VOL. 29 CHEMOT S-1 HERAPY Cefmenoxime(SCE-1365)に 433 関 す る 臨 床 的 研 究 青 木 信 樹 ・関 根 理 ・薄 田 芳 丸 湯 浅 保 子 ・塚 田 芳 久 信楽 園 病 院 内 科 清 水 武 昭 信 楽 園病 院 外科 若 林 伸 人 ・林 静 一 信 楽 園病 院薬 剤 科 渡 辺 京 子 信 楽 園病 院 検査 科 呼 吸器 感染 症16例,尿 路 感染 症2例,腹 膜 炎1例,敗 例 にCefmenoxime(CMX,SCE-1365)を 対 象は26歳 ∼81歳 の 男 性14人,女 不全 例で は1日1.0gで,経 臨床 効 果 は著 効1,有 血 症1例,不 明 熱1例 の合 計21例 の 感染 症 使 用 した(う ち腎 不 全 の感 染 例2例)。 性7人 で あ る 。投 与 量 は 腎機 能 正 常 者 で は1日1.0∼4.0g,腎 静 脈 ま た は筋 肉 内 投 与 に よ り,投 与 期 間 は7∼34日 効9,や や 有 効4,無 効5,判 で あ った 。 定 除 外2で あ った 。 明 らか に本 剤 に よ る と思 わ れ る副 作用 は,臨 床 的 に も,検 査 上 も認 め な か った。 Cefmenoxime(CMX,SCE-1365)は 武 田薬 品 中 央 研 究 所 で開 発 さ れ た 新 注 射 用 合 成Cephalosporin剤 で あ る。 グ ラ ム陽 性 菌 に 対 す る 抗 菌 力 は 既 存 のCephalosporin 熱 各1例 であ った 。 起 因 菌 は呼 吸 器 感染 症 の う ち肺 炎例 は全 例 で 不 明 で あ ったが,後 に マ イ コプ ラズ マ感染 と判 明 した ものが2例 剤 に比 し一 般 に は や や 劣 る が,Streptococcuspneumoniae あ った 。他 に は慢 性 気 管 支 炎 例 でHaemophilus に はCefazolin(CEZ)よ nzae,気 り も優 れて い る。 通 常 の グ ラ 管 支 拡 張 症 例 でEscherichia ム陰 性 菌 に対 して は 非 常 に 強 い 抗 菌 力 を 有 し,Enterob- た 。尿 路 感 染症 で は2例 と もE.coli,腹 acter,Indole 例 もE.coliが positive Pseudomonasに Proteus,Citrobacter,Serratia, に対 して 安 定 で あ り,腎 を 有 す る こ と か ら,臨 毒 性 が 少 な い な ど,優 れた特性 床 的 な有 用 性 が期 待 され る薬 剤 と 考 え られ る。 II. 投 与 法,投 与 量 21例 の う ち,17例 は経 静脈 投与,4例 の成 績 を報 告 す る。 解 質液500mlに 和54年4刀 象 性14例,女 ま で に,信 性7例,年 楽 齢は 26歳 か ら81歳 ま で で あ る 。 呼 吸 器 感 染 症 は,肺 気 管 支 拡 張 症,膿 酸 メ ピバ カ イ 溶解 して 投 与 した。 と し,そ の 他 の 感染 症 で はほ とん どが1gま 1日2回 た は2gを 投 与 した 。 腎不 全 例2例 で は いず れ も1日1g を1回 で投 与 した 。 炎11例,慢 胸,胸 間 か け て 投 与 し た 。筋 腎機 能 正 常 例 で は,尿 路 感 染症 の場 合0.591日2回 か ら 昭 和55年3月 園病 院 に 入 院 した21例 で,男 溶 解 し1∼2時 肉 内投 与 は注 射用 蒸留 水 あ るい は0.5%塩 対 ドウ 溶 解 し約5分 で 投 与 し,点 滴 静 注 の場 合 は電 ン3∼5mlに I. は 筋 肉 内投 与 を 行 った。 投 与 方 法 は静 注 の 場 合 は生 食 また は5%ブ 糖20mlに わ れ わ れ は21例 の 感 染 症 例 に 本 剤 を 使 用 す る 機 会 を 得 対 象 は,昭 膜 炎 例,敗 血 症 分離 され た 。 も 抗 菌 活 性 を 示 す 。抗 嫌 気 性 菌 作 用 も 従 来 の もの よ り も強 い と さ れ て い る1,2)。 ま た β-lactamase た の で,そ influe- coliが 分離 され 膜 炎 各1例 性 気 管 支 炎,肺 で,尿 例 と も急 性 腎 盂 炎 で あ っ た 。 他 は 腹 膜 炎,敗 気 腫, 投 与 期 間 は症 例20の34日 が 最 長 で,総 投 与 量 も同症 例 路 感 染 症 は2 血 症,不 明 の136gが 最高 で あ った 。 434 CHEMOT HERAPY JUNE 1981 VOL. 29 S-1 CHEMOT HERAPY 435 436 CHEMOT HERAPY 著 効1,有 III. 