MIT について

MIT について
1年 F 組
藤原彩花
私は MIT で生物を選択したので、そこで聞いたこと・考えたこと等を簡単にまとめたい
と思います。
まず私たちは、鳥の「歌う」という行動について研究している大久保さんの研究室に行
き、話を聞きました。大久保さんは、大学のオーケストラに所属していた時、学習メカニ
ズムへの疑問を持ち、鳥の歌う行動のメカニズムを解明することで、人間にも応用したい
と考えているそうです。
MIT にはたくさんの動物がいますが、大久保さんが実験で用いている動物はブンチョウ
だそうです。高次の認知機能について研究するならマカクザル、遺伝学についての研究な
らショウジョウバエ、言語についての研究ならヒト・・・、というように、研究をする際
にはまず、何を用いて研究するかということから始めるそうです。より多くの成果が得ら
れて、得するような生物の選択をすることが大切だそうです。また、動物を用いて研究を
する際には、人間ではなく動物の都合(生活)に合わせることが大切だと、MIT の方もハ
ーバードの方も話していました。そのため、土日も関係なく研究を続けることが多いよう
です。
次に、島津さんと雨森さんの研究について聞きました。さらに小人数(4・5人)にわ
かれて、より詳しく、じっくりと聞くことが出来ました。もちろん、人数が少ない分、質
疑応答も充実していて、とても楽しかったし、ためになりました。
島津さんは、サルを用いて運動機能に関する研究をしていました。とくにジストニアに
ついて詳しく聞きました。ジストニアは科学的にまだ未解明な部分が多いのですが、治療
が成功している例も多いそうです。ただ科学者としては、はっきり解明してから治療に用
いたいので、はやく結果を出したいと言っていました。
職業性ジストニア(突然ある動作だけが出来なくなること、スランプはこれかも?)は
ストレス性だと考える人が多いのですが、科学的に証明できると考えているそうです。し
かし、今やっている方法では上手くいっておらず、別の方法を模索中だということです。
また、ジストニアとうつ病などの病気を併発している患者さんも多く、最近では、思考と
運動のメカニズムは同じなのではないか、と考えているそうです。
雨森さんは、意思決定について研究をしているそうです。やはりサルを用いています。
サルの脳は人の脳とそっくりなため、サルを用いてこの研究をすることは、精神疾患等、
精神障害の理解につながるそうです。
微弱な電流を流すことでニューロンの動きを模擬し、データを取っていく中での、基本
的にネガティブなニューロンが、リスクがあってもポジティブな判断をするという結果か
ら、
「不安を抑制している」と考えられる、という話もありました。実験して結果を出すだ
けでなく、そこからさらに考えを深めるのだということがわかりました。
MIT では、基本的に実験器具は自分で作るので、そういったものを用意している期間に
サルを調教するそうです。サルにどのように刺激を与えてでデータをとるかという方法は、
自分で考えるそうです。
最先端の研究者でも、失敗したり、上手くいかなかったりすることがあるのだというこ
とを改めて実感しました。結果が出るには長い時間もかかるのだということもわかりまし
た。そして、一つの研究を続ける中で、または他の研究とあわせて考える中で、新しい仮
説や発見が生まれることがあるのだと思いました。答えが出ていない研究に取り組むには
方法等、一から自分で考えなければならないのだということも知りました。
最後に、MIT で研究者の方々から、
「自分のバックグラウンドは絶対のもの」ということ
をおしえていただきました。MIT(やハーバード)のような様々な分野が融合された研究
施設では、異なった研究を集めて、相互作用を生み出せるという利点があります。知らな
い分野は人に聞いて学び、カバーしていきます。そのために、幅広い基礎知識は絶対必要
です。しかし、なかでも大切なのは自分がこれだけは負けないという分野があることだそ
うです。その分野のことならなんでも一人でできるというものがあるかどうか、そして何
かを学ぶ時は「自分で使えるようになる」ことを大切にしてやっているかどうか。あらた
めて考えさせられました。
ウッズホール海洋研究所・海洋生物研究所について
ウッズホールで訪問した二つの研究所のうち、とくに MBL(海洋生物研究所)が印象に
残っています。ウッズホールでは、通訳の方がついてくださったので、質問もより深く出
