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論文紹介
時空間領域セグメンテーションを用いた動画被写体領域抽出
映像情報メディア学会誌,Vol.68,No.11,pp.J471­J481(2014)
大久保英彦,藤井真人
映像の中の指定された被写体領域を選択し,部分映像として取り出す作業は,ドラマなどの映像合成制作において必須となる。
本論文では,この作業を,簡単かつインタラクティブな操作で実現する手法を提案する。本手法では,部分映像の取り出し作
業において,ユーザーへの高速なフィードバックを実現するために,事前に映像を時空間領域に分割し,その分割された領域
をノード(処理単位)と見なしたグラフカット処理(隣接するノード間の情報に基づいてノード全体を分割する最適化処理)
を利用する。そのために,新たな時空間領域の分割手法と,指定被写体領域の抽出手法を考案した。この時空間領域の分割手
法により,一般的な背景の中を動く被写体を抽出するという難易度の高い処理を可能とする分割結果が得られる。また,指定
被写体領域の抽出手法は,不均一な時空間分割領域をノードとしてグラフカット処理を行う場合でも,効果的な抽出を行うこ
とができる。この分割手法と抽出手法の2つを組み合わせることにより,効率的で高品質な被写体抽出が可能になることを示
した。
放送時刻でファイルにアクセス可能な分散ファイルシステム
電子情報通信学会論文誌B,Vol.J97­B,No.11,pp.1071­1084(2014)
金子 豊,竹内真也,黄 民錫,和泉吉則※
※(一財)NHKエンジニアリングシステム
今後の放送システムにおいては,従来と同様の放送サービスを提供するだけでなく,放送後に放送コンテンツをさまざまな通
信系サービスに提供することが多くなると予想される。本論文では,放送コンテンツを長期的に保管し,放送時刻を使って映
像,音声,関連データにアクセスできるスケールアウト型(サーバーの追加によりストレージ容量の増加や性能の向上が可能
であること)の分散ファイルシステムを提案する。このファイルシステムにおいては,保管したファイル内のデータを,仮想
的なファイルの時間軸上に,フレーム単位でマッピングすることにより,フレーム単位でデータを取得することができる。そ
のため,大量に蓄積した放送コンテンツのデータを,ファイルの保管場所を気にすることなく,仮想的なファイルを介して放
送時刻を指定することで取得できる。また,フレーム単位のデータアクセスをファイルシステムがサポートすることで,複数
のデータを容易に同期して読み出すことができる。本論文では,試作したシステムの概要について述べるとともに,このシス
テムを放送番組の録画システムとして利用した2年間の実験運用の経過と,そのアクセス性能について報告する。
Binaural Reproduction of 22.2 Multichannel Sound with Flat Panel Display−
Integrated Loudspeaker Frame for Home Use
映像情報メディア学会誌,Vol.68,No.10,pp.J447­J456(2014)
松井健太郎,大石 諭,杉本岳大,大出訓史,中山靖茂,大久保洋幸※1,佐藤 宏※2,水野孝二※2,森田雄一※2,
足立修一※3
※1(一財)NHKエンジニアリングシステム ※2 フォスター電機(株) ※3 慶應義塾大学
8Kスーパーハイビジョンの音響方式として,22.2マルチチャンネル音響(22.2ch音響)方式の開発を進めている。この方式
は,空間的に配置された22チャンネルと,低音効果用の2チャンネルから構成され,高い臨場感と3次元的な音響空間を構築
することができる。また,家庭でのさまざまな視聴環境に対応するために,22.2ch音響をより少ないスピーカーで擬似的に再
生する,バイノーラル再生法の研究も進めている。本論文で提案する枠型スピーカーによるバイノーラル再生法では,フラッ
トパネルディスプレーに一体化された12個のスピーカーを2次音源(制御のための音を放射する音源)としてバイノーラル信
号処理を行い,22.2ch音響方式の各チャンネルのうち,ディスプレーの位置に重なる前方チャンネル,スピーカーを置くこと
のできない側方,後方チャンネルを擬似的に再生する。聴取位置でのインパルス応答の測定実験を実施し,提案法により十分
な精度で音像を合成可能であること,12個のスピーカーを2次音源として使用することにより,合成される音像の定位感が向
上することを確認した。
Three−dimensional Integration of Fully Depleted Silicon−on−insulator
Transistor Substrates for CMOS Image Sensors Using Au/SiO2 Hybrid
Bonding and XeF2 Etching
ECS Transactions,Vol.64,Issue5,pp.391­396(2014)
萩原 啓,後藤正英,井口義則,大竹 浩,更屋拓哉※,年吉 洋※,日暮栄治※,平本俊郎※
※ 東京大学
自然な立体感のある映像が撮影できるカメラの実現に向けて,多画素化と高フレームレート化を両立できる画素並列信号処理
3次元構造撮像デバイスの研究を進めている。今回,デバイスを作製するための要素技術として,接着剤なしで基板を直接接
合する技術と,基板の超薄片化技術を開発した。金電極を二酸化シリコン膜中に埋め込んだCMOS(Complementary Metal
Oxide Semiconductor)回路基板の表面を,CMP(Chemical Mechanical Polishing)
(薬液の化学的な作用と砥粒の機械的な
作用を併用して基板表面を研磨する手法)を用いて算術平均粗さRa(日本工業規格(JIS規格)で定められた表面処理状態の
評価基準の1つ)が2Å以下になるまで平坦化した。この基板にアルゴンと酸素プラズマによる活性化処理を施したあと15°
C
で冷却し,表面に水分子を吸着させて接合することで,極めて高い接合強度が得られることを確認した。次に,裏面の不要な
シリコン層を取り除くために,機械研削とフッ化キセノンによるエッチング(化学処理を利用した表面加工)を併用し,受光
部層にダメージを与えずに6.5µmまで薄片化することに成功した。接合後の断面観察からは,接合界面の不良は確認されず,
接合の合わせ誤差も3µm以下と良好であった。これらの結果から,開発した要素技術が,将来の3次元構造撮像デバイスの
作製に適用できる見通しを得た。
NHK技研 R&D/No.150/2015.3
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