有機化学Ⅲシケプリ 有機化学Ⅲの過去問は演習と全く同じ問題が多数出ているようです。一応解答を作りまし たが、自信のないところや分からないところがあるので補足や指摘をお願いします。反応 機構を書く問題(演習 3 のⅡ、演習 4 のⅠとⅡ7)、演習 5 のⅡ)は、後日手書きのものを up してもらう予定です。過去問は all-todai にあるのでそちらを参照してください。 尚、9 月 15 日(金)の 2 限に補講、22 日(金)の 2 限に試験という日程です。 ・演習の解答 演習 1 プリント No.2 の表 2 から Cl:σp=0.23 である。 1 σの定義式から、 σp=log (K/K0) が成り立つので、 pKa(Cl)=-log K = -log K0 -σp = pK0-σp = 4.19 - 0.23 = 3.96 2 Hammett 則から、 log (k/k0) = ρσ ∴log {k/(55×10 -5 )} = 2.60σ (A) プリント No.2 の表 2 から NMe2:σm=-0.21 なので、 log {k/(55×10 -5 )} = 2.60×(-0.21) ∴k = 1.6×10 -4 l mol -1 s -1 (B) プリント No.2 の表 2 から NMe2:σm=-0.21、COMe:σ m=0.38 なので、 σ= -0.21+0.38 = 0.17 である。よって、 log {k/(55×10 -5 )} = 2.60×0.17 ∴k = 1.5×10 -3 l mol -1 s -1 3 電子求引基と電子供与基のどちらが Ar についていると反応が速くなるかを考える。 A A-1 SN2 反応であるから、電子供与基を付けたほうが反応が速い。よってρ1<0。 A-2 SN2 反応であるから、電子供与基を付けたほうが反応が速い。よってρ2<0。 A-2 の方が A-1 に比べてメチレン基 1 つ分多いから、電子供与基の効果は A-2 の方 が弱くなる。よって、 |ρ1|>|ρ 2| 従って、ρ 1<ρ2 B 1 B-1 Ar に電子求引基がついているほうがアミンが付加しやすい。よってρ1>0。 2 B-2 Ar に電子供与基がついているほうがカルボニルに付加しやすい。よってρ2<0。 明らかにρ 1>ρ2 4 Hammett 則から、 log (k/k0) = ρσ ∴log (k/k0) = -1.31σ が成り立つ。 m-Br 体では Br:σ m=0.39 であるから、 log (kBr/k0) = -1.31×0.39 一方 m-NO2 体では NO2:σm=0.71 であるから、 log (kNO2/k0) = -1.31×0.39 これら 2 式から k0 を消去して、 log (kBr/k NO2)=-1.31×(0.39-0.71) 5 ∴kBr/k NO2=2.6 速度式に C と D が含まれていないため、律速段階の前には C と D は関与していないこ とがわかる。解答例を 2 つ示す。 解1 A+B E 平衡 A+E → C+F 律速 B+F → D 解 2 A+A A-A 平衡 A-A +B → C+X 律速 X+B → D 6 Hammett 則から、 log (kX/k0) = ρσ ∴log kX – log k0 =ρσ ∴-pKa(X) + 9.03 =ρσ X log (kX/k0) σ p-CH3O -9.32+9.03=-0.29 -0.27 p-CH3 -9.22+9.03=-0.19 -0.17 p-F -8.94+9.03=0.09 0.06 m-NO2 -8.19+9.03=0.84 0.71 p-NO2 -8.14+9.03=0.89 0.78 p-Cl -8.83+9.03=0.20 0.23 m-Cl -8.67+9.03=0.36 0.37 これらのデータを用いると、最小二乗法からρ=1.13。ρ>0 なので、電子求引基ほど 平衡は右に寄る。 7 (a)吸熱 (b)山の頂のところ(2 ヶ所)。律速の遷移状態は、A と B の間の山の頂。 (c)k1<k2≒k4<k3 (d)A、C、B 演習 2 1 (a) (CH3)3P (b) C6H5O - (c) CH3NH2 (d) p-CH3C6H4O CH3SH (f) n-C4H9O I の方が Cl よりも脱離能がよいから。 より安定なカルボカチオンを経由するから。 3) 下 立体障害が小さいから。 4) 下 プロトン性溶媒は SH の求核性を下げてしまうから。 5) 下 立体障害が小さいから。 6) 下 SH の方が OH よりも求核性が強いから。 7) 下 (CH3)3P の方が(CH3)3N よりも求核性が強いから。 8) 下 PhS の方が N3 よりも求核性が強いから。 9) 上 三員環形成の方が四員環形成よりもエントロピー的に有利だから。 (a) - - - - - H2O p-NO2C6H4O - Cl - - ClCH2CO2 出発物質 HA+H2O - A +H2O + H3O +A HA+OH + p-BrC6H4SO3 - R 5 (h) - 2) 上 (b) Br 4 (g) NH3 - 2 1) 下 3 - CH3 CO2 - HO - p-CH3C6H4SO3 - H - C6H5O - X Y 生成物 R S S - …① - …② - ①より Ka=[H3O ][A ]/[HA] ②より Kb=[HA][OH ]/[A ] - - よって、 + - - - pKa+pKb=-log ([H3O ][A ]/[HA]) –log ([HA][OH ]/[A ]) + - = -log ([H3O ][OH ]) = 14 - - (e) - - 6 (a) I は求核剤としても脱離基としても優れており、まず一級アルキル塩化物は I によ - - - って SN2 反応を受け Cl が脱離し、 続いて Nu からの SN2 反応を受け I が脱離する。 (b) メタノールの方がエタノールより極性が高く、より溶媒和を受けた SN1 反応の方が 速くなる。 (c) トリエチルアミンの方がピリジンよりも急核性が高く、立体障害の少ないヨウ化メ チルに対してはトリエチルアミンの方が反応性が大きい。だが、ヨウ化イソプロ ピルでは立体障害が大きいため、立体障害の少ないピリジンのほうが反応性が大 きくなる。 (d) MeO-は電子供与基であり NO2-は電子求引基である。SN1 反応の中間体のカルボカ チオンは電子供与基で安定化され電子求引基で不安定化される。 - (e) OH がプロトン化され H2O が脱離する SN1 反応が起き、中間体のカルボカチオン は両側から H2O の求核攻撃を受けられるためラセミ化する。 - - (f) Br から SN2 反応を受けて Walden 反転する。出発物質も生成物も Br から SN2 攻 撃を受けるが、出発物質の方が多くあるため出発物質の方が SN2 攻撃を受けやす い。このように、R 体と S 体を SN2 反応で行き来しながら、徐々にラセミ化する。 演習 3 Ⅰ 1) 2) 3) 4) 6) 5) 7) 8) 9) 10) 12) 13) 15) 11) 14) 16)左が速度論支配、右が熱力学支配 Ⅱ 略 Ⅲ 1)シス体は普通の SN2 反応を起こすが、トランス体は隣接基関与のため反応が速く進 む。 2)孤立電子対のある N に、アンモニアでは H が2つ、アジドイオンでは N がついてい る。電気陰性度は H よりも N の方が大きいので、アンモニアよりもアジドイオンの 方が N 上の孤立電子対が引っ張られている。そのため、アンモニアよりもアジドイ オンのほうが求核性が弱い。 3)沸騰酢酸中では SN1 反応が起こりラセミ化した酢酸エステルが生じ、酢酸ナトリウ ムを用いたときは SN2 反応が起こり、S 体の酢酸エステルが生じる。 4) SN1 反応では、中間体のカルボカチオンが平面構造を取れないため SN1 反応はほと んど起こらない。また、3 級の炭素のため立体障害が大きく、SN2 反応もほとんど起 こらない。 5)トランス体では脱離基 Cl の裏側から SN2 攻撃をすることができるが、シス体では立 体的な制約により脱離基 Cl の裏側から SN2 攻撃をすることができない。 6) SN2 反応が起こる際、脱離基のついた炭素を 1 位としたときの 3 位のアキシアルの 基によって立体障害が生じる。A では 3 位のアキシアルはどちらも水素であるが、B では 3 位のアキシアルは水素とメチル基のため、B の方が A よりも立体障害が大き い。このため、A の方が立体障害が少ないために速く反応する。 7)どちらも遷移状態のエネルギーはほぼ等しいと考えられるため、出発物質が不安定な シス体の方が活性化エネルギーが小さくなり、反応が速く進む。 8)メタノールはプロトン性溶媒であり、ジメチルホルムアミドは非プロトン性溶媒であ る。メタノールはカチオンもアニオンも溶媒和するが、ジメチルホルムアミドはカ チオンに対しては溶媒和するがアニオンに対してはあまり溶媒和しない。このため、 - 求核剤の Cl は、メタノール中では溶媒和されて求核性が落ちるが、ジメチルホル ムアミド中では溶媒和されず求核性が落ちない。このため、ジメチルホルムアミド 中で圧倒的に反応が速い。 - 9)A が生じるには、SOH が求核剤となって OTs が脱離する SN2 反応する反応が起こ ればよい。一方、B が生じるには、まず OTs 基がプロトン化され、TsOH のついた 炭素上に Ph 基が転位してきて TsOH が脱離する反応が起こればよい。よって、プロ トンを出しやすい SOH を用いるほど、B/A が大きくなると考えられる。 演習 4 Ⅰ 略 Ⅱ 1)t-ブチル基があまりに大きいため、シス体ではメチル基と t-ブチル基の立体反撥が 通常よりも大きい。 2)E2 反応はアンチ脱離が優先である。 3) 4)よく分かりません。 5)アセタール化反応は立体保持の反応のため。 