来て充実していたと感じています。
MBL の方が強調していたことは、「基礎的な生物理論の研究のために海洋生物を使って
いる(=海洋生物の研究を目的としているのではない)
」ということです。ここで私は、今
までの海洋生物の研究から生物理論につながっている、という考えが逆だったことに気づ
きました。しかし、それがどういうことなのかについては、この話を聞いた時点ではよく
わかりませんでした。
特別に案内していただいた水槽のある部屋(水族館みたいでした)で、実際に生物を触
らせていただきました。カブトガニなんてはじめて見たし、こんな変な生き物が基礎生物
理論にどうつながるんだと思ったのですが、この血は血液検査の試薬になるそうです。製
薬会社では、普通動物を用いて検査をするそうなのですが、この血液を用いることで瞬時
に、また動物の犠牲も少なくすることが出来るそうです。そのため、MBL ではカブトガニ
の9つの目を生かした視力の研究に用いるだけでなく、養殖して血液を製薬会社に売って
いるそうです。日本の企業が得意先だと聞いた時は驚きました。ちなみに、血液を抜いた
後、カブトガニは海へ返すので、倫理的にも何の問題もないということになっているそう
です。薬を作るために検査が必要なのはわかりますが、それに動物を使うという事実にど
うしても抵抗を捨てられなかったので、この話を聞いて、海洋生物の研究はこういうとこ
ろにも生かせるんだなと思いました。
他にも、コバンザメは白内障や抗がん剤の研究に、ヒトデの手は再生技術の研究に、生
物の実験でおなじみのウニは体外受精の研究に、等様々な生物が研究に役立っているよう
です。ウニってやっぱりこんな世界的な研究所でも使われるんだなと、当たり前ですがす
ごいと思いました。
生物を用いているだけあって、ハーバードや MIT と同じく、ここでも生物に合わせて研
究がおこなわれているそうです。そのため、背骨の神経細胞が肉眼で見えることから、研
究に使いやすく、MBL での主な研究対象であるというイカは、季節ではないためいません
でした。
WHOI(海洋研究所)では、パネルを見ながら説明を受けました。有名な Alvin をはじ
め、それぞれが特殊な役割を持った観測ロボットがたくさんありました。たとえば、海底
の化学物質や温度を観測する SeaBED、超音波で海底の地形を描ける ABE(消失したそう
です)
、地図を作るのが仕事で油のにおいをかぐことが出来る Sentury、北極の氷の下で観
測を行う Jaguar などです。これらは、WHOI オリジナルのもので、世界にたった一つし
かないそうです。目的に合わせてたくさんの種類がある(船底の写真を撮影し、密輸を防
ぐ等)REMUS を含む、これらのロボットは設計から製造まですべて WHOI で行うと言っ
ていました。ここで私は、MIT で研究者の方が、必要な装置は自分で作ると言っていたの
を思い出しました。
WHOI で説明してくださったボランティアの方がはじめに言っていた通り、WHOI には
「探検」
「発見」
「研究」
「ロボット」+「観測」と、いろいろな使命があるのだなと感じま
した。
ハーバードについて
MIT で研究者の方々と昼食を取ったときは、ハーバードの研究者の方とテーブルが違い、
話を聞くことが出来なかったので、訪問が楽しみでした。名高い医学部の前を素通りし、
向かった先は意外とシンプルな研究室でした。MIT の外観が奇抜だったからでしょうか。
落ち着いた感じがして、まるで普通のオフィスのようでした。
まず見せていただいた研究室では、テレビで時々見るような細胞培養の設備等を見まし
た。机の上や棚には、見たことがないくらい小さい試験管やシャーレのようなもの、名前
も知らない器具がたくさんありました。MIT で見た研究室では、個人の作業スペースが分
かれていたのですが、ここでは長い実験台を区切って使っていました。一人分のスペース
は意外と狭かったです。
その後は廊下に出て、冷凍保存してある試料を見せていただきました。ひとつの冷凍庫
にたくさん保存してあるのですが、そのまま研究室を移動してしまった研究者の分の試料
などは、それが何なのかわからないまま置いてあるそうです。そういうものなのかと思い
ました。
次に、実験用のマウスがいる部屋を見せていただきました。完全無菌状態の部屋に入る
ので、私たちもマスクをしたり靴にカバーをつけたり、白衣(のようなもの)を着たりし
ました。中には当然ですがネズミがたくさんいました。研究によって使い分けているのか、
