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19
平成
年度
中国四国食料・農業・農村情勢報告
中国四国農政局
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は じ め に
先ごろ内閣府により行われた、
「地方再生に関する特別世論調査」によると、
「住
んでいる地域は元気があると思うか」との問いに対し、「元気がない」「あまり元
気がない」との回答が53%となった。これは、前回の調査の45%から8ポイント
増加している(図Ⅱ−0−1)。
また、同調査において、「地域が元気になるために期待する施策」として、「農
林水産業や伝統的な地場産業、地域の既存産業の振興」、「祭り、自然、町並みな
どの地域資源を活かした観光・交流の促進」をあげる人が、それぞれ3割程度に
増加している。このように、地域の再生のために、一定程度の農業分野の施策は
期待されているものと思われる。
図Ⅱ−0−1
住んでいる地域は元気があると思うか
2.4% 1.3%
H19年12月
12.5%
30.7%
37.9%
元気がある
15.3%
多少元気がある
どちらともいえない
わからない
H17年6月
11.5%
0%
27.6%
20%
9.7% 6.4%
40%
29.9%
60%
あまり元気がない
15.0%
80%
元気がない
100%
資料 : 内 閣 府「 地 方 再 生に 関 す る 特 別世 論 調 査」( 19年 12月 調 査)
このようななか、政府において、19年11月30日に「地方再生戦略」が地域活性
化統合本部会合によってまとめられた。そのうち、農山漁村については、「地域
の基盤となる農林水産業等の再生」「新たな村の再生」に取り組むこととしてい
る。
中国四国農政局としても、中国・四国地域における地域社会について現状を整
理し、今後の地域の再生へ向け役立つものとなるよう、本報告を編集した。
まず第1章では、中国・四国地域の現状を、全国と比較しながら、統計データ
をもとに詳細に記している。
続く第2章以降では、地域再生へ向けた様々な取り組みについて、可能な限り
広く事例を紹介している。
- 235 -
本報告書の作成にあたっては、既存の資料・調査を十分に斟酌した上で、新た
に必要な事項を調査・収集し、とりまとめを行った。これらの資料・調査に関わ
った関係者の皆様方のご協力とご努力に厚く感謝を述べたい。
- 236 -
第1章
1
中国四国地域の農村の状況
農村の現況
(1)中国四国の農村
ア
農家人口
中国・四国地域は、人口総数は約1,200万人であり、これは日本の総人口(1
億2,780万人、2005年現在)のほぼ1割を占めている。
この人口総数のうち、平成2年(1990年)当時、農家人口(総農家)が2割の
約250万人に上っていたが、17年(2005年)では、1割強の約160万人まで減少し
ている。その間、人口総数そのものにそれほど大きな変化はない(図Ⅱ−1−1)。
これは、農家人口の減少が、その地域の人口減少の影響によるものではないこ
とを示している。
図Ⅱ−1−1
中国・四国地域の人口総数と農家人口
(千人)
14,000
12,000
10,000
11,940
11,957
11,887
11,762
8,000
人口総数
6,000
農家人口
4,000
2,543
2,223
1,985
1,649
1990年
1995年
2000年
2005年
2,000
0
資 料: 人 口 総 数は 、 総 務 省 「国 勢 調 査」。 農家 人 口 は 、農 林 水 産 省 「農 林 業 セ ンサ ス 」
注 :農 家 人 口 は総 農 家 で あ る。
しかしながら、中国・四国地域においては、労働力人口に占める農林業人口の
割合が全国(3.8%)と比較して高く、中国では5.1%、四国では8.8%に達する。
これは、中国・四国地方においては、農業人口が減少した現在においても、農
林業が地域において主要な産業の一つであることを示している(図Ⅱ−1−2)。
- 237 -
図Ⅱ−1−2
中国・四国地域の労働人口に占める農林業人口の割合
10.0%
9.0%
8.0%
7.0%
6.0%
5.0%
4.0%
3.0%
2.0%
1.0%
0.0%
8.8%
5.1%
3.8%
全国
中国
四国
資 料: 総 務 省 「労 働 力 調 査」 平 成 19年年 平 均 結 果。( 平成 20年 1 月公 表 )
また、中国・四国地域の農業は、高齢者への依存が高いのが特徴である。
例えば、販売農家の農業就業人口に占める65歳以上の割合をみると、全国に比
べ7ポイントも上回っていることがわかる(図Ⅱ−1−3)。
また、販売農家の年齢別農業従事者数を見ると、65歳∼74歳を頂点に、逆ピラ
ミッド型を描いている(図Ⅱ−1−4)。
これらのデータは、年齢が下がるほど農業従事者が少ないことを示しており、
このままの状態が続けば、中国・四国地域の農業人口は、今後もさらに減少する
ことが予想される。
図Ⅱ−1−3
販売農家の農業就業人口に占める65歳以上の割合
66.0%
65.2%
64.0%
62.0%
60.0%
58.2%
58.0%
56.0%
54.0%
全国
中国・四国
資 料 : 農 林水 産 省 「 2005年 農 林 業セ ン サ ス 」
注 : 農 業 就業 人 口 は 、主 と し て 自営 農 業 に 従事 し た 世 帯 員数 ( 販 売 農家 ) で あ る。
- 238 -
図Ⅱ−1−4
中国・四国地域の販売農家の年齢別農業従事者数
(歳)
75∼
142,691
189,182
65∼74
164,254
55∼64
143,352
45∼54
70,700
35∼44
25∼34
49,662
15∼24
35,411
0
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
資 料 : 農林 水 産 省 「2005年 農 林業 セ ン サ ス 」
注
イ
: 農業 従 事 者 数は 、 自 営 農業 に 従 事 し た世 帯 員 数 (販 売 農 家 )で あ る 。
農業集落
農業集落とは、市区町村の区域の一部において、農業上形成されている地域社
会のことである。平成17年2月現在、中国地方に約2万集落、四国地方に約1万
1千集落、あわせて約3万1千集落が現存する(全域が市街化区域である農業集
落を除く)。この農業集落に、どの程度の農家人口があるのかを計算すると、全
国と比較して、農家人口が3割以上少なく、比較的小規模の集落が多数存在する
ことがわかる(表Ⅱ−1−1)。
表Ⅱ−1−1 農業集落当たりの構成人員数
農家人口
(人)
農業集落数
(集落)
農業集落あたりの農家人口
(人/集落)
全国
11,338,790
139,465
81.3
中国・四国
1,648,984
30,821
53.5
資料 : 農 林 水産 省 「 2005年 農 林 業 セン サ ス 」 をも と に 中 国 四国 農 政 局 で作 成
注: 農 家 人 口は 、 総 農 家の も の で ある 。
農業集落の生活のしやすさの目安としてDID(国勢調査における人口集中地
区)までの所要時間を比較してみる。すると、農業集落からDIDまでの所要時
間は、以下の通りである(図Ⅱ−1−5)。
中国地域は、15分未満の地域が少なく、その代わり3割の集落が、30分から1
時間の距離に位置している。
また、四国地域は、都府県平均と比較すると、全体的に農業集落が都市から離
- 239 -
れていることがわかる。
図Ⅱ−1−5
40.0%
DIDまでの所要時間別農業集落数
37.0%
35.0%
33.8%
都府県
32.4%
31.8%
33.2%
30.0%
27.5%
25.0%
中国
26.9%
28.0%
四国
23.8%
20.0%
15.0%
10.9%
10.0%
1.9%
5.8%
5.0%
4.5%
1.1%
0.0%
15分未満
15分∼30分
30分∼1時間
1.4%
1時間∼1時間半
1時間半以上
資 料 : 農 林 水産 省 「 2005年 農 林 業 セン サ ス 」
注
: 各 割 合は 四 捨 五 入の 関 係 で 合計 100% に なら な い こ とが あ る 。
(2)中国四国の農地
中国・四国地域の土地利用の状況であるが、総面積の7割以上を林野面積が(林
野率74%)、1割弱を耕地面積が占め(耕地率8%)、あわせると8割にのぼる(図
Ⅱ−1−6)。これは、農地及び林地の保全が、国土保全にとって重要であるこ
とを示している。
図Ⅱ−1−6
土地利用の状況(耕地面積及び林野面積、中国・四国地域)
936,925
409,200
(ha)
耕地面積
林野面積
その他
3,725,999
資 料: 総 面 積 は、国 土 交 通 省国 土 地 理 院「 全国 都 道 府 県市 区 町 村 別面 積 調」
( 平 成 17年10月 1 日 基 準日 )
耕 地 面 積は 、 農 林 水産 省 「 平 成 17年 耕 地 面 積調 査」( 平 成 17年 7 月 15日 基準 日 )
林 野 面 積は 、 農 林 水産 省 「 2005年農 林 業 セ ンサ ス」( 平 成 17年 2 月 1 日 現在 )
- 240 -
中国・四国地域における平成17年2月1日現在の経営耕地面積は約27万haで、
これは全国の経営耕地面積(約345万ha)の1割弱を占めている(図Ⅱ−1−7)。
この経営耕地面積も、長年、減少を続けており、その減少率もほぼ一定である。
図Ⅱ−1−7
経営耕地面積(中国・四国地域)
(千h a)
400
380
350
344
308
300
267
250
200
150
100
50
0
1990年
1995年
2000年
2005年
資 料 : 農林 水 産 省 「農 林 業 セ ンサ ス 」 注 :経 営 耕 地 面積 は 、 販 売農 家 の も ので あ る 。
また、経営耕地面積のうち、6割が都市的地域及び平地以外のいわゆる中山間
地域に該当する(図Ⅱ−1−8)。これは、中国・四国地域の地形が、急峻な山
地が広がり傾斜地が多いことに加え、島嶼部も多いことに起因する。
図Ⅱ−1−8
農業地域類型別経営耕地面積
全国
中国・四国地域
山間
19.7%
都市的
地域
16.6%
山間
9.4%
平地
21.4%
都市的
地域
13.9%
中間
28.4%
平地
48.2%
中間
42.2%
資 料: 農 林 水 産 省「 2005年 農林 業 セ ン サス 」
注 :1)農 業 地 域 類型 は 、 平 成13年 11月 時点 の 地 域 区分 で あ る 。
2)経 営 耕 地 面積 は 、 販 売農 家 の も ので あ る 。
- 241 -
また、農家人口の減少による農業の廃業などのため、耕作放棄地が徐々に増え
ている(図Ⅱ−1−9)。このように、中国・四国地方の農地は、その規模を縮
小している。
図Ⅱ−1−9
耕作放棄地面積(中国・四国地域)
(千ha)
40.0
35.0
32.1
33.9
2000年
2005年
26.4
30.0
24.6
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
1990年
1995年
資 料 : 農林 水 産 省 「農 林 業 セ ン サス 」 注 :耕 作 放 棄 地 面積 は 、 総 農家 の も の であ る 。
2
農村の魅力の再発見
都市住民にとって、農村は大変魅力あるものに映ることがある。
内閣府の世論調査によると、都市住民は、農村への定住の願望を少なからず持
っている。例えば、20代の非常に若い世代や、50代の定年前の世代に、それは顕
著である。特に、20代は、「ある」「どちらかというとある」をあわせると実にそ
の3割強が農村への定住の願望があると答えている(図Ⅱ−1−10)。
図Ⅱ−1−10
農山漁村地域への定住の願望の有無(都市住民)
4.9% 0.6%
70歳以上 7.3% 6.1%
6.1%
60∼69歳
75.0%
1.9% 0.5%
9.3% 10.7% 9.8%
50∼59歳
15.0%
どちらかという
とある
どちらともいえ
ない
わからない
67.9%
3.0% 0.5%
13.5%
10.0%
58.0%
1.4% 0.0%
40∼49歳 6.5% 9.4%
21.7%
60.9%
30∼39歳
4.4% 0.6%
5.0%
11.9%
25.2%
20∼29歳
8.1%
0%
ある
22.2%
2.0% 0. 0%
15.2%
20%
40%
どちらかという
とない
ない
52.8%
52.5%
60%
80%
100%
資 料 :内 閣 府 「 都市 と 農 山 漁 村の 共 生 ・ 対流 に 関 す る世 論 調 査」( 平 成17年 11月 調査 )
- 242 -
では、農村のどういった部分に惹かれるのであろうか。
「グリーン・ツーリズムニーズ調査(交流意向調査)」の結果を見ると、「新鮮
な空気などに触れて心身をリフレッシュさせたい」「農村地域で、新鮮でおいし
い食べ物などを楽しみたい」
「農村地域でのんびりとした時間を過ごしてみたい」
といった、農村では当たり前に手に入るが、都市では手に入れることの難しい農
村の「環境・資源」を求める回答が、上位に並んでいる(図Ⅱ−1−11)。また、
「農家の人たちと気軽に交流したい」や「レジャーや体験のため」など、何らか
の農村地域の住民との交流を求めている回答も、2割程度ある。さらに、「特に
関わりをもちたいとは思わない」との回答は1割程度しかなく、農業・農村とな
んらかの関わりを求めていると思われる。
図Ⅱ−1−11
農業や農村との関わり方
新鮮な空気などに触れて
心身をリフレッシュさせたい
61.6%
農村地域で、新鮮でおいしい
食べ物などを楽しみたい
56.6%
農村地域でのんびりとした
時間を過ごしてみたい
44.6%
35.7%
安全な農産物を直接購入したい
レジャーや体験のため
農村地域を旅行したい
24.6%
子どもや孫に農業や農村を
体験させたい
22.9%
都市と農村を行き来するような
生活をしてみたい
22.9%
農家の人たちと気軽に交流したい
22.3%
市民農園などで、 家庭菜園を
してみたい
21.8%
休日などに農業や林業の
手伝いをしたい
10.2%
自分で農業をやってみたい
8.5%
将来は農村に移住したい
6.6%
農村の資源や環境を活用した
ビジネスを興してみたい
3.8%
1.0%
その他
特に関わりを持ちたいとは
思わない
無回答
12.6%
0.4%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
資 料 :(財 )都 市 農山 漁 村 交 流活 性 化 機 構「 グ リ ーン ・ ツ ー リズ ム ニ ー ズ調 査( 交流 意 向 調 査)」
( 平 成18年 2 月 調 査)
- 243 -
これに対して、農村地域の住民による都市住民の見方は、都市住民を拒否する
考え方も少なからず存在する。
例えば、都市住民の移住に対して、どの世代も半数以上が「良いことだと思う」
「どちらかというと良いことだと思う」と肯定的な意見をもっている。その反面、
20代と70代以上において、「良いことだと思わない」「どちらかというと良いこと
だと思わない」との意見が2割を占め、積極的な30代・40代と比較してかなりの
差が見られる(図Ⅱ−1−12)。
図Ⅱ−1−12
70 歳以上
都市住民の農山漁村での定住をどう思うか(農山漁村住民)
6 0∼6 9歳
16. 9%
31. 9%
3 3.6%
5 0∼5 9歳
8.0 % 1 2.8% 8. 0%
20.8 %
24. 0%
26 .4%
4.1 %
2. 7%
15. 0% 6.8 %
21. 8%
49. 7%
3. 4%
7 .6%6.7%
4.5% 1 .8%
4 0∼4 9歳
3 0∼3 9歳
22.6 %
4 3.5%
0%
2 0%
4. 5%
5.1 % 2.6 %
11. 5% 6.4%
32.1 %
42. 3%
2 0∼2 9歳
20.0 %
29.1 %
40.0 %
40 %
4.8 %
3. 2%
14.5 %
11. 3%
60 %
80%
良いことだと思う
どちらかというと良
いことだと思う
どちらともいえない
わからない
どちらかというと良
いことだと思わない
良いことだとは思
わない
1 00%
資 料 : 内 閣府 「 都 市 と農 山 漁 村 の 共生 ・ 対 流 に関 す る 世 論調 査 」( 平 成 17年11月 調 査 )
- 244 -
◇◇コラム「限界集落と水源の里」◇◇
○限界集落
「限界集落」とは、大野晃氏(長野大学教授)による定義では、「65歳以
上の高齢者が集落人口の50%を超え、独居老人世帯が増加し、このため集落
の共同活動の機能が低下し、社会的共同生活の維持が困難な状態にある集落」
(大野晃、2005年、『山村環境社会学序説−現代山村の限界集落化と流域共
同管理』22p)とある。
平成18年4月には、国土交通省が「過疎地域等における集落の状況に関す
るアンケート調査」として、同様の集落の調査を実施している。
その結果、「集落人口に対する高齢者(65歳以上)の割合が50%以上の集
落」は7,878集落に上り、「集落機能の維持が困難な集落」は2,917集落ある
とされている。
なお、ここでいう集落機能とは、資源管理機能(水田や山林などの地域資
源の維持保全に係る集落機能)、生産補完機能(農林水産業等の生産に際し
ての草刈、道普請などの相互扶助機能)、生活扶助機能(冠婚葬祭など日常
生活における相互扶助機能)である。
○水源の里
「水源の里」とは、過疎・高齢化が進行し、コミュニティの維持など、地
域活動が困難な状況に直面している集落がほとんどであり、いわゆる限界集
落とほぼ重なる。
これは、京都府綾部市において、限界集落と呼ばれる地域の多くが、河川
等の水源地域であることから名づけられた。また、限界集落という言葉の持
つ衝撃的かつ悲観的な響きから、明るい前向きなものに転換する意味もある。
同市では、平成19年4月に「水源の里条例」が施行されている。この条例
では、高齢化率が60%以上、世帯数が20戸未満の同市東部の5集落を対象と
し、定住対策や都市住民との交流、特産物の開発支援、生活基盤の整備等に
より、水源の里の振興を目指している。
また、「全国水源の里シンポジウム」が、同年10月に同市で開催され、同
年11月には、「全国水源の里連絡協議会」が設立され、151市町村(20年1
月現在)が参加している。
- 245 -
第2章
1
農業の再生
農村地域の潜在的価値を活かした農業
(1)ブランド化
ブランドとは、「商標。銘柄。特に、名の通った銘柄。」(広辞苑第5版より)
のことである。ブランドが確立すると、そのブランドの品物を反復して購入する
消費者が現れ、また同一品質の商品でも、他より高く販売することが可能となる。
これまでブランドと言えば、衣料(ファッション)・電気製品・自動車等の工業
製品が一般的であったが、古来、農業分野にも数多くのブランドといってよいも
のが存在する。
そこで、こういったブランドの確立を農業分野でも後押しし、あるいは確立さ
れたブランドを保護することで、地域の活性化に役立てようという動きがある。
例えば、18年4月から「地域団体商標制度」(特許庁)への登録が開始され、
また17年度から「本場の本物」(財団法人食品産業センター)の認定が行われて
いる(表Ⅱ−2−1、表Ⅱ−2−2)。
表Ⅱ−2−1
中国・四国地域で登録査定された「地域団体商標」
県名
商
標
鳥取
東伯和牛、東伯牛
島根
しまね和牛
岡山
岡山白桃、千屋牛
広島
広島みかん、広島の酒、広島はっさく、高根みかん、広島レモン
山口
長門ゆずきち、厚保くり
徳島
渭東ねぎ、なると金時
愛媛
真穴みかん、西宇和みかん、西条の七草
高知
ち
や
こうね
あ
つ
いとう
まあな
とくだに
徳谷トマト
資 料 : 特 許 庁作 成 資 料 より 農 業 関 係の 商 標 の み抜 粋
注 : 平 成 20年2 月 19日 現在
表Ⅱ−2−2
県名
香川
中国・四国地域で認定された「本場の本物」
認定品目
小豆島佃煮
こが
高知
管理団体
小豆島調理食品工業協同組合
小豆島桶仕込醤油
小豆島醤油協同組合
小豆島オリーブオイル
特定非営利法人小豆島オリーブ協会
大豊の碁石茶
大豊町碁石茶生産組合
資 料 :( 財 ) 食品 産 業 セ ンタ ー 作 成 資料 よ り 農 業関 係 の 品 目の み 抜 粋
注 : 平 成19年 度 ま での 認 定 品 目
- 246 -
ア
出雲の国仁多米(島根県)
中国山地に囲まれた 島根県の奥出雲地方
は、その土地の86%を山林が占める中山間
地域であり、その水田は標高300メートルか
ら500メートルに分布する。このため、出穂
期から成熟期に昼夜の 温度差が極めて大き
く、奥出雲町の8月の平均気温較差は9.0℃
にもなる(日本気象協会)。しかしこのおか
げで、旨みの元であるでんぷんを多く含み、
伝統 的 なは で干 し作 業
たんぱく質の含有量が低い良質な米を作ることができる。また、斐伊川源流のミ
ネラル分を含んだ水と、仁多牛の良質な堆肥も、このおいしいお米作りにかかせ
ない。
例えば、平成19年11月に奥出雲町で開催
された第9回全国食味 分析鑑定コンクール
(米食味鑑定士協会主 催)においても、奥
出雲仁多米株式会社、 横田特定農業法人ネ
ットワークの出品した コシヒカリが、金賞
を受賞した。
この結果、全国での店頭販売だけでなく、
複数の有名百貨店の 高級食料品ギフト・カ
仁多 米の ブラ ンド で 流通
タログに掲載されるなど、全国ブランドとして販路を拡大している。
また、19年度には、米国(ニューヨーク、ハワイ、ロサンゼルス)への輸出も
本格化している。
今後は、資源循環型・環境保全型稲作を目指して、実証ほ場を活用したデータ
収集と検証を継続し、「出雲國仁多米栽培暦」に準じた米の生産拡大をすすめ、
島根県エコロジー農産物推奨制度にあった基準米を普及させる予定である。
イ
ピオーネ王国おかやま(岡山県)
「大粒」「種なし」「甘い」と三拍子そろ
ったぶどうのピオーネは、巨峰とカノンホ
ールマスカットの交配種で、昭和32年に育
成され、種なし、大粒の安定生産技術が、
岡山県で57年に確立された。
平成13年に「岡山県うまいくだものづく
り推進本部」において、栽培面積1,000haの
広が るピオーネ 畑
- 247 -
目標を掲げて「ピオーネ王国おかやま」の
確立を進めている。これ以降、強力に生産
拡大を推し進めた結果、19年の栽培面積は、
900haを超え、全国一の生産規模となってお
り、生産額も100億円を達成した。
また、生産だけでなく販路拡大について
も、岡山県と農業団体が共同ですすめてお
り、これまで首都圏を重点に、消費者への
PR活動を続け、この結果、東京への 出荷
東 京へ の売 り込 みの 様子
量も年々増加を続け、19年度は300トンを超え、岡山県産のシェアも20%以上と
伸びている。
ウ
つやま夢みのり(岡山県)
岡山県津山市では、平成11年7月に、産学官民連携による新
事業・新商品開発による産業発展に寄与するため、美作大学技
術交流プラザ食品分科会(「つやま夢みのり」グループ)を発
足させ、その事務局を「つやま新産業開発推進機構」内に設置
した。
津山の産学官民連携は、消費者を向いた『地消地産』という
コンセプトのもと、『産』の地元企業がそれぞれの専門分野で商品開発、販売を
手がけ、『学』の美作大学が、技術面でのアドバイスや情報提供をし、『官』のつ
やま新産業開発推進機構が、その支援を行っている。ここに『民』の消費者の声
を取り入れること、またデザイン、ブランディングなどの専門家という『民』の
力を取り入れることで、ニーズや問題点を明らかにし、取り組むべきテーマを見
出だし、多くの商品開発をしてきた。
また、「つやま夢みのり」の共通ロゴマー
クは、13年に作成され、独自の認証基準に
基づく審査の上、使用している。
また、商品開発と併せて、販路開拓も行
っており、「東京インターナショナルギフト
ショー」をはじめとする展示商談会に出展
したり、ホームページの開設、サポーター
制度の運営など、「つやま夢みのり」のブラ
美 作の 国つや ま 山の 幸フ ェア
ンド化に向けて活動を進めている。
- 248 -
エ
れいほく八○構想(高知県)
れいほく
嶺北地域(本山町、大豊町、土佐町、大
川村、いの 町本川地区)は 、標高300メー
トル以上にあり昼夜の寒暖差が激しい山間
農業地域である。また、吉野川の源流域に
あたり、昔から良質米及び優良な種もみの
産地として知られている。
この嶺北5町村では、平成11年から生産
者と関係機関が一体となり「消費者に選ば
れる産地」を目指し、「安全・安心」に対して付加価値をつけた減農薬栽培や、
牛糞・生ゴミ等の地域資源循環など、環境に負荷をかけない環境保全型農業を推
進している。
はち まる
そして、地域ブランドの確立を目標に、「れいほく八○構想」が生み出された。
はっさい
減農薬栽培される野菜に「れいほく八菜」のブランドマークを、特色のある水稲
はっとう
はっか
に「れいほく八稲」、嶺北の気候を生かした花き栽培に「れいほく八花」、嶺北の
はっけい
山で育った産物に「れいほく八恵」、栽培した山野草による園芸品に「れいほく
はっそう
はっさと
八草」、嶺北での加工品に「れいほく八里」、直売所で販売する品物に「れいほく
はっち ょく
八 直」と名付け、ブランド化を図っている。
このうち「れいほく八恵」は、14年度に
作られた。これは、嶺 北の特産物を「お山
の恵み」として売り出 そう!と、ユズ・ゼ
ンマイの加工品からス タートした。特に主
力のユズでは、14年に総勢181名からなる無
農薬柚子部会が発足し た。その後、ユズド
リンクやポン酢しょう 油など、ユズ酢を使
った加工品の商品開発 を行い、販売を拡大
し、作付面積も増加 してきた。このため従
加 工施 設に運 び込ま れ るユズ
来の搾汁施設では処理が追いつかなくなり、17年にはユズの処理加工・充填施設
の整備を行った。この施設では、クリーンルーム化や加工製造ラインの導入など
も行い、さらなる販売拡大を計画している。
(2)食品産業と農業の連携
近年、消費者の「食」に対する簡便化志向の高まりや外部化の進展などを反映
して、加工食品・外食が増加している。また、「食」の安全・安心への関心の高
まりから、国産農産物に対する期待が高まっているものの、国内農産物の供給サ
イドが食品産業のニーズに十分応え切れていないこともあり、加工・外食仕向け
- 249 -
の国産農産物の割合は低下傾向にある。このため、国内農産物等の需要拡大、地
域農業の活性化に向け、食品産業と農業の連携を一層強化する必要がある。
ア
酒粕を利用した漬物製造(山口県)
山口県萩市の豊田物産株式会社(代表:豊
田三智子)は、昭和51年に豊田代表が、家業
だった造り酒屋で出る酒粕を利用してできる
ものをと始めた漬物の製造であったが、2年
後には会社組織になった。当初は親族と2∼
3名の雇用者で漬物製造を行っていた。
当初、取引先がなく小売店等へ出向き対面
販売の量り売りを行っていたが、着実に固定
客をつかみ、現在ではスーパーや道の駅へ卸
長 州 漬(粕 漬け)
したり、直営店をもつまでになった。
特に原点となっている酒粕長州漬は、酒粕の吟味・調味からこだわりをもって
製造している。なかでも人気の商品は徳佐うりを使用し、天日に干した瓜の粕漬
やたけのこの粕漬。昭和63年には山口県特産品振興奨励賞を受賞している。現在
は粕漬だけではなく、沢庵漬やキムチ、浅漬等、漬物の種類も20種類を超える。
また、娘さんが経営する二軒のレストラン
「ゆとり茶屋」、「お食事処さくら」は「やま
ぐち食彩店」に認定され、漬物のバイキング
や地元野菜を使用した料理を提供している。
平成19年には、道の駅萩しーまーと内に萩
地域で収穫された野菜や果物をその場で搾っ
た特製ジュースを提供するフレッシュジュー
スバー「Sakura Cafe」、島根県益田市内に萩
豊 田代 表(右 )と娘 さん
地域の野菜を使った総菜を食べ放題で提供する「うどん処おはな」をオープンし
た。
漬物製造や直営レストランも、できるだけ地元の旬の野菜を利用したものを提
供したいと考えており、現在は地元生産者グループと契約して野菜を栽培しても
らっている。
また、直営レストランでは海の幸をセールスポイントに売り出しているが、今
後は海産物に加え県内産の野菜、特に萩地域で生産された野菜に、よりこだわっ
たメニューを提供したいと考えている。
- 250 -
イ
老舗酒造会社と連携して実現したブルーベリーワイン(広島県)
しんぽうえ ん
広島県大崎上島町の農事組合法人「神峯園」の横本代表は、昭和51年から「ブ
ルーベリーで島おこし」を目指し、ブルーベリー栽培に取り組んでおり、現在、
約3.5haの農園でブルーベリーを栽培している(平成19年6月現在)。
18年11月には竹原市で明治4年から日本酒づくりをしている中尾醸造株式会社
と連携し、栽培実績30年の節目を記念する「瀬戸内海大崎上島ブルーベリーワイ
ン2006(愛称:青玉)」を島の新しい特産品として発売した。
このワ インは、農薬を 使わずに栽培 したブル
ーべリー果実約520粒が500mlボトル1本に凝縮
されてお り、醸造の過程 で一滴の水も 加えられ
ていない。アルコール度は7度以上8度未満で、
色は赤ワ インのようだが 、甘く濃い味 で酸味が
少なく、飲みやすく仕上がっている。
18年は、11月末からクリスマス 商戦をターゲ
ットに発 売して新聞やテ レビにも取り 上げられ
たが、800本しか生産できず、わずか10日間で売
切となっ た。一般的に販 売されている ブルーベ
ブ ル ー ベ リ ー ワ イ ン 2006
リー加工 品の多くは輸 入原料であるた め、国産
完熟果のみを使った限定ワインだという付加価値もついている。
2年目の2007ラベル(19年産)は、原料1トンで1,600本を生産し、昨年購入
できなかった顧客も手に入れやすくなった。
ウ
地場の「やまもも」の有効活用(徳島県)
「やまもも」は、徳島県に多く自生する常緑
樹で県及び小松島市の木に指定され、果実は独
特の外見、風味、食感をもち、徳島では初夏の
味覚として広く親しまれている。しかし、収穫
期が6月下旬∼7月上旬と短く、鮮度が落ちや
すいことや、収量の年次変動が大きい等の課題
があり、青果物として安定供給を図ることは難
しいとされている。
収 穫前 のや まも も
このような状況のもと、JA東とくしま「やまもも部会」と「市岡製菓株式会
社」をはじめとする県内の食品産業事業者は、やまももに新たな価値を見出そう
と、小松島市や徳島県中小企業団体中央会の支援を受け、平成18年に「やまもも
クラスター」を形成した。
このことにより、生産者側のJAから、実需者側
である徳島市の市岡製菓株式会社への原料供給体制が整備され、同社で開発され
- 251 -
た「ヤマモモソース」は、同社の「ケーキ」や「ど
らやき」に使用されている。このケーキは、同社
の関連会社である株式会社五線譜がインターネッ
トで販売し、どらやきは県内のみやげ物店等で小
売りしている。
この結果、青果出荷に比べ、選別・箱詰め等の
労力が不要な加工原料向けの出荷も増加し、同時
期内に平行して出荷することで、収穫期間が短い
ヤ マモ モソ ース
なかでの鮮度保持等の課題が改善されたほか、収穫遅れによるほ場での収穫放棄
や収穫後の廃棄量が減少し、出荷量の増加につながっている。また、全国各地に
宅配することで徳島産やまもものPRにつながり、青果としてのブランド力向上
と加工原料としての新たな価値が注目されている。
今後は、小松島特産やまもものブランド名として統一している「阿波やまもも」
の名称を「地域団体商標」として登録申請する予定である。一方、株式会社五線
譜では「阿波やまもも」を使用した、より付加価値の高い商品としてロールケー
キ等2品目を8月に販売予定とするなど、徳島ならではの味や地方色が自然に感
じられるような商品を開発する予定である。
(3)集落営農
集落営農とは、個々の農家だけでは営農を続けることが難しい場合に、「意欲
・体力・気力」に応じて参加できるもので、農作業等の役割分担を、組織の話し
合いにより自由に決めることができる。また、共同で営農を行うことにより、経
費を大幅に削減することが可能となり、この結果、所得の上昇や労働時間の短縮
が図られる。
ア
農事組合法人ファームおだ(広島県)
東広島市河内町は、東広島市の東端、広島県のほぼ中央に位置する都市通勤圏
で、稲作中心の兼業農業地域である。
小田地区は、昭和52∼62年に地区内のほとんどで県営ほ場整備が実施され、56
∼59年には、機械の共同利用を目的とした営農組合が順次立ち上がった。しかし、
小学校の廃校、保育所や診療所の他地区への統合などが実施され、地区にとって
危機的状況が訪れた。そこで、平成15年10月に役場的機能を有した自治組織「共
和の郷・おだ」を設立した。
同組織の農村振興部が地区全戸を対象に行ったアンケート結果により、42%の
- 252 -
農家が5年後に、64%の農家が 10年後には
「農業ができない」又は「農業をやめたい」
という意向が明らかに なった。そのため、
地域の将来像を農家に 提案し、話し合いを
行い、旧小学校区全体 を一つの農場として
まとめ、集落営農の法 人組織を設立する準
備をすすめた。その結果、12集落128戸が参
加し17年11月に農事組合法人「ファーム・
農村 体験 の様 子
おだ」を設立された。
主要作物は、水稲と大豆であるが、水稲の3割、大豆の6割を直接取引と農家
レストランに使用している。
農地の集積は田のみであり、畑は個人で管理している。また、土づくりを基本
に考え、畜産農家との 連携を図り、稲わら
とたい肥の交換や和牛 放牧の研究に取り組
み、コスト軽減と良質 米生産のため試験的
に4haの 水稲疎植栽培を行っている。将来
的には22haを目標としている。
さらに、女性を中心 に活動している加工
部「おだ・ビーンズ」 では、大豆を中心に
した30種 以上の加工品を開発し、地元の直
売所等で販売するほ か、歳暮時期には詰め
農 産物 品評 会
合わせたものを「ふるさとの味パック深山のかほり」として販売した。将来的に
はみそ、豆腐の加工も予定している。なお、学校給食センターを建設して地産地
消に取り組む東広島市の計画に対応して、野菜栽培に取り組む婦人グループを育
成した。
実際の経営は、農地を荒らさずに守るこ
とが前提であるため、ほ場整備をしていな
くてもすべての田を引き受けた。ほ場整備
がされているかどうかを基準に二つの地代
単価を設定した。けい畔や水の管理は非農
家を含む各集落で管理し、法人から管理費
を支払っている。高齢で管理が難しくなっ
た構成員が所有して いる田の草刈りを、非
直 売所 での 販売
農家の若者が日当を受け取り行うこともある。
地域には40代の若い就農者グループがあり、土・日の作業を中心にオペレータ
として活躍している。また、平成18年春から学卒就農者にも恵まれた。現在、無
- 253 -
人ヘリの資格取得をめざすなど、前向きに取り組んでいる。
イ
農事組合法人うもれ木の郷(山口県)
阿武町は、全国的にも珍 しい無角和牛の
産地であり、キウイフルー ツ等の農産物、
水産物及びその加工品など 畜産、農業、漁
う
ぶ
か
業、林業が基盤である。宇 生賀地域は阿武
町の内陸部の宇生賀盆地に 位置し、農地は
その中央部を占め、昔から 「一目百町歩」
といわれ、外周道路の内側 が広大な一段の
農地になっている。
ここでは、湿田の ため稲作しかできない
大 豆ほ 場と 機械 倉庫
地域農業を再生するため、平成2年に地元有志による「明日の宇生賀を考える会」
を発足し、地域の見直しと再生の検討が始まった。話し合いの結果、9年から基
盤整備事業を行い、一区画約40アールのほ場が整備された。また、同事業とあわ
せて、「将来の地域農業の担い手」等の諸課題の解決を図るため、整備後の水利
・農地の管理を地域ぐるみで行う方向で意思統一し、山口県普及部局の助言を踏
まえ、9年に4集落の地権者参加による農事組合法人を設立した。
主要作物は水 稲と大豆であり、そのほ か
にスイカやはく さいを栽培している。乾 田
化した水田では 、ブロックローテーショ ン
により低コスト ・省力化を図っている。 さ
らに、畑作物の 団地化による野菜(すい か
等)の拡大を図 り、収益性の高い安定し た
複合経営を確立した。
また、組合員 世帯の女性が「四つ葉サ ー
クル」、産直野菜を生産するクラブ、未利用
四 つ葉サ ーク ルによ る豆腐 加 工場
・余剰野菜を加工して付加価値をつけ商品化を行う加工クラブ、地域の環境美化
運動を行う環境クラブ及び収穫体験交流を行う交流クラブを組織し、地域づくり
に貢献している。
けいはん
高齢者の労働力を畦畔管理等に活用するとともに、若者には法人内組織の部長、
班長等の重要ポストを任せ、運営経験を積ませて組織の担い手としての育成を図
っている。18年には、新規の就農者もあった。
今後は、法人独自のブランド米である「うもれ木の郷米」や地域特産としての
「福賀すいか」など農作物のブランド化に取り組むとともに、イベント等を通じ
たPRにより販路拡大を図る。
- 254 -
ウ
農事組合法人しげとも(徳島県)
な か が わ
阿南市は徳島県の南東部に位置し、那賀川
水系の豊かな水資源や温暖な気候を活かし、
平坦部では古くから栽培されている早期水
稲を主に野菜、花き等、中山間部では施設
果樹、施設野菜等の栽培が盛んに行われて
いる。
昭和52年に発足した農業機械共同利用組
合「重友コンバイン組合」は、共同機械を
利用した稲作経営と 作業受託に取り組んで
麦 刈りの 様 子
きたが、約30年が経過し、使用していた農業用機械の老朽化が問題となってきた。
また、集落内の農家も高齢化が進み、休耕地の増加が懸念されていた。
このため、地域の担 い手不足解消と生産
性の向上、集落内の農 地を維持管理するた
め、重友コンバイン組 合構成員が中心とな
り、42戸の農家が19haの農地を集積し、農
事組合法人「しげとも」を17年 12月に設立
した。
農事組合法人しげと も は、農業用機械を共
同で利用するほか、用 水や農機具の管理、
生産から出荷までの 作業等を行い、個人の
施 設の 外観
労力と経営費の低減による生産コストダウン、各構成員の生産性の効率化と収益
の向上、担い手不足の解消を図っている。農地は4割を集積し、構成員等の農地
も利用権の設定を行い、水稲、麦、ブロッコリー等を栽培する法人経営を営んで
いる。なお、水稲については、水やけい畔管理等の日々の管理を構成員に再委託
し、米の収量に応じて管理料を支払っている。
農家の中には農地執着が非常に強く、共同で生産・出荷することに対して不安
感をもつ者があった。そのため、地域の担い手不足解消と生産性の向上、集落の
農地の維持管理の重要性を理解してもらうため、少人数での集会を多く開催し、
自由に発言できる機会をもつことで、みんなの意思疎通が図れ法人化につながっ
た。その結果、平成19年9月現在では43戸の農家が参加している。
今後は、次期リーダーを養成し、サラリーマン家庭の主婦や森林組合など各種
団体との連携を深め、季節雇用のパートタイマーを労働力として補っていきたい。
2
直売所による地産地消の推進
- 255 -
地産地消とは、地域の消費者ニーズに即応した農業生産と、生産された農産物
を地域で消費しようとする活動を通じて、生産者と消費者を結び付ける取り組み
である。「顔が見え、話ができる」といったコミュニケーションをともなう農産
物の行き来の中で、信頼感の醸成、「食」や「農」への理解の増進などの効果が
期待されている。
生産者から農産物を直接消費者に販売する直売所は、当初、簡素で小規模なも
のが主流であったが、次第に規模を拡大し、現在では年間販売額が5億円を超え
るものまで存在するようになった。
直売所は、消費者には、より新鮮な農産物が得られること、流通経費等の節減
により安価に購入できるなどメリットも多い。また、生産者にとっても、地域の
消費者ニーズを的確にとらえた効率的な生産、流通経費等の節減により収益性の
向上が期待できるなどメリットがある。
ア
農事組合雲井の里(島根県)
邑南町は、島根県の 中央部に位置し、そ
の大部分が山林が占める中山間地域である。
農業は、水稲、酪農、 高原野菜を中心に行
っているが、高齢化の 進行とともに、農業
生産額も減少している。
この地域では、25年以上前から無人の農
産物直売所が点在して いたが、これらを合
併することで地域の 活性化の起爆剤とする
直 売所 の売 り場 の様 子
ため、常設の産直市を開設することになった。
平成10年に農事組合「雲井の里」を設立し、翌11年にふれあい市場「雲井の里」
を開設した。直売所の利用者は、年間7万人程度で推移している。
取り扱っている品目は、朝採れ野菜、工芸品、加工品、果物、花、苗物等多種
にわたる。加工品については、直売所に併
設する加工場にて、田舎寿司、もち、菓子
等の製造を行っている。
また、農産物もこの地域の標高差を活か
した商品も充実させ、ブドウ、ブルーベリ
ーなどの新しい果実や、地域の伝統野菜も
復活させるなど、新たな商品の開発を行っ
ている。その上で、研修を積極的に行うこ
世 代 を超え た 情報 交換
とで農産物や加工品の品質の向上を図っている。
さらに、POSシステムや携帯電話を利用した販売情報の受発信を行うことに
- 256 -
より、追加出荷などを機動的に行っている。
これらの活動には、高齢者を中心に、定年帰農者、新規就農者、女性起業家な
ど様々な立場の者が参加しており、消費者も含めた地域の交流の場ともなってい
る。
この結果、この地域の生産力が再び活発になってきており、遊休農地も解消が
図られている。
イ
みどりの館みやま(岡山県)
みどりの館みやまは、玉野市のほぼ中央部の標高50∼180メートルの緑に恵ま
れた「深山公園」の一角にある。同市は岡山県の南端中央部に位置し、岡山市・
倉敷市とも接している。農地は児島湾干拓地及び金甲山を主とする丘陵地帯に広
がっており、また瀬戸内海からの海産物も
豊富な地域である。
同市では、農家の高齢化や担い手が減少
するなか、地域の農水産物の生産と流通を
促進し、併せて都市住民との交流を図るこ
とを目的に、平成8年に特産品及び農水産
物の販売所「みどりの館みやま」を整備し
た。その後も鮮魚コーナーを設けるなど、
施設を充実している。
消費 者と 生産 者の 交流
販売登録者は、当初180名程度であったが、現在では460名を超えるまでになっ
た。利用者は、年間40万人前後で推移しており、リピーターも多い。
当直売所は、生産者の顔が見える「安心」や新鮮さを活かした「安全」を常に
提供することを目標に運営している。そのため、生産者名の明記や店内での消費
者とのふれあいを大切にし、生産者研修会も定期的に行っている。
また、地元で生産する紫いもを活用した、
紫いもソフトクリーム や紫いもまん等、加
工品開発にも力を入れている。
地元生産者にとって 、少量の農産物や規
格外農産物を消費者に提供できる場として、
当直売所がもつ役割も 定着してきた。これ
に伴い、定年帰農者・ 女性農業者等の小規
模農家の生産意欲が向 上し、耕作放棄地の
新 た な商 品の 開発
抑制にもつながっている。
- 257 -
ウ
株式会社布野特産センター(広島県)
三次市は、広島県北東部の中国山地より
に位置し、布野町はその北部に位置する。
地域の基幹産業は農業であり、主にアスパ
ラガス、ほうれん草、きく等を生産してい
る。
この地域では、農家の高齢化や後継者不
足により、地域の農業が不振に陥るなか、
地域を活性化するために、直売所を開設す
訪 れや すい外観 の 直売 所
ることとなった。
平成8年に、道の駅「ゆめランド布野」内に、直売所「布野ふれあい市場」を
開設し、16年には地元産の生乳や野菜を使用したアイスクリーム工房「まるごと
布野のアイス屋さん」を併設した。また、
18年からは、道の駅内のレストランにおい
て、地元産農産物を使った「ふるさとバイ
キング」を開始した。直売所の利用者は、
年間約15万人に増加してきている。
この他、学校給食への食材の提供や、地
元小学生の農業体験、加工体験など食育に
も一役を買っている。
さらに、地元の伝 統野菜である「おおみ
地元 小学 生と 田植
な」(漬物用葉菜類)の栽培を振興し、特産品化を進めるなど、新たな商品開発
も行っている。
この結果、地産地消を中心とした農業の活性化を通して、地域に元気を与えて
いる。
エ
石井町農業振興グループ「百姓一」(徳島県)
石井町は、徳島県北部の吉野川下流に広がる平野部に位置し、徳島市に接して
いる。水稲、野菜、酪農を中心とした複合経営が営まれているが、都市化が進み
道路整備等による農地の分断や、都市住民との混住化が進んでいる。
農家が農産物を作るだけではなく、自分たちで販売することで、農家に活力を
取り戻そうと直売所「百姓一」を開設した。
当初、「野菜を売ってオーストラリアへ行く」などの具体的な目標を掲げ、活
動を続けた結果、それらの目標も達成でき、そのことが農家に自信を与え、さら
なる活動の原動力になった。
この中でも特に、女性起業家が大いに活躍しており、菓子、寿司、パン、味噌
- 258 -
等、様々な物品の加工 販売を行っている。
また、都市住民との 交流として、じゃが
いもの収穫体験や、貸 し農園での農業体験
を行ったり、小・中学 生が自分たちで作っ
た野菜を直売所で販売 するなど食農教育に
も力を入れている。
この結果、「百姓一」が単に農産物を販売
するだけの直売所では なく、農産物の販売
を通じて農家の意識改 革と自己研鑽を進め
買 い 物客 でに ぎ わ う売 り場
るとともに、消費者や地域社会との交流を通じて、豊かで住みよい地域づくりの
拠点となってる。
- 259 -
第3章
1
地域社会・文化・環境の保全
農村地域の共同活動
農村地域には、農地・農業用水等といった地域資源が数多くある。これらの資
源は、これまで集落など地域の共同活動により保全管理されてきたが、農家の高
齢化や非農家との混住化が進行して、適切に保全管理していくことが困難になっ
てきている。
例えば、比較的、混住化が進んでいない中国・四国地域においても、5割以上
の混住化が、すでに半数を超えている(図Ⅱ−3−1)。
図Ⅱ−3−1
農業集落における混住化の割合別集落数割合
2.6%
23.7%
中国・四国
19.5%
19.5%
20.0% 14.7%
混住化
なし
1∼2割
3∼4
5∼6
全国
15.2% 18.5%
21.5%
22.6%
20.6%
7∼8
1.6%
9割以上
0%
20%
40%
60%
80%
100%
資 料: 農 林 水 産省 「 2005年 農林 業 セ ン サス 」
また、環境保全を重視した農業生産に転換していくことが求められている。
このため、現在、これらの資源を保全するため、地域の住民(農家と非農家)
が協力する活動が、注目を集めている。農林水産省においても、資源や農村環境
を守る地域共同活動と環境保全に向けた先進的な営農活動を農地・水・環境保全
向上対策によって、総合的に支援している。具体的には、地域共同による効果の
高い取り組みを行う活動組織に対して、その活動経費を支援するとともに、さら
に環境負荷を低減する先進的な取り組みを行った農家への交付金の交付を行って
いる。
ここでは、こういった地域ぐるみで取り組む共同活動の事例を紹介する。
ア
茶屋ES(島根県)
ち ゃ や いーえす
茶屋ES(environmental
safeguards)は、島根県安来市大塚町の茶屋集落
を中心とする地域で共同活動を行っている活動組織である。この地域は、平地農
業地域であり、米を中心に大豆の栽培も行っている。
- 260 -
これまで、地域の農業用水路や農道などの管理は、農家や土地持ち非農家を中
心に行われてきており、生活排水が流れ込む一部の水路については、非農家も含
めた地域住民が主体となって管理することもあった。
しかし、近年、地域住民の 高齢化、農家
の後継者不足が進んだことか ら、農地が荒
廃するなど、農地や農業用水 に対する維持
管理に支障が生じてくるようになった。
このため、茶屋営農組合が 中心となり、
集落で協議を行った結果、地 域の農地や農
業用水に対する環境保全につ いて、農家、
非農家ともに協力していく方針で合意した。
また、地域の青年組織 、団体等にも参加を
地 域で 水路 の草 刈や 泥 上を行 う
呼びかけ広く協力を得ることとした。
この結果、茶屋ES の構成員の過半数を
非農家が占めるまでに なり、季節ごとの水
路清掃などの共同作業 も非農家とともに行
うようになった。
また、荒廃地を復田 して、花卉等を植え
つける景観保全活動な ども非農家を含めた
メンバーで計画及び作 業を行うようになっ
水 路の 生態 系の 調査
た。
さらに、小学生を交えて、農業用水路の生態系の調査や、水田の貯留機能に関
する学習なども積極的に行うことにより、地域内のコミュニケーションを図って
いる。
イ
神代地域資源保全組合(岡山県)
こうじ ろ
神代地域資源保全組 合は、岡山県井原市
神代町を中心とする地 域で活動を行ってい
る活動組織である。こ の地域は、中間農業
地域に位置し、従来よ り水田を中心とした
農業を行ってきた。こ れまで、水路やため
池の保全は、農業者の 共同作業によって行
われてきたが、農家の 高齢化と後継者不足
が深刻化し、将来の維 持管理について懸念
されるようになった。
水路 、農 道の 草刈 の共 同作 業
このため、土地改良区が中心となって、非農家の参加を含めた組織作りを行っ
- 261 -
たところ、環境保全に理解が得られた自治会、子供会、消防団も活動に加わり、
活動組織の構成員の3分 の1を非農家が占
めるようになった。
この結果、水路やため 池の保全活動につ
いて、自治会をはじめと する非農家も参加
し作業を行っている。
また、近年、見ること が少なくなったホ
タルの鑑賞会を開催し、 非農家や子ども達
を交えて、環境に対する 意識の向上を図っ
子供 た ちとホ タル の 鑑賞 会
ている。
ウ
赤松地区資源保全協議会(徳島県)
みな み
赤松地区資源保全協 議会は、徳島県美波
町を中心に活動してい る活動組織である。
この地域は、山間農業 地域に位置し、9割
以上の農家が水田農業を営んでいる。
地区内では、平地に 比べ過疎化、高齢化
の進行が早く、20年以上前に設置した揚水
ポンプ等の施設の老朽 化に対処できず、そ
きれ いに 管理 され た排 水路
の維持管理に大変苦労していた。
このため、地区内の4つの実行組合と4つの水利組合が協力して、一体的に地
域の保全活動を行っていくことで一致し、赤松地区資源保全協議会を発足するこ
ととした。
協議会では、農家が中心となっているた
め池の管理のほか、非農家も参加して、農
道の草刈や農道・水路等の美化活動などを
行い、農村環境の向上に努めている。
また、この地域は、以前から特別栽培米
「乙姫米」の栽培・販売を通じて、都市住
民との交流活動も積極的に行ってきた地域
であり、都市住民に良好な農村空間を提供
すべく、さらなる農村 景観の保全・創出の
乙 姫米 の収 穫で 都 市住 民と 交流
ため、さくら、あじさい、もみじ等の植栽管理にも取り組んでいる。
- 262 -
エ
牛渕地区資源保全隊(愛媛県)
うしぶち
牛渕地区資源保全隊は、愛媛県東温市牛
渕を中心に活動する組織である。都市的地
域に位置するこの地域は、米・麦を中心と
した水田農業が営まれており、これまで、
農道・水路・ため池など地域に数多く存在
する農業用施設の維持保全活動を通じて集
落のまとまりを堅持してきた。しかし、近
年、農業者の高齢化・減少等に伴い住民間
のつながりが脆弱化してきており、地域の
農 業用 水の 清 掃作 業
将来が危惧される状況となった。
そこで、集落の主要組織である土地改良区、自治会、地域おこしグループ「牛
渕昭和倶楽部」、PTA、老人会などが一同に会して、これからの集落について
勉強会や話し合いを行った。なかでも集落の15年後の集落の姿を数値等で具体的
に予想する作業においては「このままでは集落の環境維持が非常に困難になる」
との危機感を共有するに至った。
その後、集落では農 道・水路を保全管理
する共同活動に、非農 家が参加する農道・
水路への植栽活動やた め池、湧水周辺の親
水施設整備が積極的に 行われる等の変化が
現れてきている。消防 団と協力して行う幹
線水路の点検はその一 例であり、小学校と
連携した貴重種の放流 や田植え、稲刈りな
どの活発な活動状況は 地元紙にも紹介され
子 供た ち と貴重 種 を放流
ている。
活動組織では、よりよい集落づくりに向けて、今後集落全体を巻き込み、さら
に効果の高い活動を展開していきたいと考えている。
2
農村の伝統文化活動の保全
芸能や神楽をはじめとする伝統文化は、古来、農業と結びついて発生、発展し
てきたものであり、農村の貴重な資源の一つである。しかし、現在、高齢化や過
疎化の進行によって、これらの文化を受け継ぐ世代が不在となり、文化が失われ
つつある。
中国・四国地域では、祭りが75%、伝統文化・芸能の保存が28%、各種イベン
トの開催が39%の集落でしか、行われていない(図Ⅱ−3−2)。
- 263 -
図Ⅱ−3−2
100.0 %
90.0 %
80.0 %
70.0 %
60.0 %
50.0 %
40.0 %
30.0 %
20.0 %
10.0 %
0.0 %
活性化のための活動別農業集落数割合(中国・四国地域)
76.2% 75.0 %
39. 4% 3 8.8%
10年前
現在
28. 8% 27 .5%
祭り
伝統文 化・
芸能の保存
各種イベント
の開 催
資 料 : 農林 水 産 省 「2005年 農 林業 セ ン サ ス」
ここでは、それらの伝統文化を守り続けるために行われている、さまざまな事
例を見る。
ア
新田の人形浄瑠璃芝居(鳥取県)
智頭町新田は鳥取県の東南部に位置し、
岡山県と接した山間地にある。
人形浄瑠璃(相生文楽人形)芝居は、明
治7年に新田村の青年岡田太平治が発起し
て、淡路の人形浄瑠璃を始めたとされてい
る。
平成7年には、「新田人形浄瑠璃の館」を
建設し、人形・写真・資料等を常時展示す
るとともに、和室部分 を利用して人形浄瑠
人形 浄瑠 璃上 演の 様 子
璃を披露できるようになっている。
この地域は、平成3 年の大阪いずみ市民
生協との交流がきっか けで、施設を順次整
備してきた。そして、12年には全国初の集
落型NPO法人「新田 むらづくり運営委員
会」を設立した。
14年度に、「むらの伝統文化顕彰」(財)
都市農山漁村交流活性化機構理事長賞を、1
5年度に、「豊かなむらづくり」農林水産大
清流 の里 「新田 」
臣賞を、17年度にも「オーライ!ニッポン大賞」審査委員会長賞を相次いで受賞
- 264 -
している。
また、清流の里「新田」では、都市部の住民に地元の食材を使った軽食を提供
しており、宿泊も可能となっている。ここは、集落の拠点施設でもあり、秋の村
祭り・イベント等にも活用されている。
イ
岩国市行波の神舞(山口県)
ゆかば
岩国市行波地区は、山口県東部に位置し、
清流錦川の錦帯橋上流の北河内村にある。
古来より「行波の神舞」が社家神楽とし
て行われていたが、明治になってから里神
楽として地区に受け継がれている。
行波の神舞は岩国行波の里州神舞保存会
によって伝承されており、五穀豊穣、家内
神 舞が 観光 に活用 され ている
安全、厄疫退散を祈願する神舞である。国
指定の重要無形民俗文化財(昭和54年)と
なっている。7年に一度ある大神舞(次回
は平成26年)は4月に錦川の河原で、毎年
の小神楽は10月に荒玉社境内でそれぞれ奉
納される。
神舞の始まった寛政3年(1791年)頃は
神主主体の社家神楽として奉納されていた
が、第15回(明治8年)から、住民による
行波 の神 舞
里神楽となり、200年以上に渡って現在に引き継がれている。
岩国行波の伝承館の建設(平成11年)を契機に、保存伝承に対する地域住民
の意識の向上が見られる。
ウ
阿波の太布織り(徳島県)
こうぞで織った古代布は、古くは全国各
地で見られていたが、現在その技法が伝承
されているのは、徳島県那賀町に限られる。
た
ふ
この太布織りの技術は、故岡田ヲチヨ氏
が昭和45年に、県無形文化財技術保持者に
指定され、その技術を保存してきたが、そ
の後、地域住民の有志による「阿波太布製
造技術保存伝承会」が58年に結成され、翌
年、県無形文化財の指定を受けた。
- 265 -
太 布織 りの 織機
現在は、生きがい工房「太布庵」で同伝承会が阿波太布の伝統を守っており、
毎週1回太布織りの作業を行っている。
こうぞの皮を独特の技法により加工し、
織られた太布は、素朴さやその風合いに人
気がある。以前は、衣類や袋に利用されて
いたが、最近では手提げ、ブローチ、テー
ブルクロスなどを製作し、イベント等にお
いて販売を行っている。
地元で栽培されている原料のこうぞ(く
わ科)も生産が減少してきており、すべて
太布 織りの 作 業風 景
手作業のため生産量は限られている。
3
農村の景観・環境の保全
農業・農村の多面的機能とは、農業生産活動が行われることにより生ずる食料
供給機能以外の機能のことであるが、地域住民の取り組みを通じ、自然環境の保
全、良好な景観の形成などの多面的機能を一層、増進させる動きも見られる。
中国・四国地域でも、その活動数は増加しつつあり、景観保全等では、すでに
半数を超える集落で取り組まれている。自然保護についても、まだ5%程度とそ
の数は少ないが、増加傾向にある(図Ⅱ−3−3)。
図Ⅱ−3−3
活性化のための活動別農業集落数割合(中国・四国地域)
60.0%
50.0%
52. 7%
48.5%
40.0%
10年前
現在
30.0%
20.0%
10.0%
4.0%
4.5%
0.0%
自然動植物
の保護
景観保全・
景観形成活動
資料 : 農 林 水産 省 「 2005年農 林 業 セ ンサ ス 」
ここでは、そういった機能も重視した活動の事例を紹介する。
- 266 -
ア
上谷地域環境守り隊(広島県)
かみだ に
上谷地域環境守り隊 は、広島県世羅町を
中心に活動を続けてい る組織である。この
地域は、中間農業地域 に位置し、米を中心
に、黒大豆、白大豆、 スイカ等を栽培して
いる。
この地域では、早く から集落営農も行わ
れており、農地・水路 ・農道・ため池など
の管理も、集落営農、 中山間協定者等の共
同作業により行われて いたが、農家の高齢
地 域で 協力 して ビオトー プ作 り
化、減少を受け、管理が行き届かなくなってきていた。
そこで、地域全体の 環境の保全のため、
非農家も交えた話し合 いを続け、新たな活
動をはじめることとなった。
この活動では、すで に見かけなくなって
いたメダカの復活に向 けて、地域の住民の
手作りでビオトープ等 を整備し、メダカの
復活を目指して放流を 行うなど、生態系の
保全活動を行っている 。この活動には、地
域のPTAも積極的に参画している。
イ
地元 小 学生 とメダ カの放 流
小行司水土里チーム(山口県)
こぎ ょう じ
み
ど
り
た
ぶ
せ
小行司水土里チーム は、山口県田布施町
お お は の
大波野を中心に活動す る組織である。地域
は中間農業地域に位置 し、米を中心に、大
豆、いちごなども栽培している。
小行司地区は、光市・柳井市に分断され、
田布施町の飛地となっている地域でもある。
このことから、自分た ちの地域は自分たち
で守るという気概が高 く、従来から自主的
な地域保全活動が行われていた。
ギフ チ ョウ保護 パト ロール
その後、地域保全活動をさらに高めようという話があり、地域全体で一体的な
活動を行うため、農事組合法人小行司をはじめとして、自治会、婦人会、土地改
良区や里の山小行司(里山保全任意団体)等とも協力して計画を立てるようにな
った。
- 267 -
特に 農村環境 の保全とし て、町の指 定す
る天然 記念物で もある「ギ フチョウ」 の保
護のた めパトロ ールを行う とともに、 ギフ
チョウ のえさと なる「カン アオイ」の 保全
などの活動を行っている。
それ 以外にも 、公共施設 の草刈やホ タル
の勉強 観察会、 地域内の桜 調査などを 通じ
て、住 民同士の コミュニケ ーションを 図っ
ている。
ウ
ギフ チ ョウの 卵
広見地域資源保全隊(愛媛県)
広見地域資 源保全隊は、愛媛 県愛南町を
中心に活動を 行っている組織で ある。この
地域は、山間農業地域であり、米を中心に、
ブロッコリー 、キャベツ、サト イモなどを
栽培している。
広見地域で は、水利組合と自 治会が中心
となって、水 路・農道の現状と 予想される
将来の姿などを、土 地改良区、町と非農家
も含めた地域住民が 、勉強会や話し合いを
コ スモ ス の種 まき
続けた結果、新たな活動組織の設立に至った。
話 し合い の中 では、「集 落に彩 りが 少な
い」、
「 農繁期後のほ場を有効に利用しよう」、
「花の多い集落にしたい」との意見があり、
地元小学生とコスモス の種まきを行い、秋
にはコスモス祭りを行った。
その他、地域の小学 生を中心に、水路等
における生き物調査を 行ったり、ため池等
の機能診断に、非農家 が参加するなど、地
域内のコミュニケーションが図られている。
- 268 -
た め池 の維 持管 理
第4章
1
都市と農村の交流
都市と農村の交流(グリーン・ツーリズム)
(1)農業体験・農家民宿
グリーン・ツーリズムとは、緑豊かな農山村において、自然、文化、人々との
交流を楽しむ滞在型の余暇活動のことである。
その滞在の期間は、日帰りの場合から、長期的(週単位)又は、定期的・反復
的な(宿泊・滞在を伴う)場合まで様々である。
また、その活動の種類も、観光農園、農業公園、農産物直売所といった施設中
心の活動から、農作業体験、農産加工体験といった体験中心の活動、農家民宿、
農家民泊といった宿泊を伴うもの、さらには日帰り型・滞在型といった様々な市
民農園等と、その内容は多岐にわたる。
ここでは、農作業体験、農産加工体験、農家民宿等の活動を紹介する。
ア
奥津ファームビレッジ「耕心村」(岡山県)
岡山県鏡野町(旧奥津町)は、県北部の
奥津温泉のすぐ上流に位置している。中央
部を吉井川が南北に縦貫し、川の流れに沿
って平地が開けており、ほとんどが山間部
である。耕地面積は約300haで、水稲を基幹
作物として冷涼な気候を生かした花き、ト
マト、えんどう等の野菜栽培、乳用牛、和
牛の飼育が行われているが、1ha未満の零
山 と川に囲 まれ た ほど 良い「田 舎」
細農家による複合経営が主である。
奥津ファームビレッジでは、都市住民に農業の大切さや農村生活のすばらしさ
を体験してもらおうと、明治時代の古民家を移築し、宿泊、研修体験ができるよ
う施設整備した。
田植え、稲 刈り、いも掘り、 スイートコ
ーン収穫等の 農業体験や、通年 体験できる
そば打ち、豆 腐づくり、笹もち づくり、こ
んにゃくづく り等の農産加工体 験のほか、
春の山菜採りや、夏休みのカブトムシ採集、
年末には正月 飾りづくりなどを 行うことに
よって、季節 感のあるイベント を年間を通
じて体験ができるよう工夫している。
これらの農業体験には、地元農事組合法人が対応しており、事前予約を入れる
と、地元産の農林産 物を用意している。ま
- 269 -
そ ば 打ち は人 気の 加工 体験
た、農産加工体験は、地元の婦人部が対応し、手作り品プラス一品が味わうこと
ができる。
ここ数年、年間1,600名程度の宿泊者があり、その多くはリピーターで、農村
生活のすばらしさを体験しに再度訪れる方が多い。また、家族、グループでの利
用者も多く毎年利用者は増加している。
イ
「ふれあいの里さかもと」(徳島県)
徳島県勝浦町は、勝浦川の中流域に位置
し、500 ∼1,000m級の山々に囲まれた山間
の盆地で、平地は川沿いに限られ、平坦な
耕地が少ない中山間地域である。農業は、
傾斜地を活かした果樹栽培が主体で、耕地
の5割以上が温州みかんの園地で占められ
る県内一のみかん産地でもある。
「ふれあいの里さかもと」は、過疎のた
農 業体 験インス トラ ク ター
め廃校となった小学校を活用し、滞在型交流施設として開設したものである。
木炭づくりやしいたけ栽培、田植えや稲刈り体験、夏場にはじんぞく狩り(カ
ワヨシノボリ。川魚の一種)や川遊び等、
山里でしか経験できない滞在型のイベント
を企画・実施している。
また、宿泊客からは、昔懐かしい母の味
がする田舎料理を提供していることが好評
である。
イベントの企画に当たっては、地区内だ
けでなく町民全体の理解と協力が得られる
よう十分な準備期間を設け、「将来性はある
しいた け植菌 体験
のか」、「採算は取れるのか」などの不安材料があったが、実行委員会の協議や関
係住民への巡回説明会、町民アンケートを
実施するなど、綿密な計画のもとに企画を
練り、一つずつ解決していった。
こうして、農業の知識や技術以外にも町
内の自然や伝統文化、農業体験や地場産の
食材にこだわった季節の料理を提供するこ
とにより、受け入れ側である高齢者や女性
の「やりがい」にもつながった。平成15年
の施設利用者数は1万5千人で、宿泊者は
- 270 -
親 子で 楽 しむ餅 つき体 験
目標を大きく上回る年間3千人を超えた。また、町内に延べ60人以上の雇用が創
出され、食材以外の産品も町内の業者が納入することで、地域経済が活性化して
いる。
ウ
千枚田ふるさと会(高知県)
ゆすはら
高知県檮原町は、標高220mから1,455m
と非常に高低差があり、平地が少ないこと
から山間の傾斜を利用した農業が発達した
地域で、耕地面積は338haである。なかでも
神在居に位置する棚田は、急勾配の土地を
切り開き、谷川から水を引くことで少ない
土地を有効に利用できるよう工夫されてい
る。大小数多くの水田を有することから「千
田 植え の終 わっ た 千 枚田
枚田」と呼ばれており、現在2.2ha、約164枚の水田がある。
この千枚田において、高齢化や後継者不足から休耕田が目立つようになったこ
とから、「千枚田ふるさと会」では、平成4年から景観の維持等を目的とし、1
区画約1アールを、四万十にちなみオーナー会費として4万10円で貸し出し、水
稲栽培を体験してもらうオーナー制度に取組んでいる。
千枚田は「千枚田ふるさと会」により、
オーナー不在時の管理を行うことで、頻繁
に来ることのできない遠方のオーナーも水
稲栽培を十分体験することができる。また、
オーナーが訪れた際の栽培指導を行うこと
により、初心者でも安心して田植えから収
穫までを体験することができる。
また、年に2回、オ ーナーと田植えや稲
交流 会の 様子
刈り等における交流会を行ったり、地域の特産品を発送することによって、交流
を図っている。
現在、オーナーは24組で約37aの棚田で水稲栽培を行っている。オーナー制度
の導入によって、耕作放棄の進行が抑えられている。また、東京や大阪等の遠方
のオーナーも定期的に同町を訪れるようになったり、県外オーナーの3組がIタ
ーンで神在居周辺に移住するなど、地域の活性化が図られている。
エ
農家民宿はこば(高知県)
四万十町大正中津川地区の農家民宿「はこば」は平成12年にオープンし、農林
業体験や四万十川でのカヌー体験に加え、郷土料理を地域のお年寄りらと触れ合
- 271 -
いながら作ることもでき、自由に田舎暮らしを楽しめる地域密着型の民宿である
とともに、地域の活性化につながる活動の
拠点となっている。
同地区は、住民95人(35戸)のうち60歳
以上が約7割という高齢過疎化が進んだ小
さな山間集落で、8年3月に中津川小学校
が休校となったことから、地域の人々と有
志がインターネット上で学校を存続させよ
うと、「電脳中津川小学校」を立ち上げた。
この取組から都会の 人との交流が始まり、
農家 民宿 はこ ば
「どろんこ運動会」「紅葉まつり・森の音楽会」「四万十・水と緑の探検隊」「び
んび祭り」といったイベントに多くの人が訪れるようになった。このことは、中
津川地域の魅力を、再発見し、自信を持てるようになった。
しかし、当時、宿泊場所がなかったこと
から、「電 脳中津川 」の交 流活動の メンバ
ーの中から、子育てが一段落した田辺さん
夫婦が農家民宿「はこば」を始めた。
ここでは、希望があればコンニャク・豆
腐・味噌・漬物・田舎料理を一緒に作るこ
ともでき、地域のお年寄りの知恵や技術を
伝授してもらうこともできる。また、農林
業体験では、特にメニューを準備しておく
豆 腐作 り体 験
のではなく、農業(米作り・野菜作り・茶摘作業等)・林業(シイタケ栽培・間
伐・炭焼き)等、四季折々のその時ある仕事を体験することができる。
開業以来、年々来客が増え、16年以降は主に関西方面から年間400人が農家民
宿を訪れるようになった。季節ごとに中津川を訪れるリピーターもおり、小さな
山間の集落に子供達や若者の声が戻ってきた。地域の高齢者にとっても料理作り
の指導や、都会の人との交流がはげみとなっている。
宿泊者の中には中津川の生活を気に入って定住を考える人も現れ、19年までに
2世帯(4人)が中津川に移住してきた。
将来的には、都会から多くの子供たちに来てもらい、修学旅行の誘致をしたい
と考えている。
ひとこ
こうした活動が認められ、20年1月には、田辺客子さんが農林漁家民宿おかあ
さん100選に選ばれた。
- 272 -
(2)児童・生徒と農村との交流
農村との交流活動のなかでも、小学生、中学生、高校生を対象とした活動は、
食育あるいは食農教育に役立つだけでなく、学ぶ意欲や自立心、思いやりの心、
規範意識などを育む教育活動の一環と認識されつつある。
ここでは、児童・生徒にその対象を絞った交流活動を紹介する。(なお、第Ⅰ
部第4章「3
ア
豊かなむらづくりへの取組」の伊座利地区も参照のこと)
教育グリーン・ツーリズム(島根県)
島根県では、同県が推進する「しまね田
舎ツーリズム」に教育という要素を取入れ
た新たな手法「教育グリーン・ツーリズム」
の開発を図っている。これを受けて、島根
県西部県民センター及び邑智郡3町では、
都市部の生徒に「総合学習の場」としての
農山漁村の認知・定着させ、農作業体験を
行うことで、食育の推進にもつなげるとと
もに、同県の中山間地域の活性化に取り組
ツアー参 加者と受 け入れ られた皆 さん
んでいる。
平成18年度には美郷町において、他県の
高等学校、農業高校等の生徒等も参加して
のツアーを行った。
このツアーでは、山の恵み(きのこ、木
の実、山芋など)の観察・採取、それらを
使った料理作り、野菜収穫、干し柿作り、
ワラ細工、注連縄作り、牛の飼育管理等、
様々な田舎体験をしている。
収穫した 豆の選別、調製作業体験
ツアーを体験した生徒へのアンケートでは、「自然や田舎の生活に触れ、新鮮
で貴重な経験」「農家の仕事の大変さとやり遂げたときの達成感」等の回答があ
った。特に「都市部では希薄になりがちな人間関係の面で学ぶべきことが多い」
との回答が多数の生徒から寄せられ、9割以上の生徒から有意義であったとの回
答を得た。
今後、邑智郡全体での広域連携による受入を行うための仕組みを構築して、受
入学校の誘致を図る。
イ
休耕田でヒマワリによるバイオディーゼル燃料づくり(愛媛県)
愛媛県立今治南高等学校の園芸部と自然科学部では、平成16年度から地域の環
- 273 -
境を守るとともに持続可能な循環型社会の実現を目指すため、耕作放棄地や休耕
田でヒマワリを栽培し、バイオディーゼル燃料づくりに取り組んでいる。
16年度は、今治市から提供された8アー
ルのほ場に愛媛県農業試験場の指導のもと
ヒマワリ(「サンオペラ」という含油率が高
い採油用品種)2千本を栽培したが、台風
の被害を受け、残った400本から約20㎏の乾
燥種子を収穫した。さらに収穫した種子か
らバイオディーゼル燃料約2.5リットルを精
製し、トラクターの燃料として耕作放棄地
8アールの耕転に使用した。17年度も栽培
ヒマ ワリの植 え 付け
面積を17アールに増やし、引き続きバイオ
ディーゼル燃料づくりに取り組んだ。
18年度には、今治市から提供のあった30
ア ール の 休 耕田 に ヒ マワ リ (小 型 品 種の
はる りん ぞう
「春り ん蔵」)1万 本を植 栽し、生 徒が中
心となり栽培管理を行った。その結果、約
80㎏の乾燥種子を収穫し、バイオディーゼ
ル燃料5リットルを精製した。
これらのバイオディーゼル燃料(100%)
ヒマ ワリ開 花の 状況
を使い耕うん機による耕うん作業を行った結果、軽油と比べてパワー不足や異音
等もなく、実用上問題ないことがわかった。
この活動の結果、生徒たちがバイオマスに関心を持つようになった。また、放
課後、生徒たちが交代でヒマワリの管理作業を行うことにより、地域の環境問題
に取り組んでいることのアピールにもなる。
19年度は、ボランティア団体等と連携してヒマワリの栽培面積を増やすととも
に、バイオディーゼル燃料の分析・解析を行うこととしている。
ウ
棚田米を学校給食に(高知県)
南国市の中山間部で生産される米は普通期栽培であるため、良質でありながら
も、県外の米どころの米と競合し、販売に苦戦していた。そこで、南国市農業委
員会は、中山間部で生産される棚田米を学校給食に使用することで安定した需要
を確保するとともに、中山間地域の活性化や農業振興に貢献できると考え、平成
8年に南国市教育委員会に棚田米の学校給食への利用を提案し、それをきっかけ
に教育委員会も動き出し、9年度から棚田米を導入した。
また、当時の米飯給食は市外業者による委託炊飯であったため、食べる時には
- 274 -
ごはんが冷めておいしくなく、食べ残しが
多いことが課題となっていた。そこで、9
年の棚田米導入を機に、炊きたてのあたた
かいご飯を提供しようと、自校炊飯モデル
