【黒い天使の笑】 - タテ書き小説ネット

【黒い天使の笑】
愛娘
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︻小説タイトル︼
︻黒い天使の笑︼
︻Nコード︼
N4115J
︻作者名︼
愛娘
︻あらすじ︼
黒い天使。白い悪魔にあった者の前に十年後、必ず姿を現す。そ
して、死んだ者からの心を伝え、生と死を与える。死を与えた者に
は嘲笑うかのように、生を与えた者には微笑むように笑う黒い天使。
︻白い悪魔の涙︼に続く黒い天使のもう一つ物語。︱あなたは生き
るべきか、死ぬべきか︱
本編﹃白い悪魔の涙﹄
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guid=on
1
第一章 兄との約束︵前書き︶
白い少女が黒い少女の隣でまた泣いていた。
﹁イフ、そろそろ時間だわ。ちょうど十年。﹂
﹁あの子はどうするの、イズ。﹂
白い少女は尋ねた。
﹁まだ分からないわ。どっちにしろ、いつか死ぬんだけどね。とり
あえず、あの子のお兄さんからの心、伝えてこないと。﹂
﹁うん。﹂ 白い少女は小さくうなずいた。
黒い少女は真っ黒な羽を広げて飛びかった。
2
3
第一章 兄との約束
黒い天使。
残酷なほど美しく花開く黒い天使。
また今日もどこかで笑っている。
また夏がきた︱︱︱。
あの大嫌いな夏だ。
斎堂神楽。
4
現在26歳。
長かった髪はばっさり切って、顔も昔の憎しみの籠もった顔ではな
く、時隆のように和やかな顔つきになっていた。
あれから十年がたっていた。
あの日、時隆が死んだ日から十年。
﹁あっという間だったよ。﹂
神楽は仏壇の上の時隆の写真を見て呟いた。
今も昔と変わらない時隆の笑顔。
ずっと笑ってる。
妹から愛情の代わりに憎しみを貰い。
5
それでも、時隆は笑って死んでいった。
﹁もう、あれから十年。私はどんどん年を積み重ねていって、あん
たは写真の中で昔のまま。﹂
今、神楽は医師の仕事に勤めている。
毎日、忙しい日々が続くが神楽は時隆のことを忘れたことは一度も
ない。
仕事の時は机に時隆の写真を置いておき、いつもその笑顔に励まさ
れている。
今日もまた。
﹁⋮⋮!﹂
神楽は振り返った。
6
誰かに呼ばれたような気がした。
﹁︱︱︱誰⋮⋮?﹂
気配が感じられる。
神楽はすっと立ち上がり玄関へ歩いていった。
玄関の扉を開けると朝の眩しい光が差し込んだ。
︱︱︱︱。
また呼ばれた。
神楽は無意識に家を飛び出していた。
7
どこへ向かっているのか分からなかった。
ただ、何かが自分を導いているように感じられた。
そして、ある場所で足が止まった。
﹁ここは⋮⋮⋮。﹂
険しい森の前にそびえ立つ鳥居。
まるで、未知なる世界への入り口のよう。
昔、来たことがある。
8
﹃早くしろよ!﹄
﹃待ってー。﹄
⋮⋮⋮そうだ、あの日の夏︱︱︱。
神楽は鳥居に足を踏み入れていた。
草や枝を掻き分け奥へ進んでいく。
何かが呼んでる。
小さな光が見えてきた。
出口だ。
バサァァ
9
視界が急に広くなった。
光が眩しい。
そして、神楽の上にちらちらと何かが振ってきた。
﹁⋮⋮花びら⋮⋮。﹂
視線を上に向ける。
﹁わああぁぁ⋮⋮⋮!﹂
見上げると、満開の桜の木がそびえ立っていた。
桃色の花びらが神楽の昔の記憶を運んできた。
10
﹃おい!神楽!早くこいよ!﹄
﹃待ってよ、お兄ちゃん!﹄
あの日も暑かった︱︱︱
﹁ほら、早く!﹂
時隆は神楽を背に険しい道をどんどん進んでいく。
﹁はぁ⋮⋮早いよぉ⋮!﹂
神楽は息を切らしながら無我夢中で時隆を追っていた。
追い付くと時隆は空を指差した。
﹁見てみろ!あれ!﹂
﹁⋮⋮わあぁ!すごい!綺麗⋮⋮。﹂
11
﹁だろ?﹂
時隆は自慢げに鼻をすすった。
﹁この桜はな、開花が遅いから今の時期が一番綺麗なんだぜ。夏で
も見れるってすげーだろ!﹂
﹁うん!ありがとうね!お兄ちゃん!﹂
神楽は無邪気な笑顔で走り回った。
それを嬉しそうに時隆は笑っていた。
﹃お兄ちゃん!また、連れてきてね!﹄
﹃あぁ、約束だ!﹄
12
約束だ。
桜は絶えなく薄桃色の花びらを散らしている。
﹁兄さん⋮⋮約束、守ってくれたんだ⋮⋮⋮。﹂
神楽は涙を流しながら、桜を眺めていた。
﹁ありがとう⋮⋮兄さん⋮⋮。﹂
神楽は笑顔で桜に向かって言った。
それを後ろで見ている少女がいた。
﹁伝えたわよ。あなたの心。あの子は生きるべきね。私に命を奪う
13
資格はないわ。﹂
そして少女はやさしく笑った。
黒い少女は笑った。
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第一章 兄との約束︵後書き︶
﹁イズ、あの子、生かしてくれたのね。﹂
白い少女は笑顔で泣いていた。
﹁えぇ。生きるべきだわ。お兄さんのためにも。﹂
黒い少女はやさしく微笑んだ。
・
.
