第6回 機能性ディスペプシア研究会報告 当番世話人:樋口和秀(大阪医科大学第二内科) 平成 24 年 11 月 8 日(木) 、大阪において、第6回機能性ディスペプシア (FD)研究会を開催させていただきました。本研究会も早6回目を迎えま した。FD は上腹部の消化器症状が慢性的に認められるもので、症状を説明 できる器質的な異常を認めない症候群といえますが、FD の概念については 欧米においてもまだ整理されていない状態です。 2006 年に RomeⅢが示され ましたが、いろんな異論もあり混とんとしています。いろんな病気、病態 が混在している可能性があり、ひとつひとつ検証しながら、整理する必要 があります。 前回の研究会では、FD の分類については H. pylori 感染陽性と陰性 FD の病態の違いを主体と した討議がなされ、区別して考えるべきであることが示されました。また、わが国において施行 された臨床研究からのエビデンスが検証されましたが、まだまだ大規模でプラセボコントロール の臨床試験が少なく、今後いろんな観点から全国レベルで行っていくべきであることも再認識し ました。 今回の研究会では、この混とんとしている FD の病態をさらに明らかにする目的で、その他の機 能性消化管障害、すなわち非びらん性胃食道逆流症や過敏性腸症候群などとの合併率や治療法に 関して、議論しました。まず、木下芳一教授に NERD と FD、福土 審教授に IBS と FD のオーバー ラップに関する基調講演をしていただき、現状や問題点をご指摘いただきました。その上で、各 演者がそれぞれの観点からオーバーラップ症候群をどのようにとらえたらいいかのご発表をいた だきました。オーバーラップの関連因子に関して、大阪市立大学の藤原先生、兵庫医科大学の大 島先生、東京慈恵会医科大学の中田先生、GERD の面から、愛知医科大学の井沢先生、大阪医科大 学の梅垣先生、酸の関係から、佐賀大学の岩切先生、川崎医科大学の眞部先生、ヘリコとの関係 では社会保険滋賀病院の中島先生にそれぞれ発表いただきました。これらの議論を聞いて、それ ぞれが単独の原因で起こっているものに関しては、その点から Strategy をたてられるが、オーバ ーラップの場合は、その原因が複雑で、また、別の疾患群として考えるべきであるとの意見もあ りました。さらに今後データーや病態解明のいろんな取り組みの集積が必要と考えられました。 また、現時点での FD の病態に関する基礎的・臨床的な新知見についても発表していただきまし た。基礎的な面で、大阪市立大学の富永先生、日本医科大学の山脇先生、慶応義塾大学の松崎先 生、臨床的な面から、島根大学の森脇先生、川崎医科大学の楠先生、群馬大学の草野先生、医療 法人東恵会星が丘マタニティ病院の金子先生の各先生にご発表いただき今後のFD研究に非常に 有意義な議論がなされました。 まだまだ、不明なところが多い疾患です。今後もますます研究を進ませていかなくてはなりま せん。次回以降もこの研究会が中心に FD の病態解明、治療の確立に向けて活発に行っていくこと を期待します。今回は、会員の皆様のご協力により、素晴らしい研究会を開くことができました ことを御礼申し上げ、ご報告に変えさせていただきます。どうもありがとうございました。 第6回機能性ディスペプシア研究会 樋口和秀 会長 (大阪医科大学消化器内科) 会 期:2012 年 11 月 8 日(木)10:00 − 16:40 会 場:シェラトン都ホテル大阪4階「大和の間 東」 【研究会風景】
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