校2校を選定し先行スタートさせた。その
結果、子ども達の食べ残しが大幅に減少し
たため、翌10年に市内の全小学校13校と市
立幼稚園2園(12年度に合併し1園となる)
に自校炊飯を導入。15年からは、週5回の
米 作り 親子 セミ ナー・田 植
完全米飯給食を実施している。
さらに、「米づくり親子セミナー」が棚田
米の生産農家との連携のもと、JA南国市
の主催で9年度から始められ、毎年1∼3
校の5年生が、親子で棚田での米作りを体
験している。
この結果、学校給食が、棚田米の安定し
た供給先となった。また、子ども達には、
生産者との交流を通じて地元農業への理解
米 作り 親子 セミ ナー・稲 刈
が深まり、食べ物をおろそかにしない気持ちが芽生えている。さらに、自校炊飯
の導入により主食のコスト削減につながった。このことで、副菜の内容を向上さ
せることができ、食べ残しがさらに減少するとともに、給食費の値下げにもつな
がった。
2
農村への定住・二地域間居住(U・J・Iターン *1)
中国・四国地域の各県は、過疎化・高齢化が進行していることから、多くの定
住促進のための施策を打ち出している。
例えば、各県では、東京や大阪といった都市圏に、定住あるいは農業就業のた
めの案内所を設けるなど(表Ⅱ−4−1)、都会の人へU・J・Iターンに関す
る情報の提供に努めているところである。また、市町村においても、各種の定住
・二地域間居住のための支援を行っている。
*1U・J・I ターン・・・・・・大 都市圏の居住者が地方に移 住する動きの総称のこと。Uターン
は出身地に 戻る形態、Jターンは出身 地の近くの地方都市に移住する形
態、Iターンは出身地以外の地方へ移住する形態を指す。
- 275 -
表Ⅱ−4−1
県外の定住・農業就業情報相談窓口一覧
県名
鳥取
窓口 名
電話 番 号
ふ る さと 鳥 取 U ター ン コ ー ナー (東 京 )
03-5215-5117
ふ る さと 鳥 取 U ター ン コ ー ナー (大 阪 )
06-6455-0233
島根
ふ る さと 定 住 ・ 雇用 情 報 コ ーナ ー ( 東 京 )
0120-60-2357
ふ る さと 定 住 ・ 雇用 情 報 コ ーナ ー ( 大 阪 )
0120-70-2357
ふ る さと 定 住 ・ 雇用 情 報 コ ーナ ー ( 広 島 )
082-541-2410
岡山
ふ る さと 岡 山 就 職相 談 コ ー ナー ( 東 京 )
03-5212-9080
ふ る さと 岡 山 就 職相 談 コ ー ナー ( 大 阪 )
06-6261-3206
広島
ひ ろ しま 夢 プ ラ ザ田 舎 ぐ ら し相 談 セ ン タ ー( 広 島 )
082-544-1122
山口
ふ る さと 山 口 ・ 東京 U タ ー ン相 談 コ ー ナ ー
03-3231-1863
ふ る さと 山 口 ・ 大阪 U タ ー ン相 談 コ ー ナ ー
06-6341-0755
徳島
徳 島 県U タ ー ン コー ナ ー (東京 )
03-5212-9022
徳 島 県U タ ー ン コー ナ ー (大阪 )
06-6251-3273
香川
香 川 県東 京 人 材 Uタ ー ン ・ コー ナ ー
03-5212-9100
香 川 県大 阪 人 材 Uタ ー ン ・ コー ナ ー
06-6342-4855
高知
高 知 県東 京 事 務 所
03-3501-5541
高 知 県大 阪 事 務 所
06-6244-4351
資料 :「 全 国 農 業 会議 所 」 の 資料 よ り 抜 粋
注: 定 住 情 報 、あ る い は 農業 就 業 情 報を 扱 っ て いる 窓 口 の みで あ る 。
ア
財団法人ふるさと島根定住財団(島根県)
財団法人ふるさと島根定住財団は、「県
外就職等による人口流出を主因とする島根
県の人口減少に歯止めをかけなければなら
ない」という危機感を背景に、平成4年に
設立した。
当初は、学生向け就職ガイダンスや県内
企業の雇用環境整備への支援、U・Iター
ンの希望者に対する情報提供など就職支援
を中心とした事業を実施した。8年からは
産業 体験 (農業 )
U・Iターンの希望者に実際に農林水産業
等に従事してもらう産業体験事業や、U・
Iターン者の住まい確保への支援、人口定
住の基盤となる地域づくり・地域活性化な
ど先導的事業への支援、定住促進に向けた
情報発信や総合相談などにも取り組んでい
る。
その結果、例えば、産業体験事業では、
11年間 に1,100人超 の体験を実施し、ほぼ
し まね 暮ら し体 験ツ アー
半数が引き続き県内に定着している。
また、しまね暮らし体験ツアーでは、8年間で65ツアーを実施し、988人が参
- 276 -
加した。あるいは、県外在住者向け無料職業紹介では、18年度から開始して、す
でに92人の就職が決定した。
その他、地域づくり支援やしまね田舎ツーリズムなども行うことで、U・Iタ
ーンの希望者への支援とそれを受け入れる地域の体制の整備の二面から、定住促
進を行っている。
イ
志都の里クラインガルテン(島根県)
二地域間居住をはじめるためには、住居を探さなければならないが、その手間
を省き、気軽に二地域間居住をはじめる方法として、クラインガルテン *1を利用
する方法がある。
志都の里クラインガルテンは、そういっ
た滞在型市民農園を長く続けている地区で
ある。
志都の里のある飯南町(旧頓原町)は、
島根県中部に位置し、中国山地の山あいに
ある海抜400メートルの県内で も代表的な
高原地帯である。このため、冬は積雪寒冷
の厳しさもあるが、反面夏は涼しく、春の
新緑、秋の紅葉と、豊かな自然が四季折々
滞 在施 設と 農園
の美しさを見せている。
ここでは、ラウベ* 2と農園(平均120平方
メートル)を一年契約で借り入れ田舎暮ら
しを体験できる。
また、町内及び周辺ではスキー、キャン
プ、釣り堀、登山等のほか、地域で行われ
る交流イベント(雪祭り、田植え、ポピー
祭り(6月)、納涼祭、収穫祭、コスモス祭
雪 祭り の準 備
(10月)等)に参加できる。
*1クラインガルテン・・・・・・日本では主に宿泊用の施設を附設した滞在型市民農園
を指す。元は「小さい庭」という意味のドイツ語。
*2ラウベ・・・・・・・・・・・・クラインガルテンに附設する宿泊用の施設。元は「休憩小
屋」という意味のドイツ語。
- 277 -
3
学生・NPO等と農村との連携
農村の再生を図るにあたり、新たな活動を始めようとしても、農家だけの活動
では、なかなか斬新なアイデアは浮かばない実態もある。また現在の農村は、農
業に従事しない非農家も多く居住している。
このような中、大学やNPO法人といった外部との連携を通じて、活性化を図
ろうとする地域もある。
また最近では、学生自身が自発的に農村へ入り、農作業等を支援する(援農)
事例もあらわれている。
ア
「学生人材バンク」による援農(鳥取県)
「学生人材バンク」は、鳥取大学の学生がつくる任意団体として平成14年4月
に設立した(現在、NPO法人として申請中)。
「学生にキッカケを、地域に笑顔を」を合言葉に、
情報提供事業、プロジェクト(企画運営)を中心に活
動している。これは、学生に対しては、ボランティア、
イベント、アルバイトを通じて、その経験や人脈が社
会に出るときの財産となるよう、地域に対しては、学
生の若さや行動力などをできる限り地域に還元できる
よう活動するということである。
プロジェクトでは、「農村まるごと味わいガイド
農
村16きっぷ」の作成・発行を行っている。このガイド
では、実際の農家等から取材を行った情報をもとに学
生に農村の魅力を伝えるとともに、「鳥取県農山村ファ
ンクラブ」の会員を募集している。このクラブの登録
会員には、ボランティア・イベント等の情報がメール
学 生 も 協 力 し て イ ノ シ シ
柵を設 置
で配信される。これが、情報提供事業であ
る。
メールを配信された登録会員は、その情
報をもとに、自分の興味と都合に合わせて
参加する。この登録会員数は、鳥取大学、
鳥取環境大学、鳥取短期大学他の学生及び
そのOBをあわせて、県外生を中心に800名
を超えている(平成20年1月現在)。
また、学生を受け入れている地域も、19
稲 刈り後 のひ とコ マ
ヶ所(20年1月現在)にのぼり、その交流活動も、収穫祭や田植え、稲刈り、草
ゆい
刈りといった農作業、水路清掃、イノシシ柵の設置・撤去といった結、農産市、
- 278 -
田んぼの学校といったイベントまで、その種類は多岐にわたる。
ここで紹介されている交流活動は、特に学生を呼ぶための特別の活動ではなく、
農村で行われている普段の活動であり、そこへ学生が参加するようになっている。
これは、派手なこと、無理なことをして交流活動が単発的にならず、継続的に行
えるようにするためである。そして、交流活動に参加した学生は、その後も何度
も同じ集落へ足を運び、農家に混じって作業をすることで、単なる「お客さん」
から、信頼される重要な地域の一員になる。
このほかにも、就職プロジェクトという
就職活動等のためのセミナーや、映像プロ
ジェクトという農村体験を映像化し地域の
デジタルアーカイブの作成、あぐりふれん
ずという障がい者と大学生との共同作業を
テーマに就農を目指した活動など、幅広い
水路 清掃 に汗 を流す
分野へ活動を展開している。
イ
「NPO法人INE
OASA」と「大朝地域資源保全隊」(広島県)
大朝町は、広島県北西部に位置し、島根県と県境を接している山間農業地域で
ある。耕地は約700haであり、水稲が基幹作物となっているほか、ミニトマトを
はじめとして野菜づくりも盛んに行われている。なお、米については、地域に名
水が存在することから、食味も良いと評判である。
地域で活動しているNPO法人INE
OASA(いーね
おおあさ)は、「蘇
れ!おおあさ」をテーマに、地域の環境活動を実践する団体である。
遊休農地を活用した菜の花の栽培や、廃
食油回収により二酸化炭素排出の少ない軽
油の代替燃料を製造することにより、資源
循環型地域社会の実現を目指したプロジェ
クトに取組んでおり、平成12年からは、菜
の花からの菜種油の精製や、使用後の廃食
油の回収、NPO法人となった13年からは、
導入した廃食油燃料化プラントによるバイ
オディーゼル燃料の精製を実施しており、
これを活用したスクールバスの運行等、地
球環境に優しい地域づくりの取組みを推進している。
- 279 -
菜 の花 畑
また、農地・水・環境保全向上対策を実
施する活動組織である大朝地域資源保全隊
は、地域資源の保全のために農道、水路等
の管理などを非農家の協力を得て行うほか
に、菜の花を作った水田での、水稲の栽培
(ぴゅあ菜米)を小学校と連携して実施し
ている。
この結果、菜の花の作付け面積が増加(休
耕田が減少)し、菜種の収穫量も年々増加
ぴゅあ菜米 の田 植え
している。
ウ
「NPO法人とかの元気村」と「斗賀野東組集落資源保全活動組織」
(高知県)
佐川町は、高知県中西部に位置する中間農業地域のなかでも、水田面積が比較
的に広い(720ha)地域であり、米の他に、いち
ご、しょうが、ししとう、にら等を栽培している。
地 域で活 動して いるN PO法 人と かの元 気村
は、佐川町斗賀野地区を中心に地域づくり活動を
行う団体であり、ササユリやノカンゾウ等の希少
植物やホタルの保護、河川の環境を守るための除
草作業、佐川町最大規模のイベント「たらふく秋
ノ カン ゾウの 花
まつり」の開催などに取り組んでいる。
また、農地・水・環境保全向上対策を実
施する活動組織である斗賀野東組集落資源
保全活動組織は、農道・水路等の管理のほ
かに、このNPO法人や地元消防団、部落
会等と連携を密にし、用水施設の機能診断
や、ノカンゾウの植栽などを行っている。
この結果、地域の住民とのコミュニケー
ションが図られ、美しい農村環境の創造に
農地 法面 の草 刈の よう す
寄与している。
エ
香川県初のオリジナル酒米を使った日本酒の開発・販売(香川県)
香川県独自の日本酒を造るため新品種米の開発を国立香川大学(当時)に依頼し
たところ、酒米「さぬきよいまい」が生まれた。開発に当たっては、同大学農学
- 280 -
部の楠谷教授と学生が中心となり交配と選
抜を行った。
この結果、香川大学農学部は10年には約
千種類の交配後代系統を確保することがで
き、15年には香川県農業試験場などが栽培
試験を引き継ぎ交配種を3種類まで絞り込
み、その後JA香川県が現地栽培試験を、
また香川県酒造協同組合が醸造試験を行う
研 究に汗 を流 す学生 た ち
ことで、交配種1種を選抜した。
18年3月に農林水産省に品種登録の出願
を行い、同年6月さぬき市の天王営農集団
(当時)で2.7haが一般栽培され約13トンを
収穫した。同年10月に同省が出願公表した
のを受け、正式名称「さぬきよいまい」と
統一ロゴマークを発表した。同年12月には
県内酒造メーカー4社(綾菊酒造、川鶴酒
造、西野金陵、丸尾本店)が一斉に新酒醸
新酒 の仕 込み
造を開始し、19年4月から県内向けを中心に約1万9千リットル(1升瓶換算約
1万600本)の販売を開始した。
また、県内酒造メーカーの販売に先立ち「さぬきよいまい」の命名者である県
知事への表敬訪問や「新酒発表会」「さぬきよいまいフェアー」等を開催してP
R活動にも力を入れた。
なお、19年産の「さぬきよいまい」は、JA香川県大川地区本部管内で約14ha
作付けされ、約71トンが収穫された。今後は、「さぬきよいまい」の安定供給の
観点から、「オオセト」の県内出荷量の約半分に当たる300トンが供給できるよう
60haの作付面積確保を図ることとしている。
オ
「高知大学」との連携による地域活性化のワークショップ(高知県)
高知大学総合教育センターの「地域共同論演習講義」の一環として、仁淀川町
長者地域において、ワークショップが行われている。このワークショップは、大
学と地域住民が一緒に計画したもので、高瀬農地保全事業所も、所長はこの講義
の講師として、職員も世話役として協力している。
これまで「長者のお宝探し」(19年9月)、「長者の夢づくり」(19年11月)、「長
者の夢
計画
づくり」(20年1月)と3回開催された。
- 281 -
「長者のお宝さがし」では、日頃気づかな
い地域の宝物(地域の特徴、地域資源)や
問題点(改善したほうが良い場所)などを
発見し、今後の地域づくりを考える基礎資
料を収集した。具体的には、4つのグルー
プに分かれて、2時間程度のお宝さがし探
検を行い、その結果をお宝マップに整理し
た。その中では、地域住民も知らないお宝
の発表もあった。
お 宝さが し探 検
「長者の夢づくり」では、自分たちの住ん
でいる集落を住みよく、魅力あるものにし
て、住民が生き生きと暮らしていけるよう
するため、地域の住民と外部の学生などが
参加して、集落の現状や発見されたお宝に
基づいて、将来の姿を考えることができた。
具体的には、なぜなぜゲームを通して地域
の問題点を明らかにし、それを踏まえて、
作 成 した お宝マ ップ
キャッチフレーズやストーリー作り、その
ための実際の行動などを発表した。
「長者の夢
計画
づくり」では、前回出
された「夢」を基に、具体的な活動計画を
話し合った。この中では、19年12月に行わ
れた棚田を2千個のろうそくでライトアッ
プする「長者 DE キャンドルナイト」の継
続や、数十年前まで行われていた竹谷集落
から対岸まで200メートルの注 連縄を渡す
「竹谷の七夕祭り」の復活などが計画され
長 者 DEキ ャ ン ド ル ナ イ ト の 様 子
た。
これまでのワークショップを通じて地域の一体感が生まれ、自主防災組織を新
たに組織するなど、地域の活性化が始まっている。
- 282 -
第5章
農村地域の再生へ向けて
(1)地域の再生は、地域の自覚から
一口に農村地域といっても、その気候、風土、立地条件、土地利用状況、住民
構成等、一つとして同じ地域はなく、それぞれの地域が異なった特徴を持ってい
る。
この特徴を無視して、他の地域の成功事例をやみくもに導入しても、続かない
か、続けることが困難になるであろう。
ここまで見てきた事例でも、地域に昔からあるもの、地域に根ざしたものを中
心に、地域の活性化を図っていることが多い。
したがって、地域の再生のためには、その地域に何があるのか、何が魅力とな
るのか、何がお宝であるのかを探すことから始めなければならない。
そのための方法の一つとして、ワークショップがある。ワークショップとは、
その地域の住民が参加して、その地域を住民自身が歩いて、地域の資源を再発見
し、その発見をもとに、今後の地域のあり方を話し合い、計画を立てる手法であ
る。「自分のムラのことは、改めて見て回らなくても知っている」と思わずに、
機会を設けて、見て回ってみると新たな発見があると思われる。
(2)地域の再生は、多くの人の目線から
農村地域では、話し合いを設ける場合、各戸から一名の男性の代表を集めて行
う場合も多いようである。
しかし、地域の再生のためには、できるだけ多くの住民を集めて行う話し合い
が必要である。言い換えると、男性だけではなく、女性も、老いも若きも、ある
いは新たにU・Iターンしてきた人、農家以外の住民も集まって話し合うことが
重要である。
ここまで見てきた事例でも、新たな活動は、女性やU・Iターン者が中心とな
って行っているものが多い。それは、これまでとは異なった見方が、地域の再生
には有効であることを示している。
異なった見方を採り入れる手法としても、前述したワークショップは優れてい
る。
多くの人の目線を集めるためにも、ワークショップの参加者を幅広く行うこと
が重要である。その際には、こういった集まりに参加しづらい「子供連れの夫婦」、
「U・Iターンしてきた人」、「農家以外の住民」も参加できるように、配慮しな
ければならない。
このためにも、婦人会・子供会や、PTAなど町内会以外との連携が重要であ
る。
- 283 -
(3)地域の再生は、多くの話し合いの中から
話し合いを行うと、「声の大きな人」の意見ばかりが、優先される傾向がある。
しかし、地域再生への方向や程度、そのための方法等の考え方は、住民それぞ
れ異なる。例えば、10年前、20年前の状態がよかったという人もいれば、もっと
都市的になった方がいいという人もいる。もちろん、現状で満足という人もいる。
このような異なる考え方をまとめるためには、とにかく一旦すべての意見を出
し切った上で、じっくり話し合うことが必要である。
そのためには、何時間もかけて、何度も話し合うことになるかもしれない。
以心伝心とか、あうんの呼吸といったものだけでは、地域の再生のための新た
なアイデアは生まれてこない。
(4)地域の再生は、自立的な活動から
ここまで述べてきた手法は、自然発生的に起こるものではない。意識しなけれ
ば、普段の寄合は、いつまでも普段の寄合のままである。普段の寄合がワークシ
ョップにある日突然、変わるものではない。
誰かがやってくれる、役所がやってくれる、農協がやってくれると待っていて
も、誰も支援してはくれない。支援できるのは、自立的に何かを始めたところで
ある。
ここまでの事例を見ても、何かを自立的に始め、自ら手を挙げたからこそ、行
政も団体も、そこに支援が必要な人がいることを知り、支援ができたのである。
新たな活動は、大変な労力を要する。だからといって、誰かが始めないと、地
域の再生はいつまでも始まらない。
地域再生の陰には、必ずキーパーソンがいる。失敗しても、反対されても、地
域活性化のためのエンジンとして、推進し続ける人がいる。
誰から言われて始めるものでもない、一人でも二人でもとにかく自立的に始め
ることが重要である。
- 284 -
第Ⅰ部
第1章
1
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
最近の食料・農業・農村の状況
食料自給率向上に向けた取組
【自給率向上を目指して重点課題を明確化】
(1)概
要
我 が 国 の 食 料 自 給 率 は 、 カ ロ リ ー ベ ー ス で 見 る と 1 0年 度 か ら 17年 度 ま で 40% と
横 ば い で 推 移 し 、 18年 度 は 、 39% に 低 下 し て い る 。
17年 3 月 に 策 定 さ れ た 新 た な 「 食 料 ・ 農 業 ・ 農 村 基 本 計 画 」 に お い て は 、 将 来
的には、食料として国民に供給される熱量の5割以上を国内生産で賄うことを目
指 し つ つ 、 27年 度 の 自 給 率 の 目 標 は 、 実 現 可 能 な 生 産 と 消 費 の 水 準 を 考 慮 し て 、
以 下 の と お り 設 定 さ れ て い る ( 表 Ⅰ − 1 − 1 )。
表Ⅰ−1−1
食料自給率の目標
15年度(%)
27年度(%)
カロリーベースの総合食料自給率
40
45
生産額ベースの総合食料自給率
70
76
主食用穀物自給率
60
63
飼料用を含む穀物全体の自給率
27
30
飼料自給率
24
35
(2)重点的に取り組むべき事項
目標設定に当たっては、前基本計画に基づいた取組の検証結果を踏まえ、生産
及び消費の両面において重点的に取り組むべき事項を明確化した。
[消費面]
①分かりやすく実践的な「食育」と「地産地消」の全国展開
②米をはじめとした国産農産物の消費拡大の促進
③国産品に対する消費者の信頼の確保
[生産面]
①経営感覚に優れた担い手による需要に即した生産の促進
②食品産業と農業の連携の強化
③担い手への農地集積、耕畜連携による飼料作物の生産等を通じた効率的
な農地利用の推進
(3)関係者の主体的取組及び工程管理
食料自給率向上の取組が迅速かつ着実に実施され、できるだけ早期に向上に転
じるよう、国だけでなく、地方公共団体、農業者・農業団体、食品産業事業者、
第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
消費者・消費者団体からなる「食料自給率向上協議会」を設立し、適切な役割分
担のもとで主体的に取り組むこととしている。
19年 9 月 に 開 催 さ れ た 19年 度 第 2 回 食 料 自 給 率 向 上 協 議 会 に お い て は 、 18年 度
食 料 自 給 率 ( 供 給 熱 量 ベ ー ス ) が 3 9% と 9 年 ぶ り に 低 下 し た こ と か ら 、 ① 自 給 率
に関する戦略的広報の実施、②米の消費拡大、③飼料自給率の向上、④油脂類の
過剰摂取の抑制等、⑤野菜の生産拡大、⑥食育の推進の6つを集中重点課題と位
置付け、今後、これらの取組を着実に推進していくこととした。
なお、食料自給率向上協議会では、具体的な取組内容や、その取組目標を示し
た「行動計画」を毎年策定するとともに、行動計画に基づく取組状況等について
点検・検証することにより、工程管理を実施している。
(4)地域段階での取組
ア
情報提供
食料自給率向上に向けた地方公共団体に対する取組を促進するため、農政局に
お い て は 、 17年 6 月 に 「 中 国 四 国 農 政 局 食 料 自 給 率 向 上 推 進 本 部 」 を 設 置 す る と
ともに、農政事務所の活用による、管内各地の優良事例の把握・紹介や、農政局
ホームページの「よくわかる食料自給率」コーナーの開設等により、管内各県へ
の情報提供や支援策を行っている。
19年 度 は 、 1 9年 9 月 に 「 推 進 本 部 」 を 開 催 し 、 当 面 の 予 定 に つ い て 確 認 し た 。
イ
リーフレット作成
20 年 3 月 に 、 食 料 に 関 す る 国 民 の 関 心 の 高 ま り を 受 け 、 国 民 一 人 一 人 が 我 が
国 の 食 料 自 給 率 向 上 等 に つ い て 正 し い 知 識 を 持 ち 、「 食 」 に つ い て 考 る こ と が
できるよう「我が国の食料自給率について」のリーフレットを作成し、農政局
ホームページに掲載した。
今 後 、農 政 局 各 部 ・ 農 政 事 務 所 ・ 事 業( 務 )所 が 主 催 す る 各 種 イ ベ ン ト 、会 議 、
セミナー等で配布、説明を行うなど食料自給率向上の普及啓発活動に利用してい
くこととしている。
(5)県段階における食料自給率目標の設定
広島県及び徳島県では、それぞれ食料自給率の目標を定め、また、目標達成に
向けた活動とその成果を検証するなど、自給率向上のための着実な取組を展開し
ている。
- 1 -
第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
ア 広島県
・食料自給率の目標を設定している計画等の名称
「 広 島 県 新 農 林 水 産 業 ・ 農 山 漁 村 活 性 化 行 動 計 画 ( 18年 3 月 策 定 )」
・食料自給率の目標
「供給熱量ベース」
27年 度 目 標
24%
←
16年 度 時 点
23%
45%
←
15年 度 時 点
39% ( ※ 16年 度 時 点 39% )
「生産額ベース」
27年 度 目 標
イ 徳島県
・食料自給率の目標を設定している計画等の名称
「 21世 紀 初 頭 の 徳 島 県 農 林 水 産 業 ・ 農 山 漁 村 振 興 行 動 計 画( 14年 3 月 策 定 )」
( 参 考 ) オ ン リ ー ワ ン 徳 島 行 動 計 画 ( 16年 3 月 策 定 )
・食料自給率の目標
「供給熱量ベース」
18年 度 末 目 標
48% 、 23年 度 末
←
50%
12年 度 時 点
47% ( ※ 16年 度 時 点 44% )
(参 考)
∼主な輸入農産物の生産に必要な海外の作付面積∼
主 な 輸 入 農 産 物 の 生 産 に 必 要 な 農 地 面 積 は 1, 24 5万 h a と 試 算 さ れ 、 我 が 国 の 耕 地
面 積 の 2.7倍 に 相 当 す る 農 地 を 海 外 に 依 存 し た 形 と な っ て い ま す 。
このため、不測の事態に備え、平素から農地や農業用水を確保しつつ、農業の担
い手の育成・確保、農業技術水準の向上等を図り、食料供給力を強化しておく必要
があります。
主な輸入農産物の生産に必要な海外の作付面積
0
海外に依存してい
る
作付面積(試算)
(2003∼05年平均)
国内耕地面積
(2007年)
200
小麦
208
(21)
田
253
400
とうも
ろこし
182
(0)
畑
212
600
大豆
176
(14)
800
なたね、
大麦等
279
(7)
1,000
1,200
1,400
畜産物
(飼料穀物換算)
399
(90)
万ha
1,245
465
資 料 : 農 林 水 産 省 「 食 料 需 給 表 」、 「耕 地 及 び 作 付 面 積 統 計 」、「 日 本 飼 養 標 準 」、 財 務 省 「 貿 易 統 計 」、 FAO「 FAOSTAT」、
米 国 農 務 省 「 Year book Feed Grains」、 米 国 国 家 研 究 会 議 ( NRC)「 NRC飼 養 標 準 」 を 基 に 農 林 水 産 省 で 作 成
注 : 1) 単 収 は 、 FAO「 FAOSTAT」 の 2003∼ 05年 の 各 年 の 我 が 国 の 輸 入 先 上 位 3 か 国 の 加 重 平 均 を 使 用 。 た だ し 、 畜 産 物
の 粗 飼 料 の 単 収 は 、 米 国 農 務 省 「 Year book Feed Grains」 の 2003∼ 05年 の 平 均
2) 輸 入 量 は 、 農 林 水 産 省 「 食 料 需 給 表 」 の 2003∼ 05年 度 の 平 均
3) 単 収 、 輸 入 量 と も に 、 短 期 的 な 変 動 の 影 響 を 緩 和 す る た め 3 か 年 の 平 均 を 採 用
4)( ) 内 は 我 が 国 の 作 付 面 積 ( 2007年 )
- 2 -
第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
(参 考)
∼バーチャルウォーター∼
農産物を輸入するということは、輸入農産物が海外で生産される際に使用されて
いる水資源も一緒に輸入しているとも言えます。このように間接的な形で輸入して
いる水資源を把握する方法として仮想水(バーチャルウォーター)という考え方が
あります。これは、ある国が輸入している品目を自国で生産すると仮定した場合に
必要な水資源量です。主な輸入農産物(穀物5品目、畜産物4品目)の生産を我が
国 で 行 っ た 場 合 に 必 要 な 仮 想 水 は 627億 m 3 ( 2000年 ) と 試 算 さ れ て お り 、 国 内 の 農
業 用 水 使 用 量 の 552億 m 3 ( 2004年 ) *2 を 上 回 っ て い ま す 。 品 目 別 に は 、 牛 肉 1 kgに 2
0.6t、 豚 肉 1 kgに 5.9t、 大 豆 1 kgに 2.5tの 水 が 必 要 で す 。
一方、食事メニューごとにみると、例えば、牛丼(並)やカレーライスに必要な
水の7割は輸入されている計算になります。
我が国が輸入農産物の多くを依存する米国や中国等で水不足が懸念されており、
世界の水資源の問題が私たちの食生活に密接に結びついていることにもっと目を向
ける必要があります。
* 1
東京
輸 出 物
リ ント
* 2
国土
大学 生 産 技 術 研 究 所 の 沖 大 幹 教 授 等 のグ ループ によ る試 算。この ほか、沖 大幹 教授 等のグ ルー プで は、
資 を 生 産 す る た め に 輸 出 国 で 実 際 に 消 費 さ れ た 水 資 源 量 を 取 水 源 別 に 推 計 し た「 ウ ォ ー タ ー フ ッ ト プ
」の 試 算 も 行 っ て い る 。
交 通 省 「 平 成 19年 版 日 本 の 水 資 源 」
(参 考)
∼食料の不測時の対応∼
凶作や輸入の途絶等の不測の
要因により食料需給がひっ迫
するような場合にも、最低限
度の食料供給を確保していく
必要があるため、農林水産省
では「不測時の食料安全保障
マ ニ ュ ア ル 」( 2 00 3 年 3 月 ) を
策定しています。このマニュ
アルにおいては、事態の深刻
度(レベル)に応じて、情報
収集・分析・提供、備蓄の活
- 3 -
第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
用、価格動向の調査・監視、緊急の増産、熱量効率の高い穀類やいも類への生産の
転換、農地以外の土地の利用などの対策を実施することとされています。
我が国は、食料の6割を輸入に頼っていますが、仮に、輸入が完全に途絶する事
態に陥ったとき、肉類や野菜から、いも類などの熱量効率の高い作物に生産転換す
る こ と で 、 国 内 生 産 の み で 国 民 1 人 1 日 当 た り 2 ,0 2 0k ca l の 熱 量 供 給 が 可 能 で あ る
と 試 算 さ れ て い ま す *1 。 こ の 熱 量 で 最 低 限 必 要 な 熱 量 は 確 保 さ れ ま す が 、 食 事 内 容
は、現在とかけ離れたものになります。
* 1
2
2015年 度 に お け る 農 地 の 見 込 み 面 積 ( 450万 ha) 等 を 前 提 に 、 熱 量 効 率 を 最 大 化 し た 場 合 の 試 算 ( 食 料 ・
農 業 ・ 農 村 基 本 計 画 ( 2 0 0 5 年 3 月 策 定 ))
最近の食料消費の動向
【食の簡便化が引き続き進展】
19年 の 中 国 ・ 四 国 地 域 に お け る 食 料 消 費 の 動 向 を 見 る と 、 1 世 帯 あ た り の 年 間
食 料 消 費 支 出 額 は 、 前 年 に 比 べ 中 国 地 域 で 1 .6% の 増 加 (9 年 比 : 9.9% 減 )、 四 国
地 域 で 3.9% の 増 加 (9 年 比 : 9.6% 減 )と な っ て い る 。
主要食料費別の支出額は、前年に比べ中国地域では、酒類、果物及び外食が増
加しており、魚介類及び乳卵類が減少している。四国地域では、外食、果物、乳
卵類及び肉類が増加しており、酒類及び調理食品が減少している。
また、9年と比較すると、中国地域では、調理食品及び飲料を除くほとんどの
食品への支出額が減少しており、四国地域では、飲料及び外食を除くほとんどの
食品への支出額が減少している。
特に、中国地域及び四国地域とも穀類及び魚介類への支出額が2割∼3割程度
減少している。
一方、食料消費支出額に占める主要食料費別の割合は、中国地域及び四国地域
とも外食が最も高く、次いで調理食品となっており、これらで全体の約3割弱を
占 め て お り 、 前 年 に 比 べ 中 国 地 域 で 3 . 3% の 増 加 ( 9 年 比 : 1 .8 % 増 )、 四 国 地 域
で 6.6 % の 増 加 ( 9 年 比 : 0.0% 減 ) と な っ て お り 、 ラ イ フ ス タ イ ル の 変 化 等 に 伴
う食の簡便化は引き続き進展していると見られる。
さらに、消費支出額に占める食料費の割合であるエンゲル係数は、前年に比べ
中 国 地 域 で は 前 年 同 ( 9 年 比 : 1 .7 % 減 )、 四 国 地 域 で は 、 0. 5 % の 減 少 ( 9 年 比
- 4 -
第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
: 1.9% 減 ) と な っ て い る 。
表Ⅰ−1−2
1世帯当たりの年間食料消費支出額内訳の推移
9年
区 分
消費支出 A
中国
(円)
うち
(円)
食料消費支出額B
エンゲル係数B/A
穀
魚
類
介
肉
類
類
全国
中国
四国
全国
中国
959,498
956,513 1,033,373
851,373
831,657
892,116
(%)
25.9
25.3
25.8
24.2
23.9
25.2
(円)
96,070
96,196
100,492
76,334
75,545
78,987
76,375
(%)
10.0
10.1
9.7
9.0
9.1
8.9
8.8
(円)
127,989
116,779
123,841
95,184
85,593
91,480
(%)
13.3
12.2
12.0
11.2
10.3
10.3
10.4
(円)
89,544
93,060
88,651
77,003
75,981
74,904
80,440
9.1
8.4
35,804
39,724
(%)
4.6
4.6
4.6
4.7
4.3
4.5
(円)
103,153
98,557
123,563
89,723
81,722
103,687
(%)
10.8
10.3
12.0
10.5
9.8
11.6
10.2
(円)
44,318
45,585
46,899
36,722
37,322
37,313
39,548
(%)
4.6
4.8
4.5
4.3
4.5
4.2
4.6
油 脂 ・ 調 味 (円)
料
43,216
40,051
41,302
39,984
38,223
37,976
(%)
4.5
4.2
4.0
4.7
4.6
4.3
4.6
(円)
73,359
76,534
83,104
70,365
72,790
75,436
72,346
子
類
調 理 食 品
飲
酒
外
料
類
食
(%)
(%)
(%)
1.6 ▲ 3.6 3,694,638
6.0 ▲ 2.5 3,565,671
0.6 ▲ 10.9
1.6 ▲ 9.9
3.9 ▲ 9.6
901,635
1.1 ▲ 12.7
23.4 ▲ 0.5 ▲ 1.9
25.3
0.1 ▲ 0.5
79,546
0.7 ▲ 20.8
0.1 ▲ 20.5
76,456
87,313
8.0
8.0
8.3
8.8
8.5
97,834
97,478
101,432
95,843
101,924
(%)
10.1
10.2
9.4
11.9
11.5
11.4
(円)
39,458
44,460
43,983
43,797
48,237
46,701
(%)
4.1
4.6
4.3
5.1
5.8
5.2
5.0
(円)
56,428
49,808
52,869
44,487
44,596
43,032
50,910
7.7 ▲ 10.8
2.8 ▲ 1.4
5.2
5.1
5.2
5.4
4.8
5.9
(円)
183,664
136,499
140,001
160,951
145,447
(%)
15.1
16.1
17.8
16.0
16.8
18.0
39,024 ▲ 1.8 ▲ 17.9
40,310
38,291
73,818
4.0
4.3
4.3 ▲ 13.5
8.0 ▲ 11.6
0.2 ▲ 4.4
1.4 ▲ 3.5
0.4
16.8 資料:総務省統計局「家計調査年報」
注:主要食料費内の下段は、食料消費支出額に占める主要食料費の割合
18.3 1.2 ▲ 6.9
75,915
0.6 ▲ 8.7
100,796 ▲ 1.1
3.4
11.2
3.4
12.2
47,377
1.4
7.7
5.3
42,200 ▲ 5.4 ▲ 15.3
158,433
38,443
8.4
4.9
6.6
5.4 ▲ 16.2
4.3
5.8
14.4 ▲ 9.8
39,315
4.4
93,082 ▲ 2.9 ▲ 4.9
49,871
103,093 ▲ 0.6 ▲ 16.6
11.4
10.8
8.8
2.3 ▲ 13.6
8.5
8.5
42,927 ▲ 2.0
153,733
7.5 ▲ 12.3
4.4
11.6
5.9
76,597
4.7
8.4
144,901
6.4 ▲ 13.1
9.9
100,406 ▲ 1.0
(%)
85,204
91,382 ▲ 0.1 ▲ 26.2
10.1
4.5
39,681 ▲ 0.8 ▲ 8.2
7.6
2.0 ▲ 25.2
9.4
88,123 ▲ 1.8 ▲ 14.6
96,525
8.8
10.1
4.4
(円)
1.2 ▲ 20.5
8.8
9.3
(%)
- 5 -
864,305
38,493
9.0
39,844
菓
(%)
38,174 ▲ 4.2 ▲ 14.3
8.6
47,528
物
H9年比
(%)
80,833
9.7
果
前年比
(%)
4.5 ▲ 10.2
43,916
野菜 ・海藻
H9年比
90,334 ▲ 5.1 ▲ 29.4
9.3
類
前年比
24.2 ▲ 0.0 ▲ 1.7
44,537
全国
H9年比
864,710
(円)
卵
四国
前年比
3,706,814 3,787,834 3,999,759 3,515,808 3,485,101 3,543,990 3,573,060
(%)
乳
主
要
食
料
費
四国
19年
18年
44,744
4.0 ▲ 15.4
5.0
13.2
3.1
165,402
18.3 2.8 ▲ 9.9
第Ⅰ部
3
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
食の安全と消費者の信頼の確保に向けて
(1)食品の安全確保
農畜水産物の生産段階における安全確保のための調査点検を行うととも
に、GAP手法の普及推進やBSEのまん延防止への対応等を行った。
また、管内での高病原性鳥インフルエンザの発生に備えて、対応マニュア
ルの見直しを行うとともに、発生時の初動対応訓練や高病原性鳥インフルエ
ンザに関する知識を深めるための講習会を実施し、体制の整備を図った。
ア
生産段階における取組
(ア)農畜水産物の安全の確保のための調査点検
【農薬・動物用医薬品の適切な使用・保管の管理の点検】
食品の安全を確保するためには、農畜水産物の生産段階において、農薬や動物
用医薬品の適切な使用・保管管理等を行う必要がある。
農 政 局 及 び 地 方 農 政 事 務 所 で は 、 19 年 度 に 、 ① 農 産 物 の 栽 培 農 家 を 対 象 と し た
農 薬 の 使 用 状 況 等 調 査 及 び 農 産 物 の 残 留 農 薬 等 の 分 析 ( 米 ・ 大 豆 99 件
野菜・
果 樹 ・ 茶 63 3 件 )、 ② 家 畜 の 飼 養 農 家 を 対 象 と し た 飼 料 の 使 用 状 況 等 の 点 検 ( 1 63
件 )、 ③ 水 産 物 の 養 殖 経 営 体 を 対 象 と し た 水 産 用 医 薬 品 及 び 養 殖 水 産 動 物 用 飼 料
の 使 用 状 況 等 の 点 検 ( 283件 ) を 行 っ た 。
調 査 の 結 果 、ご く 少 数 の 農 家 に お い て 農 薬 の 不 適 切 な 使 用 等 が 認 め ら れ た た め 、
当該県担当部局と連携し農薬の適正使用について指導した。なお、家畜及び養殖
水産物への飼料等の使用は適切に行われていた。
また、農林水産省が定めている「有害化学物質のサーベイランス及びモニタリ
ン グ 中 期 計 画 」( 1 8 ∼ 22 年 度 ) に 基 づ き 、 19 年 度 は 、 国 内 産 米 穀 の カ ド ミ ウ ム 含
有 実 態 調 査 を 行 っ た 。 管 内 135地 域 で 試 料 採 取 、 分 析 を 行 っ た が 、 カ ド ミ ウ ム 含
有 量 が 0.4ppmを 超 え る も の は な か っ た 。
(イ)GAP手法(農業生産工程管理手法)の普及推進
【説明会の開催やパンフレットの配布等による普及・啓発】
農林水産省では、生産から食卓までの食品安全を確保する一環として、農業生
産現場にGAP手法(※1)を積極的に普及している。
農政局及び地方農政事務所においては、生産者へのGAP手法の普及啓発を図
るため、県担当者や普及指導員等を対象とした説明会の開催、GAP手法につい
て説明したパンフレットの配布、GAP手法のモデルとなる「基礎GAP」及び
実践支援を行うための「GAP手法導入マニュアル」の公表等を行った。
そ の 結 果 、 管 内 の 主 要 な 産 地 ( 4 10 産 地 ) に お け る G A P 手 法 の 取 組 状 況 は 、
- 6 -
第Ⅰ部
19年 12月 31日 現 在 で 、 す で に 何 ら か の
第1章
図Ⅰ−1−1
G A P 手 法 を 実 践 し て い る 産 地 が 19、
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
GAP手法の認知度
知っている
5.6%
導 入 を 検 討 し て い る 産 地 が 42と な っ て
いる。しかしながら、未検討としてい
る 産 地 も 3 49 あ り 、 G A P 手 法 の 導 入 ・
推進に向けて一層の普及・啓発を行う
全く知らない
46.7%
必要がある。
また、消費者、食品関係事業者等の
回答者数
180
(100%)
聞いたことは
ある
47.8%
GAP手法への関心を高めるため、G
A P に 関 す る 意 見 交 換 会 ( 19年 10月 24
日、岡山市)を開催したほか、説明会
や パ ネ ル 展 示 等 の 実 施( 管 内 各 県 68件 )
など広く周知を図ってきた。しかしな
が ら 、 19年 8 ∼ 9 月 に 農 政 局 が 管 内 の
資料 : 中国 四国 地域 の 食品 関係 事 業者 に対 する ア ン
ケ ート 調査結 果( 中国 四国 農政 局 19年 10月
公表)
食品関係事業者に対し実施したアンケ
ート調査結果からみると、GAP手法の認知度はまだ低い状況にあることから、
今後も、生産現場への普及に加えて、食品関係事業者や消費者への情報提供が必
要 で あ る ( 図 Ⅰ − 1 − 1 )。
ギャップ
【 ※ 1 】G A P 手 法( Good Agricultural Practice、農 業 生 産 工 程 管 理 手 法 )
食品の安全の確保や環境の保全等のために、肥料や農薬を基準通りに使用
することや完熟の堆肥を使用するなど、農業生産の作業ごとに特に注意を払
って管理する項目などをあらかじめリスト化しておき、それを実施するごと
に記録に残し、次期の農作業改善に役立てる手法。
ま た 、農 林 水 産 省 で は 、G A P 手 法 の 実 践 項 目 と し て 注 目 さ れ て い る I P M( ※
2)の導入を促進するため、実践指標モデルを品目別に策定しているところであ
る。
農政局では、施設トマト及び施設ナスのモデル案を作成するためのIPM中国
四 国 地 区 検 討 会 を 開 催 ( 19 年 1 2月 11日 ) す る な ど 、 I P M の 普 及 に 努 め て い る 。
【 ※ 2 】 I P M ( Integrated Pest Management、 総 合 的 病 害 虫 ・ 雑 草 管 理 )
病害虫・雑草が発生しにくい環境を整え、防除の要否及びその実施時期を
適切に判断し、天敵や粘着板や粘着テープ等の多様な防除方法を組み合わせ
ることで、農薬の使用を最小限とする環境に配慮した防除方法。
- 7 -
第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
(ウ)BSEのまん延防止に向けた飼料規制
【豚肉骨粉等の飼料原料への牛由来たん白質等の混入防止措置の確認】
1 3年 9 月 に 国 内 で 初 の B S E が 発 生 し 、 そ の ま ん 延 防 止 の た め 、 牛 肉 骨 粉 の 飼
料 利 用 の 禁 止 等 の 規 制 措 置 が 行 わ れ て い る ( 豚 肉 骨 粉 等 に つ い て は 、 17年 4 月 か
ら 一 定 の 条 件 の も と で 、 飼 料 に 利 用 す る こ と を 認 め る こ と と な っ た 。)。
農政局では、これら規制措置の遵守状況を確認するために、豚肉骨粉等の原料
収集先事業所を対象に、牛由来たん白質の適切な分別管理に関する調査等を実施
し て い る 。 そ の 結 果 、 19年 度 に お い て も す べ て の 原 料 収 集 先 ( 108件 ) に お い て
適切な対応が確認された。
(エ)高病原性鳥インフルエンザへの対応
【高病原性鳥インフルエンザの発生に備えて体制を整備】
1 9年 1 月 の 岡 山 県 高 梁 市 で の 高 病 原 性 鳥 イ ン フ ル エ ン ザ ( 以 下 「 H P A I 」 と
い う 。) 発 生 時 に お い て 、 農 政 局 で は 、 消 費 者 ・ 流 通 業 者 等 へ の 正 確 な 情 報 の 提
供や、小売店舗における鶏肉・鶏卵の不適切な表示の自粛・改善の要請を行うな
ど、流通・消費段階における混乱の防止に努めた。また、岡山県からの要請によ
り発生現場における防疫作業に職員を派遣するなどの支援を行った。
19年 度 に は 、 こ れ ら を 踏 ま え て 管 内 に お け る H P A I 発 生 時 に 備 え 、 ① 「 中 国
四 国 農 政 局 高 病 原 性 鳥 イ ン フ ル エ ン ザ 危 機 管 理 対 応 マ ニ ュ ア ル 」 の 改 正 ( 11月 5
日)を行うとともに、②HPAIに関する知識を深めるための講習会及び防疫服
脱 着 訓 練 の 開 催 ( 1 0 月 4 日 ∼ 3 月 3 1 日 、 計 45 回 )、 ③ H P A I の 発 生 を 想 定 し た
緊 急 時 初 動 対 応 訓 練( 12月 17日 )、を 実 施 し 、迅 速 か つ 的 確 な 体 制 整 備 に 努 め た 。
【19年10月31日及び11月1日、岡山市内:高病原性鳥インフルエンザに関する講習会】
- 8 -
第Ⅰ部
イ
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
リスクコミュニケーションの推進
食品安全行政を的確に推進し、消費者の信頼を得るためには、わかりやすい
情報を適時・的確に提供するとともに、関係者間で意見・情報の交換を行い、
相互理解を深める必要がある。このため、各地域段階で職員を講師として派遣
する講座や、意見交換会等を実施した。
【「食の知っ得講座」の実施】
リスクコミュニケーションを円滑に推進するためには、消費者等へ食の安全
等に係る知識の普及が不可欠である。このため、農政局では、食品安全、食品
表示、農薬、食事バランスガイド等、食に関する7つのトピックスについて、
正しい知識を普及するため「食の知っ得講座」を開催している。
19年 度 は 539回 開 催 し 、 延 べ 1 万 6 千 人 が 受 講 し て お り 、 多 数 の 受 講 者 か ら 、
「わかりやすかった」との回答を得た。
【意見交換会等の開催】
19年 度 に 中 国 ・ 四 国 管 内 で は 、 食 品 安 全 委 員 会 、 厚 生 労 働 省 、 農 林 水 産 省 の
共催による「牛海綿状脳症(BSE)の国内対策」をテーマとした意見交換会
及 び 農 林 水 産 省 主 催 に よ る 「 総 合 的 病 害 虫 ・ 雑 草 管 理 ( I P M )」 を テ ー マ と
した意見交換会が、いずれも岡山市で開催された。
農政局では、GAP手法(農業生産工程管理手法)に関して、消費者、生産
者、流通業者等の立場の関係者による意見交換会を岡山市で開催した。開催後
に行ったアンケート結果では、過半数の参加者から「満足した」との回答があ
った。
GAP手法に関する意見交換会
- 9 -
第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
(2)消費者の信頼の確保
ア
食品表示の適正化に向けた取組
19年 6 月 の 加 工 食 品 の 原 材 料 供 給 会 社 の 不 正 事 案 等 の 発 覚 を 受 け 、 消 費 者
の食品表示に対する信頼を回復するためには、原材料供給業者に対して「農
林 物 資 の 規 格 化 及 び 品 質 表 示 の 適 正 化 に 関 す る 法 律 」( J A S 法 ) に 基 づ く
食 品 表 示 の 義 務 づ け が 必 要 と の 判 断 か ら 、 20年 度 か ら の 加 工 食 品 品 質 表 示 基
準等の改正が行われた。
農政局及び地方農政事務所では、食品関係事業者等を対象に説明会等を開
催し改正内容の事前周知を図った。また、広く国民(事業者及び消費者)に
表示制度等を理解してもらうための普及啓発活動や、小売店舗等の事業者に
対する巡回調査等の監視活動等を通じて、消費者の利益確保と食品表示の信
頼確保に努めている。
(ア)食品表示をめぐる情勢
【「 食 品 表 示 110番 」 受 付 件 数 の 急 増 、 業 者 間 取 引 の 表 示 の 義 務 化 】
19年 6 月 に 加 工 食 品 の 原 材 料 供 給 会 社 の 不 正 に よ り 、 品 質 表 示 基 準 に 違 反 し た
製品が出回る事案が発覚し、消費者の食品表示に対する不信感が高まった。これ
以 降 「 食 品 表 示 1 1 0 番 」( ※ 3 ) へ 寄 せ ら れ た 消 費 者 等 か ら の 表 示 違 反 疑 義 情 報
提 供 の 件 数 が 急 増 し 、 農 政 局 全 体 で 506件 ( 前 年 度 比 303% ) と な っ た 。
一方、消費者の食品表示に対する信頼回復のためにも、食品の業者間取引につ
いて表示を義務化することとし、JAS法に基づく加工食品品質表示基準等の改
正 が 行 わ れ た ( 20年 4 月 1 日 施 行 )。
【 ※ 3 】 食 品 表 示 110番
広く国民から食品表示に関する情報提供や相談を受け付ける窓口として、
農 林 水 産 本 省 ほ か 全 国 65か 所 に 開 設 し て い る 。 管 内 で は 中 国 四 国 農 政 局 消 費
・ 安 全 部 表 示 ・ 規 格 課 及 び 地 域 第 一 課 ( 岡 山 市 )、 各 農 政 事 務 所 並 び に ( 独 )
農 林 水 産 消 費 安 全 技 術 セ ン タ ー 神 戸 セ ン タ ー 岡 山 事 務 所 の 11か 所 と な っ て い
る。
(イ)食品表示制度の普及・啓発
【説明会やフォーラムを開催し、品質表示基準の改正内容等を周知】
JAS法に基づく加工食品品質表示基準等の改正内容を、食品関係事業者等に
事 前 周 知 を 図 る た め 、19年 11月 以 降 20年 3 月 ま で に 30回 の 説 明 会 を 開 催 し た ほ か 、
様 々 な 機 会 を 捉 え 81回 の 説 明 機 会 を 設 け た 。
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第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
また、食品の表示制度は、関係する法令が多岐にわたり、消費者、事業者の双
方から複雑でわかりにくいとの指摘がある一方で、加工食品の原料原産地表示の
拡充等、食品表示のさらなる充実が求められている。
このため農林水産省では、わかりやすい食品表示制度の実現を目指して、厚生
労 働 省 と 連 携 し て 「 食 品 の 表 示 に 関 す る 共 同 会 議 」 を 設 置 し ( 1 4 年 1 2 月 )、 食 品
表示全般について共同で審議を進め、共通の認識に立った規格・基準の改正に取
り 組 ん で い る 。 具 体 的 に は 、 19 年 10月 に 「 加 工 食 品 品 質 表 示 基 準 」 が 改 正 さ れ 、
「緑茶飲料」及び「あげ落花生」の原料原産地名の表示が義務づけられた。
農政局及び地方農政事務所では、このような制度改正の動きや品質表示基準の
改正内容等について広く国民に理解してもらうため、関係機関と連携しつつ食品
表示フォーラムを開催するなど、普及啓発を進めた。
○普及啓発の主な取組
・ 食 品 の 業 者 間 取 引 の 表 示 に つ い て の 周 知 ( 説 明 会 30回 、 そ の 他 81回 )
・ 食 品 関 係 事 業 者 向 け 食 品 表 示 セ ミ ナ ー ( 管 内 192回 ) 及 び 相 談 会 ( 管 内
45回 )
・食品品質表示セミナー(1回:高松市)
・ 消 費 者 向 け の 講 習 会 ( 管 内 171回 )
・食品表示地域フォーラム(1回:松江市)
・ 消 費 生 活 展 等 で の 展 示 ( 管 内 210回 )
(ウ)食品表示の監視
【食品表示に対する信頼回復に向けて監視を強化】
農政局及び地方農政事務所では、食品表示の監視活動の一環として、食品表示
を担当する職員が日常的に小売店舗等を巡回し、生鮮食品の名称や原産地の表示
状況を調査している。この調査では、あわせて有機農産物や特別栽培農産物等の
表示が適切に行われているかどうかも確認している。
ま た 、 ① 18年 7 月 の 米 国 産 牛 肉 輸 入 再 開 の 決 定 を 受 け て 、 牛 肉 及 び 牛 肉 加 工 品
等の原産地等の表示及び真正性について、②北朝鮮からの輸入量が多い農水産物
(まつたけ、アサリ等7品目)の原産地表示及び真正性について、前年度に引き
続き緊急特別調査を実施した。これらの他に、特に消費者の関心の高い品目であ
る 米 穀 に つ い て 19年 産 の 銘 柄 米 及 び 品 種 名 を 表 示 し た ブ レ ン ド 米 を 中 心 に 表 示 状
況及び表示根拠の確認調査やDNA分析による品種判別等、科学的手法を用いた
特別調査を実施した。
調査の結果、不適正表示が確認された場合には、表示義務者に対してJAS法
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第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
に基づき改善指導等の適切な対応を行っている。
生鮮食品の表示状況調査では、地域・業態に特化した調査方法(商店街等地域
悉 皆 調 査 等 ) も 取 り 入 れ な が ら 、 15 年 度 か ら 毎 年 度 管 内 で 約 4 千 店 舗 を 調 査 し て
きた。この間、表示欠落商品を販売していた小売店舗の割合は減少傾向にあるも
の の 、 18年 度 調 査 結 果 に よ る と 、 ① 調 査 対 象 小 売 店 舗 数 の 約 2 割 に お い て 、 ② ま
た 、 調 査 を 行 っ た 商 品 の 0.9% に お い て 、 原 産 地 表 示 の 欠 落 が 確 認 さ れ た こ と 等
か ら 、 19年 度 に お い て も 引 き 続 き 監 視 を 強 化 し た 。
ま た 、 1 9年 6 月 に 発 覚 し た 加 工 食 品 の 原 材 料 供 給 会 社 の 不 正 事 案 に 基 づ く 同 社
への立入検査の結果を受け、農政事務所等が、同社から供給を受けた原材料を使
用して製造した商品の追跡調査等を行った。
さ ら に 、「 食 品 表 示 1 1 0 番 」 へ 寄 せ ら れ た 一 般 消 費 者 等 か ら の 表 示 違 反 疑 義 情
報等に対して調査等を行い対処した。
加えて、一般消費者の方に日常の買物の中で食品表示をモニタリングしていた
だ く 食 品 表 示 ウ オ ッ チ ャ ー 事 業 ( 管 内 ウ オ ッ チ ャ ー 数 約 7 0名 ) を 活 用 し 、 表 示 違
反疑義情報等の収集に努めた。
一方、農林水産省では、食品表示に対する消費者の信頼を確保するため、製造
業者等がJAS法違反の恐れのある事実を発見したり、確認した場合は、速やか
に農林水産省への自主申告をお願いしている。なお、消費者へ迅速に情報を提供
す る こ と が 重 要 と の 考 え か ら 、 19 年 10月 か ら は 製 造 業 者 等 か ら の 自 主 申 告 を 受 理
した場合は、その情報をホームページに掲載することにした。
(エ)関係機関との連携
【地域における食品表示関係機関との連携を強化】
a 国の関係機関等との連携
食 品 表 示 に 関 す る 法 令 は 、「 J A S 法 」 の ほ か に 「 食 品 衛 生 法 」、「 不 当 景 品 類
及び不当表示防止法」等があり、関係する行政機関は多岐にわたる。中国・四国
地 域 に お け る こ れ ら 行 政 機 関 が 互 い に 情 報 ・ 意 見 交 換 を 行 う た め 、 14年 3 月 か ら
「中国四国地域食品表示関係3省等連絡会議」や「中国四国ブロック食品品質表
示関係連絡協議会」を設置し、関係機関相互の協力・連携を推進している。
ま た 、 18年 度 以 降 、 県 等 関 係 機 関 担 当 者 の 資 質 の 向 上 に 役 立 て る こ と を 目 的 と
して、中国四国地域食品表示関係3省等連絡会議主催による「中国四国地域食品
表示行政担当者研修会」を開催している。
さらに、営業倉庫で食品表示ラベルが貼り替えられるという過去に発生した虚
偽 表 示 事 件 を 踏 ま え て 、 1 8 年 以 降 、「 J A S 法 と 倉 庫 業 に 関 す る 連 絡 会 議 」 を 毎
年 開 催 し 、倉 庫 業 を 所 管 す る 管 内 地 方 運 輸 局 と の 連 絡 体 制 の 強 化 等 を 図 っ て い る 。
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第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
b 各県段階での連携
各県段階においても食品表示関係行政機関が互いに情報の共有化を図り、円滑
かつ効率的な業務遂行の一助とするため、農政局及び地方農政事務所と所在地県
等の食品表示関係行政担当者による月次連絡会を開催している。
ま た 、 19年 1 1月 、 警 察 庁 と 農 林 水 産 省 は 、 意 見 交 換 会 を 実 施 す る こ と 、 連 絡 責
任者を置くこと等相互に連携を強化することに合意した。これを受けて、当局管
内 に お い て は 、 19年 12月 ま で に 各 県 警 察 と 農 政 局 ・ 農 政 事 務 所 の 連 絡 体 制 を 整 備
した。
○中国・四国地域における食品表示関係行政機関の協力・連携
・中国四国地域食品表示関係3省等連絡会議
14年 3 月 14日 設 置 ( 19年 5 月 21日 及 び 11月 22日 開 催 )
構成員:公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所中国支所及び四国
支 所 、 中 国 四 国 厚 生 局 、( 独 ) 農 林 水 産 消 費 安 全 技 術 セ ン タ ー
神戸センター岡山事務所及び福岡センター門司事務所、中国四
国農政局
中国四国地域食品表示行政担当者研修会
( 19年 7 月 19日 広 島 合 同 庁 舎 4 号 館 、 7 月 23日 高 松 第 2 地 方 合 同 庁 舎 )
・中国四国ブロック食品品質表示関係連絡協議会
14年 3 月 1 日 設 置 ( 19年 7 月 4 日 開 催 )
構 成 員 : 管 内 各 県 、( 独 ) 農 林 水 産 消 費 安 全 技 術 セ ン タ ー 神 戸 セ ン タ ー
岡山事務所及び福岡センター門司事務所、中国四国農政局(管
内農政事務所を含む)
・ J A S 法 と 倉 庫 業 に 関 す る 連 絡 会 議 ( 19年 5 月 18日 開 催 )
構成員:中国運輸局、四国運輸局、九州運輸局、中国四国農政局
○各県段階における食品表示関係行政機関の協力・連携
・食品表示関係行政担当者による月次連絡会の開催(管内9県)
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第Ⅰ部
イ
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
トレーサビリティの普及
牛トレーサビリティ法の適正かつ円滑な推進のため、事業者に対する監視や
指導、消費者への普及啓発に取り組んだ。また、牛肉以外の食品についても、
トレーサビリティ(※4)の理解を深めるため、消費者や事業者に対し、トレ
ーサビリティの普及啓発を行った。
(ア)牛トレーサビリティ制度の適正な運用のための監視・指導
【牛の管理者及び牛肉の販売業者等にする監視・指導の強化】
平 成 13年 9 月 に 我 が 国 で 最 初 の B S E( 牛 海 綿 状 脳 症 )が 発 生 し た こ と に 伴 い 、
BSEのまん延防止措置の的確な実施や牛肉の安全性に対する信頼確保を図るた
め 、15年 6 月 に「 牛 の 個 体 識 別 の た め の 情 報 の 管 理 及 び 伝 達 に 関 す る 特 別 措 置 法 」
( 牛 ト レ ー サ ビ リ テ ィ 法 )が 成 立 し た 。
この法律に基づく牛トレーサビリティ制度の適正な運用を確保するためには、
牛飼養農家等(管理者)の適切な耳標の装着や出生、転出・転入等の届出、と畜
業者や牛肉の加工業者、販売業者の個体識別番号の適正な表示・伝達が不可欠で
ある。
こ の た め 、 農 政 局 及 び 地 方 農 政 事 務 所 で は 、 管 理 者 へ の 立 入 検 査 ( 7,810件 )、
牛 肉 の 販 売 業 者 及 び 特 定 料 理 (焼 き 肉 、 し ゃ ぶ し ゃ ぶ 、 す き 焼 き 及 び ス テ ー キ )提
供 業 者 へ の 立 入 検 査 ( 5 , 8 37 件 ) を 実 施 す る と と も に 、 個 体 識 別 番 号 の 適 正 な 伝
達を確認するため、市販の国産牛肉を買い上げてDNA鑑定を行っている。
19年 度 は 、 個 体 識 別 番 号 の 伝 達 等 が 不 適 切 で あ っ た 3 販 売 業 者 に つ い て 、 牛 ト
レ ー サ ビ リ テ ィ 法 に 基 づ く 是 正 勧 告 ・ 指 導 を 行 う と と も に 、事 業 者 名 を 公 表 し た 。
このうち、丸亀市学校給食会へ納入した牛肉に係る牛トレーサビリティ法違反
事例では、同事例を契機として、丸亀市教育委員会から学校給食へ納入される牛
肉 に つ い て も D N A 鑑 定 を 実 施 す る よ う 要 請 が あ り 、 1 9年 10月 か ら こ の 要 請 を 受
け入れて検査を実施している。
ま た 、流 通 段 階 に お け る 牛 ト レ ー サ ビ リ テ ィ 法 施 行 か ら 3 年 を 経 た こ と を 機 に 、
管 内 全 て の 食 肉 団 体 ( 2 7 団 体 ) 及 び 食 肉 卸 売 業 者 ( 68 0 業 者 ) に 対 し 、 牛 ト レ ー
サ ビ リ テ ィ 制 度 に つ い て 適 正 に 対 応 す る よ う 文 書 で 要 請 す る ( 19年 12月 12日 ) と
ともに、牛肉需要期である年末から年始にかけて、立入検査を通じて食肉販売業
者に対する監視を強化した。
(イ)牛トレーサビリティ制度の啓発
【PRキャンペーンの実施】
農政局及び地方農政事務所では、より多くの一般消費者に牛トレーサビリティ
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第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
制度について理解を促進するため、全国初となる、農政局及び管内の農政事務所
が統一して取り組むPRキャンペーンを行った。具体的には、①消費者が食肉小
売店等で購入した国産牛肉商品に表示された個体識別番号から履歴を検索しても
らい、その牛の生まれた都道府県名及びアンケートを記入して農政局へ応募して
い た だ き 、 ② 抽 選 で 管 内 各 県 10 組 ( 合 計 9 コ ー ス 90組 ) の 親 子 に 酪 農 教 育 フ ァ ー
ム等において、牛とのふれあい、乳搾りやバターの製造体験とあわせて牛トレー
サ ビ リ テ ィ 制 度 の 紹 介 を 実 施 し た 。 応 募 申 込 期 間 ( 7 月 2 3日 ∼ 8 月 31日 ) 中 に 管
内 か ら 305組 の 応 募 が あ り 、 10月 に 計 90組 の 親 子 が 参 加 し た 。
牛トレーサビリティ制度PRキャンペーンポスター
(ウ)食品(牛肉以外)のトレーサビリティの普及
【関係者の自主的な取組を支援】
法律によってトレーサビリティが義務づけられている国産牛肉を除く食品につ
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第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
いては、生産、流通、加工、販売に至るまでのフードチェーン全体の事業者によ
る自主的な取組が基本となる。
関 係 者 の 取 組 を 促 進 す る た め 、 農 政 局 で は 、 19 年 12月 、 岡 山 市 で 開 催 し た ア グ
リビジネス創出フェアーにおいて、消費者、食品事業者、生産者等を対象とした
「 食 の 安 全 ・ 安 心 セ ミ ナ ー 」( 参 加 者 約 100
名)を開催した。セミナーでは、フードチ
ェーンの全体を通じた食品安全に寄与する
仕組みづくりについての講演やGAP手法
( 農 業 生 産 工 程 管 理 手 法 )、 H A C C P 、
トレーサビリティの取組の先進事例の紹介
のほか、展示機器によるデモンストレーシ
ョンを実施し、トレーサビリティに対する
参加者の理解を促進した。
セミナーでの講演
【※4】トレーサビリティ
トレーサビリティとは食品の移動を把握できることであり、トレーサビリテ
ィを確立すれば、食品事故があったときの原因究明や食品回収などがより迅
速に行えるようになる。
4
食育の推進
(1)地域が連携した食育の推進
地域が連携した食育の推進を図るため、学校給食へ地域の農林水産物を活用
し、食育を推進している優良事例を紹介するフォーラムを開催するとともに、
地域における食育活動に取り組む団体・個人を会員とする「中国四国食育ネッ
トワーク」を設立した。
【「 食 育 フ ォ ー ラ ム in中 国 四 国 」 の 開 催 】
食に関する正しい知識を身につけるためには、人間形成の最も重要な時期であ
る子どもの頃から学んでいくことがより効果的である。子どもたちの「食」や
「農」への理解を深める上で、地域の農林水産物の学校給食への活用は効果的な
教材となる。
こ の た め 、 農 政 局 で は 、 16年 度 か ら 3 カ 年 、 各 農 政 事 務 所 に 「 食 育 相 談 ア ド バ
イ ザ ー 」 を 設 置 し 、 管 内 22 か 所 の 重 点 推 進 地 区 に お い て 、 学 校 給 食 関 係 者 と 生 産
者間の橋渡しなど地域での取組の支援活動を行った。この取り組みを通して、各
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第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
地区にて地場産農産物の利用率の向上をはじめ、生産関係者と給食を食べながら
「食」や「農」について学ぶ交流給食会、生産者の指導による水稲栽培などの農
業体験学習の実施等の成果がみられた。
農政局作成のリーフレット(抜粋)
この成果について、学校給食関係者、生産者、行政、消費者等に幅広く知って
も ら う た め 、 1 9 年 8 月 に 岡 山 市 内 に お い て 、「 食 育 フ ォ ー ラ ム i n 中 国 四 国 」( 参
加 者 約 200人 ) を 開 催 し た 。
同フォーラムでは、米飯給食と食育に先駆的に取り組んだ前高知県南国市教育
長
西森善郎氏による講演とあわせて、農政局が取り組んだ3カ年の結果報告と
優良事例の紹介、さらには優良事例地区の学校給食関係者と生産者のパネルディ
スカッションを行なった。この結果子どもたちへの食育の効果のみならず、こう
した活動が地域の生産者の励みにもなることを参加者に伝えることができた。
食育フォーラムの様子
農作業に汗を流す子どもたち
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第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
【中国四国食育ネットワークの設立】
食育は、広く国民的運動として実施していくことが不可欠であるが、単独の団
体・個人では、他の活動主体の取組に係る情報を入手しにくいこともあり、活動
が広がりにくくなっている。
こ の た め 、 農 政 局 で は 、「 中 国 四 国 食 育 ネ ッ ト ワ ー ク 」 と し て 地 域 で 食 育 に 取
り組んでいる団体・企業・個人の会員を募集し、その活動を農政局のホームペー
ジ で 紹 介 し た 。( 20年 3 月 末 現 在 の 会 員 数 140)
また、会員間の情報交換に資するため、会員のイベント情報などを紹介するメ
ールマガジンを会員等に発信している。
( ア ド レ ス : http://www.maff.go.jp/chushi/syokuiku/index.htm)
(2)理想的な食事バランスの推進
望 ま し い 食 事 の 内 容 を 示 し た 「 食 事 バ ラ ン ス ガ イ ド 」 を 作 成 し て 、「 日 本 型
食生活」の実践の普及推進活動の一環として、リーフレットの配布やシンポジ
ウムを開催した。
【「 食 事 バ ラ ン ス ガ イ ド 」 の 実 践 に 向 け た 普 及 推 進 活 動 を 実 施 】
食の欧米化に伴い、油脂類の過剰摂取等により栄養バランスが崩れるなど食生
活の乱れが問題となっている。このため、農政局及び地方農政事務所では、1日
に 「 何 を 」「 ど れ だ け 」 食 べ た ら よ い か を コ マ の イ ラ ス ト で わ か り や す く 示 し た
「食事バランスガイド」の普及を行っている。
農 政 局 に お い て は 、6 月 の「 食 育 月 間 」に 岡 山 駅 地 下 街 で「 移 動 消 費 者 の 部 屋 」
を開設し、食事バランスガイドに関するパネル展示、パンフレット等の資料配布
と岡山県栄養士会の協力を得て栄養・食生活相談を行った。また、管内各農政事
務 所 で も「 移 動 消 費 者 の 部 屋 」を 開 設 し 、食 育 啓 発 の た め の イ ベ ン ト を 実 施 し た 。
パネル展示
栄養士による相談コーナー
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第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
さ ら に 、 食 事 バ ラ ン ス ガ イ ド の 実 践 に 向 け て 、 「 岡 山 県 農 林 水 産 業 祭 」 ( 19年
10月 開 催 )や「 野 菜 ・ 果 物 に 関 す る 食 育 シ ン ポ ジ ウ ム 」( 19年 11月 高 松 市 で 開 催 )
において、日頃、不足しがちな野菜や果物の働きや大切さをアピールし摂取の拡
大を呼びかけた。
また、食事バランスガイドの実践方法について、わかりやすく解説したポケッ
ト版のリーフレットや、食事バランスガイドのコマのペーパークラフト等、各種
資材を農政局において作成し、各種イベント等を通じて配布した。
農政局作成のポケット版リーフレット、コマのペーパークラフト