.
.
*
15
第二章 黒い花と黒い母親︵前書き︶
白い少女と黒い少女がいた。
﹁⋮⋮⋮﹂
﹁どうかしたの?﹂
黒い少女は俯く白い少女に寄り添った。
白い少女は夕日を見つめる。
﹁あの女を殺して﹂
白い少女は消えそうな声で言った。
﹁それは私が決めることよ﹂
﹁そう。でもあなたはきっと殺すわ﹂
16
﹁そうね﹂
黒い天使が飛び立った。
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第二章 黒い花と黒い母親
波の音。
あの日から変わらないこの海。
少年と少女がいたときと変わらないまま。
一人の男が白銀の幼い少年の写真を持って波打ちぎわに立っている。
﹁⋮⋮ぼっちゃま、綺麗でございますね﹂
独り言のように呟いて笑った。
精一杯笑った。
18
見慣れない風景。
あの海とは遠く離れたこの町。
一人の女がソファーに座って外を眺めていた。
坂城ナウ。
あの坂城メアの母親。
メアを殺した本人。
girl︵白い少女︶のおかげね∼﹂
あの後、ナウは会社に復帰し社長まで駆け上った。
﹁これもあのwhite
ナウは満足そうに笑った。
その時、ドアの叩く音がした。
﹁What?﹂
19
to
me
ナウが振り向く前にドアが開かれた。
﹁Hello.Nice
はじめまして︶﹂
そこには真っ黒な少女が立っていた。
ナウは面倒臭そうに顔をしかめた。
﹁何?あなた﹂
to
you︵こんにちは。
﹁すごいですね。私が日本人だと気づくとは﹂
黒い少女は無表情のまま言った。
girl︵白い少女︶と関係
girl︵黒い少女︶?﹂
﹁何しに来たのかしら?white
がありそうね。Black
﹁そうよ、イフのこと覚えているのですね?﹂
﹁もちろんよ、メアが死んでからもう八年経つのね∼。あんな役立
たずな息子でも役に立ったわ﹂
ナウはさり気なくウィンクした。
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黒い少女はそれをなんでもないかのように見つめた。
﹁あなたは悲しい人ね﹂
﹁?﹂
﹁あなたは過去二つの命を奪ったわ﹂
黒い少女はまっすぐにナウを見た。
﹁メアの命と、その姉のサリナの命﹂
﹁そうね∼﹂
ナウは笑いながら目の前においてあるカップティに手を伸ばした。
﹁十年前にサリナを殺し、八年前にメアを殺した。あなたは自分の
したことをどう思っているのですか?﹂
﹁そうね、大成功だったわ∼。最初は少し迷ったけど、今になって
は殺してよかったわ﹂
﹁違います。そのことではありません。メアとサリナのことをどう
思っているかを聞いているんです﹂
21
黒い少女は静かに言い張った。
ナウは紅茶を口に含みながらう∼んと唸る。
﹁そうねぇ⋮⋮別になんとも思ってないわ。むしろ”邪魔”だった
かしらね。だから殺してよかったわ。邪魔者はいなくなったし、会
社の社長になれたし∼、一石二鳥ね﹂
﹁⋮⋮そう﹂
ナウは笑って黒い少女を見た。
﹁ところで、あなたは何をしに来たのかしら?﹂
﹁私は天使のイズ。あなたを︱︱︱︱︱
殺しにきました﹂
黒い天使が笑って。
22
﹁散れ﹂
︱︱︱︱真っ黒な花が咲いた。
とてつもなく残酷な真っ黒な花が。
坂城ナウ、飛び降り自殺。
動機、不明。
飛び散った真っ黒な血が花開いた。
﹁あなたは死ぬべき﹂
黒い天使は笑った。
心のない真っ黒な女の死を。
23
嘲笑うかのように。
24
第二章 黒い花と黒い母親︵後書き︶
白い少女が笑っていた。
﹁花が咲いたようね﹂
﹁黒い花よ﹂
﹁白い花は咲かないのかしら﹂
白い少女は面白そうに笑っていった。
﹁さぁね﹂
・
.
.
.
