2014年のブラジル経済と債券・株式市場の展望 - HSBC Global Asset

ご 参 考 資 料
2013年12月20日
- 運用のスペシャリストが語る -
2014年のブラジル経済と債券・株式市場の展望
2014年、ブラジルでは6月∼7月に開催されるサッカーワールドカップや10月の大統領選挙など、大き
なイベントを控え、投資家の注目が集まっています。そこで、HSBCグローバル・アセット・マネジメント
でブラジル・中南米を専門に担当しているプロダクト・スペシャリストに2014年のブラジル経済の動向
や債券・株式市場をどのように見ているのか、について聞きました。
ビクター・アラカキ
HSBCグローバル・アセット・マネジメント
シニア・プロダクト・スペシャリスト ブラジル・中南米担当
2003年より資産運用関連業務に従事。Corp Consultoria Financeira(ブラジル)のM&A部門を
経て、2006年にHSBCグローバル・アセット・マネジメントに入社、現在に至る。
− 2014年のブラジルの経済成長はどの程度を予想していますか。
緩やかな回復局面にあり、2014年は2013年と同程度の2%台半ばの成長を予想
実質GDP成長率の推移(2003年∼2015年)
ブラジルでは景気は緩やかな回復局面に入って
いますが、2014年は2013年と同程度の成長にとど
10
(%)
まるものと思われます。当社では実質GDP成長率
は、2012年の+1.0%から2013年、2014年は2%台
半ばを予想しています。ちなみに、IMF も2014年は
+2.5% *1の成長見通しを発表しています。
ルーラ政権時代(2003年∼2010年)にはブラジル
8
予想
6
4
2.5 2.5
3.2
の潜在成長率*2は4.0∼4.5%と見られていました
が、現在は3.0%程度まで低下したとの見方が有
力です。これまでブラジルの成長モデルの柱とな
2
0
っていた消費(Consumption)、与信(Credit)、資源
(Commodity)という3Cの成長の勢いは、以前に比
べやや緩やかになってきたように思われます。
*1 IMF World Economic Outlook Database(October 2013)
*2 インフレを加速させない範囲内で最大限達成可能な成長率
1
巻末の「留意点」を必ずご覧ください
-2
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(年)
出所:IMF World Economic Outlook Database(October 2013)の
データをもとにHSBC投信が作成
HSBC × Brazil
2014年のブラジル経済と株式・債券市場の展望
潜在成長率を抑えている主な要因として、投資の低さがあげられます。実際、ブラジルの固定資本投資の対
GDP比(2012年)*は18%であり、中国の46%、インドの30%、ロシアの22%と比較すると低水準にあります。しか
し、ブラジル政府は現在、大規模なインフラ投資計画である「成長促進プログラム(PAC)2」を推進しており、エネ
ルギー、社会・都市基盤、輸送網整備の幅広い分野において、民間資金も取り込んだインフラ投資を加速させて
います。
さらに政府は、「ブラジルコスト」の削減にも取り組んでいます。これは、インフラ不足に加えて、非効率な行政
手続き、複雑な税制、労働・雇用面の保護規制など、進出企業が直面する様々な障害を排除する取り組みであ
り、企業の事業拡大意欲や設備投資の拡大につながるものです。
ブラジル経済は、このような取り組みにより潜在的な成長力が押し上げられ、中長期的には、高い経済成長を
取り戻すことが可能であると当社では見ています。
* 出所 : 世界銀行
− 2014年10月の大統領選挙とその後の政策の行方についてはどうでしょう。
現時点ではジルマ現大統領が優勢と見られる
ブラジルの調査会社ダッタフォーリャが11月29日に発表した2014年大統領選挙に関する世論調査では、与党
労働者党(PT)のジルマ現大統領の支持率が47%、最大野党社会民主党(PSDB)の党首アエシオ・ネーヴェス
