融合サービスの時代と 携帯電話事業者の責務 - エンタープライズICT

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融合サービスの時代と
携帯電話事業者の責務
東日本大震災から 1 年 2 ヶ月となるが、この大震災は、
用料金を支払うことができ
携帯電話事業者の最大の責務は通信の確保であることを再
る。更に、自転車の位置情報
認識させる大災害であった。当社は、災害時でも通信の確
も把握できるので乗り捨て防
保ができるよう、大ゾーン基地局の設置や基地局の無停電
止にもつながる。ビジネス規
化・バッテリーの 24 時間化、各携帯電話事業者で導入する
模としては大きくないが、地
災害用音声お届けサービス等の新たな災害対策に取り組
球環境改善への取組みとして
み、本年 2 月末に概ね完了することができた。今後、被災
拡大していきたい。
地の本格的な復興は一層加速していくものと思われるが、
また、携帯電話事業者は、
㈱ NTT ドコモ
代表取締役社長 当社もモバイルを活用した支援活動を行う「東北復興新生
ネットワークのインテリジェ
支援室」による活動と共に、被災地の雇用創出を目的とし
ント化によりサービスの高度
たコールセンター(仙台市内)の設置や社員によるボラン
化を実現し、これを融合サー
ティア等の取組みを通じ、復興に貢献していきたい。
ビスの発展につなげることもできると考えている。当社は、
さて、21 世紀は融合サービスの時代だと言われている。
山田
持氏
ネットワークでの高度な情報処理・通信処理により付加価
今日、モバイルの分野においてはスマートフォンの急速な
値を提供する基盤であるネットワーククラウドに力を入れ
拡大、LTE をはじめとする高速大容量のネットワーク、そ
ており、既に、お客様の音声による発話から言葉の意味を
して様々なサービスを支えるクラウドと、まさにお客様の
読み取り、メールを作成・送信、あるいは天気や乗換え案
暮らしやビジネスをより安心・安全で便利・充実・効率的
内等ができる「しゃべってコンシェル」や、日本語⇔英語、
なものにしていただける環境が整ってきている。当社も、
韓国語、中国語に通訳する「通訳電話サービス」を実現し
様々な事業領域において産業やサービスの融合によるイノ
ている。ネットワーククラウドは、端末ではなくネットワ
ベーションを起こし、特にモバイルとのシナジー効果が高
ークにインテリジェンスな機能を持たせるため、サービス
いメディア・コンテンツ事業、金融決済事業等8つの市場
の提供が特定の端末に限定されず幅広いお客様にお使いい
において新たな価値創造に向けた取組みを推進していきた
ただけることから、携帯電話事業者に相応しいサービスと
いと考えている。
考えている。
現在、実現している融合サービスとして、この4月から
このような融合サービスの時代において、携帯電話事業
放送を開始した日本初のスマートフォン向け放送
者の責務は益々重大になるものと認識している。冒頭に述
「NOTTV(ノッティヴィー)の例が挙げられる。これは、
べた災害時の通信の確保に加え、スマートフォン普及に伴
ワンセグの約 10 倍という高画質の放送に、双方向の通信を
うデータ通信トラヒックや制御信号数の急増に対し、喫緊
組み合わせることで、同じ番組を見ながら SNS で盛り上が
の課題として取り組む必要がある。当社は、一連の通信障
るようなこともできる、放送と通信を連携させたサービス
害によりお客様に多大なご迷惑をおかけし、深くお詫び申
であるが、インタラクティブを前提とした、今までにない
し上げたい。再発防止に向けた全社体制での対策及び総点
オリジナルな番組も提供できると考えている。
検により、現状において通信ネットワークが安定して運用
また、エコロジーと ICT を融合させたサイクルシェアリ
できる状態であることを確認しているが、更に、制御信号
ングも例として挙げられる。サイクルシェアリングの提供
増加への対応など今後のスマートフォントラフィックに対
にあたっては「何時何処で借りられ、何処へ返せるのか」
するネットワーク基盤の強化に取り組み、お客様の信頼を
「どのように利用料金を支払うのか」「乗り捨てられたらど
うするのか」等の課題が存在する。しかし、モバイルの特
回復させていきたい。
今後、モバイルと産業・サービスとの融合は一層加速し、
性である、個人認証と位置情報等を組み合わせることでこ
様々な発展を遂げるものと思われる。しかし、携帯電話事
れらの課題は解決する。利用者は、手元のスマートフォン
業者の責務が、通信の秘密及び個人情報の保護を含めセキ
で駐輪場の場所と空き自転車数、そして返却のための空き
ュアで高品質なネットワークの構築を通じ、お客様に「安
ポート数等をインターネット経由で知ることができる。ま
心・安全」を提供していくことに変わりはないとの認識を
た、個人認証ができるので、おサイフケータイで簡単に利
日々新たにし、事業運営に臨んで参りたい。
ビジネスコミュニケーション
2012 Vol.49 No.5
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