福島県会津地域における小麦品種「しゅんよう」の特性 - 東北農業試験

東北農業研究
(Tohoku Agric Res)49, 73-74(1996)
福島県会津地域 にお ける小麦品種「 しゅんよ う」 の特性
ネ
実 。4ヽ 森 秀 雄
及 部
山 田 英 雄・月
(福 島県農業試験場会津支場・ “会津若松地域農業改良普及 セ ンター)
Vheat Variety `Syunyou' in Aizu District of Fukushima Prefecture
AgrOnomic Characteristics of the ヽ
Hideo YAMADA,MinOru HA.い
ORI and Hideo KoMoRl・
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1
は
じ め
l・
)
奨励品種決定調査 は,福 島県農業試験場会津支場内 のほ
に
か,会 津高田町及 び塩川町に現地試験圃を設 けて行 った。
会津地域では「 ワカマツコムギ」 が主 として栽培 されて
きた。
「 ワカマツコムギ」 は耐雪性 に優 れた ,強 拝 ,多 収
これ ら試験 の具体的 な耕種法等 は表 1の とお りである。
の品種である。 しか し,成 熟期 が 6月 6半 旬 か ら 7月 1半
旬 とやや遅 く,収 穫期 が梅 雨盛期 と重 なるために安定 した
品質 の確保 が困難 であ った。 このため,「 ヮカマツコムギ」
試験圃を設け,調 査 した。
ブラベ ンター特性試験 については阿部製粉株式会社 に委
託 し,調 査 したが ,テ ンパ リングの 目標水分 は15%と し
と同等 の栽培特性 を有 し,さ らにより早熟な良質品種 の導
入 が求 め られて いた。
粉色 の測定 は東 京電色反射率計 を用 いた。
また,耐 雪性 について は福島県農業試験場冷害試験地 に
,
表
これに対 し,福 島県 では平成 7年 度 に会津地域を対象 と
1
耕種概要
した小麦奨励品種 として ,「 しゅんよう」を採用 した。
「 しゅんよう」 は昭和53年 度 に長野県農事試験場 におい
て「東北 148号 Jを 母 に,「 東山10号 」 を父 に交配・ 育成
された品種である。現在,福 島県 のほか ,山 形 ,長 野県 の
N:1
K20:12
N:02
奨励品種 にな って い る。
本報告 は,会 津地域 における「 しゅんようJの 栽培試験
か ら,そ の生育並 びに品質特性等 について検討 したものに
ついて報告す る。
3
2試
験
方 法
表 2,3に ,「 しゅんようJと 「 ワカマツ コムギJの 生
品種特性 の解析 は,麦 類奨励品種決定調査 を 中心 として
関連 した一連 の試験結果 を用 いた。
,
育及 び収量を示 した。
「 しゅんよう」 の成熟期 は「 ワカマツコムギ」 と比較 し
栽 培法 条 播 散 播
品 種
程
名
し ゅ ん よ
ワカ マ ツ コム
し ゅん よ
5 9
5 16
622
628
85
79
5 8
620
85
9
10
792
品
度
05
466
0
443
1 1
49 2
5 14
624
79
103
576
0 1
注 条播 は1987∼ 1994年 (8カ 年)の 平均。散播 は1988∼ 1994年 (7カ 年 )。
4
73.
554
質
1
0
76
740
38
福島県会津地域 における現地試験成績
津町
田
試地 会高
栽培法 条 播 散 播
験鰭
表3
卜重
福島県農業試験場会津支場 における試験成績
リル
表2
試験結果及び考察
塩川町
出穂 期
品 種
名
(月
成熟 期
日)(月 日)
し ゅ ん よ う
5 10
622
ワカマ ツ コム ギ
し ゅ ん よ う
ワカマ ツ コムギ
5 16
628
513
61
5
梓長
穂長
(m) (Cm)(本
86
83
4
5 19
6
注 播種法 は散播で,1989∼ 1994年 (6カ 年)の 平均。
―
-73-―
82
102
穂数
/ピ )
801
603
倒
程
仄
度
十夫 皇
標
刈
比
外
品
(kg/a) (%)
05
63 7
02
02
0
ul
566
452
魏
質
122
100
90
2
8
東 北 農 業 研 究
49号 (1996)
第
表4
て 4∼ 6日 早 く,6月 4∼ 5半 旬 である。会津地域 にお い
ては中生種 に分類 される。
稗長 は「 ワカマ ツコムギ」 よりやや長 く,穂 長 はやや短
福島県農業試験場冷害試験地 にお ける耐雪性 に
関す る試験成績
い。穂数は「 ワカマツコムギ」 ょ り多 い。
収量 は「 ヮカ マ ツ コムギ」 と比 較 して 条播 で 105%,散
しゅんよう
播で89%で ,同 程度 か らやや少 ない。千粒重 は「 ワカ マ ツ
コムギ」 と同程 度 か らやや重 い。外観品質 は粒 の充実 が良
9l?")al^i
好 な ことか ら 9段 階評価 の 3(上 の下)で ,「 ワカ マ ツ コ
ムギ」 に優 る。
注 耕種概要 :播 種量 180粒 /“ 密条播 (条 間30m)
基月
巴 N:10 P,06:10
K20:10(全 層施肥)
追肥 な し
耐倒伏性 は極 強 の「 ヮカマ ツコムギ」 に比較 して ,や や
劣 るものの「 強」 である。
表 4に 耐雪性 に関す る福島県農業試験場冷害試験地 にお
ける調査結果を示 した。 1992年 ,1993年 の根雪 日数はそれ
ぞれ98日 ,109日 であった。越冬株率 ,雪 腐病 の発生程度
表 5に ブラベ ンダー特性試験 の結果 を示 した。製粉歩留
は「 ワカマツ コムギ」並 か らやや優 る。 粗蛋 自含有率 は
は「 ワカマ ツコムギ」 に比 べ やや劣 ったが ,耐 雪性 は「 や
「 ワカマ ツ コムギ」 よ り高 い ものの80%程 度 で ,製 麺用 と
して はやや低 い。 ア ミロ グラム の最高粘度 は900∼ 1000
や強」 と判定 された。
BUで「 ワカマ ツコムギ」 よ り高 い。
表5
ブラベ ンダー・ ジュニア・ テス トミル製粉 による品質試験成績 (福 島県農業試験場会津支場)
フ
Ab
歩留
し ゅ
526
039
ワカ マ ツ コム
51 1
041
80
DT
578
ノ グラム (508)
03
5
W 一
4
名
kU3
︲
W B一
︲
A+
品 種
ア ミログ ラム
GT MVT MV
610
583
91 5
1
注 1989∼ 1994年 (6カ 年 )の 平均。
4
ま
が可能 である。今後 ,「 しゅんようJの 普及 に伴 い ,福 島
と め
県会津地域 の小麦 の品質向上が期待 される。
しか し,粗 蛋自含有率 は「 ワカマツコムギ」 よ り高 い も
「 しゅんよ う」 は「 ワカマ ツコムギ」 に比 べ ,収 量的 に
は同程度 か らやや劣 るものの,ほ ぼ同等 の栽培特性 を有 す
る。 また,「 ワカマ ツ コムギ」 に比 べ 4∼ 6日 早熟である
今後 ,品 質向上 の観点 か ら粗蛋自含有率向上を目的 と した
ことか ら,梅 雨 の影響 が小 さく,よ り安定 した品質 の確保
栽培法 の検討が必要 と考 え られ る。
のの80%程 度 で ,製 麺用 として はやや低 い。 このため
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-74-―
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