目や毛の色が違うネズミが分けられていました。私が一番印象に残ったのは、その奥にあ
る研究室です。無菌状態の中で解剖や実験が出来るよう、真っ白な部屋の中には、外にあ
ったのと同じような器具が揃えて置いてありました。この部屋を見たとき、ここにいるネ
ズミはペットとかみたいな動物ではなく、マウスなんだな、と実感しました。
最後に、眼科医の方と、リスクについて研究している方からお話を聞きました。リスク
についての研究というのは、日本では馴染みがないので、とても興味がわきました。アメ
リカでは政府も積極的に関わっている分野なのだそうですが、日本では4人ぐらいしか研
究している人はいないそうです。
リスクの研究は、身近な問題から原子力発電と火力発電を比べるような大きな問題ま
で幅広くあるそうです。また、なにか特定の分野に縛られているというわけでもないそう
です。私たちがちょうど地震直後に訪問したので、原子力発電と火力発電についての比較
を例に取り上げて説明してくださいました。原子力発電によるアメリカでの死亡者(年間)
と火力発電による死亡者の比較、性能による比較、環境・・・様々な面からデータを集め
て、そのリスクを比較するというのは面白いと思いました。アメリカ政府では、政策を行
う際に、その研究成果を資料とするそうです。単に危険だからとか、今回事故が起きたか
らとか、そうやってどちらがよりよいか決めるのではなく、第三者の目から、平均したデ
ータを用いて研究されたというのは、公平だし、客観的なよい資料になると思いました。
ケネディ宇宙センターについて
飛行機が遅れたため、宇宙センターへの移動は慌ただしいものでした。想像していたの
はもっと研究施設っぽい建物だったのですが、入口がすでにテーマパークのような感じで
驚きました。宇宙センターのある場所も、周りには何もなく、沼にはワニやマナティが出
るというし、普通の生活とは切り離された環境にある気がしました。周囲一帯が自然保護
区域らしいのですが、そこに最先端の宇宙科学研究施設があるのがなんとも不思議だと思
いました。
まず3D の映画を見ました。私は3D が苦手で、頭が痛くなるので好きではないのです
が、無重力の中でミカンとか水とかが飛び出してくる様子を再現した時などは、周りの人
も喜んでいて、確かに面白いと思いました。声はトム・クルーズだったので、個人的には
より熱心に英語を聞いていたと思います。
主に宇宙ステーションでの生活や仕事についての映画だったと思うのですが、宇宙はや
っぱり怖いと思った場面がありました。宇宙に行く前の訓練で、宇宙服を着て外で作業を
行っている際に、命綱が外れてしまうというような事態を想定したものだったと思います。
ふわふわ宇宙船から遠ざかってしまうのですが、冷静に泳いで戻ってくるというような感
じの訓練でした。最初それが訓練だと気づかなくて、ものすごく怖かったです。技術が発
達しているアメリカの、しかも航空宇宙技術の最先端をいくケネディ宇宙センターで、改
めて宇宙飛行士の人たちが命がけであることを実感しました。
宇宙が怖いと思った半面、宇宙飛行士たちの生活を紹介している場面では、冗談なども
飛び出してとても楽しそうでした。しかも、実際の映像だったので、無重力状態だと本当
にこういう状態なんだなというのが素直に伝わってきました。日本人の宇宙飛行士の方や、
女性の方もいて、いろんな人が頑張っているんだと感じました。
その後は、アルフレッド・ウォーデンさんの話を聞きました。移動時間が短く、よくわ
からないまま席に着きましたが、パネルを見るとアポロ15号の乗員だった方のお話だと
わかり、一気に緊張しました。アポロ計画にかかわっていたというだけで特別な感じがし
ました。
アルフレッドさんは、嬉しそうにいろいろ話していましたが、宇宙船の構造などを説明
する時にはパネルに図等が出て、英語がうまく聞き取れなくてもなんとなく理解できまし
た。実際に宇宙に行ったことがあるアルフレッドさんのような人でも、基礎科学技術の重
要さを説くのを聞いて、またほかのさまざまな場所で聞いてきた事を思い出し、あらため
て「基礎」が大切なのだと思いました。
最後にスペースシャトルの発射を体験しましたが、身体が90度に傾いた時はびっくり
しました。個人的に揺れが激しかっただけで、そこまできついものではなかったと思いま
したが、本物は想像するだけで恐ろしいです。
日本大使館について
まず大使館に到着して感じたことは、今日本はどんな状況なんだろうということです。