( 3 )「 教 育 フ ァ ー ム 」 の 取 組 の 推 進
生産者の指導の下で一連の農作業を体験し、自然の恩恵や農業生産に関わる
人 々 の 活 動 を 五 感 で 感 じ る こ と に よ り 、「 食 」 や 「 農 」 へ の 理 解 を 深 め る 「 教
育ファーム」の取組推進を行っている。
【管内で取り組まれている「教育ファーム」の事例を収集し、関係者に配付】
食に関する関心や理解の増進を図るためには、農林水産物の生産に関する体験
活 動 の 機 会 を 提 供 す る こ と が 重 要 で あ る こ と か ら 、 1 8年 3 月 に 食 育 推 進 会 議 が 決
定 し た 「 食 育 推 進 基 本 計 画 」 の な か に 、「 教 育 フ ァ ー ム 」 の 取 組 推 進 が 掲 げ ら れ
ている。現在、各地域において市町村、学校、農林漁業者等様々な実施主体によ
る、農林水産物の生産に関する体験である「教育ファーム」の取組が行われてい
る。
農政局では、管内の優良事例を農政局のホームページで紹介するとともに、教
育ファームの取組内容とその効果について紹介するリーフレットを作成し、これ
か ら 取 り 組 も う と し て い る 市 町 村 、生 産 者 、学 校 関 係 者 な ど の 関 係 者 に 配 付 し た 。
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第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
農政局作成の教育ファームリーフレット(抜粋)
5
地産地消の推進に向けて
管内では、132件の地産地消推進計画が策定(20年3月末時点)されるなど、各地
域で地産地消の取組が積極的に行われている。
【地産地消推進計画の策定を通じた地産地消の積極的な推進】
(1)地産地消の位置付け
近年の「食」と「農」を取り巻く状況の変化から、各地で地産地消の取組が活
発 化 し て い る と こ ろ で あ る 。 17 年 3 月 に 策 定 さ れ た 新 た な 「 食 料 ・ 農 業 ・ 農 村 基
本計画」の中でも、食料自給率の向上のため重点的に取り組むべき事項として、
「地域の消費者ニーズに即応した農業生産と、生産された農産物を地域で消費し
ようとする活動を通じて、生産者と消費者を結び付ける」取組である地産地消を
位置付け、その全国展開を積極的に推進することとしているところである。
(2)地産地消推進計画の策定
地産地消の推進については、地域における実践的な計画(地産地消推進計画)
(※5)を策定し、この計画に基づく生産者と消費者の交流活動や地場産農産物
の普及活動を促進することが重要である。
19年 度 末 ま で に 全 国 の 1/ 2の 市 町 村 ( 900市 町 村 ) で 地 産 地 消 推 進 計 画 を 策 定 す
る と い う 地 産 地 消 推 進 検 討 会 の 行 動 計 画 に 対 し て 、 管 内 で は 全 205市 町 村 の う ち
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第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
目 標 を 上 回 る 132件 の 計 画 が 策 定 ( 20年 3 月 末 時 点 ) さ れ た 。
【※5】地産地消推進計画
地方公共団体、農業者団体、食品産業事業者、消費者団体等が計画主体と
なり、直売所、量販店、学校、外食産業等における地場農産物の利用促進、
生産者と消費者の交流活動など地域の実情に応じて、地産地消に関する明確
な目標を設定し、関係者が共通の認識を持って取組を進めようというもの。
(3)地域における取組
中 国 ・ 四 国 の 各 地 域 で は 、「 食 」 と 「 農 」 の 距 離 を 近 づ け る こ と に よ る 地 域 農
業の振興、都市と農村の共生・対流、食育の推進等の様々な価値を認め、地場産
品の消費拡大、直売所での販売、地場産農産物等の学校給食利用促進等様々な地
産地消の取組が展開されている。
19年 度 地 産 地 消 優 良 活 動 表 彰 に お い て は 、 管 内 か ら 7 団 体 が 応 募 し 、 高 知 県 土
佐清水市の「窪津漁業協同組合」が水産庁長官賞を受賞した。
《漁村の生活・文化体験を通じた都市と漁村の交流》
∼ 窪津漁業協同組合 高知県土佐清水市 ∼
窪津漁業協同組合では、漁業や水産物に対する理解を深めてもらうため、6年から
観光定置網を開始。漁協直販センター、直営レストランを整備し、魚食文化の普及・
啓発をはじめ、地元農水産物等の活用など地域の活性化の中核的な役割を果たしてい
る。
窪津地区は、高知県土佐清水市の足摺半島付け根の東部に位置し、人口は570人(18
年10月現在)で、高齢化率は41.9%である。主な産業は、漁業であり、多種多様な魚種
が水揚げされている。
窪津漁業協同組合では、漁業や水産物への理解を深めてもらうため、6年から定置網
漁の見学と港で水揚げされた捕れたての魚などを調理して振舞う観光定置網を実施して
いる。また、12年には利用者がいつでも新鮮な魚や野菜、加工品を購入できる漁協直販
センター「大漁屋」の整備が行われ、オープン以降、利用客・売上とも順調に推移して
いる。また、魚介類と地域で採れた野菜等を使った地元ならではの料理を地域住民や観
光客等に提供する「大漁屋海鮮館」が18年にオープンし、地域食材の有効活用並びに郷
土料理の伝承や普及を目指して活動している。
修学旅行生の漁家受け入れ
漁協直販センター「大漁屋」
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第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
(3)農政局の取組
中国・四国地域の立地条件を活かした農業生産の維持・発展、消費者と生産者
との信頼関係の構築、地域の食文化の伝承、農村地域の活性化等を図っていく観
点からも農政局として地産地消の取組を支援していくことが重要である。
このため農政局では、独自のシンボルマークの使用(名刺や封筒等に印刷)や
農政局広報誌に地産地消に関する情報を掲載、農政局ホームページの地産地消コ
ーナーで中国四国各地の直売施設等を紹介するなど、地産地消に関する情報を積
極的に発信している。
ま た 、 農 政 局 「 消 費 者 の 部 屋 」 展 示 コ ー ナ ー ( 9 ∼ 1 0月 ) で は 、 岡 山 県 と 徳 島
県の協力を得て、両県の県産農林水産物や加工品の紹介、直売所やイベントの紹
介を行った。
なお、各種補助事業、交付金を通じて支援するとともに、地域におけるイベン
ト等の機会を通じて、地産地消の普及・啓発等の取組を行っている。
地産地消シンボルマーク
岡山県の地産地消県民運動を紹介した展示コーナー
徳島県の農林水産物を紹介した展示コーナー
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第Ⅰ部
6
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
米粉食品の利用拡大
農林水産省では食料自給率向上のため、米消費拡大につながる新たな需要拡
大方策の一環として、米粉の普及推進に取り組んでいる。
【米粉を利用した新たな用途開発により今後の需要増加を見込む】
(1)米の消費に関する動向
米の一人当たりの年間消費量は、食の欧米化や消費者ニーズの多様化により、
昭 和 37年 度 ( 118.3㎏ ) を ピ ー ク に 、 そ の 後 、 年 々 減 少 し て お り 、 平 成 18年 度
( 61. 0㎏ ) に お い て は 半 減 と な り 、 食 料 自 給 率 低 下 の 要 因 に も な っ て い る こ と か
ら、新たな需要拡大方策の一環として米粉の普及・啓発に取り組んでいる(図Ⅰ
− 1 − 2 )。
図Ⅰ−1−2
国民一人当たり年間消費量の推移
(kg)
120
110
118.3
111.7
95.1
100
88.0
90
78.9
80
74.6
70.0
70
67.8
64.6
61.0
60
50
0
1962
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2006(年度)
資料:農林水産省「食料需給表」
(2)米粉をめぐる状況
米の消費が落ち込むなかで、米を利用した新たな用途開発が進められ、近年で
は米を微細粒にした粉を用いたパン、ケーキ、麺等の商品が開発されたり、上新
粉等従来からある粉についてもその良さが見直され、家庭でも手軽に料理に取り
入れられるなど、米の消費拡大への期待が高まってきている。
ま た 、 米 粉 パ ン は 食 育 や 地 産 地 消 の 観 点 か ら 学 校 給 食 へ も 導 入 さ れ て お り 、 18
年 度 で は 全 国 で 約 8 千 校 、 中 国 ・ 四 国 地 域 で は 429校 で 導 入 さ れ て い る 。
18年 度 に お い て 、 米 粉 の パ ン 、 ケ ー キ 、 麺 等 の 新 規 需 要 に よ る 原 料 米 使 用 量 は
約 6 千 ト ン と 15年 と 比 べ 6 倍 に な っ て お り 、 今 後 さ ら に 需 要 が 増 加 す る と 見 込 ま
れ て い る ( 図 Ⅰ − 1 − 3 )。
- 23 -
第Ⅰ部
図Ⅰ−1−3
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
米粉パン等の原料米使用量
(t)
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
15年度
米粉パン
16年度
17年度
18年度
資料:農林水産省「地方農政事務所等による米粉パン等買受
業者からの聞き取り」
(3)中国・四国地域における米粉の普及推進の取組状況
このようななか、農政局及び地方農政事務所では、米粉の普及推進のため民間
企業・団体等で構成されている米粉食品普及推進協議会等とも連携し、各種取組
を実施している。
各種取組は、マスコミに取り上げられるなど、多数の方々への普及・啓発につ
な が り 、 各 種 イ ベ ン ト の ア ン ケ ー ト 結 果 で は 、「 米 粉 食 品 」 の 認 知 度 は 年 々 高 ま
っ て き て い る ( 図 Ⅰ − 1 − 4 )。
図Ⅰ−1−4
イベントでの米粉食品の認知度に関するアンケート結果
資料:中国四国農政局調べ
ア
パネル展及び即売会の開催
集客の多いデパート・スーパー・イベント会場等で米粉食品普及啓発のパ
ネル展示や米粉パン等の販売会を開催した。
イ
米粉食品ワークショップ(実技講習会)の開催
主に消費者を対象に米粉パン・米粉ケーキ講習会を開催した。
- 24 -
第Ⅰ部
ウ
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
米粉食品シンポジウムの開催
米粉の利用をより一層促進させるため、新たな取組等の情報の共有を図る
こ と を 目 的 と し て 、「 米 粉 食 品 シ ン ポ ジ ウ ム 」 を 広 島 市 及 び 高 知 市 で 開 催 し
た。
デパートで米粉パン販売
エ
米粉クリスマスケーキ講習会
米粉食品シンポジウム
米粉料理レシピ及び米粉食品販売店マップの作成
従来からある上新粉等を用い家庭でも手軽にできる米粉料理のレシピ集「米
粉 で 簡 単 C o o k i n g ! P a r t 3 ( 2 3 種 )」 を 作 成 。 ま た 、 米 粉 食 品 を 販 売 し て い る
店 舗 ( 90店 舗 ) を 紹 介 し た 「 中 国 四 国 米 粉 食 品 販 売 店 マ ッ プ 」 の 19年 改 訂 版 を
作成し、農政局のホームページ等で紹介している。
米粉料理レシピ集
オ
米粉食品販売店マップ
米粉関連情報の提供
米粉に関する様々な情報をメールマガジン(ココねっと通信)として定期的
に 配 信 し て い る 。( 19年 12月 末 現 在 の 配 信 数 : 約 4 千 名 )
- 25 -
第Ⅰ部
第1章
最近の食 料・農業・ 農村の状 況
(4)今後の一層の普及推進に向けて
中国・四国地域には微細粒粉を製造できる全国的にも数少ない製粉機を保有す
る施設もあることから、学校給食用米粉パンの普及推進、米粉食品普及推進協議
会と連携し地産地消を推進する起業家への働きかけ、米粉食品販売店舗数の拡大
に よ り 米 粉 の 普 及 を 推 進 す る ( 表 Ⅰ − 1 − 3 )。 ま た 、 家 庭 の 中 で 米 粉 を 普 及 さ
せ る べ く 様 々 な 取 組 を 進 め て い く ( 表 Ⅰ − 1 − 4 )。
表Ⅰ−1−3
県名
中国四国管内の微細粒粉製粉業者一覧表
業
者
名
所在地・連絡先
岡 山 県 (株 )ア ク テ ィ ブ 哲 西
新 見 市 哲 西 町 矢 田 3585-1(TEL: 0867-94-9017)
香 川 県 香 川 食 糧 (株 )
高 松 市 福 岡 町 3-17-22 (TEL: 087-851-0571)
資料:中国四国農政局調べ
表Ⅰ−1−4
中国四国管内の20年度取組内容一覧表
20年 度 取 組 内 容
・駅地下、デパート等集客率の高い場所で米粉イベント(米粉食品フェアー
等)を開催して、パネル展示、チラシ配布、米粉食品試食、販売会の実施
・米粉食品シンポジウム、セミナーの開催
・米粉料理(パン・菓子等)講習会の開催
・米粉料理レシピ集「米粉で簡単Cooking!Part4」を発行
・「 米 粉 食 品 販 売 店 マ ッ プ ( 20年 改 訂 版 )」 を 発 行
・パン製造業者を対象とした米粉を使ったパンの技術講習会の開催
資料:中国四国農政局作成
- 26 -
鳥取県
表及び グラフの見方
品 目
米
日本なし
生乳
豚
ブロイラー
らっきょう
芝
ストック
日本なし
すいか
主業 農家、準 主業
農家及 び副業 的農家
の内訳
資料;2 005年 農林業
センサ ス及び 2000年
世界農 林業セ ンサス
結果 販 売農 家
農 産物 の産 出
額の 高い 品目 、
全国 順位 の高 い
品目 の上 位5 品
目に つい て
販売 農家の経 営
類型比 及び単 一経営
の内訳
資料;2 005年農 林業
センサ ス結果
資料;平成18年農
業産出額
管内 各県の 農業産 出額・ 農業構 造の概 要
資 料: 中国 四国 農政 局調べ
島根県
品 目
米
肉用牛
生乳
鶏卵
ぶどう
産出額 全国順位
239億円
29位
73億円
21位
57億円
26位
30億円
34位
26億円
8位
鶏ふん
ぶどう
小豆
わさび
ひのき苗木
3億円
26億円
2億円
1億円
1億円
2位
8位
8位
8位
8位
広島県
品 目
米
鶏卵
生乳
肉 用牛
みか ん
わけぎ
はっさく
ネーブルオレンジ
く わい
い
産出額
全国順位
292億 円
24 位
172億 円
7位
62億 円
24位
59億 円
26 位
51億 円
9位
12億 円
1位
10億 円
2位
4億 円
2位
2億 円
2位
1億 円
2位
12年
8. 4
2 6.4
65 .2
17年
8. 8
23. 8
67. 4
管内
1 4.6
全国
2 0.6
2 1.9
岡山県
品 目
米
鶏卵
生乳
ぶどう
肉用牛
ひのき苗木
64. 8
22. 6
主業 農家
55. 5
準 主業農 家
副業的 農家
複 合経営
71.6%
稲作
単一経 営
3.6%
果 樹類
82.4%
1.7%
肉 用牛
露地野 菜
4.2%
1.3%
4.2%
13.4%
準 単一経 営
9.7
22.9
67.4
17年
9.5
21.1
69 .4
管内
全国
14.6
20.6
21.9
産出額 全国順位
355 億円
19 位
180 億円
6位
109億円
12位
102 億円
3位
71億円
22位
2億円
1位
1億円
1位
8億円
2位
102 億円
3位
52 億円
3位
12年
1 4.1
17年
1 3.8
24. 8
管内
14. 6
20. 6
26. 8
21. 9
全国
59. 2
6 1.4
64. 8
22. 6
主業農 家
55.5
準主 業農家
副 業的 農家
複合経営
56.6%
6.0%
単一経営
76.2%
17.8%
準単一経営
稲作
果 樹類
7.9%
5.5%
1.1%
露 地野 菜
5.0%
そ の他
施 設野 菜
12年
8 .9
20.7
7 0.4
17年
9 .2
18.6
72.1
管内
全国
14.6
20.6
21.9
64.8
22.6
主業農 家
55.5
準主 業農家
副 業的 農家
複合経営
3.7%
単一経営
80.6%
15.7%
準単一経営
66.6%
6.4%
2.6%
1.0%
4.2%
稲作
果 樹類
露 地野 菜
花 き・花木
そ の他
鳥取県
島根県
64.8
22.6
主業 農家
ささげ
マッシュルーム
ぶどう
もも
そ の他
12年
産出額 全国順位
160 億円
36位
61億円
4位
57 億円
25位
53億円
26位
48 億円
10位
15 億円
1位
11億円
2位
2億円
3位
61億円
4位
32 億円
6位
55.5
準 主業農 家
副業的 農家
複合経営
69.9%
3.2%
単一経営
87.0%
9.8%
準単一経営
稲作
9.6%
果 樹類
2.5%
1.4%
3.6%
露地野 菜
施設野 菜
山口県
そ の他
- 28 -
広島県
岡山県
山口県
品 目
米
鶏卵
肉用牛
ブロイラー
生乳
れんこん
いよかん
くり
ひのき苗木
なつみかん
産出額 全国順位
262億円
26位
73億円
23 位
47億円
30位
26億円
20 位
23億円
41 位
10億円
4位
2億円
5位
2億円
7位
1億円
9位
2億円
10位
愛媛県
品 目
みかん
米
豚
いよかん
鶏卵
いよかん
清見
キウイフルーツ
ポンカン
裸麦
産出額
全国順位
210億円
3位
160億円
35位
122億円
14位
92億円
1位
70億円
24位
92億円
1位
23億円
1位
20億円
1位
15億円
1位
7億円
1位
高知県
品 目
米
なす
みょうが
きゅ うり
にら
なす
みょうが
にら
しょうが
ししとう
産出額 全国 順位
126億 円
39位
105億 円
1位
61億 円
1位
58億 円
7位
55億 円
1位
105億 円
1位
61億 円
1位
55億 円
1位
49億 円
1位
39億 円
1位
12年
10.6
17年
9.8
管内
全国
26.5
20 .6
1 4.6
愛媛県
64.8
22.6
2 1.9
香川県
62.9
6 8.2
2 2.0
55.5
主業農家
準主業農家
副業的農家
複合経営
4.3%
68.7%
6.0%
単一経営
3.0%
1.7%
3.1%
82.5%
13.2%
準単一経営
12年
24.0
17年
23.3
管内
14.6
全国
稲作
果樹類
23 .6
香川県
品 目
米
鶏卵
レ タス
生乳
いちご
たまねぎ種子
56.6
20 .6
64.8
22.6
5 5.5
主業農家
準主業農家
副業的農家
複合経営
38.0%
5.4%
77.5%
17.1%
準単一経営
12年
3 5.8
17年
34.6
管内
全国
1 4.6
2 1.9
果樹類
稲作
29.5%
3.4%
1.9%
4.7%
単一経営
17.8
施設野菜
その他
品 目
米
ブロイラー
かんしょ
にんじん
肉用牛
すだち
洋ラン
カリフラワー
れんこん
なばな
64 .8
22.6
55.5
準主業農家
副業的農家
複合経営
4.3%
単一経営
78.2%
17.4%
準単一経営
30.5%
21.6%
8.9%
8.0%
9.2%
産出額 全国順位
152億円
37位
89億円
21位
44億円
4位
36億円
33位
36億円
12位
7億円
1億円
5億円
4億円
1億円
1位
1位
2位
2位
2位
徳島県
50 .5
2 0.6
主業農家
マーガレット
にんにく
裸麦
ささげ
露地野菜
46.4
1 4.9
徳島県
その他
52.4
20.1
21.9
高知県
露地野菜
施設野菜
稲作
施設野菜
果樹類
露地野菜
その他
- 29 -
産出額
全国順位
138億円
38 位
95億円
6位
77億円
4位
73億円
3位
64億円
25 位
27億円
1位
8億円
1位
5億円
1位
34億円
2位
15億円
2位
12年
11. 4
2 1.4
17年
11. 2
19. 6
管内
全国
14. 6
67. 2
69 .2
64. 8
20. 6
55 .5
22 .6
21. 9
主業農家
準主業農家
副業的農家
複合経営
57.4%
5.5%
75.8%
18.7%
12 年
23.7
17 年
22.6
全国
露地野菜
施設野菜
その他
5.1%
準単一経営
管内
稲作
果樹類
5.8%
5.1%
2.4%
単一経営
14.6
23.7
52 .6
2 0.5
20.6
21.9
56.9
64.8
22 .6
主業農家
55.5
準主業農家
副業的農家
複合経営
4.5%
単一経営
75.3%
20.1%
準単一経営
41.8%
稲作
11.0%
9.6%
3.5%
果樹類
露地野菜
9.4%
施設野菜
その他
第Ⅰ 部
第2章
1
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
中国四国の農業・農村の現状
19年度の中国四国管内の気象状況と農業生産への影響
(1)気象概況
【年間を通じて全般的に高温少雨傾向】
中国・四国地方では、4∼6月には、前年度に引き続き全域で少雨となった。
梅雨入りは、太平洋高気圧の張り出しが弱く梅雨前線の北上が遅れたため、平年
より8∼9日遅かった(中国地方:6月14日(平年6日)、四国地方:6月13日
(平年4日))。梅雨入り後も前線の活動は弱く日本の南海上に停滞したため、
降水量の少ない状態が続き、それまでの少雨の状態を解消するには至らなかった。
7月に入ると、梅雨前線の影響で曇りや雨の日が多くなり、14∼15日にかけて
台風の影響でまとまった雨が降り、水不足は解消した。梅雨明けは中国・四国地
方ともに23日で、平年より3∼6日遅かった(中国地方:平年20日、四国地方:
平年17日)。その後、太平洋高気圧に覆われて晴れの日が続き、高温少雨となっ
た。特に、気温は平年よりかなり高い状態で、猛暑日や熱帯夜が続いた。
この間、中国・四国地方に接近・上陸した台風は、7月14∼15日にかけて西日
本の南岸を進んだ台風第4号、8月2∼3日にかけて九州から山口県を通過し日
本海を進んだ台風第5号及び9月16日前後に東シナ海を北上し日本海へ進んだ台
風第11号の3つで、各地にまとまった雨をもたらした。
10月以降、天気は周期的に変化しつつも高温少雨傾向が続いたが、2月になる
と、気温は平年並みからやや低めで推移した。
農政局では、19年3月29日に「暖冬及び今後の気象動向」、5月29日に「少雨
における水稲作」、7月12日に「台風第4号の接近及び通過」及び7月31日に
「台風第5号の接近及び通過」について注意喚起目的で技術指導文書を発出した。
(2)被害の状況
ア
農作物の被害状況
19年は、梅雨期の日照時間が中国地域を中心に少なく、この影響により水
稲の穂数が減少するなどの被害が発生した。
また、7月中旬から8月上旬にかけて相次いで襲来した台風第4号及び第
5号の影響により、徳島県、高知県の早期米を中心に冠水や倒伏等の被害が
発生した。
【梅雨期の日照不足や台風の影響による被害が発生】
《19年に発生した主な被害》
- 30 -
第Ⅰ 部
①
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
強風
5月中旬は、発達した低気圧の影響により暴風となり、愛媛県でキウイフ
ルーツの結果枝が折損するなどの被害が発生した。
②
降ひょう
6月上旬は、徳島県などの一部地域で降ひょうがあり、葉たばこを中心に
被害が発生した。
③
梅雨期の日照不足等
梅雨入り後は梅雨前線や低気圧等の影響により中国地方を中心に曇りの日
が多く、また、7月は寒気の影響により気温の低い日が多かった。この影響
により、水稲の穂数が減少するなどの被害が発生した。
④
台風第4号
7月中旬は、台風第4号が鹿児島県に上陸した後、本州南岸を東に進んだ。
この影響により、徳島、高知県の早期米を中心に冠水や白穂等の登熟障害が
発生したほか、れんこんなどの野菜に茎葉の損傷、果樹に落果等の被害が発
生した。
⑤
台風第5号
8月上旬は、台風第5号が宮崎県に上陸した後、北上した。この影響によ
り、徳島、高知県の早期米を中心に倒伏等の被害が発生したほか、野菜に茎
葉の損傷、果樹に落果等の被害が発生した。
イ
農地・農業施設等の被害状況
【梅雨前線や台風の被害により激甚災害に指定】
19年は、梅雨前線豪雨、台風第4号及び局所な豪雨による被害が多く、農地畦
畔・農業用施設の崩壊や頭首工・水路の流失等様々な災害が発生した(図Ⅰ−2
−1)。
管内の19年の被害額・被害数は、農業用施設約25億円(1,278か所)、農地約
10億円(1,093所)、地すべり防止施設等約2億円(20か所)、全体で約37億円
(2,391か所)となっている。なお、過去10年間の平均被害額は約244億円であり、
過去10年間で2番目に小さい被害規模となった(表Ⅰ−2−1)。
- 31 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
図Ⅰ−2−1 19年発生災害の割合
そ の他災害
約 2 億円 ( 5 .4% )
局所な豪雨災害
約1 9億円 ( 51 .4 % )
梅雨前線豪雨災害
約 4 億円 ( 1 0.8 % )
台風4号災害
約 1 2億円
( 3 2.4 % )
資料:中国四国 農政局調べ
表Ⅰ−2−1 各県の農地・農業施設等被害状況
県
名
平均(H9∼H18)
か所数
被害額
鳥 取
島 根
岡 山
広 島
山 口
徳 島
香 川
愛 媛
高 知
中四局計
663
1,587
2,380
2,097
1,415
410
1,573
967
1,697
12,789
1,841
2,719
3,498
3,917
2,195
1,267
2,787
2,471
3,658
24,353
単位:か所数, 百万円
H19年災
か所数
345
922
176
34
160
48
26
124
556
2,391
被害額
748
995
209
28
121
196
70
284
1,013
3,664
資料: 中国四国農 政局調べ
なお、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」第5条に
よる農地等の激甚災害指定は以下のとおりである。
「激甚災害」とは
国民経済に著しく影響を及ぼし、かつ、当該災害による地方財政の負担を
緩和し、または被災者に対する特別の助成を行うことが特に必要と認められ
る災害である。
- 32 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
農地等の激甚災害指定状況
・「平成十九年六月十一日から七月十七日までの間の豪雨及び暴風雨による
災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政
令(豪雨とは、梅雨前線によるものをいう。暴風雨とは、平成十九年台風第
四号によるものをいう。)」(平成十九年八月十日政令第二百六十号)
・「平成十九年八月二日から同月四日までの間の暴風雨による災害について
の激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令(暴雨風と
は、平成十九年台風第五号によるものをいう。)」(平成十九年九月二十日
政令第二百九十五号)
激甚災害で被災した農業用施設
流出した 頭首工(鳥取 県)
崩壊した農 地畦畔(山 口県)
- 33 -
第Ⅰ 部
2
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
農業経済の動向
(1)農業生産の動向
18年の農業産出額は、8,453億円で、前年に比べて1.6%減少した。
【果実及び豚の産出額は前年に比べ増加、米及び鶏は減少】
部門別 にみると、耕 種部門では 、米
は生産量の減少により産出額は1,884億
図Ⅰ−2−2 農業産出額の推移
(千億円)
11
円で、前年に比べて7.0%減少した。野
菜は、 果菜類 の産出額 は前年 に比べて
農業産出額
10
3.9%増加したものの、価格が低下した
葉茎菜類 は4.5% 、根菜類は2.2%それ
9 .0
9.0
8.9
9
8 .6
8.6
8 .5
ぞれ減少し、産出額は2,141億円で、前
年に比べて0.6%減少した。果実はみか
んなど 柑橘類 の価格が 上昇し たため産
出額は1,198億 円で、前年に比べて9.8
8
∼
∼
∼
∼
0
7
1 3年
14年
15年
16年
17年
18年
資料:農林水産省「生産農業所得統計」
%増加した。
畜産部門では、豚の産出額は350億円
資料 :農林水産 省「生産農業 所得統計」
で、前年に比べて2.3%増加した。鶏は主に鶏卵価格の低下により産出額は1,086
億円で、前年に比べて4.6%減少した。また、乳用牛は生乳の生産量の減少によ
り産出額は511億円で、前年に比べて3.0%減少した。肉用牛の産出額は426億円
で前年に比べて1.4%減少した(図Ⅰ−2−2)。
- 34 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
(2)農家経済の動向
水田作経営(2ha以上の規模の平均)の農業所得は104万円で、露地野菜
作経営とほぼ同じ水準となっている。
【畜産部門の農業所得は耕種部門と比べて高い】
ア
農家経済の動向
図Ⅰ−2−3 農業経営収支
(販売農家1戸当たり)
(万円)
18年の中国・四国地域における販売農家
450
1戸当たりの経営収支状況をみると、農業
400
粗収益は246万円、農業経営費は177万円で
350
農 業所 得 は6 9万 円と な った (図 Ⅰ −2 −
農業
所得
300
農
250
3)。
69
200
農業経営統計調査は、16年に調査
体系及び内容の見直しを行い、世帯
を単位として把握していた農家の収
支等を、農業経営に着目して把握す
ることとした。
イ
150
246
100
123
業
粗
農
収
業
益
経
405
177
営
費
282
50
0
中国・四国
全国(参考)
資料 : 農林 水 産省 「農 業経 営統 計 調査 」
営農類型別経営統計
農業所得を営農類型別にみると、肉用牛、養豚等の畜産部門が耕種部門に比べ
て高くなっている。土地利用型の水田作(2ha以上の規模の平均)の農業所得は
104万円で、労働集約型の露地野菜作とほぼ同じ水準となっている。
また、畜産部門の農業所得をみると酪農は358万円、肉用牛は359万円、養豚は
503万円となっており、農家総所得に占める農業所得の割合(農業依存度)も約
6割∼8割と高くなっている(図Ⅰ−2−4、表Ⅰ−2−2)。
営農類型別経営統計調査は、農家における農畜産物の販売収入を、最
も収入が大きい区分により分類した経営のタイプ別に取りまとめたもの。
- 35 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
図Ⅰ−2−4 中国・四国地域の営農類型別総所得(1戸当たり)
農
業
以
外
の
所
得
(万円)
700
600
119
500
400
153
200
410
300
233
316
農
業
所
得
408
200
298
100
104
111
137
358
果 樹 作
酪 農
503
農
家
総
所
得
359
0
水田作
露地野菜作
施設野菜作
肉 用 牛
養
豚
資料:農林水 産省「農業 経営統計調査 (営農類型 別経営統計 (個別経営))」
表Ⅰ−2−2 中国・四国地域の営農類型別の経営概要(18年)
農 業
区 分
所 得
水 田 作
露地野菜作
施設野菜作
果 樹 作
酪 農
肉 用 牛
養 豚
(千円)
1,044
1,105
2,983
1,365
3,581
3,589
5,033
農業生産
農 業 所 得
年金等 農 家
関連事業
家族農業 農業固定
所得 +
の収入 総所得 労働1時間 資産千円
農外所得
当 た り 当 た り
(千円) (千円) (千円)
(円)
(円)
3,160
916
5,120
639
163
1,807
2,294
5,206
506
340
689
1,308
4,980
720
528
1,545
1,615
4,525
664
197
823
710
5,114
772
157
641
1,688
5,918
1,617
608
991
200
6,224
1,147
449
農 業
固 定
資産額
自営農業
(千円)
6,398
3,250
5,653
6,936
22,797
5,900
11,221
(時間)
1,714
2,283
4,752
2,198
4,843
2,400
4,855
作 付・
労働時間 飼養規模
367
46
2,967
79
25
40
577
a
a
㎡
a
頭
頭
頭
資料:農林水 産省「農業 経営統計調査 (営農類型 別経営統計 (個別経営))」
注:1) 水 田作は2ha以上の規模の 平均である 。
2) 各営農 類型の作 付・飼養 規模は、水 田作につ いては水田 に作付けし た水稲、麦 類、豆類 等の延
べ 面積、露 地野菜作 及び施設 野菜作は 作付面積 、果樹作は 植栽面積、 酪農は搾乳 牛頭数、 肉用牛
は肥 育牛と繁殖 めす牛の飼養 頭数、養豚 は肥育豚飼 養頭数。
ウ
営農類型別の収益性
家族農業労働1時間当たり農業所得についてみると、耕種部門ではいずれの営
農類型も大差がなく、農業機械の導入が困難な露地野菜作は506円、果樹作は664
円で、農機具資産比率が高く労働時間の少ない水田作は639円となっている。畜
産部門では酪農が772円、養豚が1,147円なのに対し、肉用牛は労働時間が2,400
時間と他に比べて約半分であり、1時間当たり農業所得も1,617円と高くなって
いる。
また、農業固定資産千円当たり農業所得についてみると、水田作、果樹作及び
酪農では、農機具や動物及び植物の固定資産額が大きくなることから、野菜作や
肉用牛、養豚などに比べて低くなっている(図Ⅰ−2−5、表Ⅰ−2−3)。
- 36 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
図Ⅰ−2−5 営農類型別の農業所得による収益性の比較
(円)
2,000
1,617
1,500
1,147
1,000
720
639
528
506
500
772
664
608
449
340
197
163
157
0
水田作
露地野菜作
施設野菜 作
果樹 作
家族農業労働1時間当たり農業所得
酪農
農業固定資産千円当たり農業所得
資料:農林水 産省「農業 経営統計調査 (営農類型 別経営統計 (個別経営))」
- 37 -
肉用牛
養豚
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
表Ⅰ−2−3 農業産出額及び生産農業所得
単位:億円、%
農 業 産 出 額
区 分
全
平成 18 年
17年
対前 年 増
減
率
割
合
平成 18 年
17年
対前 年 増
減
率
割
合
平成 18 年
17年
対前 年 増
減
率
割
合
平成 18 年
17年
対前 年 増
減
率
割
合
平成 18 年
17年
対前 年 増
減
率
割
合
国
計
中
国
四
国
山
陰
山
陽
四
国
計
耕 種
86,321
88,067
59,192
60,377
雑 穀 いも類
野 菜
豆 類
18,894
963
2,165 20,400
1,016
20,234
2,123 20,218
▲ 2.0
▲ 2.0
▲ 6.6
▲ 5.2
2.0
0.9
6.6
▲ 1.6
▲ 11.8
100.0
8,453
8,591
68.6
6,053
6,122
21.9
1,884
2,026
1.1
50
53
2.5
158
149
23.6
2,141
2,154
8.9
1,198
1,091
4.6
328
343
3.1
84
101
▲ 1.6
▲ 1.1
▲ 7.0
▲ 5.7
6.0
▲ 0.6
9.8
▲ 4.4
▲ 16.8
100.0
1,310
1,355
71.6
886
926
22.3
399
432
0.6
14
14
1.9
13
12
25.3
263
262
14.2
117
120
3.9
45
48
1.0
18
21
▲ 3.3
▲ 4.3
▲ 7.6
0.0
8.3
0.4
▲ 2.5
▲ 6.3
▲ 14.3
100.0
3,008
3,075
67.6
1,968
1,997
30.5
910
966
1.1
29
31
1.0
21
23
20.1
482
492
8.9
355
313
3.4
93
95
1.4
16
18
▲ 2.2
▲ 1.5
▲ 5.8
▲ 6.5
▲ 8.7
▲ 2.0
13.4
▲ 2.1
▲ 11.1
100.0
4,136
4,160
65.4
3,200
3,199
30.3
576
629
1.0
7
8
0.7
123
114
16.0
1,396
1,400
11.8
726
658
3.1
189
200
0.5
50
62
▲ 0.6
0.0
▲ 8.4
▲ 12.5
7.9
▲ 0.3
10.3
▲ 5.5
▲ 19.4
100.0
77.4
13.9
0.2
3.0
33.8
17.6
4.6
1.2
加 工
農産物
生 産
農 業
所 得
米
果 実
7,710
7,236
工 芸
農作物
3,988
2,673
3,030
4,054
花き
農 業 産 出 額 ( つ づ き )
区 分
畜 産
肉用牛
乳用牛
生 乳
7,455
6,421
7,747
6,664
豚
平 成18年 26,512
5,546
5,416
17年 27,023
5,428
5,494
対 前年 増
国
▲ 1.9
2.2
▲ 3.8
▲ 3.6
▲ 1.4
減
率
計
割
合
30.7
6.4
8.6
7.4
6.3
平 成18年
2,393
426
511
461
350
中
17年
2,461
432
527
477
342
国
対 前年 増
▲ 2.8
▲ 1.4
▲ 3.0
▲ 3.4
2.3
四
減
率
国
割
合
28.3
5.0
6.0
5.5
4.1
平 成18年
423
103
129
115
77
山
17年
428
101
134
119
77
対 前年 増
▲ 1.2
2.0
▲ 3.7
▲ 3.4
0.0
減
率
陰
割
合
32.3
7.9
9.8
8.8
5.9
平 成18年
1,037
177
215
194
79
山
17年
1,075
183
219
199
74
対 前年 増
▲ 3.5
▲ 3.3
▲ 1.8
▲ 2.5
6.8
減
率
陽
割
合
34.5
5.9
7.1
6.4
2.6
平 成18年
933
146
166
152
195
四
17年
958
148
174
159
192
対 前年 増
▲ 2.6
▲ 1.4
▲ 4.6
▲ 4.4
1.6
減
率
国
割
合
22.6
3.5
4.0
3.7
4.7
資料:農林水 産省「生産 農業所得統計 」
注:地域値 及び全国計 ともに市町村 推計値の合 計である。
全
- 38 -
鶏
7,476
7,752
鶏 卵
3,977
4,309
▲ 3.6
618
666
31,378
32,632
▲ 7.7
▲ 7.2
▲ 3.8
8.7
1,086
1,138
4.6
660
710
0.7
7
7
2,726
2,814
▲ 4.6
▲ 7.0
0.0
▲ 3.1
12.8
110
112
7.8
49
49
0.1
1
1
415
413
▲ 1.8
0.0
0.0
0.5
8.4
556
587
3.7
424
456
0.1
3
3
926
982
▲ 5.3
▲ 7.0
0.0
▲ 5.7
18.5
420
439
14.1
186
206
0.1
3
3
1,385
1,419
▲ 4.3
▲ 9.7
0.0
▲ 2.4
10.2
4.5
0.1
-
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
(3)農業制度金融の動向
ア
農業近代化資金の利子補給承認状況
農業制度金融は、農業者の自主性を活かした経営規模の拡大等の生産性の
向上のほか、経営感覚に優れた経営体や担い手の育成・確保等を図るために
重要な役割を果たしている。
近年、農業経営を巡る環境の厳しさから、農業者の投資意欲が落ち込んで
いるなか、農業近代化資金、農林漁業金融公庫資金及び農業改良資金の融資
手続きの一元化、農業信用保証保険制度の活用による債権保全措置の弾力化
等、農業者にとって利用しやすい制度の確立を図り、利用促進に努めてい
る。
【建構築物取得資金等の大幅減少】
農業近代化資金(※1)は、「共同利用施設」、「農機具等」、「建構築物」
及び「その他(長期運転資金、果樹等植栽育成資金、家畜購入育成資金等)」に
大別される。
18年度承認実績は23億9千万円で、前年度に比べ農機具等取得資金で1千万円
と若干増加したが、共同利用施設資金及び建構築物取得資金でそれぞれ1億円
(17%)、4億3千万円(33%)減少したことなどから、全体では前年に比べ
10億4千万円(30%)減少した(図Ⅰ−2−6)。
図Ⅰ−2−6 農業近代化資金利子補給承認状況
15.0
(115 %)
1 1. 8
(1 62% )
1 6年度
7.8
(72%)
3 8 .7
(9 8 %)
4.1
(4 8%)
その 他
12.9
(86%)
9. 2
(78 %)
1 7年度
4. 0
( 43% )
1 8年度
0.0
8 .6
(67%)
10 .0
6. 4
(102 %)
6.3
(81 %)
3 4 .3
(8 9 %)
5 .9
(144 %)
農機具等
2 3 .9
(7 0 %)
4.9
(83%)
20 .0
3 0. 0
建構築物
40 .0
共同利用
施設
(億 円)
資料:中国四国農 政局調べ
注:( )内は、前年 度比である。
なお、17年度から三位一体改革に伴う都道府県への税源移譲から、国による都
道府県への利子補給補助金の交付制度は廃止されたが、効率的かつ安定的な農業
経営及びこれを目指して経営改善に取り組む農業経営に施策を集中する観点から、
地域農業の担い手たる認定農業者が借入れを行う場合には、利子助成措置による
金利負担の軽減等の支援を引き続き行っているところである。
- 39 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
【※1】農業近代化資金
農協等の民間金融機関からの融資に、国及び都道府県が利子補給することに
より、農機具・農業用施設・長期運転資金の中長期資金を低利で融資する、農
業者にとって最も一般的な制度資金。
イ
農林漁業金融公庫資金の貸付状況
【農業関係資金、加工流通資金ともに大幅減少】
農林漁業金融公庫資金(※2)は、農業関係資金と加工流通資金に分けられる。
そのうち、18年度の農業関係資金の貸付実績は130億円で、前年に比べ農業経
営基盤強化資金で10億3千万円(16%)減少し、農業基盤整備資金においても
6億3 千万円( 17%)減少 したこと から、全 体では前 年に比べ19億 1千万円
(13%)減少した(図Ⅰ−2−7)。
図Ⅰ−2−7 農林漁業金融公庫資金貸付状況(農業関係資金)〔中国・四国〕
農業経営基盤
強化
1 48. 8
(9 7% )
4 7.9
(94 %)
37 .7
(82 %)
63. 2
(11 1% )
17年度
1 53 .8
(6 9% )
5 0. 8
(4 3% )
46 .1
(80 %)
5 6.9
(1 20 %)
16年度
農業基盤整備
その他
18年度
1 29 .7
(8 7% )
45 .4
(95 %)
3 1. 4
(8 3% )
5 2. 9
(8 4% )
( 億円 )
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
資料:農業漁業金 融公庫「業務統 計年報」
注:( )内は、前年 度比である。
また、加工流通関係資金の貸付実績は47億7千万円で、前年に比べ中山間地域
活性化資金で6億1千万円(84%)増加したものの、特定農産加工資金、食品
流通改 善資金 及び食 品産業品 質管理 高度化促 進資金 でそれ ぞれ8億 7千万円
(34%)、14億5千万円(70%)、4億4千万円(75%)と大幅に減少したこと
から、全体では前年に比べ23億6千万円(33%)と大幅に減少した(図Ⅰ−2−
8)。
- 40 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
図Ⅰ−2−8 農林漁業金融公庫貸付状況(加工流通関係資金)〔中国・四国〕
中山間地域活性化
特定農産加工
食品流通改善
食品産業品質管理高度化促進
その他
(億円)
10 0. 0
9 3.8 (10 6% )
0 .6 (1 4% )
4. 9(17 %)
8 0. 0
1 7.6 (57 %)
6 0. 0
2 1. 8(26 9% )
71 .3(7 6% )
1 1.5 (23 5% )
5. 9(98 3% )
4 7. 7(67 %)
2 0.8 (11 8% )
4 0. 0
2 0. 0
9. 4(82 %)
1.5 (25 %)
4 8. 9(30 4% )
2 5.8 (11 8% )
7.3 (15 %)
0. 0
16年度
17年度
6. 3(30 %)
1 7.1 (66 %)
1 3. 4(18 4% )
18年度
資料:農林漁業金 融公庫「業務統 計年報」
注:( )内は、前年度 比である。
【※2】農林漁業金融公庫資金
「農林漁業金融公庫法」に基づいて設立された農林漁業金融公庫が行う制度資
金。農林水産業の振興、農山漁村の活性化などのために、農林水産業や食品産
業への融資を行っている。なお、「株式会社日本政策金融公庫法」が19年5月
に成立したことにより、20年10月1日に国民生活金融公庫等と統合し、「株式
会社日本政策金融公庫」が設立され、農林漁業金融公庫の一切の権利義務は新
しい公庫に継承される。
ウ
農業改良資金の貸付状況
【貸付金は前年に比べ減少】
18年度における農業改良資金(※3)の貸付状況は、全国の貸付金総額22億2
千万円(前年比84%)に対して、中国・四国地域の貸付金総額は2億円(同93
%)となっている。
県別にみると、貸付額の多い県は、1位香川県、2位愛媛県、3位高知県、4
位島根県となっており、上位4県で管内の84%を占めている(図Ⅰ−2−9)。
- 41 -
第Ⅰ 部
図Ⅰ−2−9
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
農業改良資金貸付額の推移(中国・四国、全国)
単位 : 百万 円
1 0,0 00
500
全国
中国四国
3 54
26 1
5,0 00
0
204
220
204
3,874
3,131
3,264
2,646
2,2 19
14年度
1 5年度
16 年度
17 年度
18年度
250
0
資料 : 全国 農 業改 良 普及 支 援 協会
【※3】農業改良資金
農業の担い手が農業経営改善を目的として、新作物分野への進出、加工分
野への進出、新技術を導入する場合などに支援するための無利子資金であ
る。
(http://www.maff.go.jp/soshiki/nousan/fukyuuka/newsite/annai.htm)
エ
就農支援資金の貸付状況
【就農施設等資金の貸付は貸付金総額の8割】
18年度における就農支援資金(※4)の貸付状況は、全国の貸付金総額32億2
千万円(前年比93%)に対して、中国・四国地域の貸付金総額は2億2千万円
(同87%)となっている(図Ⅰ−2−10)。
就農支援資金のうち、農業の技術又は経営方法を実地に習得するための研修に
必要な資金である就農研修資金の貸付金額は3,458万円(43件)であり、就農支
援資金の16%となっている。
なお、そのうち、県立農業大学校等の研修教育施設における研修資金の貸付金
額は1,850万円(33件)、先進農家等における研修資金の貸付金額は1,488万円
(9件)となっている。
一方、資格の取得、就農先の調査、住居移転等、就農にあたっての準備に必要
な資金である就農準備資金の貸付金額は360万円(2件)で、就農支援資金の2
%となっている。
また、農業経営を開始する際の施設の設置、機械の購入等に必要な資金を借り
ることのできる就農施設等資金の貸付金額は1億7,677万円(31件)で、就農支
- 42 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
援資金の貸付金総額の82%となっている(図Ⅰ−2−11)。
図Ⅰ−2−10
就農支援資金貸付額の推移(中国・四国、全国)
全国
単 位 :百 万円
中国四国
10,000
500
427
325
283
246
5,000
215
3,041
3,794
3,633
3,474
3,215
14年度
15年度
16年度
17年度
18年度
250
0
0
資料: 農林水産省 普及・女性課
図Ⅰ−2−11
就農支援資金貸付額の資金種類別推移(中国・四国)
単位:千円
就農施設等資金
就農準備資金
就農研修資金
349 ,30 9
198 ,8 98
7 5,0 00
191 ,1 27
176 ,7 73
1 3,500
2 6,270
9 9,690
14 年度
1 94,243
15 年度
4,050
7 3,5 60
16年度
4,000
5 0,7 50
17年度
3,600
34 ,5 80
18年度
資料:各県及 び農林水産 省普及・女性 課
【※4】就農支援資金
就農希望者の円滑な就農を資金面から支援するため、農業技術の実地研
修、その他の就農の準備や経営を開始する際の施設の設置、機械の購入等に
必要な経費について、貸付ける無利子資金であり、農協・銀行等の金融機
関、県青年農業者等育成センタ−が貸付し、県農業信用基金協会が債務保証
(機械・施設の購入等に必要な資金のみ)を行っている。
(http://www.maff.go.jp/newfarmer/nf/pamphlet/shien_pamp.pdf)
- 43 -
第Ⅰ 部
3
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
農業構造の動向
(1)農家・農業労働力の動向
17年時点の総農家は45万9,318戸で12年時点と比べて4万5,622戸(9.0
%)減少している。販売農家の主副業別割合をみると主業農家14.6%、準主
業農家20.6%、副業的農家64.8%となっている。
17年2月1日時点における中国・ 四国
地域の総農家は45万9,318戸で、前回
図Ⅰ−2−12 総農家数の推移
(千戸)
55 0
に比べて4万5,622戸(9.0%)減少し
50 0
ている。
45 0
このうち、中山間農業地域の農家は
28 万3 ,1 14戸 で 総農 家の 61 .6 %を 占
40 0
35 0
25 0
(9.3%)減少している。
20 0
万2,396戸、四国では9万718戸でそれ
15 0
%、8.0%減少している(図Ⅰ−2−1
2)。
農業地域類型
都 市的 地 域
平地農業地域
中間農業地域
山間農業地域
10 0
平地
農業地域
83
76
2 85
59
中山間
農業 地 域
31 2
(6 1. 8)
34
17 4
41
28 3
(6 1. 6)
1 92
10 0
42
( 67. 5)
91
(52 .1 )
50
ぞれ の総農 家の 67.5%、 52.1%を 占
め 、 12 年時 点 と 比 べて そ れ ぞ れ9 . 9
45 9
都 市 的 地域
11 0
30 0
め 、1 2年 時 点 と 比べ て 2 万8 ,9 82 戸
これを地域別にみると、中国では19
50 5
0
12年
17年
中 国・四国
17年
中国
17年
四国
資料:農 林水産 省「2005年農 林業セ ンサス 及び2000
年世界農林業センサ ス結果」
注:1)( )は中山間 農業地域の割合(%)。
2) 農 業地域 類型は、 平成13年11月時点の 地
域区分である 。
基
準
指
標
○ 可住地に占めるDID面積が5%以上で、人口密度500人以上又はDID人口2
万人以上の旧市区町村又は市町村。
○ 可住地に占める宅地等率が60%以上で、人口密度500人以上の旧市区町村
又は市町村。ただし、林野率80%以上のものは除きます。
○ 耕地率20%以上かつ林野率50%未満の旧市区町村又は市町村。ただし、傾
斜20分の1以上の田と傾斜8度以上の畑の合計面積の割合が90%以上のもの
を除きます。
○ 耕地率20%以上かつ林野率50%以上で、傾斜20分の1以上の田と傾斜8度
以上の畑の合計面積の割合が10%未満の旧市区町村又は市町村。
○ 耕地率が20%未満で、「都市的地域」及び「山間農業地域」以外の旧市区
町村又は市町村。
○ 耕地率が20%以上で、「都市的地域」及び「平地農業地域」以外の旧市区
町村又は市町村。
○ 林野率80%以上かつ耕地率10%未満の旧市区町村又は市町村。
- 44 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
【主業・準主業農家は減少】
販売農家について主副業別をみると、主業農家は4万2,850戸で12年時点と比
べて9,753戸(18.5%)、準主業農家は6万528戸で2万1,793戸(26.5%)、副業的
農家は19万713戸で2万8,832戸(13.1%)それぞれ減少している。
販売農家に占める割合でみると、主業農家が14.6%、準主業農家が20.6%、副
業的農家が64.8%となっている。
このうち中山間農業地域で、主業農家の占める割合は中国で9.2%と中国四国
全体より低く、四国では22.9%と高くなっている(図Ⅰ−2−13)。
販 売 農 家 :経 営耕地 面積 30アー ル以 上又は 農産物 販売 金額50万円 以上の 農家
主 業 農 家 :農 業所得 が主 で、65歳未 満の自 営農業 従事 60日以 上の 者がい る農 家
準 主業 農家: 農外 所得が 主で 、65歳 未満 の自営 農業従 事60日以上 の者 がいる 農家
副 業的 農家: 65歳 未満の 自営 農業従 事60日以上 の者が いな い農家
図Ⅰ−2−13 主副業別農家数割合(販売農家)
(%)
0
中
国
・
四
国
農中
業
山
地
域間
20
12年
主業農家
14.8
17年
14.6
中国
17年
四国
17年
9.2
40
準主業農家
23.2
60
100
副業的農家 61.9
20.6
64.8
21.6
22 .9
80
69.2
18.4
58.7
資料:農林水 産省「2005年農林業セン サス結果及 び2000年世 界農林業セン サス結果」
【稲作単一経営で100万円未満の農家が最も多い】
販売農家(販売のあった農家)について農業の経営形態別ごとに農産物販売金
額別農家数をみると、稲作単一経営農家が56.6%を占めており、そのうちの91.1
%が、販売金額100万円未満となっている。
一方、畜産単一経営農家の占める割合は1.7%と低いものの販売金額1,000万円
以上の農家が53.1%を占めている。また、野菜単一経営農家では、1,000万円以
上の販売農家が14.6%を占めている。
- 45 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
準単一複合経営、複合経営では、販売金額1,000万円以上の農家はそれぞれ4.2
%、3.9%となっている(図Ⅰ−2−14)。
単 一 経 営 農 家:農産物販売金額のうち主位部門の割合が80%以上を占める 農家
準 単一複合経営 農家:農産物販売金額のうち主位部門の割合が60%以上80%未満の農家
複 合 経 営 農 家:農産物販売金額のうち主位部門の割合が60%未満の農家
図Ⅰ−2−14
農業の経営形態別にみた農産物販売金額別農家数の構成
(17年・中国・四国、販売のあった農家)
0
20
40
60
(農産物販売金額別農家数割合)
複
合
経
営
準
複
単
合
一
経
営
菜
(% )
100
60
40
20
1 0 0 万 円 未 満
100∼ 5 00
5 0 0 ∼
1,00 0万 円 以 上
1 , 0 0 0
資料:農林水 産省「2005年農林業セン サス結果」
- 46 -
0
︵ 農 業 の 経営 形 態 別 農 家 数 割 合 ︶
野
稲 作
単 一経 営
樹
(% )
100
80
畜 産
その他
果
80
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
【農家人口は12年時点と比べて21.4%減少。農業従事者の減少と高齢化も引き続
き進行】
販売農家の農家人口は114万5,383人、農業従事者は79万5,252人で、12年時点
と比べて31万1,098人(21.4%)、20万7,771人(20.7%)それぞれ減少している。
このうち、基幹的農業従事者は30万4,574人で、2万5,282人(7.7%)減少し
ている。
これを65歳以上の占める割合でみると、農業従事者で41.7%、基幹的農業従事
者で67.0%となっており、12年時点と比べて4.4ポイント、5.3ポイントそれぞれ
上昇している(図Ⅰ−2−15)。
また、農業従事者と基幹的農業従事者について年齢階層別農家人口に占める割
合をみると、15∼39歳では農業従事者は45.9%と約半数を占めているものの、基
幹的農業従事者はわずか3.4%となっている。
一方、40∼64歳、65歳以上では、農業従事者の占める割合はそれぞれ90.1%、
82.2%と高く、基幹的農業従事者も40∼64歳が23.6%、65歳以上が50.6%と占め
る割合が高くなっている(図Ⅰ−2−16)。
農
農
家
業
人
従
事
口 :農家 世帯員
者 : 15歳 以 上 の 農 家 の 世 帯 員 の う ち 過 去 1 年 間 に 自 営 農 業 に 従 事 し た 者
基 幹 的 農 業 従 事 者 :農 業就 業 人口 (農 業従 事者 のう ち 主と して 自営 農業 に従 事し た
者 ) の う ち ふ だ ん の 主 な 状 態 が 「 仕 事 が 主 (農 業 )」 の 者
図Ⅰ−2−16
販売農家の農家人
口に占める農業従事者と基幹的農業
従事者の割合(17年・中国・四国)
図Ⅰ−2−15 販売農家の農家人
口及び農業労働力(中国・四国)
(%)
100
(千 人)
1, 600
1 ,456
1, 400
1, 200
90
1 4歳以 下
171
15∼3 9
332
80
1,1 45
10 6
1,00 3
24 7
166
70
60
1, 000
800
40∼6 4
496
600
38 9
795
50
113
40
463
30
350
20
400
200
65 歳
以上
458
10
40 4
3 74
11 6
92
20 4
20 4
1 2年
1 7年
8
332
0
1 2年
1 7年
12 年
17年
10
農業
従事者
90.1
82.2
45.9 基幹 的
農業
従事 者
3.4
50.6
23.6
0
15 ∼ 39歳
(247)
40 ∼ 64
( 389)
注:
( )は農家人 口(千 人)
資料: 農林 水産 省「2005年農林 業セ ンサ ス結果 及び 2000年世 界農 林業セ ンサ ス結果 」
- 47 -
65歳 以上
(404)
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
(2)農地の利用及び流動化の動向
ア
農業振興地域の現状
【201市町村が農業振興地域に指定】
20年3月末現在の農業振興地域は中国・四国管内の208市町村のうち、201市町
村で指定され、その全ての市町村で農業振興地域整備計画が策定されている(表
Ⅰ−2−4)。また、農業振興地域内の農用地面積は49万7,827ha、そのうち農
用地区域内の農用地面積は39万7,291haで、設定率は79.8%となっている(表Ⅰ
−2−5)。
表Ⅰ−2−4
県
鳥
島
岡
広
山
徳
香
愛
高
合
名
取
根
山
島
口
島
川
媛
知
計
農業振興地域の指定及び市町村整備計画の策定状況(中国・四国)
農 業 振 興 地 域 指 定 市 町 村数
農業振興地域の指定を
整 備計 画
整備 計画
受 け て い な い 市 町 村
策 定済 み
未 策 定
19
21
26
20
21
24
15
20
35
201
-
市 町 村数
19
21
27
23
22
24
17
20
35
208
19
21
26
20
21
24
15
20
35
201
-
早島町
府 中 町、海 田 町、坂 町
和木町
直 島 町、宇 多 津 町
0
7
資料:中 国四国農政局 調べ(20年 3月現在)
表Ⅰ−2−5 農業振興地域の現況(中国・四国)
県 名
鳥
島
岡
広
山
徳
香
愛
高
単位 :ha
農 業 振 興
農業 振興地
域内 農用地
内 農 用 地
地 域 面 積
面 積 ( A )
面積
総 面 積
農用地区域
(B)
(B)/(A)
×100 (%)
取
根
山
島
口
島
川
媛
知
350,726
670,757
711,300
847,852
611,222
414,569
187,647
567,738
710,501
175,409
496,266
531,210
603,089
374,374
246,374
143,518
341,357
432,641
42,651
49,709
87,156
76,468
57,577
36,987
39,500
67,342
40,437
35,906
44,760
66,198
58,633
46,619
30,047
32,268
51,810
31,050
84.2
90.0
76.0
76.7
81.0
81.2
81.7
76.9
76.8
合 計
5,072,312
3,344,238
497,827
397,291
79.8
資料:総 面積は 国土交 通省国 土地理 院「全 国都道府 県市区 町村別 面積調」( 18年10月現在 )農業振 興地域
面積は、 中国四国農 政局調べ(18年12月現在 )
注: 農用地とは 、農地(田、 畑、樹園地 )及び採草放 牧地。
- 48 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
イ 農地転用の動向
【農地転用面積は減少傾向】
中国・四国地域における農地転用面積は、2年の4,286haをピークに、3年以
降年々減少していたが、18年に増加に転じた(表Ⅰ−2−6)。
18年の農地転用面積は1,896haで、前年比104.6%、2年比44.3%となっている。
農地転用面積を県別にみると、岡山県(334ha)、広島県(281ha)、香川県
(225ha)の順に多くなっている。
また、用途別では住宅用地及びその他建物施設・業務用地(農林漁業用施設、
駐車場、資材置き場等)が共に一番多く、双方の転用面積で全体の59.6%を占め
ている。
表Ⅰ−2−6 中国・四国地域の農地転用面積の推移
暦
年
総面積
単 位:ha
住
宅 工鉱業 学校・ 道水路 商業・
用
地 用地
その他 植林・
公園・ ・鉄道 サービ 建物施 その他
運動場 用地
ス等用 設・業
用地
地
務用地
平成2年
4,286
872
532
150
804
−
846
1,082
11年
2,545
716
34
74
500
200
601
420
12年
2,532
691
44
21
520
173
568
515
13年
2,201
630
31
39
422
133
560
387
14年
2,069
557
20
30
416
121
527
398
15年
1,999
538
22
25
343
130
538
403
16年
1,997
620
17
29
275
196
512
348
17年
1,812
579
18
11
231
179
489
305
18年
1,896
611
22
9
231
170
519
334
資料:農 林水産省「土 地管理情報 収集分析調査 」
注: 11年 度以降につ いては、用 途別の仕 分けの変更 があり工鉱 業用地、商 業・サー ビス等用地 は2年
度の数値と 一致しない 。
- 49 -
第Ⅰ 部
ウ
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
耕地面積、耕地の利用状況
中国・四国地域の19年の耕地面積(田畑計)は40万4,100haで、前年に比べ
て2,700ha(0.7%)減少した。
このうち、田は29万ha、畑は11万4,100haであった。
ま た、18年 の耕地利用率は84.8% で、前年に比べて0.7ポ イント低下し
た。このうち、山陰82.3%、山陽79.8%、四国92.1%であった。
【耕地面積、耕地利用率ともに前年に比べ減少】
19年7月15日現在の耕地面積(田畑計)は40万4,100haで、主に宅地等の非農業
用途への転用や耕作放棄等により、前年に比べて2,700ha(0.7%)減少した。
地域別にみると、山陰7万4,300ha(中国・四国地域に占める割合18.4%)、山
陽18万1,000ha(同44.8%)、四国14万8,800ha(同36.8%)で、前年に比べて山陰
400ha(0.5%)、山陽1,000ha(0.5%)、四国1,300ha(0.9%)とそれぞれ減少した
(図Ⅰ−2−17)。
図Ⅰ−2−17 地域別耕地面積の推移(中国・四国)
0
100
200
300
400
平成15年
76
184
154
16年
76
183
152
17年
75
183
151
18年
75
182
150
19年
74
181
149
山陽
四国
山陰
(千ha)
500
資料:農林水 産省統計部 『耕地及び作 付面積統計 』
注: 山 陰、山陽 及び四国の データにつ いては、そ れぞれの 地域に該当 する県別の データを 集計し算出
した。
田畑別にみると、田は29万ha(耕地面積の71.8%)で、前年に比べて1,900ha
(0.7%)減少した。
畑は11万4,100ha(耕地面積の28.2%)で、前年に比べて800ha(0.7%)減少した。
畑を種類別にみると、普通畑5万4,600ha、樹園地5万5,300ha、牧草地4,260ha
であった。
18年の農作物作付(栽培)延べ面積は34万5,000haで、前年に比べて4,800ha(1.4
%)減少した。
- 50 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
また、耕地利用率は84.8%で、前年に比べて0.7ポイント低下した。これは、
前年からの耕地面積の減少が2,400ha(0.6%)であったのに対し、作付(栽培)延べ
面積の減少がこれを上回ったためである。
耕地利用率を地域別にみると、山陰82.3%、山陽79.8%、四国92.1%となって
いる(表Ⅰ−2−7)。
表Ⅰ−2−7 地域別の耕地の利用状況(田畑計)
作 付 ( 栽 培 ) 延 べ 面 積
対前年
17年
18年
増減率
ha
ha
%
区 分
耕
地
17年
利
用
18年
%
率
対前年差
%
ポイント
全 国
4,384,000
4,346,000
▲ 0.9
93.4
93.0
▲ 0.4
都 府 県
3,220,000
3,181,000
▲ 1.2
91.4
90.7
▲ 0.7
中国・四国
349,800
345,000
▲ 1.4
85.5
84.8
▲ 0.7
山
陰
62,300
61,500
▲ 1.3
83.0
82.3
▲ 0.7
山
陽
147,000
145,200
▲ 1.2
80.3
79.8
▲ 0.5
四
国
140,500
138,300
▲ 1.6
93.0
92.1
▲ 0.9
資料:農林水 産省統計部 『耕地及び作 付面積統計 』
注: 山 陰、山陽 及び四国の データにつ いては、そ れぞれの 地域に該当 する県別の データを 集計し算出
した。
田畑別にみると、田の農作物作付(栽培)延べ面積は24万5,500haで、前年に比
べて2,500ha(1.0%)減少した。作物類別にみると、稲が18万100haで最も多く、
次いで野菜2万7,500ha、飼肥料作物1万3,800ha、麦類8,420haの順で、耕地利
用率は84.1%となった。
畑の農作物作付(栽培)延べ面積は9万9,600haで前年に比べて2,200ha(2.2%)
減少した。作物類別にみると、果樹が4万9,700haで最も多く、次いで野菜2万
3,500ha、飼肥料作物1万1,900haの順で、耕地利用率は86.7%となった(表Ⅰ−
2−8)。
- 51 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
表Ⅰ−2−8 地域別・作物別の耕地の利用状況(18年)
山
中 国・四 国
区 分
山
陽
四 国
作付(栽培)延べ面積
田畑計
ha
345,000
ha
245,500
稲 ( 子 実 用 )
180,100
180,100
0
34,700
86,200
59,200
麦 類 ( 子 実 用 )
8,580
8,420
162
651
3,500
4,430
か
ょ
3,670
660
3,010
366
818
2,480
雑穀 ( 乾 燥子 実 用)
1,580
1,210
368
663
677
239
豆類 ( 乾 燥子 実 用)
9,920
7,670
2,250
2,840
5,510
1,570
ん
し
田
陰
畑
田 畑 計 田 畑 計 田 畑 計
ha
ha
ha
ha
99,600
61,500
145,200
138,300
野
菜
51,000
27,500
23,500
7,960
18,200
24,800
果
樹
49,700
-
49,700
3,790
13,800
32,100
工
芸
農
作
物
4,430
812
3,620
727
1,020
2,690
飼
肥
料
作
物
25,700
13,800
11,900
7,400
11,700
6,630
そ
の
他
作
物
10,400
5,380
5,040
2,470
3,850
4,100
積
406,800
291,900
114,900
74,700
182,000
150,100
率
84.8%
84.1%
86.7%
82.3%
79.8%
92.1%
耕
耕
地
地
面
利
用
資料:農林水 産省統計部 『耕地及び作 付面積統計 』
注:1) 麦類は6麦 (小 麦、二条大 麦、六条大 麦、裸麦、 えん麦及 びらい麦)の子実 用のみで あり、青刈
り用は飼肥 料作物、そ の他用(農作物の保 護用、生花 用等)はその他作物 に含む。
2) 山陰、山 陽及び四国 のデータに ついては、 それぞれ の地域に該 当する県別 のデータ を集計し算
出した。
- 52 -
第Ⅰ 部
エ
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
耕作放棄地の現状
17年時点の耕作放棄地面積は中国地域3万8,800ha、四国地域2万2,601ha
で、12年時点と比べて4,971ha(14.7%)、1,525ha(7.2%)それぞれ増加
している。
17年2月1日時点の中国・四国地域における耕作放棄地面積は6万1,401haで、
自給的農家や土地持ち非農家の耕作放棄地が大幅に増加したことから、12年時点
と比べて6,496ha(11.8%)増加している(図Ⅰ−2−18)。
図Ⅰ−2−18 経営耕地面積及び耕作放棄地面積
(千h a)
400
〈中国〉
〈四国〉
350
300
250
235.7
211.9
186 .3
200
150
100
50
33.8
24 .3
38.8
耕
作
放
棄
地
面
積
経
営
耕
地
面
積
137.6
125.1
110. 8
21.1
16. 0
22.6
0
7年
12
17
7年
12
17
資料:農林水 産省「農林 業センサス結 果」
注:1)耕 作放棄地率 =耕作放棄地 面積÷(経 営耕地面積 +耕作放棄地 面積)×100
2)経営耕地 面積は、総農 家、耕作放棄 地面積は総 農家及び土地 持ち非農家 を合わせた数 値である。
耕作放棄地率は、中国地域17.2%、四国地域16.9%で、12年時点と比べてそれ
ぞれ3.4ポイント、2.5ポイント上昇している。
耕作放棄地全体に占める土地持ち非農家の割合は中国地域で45.1%、四国地域
で44.3%を占めており、12年時点と比べて3.3ポイント、2.9ポイントそれぞれ上
昇している(図Ⅰ−2−19)。
また、担い手である基幹的農業従事者の高齢化率と耕作放棄地率との関係をみ
ると、高齢化率 の上昇にともない耕作放棄地 率も高くなっている(図Ⅰ−2−
20)。
- 53 -
第Ⅰ 部
図Ⅰ−2−19
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
農家・土地持ち非農家別耕作放棄地面積及び耕作放棄地率の推移
〈中国〉
〈四 国〉
1 6. 9
14.4
13.8
9.
