ICタグ関連ビジネス市場の飛躍的な拡大を目指して(PDF:108KB)

エンタープライズICT総合誌 月刊ビジネスコミューニケーション(Webサイトへ)
IC タグ関連ビジネス市場の飛躍的な拡大を目指して
IC タグは、ユビキタス時代の有効なツ
で動物の生態情報などが分かるサービス
を決める必要がある。
ールとして、2002 年頃から注目を浴び、
を実施している。昨年 10 月の開始当初
2004 年頃から実用化が始まった。
は 51 の動物を対象としていたが、現在
には、タグの規格の統一が必要である。
2004 年に米国小売最大手のウォルマ
は更に多くの動物を対象としている。ま
国際標準化については米国 EPC グロー
ート・ストアーズが取引先との間の物品
た、幼稚園などの園児の登園、退園を記
バルが、IC タグや利用情報などの規格の
管理に導入されたケースが有名であるが、
録するサービスも実施されている。IC タ
整備に取り組んでいるが、国内でも全体
わが国でも実用化が進み、2006 年には
グを園児の名札に取り付け、園門に設置
の規格の整備が必要である。また、複数
数量で 3 千万枚を越え、市場規模も約
した読み取り装置で園児の通過履歴を記
企業が、それぞれのデータベースを持ち、
400 億円に達した。総務省の研究会では、
録する。
IC タグがその間をシームレスに連携して
しかし、今後普及が加速されるために
処理をするためには、共通の基盤の整備
は、数々の課題を解決しなければならな
が必要である。例えば、飛行機に乗る顧
今後更に急速に拡大を続け、2010 年に
は10億枚を越えると推定している。
IC タグを複数の企業が共同で利用する
富士キメラ総研の報告によると、IC タ
い。まず、何といっても価格である。現
客が手荷物を自宅から航空会社に届ける
グ関連ビジネス市場は、2006 年におい
在は、年間 1 億枚の量産体制で、1 枚当
ために、空港宅配会社に依頼すると、そ
て対前年比 15 %増の 406 億円となっ
たり 30 円程度までに下がってきている
の手荷物は宅配会社から航空会社に送ら
ており、2012 年には市場規模は
が、せめて、10 円以下、できれば 1 円
れ、そのカウンターでチェックインされ
3,682 億円に達すると予測している。
以下が望ましいと言われている。また、
るというサービスがある。この場合、手
2006 年の業種別利用状況を見ると、製
IC タグの付加設備のコスト低減も課題で
荷物に付いている IC タグで自動的に行お
造業が最も多く、184 億円と全体の
ある。単品に IC タグを取り付ける工程は、
うとすると、まず宅配会社のデータベー
45 %を占めている。主に工場の製造ラ
メーカーが製造するときに付加するソー
スに記録され、それが空港の宅配会社の
インで、作業効率の向上や保守管理、あ
スタギング、または自前で付加するイン
データベースに伝えられ、その情報と IC
るいは製造履歴の管理などに使われてい
ストアタギングがあるが、いずれも付加
タグが空港のカウンターで照合され、自
る。ついで流通・サービス分野が 70 億
するための自動化装置の開発普及が必要
動的にチェックインが行われる。その際、
円と、全体の 17 %となっており、倉
である。
宅配会社と航空会社のデータベースに共
庫・宅配業は 35 億円の 8.6 %となって
プライバシーの保護も課題になってい
通の基盤が必要となる。そのための基盤
いる。今後は製造業以外の物流分野など
る。タグが付いているのか判らない服を着
を ID コマース基盤と言い、NTT データ
の成長が急速に進むと見ており、12 年
て歩けば、タグリーダーを持ってその人に
が中心となって「ID コマース基盤検討会」
には製造業が 06 年比 4 倍の 745 億円、
近づけば、その人がどんな値段の服を着て
が 2005 年 4 月に設立され、本年 4 月
倉庫・宅配業が 2006 年比 24 倍の
いるかが判ってしまうなど、個人情報の漏
に仕様書が策定され、公表されている。
850 億円、流通・サービス分野が
洩にもつながる恐れがある。したがって、
このように、IC タグが複数の企業、複数
2006 年比 12 倍の 830 億円と予測し
用途が終わればタグを取り外すとか、精算
システム、ネットワークにまたがる場合
ている。今後の市場規模の拡大には、物
と同時に情報を消去するようなルールが必
の標準化も今後の課題である。
流関係の利用の加速がカギである。
要である。こうした処理を含めてICタグの
IC タグはわが国の得意とする技術分野
負担をどうルール化するかも課題である。
であり、このような課題を解決すること
増えている。上野動物園では、動物の展
例えば小売業が導入する場合、納入側との
によって、わが国が IC タグの主導国にな
示施設の前に IC タグを設置し、携帯端末
コスト負担について双方が納得できる分担
ることを強く期待したい。
IC タグの特性を利用した面白い利用も
ビジネスコミュニケーション
2007 Vol.44 No.12
5