が19%、ブラジル社会党(PSB)の党首エドゥアルド・カンポスが11%となっています。なお、マリーナ・シルバは、
8月の調査結果では26%でしたが、10月に新政党「持続ネットワーク」設立の承認が得られずPSBに移籍しました。
このように、現時点では、ジルマ大統領の人気が他をリードしており、2014年大統領選挙のメインシナリオは、
ジルマ大統領の再選と見られています。ただし、長引く低成長と高インフレに加えて、各党の候補者がなお未確
定であること、野党が連携する動きなどから、依然として大統領選挙の行方は不透明な状況にあります。
しかし、いずれにしても、大統領選挙の勝利者は、インフレ抑制、財政再建、経済構造改革を進めることを強く
求められることになります。
2014年大統領選挙の世論調査
50
40
47
(%)
2013年8月調査
2013年10月調査
2013年11月調査
42
35
26
30
21
20
19
15
13
8
10
11
N/A N/A
0
ジルマ現大統領(労働者党)
ネーヴェス(社会民主党)
カンポス(ブラジル社会党)
シルバ(ブラジル社会党)
注1 次期大統領として投票する候補者名をあげた回答のみを総数としており、「未定・不明」は総数に含んでいない。
注2 8月は、シルバ氏が設立を目指していた新政党「持続ネットワーク」代表時の調査結果。
注3 その後、ブラジル社会党からの候補者は未確定で、 10月、11月の調査結果はカンポス氏が出馬した場合のシナリオに基づく。
出所 : ダッタフォーリャのデータをもとにHSBC投信が作成
2
巻末の「留意点」を必ずご覧ください
HSBC × Brazil
2014年のブラジル経済と株式・債券市場の展望
− インフレの動向やブラジル中央銀行の金融政策の見通しを教えてください。
インフレ率は当面、高止まりが続くものの、金融引き締め効果が表れ、落ち着く見通し
ブラジルでは、労働市場が逼迫し、賃金上昇圧力が根強い中で、サービス部門の価格上昇が目立っています。
さらに、レアル安によるインフレ圧力も加わっていることなどから、インフレ率は、当面、高止まりが続くものと当社
では予想しています。
ブラジル中央銀行は、2013年の4月から11月に
かけて6会合連続で計2.75%の利上げを行いまし
インフレ率と政策金利の推移
(2008年1月末∼2013年11月末)
(%)
20
た。中央銀行のインフレ警戒感は依然として強く、
2014年1月には政策金利をさらに0.5%引き上げ
政策金利
15
10.5%にすると当社では予想しています。
しかしながら、金融引き締め効果が次第に表れ
10
つつあること、また食料品価格の上昇ペースが鈍
化していることなどから、今後、インフレ率の一段
5
インフレ目標 (4.5%±2.0%) インフレ率
の加速は抑えられ、中央銀行のインフレ目標レン
ジ(4.5%±2.0%)内での推移が続くものと予想し
0
08
ています。こうしたことから、中央銀行は、 2014年
1月に利上げを行った後、年末まで政策金利を10.5
09
10
11
12
13
(年)
※インフレ率は拡大消費者物価指数(IPCA)上昇率(前年同月比)
出所 : ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成
%で据え置くと見ています。
− ブラジル債券市場の見通しをどのように考えていますか。
ボラティリティ(価格変動率)が高まる可能性はあるものの、利回りは依然として魅力的な水準
2年国債の利回り比較
(2013年11月末)
ブラジル債券市場は海外からの投資資金を引き
付けています。2013年6月には外国人投資家の債
券投資に係る金融取引税が撤廃され、海外から
の債券投資が増加しました。また、政策金利が連
続して引き上げられる中で、国債利回りは上昇し
ており、現在の利回りは主要国と比べ相対的に高
い水準にあります。さらに、後述(次ページ参照)
のように、当局の断固たる通貨防衛策がレアル相
場の下げ止まり感を広げている点も、ブラジル債
6.5
6.2
4.3
2.7
0.3
準、レアルの底値感、比較的良好なファンダメンタ
ルズなどから、ブラジル債券市場は、引き続き魅
力的な投資対象であると思われます。
3
