演習問題解説(PDF)

13 章
演習問題解説
13.16
いずれも SN2 反応が優先して起こる.
13.17
いずれも主反応は SN2 反応.ベンジル誘導体のフェニル基は SN2 反応を促
進する.(b) および (f) の反応では SN2 反応が 2 回起こる.
13.18
比較しているのは:
(a)
第一級と第二級アルキル臭化物.
(b)
臭化物とヨウ化物の脱離能.
(c)
求核種の立体障害.
(d)
塩基性と求核性の関係.
13.19
(a) の反応では,イオン性の反応物どうしが反応して電荷が消滅していく.
(c) の反応では,電荷をもたない反応物から電荷分離が生じる.
極性溶媒は極性の高い状態を安定化する.
13.20
反応はいずれも SN2 機構で進み,立体反転の生成物を生じる.
13.21
S2– による SN2 反応で 4–ブロモブタン–1–チオラートが生成し,その分子内
SN2 反応で環化する.
13.22
二つのハロゲン原子の反応性を比較する.
(a) では Br–と Cl–の脱離能を比較する.
(b) と (c) では sp2 炭素に結合したハロゲンを考える.アリル位やベンジル
位は求核置換を受けやすい.
13.23
いす形シクロヘキサンの隣接(1,2)位にあるトランス置換基は,ともにエ
クアトリアル位をとるか,ともにアキシアル位をとる.エクアトリアル結合
どうしはゴーシュの関係になっているが,アキシアル結合どうしはアンチペ
リプラナーになっている.協奏的な SN2 反応では求核種の攻撃は脱離基の背
面から起こる.この反応では,塩基によって平衡的に生成した–O–が分子内
SN2 反応を起こす.
13.24
平衡的に生成したアルコキシドの–O– が–Cl の背面から攻撃して分子内
SN2 反応を起こす.–Cl と –O–がアンチペリプラナーになる立体配座から反
応し,キラル炭素の立体反転が起こる.
13.25
生成するカルボカチオン中間体の安定性を比較する.共役安定化されたも
のは安定である.しかし,電子求引基はカチオンを不安定化する.
13.26
共役安定化されたベンジルカチオンを生成するベンジル誘導体は,アルコ
ール中で SN1 型の加溶媒分解を受ける.ベンジルカチオン中間体は p–メトキ
シ基によってどのような効果を受けるだろうか?
13.27
問題のプロトン性溶媒中では SN1 型の加溶媒分解が起こりやすい.それで
も,第一級アルキル基質は SN1 反応を起こさない.SN1 反応は,60%エタノ
ールよりも極性の大きい水中でさらに促進される.
13.28
SN1 型の加溶媒分解に対する溶媒効果に関する設問である.塩化 t-ブチル
の SN1 反応では反応とともにイオン化が進み電荷分離が起こるが,t-ブチル
ジメチルスルホニウム塩は反応基質も生成物もイオン対であるので反応中
に電荷分離が起こることはない.その結果,前者は大きな溶媒の極性効果を
受けるが,後者はほとんど溶媒効果を受けない.
13.29
問題 13.28 でみたように,脱離基の違いによって反応速度に対する溶媒効
果は大きく異なるが,生成物比は脱離基の影響をほとんど受けない.これは,
生成物比を決める段階に脱離基が関与していないこと,すなわち,脱離基が
はずれた共通の中間体から起こる反応段階で生成物が生じることを示唆し
ている.
13.30
二つの反応における違いは,塩基のかさ高さである.かさ高い塩基は立体
障害を起こさないような反応経路を選ぶ.
13.31
二つの反応において脱離基だけが異なる.トリメチルアンモニオ基は,正
電荷をもち,かさ高く,脱離能も小さい.
13.32
第三級アルキル基質の E2 反応における塩基のかさ高さの影響を問題にし
ている.
13.33
かさ高い塩基による脱離反応は Hofmann 則に従うという多くの例が出て
きたが,非常にかさ高いグループをもつ基質では通常の塩基でも Hofmann 則
に従う場合がある.
13.34
種々のヘテロ原子を含む置換基をもつ化合物の E2 反応をとりあげている.
13.35
E2 反応はアンチ脱離で起こる.脱離する H と Br がアンチペリプラナーに
なるような立体配座でそれぞれの基質の構造式を書けば,正しい立体化学の
生成物がわかる.
13.36
E2 反応においては,隣接していて脱離する Br と H は,アンチペリプラナ
ーになるためにともにアキシアル位をとる必要がある.二つの Br がともに
アキシアル位になるようにいす形シクロヘキサンを書くと,脱離できるアキ
シアル位の H を探すことができる.
13.37
t-ブチル基のようなかさ高いグループは,シクロヘキサン環に結合すると
優先的にエクアトリアル位をとる.t–ブチル基の 4 位にあるシスとトランス
の脱離基の配座を考えよ.
13.38
二つの化合物を比べると,いずれも脱離すべき Cl の隣に比較的かさ高い
イソプロピル基があり,一方ではシスもう一方ではトランスの関係になって
いる.イソプロピル基がエクアトリアルになると Cl は,塩化メンチルでは
アキシアルに,塩化ネオメンチルではエクアトリアルになる.
13.39
カルボニル基の隣の水素は酸性度が高い(8.3.2 項および 17 章参照)ので,
カルボアニオンを生成しやすい.
13.40
ベンゼンチオラートは求核性が高く,まず SN2 反応を起こす.次いで,過
剰にあるエトキシドは脱離反応を起こす.