〔千葉医学 87:233 ∼ 235,2011〕 〔 学会 〕 第1224回 千 葉 医 学 会 例 会 第 24 回 千葉泌尿器科同門会学術集会 日 時:平成23年 1 月22日(土) 13:00∼ 場 所:京葉銀行文化プラザ 6 階 欅の間 1 .転移性腎癌に対するソラフェニブの使用経験 今村有佑(千大院) 転移性腎癌に対するソラフェニブの治療効果,有害 pT2 51例,pT3 124例,pT4 1 例,リンパ節転移 有り(pN1)は12例。死亡例19例,うち 8 例は癌死で あり, 5 年,10年全生存率,疾患特異生存率はそれぞ れ95.1%,67.4%,99.2%,81.1%であった。 【結論】手術療法は若年者の局所進行前立腺癌に対 事象を検討した。2010年12月までソラフェニブを投与 する癌集学的治療の一つの選択肢として有効と考えら 開始した29例を対象とした。効果判定が可能であった れた。 21例において,PR33%,PR+SD71%であった。有害 事象は多くが 1 ケ月以内にみられたが減量,休薬にて 改善した。ソラフェニブは転移性腎癌に対する有効な 治療選択肢の一つとなり得ると考えられた。 2 .ICU 管理下の化学療法が奏効した進行性精巣腫 瘍の 1 例 4 .active surveillance の 候 補 者 と な り う る low risk の前立腺癌症例における根治的前立腺全摘 除術標本の検討 五島悠介,野積和義,宮崎兼考 松本精宏,井上 淳,木藤宏樹 永田真樹 (横浜労災) 黒住 顕,千葉量人,関山和弥 貝淵俊光,戸邉豊総 (済生会宇都宮) ICU 管理下の抗癌剤治療が奏効し,呼吸不全から脱 【目的】近年 PSA スクリーニングの普及により,low risk の前立腺癌症例の増加が見られている。米国で は PSA スクリーニング率は70%程度と言われ,over treatment の 観 点 か ら active surveillance( 以 下 AS) 却できた進行性精巣腫瘍の 1 例について報告する。症 が普及しており,本邦においても PRIAS-JAPAN が行 例は50歳代男性。右精巣腫瘍と巨大な肺門リンパ節転 われている。本研究では欧米の代表的な AS の criteria 移が認められ,右高位精巣摘除術を施行した。組織診 をもとにその妥当性を本邦の症例で検討する。 断は seminoma であった。化学療法施行前に重篤な呼 【対象と方法】2007年 4 月から2010年 9 月の間で当 吸不全になり,ICU 管理下に化学療法(CDDP)を断 院にて neoadjuvant 療法をせずに根治的前立腺全摘除 行したところ,抗がん剤が著効し,呼吸不全から脱却 術(以下 RRP)を施行した193例を対象とした。AS に できた。以後,BEP 療法 3 コースを行い,現在 PR の ついて欧米で行われている代表的な 4 つの prospective 状態にある。 study の criteria に当てはまる症例について,RRP 標本 3 .局所進行前立腺癌に対する手術療法の治療成績 小丸 淳(千葉県がんセンター) をもとに予後不良因子,すなわち被膜外浸潤,精嚢浸 潤,リンパ節転移,Gleason Upgrade した症例の割合 を検討した。また,米国で行われた同様の study と結 果を比較し,妥当性を検討した。 【目的】臨床病期 cT3 にて手術療法を施行した症例 【結果】193例のうち,criteria に該当する症例は3.1% の予後に関する検討を行った。 から29.4%であった。被膜外浸潤,精嚢浸潤,リンパ 【対象と方法】1992年 8 月から2008年 7 月までに前 節転移,Gleason Upgrade した症例の占める割合は 0 立腺癌臨床病期 cT3 と診断され根治的前立腺全摘除術 −18%, 0 −2.9%, 0 %,16.7−41.2%であった。す を施行した症例のうち,術後 6 ケ月以上経過観察でき べ て の criteria に つ い て,criteria に 当 て は ま る 症 例 た178例を対象とした。 は有意に被膜外浸潤が少なかった。米国での同様の 【結果】患者年齢は67.9±5.9歳,観察期間の中央値 study との間に有意差を認めなかった。 は60 ケ月( 6 −197)。 病 理 学 的 病 期 は pT0 2 例, 【結論】criteria によって RRP における病理所見の予 234 第1224回千葉医学会例会・第24回千葉泌尿器科同門会学術集会 後不良因子出現率の差が見られた。厳格な criteria と すると適応症例数は減るが,同時に予後不良因子の減 8 .診断・治療に苦慮した女性尿道癌の 1 例 少が見られた。今後本邦においても AS の重要性が増 金 宇鎮(国保旭中央) すことが考えられる。本邦での AS に妥当な criteria は PRIAS criteria もしくは Carter criteria と考えられた。 