった昼下がり、 由美はベラ
ンダにもうひとつテルテル 坊主 を 吊 して、仕事部屋で内職のセルの色塗りを続けた。
雨雲は少しずつ海の方へ流れていた。
しようじ
﹁ちぇ、今頃になって雨がやんだよ﹂ベランダの方から茂の声が聞こえた。由美は
ほおづえ
仕事の手を止めて 障子 を開けた。 雲の切れ間から、 九月の夕日がベランダの手すり
に 頬杖 をついている茂の身体をつつんでいた。 ひとつ夏を越えると、 息子の背丈が
少し伸びたような気がした。
﹁本当に晴れたわね﹂由美の声にふりむいた茂の顔に 表情が残っていた。
﹁ねえ、ママとキャッチボールしようか﹂
﹁本当に、ママ、キャッチボールできるの﹂
﹁できるわよ。パパからの直伝ですもの﹂
﹁よし、なら外へ行こうよ﹂茂の声がはずんだ。
﹁よし、そうしよう小田三塁手﹂二人は堤の道を歩いて河原に行った。
﹁行くよ﹂
﹁いいわよ﹂素手で受けてみると思ったより茂の投げるボールは重かった。
﹁痛い﹂﹁グローブを貸そうか﹂
﹁平気、平気﹂ 5手のひらの痛さは息子の重さだと思った。それでも茂はグローブ
を渡してくれた。
やさしい子なのだと思った。 とんでもない場所へ由美がボールを投げてしまって
うれ
とあるが、どういうことを親ばかだといっているの
︵伊集院 静﹃夕空晴れて﹄による︶
も茂はそれを走って拾いに行き、やわらかなボールを返してくる。それがどこか頼も
しくて、無性に 嬉 しかった。
1親ばかだと思うんですが
2つまらない野球
内で書きなさい。
3つくづく自分はばかだなって思いました
ウ、
イ、
ア、
先輩の病状がすでに手のほどこしようのないほど進行していることを知
く思う気持ち
ついても、 その時には気づくことができなかったことで、 自分を情けな
野球のすばらしさについても、当時の先輩の病状や自分に託した思いに
なく思う気持ち
た再び先輩に教えてもらわなければならなかったことで、 自分をふがい
かつて先輩に教えられ確かに理解していたはずの野球の楽しさを、今ま
書きなさい。
気持ちの説明として最も適当なものを、 次のア∼エの中から一つ選び、 記号を
と あ る が、 こ こ に う か が え る 冷 泉 の
とはどういう野球のことか。本文中の語句を使って十五字以
由美が︹ ︺という目的で冷泉に会いに来たこと
中の語句を使って二十字以内で書きなさい。
か。 このことについて説明した次の文中の ︹ ︺ に当てはまる表現を、 本文
1
2
3
ボックタック
6
エ、
るまで、 野球のおもしろさを理解できなかったことで、 自分を嘆かわし
く思う気持ち
先輩が、すでに息子に野球を教えられない身体になってしまっているこ
とを知りながら、 先輩の思いに報いられなかったことで、 自分をうらめ
とあるが、由美が﹁公園を飛び出した﹂理由として最も適
しく思う気持ち
4公園を飛び出した
冷泉が悟や茂と深く関わり、茂や野球のことを自分が想像する以上に深
懸命に打ち込んでいることを知り、そのけなげさに心を打たれたから。
冷泉の話から、茂が父の遺志をついで、たとえ正選手でなくても野球に
た行動が身勝手なものと思え、自分に対し怒りがこみ上げてきたから。
冷泉が茂の将来について細かな配慮をしていることを知り、自分のとっ
る悲しみなどまったく取るに足らないものと深く思い知らされたから。
冷泉の歩んできた人生のすさまじさを知るにつけ、今の自分が抱えてい
当なものを、次のア∼エの中から一つ選び、記号を書きなさい。
ア、
イ、
ウ、
エ、
く考えていたことを知り、自分の浅はかさにいたたまれなくなったから。
茂が亡き父親に対して親しみや誇りを抱いていることがうかがえる一文を本文
中から抜き出し、初めの四字を書きなさい。
に当てはまる言葉を、 次のア∼エの中から一つ選び、 記号を書きな
さい。
とあるが、由美が茂のことをこのよ
ア、うらめしそうな イ、うれしそうな ウ、さびしそうな エ、楽しそうな
5手のひらの痛さは息子の重さだと思った
うに思ったことの説明として最も適当なものを、次のア∼エの中から一つ選び、
エ、
ウ、
イ、
ア、
で感じたということ
たてまつ
はべ
今はまだ正選手ではないが、もうすぐ一人前の選手に成長することを肌
感じ取ったということ
野球を通じ人間として着実に成長していることを確かな手ごたえとして
を実感したということ
まだ子供だと思っていた息子が、自分と対等の存在にまで成長したこと
りと感じたということ
息子が他人を思いやるやさしい人間へと急に成長していることをはっき
記号を書きなさい。