巻末の「留意点」を必ずご覧ください
出所:ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成
0.1
日本
米国
オーストラリア
中国
南アフリカ
る可能性があります。しかしながら、高い利回り水
7.8
ロシア
どから、ブラジル債券市場はボラティリティが高ま
8.5
インドネシア
国内では大統領選を控えた政治リスクの高まりな
11.8
インド
2014年は、米国の量的緩和の規模縮小に加え、
(%)
ブラジル
券投資を支援する要因となっています。
14
12
10
8
6
4
2
0
HSBC × Brazil
2014年のブラジル経済と株式・債券市場の展望
− ブラジル株式市場の見通しはどうですか。
国内外の強弱要因が交錯する中、2014年上半期はボラティリティが高まる可能性も
2014年のブラジル株式市場は、国内では、景気の緩やかな回復、インフラ投資の加速、海外では、中国経済の
改善、欧州中銀(ECB)や日銀による現行の金融緩和策の継続、などがプラス要因になるものと考えます。また、
他の新興国株式と比較しても相対的に割安なバリュエーションも支援材料になると見ています。
他方、米国が段階的に量的緩和の規模縮小を
進めると見られること、国内では、年初の追加利
上げの可能性や10月の大統領選挙を控えた政策
の不透明性などが不安定要素となることが見込ま
れ、特に上半期はボラティリティが高まる可能性が
あると思われます。
20
各国の予想PER(2013年11月末)
(倍)
17.1
13.6
15
12.9
12.4
10.9
4.5
5
当社では、素材、エネルギー、金融セクター内の
割安な大型銘柄には上昇余地が大きいと見てい
9.7
8.7
10
0
ロ
シ
ア
ブ
ラ
ジ
ル
ます。また、レアル安の恩恵を受ける企業にも注
目しています。さらに、2014年は「インフラ」が大き
なテーマになると見ています。足元では空港や道
イ
ン
ド
中
国
路などで民間事業者にインフラ運営権を付与する
コンセッション方式のインフラ投資が活発化してお
イ
ン
ド
ネ
シ
ア
ト
ル
コ
メ
キ
シ
コ
タ
イ
※ブラジル:ボベスパ指数、ロシア:RTS指数、インド:SENSEX指数、
中国:上海総合株価指数、インドネシア:ジャカルタ総合指数、
メキシコ:IPC指数、トルコ:BIST100指数、タイ:SET指数を使用
※SET指数はタイ証券取引所(SET)によって算出され、当該指数に
関する著作権はSETに帰属します。
出所 : ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成
り、このようにインフラ整備の加速が見込まれる中、
当社ではこれまで以上にインフラ関連銘柄を有望
視しています。
−レアル相場の見通しを教えてください。
相対的な金利高がサポート要因となり、底堅い推移が予想される
レアル(対円、対米ドル)の推移
(2013年1月2日∼11月29日)
ブラジル中央銀行は、2013年8月下旬に大規模
な通貨防衛策を発表しました。具体的には、2013
年末まで、毎週月曜日から木曜日は5億米ドル、
1.5
レアル高
金曜日は10億米ドルの米ドル売り/レアル買い介
入を実施するというものです。当局による本格的な
(米ドル/レアル)
(レアル/円)
55
対円(左軸)
50
大規模な
通貨防衛策
を発表
1.8
通貨防衛策を受けて、レアルの下げ止まり感が広
がっています。
45
2.0
中央銀行は、2014年以降も同様の対策を継続す
る意向を示しています。2014年は、相対的な金利
40
2.3
高というサポート要因もあり、レアルは対米ドル、
対円で底堅く推移するものと当社では見ています。
対米ドル(右軸)
レアル安
35
2.5
13/1
13/3
13/5
13/7
13/9
13/11
出所:ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成
4
巻末の「留意点」を必ずご覧ください
(年/月)
留意点
<当資料に関する留意点>

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