日本の国旗は半旗になっていましたし、入口のわきには献花台が設けられていて、花やぬ
いぐるみが置いてありました。それまでもお店等で、アメリカ人の方から地震に関して声
をかけてもらっていたので、大使館は今本当に忙しいだろうと思いました。
大使館訪問前日には、シンポジウムも予定されていましたが、地震の影響で中止になっ
てしまい残念でした。それでも、お忙しい中大使が会ってくださるということで、朝から
かなり緊張していました。大使に会う時は、周りの人も私もガチガチという感じでしたが、
思っていたよりもずっと優しそうな、気さくな方でした。すぐ後には大事な会議が控えて
いたそうで、また、今は日本の災害のことで大変だとおっしゃっていましたが、そんな様
子は微塵も感じられない、感じさせていないと思いました。本当に時間がなかったので、
一緒に記念撮影をしていただくことしかできなかったのが残念です。冗談も言っていて、
もっとお話しできたらきっと楽しかっただろうし、得るものも大きかったと思います。で
もあんな状況だったので、お会いできただけでもうれしかったです。
その後は、大使館で科学技術を担当しているというクリスティンさんの、アメリカの科
学とテクノロジーについて、またアメリカの基本的な機関(省庁)のお話を聞きました。
全て英語での説明だったのですが、スクリプトを用意してくださったので、なんとか整理
しながら聞くことが出来ました。とくに研究開発予算の説明では、資料のグラフについて
も解説していただき、そのグラフの興味深い点(注目すべきところ)なども教えてくださ
ったので、おもしろかったです。現在の政策課題についての説明を聞いて、やはりアメリ
カは宇宙やナノテクノロジーの分野に力を入れていると感じました。また、エネルギーの
分野では、
「新しいエネルギーをもっと安全に」と言っていましたが、
「新しいエネルギー」
がある程度アメリカで定着していることを感じさせられ、進んでいると感じました。
先輩から、アメリカの若者の科学に対する興味関心についての質問がありましたが、ア
メリカも日本と同じような課題を抱えているのだなとも思いました。でもアメリカの学生
は、私たちのように海外まで行かなくても、身近に最先端の施設を見るチャンスが豊富に
あるのではないかと思い、少し羨ましいと思いました。
この時、文部科学省から来ているという犬塚さんが、会議の合間を縫って質問に答えて
くださったりして、大使館側では本当に私たちのために時間を割いてくださっているとい
うことを実感しました。さらに、犬塚さんは私たちに、首相官邸ホームページからの日本
に関する資料をくださり、最新の情報をおしえてくださいました。正直そちらもすごく気
になっていたので、その気遣いに感謝でいっぱいでした。
午前中だけで頭を使い果たしたというくらい疲れましたが、それだけ得たものも大きか
った大使館訪問だったと思います。
国立アメリカ歴史博物館について
スミソニアン博物館では、全員で行った自然史博物館・航空宇宙博物館と、アメリカ歴
史博物館、それとナショナルミュージアムをちらっと見ました。ナショナルミュージアム
では、フェルメールを見たかったのですが、残念ながら今は無いようだったので、印象派
等を少し見ました。ここでは、一番印象に残った歴史博物館について書こうと思います。
アメリカ歴史博物館には、開館前に着きました。もう学生っぽい団体等がいて、それな
りに人がいたので、やはり人気のある博物館なんだなと思いました。開館直前には、BGM
がアメリカ国歌に変わり(それがここだけなのか違うのかはわかりませんが)、さすが歴史
博物館と思いました。
中に入ると、大きく西館、東館に分かれていて、お客さんは思い思いに散って行きまし
たが、私たちはとりあえず正面の部屋に行くことにしました。最初は何だかわからなかっ
たのですが、正面の壁には国旗をかたどったオブジェがありました。その部屋では、米英
戦争(第二次独立戦争)当時にアメリカのマックヘンリー要塞に掲げられていた星条旗が
展示されていました。この戦争の時に、アメリカ国歌である「星条旗」が出来たそうです。
部屋は撮影禁止で薄暗く(旗を傷めないためだったのでしょうか)、入口から出口まで終始
国歌が流れていました。それまでの経験からも、アメリカ人の愛国心が相当なものである
らしいということは感じていましたが、この部屋を訪れる人が皆とても真剣なので、少し
緊張しました。私語が自然となくなるような、厳粛な場所だと感じました。