効 果 判 定 基 準 効9,や や 有 効4,無 効5,判 1981 定除外2の 結 果 で あ った 。 下 記 の判 定 基 準 に 従 った。 著 効(excellent):(1)原 JUNE 呼吸 器 感 染 症 例 で は有 効7,や 因菌 が 明 らか な 場 合 は原 因菌 の 消 失 と臨 床 症 状 の急 速 な改 善 を み た も の(2)原 因 菌が や有 効4,無 効3 ,判 定不 能2例 で あ った。 症 例3はSteroid(Prednisolone)が 併用 されている 不 明 で あ って も,臨 床症 状 の 急 速 な改 善 をみ た もの(3) が,胸 水 貯 留 も疑 わ れ 本 剤 投 与 以 前 よ りSteroidが投 他 の抗 菌 剤 が 無 効 でCMXに 与 され た もの で,投 与 量 も変 更 され て お らず,臨 床経過 変更 して か ら 急 速 な 改善 を み た もの よ り有 効 と した 。 有 効(good):原 因 菌消 失 と臨 床症 状 の改 善 の いず れ か が み られ た もの 無 効 は3例 で あ るが,症 例4は 脳 硬 塞後,左 片麻痺が 残 存 し長 期臥 床 を 余 儀 な くされ て い る老 人の肺 炎で,_ や や有 効(fair):臨 床 症 状 の 一 部 あ る いは 軽度 改善 を み た もの 時 解 熱 傾 向 と胸 部X線 像 の改 善 を みた のであるが,再 度 発 熱,胸 部X線 像 の 増悪 を みた 。症 例8は 基礎 に肺癌, 無 効(poor):菌 の 消失 を み ず,臨 床 症 状 が 不変 か あ るい は増 悪 した もの 脳 硬 塞後 遺 症(歩 行 障害)を 有 す る老人 の肺 炎で,臨床 症 状,検 査 成 績,胸 部X線 像 の いず れ も改善 をみなかっ 判 定不 能(undetermined):(1)治 療 の適 応 で なか った た 。 症例15は 糖 尿 病 患者 の膿 胸 で,前 医 でAmpicillin もの 。 何 らか の理 由で 効果 判 明以 前 に 投与 を 中止 した (ABPC)の もの。 他 の抗 菌剤,消 炎 剤(Steroidな 使 用 した も ので,排 膿 を併 せ 行 ったが,解 熱 することが ど)が 併 用 さ れ た も の。 投 与 を受 け たが 効 な く当院 に入院 し,本剤を な か った 。 IV. 判 定除 外 は2例 で あ る。 症 例2,症 副作 用の検討 例6と いずれも臨 床 的 に は効 果 が み られ た が,経 過 中 マイ コプラズマCF 投 与 時 の 血 管痛,筋 肉痛,投 与 期 間 中 の発 熱,発 疹, 抗 体 価 の上 昇 を み て お り,判 定 か ら除外 した。 め まい ・運 動 失 調 な どの神 経 障 害,下 痢 ・下 血 な どの消 尿路 感 染 症 で は 著効1,有 効1例 であ った。著効の症 化 器 障 害 な どの 副 作用 に留 意 した 。 ま た,投 与 前 後 の検 例17は 巨細 胞 腫 に よ る両 下 肢 麻 痺 の 患者で,右 上腹部 査 成 績 か ら,腎,肝,骨 痛,背 部 痛,高 熱が あ り,尿 培 養 でE.coliが 髄 機 能 へ の影 響 を み た 。 腎機 能 に つ い て は血 清 尿 素 窒 素(BUN),ク レアチ ニ ン(Cr.), た のでTobramycin(TOB)240mg3日 肝 機能 に 関 し て は 血 清 ア ル カ リ フ ォ ス フ ァ タ ー ゼ (Al-P),ト ラ ンス ア ミナ ーゼ(GOT.GPT)お ビ リル ビ ン(T.Bil.),骨 球 数(RBC),ヘ よ び総 (Ht),白 血球 数(WBC),血 腹 膜 炎 の症 例19は 無 効 で,右 側腹 部打 撲後,肋 骨骨折 マ トク リッ ト 小 板 数(Platelet),全 身 の 過 敏 症 状 に関 して は 末 梢血 好 酸 球 百 分 比(Eosin.)を 1. 臨 床 効 果(Table 成 と血 尿 で 某病 院 に入 院 し,開 腹 術 に よ り,肝 ・脾の破裂 の診 断 を 受 け たが,血 尿 の増 悪 を み右腎 摘出を行 ったと 指 こ ろ,腎 不 全 状 態 とな り,当 院 に転 入院 した。腹膜炎の 標 と した 。 V. ったが 改 善 せ ず,本 剤 を 使用 した と ころ,急 速な臨床症 状 の改 善 と菌 消失 を み た 。 髄 機 能 に つ いて は末 梢血 の赤 血 モ グ ロ ビ ン量(Hb),ヘ 状 態 で発 熱 が 持 続 し,腹 腔 内 ドレー ンによ る排膿を行う 一 方 ,Sulbenicillin(SBPC),Lincomycin(LCM)の 投 績 与 を行 ったが 効 な く,本 剤 に変 更 したが,全 く改善をみ 1) なか った 。 