4
9.3
10.4
計38.8
土 地 持ち 非 農 家
自給的農家
販売農家
計33 .8
17.5
14.1
計16 .0
8.9
6.4
︶
13.3
12.4
6.7
2.9
6.5
12
17
7年
計21 .1
計22 .6
8.7
10.0
3.8
5.1
8.6
7.5
12
17
耕
作
放
棄
地
率
︶
︵
(千h a)
40
耕
作 30
計24.3
放
9.1
棄 20
地
4.9
面 10
10.3
積
0
7年
(%)
20.0
18.0
16.0
14.0
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
︵
耕 作 放 棄地 率
1 7. 2
資料 :農林 水産 省「農林 業センサ ス結果 」
図Ⅰ−2−20
基幹的農業従事者の高齢化率別にみた耕作放棄地率(販売農家)
中国
四国
(%)
︵
15
︶
耕
作 10
放
棄
地 5
率
9.7
9.9
9.5
6.4
7.1
6.8
7.4
8.2
4.9
5.0
50%未満
50∼55
5.7
4.9
11.0
6.0
8.1
6.6
0
55∼6 0
60∼65
6 5∼70
70∼75
(基幹的農業 従事者の高 齢化率)
75∼80
80%以上
資料:農林水 産省「2005年農林業セン サス結果」
注:高齢化 率とは、65歳以上の割合 。
土 地 持 ち 非 農 家: 農家以外で、耕地及び耕作放 棄地を5アール以上所
有している世帯。
基幹的農業従事者: 農業就業人口のうちふだんの主な状態が「仕事が主
(農業)」の者。
- 54 -
第Ⅰ 部
オ
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
農地の流動化
18年における農地の権利移動面積は、1万6,174haで、前年に比べ大幅に
増加。
利用権等の設定による農地の権利移動が権利移動面積全体の9割以上を占
める。
【18年の農地の権利移動面積は前年に比べ大幅に増加】
中国・四国地域における耕作目的の農地の権利移動面積(18年の1年間)は1
万6,174haとなっており、前年より3,179ha増加(対前年比125%)した。
18年における権利移動面積を耕地面積(「耕地及び作付面積統計」)に占める
割合でみると、中国・四国地域は4.0%(権利移動面積1万6,174ha、耕地面積40
万6,800ha)で、都府県平均の3.6%(権利移動面積12万4,935ha、耕地面積350万
6千ha)を0.4ポイント上回っている。同割合を地域別にみると、中国地域は4.3
%(権利移動面積1万1,005ha、耕地面積25万6,700ha)で、四国地域の3.4%(権利
移動面積5,169ha、耕地面積15万100ha)を0.9ポイント上回っている(図Ⅰ−2
−21)。
図Ⅰ−2−21 規模拡大につながる農地の権利移動面積の推移
中国・四国
都府県 ha
ha
18,000
14 0,00 0
16, 174
16,000
12 0,00 0
124,935
中国・四国
14,000
12,995
12,827
12, 300
11, 828
12,000
11,085
9,734
10,020
90,713
82,267
70, 871
72,627
7,882
11, 005
9, 767
80 ,000
60 ,000
50 ,000
中国
7,058
10 0,00 0
70 ,000
9, 168
8, 639
8, 037
11 0,00 0
90 ,000
93, 624
86,811
9,507
7, 515
6,787
82, 670
81, 972
75,521
8,000
都府県
11,484
10,481
10,000
6,000
13 0,00 0
40 ,000
4,000
2,000
5,169
2,947
2,962
2, 965
3, 447
3,203
3, 189
3,320
3, 133
3, 227
30 ,000
20 ,000
四国
10 ,000
0
0
9年
10年
11 年
12年
13年
14 年
1 5年
16年
17年
18 年
資料:農林水 産省「土地 管理情報収集 分析調査」
注: 数値 は、 自作地 有償所 有権 移転面 積、農 地法第 3条許 可・届 出に よる賃 借権設 定面積 及び農
業経営基 盤強化促進 法に基づく利 用権設定面 積の合計面積 である。
- 55 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
中国・四国地域における農地の権利移動面積の権利形態別割合を、16年から18
年の3か年の平均でみると、自作地有償所有権移転によるものが8.6%、利用権
等の設定(賃貸借)によるものが91.4%で、都府県(前者が13.3%、後者が86.7
%)に比べ、利用権等の設定によるものの割合が高くなっている(表Ⅰ−2−
9)。
表Ⅰ−2−9 農地の権利移動面積の権利形態別割合(16∼18年の3か年平均)
中国・四国
自作地有償所有権移転
1,141.8
利用権等の設定
12,681.1
実
数
農地法第3条による賃借権設定
82.6
農業経営基盤強化促進法による利用権設定 12,598.5
(ha)
13,822.9
計
自作地有償所有権移転
8.3
構
利用権等の設定
91.7
成
農地法第3条による賃借権設定
0.6
比
農業経営基盤強化促進法による利用権設定
91.1
(%)
計
100.0
都府県
中国
674.8
9,305.3
45.1
9,260.2
9,980.1
6.8
93.2
0.5
92.8
100.0
資料:農林 水産省「土地 管理情報収 集分析調査」
- 56 -
四国
467.0
3,375.8
37.5
3,338.3
3,842.8
12.2
87.8
1.0
86.9
100.0
13,177.9
89,912.9
2,376.1
87,536.8
103,090.7
12.8
87.2
2.3
84.9
100.0
第Ⅰ 部
4
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
農業 生産 基盤 の整 備等 の状況
(1 )農 地整 備の 状況
【四 国地 域の 区画 整備 率が 低い】
水田 の整 備 状況 は 、中 国 ・四 国 地域 の大 半 が中 山 間地 域で あ るた め、 大 型ま た
は 中型 機械 化 営農 が 可能 と され る 標準 区画 以 上に 整備 さ れた 割 合は 40% と 、全 国
平 均に 比べ 約 20ポ イ ント 低 くな っ てお り、 特 に四 国 地域 では 極 めて 低い 状 況に あ
る。
また 、大 区 画に 整 備さ れ た割 合 も全 国平 均 に比 べ 低く なっ て いる (図 Ⅰ −2 −
22) 。
図Ⅰ−2−22
水田の整備状況(区画形状)(18年)
単位 : %
70
61
60
52
47
50
整
備
40
率
40
︵ ︶
%
30
22
20
10
7
7
4
2
2
0
全国
中国・四国
山陰
標準区画以上
山陽
四国
うち大区画
資料:農林水 産省統計部 「耕地及び作 付面積統計」、農 林水産省農 村振興局「農 業基盤整備 基礎調査」
注:1) 整備率算定 に用いた水田 面積は「耕 地及び作付 面積統計」に よる18年7月15日時 点の値。
2) 整 備率算 定に用 いた各 整備済 面積は 「農業 基盤整備 基礎調 査」に よる18年3月31日 時点の
推 計値。
3 ) 標準区 画とは、30a程度に 区画整理さ れたもの。 大区画と は、1ha程 度以上に区 画整理さ
れ たものであ る。
4) 「山陰 」は鳥取県 及び島根県、「 山陽」は岡 山県、広島 県及び山 口県、「四国」 は徳島県、
香 川県、愛媛 県及び高知県 である。
畑( 樹園 地 、牧 草 地を 含 む) の 整備 状況 は 、区 画の 整 備率 が 18% で、 全 国平 均
に 比べ て大 幅 に低 く なっ て いる が 、末 端畑 地 かん がい 施 設の 整 備率 は2 9% と、 全
国平 均を 上回 って いる 。
地域 別に み ると 、 区画 の 整備 率 は、 比較 的 傾斜 の 緩い 畑が 分 布す る山 陰 で高 く
なっ てい るが 、急 傾斜 樹園 地の多 い四 国で は低 い( 図Ⅰ −2 −23 )。
- 57 -
第Ⅰ 部
図Ⅰ−2−23
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
畑の整備状況(18年)
単位:%
70
60
60
49
整 50
備
率 40
37
︵
︶
%
33
29
30
20
20
21
18
16
8
10
0
全国
中国・四国
山陰
区画整形
山陽
四国
畑地かんがい施設
資料:農林水 産省統計部 「耕地及び作 付面積統計」、農 林水産省農 村振興局「農 業基盤整備 基礎調査」
注:1) 整備率算定 に用いた畑面 積は「耕地 及び作付面 積統計」によ る18年7月15日時点 の値。
2) 整 備率算 定に用 いた各 整備済 面積は 「農業 基盤整備 基礎調 査」に よる18年3月31日 時点の
推 計値。
農業 生産 基 盤の 整 備に つ いて は 、中 国・ 四 国地 域 の整 備水 準 が、 畑地 か んが い
施 設の 整備 を 除き 、 全国 平 均に 比 べて 大き く 立ち 後 れて いる 状 況を 踏ま え 、地 域
の 自然 的・ 社 会的 条 件や 営 農状 況 を十 分に 考 慮し な がら 、各 種 事業 を計 画 的か つ
総合 的に 進め るこ とが 重要 である 。
水田 につ い ては 、 効率 的 ・安 定 的な 農業 経 営を 行 うた めの 基 本的 条件 で ある 区
画 整理 や、 食 料自 給 率向 上 のた め 、麦 、大 豆 等を 中 心と した 効 率的 な畑 作 営農 が
可 能と なる よ うな 、 水田 の 汎用 化 を中 心に 進 める こ とと し、 中 山間 地域 の 急傾 斜
水 田に つい て も、 国 土保 全 ・農 地 のか い廃 防 止の 観 点を 含め 、 地域 の条 件 に応 じ
た整 備を 行う こと とし てい る。
また 、畑 に つい て は、 高 品質 で 安定 した 作 物生 産 及び 多目 的 利用 を考 慮 した 畑
地 かん がい 施 設の 整 備や 区 画整 理 、農 産物 流 通の 合 理化 、農 作 業の 効率 化 のた め
の 農道 整備 等 を、 地 域の 自 然条 件 ・営 農状 況 を踏 ま え、 適切 に 推進 して い くこ と
とし てい る。
なお 、中 国 ・四 国 地域 の 大半 を 占め る中 山 間地 域 にあ って は 、個 性あ る 豊か な
むら づ くり を 実現 する た め農 村地 域 の特 性 を踏 まえ 、環 境 との 調和 に 配慮 しつ つ、
生 産基 盤と 農 業集 落 排水 施 設、 農 業集 落道 等 の生 活 環境 の一 体 的な 整備 を 進め る
必要 があ る。
- 58 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
(2 )農 業農 村整 備の 推進
【土地改良長期計画の実現のため基盤整備とソフト対策を一体的に推進】
農業生産基盤の整備に当たっては、「食料・農業・農村基本法」に示された
「食料の安定供給の確保」、「多面的機能の発揮」、また、「農業の持続的発
展 」と その 基 盤と な る「 農 村の 振 興」 の4 つ の基 本 理念 を念 頭 に置 き、 食 料・ 農
業・ 農村 基本 計画 や新 たな 土地改 良長 期計 画の 実現 を図 る必 要が ある 。
また、経営所得安定対策等大綱に位置づけられた水田経営所得安定対策では、
農業の構造改革の加速化を図るとともに、WTOにおける国際規律に対応するた
め、支援の対象となる担い手を明確化したうえで、その経営の安定を図ることと
している。そのためには、担い手への農地利用集積を図っていくことが必要であ
り、区画整理や暗きょ排水施設の整備等きめ細かな基盤整備と土地利用調整活動
等のソフト対策を一体的に推進していく。
さら に、 農 地や 農 業用 水 等の 持 つ多 面的 な 機能 を 適切 に発 揮 させ るた め 、こ れ
ら を適 切に 保 全管 理 して い くこ と が必 要で あ るが 、 農業 者だ け でな く、 多 面的 な
機能 の恩 恵を 享受 して いる 地域全 体で 保全 管理 して いく 必要 があ る。
ア
かん がい 排水 整備 の取 組
(ア )国 営か んが い排 水事 業
中国 ・四 国 地域 は 、年 間 降水 量 が少 ない と いう 瀬 戸内 の気 象 条件 や労 働 生産 性
が 低い 中山 間 地域 が 大部 分 を占 め ると いう 地 形条 件 等を 踏ま え 、農 業用 水 の水 源
確 保に よる 作 物の 品 質向 上 や収 量 の増 大、 か んが い 施設 の整 備 によ る労 力 の軽 減
等を 図る こと が必 要不 可欠 である 。
この ため 、 国営 事 業で は 、現 在 以下 の4 地 区に お いて ダム 、 頭首 工、 用 排水 機
場 、用 排水 路 等の 農 業水 利 施設 の 整備 、施 設 の機 能 ・安 全性 の 確保 を図 る ため の
部分 的な 更新 整備 や補 修等 を行っ てい る( 表Ⅰ −2 −10 )。
表Ⅰ−2−10
19年度
国営事業地区名
国営かんがい排水事業実施地区
県名
工
期
弓浜半島地区
鳥取県
H19∼H22
斐伊川沿岸地区
島根県
H17∼H25
岡山南部地区
岡山県
H10∼H21
道前道後平野地区
愛媛県
H元∼H20
備考
国 営造 成 土地 改良 施 設整 備事 業
資料:中国 四国農政局調 べ
(イ )補 助事 業
下表 に示 す 国営 か んが い 排水 事 業実 施地 区 に関 連 する 地区 を 中心 とし て 、県 営
- 59 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
かん がい 排水 事業 等の 補助 事業に より かん がい 施設 の整 備を 行っ てい る。
また 、か ん がい 施 設の 整 備と 併 せて 、安 定 的な 農 業経 営体 の 育成 ・確 保 を図 る
た め、 関係 部 局と 調 整を 図 りつ つ 、経 営体 育 成促 進 事業 等を 活 用し 、担 い 手へ の
農地 の利 用集 積を 推進 する 等の取 組を 行っ てい る( 表Ⅰ −2 −11 )。
表Ⅰ−2−11 19年度国営かんがい排水事業関連補助事業地区のうち実施中の地区数
国営事業地区名
岡山南部地区
道前道後平野地区
補
助
事
業
名
事業主体
地区数
農村振興総合整備統合補助事業
総社市
1
県営経営体育成基盤整備事業
岡山県
1
県営かんがい排水事業
愛媛県
1
資料: 中国四国農 政局調べ
(ウ )管 理事 業
これ まで に 建設 さ れた 農 業水 利 施設 のス ト ック は 、管 内に お いて ダム 等 の基 幹
的水 利施 設約 700ヶ 所、 農業 用用 排水 路約 3千k mにも 達し てい る。
しか し、 こ れら 施 設は 建 設さ れ てか ら相 当 年度 が 経過 し、 施 設の 老朽 化 が進 ん
でい るも のも 多い 。
この こと か ら、 国 営造 成 水利 施 設保 全対 策 指導 事 業や 基幹 水 利施 設ス ト ック マ
ネ ジメ ント 事 業の 実 施に よ り、 施 設の 機能 を 効率 的 に保 全す る ため の機 能 診断 を
行 うほ か、 施 設の 劣 化( 故 障) が 致命 的に な る前 に 、劣 化の 進 行防 止や 劣 化原 因
の 除去 等の 適 切な 措 置を 行 い、 施 設機 能の 延 伸( 長 寿命 化) を 図る こと と して い
る。
また 、農 業 水利 施 設が 持 つ多 面 的機 能を 発 揮さ せ るた めに は 、こ れら 施 設を 適
切 に維 持管 理 する こ とが 必 要で あ り、 農家 だ けで な く地 域住 民 やN PO 等 の多 様
な 主体 の参 画 によ る 管理 体 制を 構 築す るた め 、国 営 造成 施設 管 理体 制整 備 促進 事
業( 管理 体制 整備 型) を22地 区で 実施 して いる 。
(エ )米 政策 改革 に対 応し た事業 の実 施
農村 地域 の 都市 化 ・混 住 化や 農 家の 減少 ・ 高齢 化 が進 行す る なか で、 地 域水 田
農 業ビ ジョ ン の実 現 に向 け た多 様 な水 田農 業 の展 開 に対 応す る ため 、農 業 水利 施
設 の管 理の 省 力化 等 を図 る 新農 業 水利 シス テ ム保 全対 策 事業 を 79地 区で 実 施し て
いる 。
イ
ほ場 整備 の取 組( 経営 体育成 基盤 整備 等)
水田のほ場整備については、将来の農業生産を担う効率的かつ安定的な経営体
の育成を図るため、経営体育成基盤整備事業等により、高生産性農業の展開が見
- 60 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
込まれる地域を中心に生産基盤の整備を推進している。
中国・四国地域においては、経営体育成基盤整備事業等の実施による担い手へ
の農地の利用集積や農地の流動化を図るため、各種施策と連携しながら地域の状
況に応じたきめ細かな生産基盤の整備を行っており、19年度は、経営体育成基盤
整備事業等71地区を実施している。
整備前
整備後
【県 営ほ 場整 備 事業 (担い 手育 成型 )山口 県 「伊 上地 区」】
ウ
農道整備の取組
中国・四国地 域においては、基
幹的な広域高速 交通網の整備が進
み、大規模消費 地である京阪神及
び九州方面への 農産物等の流通経
路が確保されつつある。
このような状 況のなか、一般道
路網の整備と連 携を図りながら、
消費者へ新鮮で 高品質な農産物等
を迅速に輸送す るため、ほ場から
【 愛媛 県八 幡浜 市 農 林 漁業 用揮 発 油税 財源 身替
一般道路への接 続道となる農道の
農 道 整備 事 業 八 幡 浜中 央 地区 】
整備を進めてい る。これら農道の
整備は、農業の近代化、農産物流の合理化、農村の生活道路としての農村環境の
改善にも寄与しており、19年度は、広域農道34地区、一般農道27地区、農免農道
54地区を実施している。
エ
農地防災・農地保全の取組
(ア)国営総合農地防災事業
農村地域の平野部においては、都市化、混住化の進展による生活雑排水の農業
用水路への流入等により水質悪化が深刻な地域が見られる。また、農業用施設の
- 61 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
機能低下や管理上の支障が生じているうえ、安全性も低下している。
こうしたことから、農業用水の水質保全や農地の災害を未然に防止することを
目的に、国営総合農地防災事業を吉野川下流域地区、那賀川地区(徳島県)及び
香川地区(香川県)で実施している。
改修後
改修前
香川地区
北条池の改修
(イ)直轄地すべり対策事業
管内の総面積の8割弱が中山間地域に属し、傾斜地が多く、複数の断層破砕帯
が分布することから、地すべり防止区域が数多く指定されている。
このような地すべり防止区域の中で、地すべり防止工事の規模が大きく、高度
の技術を要する地区において、農地・農業用施設、人家等を災害から守り、国土
の保全と民生の安定に資することを目的に、直轄地すべり対策事業を高知三波川
帯地区と高瀬地区(高知県)で実施している。
(ウ)補助事業
管内9県の農地防災事業、農地保全事業等の実施状況は下記のとおりである
(表Ⅰ−2−12)。
表Ⅰ−2−12 19年度
事業名
事業等実施地区数
鳥取
島根
岡山
単位:地区
広島
山口
徳島
香川
愛媛
高知
局計
農 地 防 災 事 業
4
8
46
34
44
11
25
37
7
216
農 地 保 全 事 業
1
28
9
5
7
19
0
21
1
91
そ
0
0
5
9
9
13
5
17
1
59
5
36
60
48
60
43
30
75
9
366
の
計
他
資料:中国四 国農政局調 べ
注: 「その 他」は 、農村 環境保 全対策 事業、 中山間 地域総 合農地防 災事業 (中山 間総合整 備事業)、
海岸保 全施設整備 事業、海岸環 境整備事業 を示す。
- 62 -
第Ⅰ 部
オ
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
災 害復旧
19年の自然災害は、梅雨前線豪雨、台風第4号及び局所な豪雨によるものが多
く、県や市町村等とともに延べ31班の体制を組んで災害査定を行い、災害復旧事
業全体計画書等に基づき災害復旧事業が実施されている。
工種別被害額は、農地約10億円、道路約8億円、水路約8億円、ため池約5億
円の順となっており、この4工種で全体の84%を占める被害規模であった。19年
度中の災害復旧の割合は、全体の17.5%を占め、残工事は20年度以降となる。
《事例:被害状況》
【農地】
【道路】
(災害時)
(復旧時)
(災害時)
(復旧時)
(3) 土地改良区の推移と現状
ア
土地改良区の現状
【統合整備が進み地区数は減少】
土地改良区は、一定の土地について土地改良事業を実施することを目的として、
土地改良法に基づき設立される公共組合である。農業用施設管理を含む土地改良
事業の中核的実施主体と位置付けられており、土地改良事業が地域全体の多数の
農家の利害に関係するという公的側面から、強制加入、賦課金の強制徴収等、強
- 63 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
い公的機能が与えられている。
管内の土地改良区数は、近年の設立抑制の浸透と統廃合が進んだことから減少
傾向にあり、19年度末の地区数は10年度末に比べ314地区(22.3%)減少し1,091
地区となっている。
面積規模別の割合をみると、100ha未満の小規模 な地区が51.7%(全国平均
45.7%)と多く、1千ha以上の大規模な地区は6.5%(同11.5%)と少ない(表
Ⅰ−2−13)。また、土地改良区の平均面積が全国平均を上回る県は島根県、香
川県であり、残り7県は全国平均以下となっている。
表Ⅰ−2−13
区
分
19年度末面積規模別土地改良区数
100ha
100ha
未満
∼
3 0 0 h a 1 , 0 00 h a 合
∼
計 区 の 平均 10年度末
以上
300ha
1,000ha
面積 (ha)
地区数
鳥取県
45
31
27
2
105
238
110
島根県
19
8
22
9
58
627
72
岡山県
60
35
21
11
127
417
186
広島県
39
25
18
9
91
399
150
山口県
61
32
21
7
121
245
160
徳島県
85
24
18
6
133
279
173
香川県
39
43
35
10
127
575
143
愛媛県
104
38
29
15
186
314
219
高知県
112
24
5
2
143
99
192
中国・ 四国
564
260
196
71
1,091
333
1,405
比率(%)
51.7
23.8
18.0
6.5
100.0
全国
2,500
1,293
1,050
631
5,474
505
7,297
比率(%)
45.7
23.6
19.2
11.5
100.0
資料: 農林水産省 農村振興局 土地改良企画 課「平成19年度土地改良 区設立状況 等調査」
イ
統合整備の状況
【統合整備推進の取組は着実に進展】
土地改良区の事業運営基盤の強化を図るため、管内の各県(島根県・香川県を
除く)では「土地改良区統合整備基本計画(マスタープラン)」を策定し、当該
計画に沿って、土地改良区の統合整備の推進に取り組んでいる。
国は、土地改良区の統合整備の支援対策を講じ、市町村単位または水利系統単
位に土地改良区の統合整備を推進することにより事業運営基盤の強化を図る一方、
事業等が縮小し解散することが望ましい土地改良区に対しては、土地改良施設の
- 64 -
第Ⅰ 部
第2章
中 国四 国 の 農 業 ・ 農 村 の 現状
市町村等への移管等と併せて県を通じ解散指導を行った。
この結果、19年度には管内の4地区で土地改良区の合併が行われるとともに、
20地区が解散(合併による解散10地区を除く。)している。
ウ
土地 改良 区の 活性 化
土地 改良 区 は、 農 業用 用 排水 施 設や 農地 の 整備 及 び適 切 な維 持・ 保 全を 通じ 、
食 料・ 農業 ・ 農村 基 本計 画 の理 念 であ る「 食 料の 安 定供 給の 確 保」 、「 農 業の 持
続 的な 発展 」 及び 「 農村 の 振興 」 を図 ると と もに 、 それ らの 活 動を 通じ て 農村 の
豊 かな 自然 や 美し い 景観 を 維持 し 、国 土・ 環 境の 保 全を 図る な ど、 農業 農 村が 持
つ「 多面 的機 能の 発揮 」に も大き な役 割を 果た して いる 。
しか し、 近 年、 農 村地 域 の都 市 化や 混住 化 の進 展 等に より 、 水路 の水 質 悪化 や
ゴ ミの 投棄 等 農村 環 境の 悪 化が 進 み、 これ ら 農業 農 村の 持つ 多 面的 な機 能 が適 切
に発 揮で きな くな り、 食料 生産に 大き な影 響を 及ぼ す地 域も 多く なっ ている 。
この ため 、 農業 者 だけ で なく 広 く地 域住 民 を対 象 に、 農地 や 農業 水利 施 設に 対
す る理 解、 農 業農 村 が持 つ 多面 的 な機 能に 対 する 理 解を 深め て もら うこ と を目 的
と して 、土 地 改良 区 では 、 地域 住 民等 と協 力 して さ まざ まな 地 域活 動を 実 施す る
「2 1世 紀土 地改 良区 創造 運動( 21 創造 運動 )」 を展 開し てい る。
21 創造 運 動の 活 動は 、 農業 水 利施 設の 見 学会 、 農業 用用 排 水路 等に 沿 って 地
み ど り
域 の歴 史等 を 学び な がら 歩 く水 土 里の 路ウ ォ ーキ ン グ、 田植 え 体験 等の 農 業体 験
学 習の ほか 、 農地 ・ 農業 用 水・ 歴 史・ 伝統 文 化等 の 地域 資源 を 活用 した 地 域づ く
り( 村お こし )、 農産 物直 売への 参画 等多 岐に わた り拡 がり つつ ある 。
この 運動 は 、農 業 や農 業 水利 施 設に 対す る 理解 を 深め ても ら うだ けで な く、 地
域 の農 業・ 農 村の 発 展、 子 ども 達 の人 材育 成 にも 大 きく 貢献 し てお り、 土 地改 良
区の 果た す役 割が ます ます 重要に なっ てい る。
み ど り
ま た 、土 地 改良 区は 、 21 創造 運 動の 一 環と して 愛称 を 「水 土里 ネ ット 」と し、
地域 によ り開 かれ 、よ り身 近に感 じて もら える 土地 改良 区を 目指 して いる。
「水 土 里ネ ッ ト 豊北 」 によ る 農業 と 環 境の 学 習
会( 山口 県下 関 市)
「 水土 里ネ ット 山 ぜき( 山 田堰 井 筋土 地改 良 区)」
によ る舟入川ウ ォーキン グ(高知県 香美市)
- 65 -
第 Ⅰ部
第3章
1
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
中国四国農業の構造改革の推進
経営所得安定対策の推進
17 年1 0月 に決 定 され た 「経 営 所得 安 定対 策等 大 綱」 に 基づ く 施策 の円 滑 な実 施
を図 るた め、農 政局 では、同年 11月 に「 経 営所 得安 定対策 等推 進本 部」を 設置 し、
農 政改 革 関 連 3 対策 ( 品 目 横断 的 経 営 安定 対 策 (現 : 水 田 経営 所 得 安 定対 策 )、
米 政策 改革 推 進対 策 及び 農 地・ 水 ・環 境保 全 向上 対 策) を足 並 みを 揃え て 展開 す
るこ とと した 。
19年 度 は推 進本 部 を4 回 開催 し 、各 対策 担 当者 が 情報 を共 有 しつ つ、 3 対策 の
連携 によ る取 組の 推進 を図 った。
ま た 、1 9 年 4 月 、 各 地 方 農 政 事 務 所 を 中 心 と し た 「 中 国 四 国 農 政 局 経 営
所 得 安定 対 策 等 推 進本 部 ・ 地 域本 部 」 を 設置 す る と とも に 、 地 域 本部 内 に
対策 ごと のチ ーム を設 置した 。
(品 目 横断 的経 営 安定 対 策( 現 :水 田経 営 所得 安 定対 策) は 第3 章の 2 、米 政
策 改革 推進 対 策は 第 3章 の 3、 農 地・ 水・ 環 境保 全 向上 対策 は 第4 章の 5 で取 組
を記 載し てい る。)
2
水田経営所得安定対策
(1)
取組の概要
農業従事者の減少・高齢化、耕作放棄地の増大などにより、我が国農業、特に
米、麦、大豆等の土地利用型農業のぜい弱化が進む中で、土地利用型農業の体質
強化の加速化を図るとともに、WTOにおける国際規律にも対応し得るよう、従
来、品目別に講じていた支援策を見直し、施策の対象となる担い手を明確化した
うえで、その経営の安定を図る品 目横 断 的経 営 安定 対策 ( 現: 水田 経 営所 得安 定
対策 ) が19年4月から導入された。
品目横断的経営安定対策の加入申請者の受付については、19年産秋まき麦作付
対象者は18年9月1日から11月30日、米・大豆の作付対象者は19年4月1日から
7月2日に実施された。また、20年産秋まき麦作付対象者については19年6月1
日から8月31日まで加入申請受付が行われた。
ア
19年産の加入状況
19年産の加入申請については、2,573経営体(うち、認定農業者2,306、集落営
農組織267)からの申請があり、品目別の作付計画面積は米1万8,277ha、4麦
7,556ha、大豆2,690haとなった(表Ⅰ−3−1、表Ⅰ−3−2)。
- 66 -
第 Ⅰ部
表Ⅰ−3−1
第3章
19年産の加入状況(経営形態別申請経営体数)
認定農業者
計
鳥
島
岡
広
山
徳
香
愛
高
中国
取
根
山
島
口
島
川
媛
知
四国
県
県
県
県
県
県
県
県
県
計
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
小計
178
419
304
269
683
28
396
270
26
2,573
個人
144
359
295
262
601
28
336
255
26
2,306
法人
106
258
270
160
528
22
294
211
25
1,874
38
101
25
102
73
6
42
44
1
432
単 位 :経 営 体
集落営農組織
特定農業 準ずる
小計
団 体
組 織
34
3
31
60
54
6
9
9
7
5
2
82
75
7
60
59
1
15
5
10
267
201
66
資料:中国四 国農政局調 べ
注: 1) 認定農 業者には、法 人化された 集落営農組 織(特定農業 法人等)が 含まれている 。
2) 本結果 表の数 値は加 入申請 を行っ た経営 体の数 値であ り、交 付金の 交付要 件等内 容に係 る審査
は行ってい ないため、 すべての経 営体が交付対 象者となる わけではない 。
表Ⅰ−3−2 19年産の加入状況(品目別作付計画面積)
米
小計
鳥 取 県
島 根 県
岡 山 県
広 島 県
山 口 県
徳 島 県
香 川 県
愛 媛 県
高 知 県
中国 四国 計
1,4 30
3,3 48
1,5 81
2,6 13
4,4 64
91
3,6 04
1,0 40
107
18,2 77
認定農業者
1,160
2,350
1,521
2,546
3,421
91
1,023
991
107
13,211
単 位 : ha
4麦
集落営
農組織
270
998
60
66
1,043
0
2,580
49
0
5,066
小計
認定農業者
103
567
2,162
94
837
128
2,065
1,595
5
7,556
72
257
2,049
89
614
128
1,087
1,375
5
5,676
大豆
集落営
農組織
31
310
113
5
223
0
979
219
0
1,880
小計
認定農業者
542
572
277
382
494
0
66
242
114
2,690
304
290
199
356
306
0
65
149
114
1,782
集落営
農組織
238
282
77
27
189
0
1
94
0
908
資料:中国四 国農政局調 べ
注:1) 認 定農業者に は、法人化さ れた集落営 農組織(特 定農業法人等 )が含まれ ている。
2) 本結果表 の数値は加 入申請を 行った経営 体の数値で あり、交 付金の交付 要件等内容 に係る審 査は
行っ ていないた め、すべての 経営体が交 付対象者と なるわけでは ない。
3) 作付計画 面積は、加 入申請を 行った経営 体の19年産 作付予定 面積であり 、交付金の 支払い対 象と
な らないビ ール用大麦 、黒大豆 や自家消費 用等が含ま れること から、実際 に交付金の 支払い対 象と
なる 面積とは一 致しない。
4) ラ ウンドの関 係で数値が一 致しない場 合がある。
イ
20年産秋まき麦の加入状況
20年産の秋まき麦加入申請については、806経営体(うち、認定農業者655、集
落営農組織151)からの申請があり、4麦の作付計画面積は7,838ha(うち、認定
農業者5,939ha、集落営農組織1,899ha)となった(表Ⅰ−3−3)。
- 67 -
第 Ⅰ部
表Ⅰ−3−3
経営体数
県
県
県
県
県
県
県
県
県
計
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
20年産秋まき麦の加入状況
合計
鳥
取
島
根
岡
山
広
島
山
口
徳
島
香
川
愛
媛
高
知
中 国四 国
第3章
30
81
103
31
147
12
242
158
2
806
認定農業者
単 位 :経 営体 、ha
集落営農組織
20年産4麦
20年産4麦
20年産4麦
作付計画 経営体数 作付計画 経営体数 作付計画
面積
面積
面積
114
24
73
6
42
611
44
279
37
332
2,185
96
2,077
7
108
106
30
98
1
8
916
118
633
29
284
116
12
116
2,106
183
1,179
59
927
1,677
146
1,478
12
199
5
2
5
7,838
655
5,939
151
1,899
資料:中国四 国農政局調 べ
注:1) 今回の加 入申請は、 19年の秋 に麦を作付 ける農業者 であって 「収入減少 影響緩和対 策」に加 入す
る 者のみを 対象とし、 秋まき麦 を作付けて も「生産条 件不利補 正対策」だ けに加入す る農業者 につ
いて は20年4月 1日からの加 入申請とな る。
なお、品 目横断的経 営安定対 策(水田経 営所得安定 対策)の 見直しによ り、20年産 秋まき麦 の加
入に ついても、 20年4月1日か らの加入申 請が可能と なる。
2) 本結果表 の数値は加 入申請を 行った経営 体の数値で あり、交 付金の交付 要件等内容 に係る審 査は
行っ ていないた め、すべての 経営体が交 付対象者と なるわけでは ない。
3) 作付計画 面積は、加 入申請を 行った経営 体の20年産 作付予定 面積であり 、交付金の 支払い対 象と
な らないビ ール用大麦 や自家消 費用等が含 まれること から、実 際に交付金 の支払い対 象となる 面積
とは 一致しない 。
4) ラ ウンドの関 係で数値が一 致しない場 合がある。
(2)品目横断的経営安定対策の見直し
【品目横断的経営安定対策から水田経営所得安定対策へ】
品目横断的経営安定対策については、その内容が個々の農家まで必ずしも十分
に伝わっていなかったことや説明自体も分かり難かったこと等により、生産現場
に様々な誤解が生じたり、不安や不満の声が上がったところである。
このため、これら生産現場からの意見・要望を踏まえ、農林水産省においては、
19年10月に農林水産大臣を本部長とする「農政改革三対策緊急検討本部」を立ち
上げ、12月21日に農政改革3対策については実態に即した改善を行いつつそれら
の着実な推進を図るとした「農政改革三対策の着実な推進について」を決定した。
その中で「品目横断的経営安定対策」については、制度の基本を維持しつつ、
名称を「水田経営所得安定対策」に変更するとともに、地域の実態に即し下記の
通り見直しを行った。
- 68 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
品目横断的経営安定対策の見直しのポイント
制度の基本を維持しつつ、地域の実態に即した制度見直しを行う。
○要件関係
(1)面積要件の見直し(市町村特認制度の創設)
地域農業の担い手として「水田農業ビジョン」に位置付けられている
認定農業者や集落営農組織について、本対策への加入の道を開く。
(2)認定農業者の年齢制限の廃止・弾力化
(3)集落営農組織に対する法人化等の指導の弾力化
○予算措置関係
(4)先進的な小麦等産地の振興
近年、単収向上が著しい先進的な小麦産地やてん菜産地の安定生産を
支援(予算措置)。
(5)収入減少影響緩和対策の充実
19年産において10%を超える収入減少があった場合には、特別な措置
を用意するとともに、20年産以降には、10%を超える収入減少に備え得
る仕組みを整備し、米価下落に対する農家の不安を払拭(予算措置)。
(6)集落営農への支援
集落リーダーの諸活動、リース等を活用した機械・施設の整備等に対
する支援を充実(予算措置)。
○手続等関係
(7) 農家への交付金の支払いの一本化、申請手続きの簡素化等
(8) 用語の変更による誤解の解消
(9) 農業資材費等の低減対策についての農協系統への要請
(3)
今後の一層の推進に向けて
農政局では、中国四国ブロック、県、市町村等の各段階で制度に関する説明会
を開催するとともに、ホームページへの広報記事の掲載、広報誌への掲載、局・
農政事務所独自パンフレットの作成・配布等を通じて対策の見直しの概要や事務
手続きの周知徹底を図った。
また、20年2月4日には水田経営所得安定対策や米政策改革に関して、農業者
や県・市町村・JAの担当者からの質問や相談、要望等を一元的に受け付け、迅
速かつ統一的に対応する「水田経営相談窓口」(愛称:農政安心ダイヤル)を農
政局及び農政事務所に開設した。
- 69 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
今後は、19年度に引き続きパンフレットの配布や説明会等による制度の周知活
動を実施するとともに、本対策への加入が可能な者(担い手)をリストアップす
るなど、対象者を絞った重点的な加入促進活動を実施することとしている。
3
米政策改革推進対策
16年度からスタートした米政策改革は、19年産から新たな需給調整システム
に移行したこと等を踏まえ、関係機関が一体となって、生産調整の実効性確保
に向けた取組を推進している。
【新たな需給調整システムへの移行】
18年7月に決定された「経営所得安定対策等実施要綱」において、19年産から
新たな需給調整システムへの移行を決定するとともに、19年産から導入される水
田経営所得安定対策との整合性を図りつつ、16年からの3か年の対策として講じ
られてきた産地づくり対策、稲作所得基盤確保対策及び集荷円滑化対策について
見直しが行われた。
農政局においては、経営所得安定対策等推進本部・地域本部の米政策改革推進
対策チームが、各県及び地域水田農業推進協議会(以下「水田協議会」という。)
に対し、農業者・農業者団体の主体的な需給調整システムに円滑に移行するよう、
説明会や意見交換会等を通じて水田協議会の体制整備等の指導助言を行った。
また、水田経営所得安定対策と連携し、同対策への加入促進や産地づくり交付
金を活用した担い手の育成・確保、及び生産調整非参加である大規模稲作農業者
への生産調整参加促進のための働きかけや、県、農協中央会、全農等関係団体幹
部及び水田協議会との意見交換を行った。
【需要に応じた米づくりに向けた情報交換会等の開催】
米の需要量は、人口の減少、少子・高齢化、世代交代等により今後も一貫して
減少傾向と推測され、需要量に応じた米づくりや地域の実情に応じた主食用米か
らの作物転換等をさらに推進する必要がある。
このため、中国・四国地域における特徴ある米づくりの取組紹介や情報交換を
目的に、11月19日に岡山市において「需要に応じた米づくりに向けた情報交換会」
- 70 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
を開催し、米の流通業者による基調講演及
び地域水田協議会や、JA等方針作成者に
よるパネルディスカッションを行った。
また、米以外の作物の作付が困難な地域
における生産調整の実効性確保に向けて、
県水田協議会担当者を参集した現地検討会
を開催し、飼料用稲や水田放牧の取組紹介
情 報 交換 会 に おけ る パ ネ ルデ ィ ス カッ シ ョ ン
を行った。
【米緊急対策等の決定】
19年産米の米価は、①米の消費量が年々減少するなかで、生産調整の実効性が
十分確保できていないこと、②主たる売り手である全農が概算払いの取扱いを見
直したこと、③流通業界が恒常的な過当競争の構造になっていること、④消費者
の米の購入動向として、低価格米への志向が強まっていること、などを背景とし
て、作況99でありながら前年産を大幅に下回る異常事態となった。
このような米価の大幅下落は、経営規模の大きい農業者を直撃するだけでなく、
小規模農業者を含めて多数の農業者の経営を不安定なものとし、地域農業・地域
経済の活力を損なっている状況から、10月29日に、34万トンの政府買入、備蓄米
の市場放出を当面抑制するといった「米緊急対策」が決定された。
また、消費量が年々減少していることを踏まえて、生産調整の実効性の確保に
向け、農協系統と行政が従来にも増して連携して取り組んでいくとする「当面の
生産調整の進め方」が「農政改革三対策の着実な推進について」の対策の一つと
して、農政改革三対策緊急検討本部により12月21日に決定された。
このため、あらゆる地域の関係機関が一体となって、生産調整の実効性確保に
向けた取組が図られるよう、また、水田協議会を構成する関係機関やJA等方針
作成者の連携強化が図られるよう指導助言を行った。
特に、管内における恒常的な過剰作付
県(岡山県・徳島県・高知県)の水田協
議会関係者や過剰作付地域の水田協議会
に対しては、当該構成組織へ生産調整の
協力を要請するとともに、主食用米の需
要が今後とも減少する見込みであること
などを踏まえ、5年後の24年度を目標に
した地域水田農業ビジョンの見直しに向
けて指導助言を行った。
大 規模 稲作 農業 者 との 意見 交換 会
また、生産調整非参加者の生産調整へ
- 71 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
の参加の促進に向けて、PR資料の作成配布や水田協議会と連携した大規模稲作
農業者との意見交換等を実施した。
さらに、飼料用稲・米の作付拡大に向けたPR資料の作成配布や畜産農家を対
象とした飼料用稲の需要に係る意向把握を行い、地域水田協議会に対する情報提
供や指導助言を行った。
4
担い手の育成・確保対策
(1)認定農業者制度の推進
認定農業者制度とは、農業経営基盤強化促進法に基づき、市町村が地域の
実情に即して効率的・安定的な農業経営の目標等を内容とする基本構想を策
定し、この目標を目指して農業者が作成した農業経営改善計画を認定する制
度である。
ア
認定農業者数
【認定農業者数の割合は、全国に比べ低い】
中国・四国地域における認定農業者数は、19年3月末現在で19,736(うち法人
1,226)経営体と全国の8.6%を占めている。また、認定農業者数を県別にみてみ
ると、愛媛県が4,526経営体(管内の22.9%)と最も多く、次いで高知県の3,403
経営体となっている。さらに、主業農家に占める割合をみてみると、全国が53.2
%であるのに対し、中国・四国地域は46.1%と低い状況にある(表Ⅰ−3−4)。
表Ⅰ−3−4
農業経営改善計画認定実績(19年3月末現在)
主業農家に 占め
区
分
認定農業者
市町村数 (A) (%)
うち法人
う ち特 定
主業農家
(B)
19
21
27
23
22
24
17
20
35
208
1,827
1,117 (5.7)
1,154 (5.8)
3,333(16.9)
1,214 (6.2)
1,303 (6.6)
2,122(10.8)
1,564 (7.9)
4,526(22.9)
3,403(17.2)
19,736 (100)
228,593
68
140
166
180
130
102
124
243
73
1,226
11,043
12
34
3
61
35
1
2
4
1
153
448
資料 : 中 国四 国 農 政局 調 べ (主 業 農 家は 2005年 農 林業 セ ン サス )
- 72 -
割合
(A/B)
農業法人
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
中四計
全国計
る認定農業 者の
3,427
2,588
4,770
3,998
3,153
5,496
3,517
8,614
7,287
42,850
429,467
32.6
44.6
69.9
30.4
41.3
38.6
44.5
52.5
46.7
46.1
53.2
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
次に、 認定農 業者数 を営農 類型別 にみて みると、 稲作主 体の割 合が25.4 %
(全国35.6%)と最も多く、次いで果樹主体が19.7%(同9.2%)、施設野菜主体
が19.1%(同11.1%)となっており、中国・四国地域は、果樹及び施設野菜を主
としている認定農業者数が稲作を主としている認定農業者数を大きく上回ってい
る。なお、これを県別にみてみると、愛媛県では果樹主体の割合が49.8%、高知
県では施設・露地野菜主体が73.9%、山口県では稲作主体が56.3%と、特徴が表
れている(図Ⅰ−3−1、表Ⅰ−3−5)。
図Ⅰ−3−1
営農類型別認定農業者数(19年3月末現在)
(2) 全国(単位: %)
( 1)中国四国(単位:%)
その他,
17.3
稲作主体,
25.4
その他,25.2
稲作主体,
35.6
酪農主体,
5.0
花き主体,
5.6
花き主
体,4.7
果樹主体,
19.7
露地野菜主
体, 7.9
酪農主
体,6.2
露地野菜主
体,8.0
施設野菜主
体,19.1
果樹主
体,9.2
施設野菜主
体,11.1
資 料 :中 国四 国 農政 局 調べ
表Ⅰ−3−5
各県別主な営農累計別認定農業者の区分(19年3月末現在)
(単位:経営体)
稲作主体
果樹主体
施設野菜主体
露地野菜主体
鳥取
325
29.1%
165
14.8%
129
11.5%
129
11.5%
島根
435
37.7%
182
15.8%
121
10.5%
15
1.3%
岡山
1,440
43.2%
488
14.6%
252
7.6%
159
4.8%
広島
231
19.0%
224
18.5%
211
17.4%
26
2.1%
山口
734
56.3%
97
7.4%
60
4.6%
48
3.7%
徳島
726
34.2%
109
5.1%
156
7.4%
504
23.8%
香川
470
30.1%
116
7.4%
157
10.0%
342
21.9%
愛媛
573
12.7%
2,252
49.8%
369
8.2%
135
3.0%
高知
73
2.1%
249
7.3%
2,310
67.9%
204
6.0%
計
5,007
25.4%
3,882
19.7%
3,765
19.1%
1,562
7.9%
資料 :中 国 四国 農 政局 調べ
全国担い手育成総合支援協議会では、望ましい農業構造の実現に向けて、農業
経営の改善に積極的に取り組み、地域農業の振興や活性化に寄与している意欲と
能力のある担い手を表彰する「優良担い手表彰・発表事業」を毎年度実施してい
るが、19年度においては、当局管内から「個人・土地利用型部門」で、香川県観
音寺市の合田守夫氏、「個人・施設等型部門」で、高知県高知市の野村巧氏が農
林水産大臣賞を受賞、また、個人経営部門で2経営体が経営局長賞を受賞するな
ど、管内の個人農業者は高い評価を得ている。今後、このような優良事例を広く
紹介することにより、他の認定農業者等の経営改善や周辺地域への波及効果が期
- 73 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
待されているところである。
《 農林水産大臣賞受賞事例 》
所
在
香 川 県
か んおん じ
経 営者名
ごう だ
経
営
概
要
もり お
合田 守夫
レタス6 ha、水 稲2ha 、タマネ ギ1ha 、青ネギ
し
観音寺市
70a、梨45a
果樹作 から野 菜作へ 大きくシ フトし 、急速な
規模拡大 を達成 。労働 力を最大 限に活 用するた
め、水稲 裏作の レタス 栽培を活 用。さ らには、
タマネギ 、青ネ ギなど の新規導 入によ り、ロー
テーションによる周年栽培を実践。
1 9年 8月 には 、 農業 生産 法人 「( 株 )合 田農
園」を設立。
所
在
高 知 県
こう
ち
経 営者名
の むら
経
営
概
要
た くみ
野村 巧
トマト2.9ha、水稲80a
し
高 知 市
キュウ リ、ス イカ、 ナスの経 営から トマト単
一経営に 転換し 、規模 拡大を図 った。 消費者の
健康志向 に対応 し、室 戸海洋深 層水濃 縮液(に
がり )を 使っ た 「ミ ネラ ルト マ ト」( 一般 的な
トマトに 比べ、 リコピ ンやビタ ミンな どのミネ
ラル分を多く含む)を生産。
主な販 売先は 、JA を経由し て、四 国内の生
協や外食 企業、 JA農 産物直売 所、高 知市の日
曜市など。
- 74 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(2)法人化の推進
中国・四国地域の農業生産法人数は引き続き増加傾向で推移しており、20
年1月1日現在では前年比114.1%の1,213法人。
ア
農業生産法人の設立状況
【中国・四国地域の農業生産法人は引き続き増加傾向】
20年1月1日現在の中国・四国地域における農業生産法人数は1,213法人で、
前年に比べ14.1%増加しており、前年の12.5%の増加に引き続き大幅な増加とな
っている。
県別の前年からの増加法人数を多い順にみると、山口県31法人、広島県及び愛
媛県29法人となっている。また、各県別の法人数についてみると、広島県249法
人、愛媛県185法人、島根県184法人とこの3県で中国・四国地域全体数の50.9%
を占めている(表Ⅰ−3−6)。
表Ⅰ−3−6
県別農業生産法人数の推移
県 名
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
中国四国計
15年
対前年増減率(%)
全 国
対前年増減率(%)
68
97
82
159
69
71
59
156
57
818
6.9
6,953
6.2
16年
63
112
89
185
72
65
66
164
57
873
6.7
7,383
6.2
17年
70
127
101
197
82
61
70
160
65
933
6.9
7,904
7.1
18年
67
146
100
204
81
62
77
154
54
945
1.3
8,412
6.4
19年
75
164
112
220
99
61
110
156
66
1,063
12.5
9,466
12.5
20年
83
184
115
249
130
70
121
185
76
1,213
14.1
10,519
11.1
資料 :農 林水 産 省経 営局 調 べ
注 :各 年1月 1日現 在の 法 人数
法人形態別にみると、特例有限会社631法人(割合52.0%)、農事組合法人489
法人(同40.3%)、株式会社(特例有限会社を除く)88法人(同7.3%)、合資会
社3法人(同0.2%)、合名会社及び合同会社各1法人(各0.1%)の順となって
いる。
また、業種別にみると、米麦作を主とするものが514法人(割合42.4%)と最
も多く、次いで果樹を主とするもの186法人(同15.3%)、畜産を主とするもの
- 75 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
173法人(同14.3%)の順となっている(表Ⅰ −3 −7 )。
法人総数のうち関連事業をあわせ実施している法人の占める割合は、37.9%
(460法人)であり、農作業の受託、農畜産物の貯蔵・運搬・販売、農畜産物を
原材料とする製造・加工等が主な関連事業となっている( 表Ⅰ− 3− 8 )。
表Ⅰ−3−7
法人形態
業種別法人形態別農業生産法人数(20年1月1日現在)
業種
農事組合法人
株式会社(特例有限会社を除く)
特例有限会社
合名会社
合資会社
合同会社
計
割合(%)
米麦作
果樹
361
20
131
0
1
1
514
42.4
35
14
136
0
1
0
186
15.3
畜産
そ菜
45
8
119
1
0
0
173
14.3
工芸作物 花き・花木 その他
11
30
90
0
0
0
131
10.8
5
0
6
0
0
0
11
0.9
13
4
88
0
0
0
105
8.7
19
12
61
0
1
0
93
7.7
計
489
88
631
1
3
1
1,213
100
割合 (% )
40.3
7.3
52.0
0.1
0.2
0.1
100
資料 :農 林水 産 省経 営局 調 べ
注 : 業 種 区 分は 、 主た る ( 粗収 益 の 50% 以 上 )作 目 によ る 。 いず れ も 50 % に満 た な いも の は
「 その 他 」と する 。
表Ⅰ−3−8
県 名
農業生産法人の事業の実施状況(20年1月1日現在)
「関連事業」を実施
総 数 していな うち「その他
い法人数 事業」の実
「関連事業」を実施している法人数
関連事業の内容
うち「その他
事業」の実
施法人数
施法人数
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
計
83
184
115
249
130
70
121
185
76
1,213
28
111
67
143
73
57
83
137
54
753
3
2
1
0
1
1
1
0
1
10
55
73
48
106
57
13
38
48
22
460
6
4
1
3
2
0
0
0
2
18
製造・加 貯蔵・運 資材の製 農作業の 農村余
工
搬・販売 造
受託
暇活動
35
17
18
34
17
9
10
8
13
161
36
15
10
69
10
9
16
22
10
197
17
3
2
8
2
1
2
1
36
38
44
28
48
35
2
17
25
5
242
0
0
3
5
0
0
0
1
1
10
資料 :農 林水 産 省経 営局 調 べ
イ
農業経営の法人化
【効率的・安定的な農業経営のため一層の法人化を推進】
農業経営の法人化は、効率的・安定的な農業経営に向けた手法として、今後、
より一層の推進を図っていくことが望まれている。
農政局においても、「担い手アクションサポート事業」等の担い手支援施策を
活用して、農業経営の法人化、既存法人のフォローアップ、質的向上等を目指し、
関係機関と連携して支援している。
- 76 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
【法人化の効果等】
任意組織や個別経営体が法人化することにより、経営の安定、経営者としての
意識の高揚、取引上の信用力の向上、制度資金の融資枠の拡大等の効果が期待さ
れている。一方、財務管理が複雑化し、事務処理の負担増や複式簿記の記帳義務
等が発生することから、これらメリット・デメリットを十分に検討した上での取
組が必要である。
《 農業法人に対する支援策 》
農業法人に対しては、「担い手アクションサポート事業」や「地域担い手経営
基盤強化総合対策実験事業」等により、次のような様々な支援を受けることが可
能である。
a
b
法人化志向者に対する啓発普及を図るための説明会の開催。
マーケットリサーチ等による消費者及び食品製造業者等のニーズに関す
る情報提供。
c 商品開発に向けた取組に関する情報提供。
d 地域特産品等の商品の食品産業及び外食産業関係者との結びつけを行う
商談会の開催。
e 農業法人への就農を促進するため、合同就農説明会の開催、農業インタ
ーンシップの実施等。
f 県農業公社(農地保有合理化法人)が農地を農業生産法人に現物出資し、
出資持分を構成員に計画的に分割譲渡する事業の実施。
g 認定農業者の経営改善を支援するための長期・低利の総合資金の融通。
【集落営農組織の組織化・法人化の推進】
中国・四国地域は、中山間地域が大宗を占めており、個別経営体による利用集
積が極めて困難であることから、従来より集落営農の取組が盛んである。
19年3月末現在の特定農業法人(※1)) 数は、広島県が全国第1位で91法人、
島根県が第2位で75法人、中国・四国地 域総数で235法人となっており、全国
(558法人)の42.1%を占めている(表Ⅰ−3−9)。
このようななか、農政局では、経営の継続性及び効率性が確保されるよう、集
落営農等の担い手育成キャラバンや集落営農法人との意見交換会等を開催し、集
落営農の組織化・法人化を強力に推進している。
なお、これら取組については、(3)集落営農の推進で触れることとする。
- 77 -
第 Ⅰ部
表Ⅰ−3−9
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
特定農業法人の設立状況(19年3月末現在)
県 名
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
中国四計
全 国
特 定農業 法人 数(全国に 占め る割合 (%))
14
(2.5)
75 (13.4)
6
(1.1)
91 (16.3)
38
(6.8)
1
(0.2)
4
(0.7)
5
(0.9)
1
(0.2)
235 (42.1)
558 (100.0)
資 料: 中 国四 国農 政局 調 べ
【※1】 特定農業法人とは
担い手不足が見込まれる地域において、
①その地域の農地の過半を集積する相手方として一定の地縁的まとまりを持
つ地域の地権者の合意を得た法人で、
②地権者から農地を引き受けるよう依頼があったときは、これに応じる義務
を負うという特別な性格を有する農業生産法人
(3)集落営農の推進
【集落営農を地域の重要な担い手と位置付け、その積極的な推進を支援】
ア
概況
農政局で行った「集落営農実態調査」に
よれば、20年2月1日現在の中国 ・四国
地域における集落営農の数は2,021を計上
しているもの の、その増加率は必ず しも
高くはない。
また、その 活動状況は、担い手と して
期待される「 集落の営農を一括管理 」を
行っている集落営農は15.8%に 止まり、
一方、過半の集落営農において「農業機械の共同利用」が行われている状況にある。
集落営農には、機械の共同利用によるコスト低減、共同作業による高齢者等の
作業負担の低減、耕作放棄地の抑制等の利点があり、また、地域農業の担い手と
しても重要な役割が期待されているところであり、これらの機能・能力を十全に
発揮するためにも、「集落の営農の一括管理」、「集落営農の法人化」を推進して
いるところである。
- 78 -
第 Ⅰ部
イ
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
特定農業団体
管内の特定農業団体(※2)数は、191団体(19年3月末現在)と、全国(1,323
団体)の14.4%を占めており、18年度の新規認定数は182団体と飛躍的に増加傾向
にある。
特に、山口県(78団体)、香川県(59団体)及び島根県(42団体)において増加傾向
が顕著である(表Ⅰ−3−10)。
表Ⅰ−3−10
県
特定農業団体の設立状況(19年3月末現在)
名
特 定農業 団体 数(全 国に 占め る割合 (%))
う ち18年度新 規認 定数
鳥取県
1
(0.1)
1
島根県
42
(3.2)
39
岡山県
0
(0.0)
0
広島県
4 (0.3)
4
山口県
78
(5.9)
74
徳島県
0
(0.0)
0
香川県
59
(4.5)
59
愛媛県
7
(0.5)
5
高知県
0
(0.0)
0
191 (14.4)
182
1,323(100.0)
1,133
中国四計
全
国
資料 :中 国 四国 農政 局調 べ
【※2】特定農業団体とは
担い手不足が見込まれる地域において、
①その地域の農地面積の2/3以上について農作業を受託する相手方とし
て、一定の地縁的まとまりを持つ地域の地権者の合意を得た任意組織で
あって、農業生産法人となることが確実と見込まれ、
②地権者から農作業を引き受けるよう依頼があったときは、これに応じる
義務を負うという性格を有する任意組織
(農業経営基盤強化促進法第23条第4項)
ウ
集落営農推進に向けた取組
【「平成19年度中国四国集落営農サミット」を開催】
集落営農の取組のポイントを探り、地域農業の担い手として今後とも機能させ
ていくため、19年8月24日に岡山市下において、「中国四国集落営農サミット」
を開催し、集落営農組織の関係者など総数441名の参加を得て、好評を博したと
ころである。
- 79 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
基調講演では、兵庫県立農林水産技術総合セ
ンター専門技術員の森本秀樹氏が、「集落営農
の育成と地域の担い手づくり」と題し、講演を
行ったほか、パネルディスカッションでは、コ
ーディネーターに農山村地域経済研究所長の楠
本雅弘氏、助言者に森本秀樹氏、パネリストに
管内の集落リーダー4名を招いて、活発な意見
森本
秀樹
氏
交換が行われた。
今後とも、農政局においては、こういった大
会を開催することとしており、普及啓発活動や
意見交換活動等を通じて、集落営農の育成、フ
ォローアップ、質的向上等の支援を行っていく
こととしている。
パネ ル ディ スカ ッ ショ ン
基調講演の概要
・集落営農の設立、発展、継続のポイントは、
①なぜ集落営農が必要か、はっきりしていること
②集落を支えるためには、目的意識が高まっていること
③集落営農は、地域の構造改革を求められていること
④「次世代まで継続できるか」の視点を持つこと
・組織化してからは、社会性を高め、収益性・社会性・継続性を兼ね備える
ことが重要
パネルディスカッションの概要
テーマ:
「集落営農の育成に向けて」
「品目横断的経営安定対策の要件を満たした集落営農組織・法人の更なる
ステップアップに向けて」
コーディネーター:
農山村地域経済研究所長 楠本雅弘氏
助言者:
兵庫県立農林水産技術総合センター専門技術員 森本秀樹氏
パネリスト:
(農)船岡下町農場 鎌谷一也氏
(農)とんばら門営農組合 景山道善氏
(株)大朝農産 上長者俊孝氏
(農)久野ファーム 浅野東雄氏
- 80 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(4)担い手が経営する農地面積
18年度末現在の担い手への農地集積率は18.1%で、都府県平均の29.3%
を11.2ポイント下回っている。
ア
担い手への農地集積
【中国・四国管内の担い手への農地集積率は都府県平均を下回っている】
18年度末現在の中国・四国管内における担い手(※3)が経営する農地の集積
率(担い手が経営する農地面積が耕地面積に占める割合)は18.1%で、都府県平
均の29.3%を11.2ポイント下回っている。
また、認定農業者への農地集積率は14.5%で、都府県平均の24.4%を9.9ポイ
ント下回っている(表Ⅰ−3−11)。
中国・四国地域では、引き続き農業者の高齢化や農家戸数の減少が見込まれる
ことから、19年産から導入された水田経営所得安定対策(品目横断的経営安定対
策)の推進にあわせて集落営農の組織化・法人化を促進するとともに、個々の認
定農業者も含めた担い手に対して、農地の面的集積を促進するための支援措置を
活用し、経営規模の拡大を図り、農地の利用集積を進めることが望まれる。
表Ⅰ−3−11
県 名
担い手への農地集積率(18年度末)
①
耕地面積
単 位: ha、 %
②
担い手が経営する農地面積
④=②/①
農地集積率
⑤=③/①
うち
認定農業者
③
うち
認定農業者
鳥取県
35,500
6,2 00
5,3 00
17.5
14 .9
島根県
39,200
7,9 00
5,9 00
20.2
15 .1
岡山県
70,800
10,3 00
9,7 00
14.5
13 .7
広島県
60,000
8,5 00
7,0 00
14.2
11 .7
山口県
51,200
8,9 00
6,6 00
17.4
12 .9
徳島県
32,100
4,7 00
3,8 00
14.6
11 .8
香川県
32,800
7,7 00
3,8 00
23.5
11 .6
愛媛県
56,300
13,3 00
12,0 00
23.6
21 .3
高知県
28,900
6,3 00
4,8 00
21.8
16 .6
中国四国
都府県
406,800
73,7 00
58,9 00
18.1
14 .5
3,506,000
1,0 26,1 00
8 55,9 00
29.3
24 .4
資料 :
「 耕 地 及び 作付 面積 統 計」、「 集落 営 農実 態調 査」、農 林水 産 省経 営局 調べ
注 :四 捨五 入 の関 係で 、 計と 内訳 が一 致 しな いも のが あ る。
【※3】担い手
ここでいう「担い手」とは、「認定農業者(特定農業法人含む)」、「基本構
想水準到達農業者」、「特定農業団体」、「集落内の営農を一括管理・運営し
ている集落営農」である。
- 81 -
第 Ⅰ部
イ
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
農地保有合理化事業の実施状況
【売買事業は買入・売渡共に減少し、貸借事業は借入・貸付共に増加】
農地保有合理化事業は、農地保有合理化法人が貸し手農家(規模縮小農家等)
の農地を買入れ又は借入れ、当該法人の中間保有・再配分機能を活かしてほ場の
分散保有を解消しつつ規模拡大・農地の集団化等を図ろうとする担い手農家に売
渡し又は貸付ける事業である。
18年度における管内の農地保有合理化事業のうち売買事業は、買入面積は72ha
で、前年度に比べて23haの減少となり、売渡面積は69haで、前年度に比べて65ha
の大幅な減少となっている(図Ⅰ−3−2、表Ⅰ−3−12)。これは、農産物価
格や農地価格の下落傾向など農業情勢が厳しいことに加え、農地保有合理化法人
が、農地価格の下落による売買差損リスクを回避する動きをみせているためであ
り、今後も減少していくものと思われる。
また、貸借事業による借入面積は1,152ha(前年度比137%)、貸付面積1,192ha
(同144%)となっている(図Ⅰ−3−2、表Ⅰ−3−13)。
農地保有合理化事業については、19年度から担い手のニーズに即し集団化・団
地化した形で農地の利用集積(面的集積)ができるよう貸借を中心とした取組に
重点化するとともに、農地保有の合理化のための資金を統合・メニュー化(担い
支援農地保有合理化事業)し、地域の視点に立った活動が展開できるよう措置す
ることにより、担い手に対する農地の面的集積を一層推進することとしている。
図Ⅰ−3−2
農地保有合理化事業実績(18年度末)
(h a)
10 00
8 00
6 00
4 00
2 00
0
合計
うち 県農業 公社
うち 市町村 公社等
売渡し
貸付け
69 .2
1 19 2.4
69
0 .2
68 2 .6
50 9 .8
資料 : 中国 四国 農政 局 調べ
注 : 四捨 五入 の関 係 で、 計と 内 訳が 一致 しな い もの があ る。
- 82 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(参考)
表Ⅰ−3−12
農地保有合理化事業(売買)
17年度
単 位 :件 、ha
18年度
区 分
買 入
売 渡
買 入
売 渡
件 数
面 積
件 数
面 積
件 数
面 積
件 数
面 積
県公社
276
95
305
127
274
72
241
69
市町村公社等
3
7
1
0
中四局計
276
95
308
134
274
72
242
69
都府県計
3,777
1,730
3,711
1,916
3,825
1,996
3,557
1,838
資料 :中 国四 国 農政 局調 べ
注 :四 捨五 入 の関 係で 、 計と 内訳 が一 致 しな いも のが あ る。
表Ⅰ−3−13
農地保有合理化事業(貸借)
17年度
単 位 : 件 、h a
18年度
区 分
借 入
貸 付
借 入
貸 付
件 数
面 積
件 数
面 積
件 数
面 積
件 数
面 積
県公社
649
363
307
365
1,348
680
265
683
市町村公社等
1,332
480
721
461
1,361
471
1,112
510
中四局計
1,981
842
1,028
827
2,709
1,152
1,377
1,192
都府県計
27,129
11,061 23,123
11,146 41,632
14,968 33,614
15,117
資料 :中 国四 国 農政 局調 べ
注 :四 捨五 入 の関 係で 、 計と 内訳 が一 致 しな いも のが あ る。
(5)経営構造対策の推進
経営構造対策は、地域の合意形成を前提として、地域の農業構造を変革し
ていくために、土地基盤、生産・流通・情報・都市農村交流等の施設を総合
的に整備し、もって、地域の担い手となる経営体の育成・確保を図ることを
目的とする。
【11地区で事業を実施】
19年度は、徳島県(1地区)、香川県(1地区)、愛媛県(1地区)、高知県(1
地区)の4地区が新規に認定され、継続地区と併せて、11地区での事業実施とな
っている。また、主な整備内容は、農畜産物集出荷貯蔵施設、複合経営促進施設
等となっている。
- 83 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
地 区 名:徳島県小松島市全域地区(17年度認定)
事業主体:東とくしま農業協同組合
事業内容:産地形成促進施設(直売施設)1棟
926.5㎡
事業費等:143,301千円(国費68,241千円)
小松島市は、水稲を中心に、きゅうり、いち
ご、トマト等の栽培が行われており、近年は、
水害に強く転作作物として有望なオクラや、ほ
場整備水田を中心にした水稲裏作の冬春ブロッ
コリー、菜の花等の栽培が拡大している。しか
しながら、小規模な稲作農家が多く、高齢化や
売場風景
兼業化の進展による担い手不足や農地の荒廃が
懸念されており、認定農業者の育成、担い手へ
の農地の利用集積が地域の課題となっていた。
このため、東とくしま農業協同組合が事業実
施主体となって、消費者に地元で採れた新鮮で
安心な農産物を提供する産地形成促進施設(農
産物直売所)「みはらしの丘
あいさい広場」
施設の外観
を17年度に経営構造対策で整備し、地元農産物の販売拡大による認定農業者
の育成、担い手への農地利用集積の促進に取り組んでいる。また、この施設
の整備により、新たに12名の地域雇用が創出されている。
○
事業効果(目標達成状況)
項
目
実施 前 (16 年 度)
目 標 (21 年度 )
現 状 (1 8年 度)
増
減
50人
75人
81人
31人
担 い手 へ の農 地 利 用集 積
373.1ha
405.6ha
390.9ha
17.8ha
直 売施 設 販売 額 生 産履 歴
0円
297,631千円
496,230千 円
496,230千 円
開 示体 制 の整 備
0人
250人
225人
225人
認 定農 業 者の 育 成
資 料 : 中 国四 国 農 政 局調 べ
注: 「生産履歴開示体制の整備」 とは、直売施設への出品者に対して、生産基準を設定し、
生 産 管 理 ・ 記 帳 を 行 い 、 記帳 内 容 に 基 づ く 情 報 を 消 費 者の 求 め に 応 じ て 店 頭 で 開 示 する 体
制 を整 備 す る 取組
- 84 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(6)企業等の農業参入の促進
従来の農業生産法人制度に加え、特定法人貸付事業による企業等の農業参入
が進んでいる。
この事業を利用し、69の法人が遊休農地を中心に200.9haの農地を借受け、
農業に参入している。
【企業等の農業参入は着実に増加】
近年、農業生産法人制度や特定法人貸付事業(農業生産法人以外の法人に農地
の権利取得を認める、いわゆる「リース特区」の全国展開)を活用して農業経営
に参入する法人が増加している。
「リース特区」は、17年9月1日、「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正
する法律」により、特定法人貸付事業として全国展開されたところであるが、20
年3月1日現在、69法人が遊休農地を中心に200.9haの農地を借受け農業経営に
参入している(表Ⅰ−3−14、表Ⅰ−3−15、表Ⅰ−3−16)。
表Ⅰ−3−14
特定法人の農業参入状況
左のうち遊休農地及び
市町村数
参入特定法人数
借受農地面積
遊休化するおそれのあ
る農地
38市町村
69法人
200.9ha
135.9ha
資 料: 中国 四 国農 政局 調 べ
表Ⅰ−3−15
特定法人の組織形態別、業種別内訳
組織形態
参入法人数
株式会社
業 種
特例有限会社 NPO等 建設業 食品関連業 その他
(特例有限会社を除く)
69
38
26
5
31
19
19
資 料: 中国 四 国農 政局 調 べ
表Ⅰ−3−16 特定法人の作付作物
参入法人数 米麦
野菜
果樹
69
11
21
21
資 料: 中国 四 国農 政局 調 べ
- 85 -
畜産
3
花き・花木 工芸作物
2
2
複合
9
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
食品製造業から農業参入している事例(株式会社ヤマヒサ)
〈 町の 農業再 建の ために 企業 として オリ ーブ栽 培〉
香川 県 小豆 島 町で 醤 油製 造 業を 営 む株 式 会社
ヤマヒサの社長は、個人としてオリーブを栽
培していた経験から、耕作放棄地の増加が深
刻化していた同町の農業再建は、個人経営で
は限界と感じていた。そこで、構造改革特区
の申請について同町(合併前の旧内海町)に
働 き か け 、 15年 4 月 21 日 に 「 小豆 島 ・ 内 海 町
オリ ーブ 園
オリーブ特区」が認定されたのを契機に企業
と してオ リー ブ栽培 を始め た。
〈 オリ ーブの 葉は 自社工 場に てオリ ーブ 茶に加 工〉
同 社は 、 15年7 月 に 76アー ル を皮 切 りに 、 20年3 月 まで に 計233ア ー ルの 農 地を 同
町 から 借 り 受け 、 オリ ー ブの 木 6,000本( 果 実用 1,400本 と茶 用4,600本 ) を植 栽 して
い る。 特 区に より 問題 なく 農 業参 入で きた が 、当 初は 農業 の 経験 のな い従 業員 ば かり
の ため栽 培に とまど った。
現在 は、 233アー ルの 農地 の うち 、173アー ルか ら オリ ーブ の果 実、 また 60アー ルか
ら はオ リー ブ 茶用 の葉 を収 穫し て おり 、19年 には 実6.3トン 、葉 5.5ト ンの 収 穫が あっ
た 。実 の ほと んど をオ イル 用 とし て加 工業 者 へ製 造を 委託 し 、残 りを 塩蔵 用「 オ リー
ブ の新 漬 」と して 自社 で加 工 し販 売し てい る 。葉 は、 4月 か ら茶 の摘 採機 で年 4 ∼5
回 刈り 取り 、自 社 工場 にて オリ ーブ 茶の 「テ ィ ーパ ック 」、「 抹茶 」を 製造 ・ 販売 して
い るほ か 、製 造委 託し て「 ペ ット ボト ル飲 料 」を 販売 して い る。 同町 の問 屋に 4 割、
島 外の 問 屋に 4割 を販 売し 、 他に イン ター ネ ット 等に より 個 人消 費者 に直 接販 売 もし
て いる。
〈 マス メディ アに 取り上 げら れ、町 、会 社のイ メージ がア ップ〉
同社 の農 業参 入に より 233アー ルの 耕作 放棄 地が 解
消 さ れ ると と も に 、テ レ ビ 、新 聞 、 雑 誌等 で 取 り 上
げ ら れ たこ と に よ り、 全 国 的に 町 、 会 社と も に イ メ
ー ジ ア ップ が 図 ら れた 。 ま た、 売 上 げ も順 調 に 伸 び
て いる。
〈 新た なオリ ーブ 製品を 開発 したい 〉
同町 が20年に オリ ーブ 植樹 100周年 を迎 える に当 た
り 、 オ リー ブ の 増 産目 標 を 掲げ て い る こと か ら 、 同
オ リ ーブ 茶畑
社 も新 たな オ リー ブ商 品を 開発 し 、5 年後 には 、栽 培面 積 を500アー ル、 収量 を果 実3
0トン 、葉10トン 、農業 売上 高を3 倍程 度に増 やし たいと 考え ている 。
- 86 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(7)新規就農者の育成確保
【多様な支援策により新規就農者は増加傾向】
ア
背景
食料を安定的に供給するためには、農業の担い手の確保が不可欠であるが、管
内は中山間地域が多く、担い手の減少と高齢化が進行している。
他方、雇用情勢が極めて厳しい状況のもとで、農林業で働いてみようという意
欲を持つ失業者等を支援する取組が行われている。
こうした状況下で、農業内外から新規就農に対して意欲ある人材を育成・確保
し、地域の担い手となるよう支援していく必要がある。
イ
現状
(ア)管内の状況
管内の新規就農者は、7年までは300人台で推移していたが、10年以降おおむね
500人台で推移している(図Ⅰ−3−3)。
内訳をみると、新規学卒就農者が100人台、Uターン就農者が300人台、新規参
入者(農業外からの就農者)が90人台で推移している。
依然としてUターン就農者の割合が多いなか、近年、わずかずつではあるが新
規参入者も増加傾向にある。
営農部門別に見ると、18年は野菜(全体の49.5%)が最も多く、次いで果樹(同
22.0%)、水稲(同11.3%)の順となっており、10年と比較すると水稲部門が花き
及び畜産部門を抜き5位から3位になっている(図Ⅰ−3−4)。
図Ⅰ−3−3
6 00
5 00
4 00
3 00
2 00
1 00
0
新規学 卒
Uタ ーン
新規参 入
全体
新規就農者数の推移
H3
H4
H5
H6
H7
H8
H9
16 2
20 1
1 22
1 87
11 4
20 8
1 58
2 10
133
158
1 69
2 14
152
224
H 10 H 11 H12 H13 H14
11 9
32 7
12 4
38 7
14 2
35 5
92
2 90
112
342
H15
1 12
3 59
H 16 H 17 H 18
85
392
13 2
36 3
98
39 7
15
37 8
18
3 27
36
35 8
25
3 93
36
327
77
4 60
91
467
79
52 5
92
60 3
88
58 5
1 08
4 90
89
543
94
5 65
91
568
96
59 1
10 5
60 0
資料 :各 県独 自調 査を 中国 四国 農政 局で 集計
注 :1) ① 「 新規 学卒 者」 は 、各 年3 月に 中学 、高 校、 短大 、大 学、 各種 学校 、職 業訓 練校 、農 業大 学校 を卒 業
した 者、 及び 各年 3月 以前 に卒 業し 1年 以上 先進 地で 研修 し就 農し た者 も含 める 。
② 「 Uタ ーン 就農 者 」は 、農 家出 身者 であ るが 、会 社勤 務等 をや めて 出身 地に 帰り 就農 した 者ま たは 農
家出 身者 であ るが 、 在宅 のま ま会 社勤 務な ど他 産業 に就 職し 、そ の後 、会 社勤 務等 をや めて 在宅 のま ま
就農 した 者と する 。
③ 「 新規 参入 者」 は 、非 農家 出身 で会 社勤 務等 をや めて 、出 身県 及び 出身 県以 外の 地域 で農 業に 新規 参
入し た者 とし 、分 家、 養子 、婿 入、 嫁入 によ るも のは 含め ない 。
ま た、 出身 が農 家 であ って も、 他産 業に 従事 し、 自ら 農地 の取 得等 を行 い新 たに 農業 経営 を開 始し た
につ いて は「 新規 参入 者」 に含 める 。
2) 調 査対 象は 、18 年1 月1 日か ら12 月31 日ま での 間に 就農 し、 現在 も営 農を 継続 して いる 者。
- 87 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−4
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
新規就農者の部門別就農割合
49.5 %
平成10年
40.3 %
29.1 %
6.3%
11.3%
水稲
平成18年
22.0 %
8.4 % 8.0 % 11.2 % 6.7 %
1.4 % 0.8 % 3.3% 1.7 %
野菜
果樹
畜産
花き
工芸
その他
資料 :各 県独 自 調査 を中 国 四国 農政 局で 集 計
(イ)農業研修教育施設(県立農業大学校)の状況
各県に設置されている農業研修教育施設(農業技術、経営管理等の習得のため
の研修教育施設)である農業大学校については、定員に対する入校者の割合は、
18年度で64.0%(17年度68.8%)と、定員割れの状況となっている。
また、農業大学校卒業後すぐに就農する者の割合は23.1%にとどまっており、
就職する者の割合が57.0%となっている(図Ⅰ−3−5)。
そのうち農業関連産業に就職する者の割合が38.0%と最も多く、農協等の農業
団体が18.4%、公務員が4.9%等となっているが、他産業に従事する者も35.0%
と多くなっている(図Ⅰ−3−6)。
図Ⅰ−3−5
農業大学校卒業生進路
農業専従
者数,
23.1%
図Ⅰ−3−6
継続研修
人数, 3.1%
その他,
0.6%
就職者数,
57.0%
その他,
10.5%
農協,
11.7 %
大学校臨
時職員,
3 .1%
公務員,
4.9%
進学人数,
4.2%
就職する者の就職先
農業団体,
6.7%
農業関連
産業,
38.0%
他産業,
35.0%
資料 : 全国 農業 大学 校 協議 会
(ウ)新規就農の推進にあたっての課題
19年7月9日に農政局において、青年農業者と農政局との情報交換会を開催し、
経営の状況や作物の販路戦略等今後の農業経営の考え方について話し合った。
一方、9月7日には、中国四国指導農業士連絡協議会との懇談会を開催し、「中
国四国地域の担い手の現状」及び「21世紀新農政2007」の情報提供の後、
「地域の担い手育成・確保における指導農業士の役割について」をテーマに、意
見交換を行った。懇談会では、各地域及び個々の農業士が行っている担い手育成
- 88 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
・確保の取組や問題点について話し合った。
今後も、新規就農相談センターと連携して就農促進啓発活動の実施や新規就農
者の経営管理能力・技術力の向上による経営の早期安定化に取り組むとともに、
団塊の世代も含めたUターン、Iターン等の多様化した就農ルートに対応した、
就農前後の技術・経営・研修等のフォローアップを行う必要がある。
(エ)新規就農者対策
【雇用形態での就農に対する支援】
雇用形態での就農を推進するため、各県新規就農相談センターにおいて、農業
法人等への就農を希望する者に対する相談業務や無料職業紹介を行っている。
【新規就農者に対する支援】
多様なルートによる就農を促進するため、就農の際に必要となる農業技術の習
得、営農資金の手当、農地の確保といった諸課題を解決することが求められてい
るところであり、普及指導センタ−をはじめ各機関において、各種融資、制度等
のPR、就農前後の技術指導等が行われた。
管内各県においても、引き続き研修費の助成や農地・機械・施設のリ−ス等さま
ざまな就農支援対策を行った。
今後も、就農希望者のニーズにあった支援施策を関係機関と連携し実施すると
ともに、農政局のホームページ上で情報が得られるよう内容を随時拡充していく。
(http://www.maff.go.jp/chushi/ninaite/syunou/seido.html)
(8)男女共同参画の推進
農山漁村における男女共同参画は、社会参画・経営参画等の面からも着実
に進んでいるが、地域方針等の決定の場に参画する女性は依然少ないため、
更に推進が必要。
ア
農業・農村における女性の現状
【農業就業人口の過半は女性】
中国・四国地域では農業就業人口の54.7%(全国では53.3%)を女性が占めて
おり、農業生産において重要な役割を担っている(図Ⅰ−3−7)。
- 89 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−7
800
700
600
500
400
300
200
100
0
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
農業就業人口における女性の割合の推移(販売農家)
(千人)
62
60.8
59.0
(%)
60
58.7
57.3
58
425
357
56.9
55.8
317
274
251
2 40
2 5754.7
53.3
213
平成2年
7年
12年
17年
56
54
52
50
中国四国地域の男性の数
中 国四国地域の女性の数
中国四国地域の女性の割合
全 国の女性の割合
資 料: 農林 水 産省 「農 林業 セ ンサ ス」
【地域方針等の決定の場に参画する女性は依然少ない】
農業委員会、農協の役員等に占める女性の割合は、年々増加傾向にあるものの、
低い水準にとどまっており、地域方針等の決定の場に参画する女性は依然少ない。
その要因としては、①農村社会における伝統的考え方のもとで、男性が一家を代
表しているとの意識が強い、②女性へ家事・育児・介護等の負担がかかり、社会
参画に対するゆとりを持ち得ていないなどが考えられる(表Ⅰ−3−17)。
表Ⅰ−3−17
農村における女性の社会参画の状況
単位 :人、%
区 分
農業委員
うち女性(割合)
農協役員
うち女性(割合)
中国・四国
5,406
171(3.2)
3,006
82(2.7)
全 国
39,997
1,682(4.2)
22,799
438(1.9)
資料 : 農業 委 員 :農 業 委員 及 び 都道 府 県 農業 会 議実 態 調 査結 果 (平成 18年 10月1 日 )
:農 協役 員 :
「 総 合農 協 統計 表」 (17年 )
【共同経営者である夫婦の共同申請による認定農業者の推進】
認定農業者全体に占める女性の割合は、中国・四国地域で3.8%(全国2.3%)
となっており、経営面での参画は依然低調である。15年6月に発出された「認定
農業者のためのガイドラインについて」によって、これまで原則として1戸に1
人しか認められていなかった認定農業者が、共同経営者である夫婦や後継者の共
同名義で申請できるようになっている。
共同申請の際には家族経営協定等を締結し、経営の意志決定に参画することや
収益が配分されていること等、一定の要件を充たす必要があるが、農業者年金の
保険料助成の支援策を受けることができる等のメリットが期待できるため、今後
- 90 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
は、こうした情報の提供等を進めていく必要がある(図Ⅰ−3−8)。
図Ⅰ−3−8
(人)
19,500
18,500
17,500
16,500
15,500
14,500
13,500
12,500
認定農業者に占める女性の割合の推移
(%)
755
551
3.8
3.8
1.9
596
2.0
14,029
3.6
3.3
601
528
1.9
15,611
15,035
3.8
2.3
2.1
18,981
15,956
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
平成15年
16年
17年
中国四国地域の男性の数
中国四国地域の女性の割合
18年
19年
中国四国地域の女性の数
全国の女性の割合
資 料 :農 林水 産省 経 営局 経営 政 策課 調べ
【中国・四国地域の女性起業活動は、「食品加工」、「流通・販売」の割合が高い】
地域農産物を活用した特産加工品づくり、朝市・直売所等での販売、グリーン
・ツーリズム等の活動に取り組んでいる中国・四国地域の農村女性による起業数
は、18年度では1,299件となっている。起業の活動内容は多岐にわたっており、
中国・四国地域では「食品加工」「流通・販売」の割合が高くなっている。なお、
法人化や規模拡大の動きはあるものの、各経営単位ごとの年間販売額では300万円
未満が全体の62%となっており、経営規模は零細である(図Ⅰ−3−9、表Ⅰ−
3−18)。
図Ⅰ−3−9
農村女性による起業数の推移
(中国・四国地域)
件
1,4 00
0
単位:件、%
グループ経営
個人経営
1,2 00
1,0 00
8 00
6 00
4 00
2 00
表Ⅰ−3−18
農村女性による起業活動状況
956
960
991
1,012
1,011
997
1,015
885
138
164
182
198
218
257
260
284
H12.2 H13.1 H14.1 H15.1 H16.1 H17.1
H18.1 H19.1
内 容
食品加工
流通・販売
農業生産
都市との交流
食品以外の加工
サービス事業
その他
女性起業数(実 数)
中国・四国
976(75.1)
602(46.3)
175(13.5)
156(12.0)
70( 5.4)
15( 1.2)
10( 0.8)
1,299
全 国
7,087(75.0)
4,146(43.9)
1,553(16.4)
1,039(11.0)
342( 3.6)
56( 0.6)
60( 0.6)
9,444
資料 :農 林水 産省 経 営局 普及 ・女 性課 「農 村 女性 によ る起 業活 動 実態 調査」(19年1 月 調査 )
注 :起 業活 動状 況 につ いて は複 数回 答 であ り、 割合 は実 数に 対 する もの であ る。
- 91 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
【家族経営協定への取組】
家族経営協定は、家族一人ひとりの役割・責任を明確にし、それぞれの意欲と
能力が十分発揮できるよう話合いにより決定されるものであり、女性が経営等に
参加しやすい環境づくりや後継者の育成等に有効であるとともに、農業を魅力あ
る産業にするために重要な役割を果たしている。
協定の内容は、農業経営面に関する取決めが多いが、最近では生活面の役割分
担、労働衛生・健康管理等多岐にわたってきており、労働衛生・健康管理、収益
配分(日給・月給以外)については、前年度の調査に比べて伸びてきている(図
Ⅰ−3−10、表Ⅰ−3−19)。
図Ⅰ−3−10
家族経営協定締結農家数の推移
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
【中国・四国地域】
件
3,000
2,500
2,170
2,369
2,547
1,837
2,000
1,479
1,500
1,000
500 319
0
表Ⅰ−3−19
家族経営協定の取り決め内容
495
743
907
1,122
H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19
内 容
農業経営の方針決定
労働時間・休日
農業面の役割分担
労働報酬(日給・月給)
生活面の役割分担
労働衛生・健康管理
収益配分(日給・月給以外)
経営移譲
社会・地域活動への参加
その他
総協定締結数(実数)
回答数(%)
92.2
91.6
82.5
69.6
54.0
52.8
50.4
39.0
28.6
74.0
2,547
資料 :農 林水 産省 経 営局 普及 ・女 性課 「家 族 経営 協定 実態 調査 」
( 8年∼ 13年 は8月 1日 調 査、 14年 以降 は3月 31日 調査 )
注 :表 Ⅰ-3-19に つい ては 、19年 3月 31日 調査 。 複数 回答 であ り、 回 答数 は実 数計 に対 す るも の。
イ
男女共同参画の推進
【男女共同参画推進本部の取組】
農政局では、「中国四国農政局男女共同参画推進本部」を設置(13年10月)し、
関係各方面と連携のもとに、農山漁村における女性の参画の現状を踏まえて、男
女共同参画の推進に取り組んでいる。
19年度は、その一環として全国の生活研究グループ員が集い、地産地消・食育
・集落環境づくり等の活動について研修するとともに、地域農業への積極的な参
画と地域社会貢献への活動の展開を図ることを目的に、19年7月26.27日、全国
生活研究グループ連絡協議会全国会議愛媛大会「えひめマドンナフォーラム」を
- 92 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
開催したと ころ、全国生活 研究
グループ員 、行政担当者等 を中
心に約1,100名の参加があった。
今後も、 農山漁村におけ る女
性の経営・ 社会参画に対す る各
種方面への 意識啓発、情報 交換
会、研修会 等の開催を通じ て、
女性農業者 の参画意識の向 上等
に向けた、 様々な取組を強 化し
ていく必要がある。
えひ めマ ドン ナ フォ ーラ ムの 様 子( 愛媛 県 松山 市内 )
(9)高齢者・障害者が活動できる環境づくり
ア
高齢者
中国・四国地域における農山漁村の高齢者の割合は、全国に比べて高く、
また、都市部と比べても高くなっており、高齢者の持つ経験、知識及び技術
の活用が必要。
【中国・四国地域における農山漁村高齢者の割合は全国に比べ高い】
中国・四国地域における基幹的農業従事者のうち、65歳以上の高齢者が占める
割合は約7割と、全国約6割を大きく上回っている(表Ⅰ−3−20)。
表Ⅰ−3−20
農業人口に占める高齢者の割合の推移(販売農家)
単位: 千人、%
区 分
農家人口
うち65歳以上(割合)
農業就業人口
うち65歳以上(割合)
基幹的農業従事者数
うち65歳以上(割合)
中国・四国
12年
17年
1,456
458 (31. 5)
557
337 (60. 4)
330
204 (61. 7)
1,145
404 (35.2)
470
306 (65.2)
305
204 (67.0)
全 国
12年
10,467
2,936 (28.0)
3,891
2,058 (52.9)
2,400
1,228 (51.2)
17年
8,370
2,646 (31.6)
3,353
1,951 (58.2)
2,241
1,287 (57.4)
資料 :農 林水 産 省「 農林 業 セン サス 」
注 :こ こで の 高齢 者と は 65歳 以上 の者 の こと。
また、農村の高齢化は都市に比べて進行しており、中国・四国地域の高齢化は、
全域・農村部ともに全国より大幅に進行している(表Ⅰ−3−21)。
- 93 -
第 Ⅰ部
表Ⅰ−3−21
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
都市と農村における高齢者の割合
単 位 :%
中国・四国全域
全国全域
中国・四国農村部
全国農村部
12年
21.0
17.3
31.5
28.0
17年
22.9
20.1
35.2
31.6
資料 :全 域デ ー タは 「国 勢 調査 」,農 村部 デー タ は農 林水 産省 「 農林 業セ ン サス 」
【農山漁村高齢者の役割と経験や技術の活用】
農村における高齢者は、地域の農業生産に関するリーダーとしての活動や、技
術・経験を活かした農業生産のアドバイス、集落内のとりまとめ、集落の恒例行
事の計画・推進及び地域の農作業の一部請負(調整作業等)等に関して、重要な
役割を担っている(表Ⅰ−3−22)。
また、今後は農業従事者の大幅な減少が見込まれる中で、高齢者の持つ経験や
技能を担い手、新規就農者等の支援・育成に積極的に活用していくための取組の
推進を事業等を通じて積極的に行っていくこととしている。
表Ⅰ−3−22
農山漁村高齢者の活動内容別グループ数
活動内容
主に生産・加工・販売活動
主に労働力補完活動
主に農作業体験指導活動
その他
総グループ数
中国・四国(割合)
1,083 ( 84.4 )
25 (
1.9 )
14 (
1.1 )
162 ( 12.6 )
1,284 ( 100.0 )
単 位 : グ ルー プ 、 %
全 国(割合)
4,674 ( 77.1
119 (
2.0
99 (
1.6
1,174 ( 19.3
6,066 ( 100.0
)
)
)
)
)
資料 :農 林水 産 省経 営局 普 及・ 女性 課 「 農山 漁 村高 齢者 活動 グ ルー プ数 調 査」( 19年 3月 調 査)
注 : 農 山漁 村高 齢 者グ ルー プ とは 、 農林 漁業 者 3人 以上 か ら構 成さ れ 、か つリ ー ダー 及び グ ル
ープ の 半数 以上 の もの が60歳 以上 で構 成 され て おり 、上 記 のよ うな 活 動を して い るグ ルー プ 等
イ
障害者
障害者自立支援法が制定され、障害者の就労による社会参画が促進される
こととなったが、農業分野ではこれまで障害者雇用に対する関心は低い状況
にある。一方、農業が提供する自然環境や癒しの効果は大きな福祉の力を持
っており、障害者福祉の観点から大きな関心が持たれている。福祉分野での
障害者の雇用促進と農業分野での雇用労働の確保を図るという、互いの課題
の解決を図ることが求められている。
【シンポジウム「クローズアップ農の福祉力」開催】
農政局では、農業分野でこれまで就労機会の少なかった障害者の雇用機会の拡
- 94 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
大という観点から、関係者の理解を深
めるために、19年11月27日岡山市内で
シンポジウム「クローズアップ農の福
祉力」を開催した。
農業、福祉分野及び各行政機関の関
係者約200名が参加し、農業と福祉の
連携を広げることが必要であるという
シ ンポ ジウ ム の様 子( 岡 山市 内)
認識が共有された。
しかしながら、実際に障害者雇用に結びつけるには、福祉と農業の両分野の連
携が重要との意見が強く出されたところであり、農政局としては、両分野の連携
を支援するため、局内推進チームの設置など推進体制を強化するとともに、モデ
ル的な支援体制の検討、さらには、関係者による意見交換会の実施等に取り組ん
でいくこととしている。
5.主要農産物別の現状と取組
(1)土地利用型農作物
ア
水稲
(ア)生産状況
a
作付面積
【コシヒカリが全体の約4割を占め、6県で1位】
19年産水稲の作付面積(子実用)は17万7,700haで、前年産に比べて2,400ha減
少した。品種別には、コシヒカリ7万3,200ha(全体の41.2%)、ヒノヒカリ3万
7,300ha(同21.0%)、ひとめぼれ1万1,200ha(同6.3%)、あきたこまち1万
1,000ha(同6.2%)が水稲うるちの作付面積の74.7%を占めている(表Ⅰ−3−
23)。
表Ⅰ−3−23 19年産水稲の品種別面積
コ シ ヒ カ リ
ヒ ノ ヒ カ リ
ひ と め ぼ れ
あ きた こま ち
ア ケ ボ
キ ヌ ヒ カ
き ぬ む す
は え ぬ
総 計
ノ
リ
め
き
面積(ha)
73,200
37,300
11,200
11,000
5,710
4,010
2,010
1,040
177,700
資 料: 中 国 四国 農 政 局統 計 部「 平 成19年 産 水稲 の 品種
別収 穫量 」
注 : 農 林 水 産省 「 作 物 統 計 」 よ り、 「1 9年 産水 稲
の 全 国 品種 別 及 び 主 要 産 地 品 種 別 収 穫量 」の 数
値の 足し 上 げに より 算 出し た。
- 95 -
第 Ⅰ部
b
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
作柄
【日照不足等の影響により、作況指数は96】
中国地域の作況指数は、96となった。これは、登熟はおおむね平年並みであっ
たものの、全もみ数が6月下旬から7月中旬の日照不足等の影響により少ないな
いしやや少ないとなったためである。
四国地域の作況指数は、99となった。これは、早期栽培で、7月上旬から中旬
の日照不足及び台風等の影響が大きかったこと、早期栽培以外で、登熟は平年並
みないしやや良となったものの、日照不足の影響により全もみ数がやや少ないと
なった県があったことなどのためである。
c
被害
【日照不足や高温障害など、気象被害が顕著】
被害量は10万700トンで、被害率は平年を2.7ポイント上回る11.2%となった。
被害を種類別にみると、気象被害の被害率は、日照不足や高温障害(高夜温)
が多かったことから、全体では平年を2.8ポイント上回る6.5%となった。
病害の被害率は、紋枯病は平年並みであったものの、いもち病が少なかったこ
とから、全体では平年を0.9ポイント下回る2.3%となった。
虫害の被害率は、ニカメイチュウ及びウンカは平年並みであったものの、コブ
ノメイガによる葉の食害が多かったことから、全体では平年を0.7ポイント上回
る2.0%となった。
d
収穫量
【前年産対比1万500トン、1%の増加】
19年産水稲の収穫量は87万3,600トンで、前年産に比べて1万500トン(前年産
対比1%)増加した。これは、作付面積は前年産に比べて減少したものの、10ア
ール当たり収量が前年産を上回ったためである。地域別では、中国地域は59万
2,200トンで前年産に比べて100トン(同0.02%)減少したものの、四国地域は28
万1,400トンで前年産に比べて1万600トン(同4%)増加した。
e
10アール当たり収量
【10アール当たり収量は前年を上回る】
10アール当たり収量は前年を13kg上回る492kgとなった。地域別にみると、中
国地域が498kg(対前年差8kg増)、四国地域は479kg(同22kg増)となった(表
Ⅰ−3−24)。
面積規模別10アール当たり収量をみると、3.0∼5.0haが484kgと各区分(7区
分)のうち最も多く、5.0∼10.0haが最も少ない364kgであった(表Ⅰ−3−25)。
- 96 -
第 Ⅰ部
表Ⅰ−3−24
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
中国計
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
四国計
中国四国計
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
19年産水稲の県別収穫量及び作柄
作付面積
(ha)
14,100
19,900
34,200
26,700
24,000
119,000
14,000
15,000
16,000
13,800
58,700
177,700
10a当たり
収量(kg)
475
484
509
519
484
498
475
494
492
450
479
492
収穫量
(t)
67,000
96,300
174,100
138,600
116,200
592,200
66,500
74,100
78,700
62,100
281,400
873,600
作況指数
91
95
97
99
96
96
100
99
99
98
99
97
資料 :中 国四 国 農政 局統 計 部「 平成 19年 産 水稲 の収 穫量 」
表Ⅰ−3−25
区分
10a当たり収量
(kg/10a)
水田作作付延べ面積規模別にみた水稲の収量
0.5ha未満
0.5∼1.0
468
468
1.0∼2.0
2.0∼3.0
464
455
3.0∼5.0 5.0∼10.0 10.0ha以上
484
364
455
資料 : 中 国四 国 農 政 局統 計 部 「平 成 19年 農業 経 営 統計 調 査 営農 類 型 別経 営 統 計( 水 田 作経 営)」
f
品質
【品質は全国に比べ低水準】
水稲うるち玄米の1等比率は、50.8%と全国79.4%に比べ低水準となっている。
2等以下に格付けされた主な理由は、充実不足、心白・腹白粒の混入によるもの
である(表Ⅰ−3−26)。
表Ⅰ−3−26
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
中国四国
全 国
19年産水稲うるち玄米の等級別検査状況
1等
67.5
68.6
54.5
81.1
41.3
54.2
6.9
38.9
5.6
50.8
79.4
等級比率(%)
2等
3等
29.3
0.9
28.4
2.5
43.0
1.9
17.4
1.3
52.9
5.1
43.4
1.9
92.1
1.1
55.5
2.8
53.9
31.5
43.7
4.2
16.8
2.1
規格外
2.4
0.5
0.6
0.3
0.8
0.4
0.0
2.9
9.1
1.3
1.7
資料 :農 林水 産 省総 合食 料 局食 糧部「 平成 19年産 米の 検査 結 果(速 報値 )( 20年 3月 末日 現 在)」
- 97 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(イ)生産費
【全算入生産費は4.9%減少】
18年産米の10アール当たり資本利子・地代全額算入生産費(以下「10アール当
たり全算入生産費」)は、17万5,478円と、前年産に比べて4.9%減少した。10ア
ール当たり全算入生産費が減少したのは、作業委託が増加したことに伴う労働時
間の減少により労働費が減少したこと等による。
なお、10アール当たり粗収益は、収量が減少したこと等により、10万4,096円
と前年産に比べて7.0%減少した。(表Ⅰ−3−27)。
表Ⅰ−3−27
生産費及び収益性(10a当たり)
米 生 産 費 統 計 結 果(10a当たり)
全 算
生 産
平成14年産
15年産
16年産
17年産
18年産
入
費
物
財
投
下
労 働 時 間
費
円
円
177,388
174,257
178,553
184,554
175,478
88,988
89,876
92,738
98,953
96,420
粗 収
時間
資料 :中 国四 国 農政 局統 計 部「 平成 18年 農 業経 営統 計調 査
益
円
42.34
41.13
43.21
41.69
39.12
118,534
131,598
112,140
111,881
104,096
米 生産 費 統計 」
< 全国の状況 >
18年産作付規模別の米生産費(全国)は、面積規模15.0
ha以上の 場合9 万8, 263円と 同0.5∼1. 0haの場合16万9,491
円と比べて42%の低減になっている(図Ⅰ−3−11)。
図Ⅰ−3−11
平成18産作付規模別の米生産費(全国)
(千円/10a)
250
200
150
100
50
資料 :大 臣 官房 統計 部「 米 生産 費統 計」
- 98 -
上
.0
h
a以
.0
15
.0
5.
