平成24年度第1回国際緊急援助隊救助チーム技術検証会報告書

平成24年度第1回国際緊急援助隊救助チーム技術検証会報告書
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主
旨
2010年にJDRチームがIEC検定を受検し、
「ヘビー級」を認定されまし
た。5年後の2015年に再評価(「重」ヘビー級の能力の有無)となるIER検
定が実施される予定です。検定にはINSARAGのチェックリストが使用され、
項目をクリアしなければなりません。
項目の一つにロープワークがあり、今までは三つ打ちロープを使用していまし
たが、スタティックロープを導入する方向となりました。今回の検証会は、IR
Tにおいて救出方法の統一化や導入資機材の検討が必要となったために開催され
ました。
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実施日時
平成24年5月24日(木)から25日(金)まで(二日間)
5月24日(木)9時30分から18時00分
5月25日(金)8時30分から17時30分
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実施場所
東京消防庁第二消防方面本部
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講
消防救助機動部隊
師
・在日米海軍統合消防局 第六管区
梯子隊 隊長 草場 秀幸 氏
・IEC/R評価員
沖田 陽介 氏
参 加 者
・講師
・警視庁
・総務省消防庁
・海上保安庁
・国際緊急援助隊事務局員
2名
3名
3名
3名
8名
会議室及び屋外訓練場
針尾住宅消防署
計19名
報告内容
(1)ロサンゼルス消防IER出張報告(IER評価員:沖田
陽介)
・ロサンゼルス郡消防は、2007年にIECを受験し「重」を認定される。5
年が経過したことで再評価を受けなければならない。チェック項目はYes/
Noで判定され、いくつかの項目にNoとコメントが付されていた。
・IER(評価員)チームは全て「重」認定を得たチームからの8名参加で
(オランダ2名 ロシア1名 英国1名 オーストラリア2名 日本1名 ス
イス1名)マネージメント、レスキュー、サーチ、メディカル、ロジと言った
担当で各評価を行う。
・メンター(検定に合格する為のアドバイザー)による事前の指導、確認は受検
に際して必須とされている。
・ チェックリストは頻繁に改訂されるため、最新版を入手する必要がある。
・ 過去の実派遣の記録を丁寧かつチェックリストを意識してポートフォリオ(記
録ファイル)に明確に記載しておくことが必要。
(2)IERとして重点的に確認するのは以下の項目である
・ 過去5年にどれだけのメンバー(登録要員)が変更となったか。
・ 新しいメンバーに対してどのような研修・訓練を実施したか。
・ IEC以後、どれだけのメンバーがチームを離れたか。
・ メンバーに関する書類(パスポート・健康診断・予防接種記録・個人訓練の記
録)の確認。
・ 記録の管理と保存の再確認が必要。
(3)2015年のIERシナリオ作成時に気をつけるべき点
・ 同一サイトを柵で仕切るような2サイトは避け、実際に離れているエリア(車
で移動)の2サイトを選定する。また、2サイトでのレスキュー活動を、同時
に行っている時間帯があることが必要。
・ 作成されたシナリオについては、可能な限り忠実に実行する。今回は10マ
イル離れているBoO(現地指揮本部)とレスキューサイト間を歩いて移動し
た隊員がいたため、評価員からコメントがなされた。
・ 36時間演習について、各想定にかける最低限の時間が設定されている。(動
員から空港集合まで6時間、入国審査・通関に1時間、その後のレスキュー活
動等に29時間)
・ 上記に関連して、日本のIEC検定時は空港集合からスタートしたが、これで
は認められない。各隊員にアラートをかけてから空港の集合までを実際に見せ、
また、この空港はレスキュー現場から車で移動するような離れた場所に置く必
要がある。
(IEC検定時のように、全てを三木で完結させてしまうのは危険)
・ アンビュテーションの必要な要救助者、チームメンバー・捜索犬の負傷、他チ
ームからの機材の貸し出し依頼、BoOへの市民の侵入(BoOの安全管理に