Table 分離され 間の投与を行 2 Overall clinical efficacy of CMX VOL. 29 S-1 CHEMOT HERAPY 437 438 CHEMOT HERAPY JUNE 1981 VOL. 29 CHEMOT S-1 HERAPY 50.0%,尿 敗 血 症 例 は 前 医 に てCarbenicillin(CBPC),Amikacin(AMK)が 投 与 さ れ,当 検 出 され な か っ た が,本 院 入 院 時 に は血 液 よ り菌 は 剤 投与 後 の臨 床 経 過 よ り有 効 と 不 明熱 の 症 例21は 慢 性 腎 不 全 に て 血 液 透 析 中 の 患 者 の 発 熱 で,CEZの が,全 投 与 で 効 果 な く,本 剤 を 投 与 して み た 疾 患 別 の 効 果 は,Table 2の と お り で,有 効率 で は 呼 吸 器 感 染 症50.0%,尿 他 で33.3%,全 例 は6例 体 で52.6%で で,1例 はE.coliで 効 以 上 の有 路 感 染 症100%,そ あっ た 。尿 路 感 染 症 は起 因 菌か ら考 え て 当然 の有 効 率 で あ る が,呼 吸 器 感 染 症 例 で有 効 率 が 低 か った の は,無 効,や あ っ た 。 腹 膜 炎 で 分 離 さ れ たE.coli以 症 を お こ して い る 。 ま た,本 外 管 支 拡 張 例 で菌 交 代 剤投 与 後 の 菌 交 代現 象 の 発 calcoaceticusが4例 に み ら れ 最 も多 く,Streptecoccus faecalis,Pseudomonas aeru- よ り,Aeromonas aerogenesが それ ぞれ 抗 菌力 に優 れ て い る 。P.aeruginosaを Cephalosporin系 含 む,既 存の 薬 剤 で効 果 の 期 待 出来 な い菌 種 に も抗 菌 活 性 を示 し,作 用 は 殺 菌的 であ る。 近 年,既 存 の 抗 生 剤 に感 受 性 を 示 さな い菌 種 に よ る感 も起 因 菌 と して グ ラ ム陰 性 菌 の 検 出頻 度 が 高 くな って い が 期 待 さ れ る もの とい え よ う。 2. 副 作 用 疹,下 ラム陰 性 菌 に 対 して 広 範 囲 の抗 菌 ス ペ ク トルを 有 し,特 に グ ラ ム 陰 性 菌 に対 す る る こ とか ら4),こ れ らの感 染 症 治療 薬 剤 と して の 有用 性 1例 よ り分 離 さ れ た 。 発 熱,発 軽 度 上 昇 を1例 に み た 。 本 剤 は 各種 細 菌の 産 生 す る β-lactamaseに 対 して 安 染 症 例 が 増加 しつ つ あ る こ と3),呼 吸器 感 染 症 に お い て hydrophilia,Staphylo- coccus epidermidis,Enterobacter 副 作 用 と して は明 らか に 本 剤 に よ る と思 わ れ た も の は 定 であ り,グ ラム陽 性 菌,グ 現 菌 と して,Acinetobacter ginosaが2例 投 与 間 隔 に も問題 が あ った か と思 われ る。 決 定 出来 た症 分 離 さ れ,他5例 は いず れ も 菌 消 失 を み て い るが,気 が影 響 して い る もの と思 わ れ る。 ま た本 剤 の 血 中 濃度 半 全 くなか った が,Al-Pの ○ 印)が にH.influemzaeが 老 人 で,免 疫 能 低 下,栄 養 状 態 が 不良 で あ っ た こ とな ど の あ った 。 細 菌学 的 に は起 因 菌(Table中 痢 な ど,臨 今 回 の われ わ れ の臨 床 成 績 は 文字 通 りそれ を 裏 付 け る 床 的 な 副 作 用 は 全 く認 め な もの とは いえ ない が,免 疫 能 の 低 下が 推 測 され る場 合, か った 。 検 査 成 績 上 は,症 例3でBUNの 軽度 上 昇 を みてい 与 終 了 後 ま も な く正 常 に 復 し て お り,ク レアチ ニ ンは 正 常 で あ る こ と か ら副 作 用 と 考 え る 必 要 は な い と 思 わ れ る 。 ま た,症 例21でAl-Pの 析 患 者 にAl-Pの あ るい は複 雑 な経 過 を と った 重 篤 な症 例 に使 用 す る場 合 な どに,投 与 量,投 与 間 隔,補 助療 法 な ど,よ り一層 慎 重 な配 慮 を 要 す べ き こ とを 示 唆 す る も の であ ろ う。 上 昇 を き た して い 文 高 値 を 示 す 患者 が 多い こ と も あ り,本 剤 に よ るか ど う か は 不 明 で あ る 。 骨 髄 機 能 は 本 1) GOTO, S. 剤 に よ る と思 わ れ る 異 常 値 は 全 く認 め な か っ た 。 