0
∼
10
5. 0
3.
0∼
3.
0
2.
0∼
2.
0
1.
0∼
1.
0
0.
5∼
0.
5h
a未
満
0
∼
15
分
10
.0
区
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(ウ)価格
【18年産米の入札価格は前年産を下回る】
(財)全国米穀取引・価格形成センターにおける18年産米の上場数量は前年産と
比べ54万4千トン減少し、36万トンとなった。また、通年平均価格は、一部銘柄
を除き低下し、全銘柄平均では、14,826円/60kgと前年産(15,128円/60kg)を2
%下回った(図Ⅰ−3−12、表Ⅰ−3−28)。
図Ⅰ−3−12
年産別指標価格の推移
鳥取産コシヒカリ
島根産コシヒカリ
岡山産コシヒカリ
全銘柄平均
円/6 0kg
2 3,0 00
2 1,0 00
1 9,0 00
1 7,0 00
1 5,0 00
1 3,0 00
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
(年)
資料 :(財 )全 国 米穀 取引 ・ 価格 形成 セン タ ー取 りま とめ 「 指標 価格 の 推移 」
表Ⅰ−3−28
産地品種銘柄
鳥
島
岡
岡
山
香
全
取コシヒカリ
根コシヒカリ
山コシヒカリ
山ヒノ ヒ カリ
口コシヒカリ
川ヒノ ヒ カリ
銘 柄 平 均
産地銘柄別の価格動向
17年産通年平均 18年産通年平均 前年産価格差
指標価格A
指標価格B
B−A
14,586
15,089
14,804
13,915
14,769
13,720
15,128
14,400
14,561
14,501
13,749
14,500
13,720
14,826
▲
▲
▲
▲
▲
186
528
303
166
269
0
▲ 302
単位:円/60kg、%
18年産の
前年産価格対比
全銘柄平均
B/A
との価格差
98.7%
▲ 426
96.5%
▲ 265
98.0%
▲ 325
98.8%
▲ 1,077
98.2%
▲ 326
100.0%
▲ 1,106
98.0%
資料 :(財 )全 国 米穀 取引 ・ 価格 形成 セン タ ー取 りま とめ 「 指標 価格 の 推移 」
- 99 -
第 Ⅰ部
イ
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
麦
(ア)作付状況
【4麦計の作付面積は減少】
中国・四国地域における麦の作付面積は、生産者の高齢化による労働力不足や
水稲作付の早期化等から昭和62年(2万5,700ha)をピークに減少傾向が続いてい
たが、水田農業経営確立対策等の推進により平成12年以降は作付面積が増加し、
15年産では9,970haとなった。しかし、近年では播種期における天候不順等の影
響により、子実用の作付面積は15年産を境に年々減少し、19年産の4麦合計の作
付面積は7,860haと、15年産からは2,110ha(21.2%)減少した(表Ⅰ−3−29)。
表Ⅰ−3−29
麦の作付面積の推移(中国・四国)
15年産
小
16年産
17年産
単位:ha
18年産
19年産
麦
2,820
2,740
2,880
2,970
2,860
二条大麦
3,080
2,900
2,720
2,710
2,510
六条大麦
65
60
54
65
75
はだか麦
4,010
3,340
2,950
2,830
2,420
4 麦 計
9,970
9,040
8,610
8,580
7,860
資料 :農 林水 産 省大 臣官 房 統計 部「 作物 統 計」
麦種別に最近の作付面積の変化をみると、15年産と比較して小麦は40ha(1.4
%)増加、六条大麦も10ha(15.4%)増加しているものの、二条大麦は570ha
(18.5%)減少、はだか麦は1,590ha(39.7%)減少となっている。これらの背
景には播種時期における降雨等の天候不順による作付中止や、近年の作柄不良、
高齢化等による生産者の作付意欲の低下、小麦への麦種転換等が考えられる。
品種別にみると、小麦では「さぬきの夢2000」が中国・四国地域の作付割合の
47%を占めており、香川県ではほぼ100%となっている。次いで、山口県で主に
栽培されている「農林61号」が中国・四国地域の作付割合の16%を占め、岡山県
で栽培されいる「シラサギコムギ」が同14%となっている。二条大麦では岡山県
で作付の多い「おうみゆたか」が同41%、「ミハルゴールド」が同34%を占めて
いる。はだか麦では愛媛県で作付が増加している「マンネンボシ」が同56%を占
め、香川県で作付の多い「イチバンボシ」は同38%となっている(図Ⅰ−3−13)。
今後、実需者の加工適性の評価を得ながら、麦種・用途ごとの良質な麦の計画
的な生産により、さらに実需者評価の高い品種へ転換していくものと考えられる。
また、大麦・はだか麦に関しては、近年大幅な供給不足が発生しており、押麦、
麦茶、麦味噌等日本型食生活に欠かせない伝統的な食品に大きな影響を及ぼすこ
とが懸念されるため、生産者等への需給状況の周知や栽培技術の向上などにより、
- 100 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
面積拡大や単収向上に努めるとともに優良な種子確保対策にも取り組む必要があ
る。
図Ⅰ−3−13
ニシノカ オリ
7.6 %
主要品種の作付割合(19年産)
その他
3 .3%
ヒノデハダカ
6.0%
その他
1.2%
ア サカゴールド
24.4%
チクゴイズミ
11 .4%
小麦
さぬきの夢20 00
47 .2%
マ ンネンボシ
55.8%
おうみゆたか
40.5%
二条大麦
はだか麦
イチ バンボシ
37.5%
シラサギ コムギ
1 4.3 %
農林6 1号
1 6.2 %
ミハルゴ ールド
33.9%
資料 :
「 都 道 府県 別品 種別 作 付面 積報 告」 各 県調 べ
(イ)生育概況・収穫量【収穫量は前年に比べ増加】
19年産麦は概ね順調に播種作業が行え、その後の天候にも恵まれたことから、
生育や登熟も順調に推移し、前年産に比べ面積は減少したものの4麦の収穫量は
3万500トンと1,400トン(5%)増加した。
麦種別にみると、小麦は10,200トン(前年比112%)、二条大麦は1万1,400ト
ン(同104%)、六条大麦は197トン(同240%)、裸麦は8,330トン(同96%)とな
っている(図Ⅰ−3−14)。(注:裸麦については、四国計の数値である。)
また、麦の品質は天候による影響を受けやすく、近年の麦の一等比率は年産、
麦種間で大きく変動しており、収量の変動と相まって、麦の収益性の不安定要素
となっているが、19年産については、中国・四国地域とも登熟期以降の天候に恵
まれたことにより、品質は良好であった(図Ⅰ−3−15)。
引き続き、排水対策といった基本技術の励行や、省力栽培技術の導入により、
収量の安定と併せ、担い手の経営安定を早期に確立する必要がある。
- 101 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−14
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
麦収穫量の推移(中国・四国)
(ha)
(t)
30,000
80,000
25,000
60,000
20,000
15,000
40,000
10,000
20,000
5,000
0
0
S62
H元
5
10
収穫量
11
12
小麦
13
14
15
二条大麦
16
17
裸麦
18
19
4 麦計
資料 :農 林水 産 省大 臣官 房 統計 部「 作物 統 計」
図Ⅰ−3−15
小麦の年産別一等比率の推移
100
80
60
40
全国
中国
四国
20
0
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
資料 :農 林水 産 省総 合食 料 局
(ウ)入札価格
【需給動向を反映して上昇】
12年産以降、価格形成については入札による価格決定を基本とし、相対取引の
価格形成についても、入札結果を考慮した価格となっている。
近年低迷していた麦の価格は、天候不順等の影響により需要に見合う麦の生産
量の確保が難しかったことなどを背景に供給不足となり、16年産以降の入札価格
が上昇している。実需者ニーズや立地条件等を踏まえつつ、需要に見合った生産
- 102 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
拡大を図ることが課題となっている(図Ⅰ−3−16)。
麦は入札価格と水田経営所得安定対策からの支払合計が農家粗収入の基本とな
る。このうち、水田経営所得安定対策の成績払い単価は、需要に応じた良品質麦
生産を推進するため、品質で評価する品質区分を導入している(表Ⅰ−3−30)。
図Ⅰ−3−16
民間流通麦の入札価格の推移
(円)
3,4 00
3,0 00
小麦、さぬきの夢 2000(香 川)
大粒大 麦、アサカゴールド(岡 山)
大粒大麦 、おうみ ゆたか(岡 山)
はだか麦、イチバンボシ (香 川)
はだか麦、イチバンボシ(愛 媛)
はだか麦 、マンネンボシ (愛 媛)
3,17 5
2,6 00
2 ,556
2 ,347
2,2 00
1 ,859
1,8 00
1,4 00
1,0 00
H1 2
H13
H14
H15
H1 6
H17
H1 8
H1 9
H20
(注)1.入札指標価格(加重平均)/大粒大麦50kg当たり、小麦、はだか麦は60kg当た
資料
:
「 麦 の 生産 に関 する 資 料」 農林 水産 省 生産 局か ら 抜粋 りの価格で、消費税及び地方消費税相当額を除いた額である。
:1)
2.建値条件は、ばら、1等、産地倉庫在姿である。
注
入札 指 標価 格 (加 重 平均 )/ 大 粒大 麦 50kg当た り 、小 麦 、は だか 麦 は60kg当 た りの 価 格で 、
消費 税 及び 地方 消 費税 相当 額を 除 いた 額で ある 。
2) 建 値 条件 は、 ば ら、 1等 、産 地 倉庫 在姿 であ る 。
表Ⅰ−3−30
水田経営所得安定対策の成績払い単価(日本めん用)
水田・畑作経営所得安定対策
麦種別成績払数量当たり単価
麦種
小麦
(60㎏)
二条大麦
(50㎏)
六条大麦
(50㎏)
はだか麦
(60㎏)
品質区分
1等
日本めん用小麦の基準値及び許容値
2等
評価項目
たんぱ く
基準値
許容値
9.7%以上 11.3%以下 8.5%以上 12.5%以下
A
2,1 10
9 50
1
B
1,6 10
4 50
2
灰分
灰分1.6%以下
灰分1.65%以下
840g/㍑以上
―
300以上
200以上
C
1,4 60
3 00
3
容積 重
D
1,4 02
2 42
4
フォーリング ナンバー
A
1,6 71
7 05
B
1,2 54
2 88
C
1,1 29
1 63
D
1,0 79
1 13
A
1,6 42
6 76
B
1,2 25
2 59
C
1,1 00
1 34
D
1,0 48
82
A
2,3 05
1 ,1 45
B
1,8 05
6 45
C
1,6 55
4 95
D
1,5 72
4 12
品質区分基準
A
・3つ以上の評価項目について基準値を満たし、かつ、すべての評価項目につい
て許容値を満たすもの。
B
・2つの評価項目について基準値を満たし、かつ、すべての評価項目について許
容値を満たすもの。
C
D
・評価項目について基準値を満たし、かつ、すべての評価項目について許容値を
満たすもの。
・2以上の評価項目について基準値を満たし、かつ、いずれかの評価項目につい
て許容値を満たしていないもの。
・A区分、B区分及びC区分のいずれにも該当しないもの。
資料 :農 林水 産 省告 示第 1110号 から 抜粋
- 103 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(エ)需要に応じた安定生産の推進
【需給のミスマッチの解消に向け各種対策を推進 】
小麦については、作付面積及び生産量ともに、22年を目標とする前「食料・農
業・農村基本計画」の生産努力目標(18万ha、80万トン)を超える状況にあるも
のの、品質や生産性について、さらなる向上等が求められる。特に、地産地消等
の動きと相まって、実需者からは4麦全てについて生産量の増大が求められてお
り、需要に応じた安定生産に向けた取組を強化する必要がある。このため、農政
局においても20年産以降の作付拡大に向けて、はだか麦作付推進パンフレットを
作成し、機会を捉え啓発を行うとともに、20年1月には愛媛県において「大麦・
はだか麦の安定生産に関するシンポジウム」を開催し、これらの安定生産に向け
た基調講演や生産者、実需者、関係機関を交えた意見交換等を行った。
大麦・はだ か麦の安 定生産に関 するシン ポジウム
平 成2 0年 1月 23日 ∼ 24 日愛 媛 県松 山 市
大麦 ・ はだ か 麦 の作 付 推進 パ ンフ レ ッ ト
中国 四 国 農政 局 作成
また、管内各県では、新たな需要拡大に向けた取組として、焼酎や菓子等の新
たな商品開発に取り組んでおり、農政局としても引き続き生産・需要拡大対策の
取組状況と今後の取組方針等についての検討や管内の関係機関による「有望品種
の品質分析結果に係る意見交換会」を通じて、需給のミスマッチの解消に向けた
取組を推進していくこととしている。
さらに、生産の安定のためには担い手の経営安定が重要であり、管内において
は19年8月末現在で806経営体が水田経営所得安定対策への加入手続きを行い、
加入面積は7,838haで18年産の9割をカバーしている。今後は、担い手のさらな
る経営発展を図るため、新技術の導入等による各種作業の省力化、効率化を図り、
経営規模の拡大やコスト削減等をより一層推進していくこととしている。
- 104 -
第 Ⅰ部
ウ
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
大豆
(ア)生産状況
【作付面積が減少し、収穫量も前年産に比べ減少、品質は低水準】
大豆の作付面積は、近年の天候不順に伴う作柄不良による栽培意欲の低下や生
産者の高齢化に伴う労働力不足等により減少傾向にあり、19年産では7,690ha(前
年比97%)となった(図Ⅰ−3−17)。
品種別作付状況をみると、18年産の上位5品種の作付けシェアは、「サチユタ
カ」35%、「丹波黒」24%、「タマホマレ」13%、「フクユタカ」12%、「アキシロ
メ」4%となっている。
特に、13年に育成された高タンパクで、豆腐加工適性の高い新品種「サチユタ
カ」の作付けシェアが上昇しており、鳥取県(作付けシェア59%)、広島県(同
46%)、山口県(同78%)では作付けシェア第1位、島根県(同41%)、岡山県(同
20%)では作付けシェア第2位となっている。また、比較的取引価格の高い「丹
波黒」の作付けシェアも24%と高くなっており、実需者ニーズの高い有望品種へ
の作付け転換が進んでいる。
19年産の生育については、播種作業は多くの産地で6月から始まったが、6月
の下旬から7月上旬にかけて梅雨により圃場条件が悪化し、7月下旬まで作業が
遅れ、一部で発芽不良や生育遅延となり再播種を行った地域もあった。これによ
り、以後の管理作業にも影響した圃場では除草剤の散布ができなかったり、中耕
等が遅れ雑草が増加する一因となった。
8月以降は好天に恵まれたこともあり一部を除いて生育は回復傾向であったも
のの、ハスモンヨトウやカメムシ等が発生し、管内のほぼ全域で被害がみられた。
また、高温障害による干ばつの影響が懸念されたが、各地域において畝間かん水
等が行われたこともあり、特に大きな被害等は見られず概ね順調な生育であった。
しかしながら、生育前半の降雨の影響があった地域では、生育の回復が十分で
ない地域もあり、一部では粒の肥大、成熟は遅れ気味であった。
この結果、作柄については、10アール当たり平均収量対比(※4)で中国地域
が98のやや不良、四国地域が89の著しい不良となった。
収穫量については、台風等による被害が前年産と比べ少なかったものの、作付
面積は減少したこと等から、9,840トンと前年に比べ960トン(10%)減少した。
また、品質については、20年1月末現在で普通大豆の1等及び2等の上位等級比
率が40%と18年産より低下したが、1等のみでは12%上昇している(表Ⅰ−3−
31)。しかし、中国・四国地域の1等比率は全国に比べて低く、引き続き十分な
肥培管理、適期防除、適期収穫等の基本技術の徹底を行い、上位等級比率を上げ
る必要がある。
- 105 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
【※4】「10アール当たり平均収量対比」とは、10アール当たり平均収
量(過去7か年の実績のうち、最高、最低を除いた5か年の平均値)
と当年産の10アール当たり収量とを対比したもの。
図Ⅰ−3−17
大豆の生産動向(中国・四国)
収穫量(t)
作 付面積(ha)
35 ,0 00
40 ,0 00
田
畑
収 穫量
35 ,0 00
30 ,0 00
30 ,0 00
25 ,0 00
25 ,0 00
20 ,0 00
20 ,0 00
15 ,0 00
15 ,0 00
10 ,0 00
10 ,0 00
5 ,0 00
5,00 0
0
0
S62
H3
H1 0
H11
H12
H13
H1 4
H1 5
H1 6
H1 7
H18
H19
資料 :農 林水 産 省大 臣官 房 統計 部「 作物 統 計」
表Ⅰ−3−31
大豆検査等級比
単位: %
17年産
県
全
名
国
中 国 四国 農 政局
鳥
島
岡
広
山
徳
香
愛
高
取
根
山
島
口
島
川
媛
知
1等
26.1
4.6
0.2
7.4
0.6
0.0
4.4
0.0
34.7
12.0
3.0
2等
36.2
29.3
19.0
30.0
41.5
19.7
21.8
16.1
51.8
47.0
51.5
3等
36.8
57.2
74.2
58.6
57.8
75.5
45.6
66.4
13.5
29.4
45.3
規格外
0.9
9.0
6.7
4.0
0.1
4.8
28.1
17.5
0.0
11.6
0.2
18年産
等 級 比 率
1等 2等 3等 規格外
19.1 46.1 34.2 0.6
3.2 39.1 53.3 4.4
1.6 46.5 45.1 6.9
2.5 14.2 83.2 0.0
1.0 55.1 42.6 1.2
3.3 37.3 57.5 1.9
1.2 17.6 66.2 15.0
0.0 11.8 74.2 14.0
14.3 49.6 36.2 0.0
10.1 52.4 37.3 0.3
0.0 77.1 22.9 0.0
19年産
1等
28.5
14.8
0.3
24.3
6.6
0.2
10.8
0.0
46.3
24.8
53.7
2等
38.2
25.3
18.0
28.5
32.5
16.1
23.5
0.0
27.3
41.1
35.5
3等 規格外
32.6 0.7
55.2 4.7
75.0 6.7
47.1 0.1
59.7 1.2
80.7 3.0
52.8 12.9
99.3 0.7
23.2 3.3
34.1 0.0
10.7 0.0
資料 : 農 林水 産 省 総合 食 料 局
注 : 17年 産 は 18年 3 月 末 日現 在 、 18年 産 は 19年 3月 末 日 現 在 、 19年産 は 20年 1 月 末 日現 在 。
(イ)生産の条件整備と集荷状況
【大規模販売農家の割合が低い】
大豆生産における低コスト化、高品質化等を図るためには、農地の団地化や労
働力の組織化を推進するとともに機械化一貫体系の確立を図ることが重要であ
- 106 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
る。「2005年農林業センサス」によると、1.5ha以上の大豆作付け規模をもつ販売
農家の割合は、中国・四国地域では0.7%と全国平均の7.0%を大幅に下回ってい
る。また、0.5ha未満の販売農家の割合は、中国・四国地域では93.4%と全国平
均の73.8%を大きく上回っており、作付規模の拡大が課題である(表Ⅰ−3−32)。
表Ⅰ−3−32
大豆作付け面積規模別販売農家数及びその割合
合 計
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
中国・
四国
都府県
全
国
0.5ha
未満
単位 : 戸
1.5ha
以上
0.5∼1.0
1.0∼1.5
2,557
(89.8)
2,097
(96.5)
7,360
(94.5)
1,839
(95.2)
1,860
(88.2)
513
(97.7)
1,212
(98.1)
1,159
(93.3)
381
(81.8)
219
(7.7)
52
(2.4)
343
(4.4)
74
(3.8)
176
(8.3)
11
(2.1)
10
(0.8)
55
(4.4)
69
(14.8)
39
(1.4)
7
(0.3)
52
(0.7)
8
(0.4)
50
(2.4)
1
(0.2)
3
(0.2)
14
(1.1)
12
(2.6)
32
(1.1)
17
(0.8)
37
(0.5)
10
(0.5)
24
(1.1)
−
(−)
11
(0.9)
14
(1.1)
4
(0.9)
20,322
18,978
(93.4)
1,009
(5.0)
186
(0.9)
149
(0.7)
144,826
111,054
(76.7)
112,348
(73.8)
20,332
(14.0)
21,271
(14.0)
6,768
(4.7)
8,019
(5.3)
6,672
(4.6)
10,664
(7.0)
2,847
2,173
7,792
1,931
2,110
525
1,236
1,242
466
152,302
資料 :
「 2005年 農林 業 セン サス 」
注:
( )は各 販売 農家 の 割合( %)。
一方、国産大豆の大豆交付金対象集荷量(農産物検査法による検査を受けたも
のの数量)は、15年産及び16年産の作柄不良から14年産をピークに一時減少した
ものの、近年増加傾向にある。また、全国の18年産大豆の集荷率(集荷量/生産
量)は70.6%と17年産から増加し、管内の集荷率も、18年産は27.0%に増加した。
しかし、依然として管内の水準は全国と比べて低い状況にある(図Ⅰ−3−18)。
県別に集荷率をみると山口県、愛媛県、鳥取県では4割を超えているものの、
岡山県、香川県、徳島県では1割に満たない。この背景として、中国・四国地域
- 107 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
では地産地消の取組と併せて、独自の販売ルートで出荷している生産者がいるこ
とや、経営規模が小さく自家消費を目的とした生産が行われていること等がある。
また、岡山県、香川県は黒大豆の主産県であるが、業者等との直接取引が多いこ
とから、集荷率が低くなっている(図Ⅰ−3−19)。
図Ⅰ−3−18
80
大豆の集荷率の推移
(%)
全国
中国・四国
6 6.3
60
68 .8
5 9.8
59.1
4 6.5
40
37 .7
37.5
30 .0
18.2
1.6
0
28 .6
2 3.3
2 1.8
9.2
3 .9
6年産
63 .9
49 .6
27.6
20
70.6
64.1
25 .7 27.0
13.8
6.0
8年産
7 .7
7.3
10年産
12年産
14年産
16年産
18年産
(概算値)
資料 : 農林 水産 省生 産 局農 産振 興 課
図Ⅰ−3−19
大豆の収穫量及び集荷量県別比較(14∼18年産の平均値)
44.6%*
鳥取
33.5%
島根
岡山
8.7%
広島
25.9%
53.0%
山口
集荷量
収穫量
0%
徳島
9.2%
香川
*
:集荷率(=集荷量/収穫量)を表す。
48.3%
愛媛
59.3%
高知
0
1,000
2,000
3, 000
4, 000
(単位:t)
資料 :農 林水 産 省生 産局 農 産振 興課
(ウ)生産振興の取組
【大豆産地の強化】
大豆の生産については、全国的にみると水田転作による作付けの拡大等により、
17年3月策定の新たな食料・農業・農村基本計画における生産努力目標を超える
- 108 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
水準まで生産量は増加している。しかし、大豆の栽培は天候に左右されやすく、
生産量は年次によって大きく変動している。管内について個別の課題に目を向け
ると、反収、品質ともに全国平均に比べ低いため、今後は生産性の向上とともに、
天候等に左右されにくい品種や生産技術の確立・普及が重要な課題となってい
る。
このため、産地ごとに課題解決に向け、17年産から農協、地域水田農業推進協
議会等を中心として、生産構造の改革や実需者ニーズに即した大豆生産の推進に
向けた生産目標の策定、栽培体系の設定を行い、これを産地強化計画として取り
まとめている。19年度までに40産地で産地強化計画が策定されており、現在、こ
の計画に基づいて産地自らが取組の実施状況を点検・評価しながら、目標達成に
向けて取り組んでいるところである。
また、農政局において、(独)農業・食品産業技術総合研究機構が開発した「大
豆300A技術(10アール当たり収量300kg、かつ1・2等比率の向上)」等新技術
の普及推進方針をとりまとめ、県、(独)農業・食品産業技術総合研究機構近畿
中国四国農業研究センター等と連携し、これらの新技術の普及を通じて生産性及
び品質の向上を図ることを目的に各種取組を行った。
具体的には、19年5月に中国四国豆類生産振興・需要拡大推進委員会と近畿中
国四国農業研究センターとの共催により、「中国四国地域大豆300A技術等新技術
普及推進会議及び技術実演会」を開催し、新技術に関する情報提供や機械の展示
を行うとともに、8月には「平成19年度大豆生産等現地検討会」として、管内で
の取組に関する事例発表や岡山県玉野市の大豆生産圃場における「耕うん同時畝
立て播種技術」、「不耕起密植直播技術」等の現地調査等を行った。
なお、27年産までの新技術普及面積の目標は表の通りである(表Ⅰ−3−33)。
表Ⅰ−3−33
中国四国地域の大豆300A技術及び新技術等の普及目標面積
中国四国地域の大豆作付面積
面積
18年産大豆の面積
うち強化計画等の面積
27年産の
普及目標
割合
産地強化計画等
の策定地域
面積割合
7,950ha
100%
−
3,000ha
38%
100%
1,474ha
19%
49%
資料 :農 林水 産 省大 臣官 房 統計 部(数 値は ラウ ン ド値 )及び 中国 四国 農 政局 生産 経営 流 通部 農産 課
このほか、新技術に関する幅広い情報提供を目的として、農政局広報誌やホーム
ページを活用した情報提供やリーフレットの作成配布を行うとともに、12月には
一般の方を対象に農政局「消費者の部屋」において、中国・四国地域の麦・大豆
- 109 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
の生産、消費等に関する展示を行った。
※ホームページアドレス
http://www.maff.go.jp/chushi/seisan/daizu/index.html
(2)園芸・特産作物
自然・立地条件を活かした多様な園芸作物・特産作物の産地を誇るが、現下
の厳しい農業情勢に対応するため、担い手を中心とした野菜産地改革、省力化
を図るとともに、高品質な果実(果樹)生産への取組等が進められている。
ア
野菜
(ア)管内の主要野菜
【自然・立地条件を活用した多様な野菜生産】
中国・四国地域では、自然・立地条件を活用した多様な野菜生産が展開されて
おり、平地では、冬期の温暖な気候を活かし、「冬・春レタス」、「春夏にんじん」
がトンネルやマルチ栽培で、「冬春なす」、「冬春ピーマン」、「冬春きゅうり」が
ハウス栽培で生産されている。一方、夏期が冷涼な中山間地では、
「夏秋トマト」、
「夏秋きゅうり」が雨よけのハウス栽培で、「夏だいこん」がマルチ栽培で生産
されている。果実的野菜である「いちご」や「メロン」がハウス栽培で、「すい
か」がトンネル栽培を中心に生産されている。
主な野菜の産出額をみると、高知県の「なす」が100億円以上を、徳島県の「か
んしょ」及び「にんじん」、高知県の「みょうが」、「きゅうり」及び「にら」が
50億円以上を誇り、「ねぎ」等その他品目にあっても、20億円以上の野菜産地を
形成している(表Ⅰ−3−34)。
表Ⅰ−3−34
産出額別
100億円以上
50億円以上
20億円以上
中国四国管内の主な野菜(産出額からみた上位品目:18年)
県 名
高知県
徳島県
高知県
鳥取県
岡山県
広島県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
野
菜
品
目
名
なす
かんしょ、にんじん
みょうが、きゅうり、にら
ねぎ、すいか
なす
トマト、ねぎ
れんこん、ほうれんそう、だいこん、いちご、なす
レタス、いちご
きゅうり、トマト、いちご
しょうが、ししとう、ピーマン、メロン、ねぎ
資料 :農 林水 産 省「 生産 農 業所 得統 計」
- 110 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(イ)野菜生産の動向
【作付面積、産出額ともに減少】
野菜の作付面積は近年減少傾向にあり、18年は5万1,000haと前年に比べ500ha
(1.0%)の減少となった(図Ⅰ−3−20)。
図Ⅰ−3−20
中四 (ha)
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
野菜作付面積の推移
全国(ha)
600,000
全国
鳥取
島根
岡山
500,000
400,000
広島
山口
300,000
徳島
200,000
香川
愛媛
高知
100,000
0
14年
15年
16年
17年
18年
資料:農林水産省「耕地及び作付面積統計」
資 料: 農林 水 産省 「耕 地及 び 作付 面積 統 計」
18年の野菜の産出額は、2,141億円と前年に比べ13億円(0.6%)の減少となっ
たが、全国では微増となっている。
農業総産出額に占める野菜の産出額の割合は、中国・四国地域としては、近年
25%前後で推移しているが、18年の県別でみると高知県57.5%と過半数を超えて
おり、次いで徳島県35.7%、香川県30.8%の順に高く、野菜生産は地域農業にお
いて重要な地位を占めている(表Ⅰ−3−35)。
表Ⅰ−3−35
県 名
野菜の産出額の推移
単位:億円、%
野 菜 の 産 出 額
14年
16年
17年
前年比
18年
14年
15年
16年
17年
18年
( 18 年/ 1 7年 )
鳥 取県
165
160
176
163
169
22.6
22.7
24.4
23.1
24.7
103.7
島 根県
96
95
99
99
95
14.9
14.6
15.3
15.3
15.2
96.0
岡 山県
205
190
199
183
180
15.7
14.7
15.8
14.4
14.3
98.4
広 島県
178
171
171
180
177
16.5
16.0
16.4
16.7
16.6
98.3
山 口県
138
136
133
129
124
17.5
17.5
19.0
17.7
18.1
96.1
徳 島県
439
460
384
392
376
36.9
38.3
35.5
35.8
35.7
95.9
香 川県
238
255
246
247
245
28.3
29.6
30.0
30.5
30.8
99.2
愛 媛県
254
230
231
212
207
18.0
17.1
17.3
16.8
15.9
97.6
高 知県
575
580
549
549
568
57.1
57.0
56.1
55.4
57.5
103.5
2,288
2,277
2,189
2,154
2, 141
25.4
25.5
25.5
25.1
25.3
99.4
計
15年
農 業 総産 出 額 に 占め る 割 合
資 料: 農 林 水 産 省「 生 産 農 業 所得 統 計 」
- 111 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(ウ)野菜指定産地の動向
【指定産地は3産地減少】
19年度末現在の野菜指定産地(※5)数は134産地で、前年度に比べ3産地減
少した。これは、指定産地の要件基準割れから、鳥取県でたまねぎ1産地、徳島
県でたまねぎ1産地及び愛媛県で夏だいこん1産地の計3産地の指定が解除され
たことによるものである(図Ⅰ−3−21)。
また、市町村合併を含む区域変更も、香川県2産地及び高知県3産地の2県で
計5産地で行われた。
なお、中国・四国地域の全国に占める野菜指定産地数の割合は、19年度で13.8
%となっている。
図Ⅰ−3−21
野菜指定産地数の推移
鳥取県
︵
︶
中
国
四
国
地
域
産
地
数
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
18年度
19年度
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
全国の産地数
中国四国の産地数
中国四国の割合
11年度
12年度
1,190
174
14.6%
1,186
167
14.1%
13年度
1,127
165
14.6%
14年度
1,140
166
14.6%
15年度
1,103
156
14.1%
16年度
1,068
151
14.1%
17年度
1,013
138
13.6%
988
137
13.9%
972
134
13.8%
資料 :農 林水 産 省生 産局 調 べ
【※5】野菜指定産地とは
指定野菜(消費量が相対的に多く、国民生活上その価格の安定を図ること
が極めて重要な野菜で、だいこん・にんじん・さといも・はくさい・キャベ
ツ・ほうれんそう・ねぎ・たまねぎ・レタス・なす・トマト・きゅうり・ピ
ーマン・ばれいしょの14品目)について、機械化・団地化等により生産、出
荷の近代化を計画的に進め、その価格安定を図るため、集団産地として育成
していく必要があると認められる産地を、県知事の申し出を受け農林水産大
臣が指定するもの。
(エ)野菜の構造改革の推進
【安定的・継続的生産者を核とした担い手の育成・確保】
野菜産地では、高齢化の進展、担い手の減少等で産地基盤は脆弱化が進む一方、
- 112 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
加工・業務用需要を中心とした輸入野菜のシェアは増加傾向にある。
このため、将来においても安定的・継続的に野菜の生産を行うことが見込まれ
る者(認定農業者及びそれに準ずる者)を核とした担い手の育成・確保を図るこ
ととしている。
また、消費者・実需者のニーズに対応した一層の低コスト化、高付加価値化を
通じて輸入野菜との品質・価格競争に打ち勝つため、17年度から「産地改革計画」
に代わり、産地自らが新たな目標を策定する「産地強化計画」に基づいた取組が
進められている(図Ⅰ−3−22)。
図Ⅰ−3−22
野菜の産地強化計画の県別策定数
70
︵
60
50
40
19年
18年
17年
30
20
︶
中
国
四
国
地
域
産
地
数
10
0
11
9
25
19
47
51
18
59
48
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
資料 :中 国四 国 農政 局調 べ (20年3月 末現 在)
産地強化計画を策定している287産地の戦略タイプ別の内訳をみると、高付加
価値化タイプが4割を占め、低コスト化タイプが3割、契約取引推進タイプが2
割、複数併用タイプが1割となっている(図Ⅰ−3−23)。
- 113 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−23
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
野菜の産地強化計画の戦略タイプ別策定産地数
140
︵
120
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
︶
中
100
国
四
国 80
地
域 60
産
地 40
数
20
0
54
75
契約取引推進
低コスト化
123
3
高付加価値化 3タイプ併用
7
11
14
低コスト化・
低コスト化・ 高付加価値化・
高付加価値化 契約取引推進 契約取引推進
資料 :中 国四 国 農政 局調 べ (20年3月 末現 在)
産地強化計画を策定した産地の戦略タイプ別にその取組内容をみると、低コス
ト化タイプでは、作業の機械化や共同化、出荷の一元化、作付規模の拡大、労働
時間の縮減及び資材費の低減などが行われており、契約取引推進タイプでは、契
約数量・栽培面積の拡大と取引先の拡大などが進められている。また、高付加価
値化タイプでは、エコファーマー認定者の拡大、優良品種の検討、鮮度保持の工
夫、減農薬・減化学肥料栽培等の対応が行われている。
農政局では、これらの取組を支援するため、産地強化計画推進会議を開催し、
産地強化計画の趣旨の周知徹底を図りながら、各産地の取組事例の紹介や現地に
出向いて意見交換等を行っている。
また、20年3月には、中国・四国地域の生産、流通、価格の動向等を取りまと
めた「中国四国地域の野菜」を作成し、情報提供を行った。
(オ)管内産野菜の出荷量
【18年産の出荷量は前年比99%】
中国・四国地域における18年産指定野菜(14品目)の出荷量は、56万6千トン
(前年比99%、平年(13∼17年平均)比94%)となった(図Ⅰ−3−24)。
- 114 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−24
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
指定野菜の出荷量の動向(中国・四国地域)
(%)
120
65万3千t
109%
110
63万3千t
105%
60万5千t
101%
平年(平成13∼17年平均)60万1千t
100
57万0千t
90
54万6千t
56万6千t
95%
94%
17年
18年
91%
80
平成13年
14年
15年
16年
資料 :農 林水 産 省統 計部 「 野菜 生産 出荷 統 計」 ほか
注 : 中国 ・ 四国 地域 の 値は 「野 菜生 産 出荷 統計 」に 記 載の 県別 数 値を 合計 した も の。
た だし 、 17年 以 降は 「 野菜 生産 出 荷統 計 」が 主 産県 調査 と なっ たた め 、非 調査 県 につ い ては 、
関 係機 関 ・団 体か ら の情 報及 び現 地 巡回 によ り算 出 した 。
品目別には、前年に比べたまねぎ(前年比112%)が増加し、きゅうり(前年
比89%)、なす、トマト(同93%)が減少した。平年と比べるとだいこん、はく
さい、キャベツ、ほうれんそう、レタス、ねぎ、トマトが平年並みで、その他の
品目は減少(平年比87∼94%)している。
(カ)広島市中央卸売市場の入荷量及び卸売価格
【入荷量は前年並みで平年をやや下回る】
中国・四国地域の主要市場である広島市中央卸売市場の19年(1∼12月)の入
荷量をみると、指定野菜合計で11万7千トン(前年比97%)となり、平年(14∼
18年平均、12万5千トン)をやや下回った。
表Ⅰ−3−36
広島市中央卸売市場の入荷量(指定野菜)
単位 : t
年
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
平成19年
入荷量
12万9千
12万9千
12万5千
12万1千
12万1千
11万7千
出荷先別の入荷状況を地域別にみると、中国・四国地域からの入荷量は2万4
千トン(前年比96%)となり、シェアは20.7%(前年21.0%)となった。一方、
九州地域産は増加傾向にある(図Ⅰ−3−25)。
- 115 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−25
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
広島市中央卸売市場における指定野菜の地域別入荷割合
平成 5年
31.5
10年
第3章
29.7
25.9
23.8
32.9
15年
22.6
36.6
18年
21.0
39.4
19年
20.7
10.5
23.7
3.8 3.6
10.1
21.3
20.8
1.3
3.1
10.4
5.8 3.3
10.7
4.6 3.6
中国・四国
九州
北海道
関東
外国
その他
2.5
42.3
0%
20%
21.0
40%
60%
10.5
3.0
80%
100%
資料 : 広 島 市 中 央卸 売 市 場 「 市 場月 報 」
品目別にみると、なす(前年比109%)、きゅうり(同107%)、だいこん(同
104%)が増加し、レタス、たまねぎ(前年比92%)、はくさい、ほうれんそう(同
93%)、キャベツ(同94%)が減少した。
【外国産の入荷量は大幅に減少】
外国産の指定野菜の入荷量は、ポジティブリスト制度の施行や、残留農薬違反
に対する消費者の不安感から2,906トン(前年比53%)と大幅に減少し、入荷量
全体に占める外国産の割合は2.5%(前年4.6%)となった。国別にみると、中国
産の占める割合が高く、外国産入荷量の79.3%を占めている(図Ⅰ−3−26)。
図Ⅰ−3−26
広島市中央卸売市場における指定野菜の外国産入荷量の推移
平成 15年
17.8%
61.1%
16年
66.7
7.9
12.3%
10.8
5.6%
7,495t
8.9
7,563t
17年
57.4
7.5
18年
73.5
6.9 9.2
15.8
ニュージーランド
アメリカ
韓 国
13.0
7.165t
6.4
5,493t
2. 7 6.6
19年
79.3
0
1
2
その他
2,906t
4.1
3
中 国
4
5
6
7
8
(千t)
資 料 :広 島 市 中 央 卸 売市 場 「 市 場 月 報」
品目別にみる外国産の占める割合は、さといも(21.9%)が最も高く、次いで
しろねぎ(20.9%)、たまねぎ(8.9%)、ピーマン(8.8%)等となっている。
- 116 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
【卸売価格は平年並み】
広島市中央卸売市場における19年の指定野菜平均卸売価格(1㎏当たり)は
146円で、前年(153円)及び平年(14∼18年平均、146円)並みとなった(図Ⅰ
−3−27)。
図Ⅰ−3−27
広島市中央卸売市場における指定野菜の卸売価格の推移
( 円/kg)
2 00
18 1
1 80
1 60
15 1
1 55
1 44
1 53
1 46
15 4
1 40
1 46
1 44
1 38
1 34
1 20
1 00
平成 9年
1 0年
11 年
12年
13 年
14年
15年
1 6年
17年
1 8年
19 年
資料 : 広 島 市 中 央卸 売 市 場 「 市 場月 報 」
19年は、昨年秋以降の好天に恵まれ生育が順調に推移したことや暖冬により鍋
もの需要が低迷したことから供給過剰となり、総じて平年を下回る水準であった。
3月から6月は、気温の変動や日照不足等の天候不順があったものの、総じて
平年並みに回復した。7月に入り低温や降雨と日照不足による生育不良から供給
不足傾向となり、総じて平年を上回る水準となった。
8月以降は、一転し、猛暑や干ばつ等の影響による生育不良等から、総じて平
年並みからやや上回る水準で推移した。
(キ)加工・業務用需要への対応
加工・業務用需要向けの野菜は、端境期の供給が不安定であること、需要があ
るにもかかわらず産地化が進んでいないこと及び一次加工等の実需者ニーズに未
対応であること等から、輸入野菜にシェアを奪われているが、食料自給率向上の
観点からも国産野菜によるシェア奪回が重要である。
また、中国製餃子の問題に端を発した食品の安全・安心に関する消費者意識の
高まりもあって、実需者から国産野菜の安定供給を強く求められるようになって
いる。
このような状況の中、需要があるにもかかわらず産地化が進んでいないパプリ
カについて、課題である多収穫・安定生産技術の確立のため、高知県の産地にお
- 117 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
いて社団法人日本施設園芸協会の委託事業を活用して、軒高の低い慣行ハウスに
おけるつる下げ誘引仕立てによる多収技術の実証やセミナーを開催した。
また、産地強化計画を策定している産地の中から、加工・業務用需要への取組
を拡大しようとする産地を重点推進産地として位置づけて支援・指導を行ってお
り、本年度は香川県のレタス産地において、生産者と実需者の相互理解を深める
意見交換を中心とした交流会を実施した。
(ク)新たな野菜対策
19年度から始まった新たな野菜対策では、農業所得に大きく依存する担い手の
所得を確保する観点から、契約取引及び需給調整の的確な実施を推進させるとと
もに、価格安定制度にも担い手の育成・確保を促す仕組みが導入された(表Ⅰ−
3−37)。
農政局においては、昨年に引き続き、その内容周知に努めるとともに、担い手
の所得確保に向けた意識向上及び具体的な方策への助言等を行った。
表Ⅰ−3−37
野菜価格安定制度の内容
産 地 の 要 件
Ⅰ 以下の全てを満たす産地
① 「安定的・継続的生産者」の作付面積シェア(現状)が60%以上であること。
② 平成15年度、16年度及び17年度の各年度について、供給計画の120%以上
の出荷を行っていないこと。
Ⅱ 「安定的・継続的生産者」の作付面積シェア(現状)が40%以上であり、上記の
区分に該当しない産地
Ⅲ 上記の2区分に該当しない産地であって、「安定的・継続的生産者」の作付
面積シェア(現状)が40%未満又は産地強化計画を策定していない産地
補 て ん 率
計画的出荷が
基 本
達成
90%
100%
80%
90%
70%
80%
資料 :独 立行 政 法人 農畜 産 業振 興機 構ホ ー ムペ ージ より 作 成
注 : 1) 「 安定 的 ・継 続 的生 産 者 」= 「 認 定 農業 者 」 +「 認 定 農 業者 に 準 ずる 者 ( 都道 府 県 知事 の
特認 )」
2) 調 整野 菜 (春 ・夏だ い こん 、 春夏 ・秋 ・冬に ん じん 、 春・夏 はく さ い、 春 ・夏 秋 ・冬レ タス )
につ い ては 、需 給 調整 対策 へ参 加 しな いと 補て ん 率が 10% 減 少。
3) 「 計画 的 出荷 が 達成 」 され た 場合 の 特別 補 給交 付 金( 10% )の 交 付を 受 ける た めに は 、調
整 野 菜 に つい て は 、需 給 調 整 対策 へ の 参加 が 必 要。 ま た 、一 般 指 定野 菜 ( きゅ う り 、さ と
い も、 ト マ ト、 な す 、 ねぎ 、 ピ ーマ ン 及 び ほう れ ん そ う) に つ いて は 、 特 別補 給 交 付金 等
の交 付 予約 を行 う こと が必 要。
- 118 -
第 Ⅰ部
イ
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
果樹
(ア)果樹栽培の動向
【農業の重要な位置を占めるも減少する栽培面積】
中国・四国地域における18年の果樹(果実)の農業産出額は1,198億円で、全
国の15.5%を占めており、主に温州みかん、ぶどう等の価格が上昇したため、前
年に比べ、107億円(9.8%)上昇した。また、農業産出額に占める果樹の割合は14.2 % と
なっており、農業産出額が減少しているなか、果樹部門の占める割合が高まって
おり、果樹農業は、地域の重要な基幹作物となっている(表Ⅰ−3−38)。
表Ⅰ−3−38
区
分
18年農業産出額
農業産出額
合計
全
単位:億円
果樹(果実)部門
農業産出額
割合(%)
国
86,321
7,710
8.9
中国・四国
8,453
1,198
14.2
中
鳥
国
取
4,318
685
471
77
10.9
11.2
島
岡
根
山
625
1,255
39
172
6.2
13.7
広
島
1,069
143
13.4
山
口
国
684
4,135
40
727
5.8
17.6
徳
香
島
川
1,052
796
100
59
9.5
7.4
愛
媛
1,300
466
35.8
四
高 知
987
102
資料:農 林水産省「 生産農業 所得統計」
中国・四国地域の占める割合(%)
1 5.5%
全国
中国・四国
10.3
果樹の品目別栽培面積について県別の全国順位をみると、中国地域では、かんきつ類か
ら落葉果樹まで地域の条件に応じた多様な産地が、一方、四国地域でかんきつ類を中心と
した産地が形成されている(表Ⅰ−3−39)
。
表Ⅰ−3−39
鳥取県
島根県
主な果樹の全国順位(18年栽培面積)
③ 日本な し(① 二十世 紀)
⑮ ぶどう (④デ ラウエ ア)
岡山県 ⑤ ぶどう (①ピ オーネ)、⑤も も、⑩ 西洋なし
広島県 〔 ①レモ ン〕、 ②ネー ブルオ レンジ、 ②は っさく、 ⑤いよ かん、⑦ みかん、 ⑧なつ みかん、
⑭ぶどう (③ ピオー ネ)
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
② いよか ん、⑤く り、⑦ なつみ かん
〔①す だち〕、④ はっさ く
⑤ はっさ く、⑤び わ、⑦ ネーブ ルオレ ンジ、 ⑨いよ かん、 ⑨もも
① いよか ん、①な つみか ん、① キウイ フルー ツ、② みかん 、③は っさく、
③ ネーブ ルオレン ジ、③ くり、 ④びわ 、⑨か き
高知県
〔①ゆ ず〕
資料 :1) 農 林 水産 省統 計 部「 耕地 及び 作 付面 積統 計 」
2)( )は 、同 「果 樹 生産 出荷 統 計」 の結 果樹 面 積
3)〔 〕 は、 農 林水 産省 果樹 花 き課 「平 成 17年 産特 産果 樹 生産 動態 等 調査 」
- 119 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
《関係者が一丸となった取組により、ニューピオーネの栽培面積が1.5倍に 》
岡 山ニュー ピオーネ の生産安 定技術は 、岡山県で 昭
和57年に確 立され、 今日までの 間、県、 生産者、農 業
団体 等が一丸 となって 産地化や 販路拡大 の取組を進 め
てきた。
その結果、その栽培面積は900haを超え(この5年間
に約 1.5倍に拡大 )、全国一 の生産規模と なっている 。
平成 19年には 生産額100億 円を達成す るなど、「く だも
の王国おかやま」を支える大きな柱に成長した。
ニ ューピ オーネ 栽培 風景
中国・四国地域の果樹全体の動きを栽培面積でみると、ピーク時の昭和48年の
9万6,300haから年々減少を続け、平成19年には4万7,700ha(中国地域:1万
6,700ha、四国地域:3万1千ha)とピーク時の半分以下となっている(図Ⅰ−3
−28)。
栽培面積の主な減少要因としては、果実の消費減少及び輸入の増加等による価
格の低迷、生産者の高齢化等による労働力不足等から、作業効率の悪い急傾斜地
園、生産性の悪い老木園等において廃園が進行していることや、果樹農家の減少
等が挙げられる。
図Ⅰ−3−28
果樹栽培面積の推移
千h a
100
90
80
中国
70
栽 60
培
面 50
積 40
30
四国
20
10
0
48年
53年
58年
63年
5年
10年
15年
19年( 概算)
資 料:農林水産省「耕 地及び作付面積統計」
中山間地域が6割を占める中国・四国地域は、果樹についても急傾斜地園での
栽培が多く、労働条件的に厳しい15度以上の急傾斜地園が全樹園地の3分の1を
占めている。特に、かんきつ栽培が主体の四国では4割以上の園地が急傾斜地に
立地しており、園地整備や機械化による果樹栽培の更なる省力化が重要な課題と
なっている(表Ⅰ−3−40)。
- 120 -
第 Ⅰ部
表Ⅰ−3−40
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
樹園地の傾斜度別割合(中国・四国)
単位 :h a 、 %
農振農用地区域
樹園地
面
全
積
傾斜度別割合
8度未満
8∼15度
15度以上
国
283,895
58.1
26.0
15.9
中国・四国
52,253
33.9
34.0
32.1
中
国
16,907
51.2
34.8
14.0
四
国
35,348
25.7
33.6
40.7
資料 : 第4 次土 地 利用 基盤 整備 基 本調 査( 平 成 13年 3月)
《「 中国四国地域における果樹の経営継承に係るアンケート調査」を実施》
○農家の高齢化等から、今後5年以内に果樹栽培を縮小・廃業とする農家が4割。
その中で、栽培縮小園地等の継承割合は約半数の産地で2割未満となっている。
中国四国農政局では、果樹の経営継承に係る農協(産
栽 培縮 小 園地 等の 継 承状 況
全園地(2% )
地)の状況・意向、後継者のいない65歳以上の果樹 農
家 の意向 等につい て、19年6∼7 月にアン ケート 調
査を実施し、その概要を取りまとめた。
不 明(未調査)
(21 %)
果樹農家 の高齢化 等から今後 の経営方 針として 、
6 割の農 家が果樹 栽培を 縮小・廃 業する( 4割の 農
2割未 満
8∼1 0割
( 12% ) 6 ∼8割
(8%)
4 ∼6割(2 %)
2∼4割
(12 %)
(44 %)
家は、5年以内に果樹栽培を 縮小・廃業する。)と回
答している。
果樹園の経営継承については、農家子弟による継承が主体となっているものの、栽培
の縮小・廃業に伴う園地の継承状況は約半数の産地が2割未満と回答している。
各産地においては、農地保有合理化事業の実施等優良園地の継承のための各種施策が
講じられている。園地の出し手農家の意向把握、新規就農者の募集等各種対策は、取組
開始からの年月が短く、明確な成果がみられていないが、経営継承に向けた地域独自の
推進組織は25%の産地に設置されている。
今後の果樹経営に対する農家の意向は、必ずしも農家子弟等への継承に限定するもの
ではなく、JA等の仲介・斡旋、相談等により、知人以外の者でも継承は可能とする割
合が高くなっており、この意向に対するJA等の早急な対応が望まれる。
「 ホーム ページ ア ドレ ス:http://www .maf f.go. jp/chushi/sesaku/fruits/kei ei keis yo/keiei keisyo. html」
- 121 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(イ)主要品目の生産動向
a
みかん(うんしゅうみかん)
結果樹面積は、生産者の高齢化に伴う労働力事情等による廃園やその他かんき
つ類への転換等から、19年産は1万3,837ha(全国の28%)で17年産に比べ823ha
(6%)減少した。また、結果樹面積の減少、8月の天候不順の影響により果実
の肥大が抑制されたこと等から、収穫量、出荷量ともに表作であった17年産を下
回った(表Ⅰ−3−41)。
表Ⅰ−3−41
みかんの結果樹面積、収穫量及び出荷量(19年産)
単 位 : h a、 t 、 %
区 分
結果樹面積
収穫量
出荷量
17年産比
結果樹面積
みかん
全
収穫量
出荷量
国
49,400
1,066,000
950,500
96
94
95
中国・四国
13,837
272,840
242,290
94
89
89
うち
全
国
28,100
628,300
568,500
96
93
93
早生温州
中国・四国
7,501
157,370
142,590
95
88
88
うち
全
国
21,300
438,100
382,000
96
96
97
普通温州
中国・四国
6,334
115,540
99,750
94
90
90
資 料: 農 林水 産省 「 果樹 生産 出荷 統 計( 概算)」
注 : 中国 ・四 国 は 主産 6 県 (広 島 県 、 山口 県 、 徳島 県 、 香 川県 、 愛 媛県 及 び 高知 県 ) の合 計 。
《消費者ニーズに即した優良品目・品種への転換 》
愛 媛県育成新品種「 紅まどんな」
b
愛媛県においては、消費者ニーズの動向に即した果
実 を生 産する ため 、「不 知火 」「は るみ」 等の 品種へ
の転換が進められてきているが、特に最近では、愛媛
県立果樹試験場が育成した新品種「愛媛果試第28号(商
標 :紅まどん な)」は、多 汁で食味に優 れ、年内に収
穫できる贈答用商材としての需要も高く、その栽培面
積は急速に増加している(18年栽培面積:20ha)。
愛媛県では、うんしゅうみかん、伊予柑に替わる戦
略 品目として栽 培面積200ha(27年)を 目標に掲げ、
生産振興が図られている。
日本なし
結果樹面積は、生産者の高齢化に伴う労働力事情等による廃園等により、19年
産は1,612ha(全国の11%)と前年に比べ、62ha(4%)減少した。
収穫量及び出荷量は、生育期間をとおして比較的天候に恵まれたことから、作
柄の悪かった前年産を(収穫量:前年比103%、出荷量:同103%)上回った(表
Ⅰ−3−42)。
- 122 -
第 Ⅰ部
c
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
ぶ ど う
結果樹面積は、生産者の高齢化に伴う廃園等により、19年産は2,184ha(全国
の11.7%)と前年に比べ、23ha(1%)減少した。
収穫量及び出荷量は、結果樹面積の減少等により、前年産を(収穫量:前年比
96%、出荷量:同96%)下回った(表Ⅰ−3−42)。
《 ワイナリーの開設により、醸造用ぶどうの栽培面積拡大 》
広島県世羅町では、13年度に「世羅町ぶどう振興計画」を策定し、ぶどうを「世羅な
し」 に続く果樹品目として振興している(19年栽培面
積:13ha)。
19年には、同町農業公園内のワイナリーへ供給され
る醸 造用ぶどうの栽培面積目標(10ha)をほぼ達成し
た。 販売先が決まっているため、醸造用ぶどうの生産
は安 定収入が見込める。また、更なる収益の確保に向
け、今後 は、生食用ぶどうの栽培面積20ha(23年度)
を目 標に、生産者、JA、行政等の関係機関が一体と
なった生産振興への取組が進められている。
醸造用ぶどう 栽培風景
d
もも
結果樹面積は、生産者の高齢化に伴う廃園等により、19年産は1,010ha(全国
の9.9%)と前年に比べ、30ha(3%)減少した。
収穫量及び出荷量は、開花期の低温等の影響があったものの、作柄の悪かった
前年産を(収穫量:前年比113%、出荷量:同118%)大幅に上回った(表Ⅰ−3
−42)。
《期待の大玉品種、「おかやま夢白桃」》
岡山県で は同県で 育成した 新品種「 おかやま 夢白桃」
の生産振興に取り組んでいる。17年に品種登録された「お
か やま夢白 桃」は、 清水白桃 と白桃の 間に成熟 するため
盆 前需要に 対応でき るととも に、大玉 で糖度が 高く、生
理 的落果も 少なく生 産も安定 している ことから もも農家
の経営の重要な柱としての期待も高い。
19年度 から本格 的な出荷 が始まっ たところで あり、ま
だ 量的には 少ないも のの、こ の品種の 導入によ り、高品
質 なももの 安定した 連続出荷 が可能と なり、岡 山ブラン
期 待の新 品種「お かやま夢 白桃」 ドの更なる強化が期待される。
- 123 -
第 Ⅰ部
表Ⅰ−3−42
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
主な落葉果樹の結果樹面積、収穫量及び出荷量(19年産)
区 分
結果樹面積
収穫量
出荷量
単 位 : h a、 t 、 %
18年産比
結果樹面積
日本なし
ぶどう
もも
全
収穫量
出荷量
国
14,600
296,800
272,300
98
102
102
中国・四国
1,612
33,145
30,405
96
103
103
国
18,600
209,100
190,700
98
99
99
中国・四国
2,184
25,232
22,794
99
96
96
国
10,200
150,200
137,400
99
103
103
中国・四国
1,010
10,625
9,462
97
113
118
全
全
資 料: 農 林水 産省 「 果樹 生産 出荷 統 計( 概算)」
注: 中国・四国は、なし主産4県(鳥取県、広島県、徳島県及び香川県)
、ぶどう主産6県(鳥取県、島根県、
岡山県、広島県、香川県及び愛媛県)
、もも主産3県(岡山県、香川県及び愛媛県)の計
(ウ)果実流通及び果実価格の動向
a
うんしゅうみかん
京浜市場における中国・四国地域からの19年産うんしゅうみかんの入荷量は、
5万4,023トン(前年比141.0%)と前年産を上回った(図Ⅰ−3−29)。
また、19年産うんしゅうみかんの価格(1㎏当たり平均卸売価格。以下同様)は、
ハウスみかんは843円(同107.8%)と前年に比べ高値となった。露地みかんにつ
いては、高糖度等で品質は良好であったが、表年であり生産量が過剰基調であっ
たこと、高温少雨の影響により小玉果が多かったこと等により、極早生で196円
(同93.3%)と前年を下回った。さらに、秋季が高温で推移したことにより極早
生の着色が遅れ、早生の出荷と重った結果、10月末頃から出荷集中がみられ、そ
の後の流通段階での在庫量増大に繋がり、緊急需給調整特別対策事業による価格
浮揚の効果が一定期間あったが、3月末現在では早生で199円(同65.5%)、普通
で169円(同56.9%)と高価格で推移した前年の価格を下回った(図Ⅰ−3−30)。
図Ⅰ−3−29
うんしゅうみかんの入荷量及び価格(京浜市場)
資料 :日 本園 芸 農業 協同 組 合連 合会( 20年 3月 末 現在)
- 124 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−30
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
中国・四国地域の品目別入荷量及び価格(京浜市場)
資料 :日 本園 芸 農業 協同 組 合連 合会( 20年 3月 末 現在)
b
主な落葉果樹
京浜及び京阪神市場における中国・四国地域からの19年産の主な落葉果樹の入
荷量は、もも210トン(前年比101.9%)、ぶどう(ピオーネ)2,033トン(同110.5
%)、日本なし(二十世紀)5,034トン(同105.2%)で、全て前年を上回った。
ももの価格は、中国四国地域の主産地である岡山県で5月の急激な気温上昇に
より種が実の成長に追いつかずに割れる変形果が発生し、また、梅雨明けが例年
より1週間遅れたため日照不足となり糖度が上がらなかったこと等が影響して前
年を下回る716円(同88.0%)となった。
ぶどう(ピオーネ)の価格は、他地域の一部主産地県が台風の影響等により品薄
傾向となり、中国四国地域最大の主産地県である岡山県産をはじめとして前年を
上回る922円(同114.7%)となった。
日本なし(二十世紀)の価格は、全国的な絶対量の不足や、夏から秋にかけて
高温で推移したこと等から前年を上回る349円(同112.6%)となった(図Ⅰ−3
−31)。
図Ⅰ−3−31
主な落葉果樹の入荷量及び価格
資料:日 本園芸 農業協 同組合連 合会
- 125 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(ウ)果樹産地の構造改革に向けた取組
a 果樹産地構造改革計画の策定・実行
中国・四国地域の果樹産地にあっては、近年の果実価格低迷の影響や高齢化の
進展により、耕作放棄による廃園等が目立つ状況になっており、各地域において
は果樹園地の再編整備、高品質果実生産出荷のための各種施設の整備等、産地活
性化を目指した様々な動きが興っている。
具体的には、かんきつ産地を中心として、消費者の嗜好性にあった高品質な果
実を効率的に生産するため、優良品目・品種への計画的な転換や省力化のための
園内作業道等の整備が行われている。
このように、国産果実を将来にわたり安定的に供給し、果樹農業の継続的な発
展を図っていくためには、各産地が目指すべき姿を明確にした上で、戦略的な生
産・販売により競争力のある産地を構築することが必要となっている。
このため、産地自らが、目指すべき産地の姿(担い手の明確化、園地集積や基
盤整備の取組方法、販売戦略等)とそれを実現するための戦略を内容とする「果
樹産地構造改革計画」(産地計画)の策定推進とともに、計画の実現に向けた取
組の推進を図ってきたところである。
20年3月末現在では、85地区において計画が策定されており、今後、取組の進
捗状況の点検等を通じ、計画の着実な実行、計画内容の見直し等による質的な充
実に向けた取組を推進することとし、その一環として、農政局では「中国四国地
域果樹産地フォーラム」を開催(20年2月21日)し、産地の活性化を図るための
販売戦略についての検討を行った。
フォーラムでは、いち早くEUREPGAP(ユーレップ・ギャップ:欧州小売業組合が策定
したGAP及び認証制度)を取得し、欧州へのりんごの輸出に取り組む片山りん
ご(株)(青森県)、有田みかんを地域ブランドとして確立した、ありだ農業協同
組合の取組について報告を受けるとともに、学
識経験者、流通業者、管内産地を交え、今後の
推進方向、課題等についてパネルディスカッシ
ョンを行った。
フ ォーラ ムには 中国四 国地域 内の産 地協議
会、JA、試験研究機関、行政担当者等約130
人の出席があった。本フォーラムで報告された
事例、検討事項等が今後の各果樹産地の活性化
に繋がっていくものと期待される。
- 126 -
果樹 産地フォーラム(於:岡山市)
第 Ⅰ部
表Ⅰ−3−43
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
果樹産地構造改革計画策定状況
計画推進
うち計画
地区数
策定地区数
計画策定を推進する産地の特徴
鳥 取
3
0
日本なし、かき、ぶどう産地
島 根
5
1
ぶどう、かき、なし産地
岡 山
11
3
ぶどう(ピオーネ)、もも産地
広 島
15
13
かんきつ産地中心、落葉果樹産地でも推進
山 口
16
15
かんきつ産地中心、落葉果樹産地でも推進
徳 島
13
12
かんきつ産地中心
香 川
7
7
かんきつ産地中心
愛 媛
25
25
かんきつ産地中心
高 知
9
9
かんきつ産地
資 料 : 中 国 四 国 農 政 局調 べ ( 20年 3 月 末 現 在 )
果樹産地構造改革計画の取組事例
○各地区の生産者を中心に担い手対策プロジェクトチームを結成
(吉田町果樹産地協議会(愛媛県))
気候が温暖 な宇和島市 吉田町では 、傾斜地栽培 で高糖度果 実が生産さ れるため、み
かんを中心に農業が発展してきた。現在、ブランドの構築をめざし、マルチ被覆による
早生の完熟栽培、不知火、河内晩柑、タロッコ等の優良品種への転換等がすすめられて
いるが、高齢化等による労働力不足が顕在化しており、農地流動化の推進等による新た
な担い手の育成を図ることを目的とした計画を策定した。
【推進体制】 担い手対策実践班の 設置(平成18年)
【構成員】
JAの運営員・理事・指導員・農業委員
(流動可能農地及び新たな担い手の発掘)
生産者組織の若手メンバー(その受皿として機能)
【 取組の内容】
毎年1月にアンケート調査を実施し、農地の出し手、
受 け手リ ストを 作成する 。この リスト をもと に、流 動
宇 和島 市吉田 町の 柑橘園 地
化 希望園 地を、 規模拡大 指向の 担い手 農家に 結びつ け
る活動を展開。将来の農業者数の減少を見越し、農地の流動化を通じた面的集積の推進
により、担い手に育成を図る。
- 127 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
○青果・加工の両面での生産・販売拡大
(嶺北地域果樹(柚子)産地協議会(高知県))
JA土佐れ いほく管内 では、中山 間地域の特色 を活かした 作目を振興 するなかで、
柚子の生産振興に取り組んでおり、青果での出荷とともに産地での一次加工(柚子酢)
に取り組んできた。
生産農 家の所得を確保し 、産地を維持するための取組
と して、青果は品質向 上により単価向上、加工 品は高品
質 加工処理による契約 取引の拡大及び産地によ る加工商
品 の生産 拡大に よりブ ランド を確立 、販売高 2億円 を目
標に取組を進めている。
【推進体制】
生産者 代表(生産及び出荷)
JA( 生産物引き受け及び加工品生産・販売)
柚子加工品
市町村 (担い手育成対策支援及び事業導入支援)
農業振 興センター(栽培技術支援及び事業導入支援)
【取組の内容】
・ 柚子を 主要品目とす る生産者や60歳前後までの生 産者への重点指 導を行い、主要
な担い 手として 育成すると ともに、経 営モデルに より柚子栽 培の有利な 収益性を示
し、新規の柚子生産者の育成確保に努める。
・ 新植希 望者や廃園地 の定期的な調 査により、意欲 ある生産者に斡 旋できる仕組み
を整備する。
・ れいほ くオリジナル 商品を開発し 、販売ルートの 拡大等を図ると ともに、柚子皮
等の副産物で新たな商品開発を行うことで付加価値を高めて販売する。
・ 衛生面や品質保証の充実を図り、大口契約取引の拡大を図る。
・ れいほくでは、地域をあげてISO14001を活用した環境保全型農業を実践しており、
柚子生 産者もそ の一員とし て取り組ん でいる。ま た、環境保 全型農業で 栽培された
柚子を含めた特産物を「 れいほく八恵」、野菜を「れいほく八菜」などと称し、れい
ほく八 ○(マル)シリーズとしてブランド化に取り組んでいる。
b
新たな果樹対策の実施
19年度から実施された果樹の新たな対策(果樹経営支援対策・果実需給安定対
策)では、適切な需給調整を前提に、産地計画に基づき担い手や産地が行う前向
きな取組に対し短期的・集中的に支援を実施することにより、担い手の経営基盤
の強化を通じて競争力の高い産地育成の加速化を図ることとしている。
新対策の円滑な実施に向け、農政局では「新たな果樹対策の周知のためのキャ
ラバン」を実施し、対策の趣旨、内容等について、産地段階での周知を図った。
【果実需給安定対策事業】
19年産のうんしゅうみかんは表年であり、5月30日に公表された「平成19年産
うんしゅうみかん適正生産出荷見通し」に沿って、各産地において計画生産・出
- 128 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
荷への取組みが行われたが、9月から10月にかけての高温による着色遅れ等によ
り、11月下旬から12月上旬にかけて出荷が集中し、流通在庫量の増大、平均価格
の低下が懸念される状況となった。
このため、11月26日から12月10日の販売分を対象に生果用として出荷された果
実の一部を果汁等の加工用へ仕向ける「緊急需給調整特別対策事業(緊特事業)」
が実施され(図Ⅰ−3−32)、事業実施期間及び実施直後には価格浮揚という一
定の効果があった(図Ⅰ−3−33)。
図Ⅰ−3−32
緊特事業のイメージ
図Ⅰ−3−33
四大市場の平均卸売価格の推移
資料:日 本園芸 農業協 同組合連 合会
- 129 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
【果樹経営支援対策事業】
果樹産地の構造改革を効率的、加速的に支援するための事業として制定された
果樹経営支援対策事業(以下「支援対策事業」という。)は、本年度から22年度
までの4年間、担い手等への支援事業として実施される。事業内容は表Ⅰ−3−
44に示すとおり整備事業と推進事業とからなり、産地の構造改革を図る上で必要
な事業を助成するものとなっている。
表Ⅰ−3−44
果樹経営支援対策事業の内容
< 整備 事 業 >
優良 品 目 ・品 種 への 転 換
改植
高接
小 規 模園 地 整 備
園 内 道整 備
傾斜 の 緩 和
廃
土 壌 土層 改 良
用水 ・ かん 水
園 施 設設 置
< 推進 事 業 >
労 働力 調 整 シス テ ム
担い 手 支援 情 報シ ス テ ム
大 苗育 苗 ほの 設 置
新 技 術 の導 入 支援
販 路開 拓 の推 進
園 内道 整備 のイ メ ージ
優 良品 目・ 品 種へ の転 換 のイ メー ジ
19年度の中国・四国地域の事業計画は全国のおよそ4分の1(補助金ベース)
を占めており、優良品目・品種への転換(改植・高接)、小規模園地整備(園内
道整備・傾斜の緩和・土壌土層改良)、特認事業(園内道の代替えとして急傾斜
地へのモノール・モノラック設置)等、支援対策事業の導入により産地構造改革
を積極的に支援している。
ウ
花き
(ア) 生産動向
【作付(収穫)面積は花き全体で減少傾向】
中国・四国地域における18年産花きの主産県の作付(収穫)面積は、切り花類が
1,678ha(前年主産県比97.4%)、鉢もの類が9,967a(同96.1%)、花壇用苗もの
類が10,440a(同94.2%)であり、花き全般で減少傾向にある。
また、18年産の花きの品目別出荷量について県別の全国順位(主産県の順位)
をみると、切り花類では、徳島県の洋ラン類1位、高知県のゆり2位、徳島県の
- 130 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
チューリップ3位、鉢もの類では、徳島県のシンビジウム及び岡山県のデンドロ
ビウムが2位と有数の産地となっている(表Ⅰ−3−45)。
表I−3−45
類別
花きの主産県別作付(収穫)面積及び出荷量〔中国・四国地域〕(18年産)
品
単位:(切り花類) ha・千本、(鉢もの類・花壇用苗もの類) a・千鉢(千本)
作付(収穫 )
全 国
全 国
前年比(%)
目
面積
出荷量
シェア
順 位 (作付(収穫)
(出荷量)% (出荷量)
面積)
全
国
中国・四国(主産県計)
き く (主産県計)
広 島
香 川
切
カーネーション(主産県計)
香 川
ば ら (主産県計)
岡 山
愛 媛
洋ラン類 (主産県計)
徳 島
花
高 知
ゆ り (主産県計)
徳 島
愛 媛
高 知
チューリップ(主産県計)
類
徳 島
愛 媛
高 知
切り枝(主産県計)
徳 島
愛 媛
高 知
全国
中国・四国(主産県計)
鉢
シンビジウム(主産県計)
岡 山
も
徳 島
高 知
の
デンドロビウム(主産県計)
岡 山
類
徳 島
高 知
花も 全
国
壇の 中国・四国(主産県計)
用類
鳥 取
苗
岡 山
広 島
17,500
1,678
189
84
105
9
9
24
10
15
42
36
6
149
15
19
115
11
9
2
0
603
136
243
224
210,400
9,967
1,583
178
841
564
481
318
70
92
170,200
10,440
2,740
3,170
3,430
4,923,000
333,900
54,300
21,100
33,200
10,700
10,700
21,820
7,320
14,500
4,422
3,790
632
25,980
2,670
3,510
19,800
8,952
7,550
1,260
142
24,620
6,850
10,400
7,370
300,100
9,424
582
68
298
216
408
309
42
57
800,300
58,040
14,100
18,900
18,500
−
−
−
−
−
−
1.1
1.8
19
11
−
−
2.6
10
−
−
2.0
3.9
18
7
−
−
16.7
2.8
1
9
−
−
1.5
2.0
11.3
17
13
2
−
−
10.6
1.8
0.2
3
8
16
−
−
2.8
4.2
3.0
10
5
8
−
−
−
−
−
−
2.1
9.3
6.7
12
2
4
−
−
11.9
1.6
2.2
2
10
7
−
−
−
−
1.8
2.4
2.3
23
18
19
97.8
97.4
99.8
99.6
100.0
90.6
90.6
90.8
80.8
98.7
99.3
100.0
95.4
108.9
86.0
97.4
115.0
100.5
100.0
102.6
100.0
98.7
91.9
104.7
97.0
96.7
96.1
89.5
99.4
77.8
110.6
102.3
101.9
93.3
112.2
100.3
94.2
95.8
92.4
94.8
資 料: 農 林水 産省 統 計部 「平 成18年 産花 き生 産 出荷 統計 」
注 :1) 全 国値 は 、18年 産 の主 産 県計 の 結果 と 、 全国 調 査年 (16年産 ) にお け る全 国 に占 め る
主産 県の 割 合を 基に 推計 し たも の。
2) 中国 ・ 四 国 は主 産 県 の 計。 中 国 ・ 四 国の 前 年 比 は、 18年 産 から 新 た に 主産 県 と なっ
た県 の数 字 を除 いて 算出 し てい る。
3) 全 国順 位 は、 18年 産の 主 産県 順位 。
- 131 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
花き産出額をみると、3年をピーク
に近年減少傾向にあり、18年は、329億
円(前年比3.8%減、全国シェア8.2%)
となった。県別には、高知県67億円、
香川県43億円、徳島県41億円の順に高
く、農業総産出額に占める割合は、高
知県6.8%、香川県5.4%、山口県4.2%、
徳島県3.9%と、四国地域で高い傾向に
ある(表I−3−46)。
洋 ラン (シン ビジ ウム )
表I−3−46
平成3年
花きの産出額の推移
9年
12年
単位:億 円、%
15年
16年
17年
18年
構成比
全
対前年比
国
4,243
4,702
4,466
4,235
4,134
4,054
3,988
4.6
98.4
中国四国
475
430
396
367
351
343
329
3.9
96.2
全国シェア
11.2
9.1
8.9
8.7
8.5
8.5
8.2
…
…
鳥 取
54
30
26
28
28
27
24
3.5
88.9
島 根
16
24
24
22
23
22
21
3.4
95.5
岡 山
43
45
44
37
36
34
31
2.5
91.2
広 島
45
40
36
35
32
33
34
3.2
103.0
山 口
27
31
30
33
29
27
29
4.2
107.4
徳 島
73
76
60
52
45
49
41
3.9
83.7
香 川
81
62
50
51
51
45
43
5.4
95.6
愛 媛
41
40
44
38
39
38
39
3.0
102.6
高 知
95
82
81
71
67
67
67
6.8
100.0
資料 :農 林水 産 省統 計部 「 生産 農業 所得 統 計」
注 : 構 成比 は 、 農 業産 出 額 の合 計 に 占 める 花 き の割 合 で あ る。
(イ) 流通、消費動向
【 花き全体の卸売数量、卸売価額ともに減少 】
中国・四国地域の花き卸売市場における卸売数量は、切り花類では、ゆりが増
加したものの、カーネーション、ばら等が、作付面積の減少や重油価格の高騰の
影響により出荷量が減少したため、全体として減少した。また、鉢もの類は、消
費の停滞等により減少したほか、花壇用苗もの類についても、ここ数年の価格の
低迷による栽培農家数の減少等により減少した。一方、卸売価格については、鉢
- 132 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
もの類は前年を上回ったものの、切り花類、花壇用苗もの類ともに前年並であっ
た。結果として、18年の卸売市場の花き全体の取扱金額はやや減少し、319億円
(前年比97.7%)となった(表I−3−47)。
表I−3−47
花き類の卸売数量と価額〔中国・四国地域〕
切り花類
鉢もの類
花壇用苗もの類
合 計
卸売数量
卸売価額 卸 売 価
卸売数量
卸売価額 卸 売 価
卸売数量
卸売価額 卸 売 価 卸売価額 前 年 比
(千本)
(億円) 格(円)
(千鉢)
(億円) 格(円)
(千本)
(億円) 格(円) (億円)
(%)
12年
533,211
278
52
23,367
83
355
47,303
23
49
384
93.8%
13年
513,515
273
53
22,056
79
359
47,019
23
49
375
97.8%
14年
502,869
265
53
21,299
75
353
46,793
22
47
362
96.6%
15年
471,918
251
53
21,152
70
331
45,726
21
45
342
94.3%
16年
452,217
253
56
19,935
68
341
41,471
20
49
341
99.7%
17年
432,841
244
56
21,659
66
305
39,095
17
44
327
95.9%
18年
427,481
238
56
20,439
65
318
37,908
16
43
319
97.7%
資料 :農 林水 産 省統 計部 「 花き 流通 統計 調 査報 告」
注: 「卸売価額」とは、花き卸売市場における取扱金額(消費税含)であり、
「卸売価格」とは、1本または
1鉢あたりの単価である。
花きの消費について、18年の一世帯当
たり切り花年間購入額をみると、中国地
域1万1,388円(前年比113.7%)
、四国
地域1万688円(同112.2%)となってい
る(表I−3−48)
。
ゆり
表I−3−48
全
切り花の1世帯当たりの年間購入額
国
中
国
単 位 : 円 ,%
四
国
17年
18年
前年比
1 7年
18 年
前年 比
17年
18年
前年比
10,602
10,722
101.1
10,016
11,388
113.7
9,525
10,688
112.2
資 料: 総 務省 統計 局 「 家 計調 査」
- 133 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(ウ)花きの普及・啓発の取組
a
「ジャパンフラワーフェスティバルinかがわ」の開催
19年 3月2日 から3日 間、香川 県
高松市で、国内最大級の花の祭典「ジ
ャパン フラワ ーフェス ティバル inか
がわ 」が四 国で初め て開催 された 。
同フ ェステ ィバルは 、単に 花や緑 を
見せることにとどまらず、「花と緑の
ある 幸せな 暮らし」 を提案 するイ ベ
ント として 開催され た。ま た、県 内
の花 の愛好 者など一 般県民 がボラ ン
ティアとして参加した。
ジ ャパ ン フラ ワー フ ェス ティ バル inかが わ
b 花きを教育、地域活動に取り入れる「花育」の取組
花きを介した子供の情操の向上、地域のコミュニケーションの創造といった花
きの持つ多様な機能に着目し、花きを教育、地域活動等に取り入れる取組を新た
に「花育」と位置づけ、その推進を図るために(財)日本花普及センターが19年
2月に花育活動推進委員会を設置し「花育活動推進方策」を作成した。この方策
に基づき、20年3月に花き業界等が主体となり、全国花育活動推進協議会が設立
され、花育活動の普及啓発、花育活動のモデル地区等の指導・支援、花育アドバ
イザーとして指導・支援する人材の登録システムの整備・運営等の事業を実施
し、花育活動を全国的な運動として推進することとしている。
このような中、管内でも地域協議会、農業者、小学校等による花壇づくりや花
き栽培、フラワーアレンジメントを教育、地域活動に取り入れる取組が見られる。
特に、香川県では、18年度から、県や花き生産者団体等で組織する「花の里か
がわ推進委員会」が、小学生を対象に生産者の指導による花や盆栽の栽培体験や
栽培した花を利用したフラワーアレンジメントの体験などを行っている。また、
これらの取組を広く県民に周知し、花のある豊かな暮らしを提案している。
エ
畑作 物・ 地域 特産 物
【多 様な 畑作 物・ 地域 特産 物】
中国 ・四 国 地域 の 畑作 物 ・地 域 特産 物に つ いて み ると 、茶 、 葉た ばこ 、 そば を
主体 に地 域の 重要 な作 物と して、 栽培 され てい る。
- 134 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
一方、中 山間地域等では 、その特性や伝
統を活かし て小規模ながら 、地域における
主要な経営 作物となってい るものも多く、
み つま た (全 国 の1 00 %)・ オ リ ーブ ( 同9 9.