5 .TUR を始めた今年度 1 年間での成長報告 加賀勘家,稲原昌彦,荒木千裕 小島聡子,納谷幸男 (帝京大ちば総合医療センター) 経尿道的切除術(以下,TUR と略す)は画像技術 の発展と共に,リアルタイムで学ぶ事が出来るように なった。そして,日常診療の中で一般的な手術手技で 【症例】47歳女性。子宮筋腫で婦人科フォロー中,尿 閉となり自己導尿開始。MRI で子宮体部と膣前壁に筋 腫。子宮筋腫の術中,子宮摘出後,膣壁に筋腫なし。 膣外腹側に腫瘤触知。膀胱尿道鏡で尿路異常なし。針 生検で腺癌の病理診断。尿道癌 cT2N2M0 の臨床診断に て膀胱尿道全摘術+回腸導管造設術施行し,尿道癌膀 胱浸潤 pT4 の病理診断。腫瘍は粘膜下で進展し,MRI でも筋腫との鑑別困難であったため,診断に苦慮した。 9 .当院での TUL の経験と課題 はあるが,検査と治療を兼ね合わせており,大変に奥 佐塚智和,高橋正行,石原正治 が深い。2010年度より TUR を始めた後期研修医 1 年目 岡野達弥 (千葉市立青葉) の技術的な成長について,観察,切除,止血凝固の 3 項目に分けて,指導前後での動画を用いながら報告し 当院で施行した経尿道的尿管砕石術について た。 retrospective に検討した。2003年 5 月より2010年12月 6 .当院における表在性膀胱癌の臨床統計学的検討 細木 茂(成田赤十字) までに当院で施行した TUL211件,260個の結石を対象 とした。砕石率は全体で92%であり,R2: 85%, R3: 0 %, U1: 86%,U2: 98%,U3: 97%であった。腎盂腎炎の既 往,膿尿のある症例,腎結石の治療,還流液を2,000 表在性膀胱癌の初回 TUR-Bt 後の再発率につき検討 以上使用した症例,手術時間が長くなると38℃以上の した。2000年 1 月 1 日より2008年12月31日までに,当 発熱を起こしやすかった。 院にて TUR-Bt を施行した,初発表在性膀胱癌症例172 例を対象とした。中リスク群では,BCG 膀注,抗がん 膀注,術後補助療法なしの順に,再発率が高くなる傾 10.硬性尿管鏡を用いた TUL におけるバスケット カテーテルの使い分け 向にあった。高リスク群に対する抗癌剤膀注療法は再 茂田安弘(みはま病院) 発予防効果が低いと思われる。 7 .術前化学療法を施行した浸潤性膀胱癌症例の病 理学的検討 push up 防止処置具には様々なものがある。エス ケープバスケットカテーテルは1.9Fr と細く柔軟性に富 み,Wolf 細径尿管鏡(6.5Fr)操作孔より挿入可能で 深沢 賢(千葉県がんセンター) ある。結石に可動性があり周囲にスペースがあればエ スケープを選択し,可動性がなければストーンコーン 【目的】浸潤性膀胱癌に対し術前化学療法を行った を挿入する。これまで24例の砕石治療を行い,成功率 症例について臨床病理学的検討を行った。 96%( 4 ㎜以下の破砕)と良好な成績であった。 【対象と方法】対象は2009年 4 月から2010年 9 月ま でに術前化学療法後に膀胱全摘除術を施行した21例。 11.尿路結石の管理に苦慮中の神経難病の 1 例 cT2 以下の症例はゲムシタビン・シスプラチン(GC) 香村衡一(千葉東) 療法 2 クールを施行,cT3 以上の症例には 4 クール施 行後に膀胱全摘を施行。 63歳男性,多系統萎縮症で人工呼吸器装着,胃瘻, 【結果】病理結果から化学療法により12例で stage 膀胱瘻留置中。2008年右尿管結石で発熱,尿管ステン down がみられた。 ト留置。 3 か月毎のステント交換を行うも,四肢拘縮 【結論】浸潤性膀胱癌に対する術前化学療法は有用 が強く,載石位困難で毎回難渋する。2010年左尿管結 な治療法と考えられる。 石も来し,両側ステント留置となり,交換の負担が増 した為,右尿管結石に fTUL 試行。砕石可能だったの で,今後,左の fTUL も行い,結石除去,ステントフ リーを目指し中。 第1224回千葉医学会例会・第24回千葉泌尿器科同門会学術集会 12.癌抑制 microRNA145を起点とした前立腺癌に おける新規分子ネットワークの解明 布施美樹(千大) 機能性 RNA の中で,19∼21塩基程度の一本鎖 RNA で あ る microRNA は, 細 胞 内 で タ ン パ ク コ ー ド 遺 伝子の発現制御を行なっている事から注目されてい る 分 子 で あ る。 本 研 究 で は,microRNA-145の 前 立 腺癌細胞における癌抑制機能を解明した。さらに, microRNA-145が制御する遺伝子として癌遺伝子機能 を有する FSCN1 を同定した。これまで知られていな い,癌抑制 microRNA を起点とした前立腺癌における 新規分子ネットワークの一端が明らかとなった。 235
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