症 例6 RA, の 血小 板 減 少 は 投 与 前 よ り あ り,原 SCE-1365, 球百 分 比 の 明 ら か な 上 昇 は3例 て いず れ も500/mm3以 以 上 よ り,明 因 不 明 であ る。 好 酸 に み ら れ た が,実 数に し 下 の も ので あ った 。 2) らか に 本 剤 に よ る と思 わ れ る 副 作 用 は 認 ; M. 呼吸 器 感 染 症16例,尿 考 按 路 感 染 症2例,腹 3) 膜 炎,敗 血 献 OGAWA, TSUCHIYA, a bacterial activities. Infectious Disease 清 水 喜 八 郎, GRAHAM, genic bacteria. S. & KUWAHAM. In Current KIDA: vitro anti- Chemotherapy 1.264•`266, 五 島 瑳 智 子, & 1980 斉藤 篤, 河 田幸道 松 本 慶 蔵, 二 第28回 日本 化 学 新 薬 シ ン ポ ジ ウ ムII SCE-1365。 29(1): 88∼95, 1981 A. and TsUJI, KONDO Cephalosporin: 国 井 乙 彦, stance A. M. new 療法学会総会 Chemotherapy VI. 明 熱 各1例 K. 石 神 襄 次, め なか った 。 症,不 の 他 で33.3%で 減期 が 約1時 間2)で あ る こ とか ら,重 篤 な感 染 症例 で は く解 熱 傾 向 が み られ な か っ た 。 るが,透 路 感 染 症 で100%,そ や有 効 の 症 例 の ほ とん どが 重篤 な基 礎 疾 患 を 有 して い る した 。 るが,投 439 & their F. AYLIFTE: significance Trend Recent in Advances in primary in resipatho- Infection の 計21例 に 使 用 し た 結 果 は 著 効1,有 1•`18 効9,や や 有 効4,無 効5,判 除外 例 を 除 く と有 効 率 は52.6%で 定 除 外2で あ った 。 判 定 あ り,呼 吸器感染症で 4) 藤 森 一 平: 床 と 細 菌2: 呼 吸 器感 染 症 の 原 因 微生 物 の 推 移 。 臨 33∼40, 1975 440 CHEMOT CLINICAL STUDIES OF HERAPY JUNE CEFMENOXIME 1981 (SCE-1365) NOBUKI AOKI, OSAMU SEKINE, YOSHIMARU USUDA, YASUKO YUASA and Department YOSHIHISA TSUKADA of Internal Medicine, Shinrakuen Hospital TAKEAKI SHIMIZU Department of Surgery, Shinrakuen NOBUTO WAKABAYASHI and Hospital SEIICHI HAYASHI Department of Pharmacy, Shinrakuen Hospital KYOKO WATANABE Department of Clinical Laboratory, Shinrakuen Hospital A new antibiotic cefmenoxime (CMX, SCE-1365) has been studied in the clinic, and the following results were obtained. 1. Cefmenoxime was administered to 21 patients; 16 respiratory tract infections, 2 urinary tract infections, 1 peritonitis, 1 sepsis, and 1 fever unknown origin. 2. Cefmenoxime was given intravenously at a daily dose of 1.0 to 4.0 g to the patients with nomal renal function, or at a daily dose of 1.0 g to the patients with renal insufficiency. 3. Clinical response was excellent in 1 patient, good in 9, fair in 4, poor in 5, and undetermined in 2. 4. No side effects caused by the drug were observed.
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