Twinkle:Tokyo Womens Medical University - 東京女子医科大学

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点頭てんかんに対するCortisol大量療法(第Ⅱ報)
深沢, 純子; 福山, 幸夫
東京女子医科大学雑誌, 40(7):497-498, 1970
http://hdl.handle.net/10470/15504
Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database.
http://ir.twmu.ac.jp/dspace/
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入院時当初より左上肢椀骨動脈の搏動を触れず,また左
この一般に行なわれている「精神分裂病」の診断と,,
頚動脈体圧迫による失神発作などにより,脈なし病を疑
当教室の診断との差の基づく理由を調べるために,当教
わしめたが,血管撮:影により左鎖骨下動脈分岐部,左中
室でかつて精神分裂病と診断した症例を調べてみると,
大脳動脈分岐部の閉塞が見られ,Buerger病脳型,動
症状の経過につれて,明らかに躁欝病の病像を示し,初
脈硬化症も考えられたが,定型的な所見は認められず,
診時,いわゆる精神分裂病の症状と思われたものは,実
複雑な臨床像を呈していた.
は,躁欝病の症状と解されること,そして初診時病像
左回頚動脈外膜剥離術を行なうも,軽度の寛解しか認
は,躁欝病の坐像変遷中の一病像であったと考えられる
めず,次いで左鎖骨下動脈閉塞部よりの生検を行ない病
ものが多い.
今回はその一例について報告した.
理所見を得た.
19.抗うつ剤Noverilについて
Buerger国々型と診断されたが, Buerger病に鎖骨
(神経精神科)末田 田鶴子・○宮崎 朱美
下動脈閉塞の報告1は未だなく,本症例の診断を困難に
1957年Imipraminの発見以来,抗うつ剤または感
した大きな原因でもあった.本症例の特異像を中心に,
Buerger病と能なし病との相異,ならびに本邦におけ
情調整剤と総称される多くの向精神薬が作り出されて,
る統計についての考察を加え報告した.
内因性うつ病やその他のうつ情態の薬物療法は急速に発
17.肺の発生異常による2症例一気管支陛肺嚢腫と
展するとともに,それらの効果の比較検討が行なわれて
右転無形成一
来ている.
ヨーロッパでは.Noveri1は1964年頃から抗うつ剤と
(第二病院小児科)
○奥浦 恵美子・網代 成子・西尾 政子
して知られ,かなり広く用いられているものであるが,
(同外科):丸野敏次郎・服部 俊弘
われわれは昨年来始めて使用する機会を得たので,その
演者らは,学校集団検診の胸部レ線写真にて異常陰影
経験を発表した.
『を指摘された気管支性肺嚢腫の1例と,右胸心を疑われ
た右肺形成不全の1例を経験したので報告した.
NoverilはDibenzodiazepin誘導体に属し,その
構造からImipraminやAmitriptylinに比し作用が
第1例:亡児は7才5ヵ月の男児で,何ら自覚症状な
温和であると想定され,このことは臨床でも副作用が少
く,胸部レ線写真にて右上葉の鏡面形成を伴った嚢腫
なく,耐容性がよいことで確認されている.抗うつ作用
状陰影を認め,気管支造影,気管支鏡,心血管造影など
については,ImipraminとAmitriptylinの中間に位
の検査所見より,先天性の肺嚢腫と考え,手術の結果,
するといわれており,しかも制動情態(Hemmungszu−
気管支性肺嚢腫と診断,摘出標本の病理組織学的所見で
stand)に対してばかりでなく,いわゆる激越型(agit一
は,気管支性肺嚢腫と確診された.
至erte Form)にも有効であって, Imipramln よりも
第2例:藩主は1才2ヵ月の女児で,偶然気管支炎で
適応範囲が広い利点をもつという.また効果発現が他の
.入院し,胸部レ線にて右横隔膜挙上および右心症を発
一見.心血管造影,心臓カテーテル検査の結果,右記無形
抗うつ剤にくらべて早いことも特色とされている.
以上のこれまでの知見を参照し,また他の抗うつ剤の
作用と比較しながら,われわれの症例について考察を行
成と診断した.
以上,これら肺および気管支の発生異常による症例の
なった.
報告が増加しているが,われわれもこれら症例について
20.点頭てんかんに対するCOttiso1大量療法
発生学的見地から若干検討し,併わせて文献的考察を加
(第皿報)
えた.
(小児科)○深沢 純子・福山 幸夫
18.「精神分裂病」と診断された症例の確認経過
点頭てんかんの治療は,1958年Sore1らのACTH
(神経精神科)柴田 収一・○稲川 鶴子
療法の発表により,大きな変貌をとげた。われわれは
「精神分裂病」は,最も多い精神疾患といわれてお
Corticosteroid 4時間点滴静注を行ない,血漿および髄
り,またわが国でも精神病院入院患者の約7割が占めら
液11−OHCS濃度を蛍光測定し,その濃度と治療効果,
.れている.しかし,当教室では,この診断には慎重に臨
とくに脳波上の改善との相関を検討し,その結果をすで
に第34回女子医大学会総会で発表した.今回は点頭てん
んでおり,既に20年来,精神分裂病という診断は,他の
かんに対するステロイドホルモン経口大量投与で顕著な
効果を認めたので報告した.すなわち 1)点頭てんか
精神科教室に比して少なかったし,特に最近3年間は,
全く見られない.