5 %)・ ミ シ マ サ イ コ (薬 用 作 物 、 同 7 7 .0 % )
・ 藍 ( 同 6 0 . 7% ) 等 は 全 国 に 占 め る 割 合 も
高い (表 Ⅰ− 3− 49)。
また 、最 近 では 、各 地 で畑 作 物、 地域 特 産
ミ シ マサ イコ (高 知 県)
物 等を 活用 し 、地 域等 が 一体 とな っ た取 組 も
生ま れて いる 。
表Ⅰ−3−49
茶
葉たばこ
そば
みつまた
オリーブ
畑作物・地域特産作物の作付(栽培)状況
鳥取 県
島 根県
岡山県
広島 県
山 口県
徳島県
香川 県
愛 媛県
高 知県
11
245
285
204
80
399
47
151
91
196
37
10
1
85
37
311
89
90
118
49
335
133
107
44
134
102
21
143
302
51
63
608
327
28
64
2
35
28
1
9
2
2
22
45
8
0
ミ シマサ イコ( 薬用 )
藍
ひまわり
こうぞ
こんにゃく
いぐさ
養 蚕 (掃立 卵量 )
単 位 : ha,100箱,%
54
21
34
0
3
1
0
3
1
7
6
86
31
2
27
中四 計
1,760
1,407
1,520
304
64
38
21
43
25
200
47
5
全 国シ ェア
3.7
8.0
3.3
100.0
99.5
77.0
60.7
43.9
30.7
4.2
2.6
2.7
資料 :1)
2)
3)
4)
注 :1)
茶 及 びそ ば:農 林水 産省 統 計部
葉 た ばこ :日本 たば こ産 業 (株 )調 べ
み つ また 、こ う ぞ及 びミ シマ サ イコ :日本 特産 農産 物 協会 調べ
そ の 他の 作物 は 生産 局特 産振 興 課調 べ
茶、 葉 たば こ 、そ ば 及び 養蚕 は 19年 実 績、 オ リー ブ、 藍 、み つま た 及び こう ぞ は18年 実績 、
それ 以 外は 17年 実 績で ある 。
2) 各 県 積み 上げ と 合計 は、 ラウ ン ドの 関係 で一 致 しな い場 合 があ る。
3) 「0 」は単 位に 満 たな いも の、 空 欄は 事実 不詳 又 は調 査を 欠 くも ので ある 。
【主 な畑 作物 ・地 域特 産物 の現 状と課 題】
(ア )茶
中国 ・四 国 地域 に おけ る 茶の 栽培 面 積は 昭 和5 5年以 降 年々 減 少し 、平 成 19年 に
は1 ,760h aとな って いる (図 Ⅰ− 3−3 4)。
- 135 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
しか し、 中 山間 地 域に おけ る 主要 な作 物
と して 管内 の 特産 作 物の 中で は 最も 面積 が
多 く 、 四 国地 域 が 1 ,2 2 0h a で 管内 の 約 7 割
を 占め てお り 、特 に 高知 県が 多 い( 図Ⅰ −
3− 35)。
茶 栽培 ほ場 (写 真 提供 :高 知 県)
図Ⅰ−3−34
茶栽培面積の推移
図Ⅰ−3−35
茶栽培面積(19年)
中四 国 (ha)
鳥取, 11
4 ,000
高知, 608
3 ,000
1760
島根, 204
中国地域 岡山, 151
540ha 31%
広島, 85
中国四国計
2 ,000
山口, 89
1,760ha
四国地域
1,220ha 69%
1 ,000
0
5 5年
6 0年
平 2年
10年
11年
1 2年
中四( 専用園)
1 3年
14年
15年
16 年
1 7年
18年
19年
愛媛, 143
香川, 134
徳島, 335
中四( 兼用園)
資料 :農 林水 産 省統 計部 「 耕地 及び 作付 面 積統 計」
注 :1) 専 用 茶園 :茶 が 1アール以上 集団 的 に栽 培さ れ、かつ、当該 茶 園で 混作 ・間 作 がな いも のを い う。
2) 兼 用 茶園 :茶 以 外の 作物 を間 作 ある いは 混作 す るこ とを 常 態と する もの を いう 。
管内 の茶 栽 培の 特 徴と し ては 、 ①管 内の 約 7割 を 占め る四 国 地域 には 急 傾斜 茶
園 が多 い、 ② 一部 の 県に お いて 老 木茶 園の 割 合が 高 い、 ③全 国 に比 べ機 械 ・施 設
の 導入 が遅 れ てい る 、④ 単 一品 種 (や ぶき た) が中 心 で、 栽培 管 理作 業が 一 時期 に
集中 する など が挙 げら れる 。
このようななか、高知県の碁石茶、徳島県の阿
波番茶など特徴的な製法の茶の取組、愛媛県の新
宮茶の地域ぐるみでの無農薬栽培の取組、高知県
のりぐり山茶の取組など特徴を活かした取組がみ
られる。
りぐり山茶(釜炒茶)は、高知県いの町の地元
一般企業が農業参入して取組んでいるもので、山
に自生していた茶を開墾によって利用している。
茶畑は農薬を使用せず、焼き畑や草肥など昔なが
らの農法で育て、有機JAS認定を受けている。
りぐり山茶の栽培(高知県)
- 136 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(イ )葉 たば こ
葉 た ばこ は、 日本 たば こ 産業 株式 会社 との
葉 たば こ栽 培
完全 契 約栽 培で 、全 量買 い 上げ 制度 があ るた
め 収益 性は 安 定し てお り 、管 内各 県 で栽 培 さ
れて いる 。
中 国・四国 地域に おける 葉たば こ栽培 面
は 、全 国と 同 様に 高齢 化 、労 働力 不 足等 に よ
りや や 減少 傾 向に あり 、 19年 産 につ いて は 栽
培面 積 1,4 07h aと 前年 比9 3% (全 国の 8.0 %) と
なっ てい る( 図Ⅰ −3 −36)。
ま た 、 栽 培 農 家 戸数 ( 契 約 人 数 ) に つ い て
も1 ,192人 と前 年比 92% と減 少傾 向にあ るが 、
写 真提 供: 西日 本 たば こ耕 作組 合
一人 当た り栽 培面 積は 118ア ール で前 年並 とな
った (全 国12 9アー ル)。
葉た ばこ は 労働 集 約的 な 作物 であ
り、10ア ール 当た り労 働時 間が多 く、
特 に夏 の収 穫 時期 に 作業 が 集中 し、
図Ⅰ−3−36
700
(各県)ha
(全国)100ha
高知県
愛媛県
600
鳥取県
徳島県
香川県
岡山県
500
その他
全 国
重 労働 であ る 。ま た 外国 製 品の 低価
格 帯へ の参 入 によ り 国産 の 製品 たば
こ のシ ェア は 低下 傾 向に あ る。 18年
葉たばこ栽培面積の推移
400
度 は1. 6ポ イン ト 低下 し、 64 .8% とな
っ た ( ( 社 )日 本 た ば こ 協 会 調 べ )。
300
今後 は栽 培 管理 作 業の 機 械化 、小
規 模土 地基 盤 整備 の 実施 及 び共 同乾
200
燥 施設 の導 入 ・利 用 の促 進 によ り、
よ り一 層の 省 力化 、 低コ ス ト化 及び
高 品質 化を 図 り、 国 産原 料 の優 位性
100
0
H 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
を確 保 する こと が 重要 であ る。
資料:全国たばこ耕作組合中央会、日本たばこ産業( 株)
(ウ )そ ば
そば は全 国 的に 栽 培さ れ てお り 、中 国・ 四 国地 域 にお いて も 管内 全県 で 栽培 さ
れて いる (19 年の 作付 面積1 ,520 ha、全 国の 3.3% )。
近年 、 中 山 間 地域 を 中 心 に、「 そ ば 打 ち道 場 」 等 そば を 都 市と 農 村 の 交流 に 活
か す事 例が 見 られ る が、 管 内に お いて も地 元 産そ ば 粉を 使っ た そば や特 産 品の 開
発、 そば 道場 の開 設等 の取 組が行 われ てい る。
- 137 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(エ)その他地 域特産 物の 地域 が一 体と なっ た取 組
愛媛県の伊予市唐川地区では、びわ葉茶の生産
の取組みが行われている。同地区では急傾斜地を
利用して古くからビワが栽培されていたが、高齢
化の進行のため、ビワ園の遊休化対策として3年
にびわ葉茶を開発した。6年に「唐川びわ葉茶生
産研究会」を設立し、15年度に生産振興総合対策
事業を活用して加工施設を整備し、生産の高品質
安定化を図っている。同研究会は19年にえひめ愛
フード推進機構(会長
愛媛県知事)から「愛」
あるブランド産品として認定を受けるなど、販路
拡大へ向けた取組も推進している。ビワ葉茶原料
茶葉の栽培面積 は10.3ha(19年度)、生産 量は
672.9kgとなっている。
びわ 葉 茶( 愛媛 県 )
オ
施設園芸における原油価格高騰対策
施設園芸において使用されるA重油の価格は、17年から高騰を続けており、農
業経営費のうち光熱動力費が2割から3割程度を占める施設園芸農家の生産コス
トに大きな影響を与えている(図Ⅰ−3−37)。
図Ⅰ−3−37
A重油価格の推移
円/L
100
2008年3月
91.5円
90
80
70
60
2003年3月
47.1円
50
資料 : 農業 物価 統計
- 138 -
3月
2008年1月
9月
11月
7月
5月
3月
2007年1月
9月
11月
7月
5月
3月
2006年1月
9月
11月
7月
5月
3月
2005年1月
9月
11月
7月
5月
3月
2004年1月
9月
11月
7月
5月
3月
2003年1月
40
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
管内の各産地においては、多層カーテンの設置等省エネ施設の導入を始め、通
常より温度を下げての栽培管理、加温開始時期の繰り下げ、無加温栽培への変更
等原油高騰に対応した対策が講じられている。(表Ⅰ−3−50)
表Ⅰ−3−50
原油価格高騰に対応した施設園芸省エネルギー対策
品 目
野 いちご
いちご
菜 いちご
果 ハウスミカン
樹 マンゴー
輪ぎく
輪ぎく等
花 ばら
省エネルギー対策
4段サーモによる変温管理
効率的エネルギー利用でパイプハウスを加温
内張資材の導入によりパイプハウスを保温
三重被膜と保温資材でハウスの保温
再生重油専用バーナーを導入しパイプハウスを加温
低温開花性品種の導入による開花設定温度の変更
早朝電照と二重被覆でパイプハウスを保温
冷暖房エアコンの排気を利用してハウスを保温・除
湿
産 地
山口県岩国市
き ばら
ヒー トポンプとボイラー併用によるガラ スハウスの温度
山口県阿東町
香 川 県 東か が わ市
香川県三豊市
徳島県阿南市
高知県いの町
島根県安来市
岡山県津山市
広島県呉市
管理
ばら
洋ラン
スイートピー
ヒ ー ト ポ ンプ と 重 油 暖房 機 を 併 用し て 鉄 骨 ハ ウス を 保 温
業務用エアコンでパイプハウス内を暖房
空気 膜フィルムの導入によりパイプハウ スの暖房費を軽
愛媛県今治市
岡山県岡山市
岡山県倉敷市
減
ポ イ ンセ チ ア 等
ヒートポンプ式暖房機でパイプハウスを保温
香 川 県 まん の う町
資料 :原 油価 格 高騰 に対 応 した 施設 園芸 省 エネ ルギ ー対 策 取組 事例 集 (中 国 四国 農政 局調 べ )
参考 URL http://www.maff.go.jp/chushi/joho/genchi/19syouene/index.html
農政局では、強い農業づくり交付金による緊急支援策として、二重・三重カー
テン、多段式サーモ装置、循環扇等、施設園芸用の保温設備の導入について支援
をしたほか、「原油価格高騰対策情報」コーナーをホームページに設置し、農業
分野における原油価格高騰に関連する各種情報の収集を行うとともに、各種支援
制度や省エネルギー対策に係る技術情報等を農業者等関係者に紹介している。
【 内張 りの 多層 化 】
【 循環 扇の 整 備】
「原油価格高騰対策情報」コーナーのURL
:http://www.maff.go.jp/chushi/oshirase/genyu_koutou/index.html
- 139 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(3)畜産
畜産全般では、前年に比べて全畜種とも飼養戸数は減少しており、飼養頭
数については、乳用牛は減少、肉用牛と中小家畜については、横ばいから増
加となった。飼養規模については、全畜種とも規模拡大が進んでいる。
中国・四国地域で喫緊の課題となっている肉用牛増頭と飼料自給率の向上
については、現地検討会や意見交換会を積極的に開催し、関係者との協力の
もとそれぞれのテーマに沿った取組を推進した。
ア
概要
【飼養戸数は引き続き減少】
中国・四国地域の畜産農家戸数は、19年は約9,727戸と5年前に比べ3割の減
少、前年に比べ4.4%の減少となり、1万戸を下回る戸数となった(図Ⅰ−3−
38)。この減少は、小規模な肉用牛飼養農家における後継者不足や高齢化による
ところが大きい。
一方、養豚、採卵鶏の飼養規模の大きい階層にあっては、飼養頭羽数の拡大が
進んでいる(図Ⅰ−3−39)。
図Ⅰ−3−38
畜産農家戸数の推移(中国・四国)
(戸)
25,000
ブロイラー
採卵 鶏
養豚
酪農
肉用 牛
7 67
20,000
960
7 28
910
83 0
676
840
15,000
6 45
7 60
770
3 ,6 90
6 14
74 0
72 0
3,4 30
583
7 00
6 60
3, 19 0
2 ,9 70
10,000
2 ,7 60
5 61
6 80
6 10
2 ,65 0
5 26
6 37
59 2
2 ,51 0
5 01
6 04
55 7
5 34
46 6
2 ,3 80
2 ,1 10
49 1
5 02
44 9
1 ,99 5
5,000
1 3, 900
1 2, 500
11 ,3 00
1 0, 300
9, 49 0
8, 76 0
7,9 80
7,4 20
6 ,5 60
6 ,2 90
0
9
10
11
12
13
14
15
16
資 料: 農林 水 産省 「畜 産統 計」、「畜 産物 流 通統 計」( 平 成19年2月 1日)
注: 1) 採 卵鶏 は、 9年は 成鶏 め す300羽 未 満、 10年 以 降は 1,000羽未 満を 除 く。
2) 平 成17年は セン サ ス年 であ り採 卵 鶏、 豚が 未 調査 のた め該 当 なし 。
- 140 -
18
19
(年)
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−39
(%)
35
30
25
20
15
10
5
0
養豚肥育
採卵鶏
酪農
肉牛繁殖
肉牛肥育
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
大規模経営の戸数シェアの推移(中国・四国)
9
18.6
10
21.1
11
23.3
13
22.8
14
24.2
15
24.8
16
26.1
12.6
8.9
16.4
11.4
17.7
11.4
17.3
11.8
19.5
12.5
20.5
13.5
21.6
13.7
6.9
6.1
8
5.5
9.2
6.1
10.3
8
11.3
10.7
13.3
10.5
11.7
11.2
17
18
32.5
19
33.5
14.7
24.8
15.5
27.3
15.8
12.3
13
13.7
13.8
14
12.8
(年)
資料 :農 林水 産 省「 畜産 統 計」 (各 年 2月 1日)
注 : 1) 大 規 模 経営 の 定 義は 、 酪 農50頭 以 上 、肉 牛 肥 育100頭 以 上、 肉 牛 繁殖 10頭 以上 、 肥 育
豚千 頭 以上 、採 卵 鶏5万羽 以 上の 飼養 規 模と した 。
2) 平 成 12年 及び 17年( 豚、 採卵 鶏 )は セン サス 年 のた め調 査 を休 止。
中国・四国地域における農業産出額に占める畜産部門の産出額(18年)の割合
は28.3%(約2,393億円)となっており、全国平均の30.0%をわずかに下回ってい
る。これを畜種別にみると、鶏部門が全国平均を大幅に上回っているものの、乳
用牛、肉用牛及び豚では全国平均を下回っている状況にある(表Ⅰ−3−51)。
また、畜産経営の1頭当たり労働時間は、子牛生産費及び牛乳生産費が、直接
労働、間接労働ともに多く、特に家畜の飼養管理及び自給飼料生産に係る労働時
間が、他の畜産経営に比べて群を抜いて多くなっている(表Ⅰ−3−52)。
表Ⅰ−3−51
畜産産出額と中国・四国地域の位置付け(18年)
全国
中国・四国
項 目
金額(億円) 割合(%) 金額(億円) 割合(%)
全国比(%)
農業産出額
88,3 21
8,4 53
9.6
うち畜産
26,5 12
3 0.0
2,3 93
28. 3
9.0
うち乳用牛
7,4 55
2 8.1
5 11
21. 4
6.9
肉用牛
5,5 46
2 0.9
4 26
17. 8
7.7
豚
5,4 16
2 0.4
3 50
14. 6
6.5
鶏
7,4 76
2 8.2
1,0 86
45. 4
14.5
資 料: 農 林水 産省 「 生産 農業 所得 統 計」
- 141 -
第 Ⅰ部
表Ⅰ−3−52
1戸当たり
飼養月平均
頭数(頭)
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
営農類型別1頭当たり労働時間(中国・四国)(18年)
間接労働時間(h)
直接労働時間(h)
給餌給水
敷料管理
その他
計
自給牧草
合計(h)
主要管理
作業割合
(%)
計
子牛生産費
11.0
46.9
23. 1
24.9
94.9
11.1
13.1
108.1
75.1
去勢若齢肥育
33.3
41.8
9. 8
8.1
59.6
0.8
5.8
65.4
80.0
乳雄肥育
74.3
16.0
4. 1
2.5
22.5
0.3
2.2
24.8
81.8
牛乳生産費
30.4
43.6
18. 7
75.5
137.8
4.7
7.7
145.5
46.0
肥育豚生産費
977.1
0.8
0. 8
1.2
2.8
−
0.1
2.9
−
資 料: 農 林水 産省 「 農業 経営 統計 調 査( 畜産 物 生産 費統 計)」
注: 1) 主 要管 理 作業 割合 は、 給 餌給 水、 敷 料管 理お よび 自 給牧 草の シ ェア 、% 。
2) 子 牛生 産 費の 「飼 養月 平 均頭 数」 は ,繁 殖め す牛 の 飼養 月平 均 頭数 。
3) 牛 乳生 産 費の 「飼 養月 平 均頭 数」 は ,搾 乳牛 の飼 養 頭数 (通 年 換算)。
イ
畜産振興・経営の安定化に向けた各種取組
【現地検討会等の開催】
(ア)肉用牛生産振興に向けた取組
中国・四国地域は古くから和牛の産地と知られ、全国的にも主要な和牛繁殖基
地であったが、近年は肉用牛経営の高齢化と後継者不足から飼養戸数、飼養頭数
ともに急速に減少しており、繁殖雌牛を基幹として肉用牛の増頭を図ることが、
中国・四国地域の肉用牛生産を将来にわたって維持・活性化するための現下の喫
緊の課題となってる。
こうした状況のもと、17年に設置された中国四国地域肉用牛生産増頭会議のな
かで行政機関、学識経験者、生産者を中心に管内の肉用牛生産振興(増頭)のた
めの行動への支援策として、肉用牛生産の取組事例等の紹介、生産段階における
課題解決に向けた意見交換等を積極的に実施してきている。
19年度については、耕作放棄地等への放牧事例についての現地検討会や肉用牛
経営で活躍している女性の意見交換会等を開催するなど、関係機関と連携して肉
用牛増頭に取り組んだ。
また、管内(鳥取県下)で全国和牛能力共進会が開催されたことにより、管内
の生産者や関係者の間で今後の和牛改良や振興に対する意識の向上がみられた。
(イ)飼料自給率向上に向けた取組
a
自給飼料増産
中国四国地域耕畜連携推進協議会では、近年、農家の高齢化や後継者不足によ
り減少している自給飼料について、作付け面積の拡大や国産稲わらの利用、放牧
の推進等の自給飼料増産運動を実施している。
19年度については、協議会の中で飼料作物や稲発酵粗飼料の目標面積を掲げ取
組を強化し、公共牧場の利用促進や飼料生産組織の育成を図った。また、飼料生
産の外部化を図るため、現地研修及び事例紹介を含む現地検討会を開催した。
- 142 -
第 Ⅰ部
b
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
エコフィード
地域で発生する食品残さや地域未利用資源の飼料化とその利用の推進が求めら
れている。このため、中国四国地域食品残さ飼料化推進協議会では、エコフィー
ド利用の推進と理解醸成や関係者の情報の共有化と連携、技術の普及浸透のため
取組を行っている。
19年度については、新たに小・中学校の栄養教諭を構成員に加え、子供への食
育を通じて消費者のエコフィードに対する理解醸成を図り、また、食品残さの飼
料化の状況や課題解決のため、管内の食品残さ飼料化施設について現地検討会及
び意見交換会を開催した。
(ウ)配合飼料価格高騰に対応した取組
a
家畜生産性向上
近年の原油高騰を原因とするバイオエタノールの増産によるトウモロコシ価格
の高騰のため、これを原料とする配合飼料価格が上昇し、畜産経営に深刻な影響
を与えている。
19年度は、このような状況を受け、畜産農家の経営の安定化を図るため、家畜
の生産性の向上についての検討、飼養管理技術等の普及啓発、情報収集と提供を
目的とした中国四国地域家畜生産性向上会議を設置し、事例の収集や意見交換会
を開催した。
また、この会議については、中国四国地域耕畜連携推進協議会や中国四国地域
食品残さ飼料化推進協議会と連携を図ることとした。
b
消費者の理解醸成
配合飼料価格の高騰等の影響を受け、厳しい状況となっている畜産農家の現状
について、消費者への理解を求めるため、消費者等を対象とした飼料価格高騰等
の畜産をめぐる状況変化への理解醸成のための説明会を開催した。
c
「飼料価格高騰における対応情報」コーナーのホームページの開設
農政局では、配合飼料価格の高騰や各種支援制度を生産者等に関する情報提供
を行うために、農政局ホームページに「飼料価格高騰における対応情報」コーナ
ーを開設した。
「飼料価格高騰における対応情報」コーナーURL:
http://www.maff.go.jp/chushi/oshirase/siryou_koutou/index.html
ウ
酪農
【飼養戸数・頭数とも減少傾向、飼養規模は拡大】
中国・四国地域の酪農経営は、近年、飼養戸数・頭数ともに減少傾向にあり、
19年2月現在の乳用牛飼養戸数は、前年比5.5%減の1,995戸となった。飼養頭数
- 143 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
は小規模層の飼養農家の離農を中心とした頭数の減少が進んでおり、前年比4.8
%減の8万8千頭となったが、これには減産型計画生産の影響が出ているものと
思われる。この結果、1戸当たり飼養頭数は前年に比べ0.3頭増加し43.9頭とな
り、引き続き規模拡大は進展している(表Ⅰ−3−53、図Ⅰ−3−40)。
表Ⅰ−3−53
乳用牛の飼養動向(中国・四国)
飼養戸数
戸
県 名
鳥取
島根
岡山
広島
山口
徳島
香川
愛媛
高知
中国・四国
都 府県計
北海道
全国
飼養頭 数(めす)
100頭
前年 比(%)
227
208
479
238
104
226
183
213
113
1,995
17,100
8,310
25,400
94.6
96.7
95.2
94.1
93.7
94.2
92.9
91.0
95.0
94.5
95.0
96.7
95.5
経営規模
頭/戸
前年 比(%)
113
105
210
113
44
82
66
87
54
875
7,561
8,360
15,920
96.6
97.2
92.5
99.1
96.9
93.9
97.4
92.6
94.1
95.2
96.9
97.7
97.3
49.8
50.5
43.8
47.5
42.7
36.3
36.2
40.9
48.1
43.9
44.2
100.6
62.7
資 料: 農 林水 産省「 畜 産統 計」
( 19年 2月)
図Ⅰ−3−40
乳用牛の飼養戸数、飼養頭数の推移(中国・四国)
(戸)
3,500
(百頭)
1,200
3,000
1,000
2,500
飼養戸数
飼養頭数
800
2,000
600
1,500
400
1,000
200
500
0
0
(頭)
50.0
37.9
39. 4
40.6
42.0
43.9
35.3
36.7
43.6
34.4
11
12
13
14
15
16
17
18
19
一戸当たり
飼養頭数
25.0
0.0
資 料 :農 林水 産省 「 畜産 統計 」
生乳生産量については、飼養頭数が減少傾向で推移していることから、18年度
は前年度比2.3%減の51万トンとなった。
生乳の飲用向け比率については、中国・四国地域は大消費地圏である京阪神に
近いことから全国平均に比べ相対的に高い水準で推移していたが、生乳流通の広
域化が図られたこと等から、近年は全国平均とほぼ同水準で推移しており、18年
度は前年度に比べ0.8ポイント増の88.7%となった(図Ⅰ−3−41)。
- 144 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−41
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
生乳生産量及び飲用比率の推移(中国・四国)
(千ト ン)
(%)
100.0
600.0
生乳生 産量(中
国・四 国)
飲用比 率
国・四 国)
450.0
95.0
300.0
90.0
150.0
85.0
0.0
(中
飲用比 率 (都
府県平 均)
80.0
11
12
13
14
15
16
17
18
資料 :農 林 水産 省「 牛乳 乳 製品 統計 」
エ
肉用牛
【飼養戸数減少傾向、飼養頭数は減少傾向に歯止め、飼養規模は拡大】
中国・四国地域の肉用牛経営は、近年、飼養戸数は減少傾向、飼養頭数は横ば
い傾向にあり、19年の肉用牛飼養戸数は、前年比4.1%減の6,290戸となっており、
飼養頭数については、前年比0.2%減の21万1千頭となった。この結果、1戸当
たりの飼養頭数は、前年に比べ1.3頭増加し33.6頭となった。1戸当たりの飼養
頭数を県別にみると、肥育経営が主体の四国各県(高知県を除く)で全国平均
(34.1頭)を大幅に上回っており、徳島県で90.8頭、以下愛媛県62.9頭、香川県
55.3頭となっている。一方、一戸当たりの飼養頭数が最も少ないのは小規模な繁
殖経営を主体とした島根県で18.4頭となっている(表Ⅰ−3−54、図Ⅰ−3−42)。
表Ⅰ−3−54
県 名
鳥取
島根
岡山
広島
山口
徳島
香川
愛媛
高知
中国・四国
全国
肉用牛の飼養動向(中国・四国)
飼養戸数
戸
前年比(%)
556
93.4
1,910
96.0
795
96.8
1,000
93.5
794
100.8
316
94.6
347
95.9
294
99.0
275
91.7
6,290
95.9
82,300
96.1
飼養頭数
経営規模
100頭
前年比(%) 頭/戸
208
99.0
37.4
352
98.1
18.4
347
100.9
43.6
291
98.6
29.1
187
101.1
23.6
287
98.6
90.8
192
102.7
55.3
185
101.6
62.9
62
98.1
22.4
2,112
99.8
33.6
28,060
101.9
34.1
資料 :農 林 水産 省「 畜産 統 計」( 19年 2 月)
- 145 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−42
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
肉用牛の飼養戸数、飼養頭数の推移(中国・四国)
(百頭)
(戸)
12,000
2,500
10,000
2,000
8, 000
飼養戸数
飼養頭数
1,500
6, 000
1,000
4, 000
500
2, 000
0
0
(頭)
40.0
21.3
22. 8
24. 1
26 .4
2 9.5
28 .0
31.0
32.3
33. 6
一戸当たり
飼養頭数
20.0
0.0
11
12
13
14
15
16
17
18
19
資 料: 農 林水 産省 「畜 産 統計 」
肉用牛の飼養頭数を種類別にみると、肉用種で前年比0.4%増の10万7千頭、
乳用種(ホルスタイン種他)は前年比4.6%減の3万6千頭となった。一方、交
雑種(F1又はF1クロス(黒毛和種の雄とF1雌の子供))の飼養頭数は前年比0.7%
増の6万8千頭となり、肉用牛全体に占める交雑種の割合は、19年は前年をわず
かに上回る32.1%となった(図Ⅰ−3−43)。
19年度の肥育素牛の取引頭数及び取引価格については、家畜市場における取引
頭数は黒毛和種と交雑種は前年を上回ったが、褐毛和種、ホルスタイン種は下回
った。取引価格は全品種下回り、黒毛和種を除く3品種ででかなり下回った。(表
Ⅰ−3−55)。
図Ⅰ−3−43
肉用牛の種類別飼養頭数の推移
肉用種
乳用種
交雑種
交雑種の比率
32.1%
140,000
35%
120,000
30%
100,000
25%
80,000
20%
60,000
15%
40,000
10%
20,000
5%
0
0%
12
13
14
15
16
17
18
19
資料 : 農林 水産 省 「畜 産統 計」( 各 年2 月1 日 )
注 : 1) 乳用 種 は交 雑種 を除 い た値 であ る。
2) 交 雑種 は、 乳 用種 を母 、 肉用 種を 父 とし たF1牛 であ り、 ま た、 F1牛 を母 、 肉用
種 を父 と した F1ク ロス 牛 も含 む。
- 146 -
第 Ⅰ部
表Ⅰ−3−55
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
肥育素牛の取引き(19年度)
取引頭数
品種
黒毛和種
褐毛和種
ホルスタイン種
交雑種
第3章
100頭
3,692
74
123
837
取引価格
前年 度比(%)
101.3%
95.6%
77.5%
108.4%
千円/頭
492
321
99
212
前年度比( %)
96.7%
87.0%
85.5%
82.7%
円/kg
平均体重
日令
kg/頭
(日)
1,771
1,124
363
736
278
285
272
288
282
280
228
254
資 料: 農 畜産 業振 興 事業 団「 畜産 の 情報 (国内 編)」
注: 取 引価 格は 、 雄雌 平均 価格 。
オ
中小家畜
(ア)
養豚
【飼養戸数は減少傾向、飼養頭数は減少傾向に歯止め、飼養規模は拡大】
中国・四国地域の養豚経営は、近年、飼養戸数は減少傾向にあり、飼養頭数は
緩やかな減少傾向から下げ止まり、19年の豚飼養戸数は前年比3.6%減の449戸、
飼養頭数は0.7%増の59万頭となり、1戸当たりの飼養頭数は、前年に比べ58頭
増加し、1,323頭(全国1,293頭)と規模拡大が進展している。これを県別にみる
と、愛媛県が飼養頭数で中国・四国地域の38.9%、飼養戸数で32.5%を占めてい
る(表Ⅰ−3−56、図Ⅰ−3−44)。
表Ⅰ−3−56
豚の飼養動向(中国・四国)
飼養戸数
飼養頭数
前年比(%)
100頭
前年比(%)
鳥取
49
94.2
738
95.0
島根
18
100.0
405
102.3
岡山
36
102.9
393
91.2
広島
43
93.5
632
101.0
山口
22
81.5
255
104.1
徳島
48
84.2
388
92.4
香川
52
100.0
420
105.5
愛媛
146
101.4
2,310
103.4
高知
35
100.0
401
109.0
中国・四国
449
96.4
5,941
100.7
全国
7,550
96.8
97,590
101.4
資 料: 農林 水 産省 「畜 産 統計」(19年2月 )
県 名
戸
- 147 -
経営規模
頭/戸
1,506
2,250
1,092
1,470
1,159
808
808
1,582
1,146
1,323
1,293
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−44
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
豚の飼養戸数、飼養頭数の推移(中国・四国)
(百頭)
(戸)
飼養戸数
7,000
800
飼養頭数
6,000
600
5,000
4,000
400
3,000
2,000
200
1,000
0
0
1400
(頭)
1265
1200
1000
826
858
11
12
911
948
13
14
990
1323
一戸当たり
飼養頭数
1048
800
15
16
17
18
19
資料 : 農林 水産 省 「畜 産統 計」
注: 17年 は セン サス 年 のた め調 査を 休 止。
(イ)
採卵鶏
【飼養戸数は減少傾向、飼養羽数は増加、飼養規模は拡大】
中国・四国地域の採卵鶏経営は、近年、飼養戸数は減少傾向にあり、飼養羽数
は緩やかな減少傾向から増減を繰り返し、19年の採卵鶏飼養戸数は、飼養者の高
齢化、後継者不足等を背景として前年比6.9%減の502戸、飼養羽数は、4.2%増
の2,484万羽となった。その結果、一戸当たりの飼養羽数は、前年に比べ4,800羽
増加し、4万9,500羽(全国4万1,300羽)と引き続き規模拡大は進展している(表
Ⅰ−3−57、図Ⅰ−3−45)。
中国・四国地域の飼養羽数(成鶏めす)は全国の17.4%を占め、特に、岡山県
(全国第5位)、広島県(同6位)、香川県(同12位)の3県で中国・四国地域の
飼養羽数全体の70.7%を占めており、瀬戸内海沿岸地域を中心に産地が形成され
ている。
表Ⅰ−3−57
県 名
鳥取
島根
岡山
広島
山口
徳島
香川
愛媛
高知
中国・四国
全国
採卵鶏の飼養動向(中国・四国)
飼養戸数
戸
21
35
98
64
38
25
114
89
18
502
3,460
飼養羽数
前年比(%)
91.3
100.0
93.3
91.4
100.0
86.2
92.7
96.7
94.7
93.1
96.1
千羽
632
1,023
6,517
6,330
2,281
575
4,726
2,418
339
24,841
142,765
経営規模
前年比(%)
100羽/戸
104.6
127.6
113.1
97.1
101.0
102.3
103.1
99.6
101.5
104.2
104.3
301
292
665
989
600
230
415
272
188
495
413
資料 :農 林 水産 省「 畜産 統 計」( 19年 2 月)
注 : 1) 飼 養戸 数 は、 種 鶏の み の飼 養 者及 び 1,000羽 未満 の 飼養 者 を除 く
2) 飼養 羽数 は、 6 ヶ月 以上 の 成鶏 めす 羽数 。
- 148 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−45
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
採卵鶏の飼養戸数、飼養羽数の推移(中国・四国)
(千羽)
(戸)
1,000
飼養戸数
25,000
飼養羽数
750
20,000
500
15,000
250
10,000
0
(千羽)
49.5
44.7
50.0
40.0
30.8
31.5
32.9
35.0
11
12
13
14
35.7
15
一戸当たり
飼養羽数
38.8
30.0
20.0
16
18
19
資料 :農 林水 産 省「 畜産 統 計」
注 :17年は セ ンサ ス年 の ため 調査 を休 止 。
(ウ)
ブロイラー
【飼養戸数は減少傾向、飼養羽数は減少傾向に歯止め、飼養規模は拡大】
中国・四国地域のブロイラー経営は、近年、飼養戸数は減少傾向にあり、飼養
羽数は減少傾向から下げ止まり、19年のブロイラー飼養戸数は前年比2.0%減の
491戸と減少し、年間出荷羽数は前年比0.6%増の7,109万羽となった。一戸当た
りの年間出荷羽数は14万5千羽と、全国平均の24万1千羽より規模は小さいもの
の、京阪神地域に近接する徳島県、岡山県及び鳥取県が主要な産地県となってい
る。(表Ⅰ−3−58、図I−3−46)。
特に徳島県は、出荷羽数が中国・四国地域内最大であるとともに、全国でも第6
位のブロイラー生産県となっており、中山間地域の重要な基幹作目となっている。
表Ⅰ−3−58
ブロイラーの飼養動向(中国・四国)
飼養戸数
県 名
鳥取
島根
岡山
広島
山口
徳島
香川
愛媛
高知
中国・四国
全国
戸
38
5
20
11
37
264
56
46
14
491
2,583
年間出荷羽数
前年 比(%)
万羽
100.0
100.0
95.2
100.0
80.4
100.0
98.2
102.2
100.0
98.0
97.7
1,135
191
1,214
396
683
1,911
861
585
133
7,109
62,182
前年 比(%)
96.9
101.9
105.9
98.5
99.5
98.9
103.6
98.2
116.7
100.6
102.5
1戸当たり年
間出荷羽数
(万羽/戸)
29.9
38.1
60.7
36.0
18.5
7.2
15.4
12.7
9.5
14.5
24.1
資 料: 農林 水 産省 「畜 産 物流 通統 計」
注: 1) 飼 養戸 数は 19年2 月1 日現 在 ,年 間出 荷羽 数 は, 17年 1 月∼ 12月 。
2) 1 戸当 た り年 間出 荷 羽数 は 、年 間出 荷 羽数 を出 荷 戸数 で除 し た数 であ る 。
- 149 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ− 3− 46
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
ブロイラーの飼養戸数、飼養羽数の推移(中国・四国)
(千羽)
(戸)
700
18, 000
600
15, 000
500
飼養戸数
飼養羽数
12, 000
400
9,000
300
6,000
200
3,000
100
0
0
(千羽)
40.0
30.0
24. 9
25.2
25.4
11
12
13
27. 2
27.6
27.8
28.3
14
15
16
17
29.6
29.8
18
19
一戸当たり飼
養羽数
20.0
資料:農林水産省「畜産物流通 統計」
カ
飼料作物
【作付面積やや減少】
中国・四国地域における飼料作物の作付面積は近年減少傾向で推移しており、
19年産の作付面積は、前年比1.4%減の1万7,010haとなっており、全国に比べ減
少割合が大きくなっている。
作物別の作付面積をみると、牧草類が1万2,000haと最も多く、青刈りとうも
ろこしとソルゴーはほぼ同程度で、それぞれの2,532ha、2,475haとなっている(表
Ⅰ−3−59)。
表1−3−59
飼料作物の生産動向(19年産)
青刈りとうもろこし
牧 草類
項 目
面積
(100ha)
前年比
(%)
面積
(100ha)
前年比
(%)
ソル ゴー
面積
(100ha)
前年比
(%)
合 計
面積
(100ha)
中国・四国
120
98.9
25
97.0
25
97.4
170
全国
7,733
99.5
861
102.0
190
99.5
8,784
資 料: 農林 水 産省 「平 成 19年 産飼 料作 物 の作 付( 栽培 ) 面積 及び 収 穫量 」
前 年比
(%)
98.6
99.8
中国・四国地域は大半が中山間地で占められており、飼料作物の生産条件とし
ては、小区画、分散、傾斜地等が多く恵まれた状況にはない。今後、飼料作物生
産作業に係る労働力不足を背景として、作業の外部委託の需要は年々高まるもの
と見込まれることから、飼料生産コントラクター等の経営支援組織の育成・定着
が不可欠なものとなっている。
また、耕作放棄地の利用や放牧の推進など、その地域にあった飼料自給率向上
のための取り組みが重要となっている。
- 150 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
6 農産物等の輸出への取組の支援
世界的な日本食ブームの広がりやアジア諸国等における経済発展により農林
水産物等の輸出拡大のチャンスが拡大しており、輸出促進に向けたセミナーや
商談会には生産・流通・加工など多くの関係者の参加があった。
【戦略的な取組により輸出額は増加】
(1)農産物等の輸出の現状
近年、世界的な日本食ブームの広がりやアジア諸国等における経済発展に伴う
富裕層の増加等により、高品質な我が国農林水産物・食品の輸出拡大のチャンス
が増大している。
このような背景のもと、農林水産物等の輸出促進は、「攻めの農政」の重要な
柱の一つとして位置づけられ、官民一体となって各種取組を推進することを目的
として17年4月に設立された「農林水産物等輸出促進全国協議会」において、21
年までの5年間で農林水産物等の輸出額を倍増する基本戦略が策定された。
政府としては、この取組をさらに加速させ、25年までに農林水産物等の輸出額
1兆円規模を目指している。この目標の実現に向け、19年5月に開催された「農
林水産物等輸出促進全国協議会総会」において、官民が連携した戦略的取組とな
る「我が国農林水産物・食品の総合的な輸出戦略」が了承された。
こうした戦略のもと、我が国の農林水産物等の輸出については、16年から、毎
年前年比10%を超える順調な伸び率を示し、19年の輸出額(速報値)では4,338
億円(前年比16%増)となっている。
(2)農政局の取組
ア
輸出促進に向けた関係機関との連携強化
農政局では、管内の県、生産者団体、食品関係団体、ジェトロ、国の地方支部
局等の参加のもと「中国四国地域農林水産物等輸出促進連絡会」を11月8日に開
催し、輸出促進に係る農政局の活動方針及び各県の取組状況についての報告や今
後の連携した輸出促進の取組に向け意見交換を行った。
イ
農林水産物・食品輸出促進セミナーの開催
(ア)
農林水産物・食品輸出オリエンテーションの会の開催
輸出意欲のある生産者や流通関係者を対象として、国内外から輸出促進サポー
ターを招いて輸出に関するノウハウの提供と、展示・商談会、試食会を実施した。
「定番化に向けた輸出戦略」をテーマとするセミナーでは、募集人員を大幅に上
回る160名が参加し、また、海外バイヤー5社、国内バイヤー10社による商談会
- 151 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
には 154件の参加があった。47件の出展があった輸出産品発掘会では、海外バイ
ヤー、国内バイヤー等により、各国で求められる食材について、密度の高い情報
交換が行なわれた。
試 食 会 の様 子
(イ)
展 示品 の 一 例
農産物等輸出促進セミナーの開催
高知県との共催により、輸出に取り組む事業者等を対象としてセミナー及び相
談会を開催した。「アジアにおける日本農産物の現状」「中国における日本農産物
の現状」をテーマとするセミナーには17名が参加し、また、セミナー講師による
輸出適性のある商品の発掘を目的とした個別相談会には行政関係者、水産物加工
業者など4件の参加があり、商品の輸出適性についての具体的なアドバイスを受
けた。(3月18日、高知市)
また、徳島県、ジェトロ徳島との共催により、輸出に取り組む事業者等を対象
としてセミナー及び相談会を開催した。「農林水産物・食品の輸出取り組み事例
の紹介、輸出品目や輸出国・地域に応じた
輸出のポイント・留意点など」をテーマと
するセミナーには50名が参加し、また、セ
ミナー講師(国内バイヤー)による個別商
談会には徳島県内の農協、食品加工会社な
ど12件の参加があった。いくつかの品目に
ついて、実際の輸出に向けバイヤーが興味
を示したものがあった。
(3月24日、徳島市)
セ ミナ ー の 様 子
(ウ)
日本酒輸出セミナーの開催
高松国税局、ジェトロ徳島との共催により、四国4県の酒造業者等を対象とし
てセミナーを開催し、18年度に実施した外国人を対象とした「日本酒に関するア
ンケート」結果を踏まえ、日本酒の独特の風味、低アルコール度数、健康の維持
・増進といった特徴は海外の他の酒類とは異なっており、日本料理に合わせて飲
まれる機会が多いことから、今後海外における日本料理の普及に沿った形で日本
- 152 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
酒の市場が広がる可能性があることを紹介した。(5月29日、徳島市)
また、岡山県酒造組合、広島国税局、ジェ
トロ岡山との共催により、岡山県内の酒造業
者等を対象としてセミナーを開催し、農林水
産省の輸出促進施策について情報提供を行っ
た。(11月16日、岡山市)
日 本 酒 の器 は P R の 要素
ウ
外国人有識者からの日本の農産物・加工食品に関する意見聴取
日本に長く在留し、日本語と日本食に通じている外国人有識者の日本の農産物
・加工食品に関する意見聴取を中国・四国地域の大学に勤務している外国人教官
157名を対象に実施したところ54名からの回答を得た。
調査の結果、農産物の中では、「米」が好きという回答が47件と最も多く、次
いで「和牛」が27件、「りんご」が25件で、好きな農産物を母国でも購入すると
いう回答は全体の72%であった。購入する理由として「味がよい」が41%、「安
全で安心できる」が24%、購入しない理由として「価格が高い」が48%を占めた。
また、加工食品の中では、「みそ」が好きという回答が33件と最も多く、次い
で「ポン酢」が26件、「日本酒」が21件で、回答者の89%が好きな加工食品を母
国でも購入すると答えている。
そのほか、日本の農産物・加工食品の味の良さや安全性を評価する意見、オー
ガニック等のより高いレベルの商品を期待する意見等がよせられた。
(3)管内の農産水産物等の輸出に関する動き
管内では、鳥取県の二十世紀梨、島根県のヘルシー元氣米・牡丹苗、徳島県の
タチウオ、香川県のみかん・盆栽、愛媛県のみかん・ハマチ等で商業ベースの輸
出が行なわれている。
また、岡山県のぶどう・もも、広島県のなし・ぶどう、山口県のふぐ、徳島県
のなると金時、愛媛県の水産加工品、高知県のグロリオサ等、管内の各県におい
て商業ベースの輸出に向けた取組が行われている。
- 153 -
第 Ⅰ部
表Ⅰ−3−60
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
管内各県における新たな輸出事例
県名
品目(輸出国)
鳥取県 米(台湾)、コーヒー(台湾)、水産加工品等(台湾・中国)
島根県 あんぽ柿(台湾)、デラウェア(台湾)、米(アメリカ)、松江菓子(アメ
リカ)、牡丹苗(イタリア)、メロン・ぶどう・トマト等(ロシア)
岡山県 白桃(タイ)、マスカット・ピオーネ(タイ・香港・台湾)、おかやま黒
豚(香港)
広島県 漬物(北京・上海)、飲料酢(台湾・香港・シンガポール・上海)、惣
菜(香港・バンコク)、みそ(台湾・香港・ドイツ・上海・中東)、
ラーメン(台湾・香港)
山口県 米(台湾)、ナマコ(中国・香港)、レトルトおでん(上海)
徳島県 ラン(中国)
香川県 いちご(マレーシア、台湾)、小原紅早生(マレーシア)、金時にんじ
ん(マレーシア)
愛媛県 デルフィニウム(上海)、あんぽ柿・鶏卵(タイ)
高知県 ゆずジュース(青島)
〔管内各県の農林水産物等輸出に関する特徴的な動き〕
ア 鳥取県、島根県、広島県が共同で台湾市場開拓
鳥取県、島根県及び広島県は、広島空港の台北便が毎日1便に拡充されたこ
とを契機に連携を強化し、3県合同で10月に台北市の大手百貨店で開催された
物産展に出展。観光と農産物の魅力をセットで台湾の消費者に直接PRするこ
とで観光地の知名度を高め、観光客数の増加と輸出拡大を図った。
イ
島根県で農林水産物・食品輸出実践研修会を開催
輸出を検討している農業団体や食品加工業者らを対象に、台湾をはじめとす
る海外への島根県産品輸出拡大に向けた「農林水産物・食品輸出実践研修会」
を年4回開催。市場調査や輸出の手続き、商談時のポイントなど海外市場開拓
に必要な知識の習得を図った。
ウ
岡山県の東アジアでの輸出促進の取組
岡山県では、「おかやま農産物輸出促進協議会」とも連携して、期間限定の
果物ショップ「岡山屋」を、タイ、台湾、香港で展開(岡山屋アジアンサーキ
ット)し、岡山県産の白桃やピオーネやマスカットなどのブドウを旬の時期に
現地でPR・販売する取組を行った。
エ
四国農林水産物等輸出促進協議会による上海への四国4県の共同出展
四国では、輸出に向けた気運の高まりを背景に、四国知事会の合意に基づき、
4県が連携・協調して農林水産物及びその加工品の輸出促進を図ることを目的
に「四国農林水産物等輸出促進協議会」を7月25日に設置。今年度の取組とし
て、中国・上海で開催された国際食品見本市への共同出展(11月14∼16日)を
行った。
- 154 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
7 食品産業等の現状
(1)食品産業の動向
中国・四国地域の食品製造業の規模は低価格志向等のなか、依然として縮
少傾向が続いている。一方、外食産業の市場は9年をピークに減少傾向であ
ったが、18年から回復傾向に転じ、2年連続で前年実績を上回った。そう菜
・弁当類等の中食産業は女性の就労率の向上、個食化等を背景に市場規模を
拡大してきている。
また、食品産業のコンプライアンスの徹底を図るため、農政局は食品産業
トップセミナーを開催した。
ア
食品製造業の動向
【製造品出荷額は依然として減少傾向】
食品製造業は、地場産業として農水産物の加工作業を地域雇用等の促進に結び
つけるなど、地域経済において重要な役割を果たしている。
17年3 月末現在の中国・四国地域における食品製造業は、事業 所数が4,836
か所(前年比103%)、従業員数が12万6千人(同100%)、製造品出荷額が2兆5,700億
円(同92%)となっている(表Ⅰ−3−61)。
製造品出荷額について近年の推移をみると、海外からの輸入品の増加や加工品
の低価格志向の進展等から出荷額及びシェアは、依然として減少傾向にある。
また、5年の製造品出荷額と比較すると全国で8.2%減に対して、中国・四国
地区では27%減と全国の3倍以上の減少率となっている(図Ⅰ−3−47)。
表Ⅰ−3−61
食品製造業の動向
事業所数
単位 :カ所, 千人,億 円,%
従業者数
製造品出荷額
区 分
中国・四国
山
陰
鳥取県
島根県
山
陽
岡山県
広島県
山口県
四
国
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
全国計
中国四国のシェア
15
16
17
15
16
17
15
16
17
5,097 4,710 4,836
130
126
126 28,998 27,817 25,728
773
730
757
16
16
16
3,135
3,378
3,435
276
268
280
9
9
9
2,261
2,508
2,560
497
462
477
8
7
7
874
869
875
2,117 1,985 1,981
63
62
61 13,948 13,269 13,317
593
553
555
18
18
18
5,194
5,361
5,519
863
807
804
29
28
28
6,181
5,405
5,284
661
625
622
16
16
15
2,573
2,503
2,514
2,207 1,995
2098
51
48
48 11,916 11,171
8,976
469
422
439
9
9
9
2,707
2,621
1,791
667
601
631
17
15
16
4,136
3,996
2,910
681
621
651
18
17
17
4,202
3,710
3,451
390
351
377
7
6
6
871
844
824
41,225 38,600 39,065 1,235 1,213 1,207 330,677 334,289 323,435
12.3
12.2
12.3 10.5 10.3 10.4
8.8
8.3
7.9
- 155 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−47
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
製造品出荷額の推移
全国;百 億円
中国四国;百億円
全国計 4 ,00 0
中国四国
4 00
3,5 21
3 50
3,234 3 ,50 0
352
3 00
3 ,00 0
257
2 50
2 ,50 0
5年
6年 7年
8年
9年 10年 11年 12年 13年 14 年 1 5年 1 6年 17年
資料 :経済産業省 「工業統計表 平成15・16年(産業編)」従業員4人以上の事業所に関 する統計表(確
定値)及び 経済産業省「工業統計 表 平成17年(産 業編)」従 業員4人以上の事業所に 関する統計
表(概要版)
注 :1) 食品製造業とは,食料品製造業と飲料・飼料・たばこ製造業を合わせたものである。
2) 従 業者 数は百 の位 を四捨 五入し ,製 造出荷 額は千 万の 位を四 捨五 入した 。
3) 中 国・ 四国及 び地 域合計 はラウ ンド のため 一致し ない 。
イ
外食産業の動向
【外食産業の市場規模は9年連続前年割れ】
外食産業の市場規模は、個人消費の伸び悩み等の影響を受け、市場規模が9年
をピークに減少傾向にあったが、19年には24兆7千億円わずかに上昇し、9年の
ピーク時に比べ、15%減少している。
一方、そう菜、弁当類、調理パン等を製造するいわゆる中食産業は、近年にお
ける単身世帯の増加、女性の就労意欲の向上、個食化等のライフスタイルの変化
等により、外食産業がほぼ横ばいで推移している中で、その市場規模を年々拡大
しており、18年における推計値で6兆4千億円と外食産業の4分の1の規模に達
している(表Ⅰ−3−62)。
表Ⅰ−3−62
中食産業と外食産業の市場規模の推移(全国)
外食産業の市場規模
中食産業の市場規模
13年
258,545
60,617
14年
254,484
60,911
15年
245,864
61,410
16年
244,825
61,692
17年
243,903
63,518
単 位: 億円
18年
246,403
64,410
19年
247,007
-
資料 : (財 ) 外食 産 業 総合 調 査 研究 セ ン ター ( 推 計値 )
また、18年の外食率は35.2%、これに中食を加えた、いわゆる食の外部化率は
43.2%となっており、中食の食料消費におけるウエイトは年々増加してきている
(図Ⅰ−3−48)。
- 156 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−3−48
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
外食率、食の外部化率の変化の推移(全国)
(%)
45
41.2
42. 1
40.6
4 1.3
41 .3
41 .4
41. 4
4 2.7
43 .2
40
35. 4
35
3 7.7
3 3.4
36.5
35. 6
34 .5
33.5
34. 3 34 .1
34. 0 34 .8
35. 2
31 .8
30
55年 60年 平2年 7年
12年 13年 14年
食の外部化率
15年 16年 17年 18年
外食率
資料 : 内 閣府 「 国 民 経済 計 算 報 告」(家 計 の 食料 ・ 飲 料 ・煙 草 支 出)、( 財 )外 食 産 業総 合 調
査 研 究セ ン タ ー「 外 食 産 業市 場 規 模」( 外食 と 料 理品 の 市 場 規模 )、 (社 ) 日 本た ば こ
協 会調 べ の輸 入品 を 含む 煙草 販売 額
外 食産 業市 場規 模
(家 計 の食 料・ 飲料 ・ 煙草 支出 − 煙草 販売 額) + 外食 産業 市 場規 模
外 食産 業市 場 規模 +料 理品 小 売業
2)食の 外 部化 率 =
( 家 計の 食 料 ・飲 料 ・煙 草 支出 − 煙草 販 売額 ) +外 食 産業 市 場規 模
注 :1)外食 率 =
ウ
食品流通業の動向
【景気低迷に伴う消費不振等により販売額は減少】
16年の管内食料品卸売業は、事業所数が9,137か所(全国の10.8%)、従業員数
が8万8千人(同9.9%)、年間販売額が6兆5,084億円(同7.5%)となっている。
経営は厳しい環境にあり、販売額は11年と比べると約17%(▲1兆3,517億円)
減少している。(表Ⅰ−3−63)
表Ⅰ−3−63
飲食料品卸売業の推移(中国・四国)
単位: カ所、千 人、億円 、%
区 分
管
内
中 国
四 国
全 国
管内のシェア
事業所数
平成11年 平成16年
10,137
9,137
6,082
5,456
4,055
3,681
94,376
84,539
10.7
10.8
従業者数
平成11年 平成16年
104
88
66
56
38
32
1,020
887
10.2
9.9
年間販売額
平成11年 平成16年
78,601
65,084
50,643
42,331
27,958
22,753
997,317
863,898
7.9
7.5
資料 :経 済産 業 省「 商業 統 計表 」
16年の管内食料品小売業は、事業所数が4万6,971カ所(全国の10.6%)、従業
員数が28万9千人(同9.2%)、年間販売額が3兆7,946億円(同9.2%)となってい
る。
- 157 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
経営は厳しい環境にあり、販売額は11年と比べると約8%減少している。(表
Ⅰ−3−64)
表Ⅰ−3−64
飲食料品小売業の推移(中国・四国)
単 位:カ所 、千人、 億円、%
区 分
管
内
中 国
四 国
全 国
管内のシェア
事業所数
平成11年 平成16年
53,234
46,971
32,416
28,811
20,818
18,160
488,304
444,596
10.9
10.6
従業者数
平成11年 平成16年
288
289
186
187
102
102
3,114
3,151
9.2
9.2
年間販売額
平成11年 平成16年
41,108
37,946
27,066
24,781
14,042
13,165
436,874
413,342
9.4
9.2
資料: 経済産業省「商 業統計表」
エ
食品流通部門への支援
食品流通における規制綬和の進展、消費者二一ズの多様化等による競争が激化
するなか、経営環境のめまぐるしい変化に積極的に対応しようとする意欲をもっ
た事業者を支援するため、食品流通構造改善促進法に基づく食品生産製造等提携
事業により、必要な施設整備等に対し、長期低利での資金融資等の支援措置が行
われる。
管内における19年度の食品流通構造改善計画の認定状況は7件で、その主な事
業内容は、安定的な取引の確立や鶏卵パック工場の新築工事(4億円の融資)等
となっている。
オ
食品産業トップセミナーの開催
食品業界の不祥事が相次ぎ、食の安全や信頼性に対する消費者の不安が生じて
いる中、食品産業界に対する関係法令の遵守とともに食品事故の発生を未然に防
止する製造管理、事故発生時における危機管理等適切なリスク管理やそれらが着
実に実施されるためのコンプライアンスの徹底が求められている。
このため、食品製造や外食産業に携わる各企業において、その社会的責任を十
分に踏まえた消費者重視の経営が遂行されるよう、経営者の意識を高めることを
目的に、セミナーを全国各地区で前期(19年4
月∼6月)11箇所、後期(19年10月∼12月)8
箇所で開催した。
管内でも、中国地区及び四国地区のブロック
毎に、主に管内の食品製造業者、外食事業者等
の経営者等を対象に当セミナーを岡山市、広島
市、高松市(2回)において開催した。
(中 国 地 区 )
- 158 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
(2)卸売市場の動向
卸売市場は、鮮度を重視する我が国の食文化に適合した流通システムとし
て生鮮食料品等の流通に基幹的な役割を果たしており、近年、生産者・消費
者の期待に応えられる「安全・安心」で「効率的」な流通システムへの転換
が進展している。
ア
卸売市場の役割
【生鮮食料品等の流通の基幹的な役割】
卸売市場で取扱う生鮮食料品等は、人々の日々の生活に欠くことのできないも
のである。(図Ⅰ−3−49)一方、生産が自然条件によって左右される傾向にあ
ること、腐敗しやすい性質であり品質保持が重要であること、商品の規格化・統
一化が比較的困難なことから、我が国では、生鮮食料品等の取引の適正化とその
生産及び流通の円滑化を図ること等を目的として、卸売市場制度が設けられてい
る。
管内の卸売市場は、現在381か所で開設され生鮮食料品等の効率的な流通網を
形成している(表Ⅰ−3−65)。
図Ⅰ−3−49
卸売市場の取引の流れ
卸 売 市 場
出
荷
者
表Ⅰ−3−65
卸
売
業
者
仲 卸 業 者
小
売
業
者
売 買 参 加 者
関連事業者
(飲食店・包装資材販売等)
消
費
者
卸売市場数(管内・全国)
中 央 卸 売 市 場
地 方 卸 売 市 場
政令規模未満市場
合
計
中国 地区
7
112
93
212
四国地区
5
91
73
169
管 内 計
12
203
166
381
全 国 計
81
1,259
636
1,976
資料 : 中国 四国 農政 局 調べ 、中 央 卸売 市場 は平 成 19年 4月 、そ れ 以外 は平 成 18年 4月
注: 政 令 規 模未 満 市 場 と は 、中 央 及 び 地 方卸 売 市 場 以 外の 卸 売 市 場で 、 そ の 卸売 場 の 面
積 が青 果 物で は 330㎡ 未 満 のも の 、水 産 物で は 200㎡未 満 のも の (産 地 市場 は 、 330㎡ 未
満)、 花き で は200㎡ 未 満の もの 、 肉類 は150㎡未 満の も の。
- 159 -
第 Ⅰ部
イ
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
卸売市場の取扱高の推移
【減少が続く取扱高】
管内卸売市場の取扱高についてみると、中央卸売市場は3年度をピークに減少
し、地方卸売市場においても、7年度以降同様の傾向がみられ、卸売市場経由率
の低下とともに減少している。(図Ⅰ−3−50、図Ⅰ−3−51)
減少傾向の続く要因として、長引く景気低迷等による消費減退、単価安、産地
と大口需要者との直接取引等の市場外流通の拡大等により市場経由率(市場流通
の全流通量に占める割合)が長期に渡り低下していること等が影響しているもの
と思われる。
こうしたなか、各市場では危機感を強めており、それぞれの産地、消費地の特
性を生かした取組など改革が必要となっている。
図Ⅰ−3−50
卸売市場別取扱高の推移(中国・四国)
3 年度;9,20 9億円
4 ,8 12
4 ,0 5 5
1 3年度;7,78 0億円
3,79 9
3 ,6 6 7
1 4年度;7,77 2億円
3,81 6
3 ,6 65
1 5年度;7,67 6億円
3 ,7 01
3 ,7 07
1 6年度;7,60 0億円
3 ,7 06
3,60 6
1 7年度;7,06 3億円
3 ,4 98
31 4
29 1
268
28 8
3,29 7
0
3 42
26 8
( 億円)
5 ,0 00
中央卸売市場
地方卸売市場
10 ,00 0
政令規模未満市場
資料 : 中 央卸 売 市場 は 農 林水 産 省 「卸 売 業者 事 業 報告 書」、 地方 卸 売 市場 及 び政 令 規 模未 満 市 場は 農 林
水 産省 「 地方 卸売 市 場等 に関 する 調 査」
図Ⅰ−3−51
卸売市場経由率の推移(推計、重量ベース)
90%
80
青果
野菜
果実
水産物
70
60
50
40
平成 3
9
10
11
12
13
資料 :農 林水 産 省「 食料 需 給表 」等 によ り 推計
- 160 -
14
15
16
年度
第 Ⅰ部
ウ
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
BSEに対応した施設の整備
【卸売市場の整備】
管内唯一の中央市場食肉市場である広島市中央卸売市場食肉市場においては、
BSE規制に対応した整備が進められている。これは、厚生労働省の「ピッシング
中止」の指導に伴い、大動物を不動体化する設備等の導入を図り、と畜業務の安
全性を確保するとともに衛生対策の向上を実現するものである。
エ
卸売市場の再編・連携強化等について
【卸売市場の再編】
第8次卸売市場基本方針に沿った中央卸売市場整備計画の市場再編おいて、
呉市中央卸売市場、下関市中央卸売市場が20年4月に地方卸売市場へ転換を図り、
22年度末までに松山市中央卸売市場中央市場(花き部)、松山市中央卸売市場水
産市場が地方卸売市場に転換を図ることとしている。
【卸売市場における品質管理の高度化】
食の安全・安心に対する国民の関心が年々高まるなか、卸売市場においては、
品質管理の方法を定めるなどにより、生鮮食料品等の品質管理に取り組んでいる。
卸売段階、仲卸段階、配送段階等における規範の策定と普及・定着の促進、品質
管理の更なる高度化を図るため、卸売市場におけるマニュアルが作成され活用さ
れているところである。管内においてもマニュアルの説明会を開催し普及・定着
に努めている。
【効率的な流通システムの構築】
近年の情報技術(IT)や物流技術の革新等を踏まえて、電子商取引を導入し
た商流と物流の分離によるコスト削減や電子タグを活用した新しい物流管理手法
の確立による物流効率化、モーダルシフト(※6)の推進等による物流コスト改
革、卸売市場の再編・連携強化が重要となっていることから、会議やセミナー等
開催しこれらの普及推進に努めている。
【※6】モーダルシフト
トラックによる幹線貨物輸送を、「地球に優しく大量輸送が可能な海運ま
たは鉄道に転換」することをいう。
オ
その他の取組
市場を県民・市民に開放することで、消費者に市場での食の安全・安心を再認
- 161 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
識してもらうとともに、身近な市場づくりを目指した「市場祭」を開催し、また、
消費拡大のため、市場内に消費拡大委員会を立上げ、食育活動を推進していくな
ど様々な取組がされているところである。
(3)食品産業と農業の連携の推進
国産農産物の利用拡大による地域農業の振興と地域食品産業の発展を目
指すため、食品産業と農業の連携を推進しており、17年度からは、産学官
の異業種が連携し食料産業クラスターの形成を推進している。
また、各地域の「強み」である地域産業資源を活用して地域経済の活性
化を図るため、19年度創設された中小企業地域産業資源活用促進法に基づ
く事業を推進している。
【食料産業クラスターと地域産業資源活用の推進を中心に食品産業と農業の連携
強化を図る】
ア
食品産業と農業の連携の現状
社会情勢の変化による消費者の「食」に対する簡便化志向の高まりや外部化の
進展を反映して、加工食品・外食は消費の中で大きな比率を占めている。
一方で、国産農産物の供給サイドが食品産業のニーズに十分応え切れていない
こともあり、加工・外食仕向けの国産農産物の占める割合は低くなっている。
このような「食」の状況の変化を踏まえ、国産農産物等の需要拡大、地域農業
の活性化に向け、食品産業と農業が連携を強化する必要がある。
イ
主な取組
(ア)食料産業クラスターの形成推進
17年度より、地域の食材、人材、技術等の資源を効果的に結び付け、新たな食
品、販路、地域ブランドを創出する食料産業クラスターの形成を推進している。
これまでの成果としては、管内全県でクラスター協議会が設立され産学官連携
による体制が整い、さらに地域の農産物を使った新商品10品が開発されるなど、
クラスターの推進に向けた動きが定着しつつある。
今後は、さらに各地域の特色のある農林水産物を活用した商品開発を支援する
ことで事業推進の加速化を図り、農業や関連産業を含めた地域全体としての「産
業興し」に繋がるよう推進する必要がある。
- 162 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
食品産業クラスター推進事業による開発商品
〔牡丹〕(18年度)
島根県花であ る「牡丹」
の花を利用した『牡丹リ
キ ュール』・『牡丹の清
酒』の開発
〔養生の郷〕(18年度)
①倉吉産「20世紀梨」
を利用した『20世紀梨
ジュース』の開発
②倉吉産「20世紀梨」
を利用した『ワイン』・
『スパークリング ワイン』
の開発 鳥取県産業技術センタ ー
島根大学・千葉大学・島根県産業技術センター
〔山口県〕(18年度)
山口県産「小麦」、
「野菜」、「水産物」を
利用した学校給食向
けの『オ リジナルパ
ン』の開発
〔香川県〕( 17年度)
3地域(徳島・青森・北海道)
の「蕪」を利用し、周年販売
でき る『蕪の浅漬け』の開発
山口県産業技術センター
〔愛媛県〕(18年度)
①愛媛県産「裸麦」を利用し
た栄養バランス菓子・揚げ衣
用調味料
②愛媛県産「裸麦」を利用し
たク ッキー・ケーキ等洋菓子
類
〔徳島県〕(18年度)
①小松島産「やまもも」
を利用した『ケー キ』・
『どら焼き 』の開発
②藍住町産「春にんじ
ん」を利用した『に んじ
んパウ ダー 』の開発
松山東雲短期大学・愛媛県工業技術センター
①徳島県工業技術センター
②徳島大学薬学部
資 料: 中国 四 国農 政局 食 品課 作成
(イ)「中国四国地域アグリビジネス創出フェアー」を開催
食品産業と農業の連携を強化するため、ビジネスチャンスの増大を図ることを
目的としてフェアを開催した。イベントホールでは、中国四国地域を中心とした
企業、大学、独立行政法人等研究機関による31ブースの展示とプレゼンテーショ
ンにより、農林水産・食品分野の研究・製品開発、事業化や技術移転、販売ルー
トの開拓などについての情報発信と交流を行った。(主催:特定非営利活動法人
中国四国農林水産・食品先進技術研究会)(19年12月13日:岡山市)。フェア終了
後に製品の商談等が進展しており、食品産業と農業の連携を強化を図る上で、有
意義なフェアとなった。
(ウ)中小企業地域産業資源活用事業の推進
政府の経済成長戦略として、各地域の「強み」である農林水産物等の地域産業
資源を活用した中小企業の新商品や新サービスの開発と市場化を総合的に支援す
る「中小企業地域産業資源活用事業」が、経済産業省等関係省の連携により19年
度からスタートした。この制度により、各県ごとに指定された地域産業資源を活
用した事業計画の認定を受けた事業者は、新商品開発や販路開拓等に対する補助、
低金利融資や税制の特例措置が受けられるようになった。制度の対象者は、農業
法人等の中小企業に加え農協・漁協も対象となっている。
中国・四国地域で指定されている地域産業資源(19年12月26日現在)は、農林
水産物が510件、鉱工業品のうち加工食品は135件となっている(表Ⅰ−3−66)。
また、事業者から申請のあった農林水産物及び加工食品に係る「地域産業資源
活用事業計画」の認定件数は35件であり、地域活性化に向けた意欲的な取り組み
- 163 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
がなされている。
これまで、農業サイドでは、販売戦略に弱点があったため、今後は、中小企業
施策のノウハウ等を有効に活用し、農業の企業化や新たなアグリビジネスに繋が
るよう、食料産業クラスター形成を支援するとともに、農業も含めた地域経済の
活性化に繋げていくこととしている(表Ⅰ−3−66)。
表Ⅰ−3−66
各県基本構想における地域資源数(19年12月26日現在)
鉱 工業品
農林 水産物
加工食品
観光 資源
総数
鳥取県
45
46
15
95
186
島根県
60
62
19
95
217
岡山県
92
32
10
63
187
広島県
45
44
19
65
154
山口県
51
21
7
65
137
徳島県
33
32
17
17
82
香川県
48
50
16
14
112
愛媛県
61
34
11
40
135
高知県
75
55
21
68
198
中国 四国
510
376
135
522
1,408
全国
3,010
2,293
4,756
10,059
農林水産物+加工食品
中国四国 645品目
資 料: 中小 企 業庁 「都 道府 県 別基 本構 想 」等 より 作成
8
農業技術の研究開発と普及
試験研究機関や普及組織等を中心として、生産コストの低減、高付加価値
化、労働快適化等、農業構造の変化や生産現場の要望等に対応した幅広い新
技術の研究開発・普及が取り組まれている。
また、「NPO法人中四国アグリテック」を中心に、産学官による共同研
究の活動が行なわれている。
ア
新技術の研究開発と普及
【生産現場の要望に対応した新技術の研究開発・普及を推進】
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構近畿中国四国農業研究センター
(以下「近中四農研」という。)及び各県の農業試験場を中心に、生産コストの
低減、高付加価値化、労働快適化等、管内の農業構造の変化や生産現場の要望に
- 164 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
対応した新技術の開発が幅広く取り組まれており(表Ⅰ−3−67)、開発された
新技術・新資材については、普及指導センター等の関係機関と連携し農業者等へ
の速やかな普及に努めている。
近年、繁殖雌牛の小規模放牧が、飼養管理の省力化・飼料費の低減に役立つだ
けでなく、耕作放棄地の解消及び獣害被害の低減にもつながることが明らかにさ
れつつある。これらの効果により、繁殖雌牛の飼養頭数の増加による国産牛肉増
産への寄与や水田農業との結びつきによる集落の活性化等様々な利点をもたらす
ことが期待されており、19年10月、近中四農研及び肉用牛研究会の主催により公
開シンポジウムが開催され、繁殖雌牛の放牧技術開発の現状及び展開方向につい
て情報交換が行なわれた。
表Ⅰ−3−67
課
題
近中四農研が中心となって取り組んでいる総合的研究
名
・ 環境 に 配慮 し た 小規 模 移
内
容
○ 繁 殖和 牛 の移 動 放 牧に お ける 栄 養管 理 技 術の 確 立
動放 牧 にお け る 繁殖 和 牛
○ 繁 殖和 牛 の移 動 放 牧に お ける 排 せつ ふ ん 尿の 周 辺環 境 への 影 響 調査
の飼 養 管理 技 術
○ 繁 殖和 牛 の移 動 放 牧に お ける 家 畜管 理 条 件の 解 明
・中 国中 山 間水 田に おけ る
飼 料用 稲 を基 軸と する 耕
○ 直 播栽 培 を 基 軸と し た ホー ル ク ロッ プ サ イレ ー ジ 稲の 超 省 力、 低 コ スト
栽 培技 術 の確 立
畜連 携 シス テ ム の確 立
・カ ンキ ツ 経営 安定 のた め
○ 樹 体・ 生 産環 境 の 迅速 診 断技 術 及び 安 定 生産 対 策シ ス テム の 開 発
の 連年 果 実生 産シ ステ ム
○ 連 年果 実 生産 の た めの 土 壌・ 樹 体改 善 シ ステ ム の開 発
の確 立
○ 傾 斜地 園 地の 整 備 ・管 理 改善 と 省力 ・ 軽 労化 シ ステ ム の開 発
○ 連 年果 実 生産 シ ス テム 導 入の 経 営的 評 価 と経 営 モデ ル の策 定
資 料: 中 国四 国農 政 局調 べ
イ
省力・低コスト化技術の推進
【中国・四国地域の状況に対応した省力・低コスト化技術を推進】
中国・四国地域は、急峻な山地が広がり、傾斜地が多いことに加え、島しょ部
も多いことから平地が少なく、農業生産にとっては労働環境上厳しい地域が多い。
このような状況に対応するため、省力・低コスト化を核として、次の分野にお
いて新技術の確立が進められている。
○担い手の規模拡大に対応した水稲直播栽培等省力・低コスト化技術
鉄コーティング種子を用いた湛水直播技術の研修会を開催し、育苗・移植
・除草作業等の軽減や環境保全に資する技術の普及促進を図っている。
- 165 -
第 Ⅰ部
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
○園地整備・省力化技術
等高線方向の狭幅作業道と既存モノレールを組み合わせた急傾斜地の軽労
..