関する事項)等のインジェクションを組み込む。あらかじめこれらが組み込ま
れていない場合、直前に評価員から加えられる可能性もあるため。
・ 今後特に確認・対応が必要と思われるのが、メンバー全員について国連のDS
S(Department of Safety and Security)Basic コース、マネージャー
レベルについては、同 Advanced コースの修了証書が必要となっている点。
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検証内容
JDRのロープワークにおける、導入資機材の検討及び救出方法の検証
・ 機材の導入検討
現在購入している資機材にプラスアルファで何かあるかと言う事でした。要望
として、フルボディーハーネス(グリヨン付き)を挙げておきました。
・ 救出方法の検証
ロープ展張要領(均等倍力システム)
張り込み救出要領
リフト救出要領
草場氏によるロープ展張要領の説明
では、6倍力を使用し、2本のロープ
を均等な力で展張する方法を紹介し
てもらう。
実際に使用する倍力システムの作成
方法を実技にて学習する。
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所
展張したロープを使用して、隊員の移
動・降下を実施する。
感
この度のJDR検証会は、ロープレスキューにおいて不足していると思われる資機材の購
入アドバイス及び、垂直昇降及び横方向移動システム(張り込み救出、リフト救出)の構築
と救出方法の統一化を図る事が目的で開催されました。
参加者は講師2名・警察庁3名・海上保安庁3名・総務省消防庁3名・国際緊急援助隊事
務局員8名の合計19名で構成され、東京消防庁第二消防方面本部消防救助機動部隊の訓練
施設を使用し二日間で座学・実技を行いました。
初日のIER評価員である沖田陽介氏によるロサンゼルスからの帰国報告では、ロサンゼ
ルスチーム再評価のチェック状況を詳細に伝達してもらい、2015年の再評価において日
本チームが「重」を再認定されるには、どのような点に注意しなければならないかを講義し
て頂きました。
実際に評価員の報告内容を聴講し、あらためてINSARAGガイドラインの内容を把握
する事の重要性を感じました。IRT登録隊員の任務は、あくまで人命救助であってスキル
の向上、また使用する資機材の性能・諸元・使用方法を熟知する事は当然の事です。
しかしIEC及びIERの目的は、検定で「重」レベルに認定される事です。そのために
チェックリストが存在し、項目をクリア出来るよう定期的にJDR訓練会やIRT訓練会が
開催される訳です。
レスキューチームの構成は警視庁、消防庁、海上保安庁の3庁ですが、組織が違うという
事は手法や考え方も当然違ってきます。合同実践訓練会やセミナー等である程度の統一は図
れると思いますが、実際に参加する隊員の人数には制限があります。全ての登録隊員が参加
出来るなら、知識・技術共に質の高いIRTとなるでしょう。自己研鑚という部分では、登
録隊員が閲覧可能なJDRのホームページがあります。カテゴリーごとに動画や説明が付さ
れていて卓上での学習にはとても役立っています。
登録隊員の不安要素を挙げると、やはり数少ない実動訓練と卓上だけの学習では3庁合同
で訓練を行った時、ましてや災害派遣になった時に最適な活動が出来るだろうかという点で
あると思います。
当局においては、非常に恵まれており早い時期から震災対応訓練施設を設置する事が出来
たので、訓練会等に参加したIRT隊員が他の隊員に対して伝達し、また検証する事の出来
る環境にあります。情報はネットワークを利用すればいくらでも入手出来ますが、それを検
証する施設が無ければ、知識の一つでしかありません。知識を知恵に変え、技術を身体で覚
えるからこそ強い隊員、部隊になると思っています。合同訓練会等に参加した際、レベルの
高い位置で知識技術を発揮出来るのは、この環境があるからだと確信します。
全国のIRT隊員との交流は、個人また組織の財産になる事は間違いありません。皆生高
度救助隊の一人でも多くの隊員が、このような経験を出来れば良いと願います。今回の訓練
検証会に参加させて頂き感謝いたします。ありがとうございました。
以 上
消防関係参加隊員
3庁合同参加隊員