一 497 一
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(放射線科)○曽根田きよ子・山崎 統四郎・
ん児の約半数に著効がえられた.2)既往におけるAC
中塚次郎・田崎暎生
TE療法が有効であった例はもちろん, ACTH療法で
(産婦人科)佐藤 佑子・長崎 光子
無効であった例に対しても,Cortis・1は有効であった.
悪性腫瘍をシンチグラム上,陽性に描画せんとする試;,
3)Cortisolの投与量は10mg/kg/dayから始め,必要に
応じて25mg/kg/dayまで増量する.4)発病から治療
みは,古くからなされているが,甲状腺癌の転移巣や骨
開始までの期間は,短いほど成績がよく,atypical hy−
腫瘍,脳腫瘍以外では,必ずしも良好な結果は得られて
psarythmiaに対して最も有効であった.5)発病月令,
いなかった.
1969年2月EdwardsおよびHayesは6・Ga−citrate
器質病変の存否は治療成績と無関係であった.
21.不純N−Butyl−N−butanol(4)・nitrosamin経口
がSoft tissue tum・rsに著明に集積されることを偶然
に発見し,報告している.本邦でも東らが1969年6月に
投与によるラットの実験的膀胱腫瘍について
その追試を試み,発表して以来,その有用性が注目され
(泌尿器科)
○河野 南雄・梅津 隆子・吉田 美喜子・
つつある.われわれも1970年1月から6月までに67Ga一・
今井通子・吉田 聰子・佐々木則子・
一citrateによる腫瘍スキャンを29症例 (肺腫瘍などの・
益子 五月
胸部疾患20例,上顎癌などの耳鼻科領域疾患6例,そ
Druckreyらは, Nitrosamineの化学構造と発癌作
の他3例)に試み,1)現時点では67Ga−citrateは最:
用一臓器親和性一についての一連の実験において,N−
も有望なる癌親和性放射性医薬品であり,従来のものに.
Butyl−N−butanol(4)一nitrosam三n (以下B B Nと略)
比し著しく勝れている.2)胸部X線写真の読如上困難
の経口投与によって,ラット(Stamm BD H)の実験的
な,貯留した胸水に重る腫瘍の解析,肺門に重るリンパ・
膀胱腫瘍をつくることに成功した(Zschr f. Krebsfor−
節転移の解析などに有効である.3)ただし良性疾患,
sch.66, 280. 1964).
特に急性炎症でも67Ga−citrateは集積し得るので,良
ところが,BBNの合成過程の最後の高圧真空蒸溜が
性,悪性の鑑別に,どの程度,有効であるかは,今後の
技術的に困難であり,純化BBNの入手は困難である.
検討を要する.などの結果を得たので,その後の結果も.
しかし,不純BBN(1.R・にて, BBNのほかに,
合わせて報告した,
ニトロソ体と酸化物をふくむ)は比較的容易に入手可能
23.巨大腫瘍によって圧迫された尿管の術前術後の所
見
である.
(産婦人科)○加藤 彰子・洪 瑞標
実験方法ならびに実験成績:
1.Wistar系ラット(体重約200 g前後)
骨盤腔内の巨大腫瘍によって,尿管が圧迫され,排尿
a)雄性:5匹に不純BBNO.02ml/日を飲料水に混
障害が起こり,ひいて腎機能までが侵される事は考えら
じて140日間,計2。8m1投与(対照5匹).
れるが,実際このような例に遭遇することは比較的まれ,
b)雌性:5匹に純BBNO.0工ml/臼を飲料水に混じ
である.婦人科的に認めうる尿路障害は子宮頚癌による
ものがもっとも多く,しかも,癌の浸潤による尿路閉鎖
て140日間,計1 .4ml投与(対照5匹).
2.経過ならびに成績
は永久的なものであって,腎機能の回復もことさら論ず
実験群雄,雌各1匹が84日目と31日目に自然死した
ることもなく,必然的に次第に消失するが,しかし,こ
のような巨大腫瘍の圧迫による尿路障害では,体位やそ
が,腫瘍の発生はなかった.
不純BBN投与の雄性ラット225日以後では4直すべ
の他の変化によって瞬間的にでも,発作性に除去される
てに膀胱腫蕩の形成(papillary carcin・ma 2,PaPill−
ことがあり,したがって排泄障害も時々一過性に消失し
Oma2)あり,また,純BBN投与の雌性ラット253日
得ることが考えられ,このような場合では,腎機能は長:
以後でも4寵すべてに膀胱腫瘍の形成(全例papillary
期間にわたって保たれるのではないかと想像し,その圧
carcinoma)をみた.
迫腫瘍を除去することによって機能改善を計ることがで
対照群には,膀胱腫瘍の発生をみなかった.
きる.われわれは骨盤腔内に発生する巨大腫瘍によって
結語:不純BBN経口投与によってもラットの実験的
尿管が圧迫され,P.S.P,1.P.,レノグラムにより,
膀胱腫瘍を高率につくり得た.今後,この方法により症
腎機能障害を認め,高血圧,肝障害,動脈硬化などの合併・
例を追加する予定である.
症を起こし,手術不可能とまで言われながら,その圧迫1
腫瘍の除去によって,軽快し得た症例を2例経験したの
22.67Ga・citrateによる腫瘍スキャニング
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