国旗のほかには、古い国歌の楽譜や、星条旗を掲げて喜んでいる人の写真、国歌斉唱の
写真等がありました。日本でこんなことをやったらまた色々な批判が出るのかもしれませ
んが、自国の国歌や国旗に対して愛着を持ち、誇りを持って接することが出来るのは素晴
らしいと思いました。ここにあった写真や映像の、全ての英語を理解することはできませ
んでしたが、見ているだけでも自国の独立という歴史に対する自信や誇りが伝わってくる
ようでした。
ここでは、私たちは世界史の授業でまだアメリカ史をやっていなかったので、米英戦争
とその背景についての知識が足りず、解説をちょっとずつ読みながら見る、という感じで
した。この博物館を見学して、他国について理解するにはその歴史を学ぶことが重要だと
いうことを痛感しました。奴隷解放運動についてはサイドリーダー等で触れたので、アメ
リカの平等精神というか、そのブースに流れていた空気は理解できました。しかし、自由
を自分たちでつかみ取ったとか、そういうことに関して誇りを持っているということにつ
いて、その背景についての確かな知識をもとに感じたかったと思いました。それに、知っ
ているものが展示されていると「あっ」という感じがしてなんか嬉しかったです。例えば、
サイドリーダーに出てきた飲食店での座り込みのときの椅子等。
アメリカ歴史博物館ではほかに、オバマ夫人のドレス等が展示されているファーストレ
ディーのブースや、四つの約束についてのブース(独立、産業、奴隷解放等についてまと
められていました)等を見ましたが、もう一つ印象に残っているものとして、戦争の部屋
があります。
この部屋では、アメリカが関係した戦争について時代順に並んでいました。はじめは当
然独立戦争です。その後、インディアンとの戦い等を経て、南北戦争、世界大戦、冷戦、
朝鮮戦争、ベトナム戦争と続きました。全体的に感じたのは、「正義のために戦った」とい
う感覚です。さすがにインディアンのところでは、相手の首長等も同じように扱われて展
示されていましたが、それ以外では、正義感が強い感じが拭えませんでした。いくら正義
をたてていても、戦争は戦争だろというのが正直な感想なのですが、第二次世界大戦のブ
ースはかなり心が痛かったです。
まず、アメリカにとって日本は敵国であり、戦争をしかけてきた国であり、しかも最後
まで降伏しなかったので、かなり悪いイメージでした。昭和天皇をはじめとする要人の声
明(たぶん玉音放送の内容でした)や、世界の人のこの戦争に対する見解なども展示して
あった点では、色々な視点から考えられるかもしれないとは思いました。しかし日本人と
してあの部屋にいて、かなり居心地が悪い思いをしたのも事実です。日本が全面的に悪か
ったことは十分認めますし、原爆投下が必要であったという考えも一理あるとは思います
が、原爆について勉強してきた身としては、素直にそれが正義であったという考えに頷け
なかったということもあります。ではどうなんだといわれても困るのですが、とりあえず
今回は、アメリカ視点の第二次世界大戦について知ることが出来てよかったと思いました。
両方の視点から事実を知り、考えることが重要だとも思いました。
最後に、ここでは正義のための戦争であるという考えと、戦争はしてはならないという
後悔とが同時に存在していた中で、最後に勲章に関する記述や、武勲をたたえるような記
述があったことに、不思議な感じがしました。アメリカの戦争観ってどんなものなのだろ
うと、詳しく知りたい気がしました。
アメリカ歴史博物館には、もっとよく歴史や思想その他を勉強した後、もう一度来てみ
たいと思います。
研修全体について
アメリカ研修は驚きの連続でした。ものすごく荷物検査や身体検査が厳しかったと思う
と、入国審査の時は係の人が何か食べながらやっていたり、座り込んでいる人がたくさん
いたり。バスは来ないし飛行機は遅れるし、ちょっとルーズだと感じたのはやはり私が日
本人だからでしょうか。もちろん飛行機の機長さんや大使館の人はきちんとしていました
が、仕事中でも何か食べていたり着崩していたりと、仕事に対する真剣さは同じでも、そ
れがどう表れるかというのが日本と違うと思いました。
日本では、無意識な中にも、お客様は神様精神があると思います。私自身、普段は意識
していませんでしたが、そういう態度を取られることを当然と思っていたようです。レス
トランでは本当にびっくりしました。食器は足りないし、頼んだものは来ないし、電球は