..
化搬送システム、周年マルチ点滴かん水技術(マルチ栽培+ドリップ灌漑→
マルドリ栽培)による高品質生産技術を開発し、現地検討会を通じて新技術
の普及推進を図っている。
○里地の放牧利用技術体系
水田、果樹園及び耕作放棄地への放牧、小規模移動放牧、牛を借り入れて
の放牧等里地放牧への取組が積極的に進められており、こうした動きの加速
化により牛の増頭と和牛産地の復活・活性化に取り組んでいる。農地を省力
的に保全できるうえ、獣害を防ぐ効果もある。
○大豆不耕起無培土栽培技術を核とした省力栽培技術
麦作後に大豆の播種作業を不耕起、無培土で行う省力栽培技術の確立を図
るとともに、湿害の回避・苗立ちの向上を通じた高生産、高品質栽培技術の
普及促進を図っている。
ウ
地域研究・普及連絡会議の開催
【研究開発に関する情報の収集】
「21世紀新農政2007」においては、担い手への施策の集中化・重点化を通じた
国内農業の体質強化、イノベーションを先導する技術開発の加速化を通じた農業
の潜在的な力の発揮を図ることが求められている。
このような農政の変革に即応して、意欲と能力のある担い手の経営改善等に向
け、生産現場の課題等に対応した技術開発を加速化するとともに、その成果につ
いて、生産現場をはじめとする関係方面へ迅速に還元することが極めて重要であ
る。
このため、11月に県、関係団体、近中四農研等独立行政法人、農政局等からな
る「地域研究・普及連絡会議」を開催し、国の事業により対応すべきものとして
提案する技術的課題や「農業新技術200X(※7)」の候補の選定に資するものとし
て提案する研究成果について、中国・四国地域における検討を行った。
農林水産省では、同会議の検討結果を委託プロジェクト研究の課題や競争的研
究資金における研究テーマの設定及び「農業新技術2008」の候補選定に際して参
考とすることで、行政ニーズを的確に研究へ反映させていくことや研究成果を迅
速に生産現場等へ還元させていくこととしている。
【※7】農業新技術200X
農業技術に関する近年の研究成果のうち、今後早急に生産現場への普及を
推進していく重要なものについて選定し、関係機関相互の緊密な連携の下現
場への迅速な普及を図っていくこととしている。
- 166 -
第 Ⅰ部
エ
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
特定非営利活動法人中国四国農林水産・食品先進技術研究会の活動
【産学官連携による研究開発・実用化を推進】
長年、産学官連携による農林水産・食品関連産業の研究開発と新技術実用化の
促進のため、講演会、シンポジウムの開催等を行ってきた「中国四国地域農林水
産・食品先進技術研究協議会」(略称:中四国先進技術協議会)は、組織の活動
強化・発展のため、19年7月をもってNPO法人化し、「特定非営利活動法人
中国四国農林水産・食品先進技術研究会」(略称:NPO法人
中四国アグリテ
ック)として再出発し、科学技術の振興等各種の特定非営利活動を行うこととな
った。
主な活動と して、19年7月に岡山
市で「産 学官連携と新 産業の創出」
について講演会 を開催したほか、11
月に高松 市でシンポジ ウム「地球温
暖化とこれからの農業」、20年3月に
松江市で セミナー「米 が拓くバイオ
エタノールの世界」を開催した。
活 動 フロ ー図
シ ンポ ジ ウム の様 子( 高 松市 )
セミ ナー の様 子 (松 江市 )
また、19年8月には西条食料産業クラスター関連施設の見学を目的とした「研
究施設現地見学会」を開催した。さらに、12月には農林水産・食品分野の研究・
製品開発、事業化や技術移転、販売ルートの開拓等についての情報発信と交流を
行い、ビジネスチャンスの増大を図ることを目的とした「中国四国地域アグリビ
ジネス創出フェア」を開催した。
その他、農林水産省をはじめとする各省庁の競争的研究資金の獲得を目指して、
産学官共同で研究課題の抽出と精選を目的とした「提案公募型研究開発事業への
研究課題検討会」(略称:課題検討会)を19年10月及び12月の2回開催した。
- 167 -
第 Ⅰ部
オ
第3章
中 国 四国 農 業 の 構 造 改 革 の 推進
地域科学技術振興への取組
【関係省庁間で連携して科学技術の振興を推進】
科学技術による地域経済活性化を推進し、関係各省の協力のもと、各省庁間連
携、産学官連携等を推進し、施策の効果的・効率的な実施を図ることを目的とし
て、「地域科学技術振興協議会(以下「協議会」という。)」が設置された。
管内では、中国ブロックと四国ブロックの2地域に協議会が設置され、各省庁
間の情報交換、技術開発の振興に係る公募・施策の合同説明を行った。
9
知的財産の創造・保護・活用
中国・四国地域における農林水産分野の知的財産の創造・保護・活用を促進
するとともに、知的財産に係る知識の普及、意識啓発を図ることを目的として、
19年12月、「知的財産相談窓口」を設置した。
中国・四国地域における農林水産分野の知的財産の活用の促進に当たって
は、中国経済産業局及び四国経済産業局と連携しつつ、取組を進めている。
(1)知的財産相談窓口の設置
農林水産省では、18年2月に「農林水産省知的財産戦略本部」を設置し、19年
3月に「農林水産省知的財産戦略」を策定するなど農林水産分野の知的財産の創
造・保護・活用を促進する各種施策を推進している。
その一環として、19年12月、農林水産業関係者からの知的財産に関する相談・
質問に対応する「知的財産相談窓口」を農政局に設置した。
なお、知的財産の創造・保護・活用の促進に当たっては、中国経済産業局及び
四国経済産業局と連携して、普及啓発活動を行っている。
(2)知的財産の創造・保護・活用に向けた取組
19年度は連携の一環として、中国経済産業局が島根県雲南市、江津市及び岡山
県津山市で開催した地域ブランドシンポジウム及びフォーラムを後援し、農林水
産業関係者に対して地域ブランドに関する情報提供を行った。
今後も、両経済産業局と連携を図りつつ、管内の農林水産業関係者に対して知
的財産の創造・保護・活用に対する支援及び情報提供を行うこととしている。
- 168 -
第 Ⅰ部
第4章
1
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
豊かで 住み良い農村地域の 振興
農業の多面的機能と農村資源の保全・活用
【農業は農山漁村地域で様々な機能を発揮している】
農業は、食料を供給する役割だけでなく、その生産活動を通じた国土の保全、
水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等様々な役割を
有しており、これらの役割による効果は、地域住民をはじめ国民全体が享受し得
るものである。
農業は、農山漁村地域のなかで林業や水産業と相互に密接なかかわりを有して
おり、特に、農林水産業の重要な基盤である農地、森林、海域は、相互に密接に
かかわりながら、水や大気、物質の循環に貢献しつつ、様々な多面的機能を発揮
している。
農業・森林・水産業の有する多面的機能
資 料: 日 本学 術 会議 答申 を 踏ま え 農林 水 産省 で作 成
第 Ⅰ部
2
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
農山漁村の活性化に向けた取組
(1)農山漁村活性化への支援
農山漁村では、人口の減少、就業条件の悪化、農業従事者の減少・高齢化、農
業生産所得の減少等の課題を抱えている。一方で、都市住民の中には農山漁村へ
の定住、二地域居住、農山漁村との交流への関心が高まってきている。
そこで、農林水産省は農山漁村に人を呼び込み地域を活性化するための支援策
を総合的に展開するため、「農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の
促進に関する法律」を19年8月に施行するとともに、同8月に「農山漁村活性化
プロジェクト支援交付金」を創設し、農山漁村における定住や農山漁村と都市と
の地域間交流などの地域の創意工夫を活かした農山漁村地域活性化の取組を総合
的に支援していくこととしたところである。
また、農林水産省では、農山漁村活性化推進本部を設置し、農山漁村の活性化
推進に省を挙げて取り組んでいるところあり、農政局においても、農山漁村の活
性化に向けた地域の自発的な動きを支援するため、農山漁村活性化のための方策
や地域で活用できる農林水産省の施策等について、ワンストップで地域からの相
談に応じる「農山漁村活性化支援窓口」を19年2月1日に農村計画部農村振興課
に設置している。
ア
農山漁村活性化プロジェクト交付金の概要
「農山漁村活性化プロジェクト支援交付金」は、農山漁村地域における定住者
及び滞在者の増加等を通じた活性化のため、農・林・水の縦割りなく施設の整備
等の各種取組を総合的かつ機動的に支援するものである。
具体的には、地方公共団体が地域の自主性と創意工夫により、定住者等や交流
人口の増加などを通じた農山漁村の「活性化計画」を作成し、国は、その実現に
必要な施設整備等を中心とした総合的取組を交付金により支援している。
【農山漁村活性化プロジェクト支援交付金の活用状況】
19年度管内では、39件の活性化計画が策定され44市町村(関連市町村を含め66
市町村)で農山漁村の活性化に向けた取組が実施されている。
また、計画の内訳としては、農業関連の計画が28件、林業関連の計画が10件、
水産業関連の計画が1件となっている。
イ
農山漁村活性化支援窓口活用状況
19年度に農山漁村活性化支援窓口に寄せられた相談は19件あり、相談者からの
要望に基づき、それぞれの地域において延べ23回にわたり、延べ1,500名が参加
する活性化講演会を開催し、先進事例の紹介等を通じて、地域による自発的取組
への機運醸成が図られた。
- 169 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
(2)グリーン・ツーリズムの推進
【魅力ある交流拠点の整備をはじめ各種取組により地域活性化を図る】
グリーン・ツーリズムをはじめとする都市と農山漁村の共生・対流は地域活性
化に向けた重要な施策の1つである。農林水産省は、内閣府、総務省、文部科学
省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、環境省との連携のもと、都市と農山
漁村の共生・対流を推進している。19年6月には、関係府省副大臣で構成されて
いる「都市と農山漁村の共生・対流に関するプロジェクトチーム」が、「共生・
対流の一層の推進に向けた府省連携の今後の対応方向」をとりまとめた。この中
で、府省連携の今後の対応方向として、農山漁村の教育力を活用した宿泊体験活
動の推進、農山漁村の既存ストック(空き家、廃校)の活用等、11のテーマ毎に
具体的な連携内容や各府省の役割が報告された。
都市と農山漁村の共生・対流を推進するため、農山漁村の情報の受発信強化を
目指す。また、農山漁村では、都市住民の多様なニーズに対応するため、地域の
受入体制整備と廃校・廃屋等の地域資源を活用した魅力ある交流拠点が必要であ
る。
このため、管内においては、19年度の取組として、以下を実施した。
(ⅰ)農山漁村側の受入れ体制の整備として都市農村交流施設を3地区整備
(ⅱ)管内関係省地方局との連携を図るため、「中国四国地域都市と農山漁村
の共生と対流推進ネットワーク」にて関係省地方局と情報交換
(ⅲ)「オーライ!ニッポン 中国四国 都市と農山漁村の共生・対流シンポ
ジウムin2007」を開催(19年10月12日 岡山市、参加者220名)
(ⅳ)「第3回大山・蒜山地域市町村の交流連携強化のための研修会」を中国
経済産業局、中国運輸局、中国四国地方環境事務所と共催にて開催(19年
11月6日、鳥取県米子市、参加者126名)
(ⅴ)管内で農林漁業体験ができる70の宿泊施設を掲載したパンフレット「中
国四国地域の田舎で泊まって遊ぼう!」(18年度作成)を2千部増刷し、
配布。
(ⅵ)共生・対流に関するパネルの展示(消費者の部屋)、各種イベントにて
パンフレットの配布及びホームページの充実
共 生・ 対流 シ ンポ ジウ ム
大山 ・ 蒜山 研修 会
19年度から、都道府県域を超えて、都市と農村の多様な主体が参加して行う広
域連携プロジェクトについて、公募方式により国が直接採択し支援する「広域連
携共生・対流等対策交付金」を創設し、都市と農村の共生・対流を一層推進して
いる。管内では4団体が実施している。
- 170 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
ア 市町村計画の作成状況
【中国・四国管内では57市町村が市町村計画を策定】
管内の各県は農山漁村滞在型余暇活動に資するための施設整備に関する基本方
針を定めるとともに、各市町村は、その基本方針に基づき市町村計画を策定する
こととしている。20年3月末現在、管内では57市町村(全国では460市町村)で
策定されている。
イ 農林漁業体験民宿の状況
【中国・四国管内では24軒が農林漁業体験民宿に登録】
20年3月末現在の農林漁業体験民宿(以下「体験民宿」という)の登録数は管
内では24軒(全国545軒)であるが、まだ登録数が少ない状況である。農政局と
しても体験民宿は滞在型の余暇活動を行う上で重要な施設となることから体験民
宿登録の意義や効果等について、普及・啓発に努めている。
【農林漁家民宿おかあさん100選】
農林水産省では、19年度から、良質な農林漁家民宿を拡大していくため、農林
漁家民宿経営の安定に成功し、地域の活性化にも影響力を発揮している農林漁家
民宿経営の女性を選定し、経営内容や活動実績などを紹介。第1回選定で、管内
から以下の3名が選定されている。(全国では20名を選定)
こ
く
り
こ
も りながれ い こ
うち こ ちよ う
《ファームインRAUM古久里来 森長禮子(愛媛県内子 町 )》
母屋のパブリックスペースを活用して、オーナーや地域住民との交流に配慮し
た接客に努めている。食事(創作和食)は、自家収穫したものと近隣の生産者か
らの農作物・加工品を食材として提供。
き
うえ た と も こ
ゆすは らちよう
《農家民宿いちょうの樹 上田知子(高知県檮原 町 )》
「農山村のくらしありのまま」と「家族ぐるみのあたたかいもてなし」を提供、
「体験」と「くらし」を切り離さず自然体で受け入れている。体験を農家に頼ん
だり、直売所を紹介するなど、地域に広がる「サービス」を心がけている。
た なべひと こ
し まん と ちよう
《農家民宿はこば 田辺客子(高知県四万十 町 )》
お客様との会話を大事にし、持ち山へ林業の案内も行うため、1日1組に限定。
食事は、管理栄養士であることを活かし、栄養バランスのとれた献立で、地場の
食材を活かしたアレンジ料理を提供。
ウ
都市と農村の交流事例
オーライ!ニッポン会議では、15年度から、都市と農山漁村の交流の拡大・活
性化に寄与した団体・個人を表彰する「オーライ!ニッポン大賞」と農山漁村地
域の生活・文化を楽しむ新たなライフスタイルを実践している個人を表彰する
「ライフスタイル賞」が実施されている。なお、19年度は管内で以下の3団体が
- 171 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
受賞している。
第5回オーライ!ニッポン大賞グランプリ受賞地区
は た こういき かんこう きよう ぎ かい
し まん と し
《幡多広域観光 協 議会(高知県四万十市他5市町村)の取組》
7年に全国に先駆けて環境体験型教育旅行の受入組織として本協議会を設立。
各地域の体験型観光受入研究会組織や個人とのネットワーク化も充実し、自然環
境を活かしたアクティビティ、農林水産業体験など、100を超える体験プログラ
ムを広域的に提供。19年度受入団体数22、受入数2,355名になり、その直接経済
効果は、5千万円を超えている。
第5回オーライ!ニッポン大賞受賞地区
い ざ り
み らい
か んが
すいし んきよう ぎ か い
み なみち よう
《伊座利の未来を 考 える推進 協 議会(徳島県美波 町 )の取組》
地区のシンボルである伊座利校の存続を掲げて、住民が一体となって自主的・
創造的な地域おこしに立ち上がる。漁村留学交流イベント「おいでよ海の学校へ」
を契機に、12年に全住民で構成する本協議会を結成。多彩な交流促進活動に積極
的に取り組み、交流の輪は大きく広がり、「伊座利の未来を考える応援団員」は
1,000名にのぼる。活動当初約100人だった人口が現在130人に増加し、地域に活
気と賑わいが戻ってきている。(178ページに詳細な取組内容を記載)
第5回オーライ!ニッポン大賞審査委員会長賞受賞地区
しゆ うじつ こう とうがつ こう
《 就 実高等学校(岡山県岡山市)の取組》
16年に創立百周年を向かえた学校の歴史を検討する過程において、北海道旭川
市の「就実地区」に興味を持ったことがきっかけに交流へ発展。17年から高校2
年生の修学旅行のコースとして取り入れ、生徒と教員と就実地区自治会が連絡を
取り合いながらオリジナルな体験プログラムを作成。交流4年目には、「就実音
頭」の復活や、高校文化祭で就実地区の農産物を販売した売上金を就実地区自治
会の地域活動の財源として入金している。
(3)美しい自然と景観の維持創造
【自然との共生や環境との調和に配慮した農業農村整備事業の推進】
農村の美しい自然や景観は、農作業に携わる人々の手によって維持されている。
近年、農村の自然環境は都市住民や地域住民の憩いや安らぎの場として見直さ
れており、農業の生産活動や農村の美しい自然環境、景観を将来にわたって維持
・創造することが求められている。
このようななか、農業農村整備事業は、食料の安定供給等農業生産性の向上、
農村の生活環境の改善を基本的な目的としつつ、13年度の土地改良法改正により、
環境との調和への配慮が事業実施の原則として位置づけられたことを受け、自然
- 172 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
と農業生産が調和した豊かな田園自然環境の創造に努めてきた。
また、農林水産省では、15年9月の「水とみどりの『美の里』プラン21」の
作成、16年6月の「景観法」の制定を受け、農山漁村地域特有の良好な景観を形
成するため、農業農村整備事業においても景観に配慮した取組を一層推進するこ
ととなった。
ア
田園環境整備マスタープラン
農業農村の整備に当たっては、市町村が策定する「田園環境整備マスタープラ
ン」に基づいて環境との調和に配慮した事業を展開している。
なお、「田園環境整備マスタープラン」とは、地域内の環境評価に関する事項、
環境保全の基本方針に関する事項、地域の整備計画に関する事項、田園環境マス
タープラン構想図(以下の図面参照)等を内容とし、農業農村整備事業を実施す
る全市町村が主体となって策定するものである。19年度は、新たに1町で作成、
3市町で見直しを行った。
■ 田 園 環 境 整 備 マス タ ー プ ラ ン に基 づ く 「 環 境創 造 型 事 業 」の 例
イ
自然と環境との調和に配慮した事業の推進
地域住民と連携しつつ、農村地域における身近な自然環境の保全・再生を推進
するために、「農山漁村活性化プロジェクト交付金」により、自然と共生する環
境を創造する整備を実施している(旧元気な地域づくり交付金のうち田園自然環
境保全再生:5地区)。
- 173 -
第 Ⅰ部
石積 畦 畔
第4章
おおはが
川根 地区 (広島 県安 芸 高田 市)
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
ビ オト ープ
大 垪 和地 区(岡 山県 美咲 町 )
また、里地や棚田等の多面的機能を良好に発揮するため、同交付金により中山
間地域の棚田整備を実施している(旧元気な地域づくり交付金のうち里地棚田保
全整備:11地区)。
〔 施工 前〕
〔 施工 後〕
棚田 地 域を 保全 ( 区画 整理 )
(愛 媛 県西 予市
ウ
た ほ
田穂 地区 )
関係機関との連携
過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的とした自然再
生推進法(平成15年1月施行)の円滑な運用のため、関係省庁の地方出先機関で
組織する「中国四国地区自然再生担当者会議」により、管内における各機関の自
ふし のが わ
然再生事業等に関する情報交換を行っている。なお、「椹野川河口域・干潟自然
再生協議会」、「竜串自然再生協議会」、「中海自然再生協議会」、「広島湾再生推
進会議」に関係行政機関の委員として参加し、農政局の取組や所管する事業制度
などの情報を提供している。
さらに、国内希少野生動植物種に指定されている「アユモドキ」及び「スイゲ
ンゼニタナゴ」の保全について、「スイゲンゼニタナゴ・アユモドキ保全連絡調
整会議」に関係機関として参加し、保全対策等に関する情報交換を行っている。
- 174 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
〔 ス イゲ ンゼ ニ タナ ゴ〕
〔 アユ モド キ 〕
エ
田んぼの生きもの調査
田んぼや農業用用排水路等は、農業生産の場であると同時に、多くの生きもの
達の生息場所にもなっている。しかし、これまで田んぼやその周辺にどのような
生きものがどれだけ生息しているかといった調査はあまり行われてこなかった。
このため、13年度から環境省と農林水産省が連携して、田んぼの周りの生きも
の調査(略称「田んぼの生きもの調査」)を実施している。
19年度も引き続き小学校、地域住民等と連携して「田んぼの生きもの調査」を
実施した。管内で魚類について268地点で実施し、41種を確認した。また、カエ
ルについても48地点で実施し、6種を確認した(表Ⅰ−4−1)。
表Ⅰ−4−1
項 目
魚 類
田んぼの生きもの調査結果(中国・四国管内)
13年度
182
38
調査地点
確認種数
カエル
調査地点
確認種数
14年度
-
15年度
16年度
17年度
18年度
19年度
237
37
327
50
363
54
339
48
335
42
268
41
139
6
68
7
59
10
62
7
62
7
48
6
資料 :中 国四 国 農政 局調 べ
魚 類調 査( 広島 県 北広 島町 )
カエ ル 調査 (山 口 県下 関市 豊北 町 )
- 175 -
第 Ⅰ部
3
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
豊かなむらづくりへの取組
【創意工夫を凝らし地域活性化に取り組む集団を表彰】
国民的祭典である農林水産祭では、自主的努力と創意工夫によるむらづくり活
動を通じて地域の活性化に貢献している優良集団を表彰している。
19年度においては、中国・四国地域では3集団が農林水産大臣賞を、2集団が
中国四国農政局長賞を受賞し、10月16日に農政局において表彰式が行われた。さ
らに、徳島県の「伊座利の未来を考える推進協議会」は、農林水産祭中央審査委
員会において、最高位である「天皇杯」を受賞し、11月23日の農林水産祭におい
て表彰式が行われた。
受賞集団は以下のとおりであり、農林水産大臣賞受賞集団のむらづくり活動の
概要は次のとおりである。
受賞集団一覧
表彰名
天
皇
むらづくりの主体
い
ざ
り
みら い
かんが
所在地
か い ふ ぐん み な み ちよ う
杯 伊 座利の 未来 を 考 える 徳島県海部郡美波町
す いしんきよ うぎかい
農 林 水 産 大 臣 賞 推進協議会
さとうん えいきよ うぎかい
農 林 水 産 大 臣 賞 ぶどうの里運営協議会
な な お れ ち く なな おれうめ せい さんし ゆつか
いば らしあ おの ちよ う
岡山県井原市青野町
いよ ぐんとべ ちよう
農 林 水 産 大 臣 賞 七折地区七折梅生産出荷 愛媛県伊予郡砥部町
くみあい
組合
あさい
く
ら
ぶ
中国四国農政局長賞 浅井もちっこ倶楽部
ちゆうな んしん こうこうしや
中国四国農政局長賞 株式会社仲 南振興公社
- 176 -
くらよ ししせき がねちよう
鳥取県倉吉市関金町
なかた どぐん
ち よう
香川県仲多度郡まんのう 町
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
「伊座利の未来を考える推進協議会」(徳島県海部郡美波町)
① むらづくりの経緯
平成4年、地区の「伊座利校(へき地2級の小・中併設校)」の廃校問題が
勃発した。地区にとって、学校は宝であり、住民の心の灯火であり、シンボル
であり、学校の廃校はまさしく集落存亡の危機でもあった。
「学校の灯火を消してなるものか」と議論を重ね、11年、伊座利校への転校
を呼びかけるため、「第1回おいでよ海の学校へ」という交流イベントを開催
した。その後、計画的・継続的に地域づくりを実施するため、地区の全ての組
織を融合する新たな組織として、12年に住民全員参加による「伊座利の未来を
考える推進協議会」を設立した。
協議会は、11の実行委員会で構成され、町内会、漁協、伊座利校等全ての
組織と連携し、地域全体の課題を対象にしたむらづくり活動を展開している。
② むらづくり活動の特徴
∼親子一緒の漁村留学 ー 地域と学校は一つ∼
活動の原点である「おいでよ海の学校へ」は19年で13回を迎えた。この活動
により、全国各地から家族ぐるみの移住者があり、地区の若者の定住化促進へ
とつながり、人口の増加・高齢化率の低下、秋祭りのかき太鼓の復活等、大き
な成果となっている。伊座利校への漁村留学は親子で転入することが原則であ
り、これまでに50人を上回る子ども達が転入してきている。転入家族には協議
会で住居を用意し、家族同様の思いで接している。
また、以前から地区では「磯学習」と呼ばれる、地区の大人が先生役となり
地区の良さを子ども達に教える活動が行われていた。現在は総合学習の一環と
して、子ども達が地区の歴史や産業等を調べ、大人達の前で毎年発表している。
∼アワビの出荷調整、アラメ加工品開発で漁業振興∼
厳しい漁業条件の中、アワビの出荷調整、旬の海の幸の直送、海藻アラメ加
工品の開発等により漁業者の収入増を図っている。「イザリcafe」もオープン
し新たな魅力づくりに取り組んでいる。地区の頑張りを肌で感じた若者や漁業
に憧れ他県からきた家族など、漁業後継者やIターン就業者も育っている。
∼大きく広がる交流の輪∼
多彩な交流活動を通して、全国各地から多くの人が訪れ住民との交流を深め
ており、地区をモデルとした物語も出版されている。また、関西・関東・徳島
市内等に、伊座利のむらづくりを支援する「伊座利応援団」を組織し、交流の
輪を拡大させている。
第1 3 回 おい でよ 海 の学 校へ
秋 祭 りの 「か き太 鼓 」
磯学習「伊座利の伊勢エビ3姉妹」
③ むらづくりの成果
地区のシンボルである「伊座利校」を残そうと、地域住民が一体となって自
主的・創造的な地域おこしに立ち上がった。「交流」をキーワードに、地域全
体で、全員が主役の草の根的なむらづくり活動を開始した。工夫をこらした多
彩な活動により、各地からの転入者や地区の若者の定住、児童生徒数の増加、
漁業後継者の確保等、地区ににぎわいが戻ってきている。小さくとも輝き続け
る伊座利を目指して、むらづくり活動は展開中である。
- 177 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
「ぶどうの里運営協議会」(岡山県井原市青野町)
① むらづくりの経緯
昭和50年代には西日本有数のぶどう(マスカット・ベリーA)産地であった
が、その発展にブレーキがかかってきたことから、平成4年、ぶどう産地の発
展と都市住民との交流による地域活性化に貢献するため、直売所の開設を目的
に、農業後継者グループで「ぶどうの里運営協議会」を設立した。翌5年には、
会員自らが建設に携わった直売所「葡萄浪漫館」を開設し、ぶどうの直売を開
始した。現在、協議会が、直売所と交流施設の機能を有した新しい「葡萄浪漫
館」の運営を通じて 、むらづくりの中心的な役割を担っている。
② むらづくり活動の特徴
∼ぶどう産地が活性化∼
「葡萄浪漫館」の来場者、販売額は順調に伸び、生産者は市場出荷と直売所
を組み合わせた経営の安定が図れるようになった。また、ニーズが直接把握で
きることにより、ベリーA単一産地から大粒系品種への更新の加速が図られ、
ハウス面積の拡大、新たな担い手の確保など、産地が活性化している。
∼地域住民と一体化した活動で地域活性化∼
協議会では、外部との交流の重要性を訴え、若い農業者の創意を生かして様
々な取組を行った。ぶどうの収穫最盛期に行うイベント「ぶどうの里ふれあい
マラソン大会」は、当時は画期的な出来事であったが、今では地区民総出のイ
ベントとして毎年恒例の行事になっている。その他にも、「ぶどうの里マウン
テンバイク大会」、「あたごっち大作戦」等創意工夫した各種イベントを、公
民館等と協力し、地域ぐるみで都市住民との交流活動を盛んに行っている。
あ たご っち 大 作戦
「 葡 萄浪 漫館 」の 様 子
ぶ ど う の 里 ふれ あ い マ ラ ソ ン 大 会
③ むらづくりの成果
地域の各種組織との連携の中で、「葡萄浪漫館」を活用し、若い農業者のア
イデアによりユニークな各種イベントの開催や事業を展開してきた。地域住民
の一体感が強まり、交流活動もますます盛んになり、地域活力の原動力となっ
ている。また、「葡萄浪漫館」の直売により、生産者の経営安定が図られ、ぶ
どう産地の活性化に貢献している。
- 178 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
「七折地区七折梅生産出荷組合」(愛媛県伊予郡砥部町)
① むらづくりの経緯
みかんの価格暴落をきっかけに、昔から大切に守られてきた「七折小梅」を
核とした梅産地を目指した。品種の統一、栽培技術向上等のため、昭和48年に
「七折梅生産出荷組合」を結成し、「七折小梅」のブランド化に取り組み、優
良産地を形成した。平成3年に梅まつりを開催して以来、産地維持とともに、
消費者との交流を組合活動の重要な柱と位置づけている。自治会や町の商工会、
JA等地域と一体となって、むらづくり活動を展開している。
② むらづくり活動の特徴
∼七折小梅を守り育て優良産地に∼
「青いダイヤ」と呼ばれる高品質の七折小梅を大切に守り育て、徹底した品
質管理により、ブランドを確立している。環境や農業者に優しい農業に取り組
み、17年度には組合員全員がエコファーマーの認定を受け、19年度から農地・
水・環境保全向上対策の共同活動に地域住民一体となって取り組んでいる。家
族経営協定の締結、農事組合法人化等常に積極的な取組が行われている。
∼女性の活躍でヒット商品を創出∼
女性有志で始めた梅の加工品づくりは、今では企業と連携する規模になり、
梅干し、梅シロップ等様々な加工品を開発し、ヒット商品を作り上げている。
∼七折梅まつりで消費者交流∼
梅園を開放した梅まつりは今では町の一大イベントとして定着している。組
合では、山林や耕作放棄地へ梅を植栽し、新たな観光梅園を開拓するとともに、
散策道を整備し、みごとな梅園を完成させている。地域が一体となって取り組
み、美しい集落づくりに努め、毎年多くの人との交流が行われている。
10家 族が 協定 締結
漬 け 梅は 女性 が 主役
山 林 を開 拓し た梅 園
③ むらづくりの成果
七折 小梅を中 心に優 良産地を 形成し農 家の経営 安定につ なげて いる。環 境保全
型農 業やパ ートナー シップ 型農業へ の取組 、農地・ 水・環 境保全向 上対策 への地
域住 民が一 体となっ た取組 、法人化 による 耕作放棄 地防止 の推進等 を通じ て、産
地維 持を図っ ている。 また、消費者交流、食農教育、加工品開発、ホームペー
ジによる情報発信等に積極的に取り組み、農家と地域を元気にしている。
- 179 -
第 Ⅰ部
4
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
農村の生活環境整備等
【地域の自主性や裁量を重視した農村生活環境の整備を展開】
(1)農村生活環境整備の概況
中国・四国地域の農村生活環境は、総市町村数の約7割を占める中山間地域で
下水道等の整備が立ち遅れているなど、都市部と農村部に大きな差がみられる。
この農村生活環境の整備を促進するため、17年に農村地域自らの発想による地
域再生等の取組を支援する新たな仕組みとして汚水処理施設や道路の整備を所管
する関係省が連携した「地域再生基盤強化交付金」が創設された。これにより、
汚水処理施設や道路整備等の事業実施に当たっての地域の自主性や裁量が拡大
し、さらに効率的な整備が可能となった。
(2)生活環境整備の推進
ア 農業集落排水整備の取組
18年度末の汚水処理施設整備(人口)率(農林水産省、国土交通省、環境省)
は全国で82.4%、中国・四国地域で69.0%となっている。このうち農業集落排水
事業による整備は全国2.7%、中国・四国地域3.8%である。
なお、農業集落排水事業により汚水処理施設を整備することとされている区域
における整備率は、全国54.9%、中国・四国地域47.3%である(図Ⅰ−4−1)。
中国・四国地域においては、農業集落排水事業による汚水処理施設は整備され
つつあるものの、全国と比べると立ち遅れている。今後も、中山間地域対策や農
村の生活環境整備の促進の観点から、同事業の一層の推進に取り組むこととして
いる。
- 180 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−4−1
100%
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
汚水処理整備及び農業集落排水整備率(18年度末)
84.2%
84.5%
76.1%
72.1%
63.9%
80%
第4章
78.5%
汚水処理施設整備率
農業集落排水事業等整備率
74.3%
61.2%
60%
63.2%
47.7%
40.7%
41.8%
82.4%
69.0%
59.2%
54.9%
47.3%
40.2%
40%
26.6%
16.7%
20%
全国
中 国四 国
高知県
愛媛県
香川 県
徳島県
山口県
広島県
岡山県
島根県
鳥取 県
0%
25.7%
資 料 :中 国四 国農 政 局調 べ
注 : 1) 農 業 集落 排 水 事 業等 整 備 率 は、 各 県 が 策定 し た 構 想で 農 業 集 落 排水 事 業 等に よ
り 整備 する こ とと され て いる 整備 対象 人 口に 対す る 整備 済人 口の 割 合。
2) 広 島県 は 、 農 業集 落 排 水 事業 等 の 整 備対 象 人 口 が 未公 表 の た め整 備 率 を 表示 し
て いな い。
表Ⅰ−4−2
19年度の農業集落排水事業の実施地区数
事業名
地区数
農業集落排水統合補助事業
9地区
農業集落排水資源循環統合補助事業
43地区
村づくり交付金
(農業集落排水資源循環統合補助事業)
9地区
汚水処理施設整備交付金
23地区
資料 : 中国 四 国 農政 局 調べ
農業 集落 排 水処 理施 設の 施 工例
- 181 -
第 Ⅰ部
イ
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
農村振興総合整備の取組
地域が自ら考え設定する個性ある農村振興の目標が達成されるよう、地域住民
の参加のもと、地域の多様なニーズに応じた農業生産基盤の整備と農村環境の整
備を総合的に実施する農村振興総合整備事業等を推進している。
このほか、自然環境や景観にも優れた美しい村づくりを実現するための「美し
い村づくり総合整備事業」の推進や、地域の創造力を活かせるよう、国の関与を
縮減し市町村の裁量を拡大して市町村の提案による事業も含めた「村づくり交付
金」、伝統的農業施設や美しい農村景観の保全・復元等に配慮した各種生産基盤
等の整備を行う「田園空間整備事業」の活用により、今後とも、農村の振興をよ
り効果的、効率的に図っていくこととしている(表Ⅰ−4−3)。
表Ⅰ−4−3
農村振興に係る事業の実施状況
事業名
事業内容
地区数
農村振興総合整備事業
・ほ場整備
・農業用用排水施設整備
美しい村づくり総合整備事業 ・農道整備
・農業集落道整備
村づくり交付金
・営農飲雑用水施設整備
田園空間整備事業
16地区
1地区
等
・公共施設等用地の整備
・田園空間博物館の整備
・田園交流基盤の整備
資 料 :中 国 四国 農 政局 調 べ
ほ場整備の施工例
〔施 工 前〕
〔 施工 後〕
- 182 -
11地区
1地区
第 Ⅰ部
ウ
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
中山間地域総合整備の取組
中国・四国地域では農業を核とした地域づくりを推進するため、市町村全域か
ら複数市町村に及ぶ広域地域を対象に、「中山間地域総合整備事業」の「広域連
携型」を実施し、地方単独事業等と一体的な構想のもとで、農業・農村の活性化
を図っている。また、「一般型」では集落単位で農業生産基盤や快適な居住環境
を一体的に整備するなど多彩な事業を展開しており、現在、管内で68地区実施し
ている。
農道整備の施工例
〔 施 工前 〕
〔 施工 後〕
なお、事業効果をより高めるため、個々の事業を単独で実施するのではなく、
定住条件を良好にするための「農業集落排水事業」、都市部と農村部のアクセス
を良くするための「広域農道整備事業」等と連携して「中山間地域総合整備事業」
を実施するよう施策を講じている。
- 183 -
第 Ⅰ部
5
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
農地・水・環境保全向上対策
【国・地方・地域住民が一体となり資源の保全管理に取り組む】
(1)農地・水・環境保全向上対策の背景と概要
良好に維持保全された農地・農業用水等の資源(以下「資源」という。)は、
食料の安定供給だけではなく、農村の豊かな自然環境や景観を形成する社会共通
の資本である。これらの資源は、これまで農業者が中心となった地域共同の取組
により保全管理されてきたが、近年の高齢化や混住化の進行等に伴い、これまで
どおり 地域 で適 切に 保全 管 理し てい くこ とが 難し くな っ てき てい る。
一方 、国 民 の環 境 問題 に 対す る関 心 が高 ま り、 農業 生 産の あ り方 を環 境 保全 を
重視 した も のに 転換 して いく こと が 求め られ てい る。
この ため 、 資源 や 農村 環 境を 守り 、 これ ら の質 を高 め る地 域 での 共同 活 動と 環
境 保全 に向 け た先 進 的な 営農 活 動を 総 合的 に支 援 する 新 たな 対 策と して 、 19年 度
から 「農 地 ・水 ・環 境保 全向 上対 策 」が 開始 され た。
地域共同の取組により保全管理される資源
農地や農地周辺の水路等
ダム
幹線 水路
頭首 工
「地域共同」の取組
幹線 水路
資源
排 水機 場
により保全 管理される
分水 工
農地周辺の水路
農 道
末端
水路
個人が管理
資 料 :農 林水 産省
管理
地
地域共同で
域共同で管理
環 境資源と し ての役 割
生 産資源と し ての役 割
農道・ため 池など
個人が管理
農地 ・水 ・ 環境 保全 向上 対 策パンフレット「 農地 ・水 ・環 境 の保 全向 上 のた めに」
(2)地域協議会
地域協議会とは活動組織を支援し、活動に対する指導・助言や交付金の交付事
務を行う団体で、市町村単位以上の区域で設置するものである。管内では、11協
議会(全国131協議会)が、香川県はブロック単位で3協議会、その他の県は県
単位で設置された。
- 184 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
(3)共同活動支援(集落の資源と環境を守る共同活動の取組)
ア
中国四国地域の取組み状況
表Ⅰ−4−4
県名
19年度は 、本対 策の初年 度であり、 管
内2,082活動組織(全国1万7千活動組織)
管内の取組み状況
活動組織数
取組面積( ha)
鳥取県
246
6,112
島根県
438
1 9,139
が、8万6,568ha(全国116万3千ha)に
岡山県
262
9,465
おいて 、活動 を開始し た。1 活動組織 当
広島県
88
3,148
山口県
240
1 5,231
徳島県
104
7,812
香川県
171
6,665
愛媛県
392
1 4,856
高知県
141
4,133
2,082
8 6,560
たりの 平均取組面 積は、約 42haであ った
(表Ⅰ−4−4)。
また 、活動 組織の4 割が、 中山間地 域
等直接支払制度にも取り組んでいた。
計
資料 :中 国 四国 農政 局調 べ
注 : ラウ ン ド の 関 係 で 、 計 と 内 訳 が 一 致 し
な い 場合 があ る。
イ
多様な主体の参画状況
活動組織に参画する農業者以外(団体)で一番多いのは「自治会」で、3,917で
あった。続いて多いのは、「女性会」、「子供会」、「学校・PTA」であった。ま
た、NPO法人が参画している活動組織も10活動組織あった(図Ⅰ−4−2)。
図Ⅰ−4−2
3,917
3,838
773
686
569
517
174
10
そ の他
N PO
学 校 ・P T A
JA
土 地 改 良区
子供 会
女性 会
自治 会
4,400
4,000
3,600
3,200
活 2,800
動
2,400
組
2,000
織
数 1,600
1,200
800
400
0
活動組織に参画した農業者以外(団体)
資 料: 中国 四 国農 政局 調べ
ウ
活動の内容
19年度の活動は、資源の適切な保全のための「基礎部分」と、施設の長寿命化
につながる「農地・水向上活動」や農村環境を向上させる「農村環境向上活動」、
より高度な取組を行う「促進費対象活動」が行われている。
【基礎部分】活動組織の実践活動項目数は、平均11項目であった。
【農地・水向上活動】活動組織の活動項目数は、平均28項目であった。この活動
- 185 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
により、実践活動の実施割合が、現況の34%から73%に増加した。
【農村環境向上活動】取組が多かったテーマは、
「景観形成・生活環境保全」、
「生
態系保全」、「水質保全」であった(図Ⅰ−4−3)。
【促進費対象活動】促進費対象活動に取り組んだ活動組織は47であった。そのう
ち、1活動組織については、活動組織のNPO法人化を予定している。
図Ⅰ−4−3
活動組織が取り組んだ農村環境向上活動のテーマ
0
活動組織数
400
生態系保全
800
1,200
1,600
2,000
390
水質保全
168
1,831
景観形成・生活環境保全
水田貯留機能増進・地下水かん養
22
資源循環
22
資料 :中 国四 国 農政 局調 べ
(4)営農活動支援(環境にやさしい営農活動の取組)
ア
中国四国地域の取組み状況
表Ⅰ−4−5
19年度 は、本対策の初年度であり、管
県名
内157活動組織(全国2,042活動組織)が、
管内の取組み状況
活動組織数
取組面積(ha)
鳥取県
9
106
島根県
60
782
1,746ha(全国4万6,119ha)において、活
岡山県
3
26
動を開始した。1活 動組織当たりの平均
広島県
26
202
山口県
22
293
徳島県
1
11
取組面積は、12haであった(表Ⅰ−4−
5)。
香川県
2
21
愛媛県
29
249
高知県
計
5
56
1 57
1,746
資 料: 中 国四 国農 政局 調 べ
注: ラウンドの関係で、計と内訳が一致し
な い場 合が ある 。
イ
活動の内容
【地域全体の農家が行う環境負荷低減に資する取組】
対象区域の農業者全体による、環境負荷低減に向けた取組としては、「化学肥
料や化学合成農薬の使用の低減を通じて環境負荷低減に資する取組」(39.6%)、
「有機物資源の循環利用の促進を通じた環境負荷低減に資する取組」(39.4%)、
「ほ場からの環境負荷の流出を抑制する取組」(20.8%)の3項目の取組が主体
となっている(図Ⅰ−4−4)。
- 186 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−4−4
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
管内の環境負荷低減に資する取組
ほ場からの環境負荷の流出
を抑制する取組
0 . 2%
2 0. 8 %
有機物資源の循環利用の促
進を通じた環境負荷低減に
資する取組
化学肥料や化学合成農薬の
使用の低減を通じて環境負
荷低減に資する取組
3 9 .6 %
そ の 他
3 9 . 4%
資料 :中 国四 国 農政 局調 べ
【先進的営農支援(化学肥料及び化学合成農薬の使用を原則5割以上低減する取組)】
先進的営農支援では、一定のまとまりをもって化学肥料及び化学合成農薬の使
用を原則5割以上低減する取組を行っている。
管内における対象作物は、概ね9割が水稲となっている(図Ⅰ−4−5)。
図Ⅰ−4−5
1.8
化学肥料・化学合成農薬を原則5割以上低減した対象作物
2.3
7.5
2.7
水 稲
麦・ 豆類
いも ・根菜 類・ 野菜類
果樹・茶
花き ・ その他
85.7
資料 :中 国四 国 農政 局調 べ
(5)普及・啓発活動の概要
ア
リーフレットの作成
農政局独自のリーフレット「農地・水・環境保全向上対策」を作成し、管内
全県を通して活動組織へ配布することで、取組の推進を図った。
イ
活動事例集の作成
管内の代表的地区の活動事例集「活動組織の声」を作成し、管内全県を通し
て活動組織へ配布することで、取組の推進を図った。
ウ
消費者の部屋での展示
19年7月2日∼20日、中国四国農政局消費者の部屋において、管内の代表的
- 187 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
なモデル地区の活動事例や環境保全型農業のパネル展示等を行い、広く一般消
費者に対する啓発・普及を図った。
エ
シンポジウムの開催
20年3月18日に開催した「中国四国地域環境保全型農業推進シンポジウム」
では、「農地・水・環境保全向上対策」の事例発表やパネルディスカッション
などを行うことにより、環境保全型農業に対する啓発・普及を図った。(シン
ポジウム参加者一般市民約100名)。
オ
事務手続きの簡素化
19年12月21日に決定された「農政改革三対策の着実な推進について」に基づ
く、「農地・水・環境保全向上対策に係る事務手続きの簡素化」について、管
内全県、全地域協議会を通して活動組織に周知し、活動の円滑な推進を図った。
(上記ア∼オのリーフレット等は、農政局のホームページに掲載し、情報提供を
図った。)
6
中山間地域の振興に向けた取組
(1)中山間地域等直接支払制度の推進
中山間地域等は流域の上流部に位置することから、中山間地域等の農業・農
村が有する水源かん養機能、洪水防止機能等の多面的機能によって、下流域の
都市住民を含む多くの国民の生命・財産と豊かなくらしが守られている。
しかしながら、中山間地域等では、高齢化の進展する中で平地に比べ自然的
・経済的・社会的条件が不利な地域があることから、担い手の減少、耕作放棄
の増加等により、多面的機能が低下し、国民全体にとって大きな経済的損失が
生じることが懸念されている。
このため、担い手の育成等による農業生産の維持を通じて、多面的機能を確
保する観点から、国民の理解の下に、中山間地域等直接支払交付金を交付して
いる。
なお、「中山間地域等直接支払制度」は、将来に向けた農業生産活動等の継
続に向けた前向きな取組を促進し、水路・農道等の管理活動や耕作放棄地の発
生防止等の活動とともに、機械・農作業の共同化や新規就農者・認定農業者の
育成、担い手への農地集積等の取組を推進している。
ア
19年度の中山間地域等直接支払制度の実施状況
【97%の市町村で協定を締結】
19年度の中山間地域等直接支払制度の実施状況については、対象農用地を有す
- 188 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
る179市町村の97%に当たる174市町村で、8,989協定(集落協定8,819協定、個別
協定170協定)が締結され、水路・農道等の維持管理をはじめ、機械・農作業の
共同化及び担い手への農地集積等を推進している。
なお、実施協定のうち、体制整備の取組は、交付金交付面積ベースで59,264ha
であり、全交付面積の62%を占めている(表1−4−6)。
表Ⅰ−4−6 19年度実施状況(集落協定+個別協定)
県 名 対
象 実
施 協定数
交付金交付面積(ha)
交付金額
市町村数 市町村数
うち体制整備
(百万円)
鳥取県
17
17
652
7,162
4,029
1,007
島根県
20
20
1,451
13,697
10,914
1,945
岡山県
25
25
1,448
11,340
5,140
1,604
広島県
18
17
1,515
19,754
10,418
2,598
山口県
18
18
926
12,561
10,078
1,548
徳島県
17
17
668
4,452
2,194
524
香川県
13
11
451
2,868
782
392
愛媛県
18
18
1,092
16,157
10,983
1,971
高知県
33
31
786
7,025
4,725
985
中 国
98
97
5,992
64,514
40,579
8,702
四 国
81
77
2,997
30,502
18,684
3,872
中国四国
179
174
8,989
95,018
59,264
12,574
1,128
1,038
28,708
664,540
527,729
51,698
全 国
資料 : 中国 四国 農政 局 調べ
注: ラウ ン ドの 関 係で 数値 が 一致 し ない 場合 が ある 。
イ
集落協定に基づく活動内容
全集落協定で実施されている農業生産活動等の活動をみると、農道の管理が最
も多く、次いで水路の管理、周辺林地の下草刈、農地の法面管理、鳥獣被害防止
対策となっている。
特に、管内では鳥獣被害防止対策に取り組んでいる割合が58.7%と全国(同40
%)より高くなっている(図Ⅰ−4−6)。
- 189 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−4−6
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
農業生産活動等の実施状況(中国・四国)
0%
20%
40%
60%
80%
9 9.4%
9 9.7%
農道の管理
9 5.4 %
96 .9 %
水路の管理
6 7.1 %
73 .0%
周辺林地の下草刈
7 6.8%
7 2.7 %
農地の法面管理
40 .0 %
鳥獣被害防止対策
全国
中国四国
3 9.9%
38.3%
景観作物の作付け
17 .4 %
1 9.8%
堆きゅう肥の施肥
その他の施設の管理
58 .7%
4 5.3%
4 6.2%
賃借権設定・農作業の委託
簡易な基盤整備
100%
13.2%
1 0.0%
5.6%
7 .2%
資料 :中 国四 国 農政 局調 べ
(2)農山村の総合的な振興
振興山村地域、過疎地域、半島地域、離島地域、特定農山村地域の指定を受け
ている条件不利地域である山村等中山間地域の振興を一層推進するため、「農山
漁村活性化プロジェクト支援交付金」により、地域の個性を活かした多様な地域
産業の振興、山村と都市との交流、豊かな自然環境の保全及び地域の確保に必要
な事業を総合的に実施している。
(取組事例)
―都市と農村の交流による地域の活性化
愛媛県今治市(旧大三島町)―
今治市大三島町は、瀬戸内海でも特に美しい芸予諸島の中央に位置し、古く
から海上交通の要衝であり大山祇神社の門前町として栄えた。主たる産業は、
柑橘類の栽培を中心とした農業であるが長年にわたる柑橘価格の低迷により後
継者不足が深刻であり、過疎化、高齢化に歯止めをかける施策として15年4月
にラントゥレーベン大三島をオープンした。当施設は、敷地面積8,500㎡、滞
在型体験農園施設16区画、温室ハウス(3棟)、農村公園、駐車場から成り、
滞在型体験農園施設16区画(1区画あたり約300㎡)を農山漁村活性化プロジ
ェクト支援交付金(旧新山村振興等農林漁業特別対策事業)で整備した。
- 190 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
当施設の運営は、地元住民で構成する管理組合に委託しており、利用者は組
合を通じ地域住民との交流が活発におこなわれているのが特徴である。また、
交流の内容は、多岐にわたり、農業指導をはじめ地域の伝統文化等を学習する
事業(イギス豆腐・味噌・しめ縄作り等)や地域住民との交流イベント(保育
園児との芋掘り・餅つき、お年寄りとのイチゴ狩り等)を利用者の希望を取り
入れながら行っている。また、利用者はこれ以外にも地域の秋祭りや盆踊りに
積極的に参加するなど、柑橘の収穫や集荷作業の手伝いを行うなど施設外でも
地域に貢献している。
一方で、長年の田舎暮らしで日々の生活に変化が乏しく、閉塞感を感じるこ
とが多い地元住民が、都市に暮らす人々と交流することによって違った風が入
り地域住民の新たな活力となっている。
また、利用者は、スローライフや人情味あふれる地域住民との交流の中で定
住をする利用者も現れており(現在6世帯)、順調な事業効果が上がっている。
ラウ ベ 室内 (A棟 )
ラン トゥ レ ーベ ン大 三島 全 景
ポッ トあ げ 作業
保育 園児 と の交 流( 収 穫祭 )
- 191 -
第 Ⅰ部
7
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
鳥獣被害防止対策の推進
(1)野生鳥獣による農作物等被害の状況
【被害金額は横ばい傾向、イノシシによる被害が依然として深刻】
中国・四国地域は、7割の市町村が中山間地域に該当しており、野生鳥獣によ
る農作物等の被害が多く、社会的な関心も高まっている。これらの被害は、収益
性の低下を招くのみならず、農業者の生産意欲の減退に伴う耕作放棄など、農山
村や集落機能の維持・存続にも影響を与えることから、被害防止対策への取組の
強化が大きな課題となっている。
鳥獣による被害金額は全体で約28.7億円となっており、その割合を見ると、イ
ノシシが50%と最も多く、次いでカラス15%、サル9%となっている。被害面積
は9千haとなっており、被害金額と同様イノシシの割合が最も高く、被害が深刻
となっている(図Ⅰ−4−7)。
被害の推移をみると、被害面積は8年度をピークに減少傾向にあるものの、被
害金額は依然横ばい傾向にある。(図Ⅰ−4−8)。
また、最近では、アライグマ等外来生物等による被害も拡大している。
図Ⅰ−4−7
H18年度被害金額
H18年度被害面積
その他
15%
その他
22%
イノシシ
37%
ヒヨド リ5%
中国四国
被害金額
(2 8.7 億円)
シカ6%
サル
9%
イノ シシ
50%
ヒヨド リ
8%
カラス
15%
図Ⅰ−4−8
カラス
17 %
シカ
11%
中国・四国地域における鳥獣被害の推移(農作物)
( 億円)
( 千h a)
3 5 .0
40
3 2 .3
36 . 1
3 2 .7
3 0 .0
2 2 .5
2 2 .1
20.6
3 2 .3
2 8 .7
3 2 .8
2 4 .0
2 5 .0
2 0 .0
中国四国
被害面積
(9.0千 ha)
スズメ5%
1 9 .6
1 8 .3
1 7 .0
3 0 .7
2 3 .3
1 7 .8
30
2 8 .1
1 8 .4
1 6 .2
20
1 5 .0
1 1 .6
1 1. 3
1 0 .9
1 0 .0
9 .7
9.0
10
5 .0
0 .0
3
4
5
被 害面積
6
7
8
被害金額
9
10
11
12
資料 :農 林水 産 省生 産局 調 べ
注 :被 害金 額 の調 査は 平 成11年度 から 実 施。
- 192 -
13
14
15
16
17
0
18
( 年度 )
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
(2)鳥獣被害防止への取組
管内における特徴的な鳥獣被害防止対策として、集落ぐるみでの防止対策の取
組がみられる。
〈鳥取県の取組〉『シシ垣くん』設置による集落ぐるみの対策
鳥取県内ではイノシシに加えて、シカ・クマ
等の分布が拡大傾向にあり、これら複数の獣種
の侵入防止対策が課題となっている。このため
県では、侵入防止効果が高く、設置や維持管理
が簡単で安価な柵「シシ垣くん」を開発した。
智頭林業で著名な智頭町の上市場集落では、
イノシシやシカの被害に悩まされ電気柵を設置
したが、十分な効果が得られなかった。
このため、集落では町役場や県の被害防止相談窓口職員・鳥獣被害対策専門
員などの支援のもと、集落で研修会や現地調査を行なうとともに、設置する柵
の種類や設置ルートについて検討を進めた結果、19年6月に、県の事業を活用
して集落ぐるみで「シシ垣くん(猪・鹿タイプ)」を設置した。設置に当たっ
ては、集落住民を中心に関係者が協力して作業を行い、約600メートルの「シ
シ垣くん」が完成した。
その後、被害は全く発生しなくなり、集落の皆さんはとても喜び、営農意欲
も向上している。また、柵の見回りや周辺の除草作業、竹の伐採等柵の維持管
理も集落内で協力して行なわれ、柵周辺の緩衝帯としての機能も少しずつ高ま
っている。
上市場集落では県内外からの視察も受入れており、他地域への波及効果とと
もに、高齢化の進む集落内にも元気が戻り、住民同士のコミュニティー回復に
も役立っている。
さらに、県内では、クマやタヌキによる被害に加え、近年、外来生物のアラ
イグマの分布拡大も懸念されることから、「シシ垣くん(猪・熊タイプ)」の設
置も進められており、過疎化・高齢化の進む中山間地域をはじめ、県内各地へ
の普及が図られている。
- 193 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
(3)農政局の取組
ア
鳥獣対策関係部局等の連携強化
鳥獣被害防止対策は鳥獣の行動特性を踏まえて、市町村や県域を越えたより広
域的・総合的な検討が必要なことから、中国・四国各県の農業、林業、環境の3
部局及び試験研究機関による「中国四国地区鳥獣被害対策連絡会議」を開催し、
防護や捕獲、保護管理等多様な取組による総合的な被害防止対策や、「鳥獣の保
護及び狩猟の適正化に関する法律」に基づき県知事が策定する「特定鳥獣保護管
理計画」の推進を支援している。
なお、四国地域においては、横断的な広域連携を推進するため、「四国地域野
生鳥獣対策連絡協議会」において、現地検討会等を開催し、野生鳥獣の適切な保
護管理、効率的な防除のあり方を検討している。
さらに、市町村段階における鳥獣被害対策担当者等の専門知識の向上を図るた
め、市町村段階の野生鳥獣被害防止協議会等により構成されている「四国地域鳥
獣対策ネットワーク」における現地研修会の開催等の取組を支援している(表Ⅰ
−4−7)。
また、18年度に制定された地域の要請に応じて野生鳥獣の被害対策専門家を紹
介する「農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー」制度について、各種会議、ホー
ムページにより、各県、各市町村等に広く周知するとともに、被害地域とアドバ
イザーとのマッチングやコーディネートに努めているところである。
表Ⅰ−4−7
名 称
中国四国地域の鳥獣対策の連携体制
中 国 四 国地 区 鳥 獣被
害対策連絡会議
開 始
目 的
16年2 月 9 日
関係行政 機関の総合
四国 地 域 野 生 鳥 獣 対 策 連
絡協 議 会
13年 11月27日
野 生鳥 獣に対 する適 切
四国 地域 鳥獣 対策 ネッ ト
ワーク
15年 2月 27日
野生 鳥獣の保護、管理、
的 か つ 横 断 的 な 対 策 や な 保 護 ・ 管 理 及 び 効 率 的 防 除 の 情 報交 換 、広 域 連 携、
連 携 に よ る 被 害 対 策 の な 防 除 の あ り 方 に つ い て 機 動 的 な 実施 を 推 進
円滑な推進
構 成
主 な活 動
具体 的 に 検 討
国 及 び 中 国 四 国 各 県 国及 び 四 国 各 県 農 業 、 環 四 国 地 域 の 地 区 協 議 会 、
農 業 、環 境、森 林 部 局、 境 、 森 林 部 局 、 試 験 研 究 全 国 の 施 設 製 造 販 売 企 業 、
試験研究機関
連 絡 会 議 : 年1 回
機関
現地 検 討 会 等 :年 数 回
専門家
研 修 会 : 年1 回
資 料 :中 国四 国農 政 局調 べ
イ
各種補助事業等の活用による鳥獣被害防止対策への支援
管内において、鳥獣害防止対策事業の「捕獲体制整備事業」、「地域連携ネッ
トワーク事業」、「広域連携事業」を活用し、次の7地区について、支援を行っ
ている。
- 194 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
(ア)捕獲体制整備事業
a
鳴門市有害鳥獣駆除対策協議会
当協議会では、有害鳥獣による農作物の被害を減少させ、安定的な農業経営を
図るため、捕獲檻を設置し、捕獲目標頭数を従前より40頭増やすなど、捕獲対策
に取り組んでいる。
b
伊方町有害鳥獣連絡会
当連絡会では、イノシシによる農作物被害を軽減するため、狩猟免許取得補助
や、ワナを設置するなど、生産者の自衛意識、捕獲技術の向上に取り組んでいる。
c
大洲市湯外鳥獣対策推進協議会
当協議会では、里山周辺でイノシシ、ハクビシンによる被害が増加しているこ
とから、銃器による捕獲のできない地域を中心に箱ワナを導入し、被害を最小限
に食い止める対策に取り組んでいる。
(イ)地域連携ネットワーク事業
a
NPO法人四国自然史科学研究センター
当センターでは、中土佐町及び四万十町と地域連携し、地域の実情にあったモ
ンキードッグの導入により、サルによる農作物被害の軽減を目指している。
b
仁保地区猿被害対策協議会
当協議会では、野猿群による農作物被害対策のため、鳥獣害情報マップの作成
や、研修会や説明会での意識啓発等の対策を実施している。
(ウ)広域連携事業
a
予土地域鳥獣害防止広域対策協議会
当協議会は、18年度鳥獣害防止広域対策事業から引き続き被害防止対策を実施
している協議会である。高知県四万十市及び愛媛県松野町の県境をまたがった地
域において、イノシシ、シカによる農作物被害軽減を図るため、専門家の助言を
得ながら、集落に効果的な被害防止柵を設置している。
b
阿佐地域鳥獣害防止広域対策協議会
当協議会は、高知県香美市及び徳島県那賀町の県境をまたがった地域において
18年度に設立され、シカから当該地区の基幹作物であるユズを守るため、専門家
の助言を得ながら、集落に効果的な被害防止柵を設置している。
ウ
鳥獣害対策ホームページ「鳥獣害対策の広場」の開設
鳥獣被害に対する理解と被害対策の普及促進等を図るため、幅広い情報を網羅
したホームページを15年11月に開設し、鳥獣被害の状況や防除対策、保護管理、
イノシシ肉等の利活用、研究者の紹介等随時情報を発信している。
- 195 -
第 Ⅰ部
第4章
豊 か で住 み 良 い 農 村 地 域 の 振興
中国 四国 農政 局 ホームページ『 鳥獣 害対 策の 広 場』 トップページ
http://www.maff.go.jp/chushi/chojyuu/index.html
(4)今後の課題・対応方向
地域全体で被害防止対策に取り組むための体制を早急に整備し、鳥獣による農
林水産業等に係る被害を防止するため、20年2月に「鳥獣による農林水産業等に
係る被害の防止のための特別措置に関する法律」が施行され、当該法律に基づく
被害防止計画を定めた市町村に対して、被害防止施策を推進するための必要な措
置が講じられることとなった。
このため、当該法律や支援措置の内容について各種会議等を活用して周知する
とともに、地域の鳥獣害対策の取組を推進するため、試験研究機関等と連携した
セミナーや研修会の開催等により、情報の共有化を図りながら、引き続き鳥獣害
対策に係る幅広い情報発信と各県関係部局の連携強化を図ることとしている。
- 196 -
第 Ⅰ部
第5章
1
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
循環型 社会の構築に向けた 取組
地球環境対策
(1)地球温暖化対策の推進
【農林水産省地球温暖化対策総合戦略を策定】
農林水産分野における地球温暖化対策の加速化を図る観点から、19年6月に「農
林水産省地球温暖化対策総合戦略」が策定された(図Ⅰ−5−1)。同戦略では
京都議定書の6%削減約束の達成に貢献するため、森林吸収源対策等既に京都議
定書目標達成計画で数値目標が設定されている施策に加え、施設園芸や農業機械
の温室効果ガス排出削減対策や、環境保全型農業の推進による施肥量の適正化・
低減、漁船の省エネルギー対策で新たな数値目標を設定し、施策を推進するなど
地球温暖化防止策を推進することとされている。また、今後避けることができな
い地球温暖化に対応するため、暑さに強い品種の開発、農林水産業に与える影響
予測等、地球温暖化適応策を推進するとともに、我が国の技術を活用した国際協
力を推進することとされている。
図Ⅰ−5−1
農林水産省地球温暖化対策総合戦略のポイント
地球温暖化防止策
地球温暖化適応策
①削減 目標値の達成 に向け施策を 加速化
○森林 吸収源対策
○バイオ マス資源の循環利用
○食品産 業等の 環境自主行動計画
②新た な削減目 標値の設定 と達成に向 けた施策を 推進
○施設園 芸・農業機械の温室効果ガ ス排出削減対策
(201 0年 度までに年間約17万4千 CO2t削減)
○環境 保全型農業の推進 による施肥量の適正 化・低減
(201 0年 度までに年間約18万1千 CO2t削減)
○漁船の省 エネルギー対策
(201 0年 度までに年間約4万7千 CO2t削減)
③その 他の排出削 減の取組を 推進
(農業 農村整備事業の対策、 地産地消の推進、技 術開発等)
①地球温暖 化適応策の推 進
・既存技術の生 産現場への普及・指 導
・新たな技術の導入 実証
・影響評価に基づく適応 策の検 討
②技術開発 等の推 進
・生産安定技術の開 発(高温耐性品種の育成な ど)
・農林水産業へ の影響に関する予測研 究
・影響予測に 基づく適応技術の開 発
農林水産分野の国際協力
①違 法伐採対策 等の持続可 能な森林経営 の推進
②我 が国の人材・ 技術を活用し た協力
農林水産 分野にお ける地球温暖 化対策を 総合的に推進 し、地球 環境保全に 積極的に貢 献する農林 水産業を実 現
資料 :農 林水 産 省作 成
(2)バイオマスの利活用
ア
バイオマス・ニッポン総合戦略の推進
【効率的なバイオマス利活用システムの普及】
政府は、地球温暖化の防止、循環型社会の形成、戦略的産業の育成、農山漁村
の活性化等の観点から、14年12月に「バイオマス・ニッポン総合戦略」を策定し、
具体的な目標や行動計画を作成し、関係府省と連携してバイオマスの利活用を推
- 198 -
第 Ⅰ部
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
進している。18年3月にバイオマス輸送用燃料の利用の促進、未利用バイオマス
活用等によるバイオマスタウン構築の加速化等の観点で総合戦略を見直してい
る。さらに、19年2月には「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けた工程表」
が取りまとめられている。
(ア)バイオマス利活用に向けた機運・期待
国は、収集・輸送システムの構築、エネルギーや工業用原材料等への開発・普
及等、バイオマスの生産から変換・利用の各段階での課題の解決に向け、「バイ
オマス・ニッポン総合戦略」に基づき、バイオマスの利活用の推進を図るための
取組を着実に実施している。
一方、17年2月に「京都議定書」が発効し、基準年(原則1990年)の温室効果
ガスの排出量に対して、第1約束期間(2008∼12年)に6%削減の義務が課せら
れた。この義務の履行を確実に達成するため、17年4月に、「京都議定書目標達
成計画」が策定され、この中で温室効果ガス排出削減対策として、バイオマス利
用の推進やバイオマスエネルギー等の新エネルギー導入の促進等を図ることとさ
れており、バイオマス利活用に対する機運が高まってきている。
(イ)「バイオマス・ニッポン総合戦略」の実現に向けた取組
農政局では「バイオマス・ニッポン」の実現を局の重点施策の一つに位置づけ
て、局内推進体制の整備や管内関係省地方機関と連携を図りながら、バイオマス
利活用についての普及啓発、バイオマスタウン構想策定の推進及びバイオマス利
活用施設整備の推進を行っている。
a
効果的な普及啓発に取り組み、バイオマスの総合的な利活用について、地方
公共団体、企業等関係者の理解と醸成を図るとともに、広く一般への理解と協
力を促進
中国・四国地域の国の関係地方機関(農林水産省、経済産業省、国土交通省、
環境省)で構成する「中国四国地域バイオマス関係機関連絡会議(14年12月設置)」
において、以下のような取組を実施した。