ろうか
おお
お仕えしている者にお命じになって
そんじき
修理していただけないだ
破損の様子を見に
ん﹂ と申されたりければ、 家 司 に 仰 せつけられて、 まづ 損色 をとらせにつかはした
けい し
手紙をさしあげて
禅林寺深覚 僧 正
、宇治殿へ消息を 奉 りて、﹁法蔵の破れて 侍 るに、修理してたまはら
そうじよう
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
三
4
5
6
7
ボックタック
7
よし
たま
りければ、僧正、 1この 由 を聞き 給 ひて、かの使を前に呼び寄せて、
﹁いかにかく不覚
さぶら
帝のお世話役はおできにならないだろう
におはしますぞ、かくては君の御後見はせさせ給ひなむやと申せ﹂とありければ、御
お招きになって
使帰り参りて、
﹁法蔵の破れたるほども見せられ 候 はず。ただ御前に召されて、 2かう
かうなむ申せ、と侍る﹂と申しければ、殿も心得ずおぼしけるほどに、御前に年老いた
空腹でいらっしゃるのを
おっしゃったのでございましょう
る女房候ひけるが、
﹁あはれ、御腹の内の損じたるを、法蔵とのたまへるにこそ﹂
いろいろと取りそろえて
と申しければ、
﹁さもあるらむ﹂とて、魚のあはせ、いみじくととのへて、つかはし
︵
﹃十訓抄﹄
︶
たりければ、
﹁ 3材木たまはりて、法蔵の破れ、つくろひ侍りぬ﹂とぞ申されける。
思ひはかり深きたぐひ、かくのごとし。
このようなものだ
とあるが、その内容を説明したものとして最も適当なものを、次のア
思慮深いということは
1この由
ウ、
イ、
ア、
宇治殿が僧正に不審を抱き、調査した上で要求を断ろうとしていること
宇治殿が僧正からの依頼を受け、状況を見るため早速使者を送ったこと
宇治殿と家司が僧正のところへ失礼をわびにわざわざ出向いてきたこと
宇治殿から僧正の要請を承知したという返事が、僧正に届けられたこと
について、次の各問いに答えなさい。
﹁かうかう﹂を現代仮名遣いで書きなさい。
﹁かうかうなむ申せ﹂とは、どのように申し上げよ、ということか。
﹁か
うかう﹂の指示する部分の最初と最後の五字を抜き出して書きなさい。
とあるが、
﹁材木﹂とはこの場合何のことか。本文中の語句を
本文の内容に合うものとして最も適当なものを、次のア∼エの中から一つ選び、
抜き出して書きなさい。
3材木たまはりて
(2) (1)
2かうかうなむ申せ
エ、
∼エの中から一つ選び、記号を書きなさい。
1
2
3
エ、
ウ、
イ、
ア、
てきたので、僧正の心も落ち着きを取り戻した。
なぞ
気の 利 いたとりなしによって、宇治殿は修理に着手し、謝罪の品まで贈っ
き
僧正は、宇治殿が法蔵の修理に消極的なのを聞いて激怒したが、女房の
ところ、やっと僧正のいやがらせも収まった。
で悩ませたりするため、 宇治殿は女房らと相談して僧正に好物を贈った
僧正が、法蔵の修理と称して弱みにつけこんだり、わかりづらい 謎 かけ
て理解し、僧正の満足を得ることができた。
現したため、宇治殿はその真意をはかりかねていたが、女房の機転によっ
僧正は、その立場もあって自分の所望する物を法蔵の修理と遠回しに表
女房の意見を聞き入れ、法蔵の修理を行った。
てていたが、 要求を拒んで僧正の機嫌を損ねてはかえって不利だという
僧正が、法蔵の修理という無理な要求をしてきたため、宇治殿は困り果
記号を書きなさい。
4
ボックタック
8
四
﹁方言﹂をテーマに、クラスで討論会をしたところ、次のAさん、Bさんのよう
な意見が出された。
二人の意見に触れながら、
﹁方言﹂についてのあなたの考えを、あとの注意に従っ
て書きなさい。
A
私は方言はない方がいいと思います。
方言で話しても相手に通じないことがあるからです。たとえば、東北の人と九州の
人が方言だけで会話をしたら、お互いに何を言っているのかわかりづらいでしょう。
言葉は自分の気持ちを相手に伝えるための手段ですから、 方言は廃止し、 共通語に
統一したらいいと思います。
B
私は方言こそ大事だと思います。
みんながテレビのアナウンサーのように話すと、 あらたまった雰囲気で堅苦しい
と思います。 私にとって言葉というものはあくまで自分を表現するための手段であ
ると思うので、 方言の方が話しやすいと思う人は、 相手や場所に関係なく、 いつで
もどこでも方言を使ってかまわないと思います。
︵注意︶
1、原稿用紙の使い方に従って、一行目から本文を書くこと。
2、字数は、百四十一字以上、百六十字以内とすること。