6)t-ブチル基はかさ高いのでエクアトリアルに向けると、トランス体ではカルボニル 基がエクアトリアルに、シス体ではカルボニル基がアキシアルに向く。アキシアル のカルボニル基では、3 位にあるアキシアル水素によって立体障害があり、加水分解 されにくい。 7)メトキシ基 1 つに対して 1 分子の水を脱水できるため、2 つのメトキシ基を持つ 2,2 -ジメトキシプロパンは優れた脱水剤である。(反応機構は別紙に記載予定) 8)共役塩基が安定なほど pK は小さくなる。A の共役塩基は芳香族性があり非常に安定 であり pK は小さい。B の共役塩基は電子がアルケン部分と共鳴できるためやや安定 である。C の共役塩基は共鳴できず不安定である。B や C では一見するとベンゼン 環と共鳴できるように見えるが、ベンゼン環と共鳴してしまうと折角ベンゼン環で 得た芳香族性による安定化が失われてしまうので、ベンゼン環とは共鳴しないと考 えられる。 Ⅲ 1) 2) CH3NO2 3) PhCH2SO2CH3 4) CH3SO2CH3 CH3COCH3 CH3SOCH3 CH3CN PhSO2CH3 PhCH3 PhSiH3 PhCOCH2COCF3 CH3COCH2COCH3 CH3CH2COCH2CO PhCOCH2COCH3 Ⅳ 丸印のついた H が答えである。 1) 2) 3) 4) 5) 6) CH2CH3 V pKa の小さい順に並べると、(但し、 ’は共役酸を表すことにする) 1’<2’<D≒E<3’<4’≒F<C<A<5’<B となる。よって、 A,C,F に対しては5、B に対しては何もなし、D,E に対しては 3,4,5 となる。 演習 5 Ⅰ 1) 2) 4) 5) 7) 3) 6) 8) Ⅱ 略 Ⅲ 1)まずアニリンがモノハロゲン化され、強酸の HX が副生する。窒素上の塩基性は、モ ノハロアニリンでは電子求引なハロゲン X によってアニリンと比べ弱くなっている。 そこで、HX はアニリンにプロトン化し、アニリンの置換速度を遅くする。そのため、 モノハロアニリンに対してハロゲン化が引き続き、ジハロアニリンを生じる。ジハ ロアニリンはさらに塩基性が弱く、引き続きハロゲン化が起こり結局トリハロゲン 化する。 2)混酸を用いるとアニリンがプロトン化され、プロトン化されたアニリンは m 配向性 を示すため m 体の割合が多くなる。p 体が多く生じるのは、プロトン化されていな い微量のアニリンが p 体を形成するためであり、アニリンのニトロ化の方がプロト ン化されたアニリンのニトロ化よりも反応性が大きいため、下図の平衡が左に偏っ て p 体も多く生成する。 3)スルホン化は酸の存在下で可逆反応であるから、スルホ基が外れてからそれぞれトリ ブロモ化、トリニトロ化が起きたと考えれる。 - + 4)AlCl3 によって塩化アセチルの Cl が抜けてアシリウムイオン CH3CO が生じ、続いて - - AlCl4 の Cl のうちの同位体標識された Cl がアシリウムイオンと結合すると塩化ア セチルに標識塩素原子が塩化アセチルに導入される。この過程を繰り返していくこ とで、徐々に標識塩素原子が塩化アセチルに導入されることになる。 5)温度が高くなるほど、下図の転移のエネルギー障壁を超える分子が増え、熱力学的 により安定なイソプロピルベンゼンの割合が大きくなる。 6)以下のように中間体にカルボカチオンを生じるため、ラセミ化する。 7) Ⅳ ●の位置が主に置換される場所である。 1) 2) 3) 4) 5) 6) Ⅴ Ⅵ o 位…4、m 位…4、p 位…2 of = (kArH/4)/(kB/6)×o/100 = 41 mf = (kArH/4)/(kB/6)×m/100 = 0.6 pf = (kArH/2)/(kB/6)×p/100 = 37 双方のベンゼン環は互いに電子供与基であるフェニル基として働くのでビフェニルは ベンゼンより反応性が高い。 Ⅶ NH2 基よりも NHAc 基の方がカルボニル基の影響によって電子供与性が弱いため、ト リブロモ化やジブロモ化への傾向を減らせる。また、ニトロ化ではアニリンはプロト ン化され置換速度が著しく減少する。NHAc 基はカルボニル炭素によって N 上の塩基 性が弱まっておりプロトン化を受けにくく、さらに電子供与基であるから、ニトロ化 されやすい。 ・過去問の解答 基本的に演習と全く同じ問題やよく似た問題が多いので、ちょっとした補足だけを書き ます。 98 年度 Ⅲ2) イプソ炭素に Br が結合し、t-ブチルカチオンが脱離する。 99 年度 Ⅰ2) SN2 反応よりも SN1 反応の方が電子供与基の影響を大きく受ける(|ρ|は SN1 反 応の方が大きい)。 Ⅱ2) オキシラン(エポキシド)を生じる反応であるが、熱力学的に安定なエキソ体が生じ ると考えられる。 Ⅲ3) ホフマン転位である。(反応機構の一部省略) 04 年度 特に補足なし。
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