1 続×4ベクトルの回転 クロメル@物理のかぎプロジェクト 2013-03-13 我々は,続々ベクトルの回転 で行列の指数関数がうまく行列の回転を表すことを見ました.それはなぜ かを説明できたので,解釈の仕方を書こうと思います. 回転を表す微分方程式 Joh 氏は ベクトルの回転 に於いて,微小回転について触れています.それは次のような式です. dr = (n × r)dφ ここで,この微小量を時間 dt での微分と考えて, (1) dφ n ≡ ω と置くと, dt dφ dr = (n × r) dt dt = (ω × r) (2) とします.これは単位時間に回転軸 n と回転の対象である位置ベクトル r の両方に直交する方向に ω ≡ |ω| = dφ だけ動く系であることを示しています.つまり,その解 r は回転を行った後の位置ベクト dt ルを記述します. ここで 続ベクトルの回転 で書いた行列での記法で,式 (2) を書き直します.すると, 0 −n m N = n 0 −l −m l 0 (3) と行列で表現できますから,式 (2) は, dr dφ = (n × r) dt dt = ωN r (4) となります.すると,ジョルダン標準形の指数関数の応用 と同じ論法で,解は r = exp(tωN )r0 (5) 2 続×4ベクトルの回転 だと分かります.なぜこうなるかは,次の話が厳密ではありませんが参考にはなるでしょう. lim (1 + n→∞ x n ) = ex n (6) がネイピア数の定義だったと思います.ここで微小回転を r に施すということは, r = (1 + tωN )r0 (7) ということでした.これを二ステップに分けて考えると, r = (1 + tωN 2 ) r0 2 (8) r = (1 + tωN 3 ) r0 3 (9) となり,三ステップだと, ですね?つまり,それを何回も分けて繰り返すと, r = lim (1 + n→∞ tωN n ) r0 n (10) と書いてよいでしょう.つまり,これは lim (1 + n→∞ tωN n ) = exp(tωN ) n (11) ということです. N の指数関数の計算 これから,もうすでに 続々ベクトルの回転 で求めましたが,別の方法で行列 N の指数関数を求めたい と思います.まず,N を対角化して Λ とし,N の n 乗を求めます. Λ = ωP −1 N P iω 0 = 0 −iω 0 0 0 0 0 (12) で,この固有値の順番に対応する固有ベクトルからなる行列 P は, ln + im ln − im l P = mn − il mn + il m n2 − 1 n2 − 1 n (13) となります.i は虚数単位です.よって,この行列の指数関数は, exp(tΛ) = exp(tωP −1 N P ) eiωt 0 0 = 0 e−iωt 0 0 0 e0 eiωt 0 0 = 0 e−iωt 0 0 0 1 (14) — 物理のかぎしっぽ http://www12.plala.or.jp/ksp/ — 3 続×4ベクトルの回転 となります.ここで後の議論に便利なように,P をユニタリー化して U としておきます.なぜなら,そ うすると逆行列が共役転置(随伴作用)で求まるからです.簡単の為,三次元極座標 を導入すると, l sin θ cos φ m = sin θ sin φ cos θ n (15) √ cos θ cos φ + i sin φ cos θ cos φ − i sin φ 2 sin θ cos φ √ 1 U = √ cos θ sin φ − i cos φ cos θ sin φ + i cos φ 2 sin θ sin φ √ 2 − sin θ − sin θ 2 cos θ (16) であり,この共役転置行列 U † = U −1 は, U −1 cos θ cos φ − i sin φ cos θ sin φ + i cos φ − sin θ 1 = √ cos θ cos φ + i sin φ cos θ sin φ − i cos φ − sin θ √ √ √ 2 2 sin θ cos φ 2 sin θ sin φ 2 cos θ です.よって,ダイアド積 nn を用いて, ll nn = lm ln lm ln mm mn mn nn (17) (18) と書き,三次単位行列を I と書くことにすると,正方行列の三連続積の展開 の方法を用いて, exp(tωN ) = U U −1 exp(tωN )U U −1 = U exp(tωU −1 N U )U −1 = U exp(tΛ)U −1 eiωt 0 −iωt =U 0 e 0 0 = ここで, なので, 0 −1 0 U 1 e−iωt eiωt (I − iN − nn) + (I + iN − nn) + nn 2 2 −m2 − n2 2 N = lm ln lm 2 −l − n2 mn ln mn −l2 − m2 nn = I + N 2 (19) (20) (21) の関係を使うと, eiωt e−iωt (I − iN − nn) + (I + iN − nn) + nn 2 2 = nn − N 2 cos ωt + N sin ωt exp(tωN ) = (22) となり,続々ベクトルの回転 の結果と一致します.つまり,これは位置ベクトルが回転軸 n の周りを角 速度 ω で回転する様子を記述している式だったのです.めでたしめでたし.それでは,今日はこの辺で, お疲れ様でした. — 物理のかぎしっぽ http://www12.plala.or.jp/ksp/ —
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