*
25
第三章
心のはじっこ︵前書き︶
白い少女はソラを見ていた。
﹁ソラには神様がいるのよ﹂
﹁そんな迷信を信じてるの?﹂
黒い少女が呆れたように言った。
﹁迷信じゃない、本当にいる﹂
﹁どうだか﹂
﹁あの子もきっとそう信じて⋮﹂
26
第三章
ソラ。
心のはじっこ
ただ果てもなく続くソラは
私の心を揺すぶる。
また⋮ここに来て、届かないものに手を伸ばした。
あの日から変わらない月。
﹁10年ってあっという間だね⋮ツモ﹂
10年前に事故⋮いや、殺されたツモに私は黙祷を捧げた。
風が冷たく頬を撫でていく。
黙祷を終えると、またあの痛みが襲ってきた。
私は胸を押さえてしゃがみこんだ。
息が乱れ、冷や汗が流れる。
27
﹁私は⋮⋮武井を殺した⋮⋮、これはその代償⋮かな﹂
誰かに語り掛けるように呟いた。
その声は大きな暗いソラに吸い込まれ、誰にも届くことはない。
しみじみと独りになってしまったことを感じる。
ふ、と背後に気配を感じた。
﹁⋮ツモ?﹂
呼び掛けたが返事がない。
静かに、大きく深呼吸をして速まる動悸を静めた。
﹁私ね⋮⋮ここが病気なの。﹂
胸を押さえたまま言った。
﹁きっと神様が私に罰を与えたんだ。﹂
なんでこんなことに⋮
28
悲しみと怒りが心で入り交じる。
私は小さく蹲り、歯を食い縛った。
﹁あなたの余命、聞きたい?﹂
不意に横から声がした。
顔を上げると黒い誰かが立っていた。
人影から月の光が漏れ、顔がよく見えない。
﹁誰?⋮⋮ツモ?﹂
﹁彼ならあなたの後ろにいるわよ﹂
黒い影はとても静かに言った。
私はそっと後ろに振り返ろうとした。
﹁やめなさい。あなたが今振り向けば彼は永遠にこの世から消える
ことになる﹂
29
黒い影はゆっくり私に近づいてきた。
月の照らす角度が変わり影の姿が露になった。
白い少女に似た凛々しい顔立ちに、鋭く暗い瞳。
それと真っ黒な翼。
﹁悪魔?﹂
﹁天使﹂
黒い少女は無表情のまま吐き捨てるように言った。
白い少女とまるで対照⋮
﹁あなたは余命3ヶ月よ﹂
驚かなかった。
こんな身体じゃそんなものだろうと思った。
でも死にたくない。
30
﹁あなたは白い女の子を知ってるの?﹂
﹁ええ﹂
﹁じゃぁ、私の願い、また叶えてよ﹂
﹁⋮⋮﹂
余命2ヶ月⋮
ズキッ
また痛みだした⋮
私は一息おいてからソラを見上げた。
ズキッ
31
﹁神様を殺して﹂
﹁⋮⋮﹂
1ヶ月⋮
﹁代償の命は私の母﹂
2週間⋮
私は笑いながら言った。
そして、ソラに手を伸ばして星を指で追い掛けた。
﹁神様なんかいなくなればいい。ねぇ⋮ツモ。そうすれば、誰も死
ぬこともなかったよね﹂
そう言うと、背後でツモが悲しい顔をしている気がした。
32
1週間⋮
﹁残念だけど無理よ﹂
天使の言葉に私はソラに出した手を引いた。
﹁私は悪魔のように命を代償に願いは叶えることはできない。私は
ただ罪を犯した者を裁くだけ﹂
ズキッ
﹁⋮⋮やだ⋮﹂
﹁真実よ﹂
ズキッ
33
﹁私は⋮⋮﹂
ズキッ
﹁死に、たくない⋮﹂
ズキッ
﹁死にたくない⋮!﹂
私は歪んだ顔で必死に声を出した。
ズキッ
﹁聞いてよ、私の願い﹂
34
天使は答えない。
﹁ねぇ⋮﹂
ズキッ
目が霞みはじめる。
﹁ねぇ⋮っ!!﹂
﹁あなたは﹂
天使は静寂の中、漆黒の翼を勢い良くひろげた。
そして、笑いながらこう言い放った。
﹁余命1日﹂
35
†‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡†
夜が明け、ソラは赤く染まりはじめた。
﹁ツモ⋮﹂
そこにはツモがいた。
悲しそうな顔で私を見ている。
その目は何か訴えているようだった。
その後、手を伸ばしても届かない、遠い遠い星が輝く夜明けのソラ
に消えた。
星⋮⋮
違う、夜明けなんてきてない。
36
私の視界が赤く││⋮
死にたくない⋮
私は瞳から光が消えるまで、動かない手を懸命に伸ばそうとした。
生きたい、って││。
37
第三章
心のはじっこ︵後書き︶
黒い少女はソラを見ていた。
﹁やっぱり神様なんてただの迷信﹂
﹁⋮⋮﹂
﹁いくら祈ったって、叶わないものは叶わない﹂
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PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n4115j/
【黒い天使の笑】
2013年6月27日01時14分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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