切れたまま放置だし、指摘したところで「Oh my God!」と冗談ぽく言われるだけです。文
化の違いを感じました。極端になりますが、
「サービスしてもらうのは当たり前」と「サー
ビスしてやってる」というくらい反対だと思いました。
びっくりしたことはそれだけではありません。食事の量と味付けです。本当に多いです。
そして濃かったです。マックならふつうのベーコンチーズエッグバーガーかと思ったら、
パンのなかにメイプルシロップが入っていて、もう駄目だと思いました。これは食べられ
ませんでした。普通の朝食といったらカリカリベーコンにスクランブルエッグ、フライド
ポテトなのも嫌というほどわかりました。アメリカにいるとお米が恋しくなります。
スーパーは驚きの宝庫でした。とにかく広く、売り物は野菜も果物もみんな大きくて山
積みで、ケーキはありえない色をしていました。しかも安かったです。アメリカでは全体
的に、量の割に値段が安いと感じました。アメリカ人が日本に来たらケチだと思うかもし
れません。スーパーでは、セルフレジを経験しました。
アメリカをはじめて飛行機から見たとき、日本とは全然違う緑が見えました。落ち葉も
形が違うし、リスがその辺を歩きまわっているし、国が変わると自然も変わるんだなとい
まさら思いました。でもワシントンには桜があって、しかも満開で、日本じゃないのに桜
が満開なのが不思議な感じがすると同時に、ちょっと落ち着きました。
アメリカの人はみんな優しかったです。中国人か日本人か、まず聞かれることが多かっ
たのには少し驚きました。やっぱり同じに見えるのでしょうか。でも、日本から来たとわ
かると、色々話してくれました。地震が気の毒だったという話も当然出ましたが、その後
はそれ以上に「日本が好きだよ」って言ってくれる人がいっぱいいて、すごくうれしかっ
たです。どこでもだれでも話しかけてくれる人が多く、また知らない人同士がすぐに打ち
解けていて、フレンドリーな社会だと思いました。
さて、ここまで、研究施設等は個々にまとめてあるので、それ以外のことをまとめてき
ましたが、実は今回の研修で私が一番感動した・印象に残っていることは別なことです。
今回私が一番気合を入れて見学したのは、もちろん美術館です。先生方の協力もあってボ
ストン美術館にも行けました。ナショナルミュージアムも、印象派等をちらっと見ること
が出来ました。
科学系と違い、今後の生活にどう生きるかとか、進路にどうかかわるかなんてわかりま
せん。でも、言葉にしにくいのですが、今回見てきたものは間違いなく本物です。絵をは
じめ芸術品は、それぞれの時代をそのまま映す、その時代を生きた人たちの心がそのまま
表れたものだ、ということを改めて実感しました。それは、美術館に行くといつも感じる
ことなのですが、今回は規模が違ったので受ける感銘もまったく違いました。
時代を映すということは、理解するには歴史が重要になってくると思います。特に、絵
では宗教や思想についての知識がかなり必要だと思いました。特に、西洋画を見ていく上
でキリスト教に関する知識は必須です。幸いキリスト教については問題ありませんでした
が、ギリシャ神話の神々に関する知識があるか、仏教に関する知識があるか、エジプトの
神話に関する知識が…ときりがないです。自分でも浅く広く、困らない程度には知ってい
るつもりです。しかし、これらは教養の範囲になってきて、今すぐ必要なものでもないの
かもしれませんが、きちんと勉強してみたいと思いました。
有名な作品を見るのは楽しいですし、嬉しいです。多くの人に評価されているだけのこ
とはあります。有名なので、エピソード等も多く残っていて、そういうのを聞くのも面白
いです。でも、これだけ大きい美術館に来ると、新しく自分のお気に入りを探すのも楽し
いものです。自国の作家なのに意外と見たことがなかった浮世絵画家の作品、名前も知ら
なかった外国の画家の人の絵でも、これいい!と思ったら、それでいいという感じがしま
す。理由を考えるのは意外と難しいのですが、とりあえず直感でもいいと思います。こん
な絵を描く人もいるんだ、すてきだな、そういう出会いが増えることが私にとっては重要
です。なんでこの構図で描いたのか、なんでこの場面なのか、どうやったらこんな色が出
せるのか、この絵に込められた真意は何なのか、考え出したら止まらないし面白いです。
昔の人って、私たちに本当に素晴らしいものを残してくれたと思います。本音を言うと、
周りに座り込んでいたアメリカ人に混じってずっとあそこにいたかったです。