論文紹介 Optical Fiber Transmission Technologies for Digital Terrestrial Broadcasting Signals IEICE Transactions on Communications,Vol.E88-B,No.5,pp.1853-1860(2005) 前田幹夫,中戸川 剛,小山田公之 電波の届きにくい山間部やビル影などの地域に地上デジタル放送を無線伝送するには膨大な経費が必要となる。そこで, 地上デジタル放送を早期にあまねく普及させる手段として,光ファイバーで無線を補完することが有効である。本論文で は,放送局から家庭までの伝送設備における光ファイバーの利用技術を紹介している。中でも自治体の持つ既存の光通信 網を活用して波長多重方式で地上デジタル放送を再送信した実証実験について詳しく述べている。また,放送波の直接受 信のみならずケーブル引き込みも困難な既存の集合住宅での難視解消のため,目的地の近くの中継点までは放送波を光伝 送し,中継点においてミリ波に変換して分配するRadio On Fiberシステムを提案している。提案システムは,中継点と家庭 の受信設備にミリ波の局部発振器が不要なため,良好な位相雑音特性を必要とするOFDM信号を安定に受信できる特長が ある。また,ミリ波の搬送波電力を低減して光伝送することで,受信CN比を改善できる。これらの工夫に基づき,光SSB 変調器を試作し,従来と比較して光伝送後のCN比を14dB改善できることを明らかにした。 Comparison of Measured Rain Attenuation in the 12-GHz Band with Predictions by ITU-R Methods IEICE Transactions on Communications,Vol.E88-B No.6,pp.2419-2426(2005) 峯松史明,鈴木陽一,亀井 雅,正源和義 東京で2000年4月から2003年の12月までの約4年間に連続観測した,12GHz帯降雨減衰量と1分間降雨強度の統計結果をま とめた。それぞれの年間時間率0.01%値は10.9dBと67.9mm/hであった。東京の1分間降雨強度の年間時間率0.01%値につい て過去と最近の値の比較から,その値に増加の傾向があることを示した。さらに,東京と大阪における12GHz帯降雨減衰 量の観測結果とITU-R法(P.618)による推定結果を比較し,ITU-Rの古い勧告(P.618-5)の方が現勧告(P.618-8)よりも良い 推定結果を与えることを示した。受信点では弱い降雨が観測されているにもかかわらず,衛星電波伝搬路途中に発生した 雨域の狭い対流性降雨によって,強い降雨減衰が受信点で観測される例があり,この現象がP.618-8の推定法で採用されて いる斜め伝搬路長調整係数に適正に反映されていないことを明らかにした。降雨減衰推定精度向上のためには,斜め伝搬 路長調整係数について,地域別の降雨特性を考慮したさらなる検討が必要である。 Cu下地膜を用いたFe-Co-Al-O薄膜の磁気特性 日本応用磁気学会誌,Vol.28,No.3,pp.397-400(2004) 林 直人,宮本泰敬,町田賢司,玉城孝彦 携帯端末で用いる超小型・大容量のハードディスク装置を開発するため,垂直磁気記録を用いた超高密度記録の研究を行っ ている。垂直磁気記録の高密度化のためには,磁気ディスクの記録層を微細化しその磁気異方性を上げる必要があり,大き な記録磁界を発生させる高飽和磁化軟磁性材料の開発が不可欠となる。本論文では,Cu下地膜を用いることによりFe-Co膜 の軟磁気特性が改善される現象とそのメカニズムについて述べている。Fe-Co合金は,原子量比Fe70%,Co30%付近におい て遷移金属合金中で最大の飽和磁束密度Bsを有するが,スパッタ膜は保磁力Hcが60Oe以上の面内等方的な磁化曲線を示し, そのままでは記録ヘッドに適用できない。わずか1at.%のAl-Oの添加と0.2nm厚のCu膜を下地膜に用いることでBs=23.5kG, Hc=2Oe,有効透磁率1200以上,強磁性共鳴周波数2GHz以上といった良好な軟磁気特性が得られることを明らかにした。 この最大級の飽和磁化を持つ軟磁性材料の開発によって,一層の高記録密度化の見通しが得られた。 間欠投射映像を用いた番組出演者への情報提示 映像情報メディア学会誌,Vol.59,No.2,pp.257-264(2005) 深谷崇史,藤掛英夫,山内結子,三ツ峰秀樹 番組出演者への演技支援を目的とした情報提示手法の研究を進めている。バーチャルスタジオでの番組制作では,出演者 は合成されるCGキャラクターやCGの図表などを直接見ることができない。従って,CGの位置や動きなどを確認するため に,出演者自身とCGが合成された映像をスタジオ内のモニターで見ながら演技を行うことが多い。このため,自然な振る舞 いによる演技が難しく,出演者の目線がCGを向いていない不自然な合成映像になるなどの問題があるうえ,通常のスタジ オでの番組制作よりも収録に時間がかかることが多い。この問題を解決するため,出演者には見えても撮影カメラには映 らない間欠投射映像により,CGの位置や動きなどの情報を出演者の視線の先に提示する情報提示手法およびシステムを開 発した。本論文では,CCDカメラの電子シャッターと同期し,撮影カメラの未露光期間を利用する間欠投射映像について 述べるとともに,開発した情報提示システムの詳細および同システムを実際の番組制作で使用した効果について述べる。 66 NHK技研 R&D/No.93/2005.9
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