①
竹が農地や林地を浸食する野生化が問題となっているが、中国・四国地域
では竹の利活用に対する関心が高いことから、20年3月3日に「竹資源を活
用した地域資源循環セミナー」を開催し、バイオマスとしての竹の利活用に
よる資源循環型社会や地域活性化のモデル等を紹介するとともに、議論を展
開することにより、バイオマスは身近なものであるとの理解を深めた。
②
バイオマスに係る情報等を広く提供、共有するために「中国四国地域バイ
オマスメールマガジン」を15回発行した。
③
「中国四国農政局バイオマスプロジェクトチーム」の取組
- 199 -
第 Ⅰ部
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
バイオマス利活用及びバイオマスタウンの構築を地域へ波及させ、地域の取
組を促進するため、以下のような取組を実施した。
(ⅰ)
農政局ホームページにバイオマスのコーナーを設け、管内のバイオマ
ス利活用事例や農政局の取組、関連情報等を紹介した。
(ⅱ)
管内のバイオマスタウン構想の公表状況を農政局広報誌に掲載した。
(ⅲ)
家畜排せつ物の資源循環の観点から、パンフレット「家畜排泄物の処
理・利用施設の整備を推進しましょう」、事例集「水田での耕畜連携∼
たい肥利用を中心に∼」を作成・配布した。
(ⅳ)
食品廃棄物の再生利用等の取組の推進に向けて、各県の食品産業協議
会と連携して、食品関連事業者等に対して環境セミナーを開催した。
中国 四国 農政 局 ホームページ『 バイ オマ ス』 ト ップ ペー ジ
http://www.maff.go.jp/chushi/biomass/index.html
20年3 月3日、高知 県高知市で開 催され
た「竹資源を活 用した地域資源循環セミナ
ー」には、中国 四国地域の行政機関、研究
機関、企業、各種団体等から146名が参加し
た。
基調講演では、「竹のバイオマス(竹釘や
竹ボルトなど) としての利用」と題して、
東京大学アジア 生物資源環境研究センター
准教授井上雅文 氏が講演を行った。事例発
表では、4つの 事例について発表があり、
発表者と参加者との間で意見交換が行われた。
b
バイオマスタウン構想策定の推進及びバイオマス利活用施設整備の推進
バイオマス関連事業を通じたバイオマス利活用推進の具体的取組として、以下
のような取組を実施した。
- 200 -
第 Ⅰ部
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
(a)バイオマスタウン構想の策定
バイオマスタウン構想については、10市町村で公表された。概要は以下のとお
り。
①
広島県北広島町(19年4月26日公表)
菜の花ECOプロジェクトの推進、生ごみ、家畜排せつ物、木材、刈草、
資源作物等を活用した産業振興による地域活性化を目指し、「資源循環型社
会のまち北広島町」を目指す。
②
徳島県那賀町(19年4月26日公表)
那賀町の95%を占める森林資源を中心とした、木質系バイオマス資源の「収
集・搬出・運搬・利用」の仕組み作りをするとともに、農業残材の有効利用、
廃食油のBDF利用の展開を目指していく。
③
愛媛県四国中央市(19年4月26日公表)
バイオマス資源である畜産農家から排出される家畜排泄物と一般家庭等か
ら出される生ごみを使った良質堆肥による土づくりを推進し、耕種農家と畜
産農家、消費者による地域循環型農業を目指す。
④
愛媛県内子町(19年4月26日公表)
「森・畑・まち」の3つのプロジェクトを展開。木質及び竹資源のペレッ
ト化による燃料・新素材・飼料の利用、家畜排せつ物と生ごみによる堆肥化
の拡大、廃食油の回収と積極的利用を柱に、資源循環型社会の構築と次世代
への担い手創出を目指す。
⑤
山口県宇部市(20年2月28日公表)
豊富に存在する竹や林地残材などの未利用バイオマスを中心に、マテリア
ル(建材等)やエネルギーへと利活用する事業を促進することによって、新
産業創出による地域活性化、持続可能な循環型社会の構築を目指す。
⑥
島根県美郷町(20年3月31日公表)
すでに美郷町内で確立している廃棄物系の木質バイオマスのリサイクルシ
ステムを中心に、木質バイオマスとし尿汚泥、家畜ふん尿のマテリアル利用
を拡大する。また、間伐材等の未利用系木質バイオマスと家畜ふん尿のエネ
ルギー化を推進する。
⑦
島根県安来市(20年3月31日公表)
安来市がもつ竹、木質資源や食品廃棄物等の地域資源の利活用を市民、事
業所、関係団体、行政の協働によって推進する。また、地域性と普及性のあ
るバイオマス利活用を進めることにより、地域環境の保全を図るとともに、
地域資源の地産地消を推進することで、資源循環型の地域社会を構築し、産
業振興の向上を図る。
- 201 -
第 Ⅰ部
⑧
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
山口県阿武町(20年3月31日公表)
豊かな自然環境や文化を有し、木質系を中心に豊富なバイオマス資源に恵
まれる阿武町内において、これら資源を有効活用した地域循環型社会を実現
することを目的として、町内で発生する建設廃材、間伐材、厨芥類、家畜排
泄物等のバイオマスの熱利用や電力利用、堆肥化を推進する。
⑨
愛媛県東温市(20年3月31日公表)
バイオマスの活用により持続的に発展可能な循環型社会の形成と、市民の
主体的な取り組みを通して人と自然が共生するまちづくりをすすめる。生ご
み、下水汚泥、家畜排泄物、剪定枝等の堆肥化及び燃料化、廃食油のBDF
化、木質バイオマス利用によるバイオマス利活用システムの構築を図る。
⑩
高知県須崎市(20年3月31日公表)
須崎市は17年4月11日に内閣官房都市再生本部から「地球温暖化対策・ヒ
ートアイランド対策モデル地域」に選定され、18年に須崎市地域新エネルギ
ービジョンを策定しており、間伐材や地域未利用材を活用した取り組みが始
まっている。
(b)バイオマス利活用施設整備の推進
事業等の積極的活用やバイオマスタウン構想の策定を促すための担当者会議等
を実施するとともに、「地域バイオマス利活用交付金」を活用した以下の事業が
取り組まれた。
①
バイオマスタウン構想策定支援
島根県安来市、岡山県笠岡市、愛媛県東温市
②
バイオマスタウン構想実現のための支援
岡山県真庭市、広島県北広島町、広島県庄原市、徳島県那賀町
愛媛県四国中央市、愛媛県内子町
③
バイオマス利活用施設整備
岡山県真庭市、広島県庄原市、徳島県三好市、愛媛県内子町
高知県檮原町
(ウ)今後の対応方向
農政局では、中国・四国の各地域におけるバイオマス利活用を促進させるため
に、関係機関との連携を強化しながら、バイオマス利活用に関する地域住民の理
解の醸成を目的に、シンポジウム等の開催、メールマガジンの定期的発行等普及
・啓発への取組を一層充実することとしている。
また、バイオマス関連事業等の円滑な実施を推進することにより、管内の各地
域で動き始めたバイオマス利活用の取組を支援していくこととしている。
- 202 -
第 Ⅰ部
2
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
環境に配慮した食料生産の推進
(1)環境保全型農業の推進
持続性の高い農業生産の担い手となるエコファーマーの認定件数は確実に増加してお
り、土づくりを基本として化学肥料や化学合成農薬の使用を削減した農業生産が拡大しつ
つある。
農業は、食料の安定供給という本来の役割に加え、国土の保全、水源のかん養、
自然環境の保全等の多面的な機能を有しており、環境と調和しつつ持続的に発展
し得る産業といわれる。
しかしながら、肥料や農薬の不適切な使用による環境への悪影響も懸念される
ところであり、環境重視への社会的価値観の変化、食の安全・安心に対する国民
の関心の高まりに対応して、持続性の高い農業生産のさらなる推進が求められて
いる。
このようななか、農林水産省では農業者が環境と調和のとれた農業生産を行う
ための基本的な取組をまとめ、農業者自らが生産活動を点検し、改善に努めるも
のとして、17年3月に「環境と調和のとれた農業生産活動規範」(以下「環境規
範」という。)が策定され、環境規範の普及と農業者の取組促進を図っていると
ころである。
また、18年12月に公布・施行された「有機農業の推進に関する法律」に基づき、
19年4月に「有機農業の推進に関する基本的な方針」
(以下「基本方針」という。)
が公表された。基本方針は、19年度からおおむね5年間に国及び地方公共団体が、
生産、流通、消費の側面から有機農業の推進に関する施策を総合的かつ計画的に
講じるために必要な基本的な事項が定められている。19年度は有機農業の推進及
び普及の目標設定、有機農業の取組に対する支援等により、有機農業の推進に取
り組んだところである。
ア
エコファーマーの認定状況
【認定件数は19年3月に比べ977件増加】
11年10月に施行された「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」
(以下「持続農業法」という。)に基づき、持続性の高い生産方式を導入すべく
「導入計画」を策定して県知事の認定を受けた「認定農業者(エコファーマー)」は、 19
年9月末現在、中国四国地域で7,003件となっており、前年度末(6,026件)に比べ
16%増加している(図Ⅰ−5−2)。
なお、管内の導入計画の中で取組が多い作物は、野菜、水稲、果樹の順となっ
ている。
- 203 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−5−2
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
全国及び管内のエコファーマー認定件数の推移
全国及び管内のエコファーマー認定件数の推移
全国
管内
180,000
9,000
160,000
8,000
全 国計
140,000
7,000
管 内計
120,000
6,000
100,000
5,000
80,000
4,000
60,000
3,000
40,000
2,000
20,000
1,000
0
0
13年度
14年度
15年度
16年度
17年度
18年9月末
19年3月末
19年9月末
資料 :農 林水 産 省生 産局 農 産振 興課 環境 保 全型 農業 対策 室 調べ
図Ⅰ−5−3
管内のエコファーマーの県別認定件数(19年9月末現在)
管内のエコファーマーの県別認定件数(平成19年9月末現在)
(件数)
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
鳥取
島根
岡山
広島
山口
徳島
香川
愛媛
高知
資料 :農 林水 産 省生 産局 農 産振 興課 環境 保 全型 農業 対策 室 調べ
19年4月から本格実施された「農地・水・環境保全向上対策」では、営農活動
への支援要件としてエコファーマーの認定が必須の条件となっていることもあ
り、認定件数は前年に比べ大幅な増加となった。ただし県別認定件数には従来か
らばらつきが見られるため国では、18年3月及び19年3月に各県からの要望を踏
- 204 -
第 Ⅰ部
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
まえて「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律施行規則」の一部
改正を行い、エコファーマーの認定件数拡大に向けた取組を行っている。
今後、エコファーマー制度の一層のPRを図り、実需者・消費者の理解を得な
がら取組を拡大していくことが必要である。
イ 地域における取組状況
≪事例1≫ 岡山県 きよね有機の郷
・従来の有機農業における作付体系の枠組みを超え、コスト意識を高めた経営管理を導
入し、作物の機能を引き出す生育環境を整えながら少品目多量生産を実践し、経営的に
も生産性の向上と安定出荷を実現している。
・緑肥作物をすき込みながら、作物の生育状況と土壌診断結果に基づいた、きめ細かな
土づくりを実践している。
・有機農業への参入希望者を研修生として受け
入れ、就農後の販路の紹介などきめ細かな支
援を行っている。
・有機農業への理解と関心を深めるために消費
者交流会の開催、食農教育や環境教育を実践
している。
・消費者の需要増に対応するため、耕作放棄地
や遊休農地を借り入れて規模拡大を行っている。
<ほ 場 にお ける 研 修>
≪事例2≫ 愛媛県 農業生産法人 有限会社あぐり
・企業的発想を活かして農業に参入し、農薬・化学肥料を使用しない有機栽培技術を確立
するとともに、独自の経営システムを構築し販売ルートの開拓を行う等、農業者以外の
新たな農業参入への見本となっている。
・大学との共同研究や事業の活用による、有機農業技術の実証や普及にも積極的に取り組
んでいる。
・耕作放棄地、遊休農地等の利活用、地域資源
のリサイクル及び農地を活用した景観保全と
食農教育へも積極的に取り組み、また、担い
手を確保するために研修生を受け入れ、環境
保全型農業の技術習得などについて支援を行
っている。
< 人力 によ る 除草 作業 >
- 205 -
第 Ⅰ部
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
(2)容器包装及び食品リサイクルに向けた取組
ア
改正容器包装リサイクル法と再商品化の定着
「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」平成7年公
布(通称:容器包装リサイクル法)が、18年6月に一部改正され、新たに容器
包装廃棄物の排出抑制の促進措置等が導入された。また、法に基づき分別収集
される廃棄物の量はプラスチック製容器包装廃棄物を中心に着実に増加し、制
度の定着が見られるものの、法律の理解が不十分な事業者が依然として存在す
るため、再商品化義務不履行事業者(以下「ただ乗り事業者(※1)」という。)
対策や普及啓発を継続して行っているところである。
【 ※1 】
ただ乗り事業者 とは、正当な理由がなく容器包装リサイク法に規定 する再商品化義務を果たさな
い事業者
【広がりを見せるリサイクルの取組】
容器包装リサイクル法は、容器包装廃棄物を消費者が分別排出し、市町村が分
別収集及び選別保管をし、事業者が容器包装の再商品化(リサイクル)を行うこ
とにより、循環型社会の構築を目指すものである。
資料 :中 国四 国 農政 局食 品 課作 成
再商品化義務のある容器包装
ガ ラ ス 製 容 器
無色のガラス製容器、茶色のガラス製容器、その他の色のガラス製容器など
ペ ッ
飲料用ペット ボトル、しょうゆ用ペットボト ルなど
ト
ボ
ト
ル
紙 製 容 器 包 装
紙箱、紙袋、紙のトレイ、包装紙、材料にアルミ箔が使用されている飲料用紙
パックなど
プラスチック製容器包装
プラスチックボトル、発泡スチロ ールトレイ、発泡スチロールカップ、ハンバー
ガー等のプラスチック容器、スーパーのレジ袋、ラップフィルムなど
資料 :中 国四 国 農政 局食 品 課作 成
- 206 -
第 Ⅰ部
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
管内の市町村の分別収集量は、ガラスびんが横倍傾向で推移しているもののペ
ットボトル、プラスチック製容器包装及び紙製容器包装については、増加がみら
れ(図Ⅰ−5−4)、容器・包装分野でのリサイクルの進展がうかがえる。
図Ⅰ−5−4
管内における年度別(12∼18年度)指定4品目の分別収集量
単 位:t
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
無色のガラスびん 茶色のガラスびん
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
17年度
18年度
34 ,988
35 ,985
34 ,113
33 ,568
32 ,867
32 ,363
32 ,429
36,192
36,469
35,471
34,557
33,538
32,661
32,346
その他の色の
ガラスびん
ペットボトル
紙製容器包 装
プラスチック製
容器包装
13,691
10,925
10,633
11,282
12,300
11,769
11,183
6,228
10,8 40
13,2 14
15,1 50
17,0 87
17,1 40
17,9 69
2,84 5
2,27 5
2,79 4
4,50 8
4,48 5
4,53 3
4,71 3
20,57 2
32,54 7
41,57 1
52,96 0
75,62 2
78,19 8
79,95 8
資料 :環 境省 「容 器包 装リ サイ クル 法に 基づ く市 町村 の分 別収 集及 び再 商品 化の 実績 につ いて 」(H 12∼ 18)
【容器包装リサイクル法の一部改正】
容器包装リサイクル法は、施行後から10年を経過した場合の見直しにより18年
6月15日に一部改正され、18年12月、19年4月、20年4月の3段階で実施された。
改正のポイ ント
消費者 の意識向上・事業者との連携の 促進
容器包装廃棄物の
排出抑制の促進
(レジ袋対策等)
環境大臣が「容器包装廃棄物排出抑制 推進員」を委嘱。推進員は、排出の状況や排出抑制の取り組みの調
査、消費者への指導・助言等を行う。
事業者に対する排出抑制を促進するための措置の導入
小売業等について、「事業者の判断の 基準となるべき事項」を主務大臣が定めるとともに、一定量以上の容器包
装を利用する事業者に対し、取組状況 の報告を義務付け、取組が著しく不十分な場合は勧告・公表・命令を行う
措置を導入する。
質の高い分別収集・
再商品化の促進
容器包装廃棄物の
円滑な再商品化
事業者間の
公平性の確保
事業者 が市町村に資金を拠出する仕 組みの創設
事業者が、再商品化の合理化に寄与する程度を勘案して算定される額の資金を市町村に拠出する仕組みを創
設する。
円滑な再商品化に向けた国の方針の明確化
廃ペットボトルの国外への流出に鑑み、「再商品化のための円滑な引 渡し等に係る事項」を基本方針に定める事
項に追加して国の方針を明らかにする 。
再商品 化の義務を果たさない事業者に対する罰則の強化
再商品化の義務を果たさない事業者( いわゆる「ただ乗り事業者」)に対する罰則を現行の「50 万円以下の罰
金」から100 万円以下の罰金」 に引き上げる。
- 207 -
第 Ⅰ部
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
資料 :中 国四 国 農政 局食 品 課作 成
19年度においては、新たに「容器包装廃棄物の排出抑制の促進措置」として、
「容器包装廃棄物排出抑制推進員(愛称:「3R推進マイスター」)による排出
の状況や排出抑制の取組の調査、消費者への指導・助言等を行う措置の導入及び
事業者に対する容器包装廃棄物の一層の排出抑制を促進するため、小売に属する
事業においてレジ袋など容器包装を50トン以上利用する容器包装多量利用事業者
に対し、事業活動に伴う容器包装の使用量、容器包装の使用の合理化のために取
組んだ状況等の報告を義務付け、取組が著しく不十分な場合は勧告・公表・命令
を行う措置を導入した。
【ただ乗り事業者対策】
分別収集した容器包装のリサイクルは着実に進んでいるものの、一方では、法
に対する認知又は理解の不足、故意等により再商品化義務を履行しないただ乗り
事業者が依然として存在している。
このような状況に対処するため当局職員が農林水産関連事業者に対し、容器包
装リサイクル法の普及啓発、再商品化(リサイクル)義務の履行を促す点検・指
導を継続的に実施している。
- 208 -
第 Ⅰ部
イ
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
食品リサイクル制度の現状と課題
13年5月に「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサ
イクル法)が制定され、全ての食品関連事業者は、18年度までに食品廃棄物
の発生抑制・再生利用・減量の実施率を20%以上に向上させることが目標と
されていた。食品リサイクル法施行後、食品関連業界全体の食品循環資源の
再生利用等の実施率は、13年度の37%から18年度の53%へ向上を遂げており
一定の成果が認められる。しかしながら、食品関連事業者ごとでは、再生利
用等の取組に格差が見られ、消費者との接点が多い食品流通の川下に至るほ
どリサイクルの取組が低迷している。
【食品リサイクルの取組】
食品産業から発生する食品廃棄物は、18年度推計値で年間1,135万トン(表Ⅰ
−5−1)で、業種別に再生利用等の実施状況をみると、発生する食品廃棄物が
均質で再生利用に仕向けやすい食品製造業では81%と実施率は高いものの、食品
卸売業62%、食品小売業35%、外食産業22%と川下に至るほど食品循環資源が少
量で分散して発生するほか、異物混入のリスクも高まるなどリサイクルしにくく
実施率は低下していく傾向となっている(図Ⅰ−5−5)。
このようななか、5年毎に制度を見直すという規定に基づき、食品資源の循環
をより高めるために、食品関連事業者に対する指導監督を強化するとともに、事
業者の取組が円滑に行われることを目的として、19年6月食品リサイクル法が改
正され、12月1日施行となったところである。
表Ⅰ−5−1
食品廃棄物の発生量と再生利用等の実施状況(18年度)
資料 :農 林水 産 省「 食品 循 環資 源の 再生 利 用等 実態 調査 」 より 試算
- 209 -
第 Ⅰ部
図Ⅰ−5−5
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
食品循環資源の再生利用等実施率の推移
100%
80
66
69
72
37
32
23
14
40
36
25
13
45
43
23
17
45
41
28
17
13年度
14年度
15年度
16年度
60
60
40
20
81
81
61
52
62
53
食品製造業
35
22
食品小売業
31
21
17年度
18年度
食品卸売業
外食産業
食品産業計
0
資料 :農 林水 産 省「 食品 循 環資 源の 再生 利 用等 実態 調査 」 より 計算
【改正食品リサイクル法の概要】
改正食品リサイクル法の基本方針において、24年度までに我が国全体の業種毎
が達成すべき実施率の目標値が定められ、この業種毎の実施率の目標を達成する
ために、各々の食品関連事業者に適用される実施率の目標が、判断基準省令に定
められたところである。個々の事業者は、19年度の再生利用率の実績に基づき次
の表の増加ポイントにより目標値を設定し、その年度の基準実施率を上回ること
が求められることとなった。
再 生利用等の実施 率目標
前年 度の基 準実 施率区 分
増加ポ イン ト
20% 以上50%未 満
2%
50% 以上80%未 満
1%
80% 以上
維持 向上
基 準実 施率 =前 年度 の基 準実 施率 +前 年 度基 準実 施率 に応 じた 増加 ポイント
改正の主なポイントは以下の通り。
①
食品関連事業者に対する指導監督の強化として、食品廃棄物多量発生事業
者(食品廃棄物等の発生量が年間100トン以上)に対する定期報告義務が創
設され、毎年度食品廃棄物等の発生量及び再生利用等の状況を報告すること
となった。また、フランチャイズチェーン事業者は、加盟者の食品廃棄物等
の発生量も含めて多量発生事業者かどうかを判断することになった。この定
期報告は、20年度分から始まり、翌年度6月末までに報告することとなるた
め、制度の普及・啓発が重要となる。
②
食品関連事業者の取組の円滑化として、再生利用事業計画の認定制度の見
直しが行われ、再生利用事業計画(食品廃棄物由来の肥飼料により生産され
- 210 -
第 Ⅰ部
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
た農畜水産物を食品関連事業者が引き取る計画:食品リサイクルループ)が
主務大臣の認定を受けた場合、認定計画に従って行う食品循環資源の収集運
搬については、廃棄物処理法に基づく一般廃棄物収集運搬業の許可が不要と
なった。(図Ⅰ−5−6参照)
③
再生利用等の手法に「熱回収」が追加された。食品循環資源の再生利用が、
経済的または技術的に著しく困難であって、メタン化と同等以上の効率でエ
ネルギーを回収できる場合は「熱回収」を選択できることとなった。
図Ⅰ−5−6
廃棄物処理法等の特例措置
改
正
後
食 品 関 連 事 業 者 の 店 舗
A市
B市
C市
リサイクルループの完結
E市
F市
特定肥飼料等
農畜水産物等
廃掃業者A
D市
農業者F
リサイ クル業者E
廃棄物処理法の収集運搬業(一廃)の許可不要特例
【優良な再生利用事業者の育成】
食品循環資源の再生利用を取り組みやすい環境に整えていくため、食品リサイ
クル法では、優良な再生利用を行うリサイクル業者を育成することを目的として、
主務大臣が登録を行う登録再生利用事業者制度を設けている。中国・四国管内で
は19年度に新たに3事業者が登録され、17事業者(全国118事業者)となってい
る。
<事例>
食品残さの高速堆肥化処理施設(処理能力19.2㌧/日))
A社は、食品卸売業やスーパーなどでキズや変形で売れ残った食品や、外食
店の調理残さ等の食品残さを受け入れ、高速堆肥化プラントにより一次発酵・
二次発酵させ高温(75℃以上)で完熟堆肥を生産する。
発酵槽から発生する臭気は脱臭装置で吸引し、約820℃の高温で分解する。
また、清掃中に発生する汚水は二次発酵槽の水分調整剤にするなど、地球環境
や地域環境に配慮した技術を採用している。
- 211 -
第 Ⅰ部
3
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
畜産環境対策の推進
畜産環境対策の推進は、畜産環境問題への対応のみならず、家畜排せつ物
をたい肥化して利用、あるいはエネルギーとして利用する循環型社会の構築
にとって重要な役割を担っている。
(1)家畜排せつ物の管理
【法に基づく管理基準による適正な管理が必要】
中国四国管内9県で発生する家畜排せつ物の量は、家畜の飼養頭数から推計す
ると年間約700万トンになる。家畜排せつ物は適正な管理が行われない場合には、
悪臭や水質汚濁などの畜産環境問題を引き起こすおそれがあることから、「家畜
排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が制定され、16年11月以
降は、一定規模以上の畜産農家について同法に基づく管理基準に従い適正に管理
することとなっている。管内については、19年12月1日時点での調査では、法が
適用されるすべての畜産農家で管理基準に従った適正な管理がなされている。
(2)新たな基本方針の策定
【家畜排せつ物の利用を推進】
家畜排せつ物については、畜産環境対策としての適正な管理に加え、その利用
を推進することが課題であり、19年3月30日に新たに公表された「家畜排せつ物
の利用の促進を図るための基本方針」においても、その基本的な方向として、耕
畜連携の強化及びニーズに即したたい肥づくりに留意し、家畜排せつ物のたい肥
化を推進すること、また、家畜排せつ物のエネルギーとしての利用を推進するこ
ととされており、これまでの施設整備による処理の推進から利用推進への段階へ
と移っている。
(3)たい肥の生産、利用
【家畜排せつ物はほとんどがたい肥化され利用】
18年には「有機農業の推進に関する法律」の制定もあり、環境保全型農業を推
進する上で、家畜排せつ物等を原料としたたい肥を農地へ還元することの重要性
が高まっている。家畜排せつ物のたい肥化は、エネルギーとして利用する施設を
整備するよりも低コストで施設を整備でき技術的にも容易であることなどから、
発生した家畜排せつ物のほとんどはたい肥化されていると見られる。
たい肥化を行っている施設の数やたい肥生産量などの全体を把握できる統計的
なデータはないが、農林水産省が17年12月に公表した、「肥料取締法」による届
出を行っている業者について調査した結果(「たい肥等特殊肥料の生産・出荷状
- 212 -
第 Ⅰ部
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
況調査報告書」、調査期間15年11月から16年10月)によれば、管内における特殊
肥料生産量は72万3千トンであり、うち畜産業を営む会社の生産が最も多い4割
の290千トンであり、次いで2割が農家での生産14万5千トンとなっている。ま
た、管内の特殊肥料販売量は51万3千トンと生産量の7割であり、残り約3割は
稲わら等との交換や自作耕地への還元等に利用されている。販売先については4
割が個人への販売となっている。
(4)循環型社会に向けた家畜排せつ物利用の取組
【パンフレット、事例集を発行したほか、研修会を開催】
環境保全型農業及び畜産環境対策を推進するため、これまでにも様々な取組を
行っており、19年度には、農政局でパンフレット、事例集の配布及び耕畜連携た
い肥利用推進研修会(水田でのたい肥利用)を開催した。施設整備に関しては、
補助事業等を活用したたい肥化施設等の整備を引き続き実施し、家畜排せつ物の
適正な管理の推進とともに良質なたい肥の生産、供給体制の整備を行ったほか、
エネルギー利用のための施設を整備した。
≪事例1≫家畜排せつ物利用促進のための農政局の取組
作成、配布したパンフレット及び事例集
パ ンフ レッ ト
事例 集
(5)今後の方向性
【良質たい肥の生産者及びたい肥利用者による耕畜連携の強化】
家畜排せつ物は、循環型社会を構築するにあたっての貴重な資源であり、家畜
排せつ物の利用を推進していくためには、たい肥化を基本として、たい肥を生産
する側と利用する側との連携を一層強化し、良質なたい肥の生産、供給に努める
とともに、たい肥利用に当たっての作物への悪影響に関する誤解を払拭するため
の働きかけを進め、利用する側への理解を深めることが必要である。
- 213 -
第 Ⅰ部
4
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
耕畜連携の推進に向けて
「食料・農業・農村基本計画」等に即し、粗飼料自給率目標100%の達成に向け、
自給飼料の生産拡大のため、米の生産調整水田を活用した稲発酵粗飼料用の飼料稲の
作付け拡大、国産稲わらの飼料利用の推進、水田放牧等、資源循環型農業の確立を図
り耕畜連携に係る取組を積極的に推進した。
(1)耕畜連携の意義
【耕畜連携による資源循環型農業への取組の強化】
耕畜連携とは、稲作等の耕種農家が飼料作物(稲発酵粗飼料を含む)や稲わら
を生産・供給し、畜産農家がたい肥を耕種農家に供給するという資源循環の取組
である。(なお、たい肥の利活用による資源循環の取組については、前段の「3
畜産環境対策の推進」で記述)
(2)水田を活用した飼料増産の推進
【米政策改革大綱等を踏まえた取組】
耕畜連携を推進し飼料自給率を向上させる取組は、地産地消の推進、地域資源
循環型農業の確立に寄与し、ひいては地域の農畜産業の振興にもつながる取組と
して積極的に推進している。
なかでも、米の生産調整水田を活用した水田放牧は管内の耕地条件に適した飼
料増産の方法として重要な位置を占めてきており、管内では17∼19年度の間で、
面積が275haから566(見込み)haまで増加、放牧頭数が年間1,023頭から1,520(見
込み)頭まで増加しており、順調に伸びている。
この水田放牧増加の背景には、耕種農家側の課題となっている遊休農地対策と
畜産農家側の省力化・低コスト生産の思惑が合致して、水田放牧の有効性が広く
認知されてきたものと推察される。
各県での取組事例としては、以前より島根県や山口県では耕作放棄地対策や生
産調整の手段として水田放牧を推奨している状況にあり、特に島根県の斐川地域
では放牧の対象水田をブロックローテーションさせて、耕種と畜産の双方の課題
解決につなげている。また、広島県では、集落営農組織の所得確保の1つの方策
として水田放牧を利用した肉用牛繁殖経営を推奨しており、水田放牧が集落機能
維持の重要な役割を担っている。
- 214 -
第 Ⅰ部
島根 県斐 川 地域 にお ける 水 田放 牧
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
耕 作 放棄 水田 での 放 牧
このように水田放牧が拡大していく中においては、放牧に適した繁殖雌牛の頭
数不足になる状況等も一部地域で生じているが、中国地域で活発なこれらの取り
組みが、四国地域でも普及するよう、次年度以降も推進することとする。
また、稲発酵粗飼料の取組も拡大傾向にあり、管内の作付面積は12年度に13ha
程度であったものが、19年度には432haまで増加している。
しかし、稲発酵粗飼料の取組は、稲発酵粗飼料を給与する畜産農家の周辺地域
における小さな地域レベルの活動に留まっており、県域全体での取組については、
県毎に差が生じている状況にある。
この背景には、稲発酵粗飼料の収穫に必要な専用機の普及が十分ではないこと
から、急速な拡大に至っていないが、既に導入されている専用機の有効利用を図
る体制整備を行い更なる利用拡大を推進する必要がある。
このような状況のもと19年度においては、自給飼料の生産拡大に向けた取組を
より実効性のあるものにするため、各県の耕畜連携推進協議会及び試験研究機関、
中国四国地域肉用牛増頭行動会議等と協力して「中国四国地域耕畜連携推進協議
会」を開催し、管内の自給飼料生産の拡大を推進するため以下の取組を行った。
①
「地域の土地利用型畜産と放牧実践現地検討会」を開催
②
「 中国四国地域飼料生産作業受託組織(コントラクター)育成検討 会 」を開催
③
「∼畜産経営の安定化に向けて∼飼料自給率向上のための事例集」の作成配
付(5,000部)
- 215 -
第 Ⅰ部
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
「地域の土地利用型畜産と放牧実践現地検討会」の開催
19年7月12日∼13日(岡山県岡山市・矢掛町、高梁市)
公共育成牧場については、
地域の飼料基盤として有効利用を図ることが望まれている。
しかしながら、公共牧場においては、利用農家数及び利用頭数(放牧頭数)の減少によ
り、その利用率が低下している状況となっており、牧場の利用率の向上と管理運営の改
善が課題となっている。
こうした状況の下、検討会では公共牧場の活性化・管理運営の改善に取り組んでいる
優良事例として、管内からは矢掛町育成牧場及び高梁市育成牧場の事例を紹介、管外か
らは、財団法人神津牧場(群馬県)や飛騨市営牧場(岐阜県)の事例についても紹介す
るとともに、引き続き行われた意見交換では各地の公共牧場が運営していく上での問題
点等を議論した。
現地調査では、矢掛町育成牧場及び高梁市大池山育成牧場において、経営改善の一貫
として、自力施工により低コストで整備した畜舎や家畜の管理状況等を確認しつつ検討
を深めた。
意見 交換 の様 子
現 地調 査先 の 牧場
- 216 -
第 Ⅰ部
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
「中国四国地域飼料生産作業受託組織(コントラクター)育成検討会」の開催
19年12月18日∼19日(岡山県笠岡市・岡山市)
今日、畜産農家の経営環境は、飼料価格高騰の影響を受けて大変厳しい状況にあるこ
とから、自給飼料の確保や飼料生産コストの低減のためにも、作業受託組織である「コ
ントラクター」や、飼料配給組織である「TMRセンター」(TMR:Total Mixed Rati
on「完全混合飼料」の意)の利用を推進する必要がある。
そこで、コントラクターやTMRセンターの取組を管内の関係者に推奨するために、
現地研修や意見交換の場としての検討会を開催した。
○検討会内容
岡山県笠岡市内の笠岡湾干拓において、コントラクターを立ち上げて大規模に飼料用
トウモロコシの2期作栽培を行う農事組合法人干拓コントラの活動として大型ハーベス
ターによるトウモロコシの収穫状況の紹介や、
バンカーサイロ詰め込み状況を見学した。
2 期 作ト ウモ ロコ シ の収 穫作 業
トウモロコシのバンカーサイロ詰め 込 み
九州大学大学院准教授の福田晋氏による講演「地域畜産・農業を支援するコントラク
ターのあり方」を皮切りに、管外事例として財団法人群馬県農業公社や岩手県金ヶ崎町
効率的飼料生産組合の事例を紹介し、管内の「農事組合法人干拓コントラ」についても
その設立経緯や現在までの活動状況の紹介を行い、検討会の締めくくりとして会場全体
で意見交換を行った。
初 日(18日)講 演会 の模 様
2 日 目(19日 )事例 発 表の 模様
意見交換においては、会場の参加者からも、事例に挙げられた作業請負組織の設立経
緯、生産した飼料の選定方法や輸送面の課題、飼料販売単価の設定方法等に高い関心が
向けられ、活発な意見が取り交わされた。
- 217 -
第 Ⅰ部
第5章
循 環 型社 会 の 構 築 に 向 け た 取組
(3)今後の対応
飼料自給率については、「食料・農業・農村基本計画」等において、現状の24
%から27年度には35%まで引き上げるという目標が設定されたところであり、こ
のうち、粗飼料については、27年度までに完全自給することを目指している。
農政局としても飼料自給率向上に向けた具体的な取組として「中国四国地域耕
畜連携推進協議会」で決定される飼料増産行動計画に基づき、関係者と一体とな
った水田における飼料増産対策の推進や資源循環型農業の確立を図るため、関係
事業や制度に関する情報提供、先進事例の情報発信等を引き続き行うこととして
いる。
- 218 -
第Ⅰ部
参 考 資料
参考資料
1
中国四国農業の主要指標
区
総
分
世
帯
210
261
口
千人
127,768
11,762
607
742
377,923
50,723
3,507
6,708
人/km
338
232
173
111
%
4.8
7.5
10.9
10.1
百戸
28,482
4,593
350
443
数
〃
19,634
2,941
249
293
業
〃
4,432
771
44
49
男 子 生産 年 齢人 口 のい る 専業 農 家
〃
1,867
212
14
11
1
種
兼
業
〃
3,083
314
31
28
2
種
兼
業
〃
12,119
1,855
174
216
百人
83,705
11,454
1,091
1,229
口
〃
33,526
4,697
411
427
基 幹 的 農 業 従 事 者
〃
22,407
3,046
289
305
百ha
46,500
4,041
354
389
〃
25,300
2,900
244
313
口
2
積
密
km
2
度
第 1 次 産 業 就 業 比 率
農
家
販
売
数
農
家
専
う ち
農
家
人
口
農
業
就
業
う ち
耕
地
面
人
積
田
う ち
普
通
畑
〃
11,720
546
80
52
樹
園
地
〃
3,239
553
21
19
牧
草
地
〃
6,240
43
10
6
a
163
88
101
88
億円
86,321
8,453
685
625
〃
18,894
1,884
160
239
農家 1戸 当たり 耕地面 積
農
業
島 根
4,523
面
売
鳥 取
49,566
総
販
中国四国
千戸
人
総
全 国
数
総
人
単位
産
出
額
米
野
菜
〃
20,400
2,141
169
95
果
実
〃
7,710
1,198
77
39
花
き
〃
3,988
328
24
21
畜
産
〃
26,512
2,393
220
203
- 220 -
第Ⅰ部
岡 山
広 島
山 口
徳 島
香 川
愛 媛
高 知
資
参 考 資料
料
732
1,146
591
298
378
583
1,957
2,877
1,493
810
1,012
1,468
7,113
8,479
6,112
4,146
1,876
5,677
275
339
244
195
540
259
112 国勢調査17年
6.4
4.3
6.8
9.8
7.1
9.4
12.7 国勢調査17年
818
740
500
388
470
559
325 2005年農林業センサス結果
517
421
323
244
313
370
211
〃
123
117
92
67
65
128
86
〃
25
20
15
27
18
43
40
〃
41
35
28
34
27
53
36
〃
353
268
203
143
221
189
89
〃
2,061
1,519
1,120
1,009
1,286
1,356
795
630
474
438
479
642
401
〃
465
340
310
309
278
464
286
〃
704
597
509
317
326
556
289 耕地及び作付面積統計19年
553
435
412
210
269
247
217
〃
103
83
56
58
24
57
32
〃
40
69
37
47
32
250
38
〃
8
9
4
2
0
2
3
〃
86
81
102
82
69
99
1,255
1,069
684
1,052
796
1,300
355
292
262
138
152
160
126
〃
180
177
124
376
245
207
568
〃
172
143
40
100
59
466
102
〃
31
34
29
41
43
39
67
〃
454
379
204
292
256
307
78
〃
- 221 -
324 国勢調査17年
796
〃
7,105 国土地理院18年
782 2005年農林業センサス結果
89 耕地面積/総農家数
987 生産農業所得統計18年
第Ⅰ部
2
参 考 資料
農協組織の動向
(1)組織の動向
表Ⅰ−参−1
区分
農協合併の推移
(単位:組合)
16事業年度
17事業年度
18事業年度
19事業年度
合併参加組
合併参加組
合併参加組
合併参加組
合併件数
合併件数
合併件数
合併件数
合数
合数
合数
合数
14
0
全 国
中国・四国
36
0
18
4
40
8
17
6
50
13
12
1
36
2
資料 :全 国農 業 協同 組合 中 央会 「J A合 併 推進 情報 (速 報)」
表Ⅰ−参−2
区 分
全 国
中国・四国
総合農協数
(単位:組合)
合併構想数
19年度末
807
95
391
59
資料 :農 林水 産 省「 農業 協 同組 合等 現在 数 統計 」
表Ⅰ−参−3
組合員数の動向(中国・四国)
15 事 業 年 度
組合員数
構成比
区分
943
708
1,651
正組合員
准組合員
計
16 事 業 年 度
組合員数
構成比
57.1
42.9
100.0
930
718
1,648
56.4
43.6
100.0
( 単位 :千 人 、% )
17 事 業 年 度
組合員数
構成比
915
718
1,633
全 国 ( 17 事 業 年 度 )
組合員数
構成比
56.0
44.0
100.0
4,350
4,190
8,540
資料 : 農 林水 産 省 「総 合 農 協統 計 表 」
(2)経営の動向
表Ⅰ−参−4
区 分
事業総利益及び主要事業内容(17事業年度)
事業総利益
信用事業
全 国
金額
構成比
前年比
中国・四国 金額
構成比
前年比
19,963
100
98.8
2,758
100
98.3
(単位:億円、%)
主要事業別内訳
共済事業 購買事業 販売事業
7,312
36.6
102.0
1,020
37.0
100.5
資 料 :農 林 水 産省 「 総 合農 協 統 計表 」
- 222 -
5,484
27.5
98.4
852
30.9
98.7
4,191
21.0
93.3
526
19.1
92.4
1,314
6.6
99.0
132
4.8
95.7
50.9
49.1
100.0
第Ⅰ部
参 考 資料
(3)事業の動向
ア
営農指導事業
表Ⅰ−参−5
区分
全 国
構成比
中国・四国
構成比
営農指導員の配置員数別農協数(17事業年度末現在)
0人
1∼2人
36
4.1
1
1.0
3∼4人
94
10.6
14
13.5
5∼6人
106
12.0
7
6.7
7∼10人
84
9.5
7
6.7
149
16.8
18
17.3
(単位:組合、%)
11人以上
合計
417
47.1
57
54.8
886
100.0
104
100.0
資料 : 農 林水 産 省 「総 合 農 協統 計 表 」
イ
信用事業
表Ⅰ−参−6
区分
貯金
(A)
預金
(B)
有価証券等
(C)
貸出金
(D)
貯預率
(B/A)
貯証率
(C/A)
貯貸率
(D/A)
農協の資金動向(年度末残高)〔中国・四国〕
13事業年度
前年度比
金額
105,146
101.5
14事業年度
金額 前年度比
105,587
100.4
15事業年度
金額 前年度比
106,740
101.1
16事業年度
金額 前年度比
107,701
100.9
(単位:億円、%)
全国(17事業年度)
17事業年度
金額 前年度比
金額
前年度比
108,206
100.5 791,487
101.5
78,017
101.6
78,187
100.2
79,112
101.2
79,784
100.8
79,410
99.5
544,448
101.3
5,608
105.3
4,255
75.9
4,723
111.0
4,915
104.1
5,610
114.1
46,583
109.7
22,994
98.6
22,993
100.0
23,496
102.2
23,492
100.0
23,680
100.8
212,173
100.0
74.2
74.0
74.1
74.1
73.4
68.8
5.3
4.0
4.4
4.6
5.2
5.9
21.9
21.8
22.0
21.8
21.9
26.8
資料 : 農 林水 産 省 「総 合 農 協統 計 表 」
ウ
共済事業
表Ⅰ−参−7
区分
長
新契約高 金額
期
件数
共 期末保有 金額
済 契約高
件数
金額
短期共済
件数
農協の共済事業契約高(中国・四国)
15事業年度
16事業年度
17事業年度
契約高 前年比 契約高 前年比 契約高 前年比
43,558
99.6 45,0 28 103.4 46,687 103.7
40 105.3
39
97.5
40 102.6
587,491
97.2 572,6 28
97.5 555,714
97.0
543
97.3
527
97.1
512
97.2
702 100.1
678
96.6
684 100.9
771 100.5
768
99.6
765
99.6
資 料: 農 林 水産 省 「 総合 農 協 統計 表 」
- 223 -
(単位:億円、万件、%)
全国(17事業年度)
契約高
前年比
316,969
281.5
245
99.2
3,602,845
97.9
3,134
167.7
4,623
100.5
4,823
100.2
第Ⅰ部
エ
経済事業
表Ⅰ−参−8
農協の経済事業(中国・四国)
15事業年度 16事業年度
区分
金額
金額
購買品供給高
4,555
4,180
生産資材供給高
2,625
2,443
生活物資
1,929
1,737
販売品販売高
4,615
4,326
米・麦
1,116
885
野菜
1,619
1,493
果実
818
838
畜産物
703
739
その他
357
371
資料 :農 林水 産 省「 総合 農 協統 計表 」
オ
17事業年度
金額
構成比 前年比
4,025
100.0
96.3
2,407
59.8
98.5
1,618
40.2
93.1
4,178
100.0
96.5
837
20.0
94.6
1,507
36.1
100.9
751
18.0
89.6
730
17.5
98.8
353
8.4
95.1
(単位:億円、%)
全国(17事業年度)
金額
構成比 前年比
34,549
100.0
98.0
23,876
69.1
99.8
10,673
30.9
94.2
45,149
100.0
98.1
11,146
24.7
100.8
11,870
26.3
95.2
4,408
9.8
96.4
11,935
26.4
100.7
5,790
12.8
95.2
老人福祉事業
表Ⅰ−参−9
区 分
全 国
中国・四国
老人福祉事業取組農協数
15事業年度
(単位:組合)
16事業年度
430
53
423
54
資料 : 農 林水 産 省 「総 合 農 協統 計 表 」
- 224 -
17事業年度
408
53
参 考 資料
第Ⅰ部
3
参 考 資料
国民各界各層の意見を踏まえた行動計画の策定
今後重点的に取り組むべき農政の課題や施策を明らかにした「食料・農業・農
村基本計画」を着実に推進するため、農政局では、年度当初に、一年間の取組方
針を取りまとめた「行動計画」を策定している。
行動計画は、「食料・農業・農村基本計画」を踏まえつつ、農政に対する消費
者・生産者等のニーズや管内農業の地域特性、前年度の取組等に対する評価結果
などを考慮に入れながら作成し、農政局職員の共通認識の下、関係部課が連携し
て様々な取組を行っている。
(1)19年度行動計画の策定
19年度の行動計画は、「食の安全及び消費者の信頼の確保と食育の推進」、「経
営所得安定対策等と売れるコメづくりの推進」、「農業の構造改革の推進」、「中
山間地域等の活性化」、「循環型社会の構築」及び「情報受発信の充実・強化」
の6つの柱と19の推進事項で構成した。
なお、行動計画の内容は、ホームページを活用して広く公表し、意見を募集す
るなど、行動計画への理解と取組内容の充実に努めている。
(2)18年度行動計画に関する評価
行動計画の取組終了後には、次年度の行動計画への反映、今後の業務改善や職
員の意識改革に資することなどを目的に、取組結果とその成果について自己評価
を行うとともに、評価内容の透明性・客観性確保の観点から、消費者団体、農業
団体、学識経験者等の有識者からの意見聴取及びホームページを活用した意見募
集を行っている。
18年度行動計画に関する評価(案)に対しては、「精緻に行動計画を実施し、
成果があがっている」との評価が得られた一方で、「指標について、定量・定性
目標値をより明確にすべき」、「今後の取組方針について、もう少し具体的な記
載が必要」といった意見が寄せられた。
なお、個別政策ごとには、耕作放棄地対策の推進、農地・水・環境保全対策の
構築、食品表示の適正化に関する関心の高さが伺えた。
農政局では、寄せられた様々な意見について検討を行い、今後の行動計画の策
定や施策推進に当たっての参考として活用することとしている。
- 225 -
第Ⅰ部
参 考 資料
19年度中国四国農政局が行う行動計画の概要
<食の安全及び 消費者の信頼の確保と食育の推進>
1
リスクコミュニケーションの円滑な推進
食の安全と消費者の信頼確保を図るため、消費者、食品関係事業者、生産
者、行政関係者等が情報及び意見を相互に交換するリスクコミュニケーショ
ンを開催し、相互理解の促進に取り組む。また、常日頃から、消費者等に対
し、正確でわかりやすい情報の適時・的確な提供に努める。
2
食のリスク管理対策
食品の安全を確保するため、生産段階でのリスク管理措置の徹底を図る。
具体的には、ポジティブリスト制度に対応した農薬の適正使用やその飛散
防止対策の周知徹底、GAP手法の取組促進、牛肉トレーサビリティ制度の
的確な運営、BSEまん延防止のための飼料規制の実効性確保等に取り組む。
3
食品表示の適正化
食品表示の適正化を図るため、普及啓発活動及び監視活動に取り組む。
普及啓発活動として、食品関係事業者には、新たな規格・基準等の周知徹
底に重点を置いたセミナー等をきめ細かに実施し、消費者には、引き続き表
示制度の周知に努めるほか、懇談会等の機会を利用した意見聴取等を行う。
監視活動として、小規模事業者に対する調査の効率的な実施の観点から、
地域・業態に特化した巡回調査に取り組む。
4
食育の推進
食育推進基本計画の策定を踏まえ、生産、流通、消費の各段階を通じた食
育の推進を図る。
具体的には、「食事バランスガイド」の一層の普及と活用促進に加えて、
食育の輪を広げ、活動を促進させるためのネットワークの構築、農作業体験
等を通じ自然の恩恵や食に関わる人々の様々な活動への理解を深める教育フ
ァームの取組促進を図る。
- 226 -
第Ⅰ部
参 考 資料
<経営所得安定対策等と売れるコメづ くりの推進>
1
品目横断的経営安定対策の推進
農業・農村の持続的な発展のため、担い手の育成・確保を図るとともに、
その基盤となる農用地の担い手への利用集積を推進する。特に、本格実施と
なる品目横断的経営安定対策の対象者要件を満たす担い手の相当数の確保に
向け、取組の加速化を図る。
2
米政策改革の着実な推進
米政策改革に向けた着実な取組を推進するため、地域水田農業ビジョン実
現に向けた個別課題に対し助言等を行うなど、関係機関と連携してきめ細か
な支援を行う。また、新たな需給調整システムへの移行に伴い、的確な需給
調整が図られるよう、地域水田農業推進協議会の機能強化を促進する。特に、
担い手の育成・確保運動と連携して、大規模稲作農家の認定農業者等への誘
導、生産調整方針への参加、集荷円滑化対策への加入を促進する。
3
農地・水・環境保全向上対策の推進
本格実施となる農地・水・環境保全向上対策の円滑な実施を図るため、共
同活動については、多くの活動組織で対策が実施されるよう、地域協議会等
に対する支援・助言等を行う。また、営農活動についても、県、市町村、地
域協議会等に対し、指導・助言などの支援策を講じる。
4
地場産米を中心とした米の消費拡大の推進
米の消費拡大を図るため、イベント等を通じ、我が国の主食である米を中
心とした「日本型食生活」の実践を一般消費者等へ広く普及・啓発するとと
もに、学校給食における米飯給食実施回数の増加を促進する。また、新たな
米の消費拡大策として期待される、米粉食品の普及促進に取り組む。
- 227 -
第Ⅰ部
参 考 資料
<農業の構造改革の推進>
1
多様な人材の確保等
農業の新たな人材を育成・確保するため、指導農業士等との意見交換会や
研修会を開催するとともに、新規就農希望者への情報提供の充実を図る。
また、女性や高齢者がいきいきと活動でき、障害者等にとっても参入しや
すい農山漁村を形成するため、農村女性等を対象とした情報交換会や障害者
等の農業参入支援に関するシンポジウムを開催するなど、共同参画社会に関
する情報提供・意識啓発を図る。さらに、企業等の農業参入を促進するため
の情報提供を行うとともに、意見交換会等を通じてニーズの把握に取り組む。
2
野菜・果樹の産地改革の推進
各産地の体質強化を図る「野菜産地強化計画」、「果樹産地構造改革計画」
の策定とその実現に向けた取組を支援するため、推進会議等の開催や情報の
収集・提供を行う。また、加工・業務用野菜の安定的供給を推進するため、
検討会等を開催する。さらに、消費者等を対象に、野菜・果実の摂取拡大を
目的としたイベントを開催する。
3
肉用牛生産の振興
肉用牛生産振興(増頭)のため、中国四国地域肉用牛生産増頭行動会議に
おいて、現地検討会・意見交換会を開催するとともに、先進事例等を盛り込
んだシンポジウムを開催する。また、作業の省力化・低コスト化、耕作放棄
地の解消等につながる放牧の事例収集を行い、パンフレットや広報誌等を通
じて普及啓発を行う。
4
農産物等の輸出促進
農産物等の輸出を促進するため、「中国四国地域農産物等輸出促進連絡会
議」において、行政機関等が収集した情報の共有化、関係機関の連携強化を
図る。また、農産物等の輸出に関心のある関係機関を参集したセミナーを開
催する。さらに、輸出の可能性に関する事前評価システムを試行的に構築し、
潜在的な輸出可能産品の調査を行う。
5
食品産業と農業の連携推進
食品産業と農業との連携を推進するため、中国四国地域食料産業クラスタ
ー連絡協議会を主体としたクラスターの形成推進を図るとともに、交流会等
を開催し、接点の拡充、結び付きの強化を図る。また、他省庁や関係機関と
も連携し、地域資源を活用した新商品開発等の取組を支援する。
- 228 -
第Ⅰ部
参 考 資料
<中山間地域等の活性化>
1
農山漁村の活性化
都市と農山漁村の共生・対流を推進するため、関係機関と連携・協力し、
シンポジウムを開催するとともに、各種イベント等でのパネル・ポスターの
展示、パンフレットの配布等による普及啓発活動に取り組む。また、「農山
漁村活性化支援窓口」を設置し、地域からの相談にワンストップで対応する。
2
耕作放棄地対策の推進
地域における主体的な耕作放棄地対策の取組を支援するため、取組事例の
収集・提供を行うとともに、市町村に出向き、耕作放棄地解消に向けた取組
や方策等について意見交換を行う。また、耕作放棄地解消に資する異業種か
らの農業参入や牛の放牧を推進する。
3
鳥獣被害防止対策の推進
野生鳥獣による農作物被害の防除対策や技術の普及を図るため、試験研究
機関と連携してセミナー等を開催し、効果的な被害対策・技術の普及に努め
る。また、研修会等を開催し、鳥獣被害対策を行う指導者及び捕獲の担い手
となる人材の育成・確保に取り組む。さらに、関係部局の横断的な連携の強
化を図るため、連絡会議や協議会等を開催する。
<循環型社会の構築>
1
バイオマス・ニッポン総合戦略の推進
バイオマスの利活用促進を図るため、シンポジウム、ホームページ、メー
ルマガジン等を活用して普及啓発を行い、広く理解と協力を求めるとともに、
地域の実情に即した利活用システムを構築するバイオマスタウンの実現に向
け、バイオマスタウン構想策定の推進や施設整備の支援を行う。
2
耕畜連携の推進
地域資源を循環的に利用する循環型社会の構築を図るため、生産者、生産
者団体及び行政機関が一体となり、耕種農家と畜産農家の連携のもとで、水
田を活用した稲わらや稲発酵粗飼料等の生産、遊休農地等を利用した牛の放
牧、たい肥投入による土づくりを推進する。
<情報受発信の充実・強化>
施策等の普及・推進を図るため、農政局が有するホームページ、広報誌、
メールマガジン等の各種広報媒体を活用し、正確でわかりやすい情報の提供
努めるとともに、ホームページに設けたWebアンケートにより情報の受信を
行う。また、プレスリリースや報道関係者との懇談会等を積極的に行い、マ
スコミを通じた広報の充実・強化に取り組む。
- 229 -
第Ⅰ部
4
参 考 資料
19年度天皇杯等受賞者一覧
管内では、農林水産業の活性化とともに、活力ある農山漁村を実現するため、
効率的な農林漁業経営や地域住民によるむらづくり等を行っている先進的事例が
多くみられる。
これらの優良な取組事例には農林水産大臣賞等が授与されている。また、この
うち、その内容が優れており、広く社会の賞賛に値するものについては、毎年、
秋に開催される農林水産祭において天皇杯や内閣総理大臣賞が授与されている。
以下のとおり、管内における本年度の天皇杯、内閣総理大臣賞及び農林水産大
臣賞の受賞者の概要を紹介する。
(1)天皇杯受賞者
むらづくり部門
い
ざ
り
み らい
かんが
すい しん きよ う ぎ かい
さか ぐちすす む
伊座利の未来を 考 える推進 協 議会(代表坂口 進 氏)
かい ふ ぐん み なみち よう
徳島県海部郡美波 町
少子・高齢化や過疎化が進む伊座利地区内の学校の統廃合問題を契機に、集
落の存亡に危機感を持った住民が推進協議会を立ち上げ、むらづくりを行った。
漁村体験交流イベントを通じて定住 型の漁村留学で具体的な成果をあげたほ
か、地区外の応援団との交流を広げた。また、厳格な資源管理・密漁監視を通
してアワビの資源回復を図るとともに海藻アラメに着目し商品化を実現するな
ど、地域資源を活かした活性化を図った。
(178ページに詳細な取組内容を記載)
資 料 :(財 )日 本 農 林漁 業 振 興 会 「 栄え の 受 賞 に 輝く 」
(2)内閣総理大臣賞受賞者
蚕糸・地域特産部門
産物(畳表)
ひ ろかわひ ろ し
廣川宏志氏
ふく やま し
広島県福山市
1963年に就農し、1984年に父から経営を引き継いでいる。高品質な畳表を作
るためには機械化が困難と考えられていたなか、機械や栽培技術の改良により
積極的な機械化を進め、規模拡大と高品質畳表の生産を両立させている廣川氏
の生産する畳表は平均1枚3,780円、高級品では全国平均(1枚1,350円程度)
の10倍の価格(13,500円)になることもあるが、自身が有する技術を惜しむこ
となく地域や全国の生産者に伝えている。
資 料 :(財 )日 本 農 林漁 業 振 興 会 「 栄え の 受 賞 に 輝く 」
- 230 -
第Ⅰ部
参 考 資料
(3)農林水産大臣賞受賞者
受賞品目・部門
【鳥取県】
ばら
野菜・花き
和牛去勢牛
和種種牛
乳牛
酪農
乾椎茸
乾椎茸
林業経営
【島根県】
うるち玄米
トルコギキョウ
果樹園ぶどう
肉用種牛
乳用牛
牛枝肉
受賞者
表彰行事名
住所
氏名
第36回鳥取県花き品 評会
米子市
森田八 重子
平成18年度とっとり大地海の フェスタ
東伯郡 北栄町
福山 浩
第26回全農肉牛枝 肉共励会
東伯郡 琴浦町
山下邦 彦
平成18年度鳥取県畜 産共進会
西伯郡 伯耆町
木嶋泰 洋
平成18年度鳥取県畜 産共進会
東伯郡 琴浦町
三浦幹 雄
第37回全国酪農青年 女性酪農発表大会
東伯郡 琴浦町
前田洋 子
第40回全農乾椎茸 品評会
倉吉市
米田一 成
第40回全農乾椎茸 品評会
西伯郡 伯耆町
影山千 世子
全国林業経営推奨 行事
鳥取市
大下正 一
第45回島根米品評会
仁多郡 奥出雲町 佐々木敏視
平成18年度「島根の花」 品評会
安来市
梶岡優 一
第21回島根ぶどう園コ ンクール
出雲市
鎌田良 一
平成18年度島根県種 畜共進会
仁多郡 奥出雲町 児玉八 重子
平成18年度島根県種 畜共進会
出雲市
平成18年度島根県肉 牛枝肉共進会
江津市
細川房 則
漁業協 同組合JFしまね恵曇
支所女 性部むつみ会
渡部 博
流通・消費拡大
第12回全国青年・女性漁 業者交流大会
松江市
【岡山県】
バラ
「フラ ワーフ ェステ ィバル ・おか やま2006」岡山 県花き 共進会
加賀 郡吉備 中央町 岩 崎 計 夫
果実経営いちご
第 46回 岡 山 県 農 林 漁 業 近 代 化 表 彰
岡山市
果実経営いちじく
第 46回 岡 山 県 農 林 漁 業 近 代 化 表 彰
笠岡市
果実経営ぶどう
第 46回 岡 山 県 農 林 漁 業 近 代 化 表 彰
高梁市
倉敷か さや農業協同組合い
ちじく専門委 員会
ぴほ く農業 協同組 合ニュ ーピ
オー ネ生産 部会高 梁主幹 支部
和牛
乳牛
和牛
鶏卵
ブロイラー
第 62回 岡 山 県 畜 産 共 進 会
新見市
小坂英 雄
第 62回 岡 山 県 畜 産 共 進 会
瀬戸内 市
原野末 廣
第 45回 岡 山 県 枝 肉 共 進 会
真庭市
新極達 夫
第 50回 岡 山 県 卵 質 改 善 共 励 会
井原市
岡山 ジェイ エイ畜 産芳井 農場
第 39回 岡 山 県 ブ ロ イ ラ ー 共 励 会
高梁市
丸 紅 畜 産 (株 )岡 山 事 業 所
その他畜産物経営
第 46回 岡 山 県 農 林 漁 業 近 代 化 表 彰
新見市
有限 会社哲 多町堆 肥セン ター
木材
乾しいたけ
素材
苗ほヒノキ
第 34回 J A S 製 材 品 普 及 推 進 展 示 会
真庭市
山下木 材株式会社
第 42回 岡 山 県 乾 し い た け 品 評 会
真庭市
日向文 夫
第 18回 岡 山 県 民 有 林 優 良 材 展 示コ ン ク ー ル
津山市
北村博 治
平 成 18年 度 全 国 山 林 苗 畑 品 評 会
新見市
多賀正 実
岡山市 農業協同組合西大寺
いちご部会
その他林産物経営
第 46回 岡 山 県 農 林 漁 業 近 代 化 表 彰
勝田郡 奈義町
奈義町 森林組合
林業経営
のり
むらづくり
【広島県】
キク
肉用種牛
畳表
錦鯉昭和三色
全国林業経営推奨 行事
高梁市
畑 公平
第 31回 岡 山 県 の り 共 進 会
瀬戸内 市
廣田和 雄
中国・ 四国ブ ロック優 良事例 (豊か なむら づくり全 国表彰 事業) 井 原 市
ぶ ど う の里 運 営 協 議 会
第 53回 広 島 花 の 祭 典
江田島 市
山本輝 義
第 82回 広 島 県 畜 産 共 進 会
庄原市
沖野利 政
広島県い草・い製 品品評会
福山市
広川宏 志
第 43回 広 島 県 錦 鯉 品 評 会
広島市
小西丈 治
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受賞品目・部門
【山口県】
トルコギキョウ
乳用牛
黒毛和種
肉牛枝肉
水産練製品
水産練製品
水産加工品
【徳島県】
シンビジウム
経産乳用種牛
経営
水産ねり製品
むらづくり
【香川県】
表彰行事名
住所
第Ⅰ部
受賞者
氏名
参 考 資料
平成18年度秋季山口県花き展示品評会
下関市
岡田富美雄
第28回山口県ホルスタイン共進会
下関市
竹永洋幸
第54回山口県和牛共進会
長門市
松崎恵美子
第54回山口県和牛共進会
山口市
福嶋穣二
第59回全国蒲鉾品評会
萩市
有限会社末益蒲鉾店
第59回全国蒲鉾品評会
山陽小野田市
山陽食品工業株式会社
第38回山口県水産加工展
下関市
株式会社ほんぽ
第24回徳島県花き展示品評会
阿波市
土成町洋ラン生産組合
第27回徳島県畜産共進会
板野郡板野町
井上泰一
平成19年度徳島県農林漁業優秀経営者選定事業
徳島市
坂口常博
第56回全国水産加工たべもの展
阿南市
阿波蒲鉾協同組合
中国・四 国ブロック優良事 例(豊かなむら づくり全国表彰 事業) 海 部 郡 美 波 町
伊座利 の未来 を考え る推進 協議会
花き一 般鉢物ア ナナ ス 平 成 18年度 全 国 花 き品 評 会
高松市
キク
カーネーション
野菜
乳用牛
肉用牛(種牛)
肉用牛(去勢)
肉豚
【愛媛県】
生活改善
切花バラ
くり
くり
せとか
果樹園せとか
みかん
第 43回 香川 県 花 き 品評 会
小 豆 郡 小 豆 島 町 八 木 清文
末 澤 邦弘
第 43回 香川 県 花 き 品評 会
高松市
谷 口 伸次
第 28回 香 川県 野 菜 立 毛 品 評 会
さ ぬ き市
谷 風 巌
第 70回 香川 県 畜 産 共 進 会
高松市
天 雲 宏明
第 70回 香川 県 畜 産 共 進 会
高松市
谷 俊 碩
第 70回 香川 県 畜 産 共 進 会
木田郡三木町
多 田 英博
第 70回 香川 県 畜 産 共 進 会
綾歌郡綾川町
太 田 卓人
平 成 18年 度 農山 漁 村 女 性 チ ャ レ ン ジ活 動 表 彰
西予市
松 浦 愛子
え ひ め 花ま つ り 花 の コ ン クー ル
西条市
玉 井 新吾
平 成 18年度 愛 媛 県 く り品 評 会
西予市
富 永 健三
平 成 18年度 愛 媛 県 く り品 評 会
西予市
岡 崎 良一
平 成 18年 度え ひ め ・ み か ん祭 り 生 産 コ ンク ー ル
松山市
八 木 勝幸
平 成 18年 度え ひ め ・ み か ん祭 り 生 産 コ ンク ー ル
松山市
田 中 伸誠
第 8回 全 国 果 樹技 術 ・ 経 営 コン ク ー ル
西 宇 和 郡 伊 方 町 梶 原 孝一
柑橘
第 56回 全 国農 業 コ ン ク ール
八幡浜市
生活改善
肉用種(種牛)
肉牛
肉豚
乾椎茸
乾椎茸
ほだ木育成
浜揚げ珠
むらづくり
【高知県】
きゅうり
土佐文旦
オリエンタルリリー
なし
乳用牛
平 成 18年 度 農山 漁 村 い き い き シ ニ ア活 動 表 彰
上浮 穴郡 久万高 原町 上 畑 野川 農 産 加 工 組 合
平 成 18年 度愛 媛 県 総 合 畜 産 共 進 会
南 宇 和 郡 愛 南 町 池 田 一成
平 成 18年 度愛 媛 県 総 合 畜 産 共 進 会
西予市
土 居 原克 彦
平 成 18年 度愛 媛 県 総 合 畜 産 共 進 会
今治市
有 限 会社 菊 間 仙 高 牧 場
第 49回 愛 媛県 し い た け共 進 会
伊予市
岡 田 義数
第 49回 愛 媛県 し い た け共 進 会
大洲市
渡 辺 恭一
第 49回 愛 媛県 し い た け共 進 会
伊予市
大 田 誠雄
第 28回 愛 媛県 浜 揚 真 珠 品 評 会
宇和島市
細 川 陽一
せん茶
中国・四 国ブロック優良事 例(豊かなむら づくり全国表彰 事業) 伊 予 郡 砥 部 町
西 宇 和農 業 協 同 組 合 保 内 柑
橘 共 同選 果 部 会
七折地区七折 梅生産出荷組合
平 成 19園 芸 年度 高 知 県 園 芸 品 展 示 品評 会
土佐市
池 一 仁
平 成 19園 芸 年度 高 知 県 園 芸 品 展 示 品評 会
吾 川 郡 い の町
森 昭 夫
平 成 19園 芸 年度 高 知 県 園 芸 品 展 示 品評 会
高知市
永 井 洋一
平 成 18年 度高 知 県 梨 果 実 展 示 品 評会
吾 川 郡 い の町
森 本 巌
第 26回 四 国連 合 乳 牛 共 進 会
吾 川 郡 い の町
中 島 俊二
平 成 18年 度第 44回 高 知 県 茶 品 評会
コ ス モス 農 業 協 同 組 合仁 淀
吾川郡仁淀川町
支 所 第一 製 茶 工 場
資料 : (財 )日本 農林 漁 業振 興会 「 栄え の受 賞に 輝 く」
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