体位性蛋白尿を判定するための前彎負荷試験前後における尿中 蛋白解析

演題No41
●体位性蛋白尿を判定するための前彎負荷試験前後における尿中
蛋白解析
久保田 亮1、楠木 杏奈1、大平 賢太郎2、入野 さつき2、酒井 伸枝3、川上 保子1、
金森 きよ子1、下村 弘治1、芝 紀代子2
1
文京学院大学保健医療技術学部臨床検査学科、2文京学院大学大学院保健医療科学研究科、
3
埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科
【はじめに】
③SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-
体位性蛋白尿は安静臥床では尿蛋白が陰性であ
PAGE)法
り、立位では尿蛋白陽性となる蛋白尿をいう。そ
負荷前後で総蛋白濃度を調整した尿検体を用い、
の予後は良好とされているため、多数の例におい
SDS-PAGEを行った。泳動したゲルは銀染色「キ
て詳細な検査はなされておらず、体位性蛋白尿に
ットワコー(和光純薬工業)を用いて銀染色を行
どのような蛋白が含まれているか不明な点が多い。
った。
そこで本研究では安静時に採尿した尿を負荷前尿、
④ウエスタンブロット法
5、10、15分間の負荷を与え採尿した尿を負荷後
SDS-PAGE後、α1-m、RBP、β2-mの抗体を使
尿とし、これらの尿中の各蛋白成分の変動につい
用し、それぞれウエスタンブロッティングを行っ
て比較したところ、2,3の知見が得られたので
報告する。
た。
【結果】
【対象】
①負荷前後における尿蛋白の増加率
同意の得られた文京学院大学保健医療技術学部
負荷前に比べ、負荷後上昇したのは、尿試験紙
臨床検査学科の男子学生17名(年齢21∼22歳)の
法では5分負荷では17名中10名(59%)
、10分負荷
前彎負荷試験前後の尿を用いた。
では4名(24%)、15分負荷では3名(18%)、総
【方法】
蛋白定量法では5分負荷では17名中9名(53%)、
1.前彎負荷試験方法
10分負荷では7名(41%)、15分負荷では17名中14
第二腰椎の突起部に直径4cmの塩化ビニル棒を
地面と平行になるよう両腕で抱え、足は膝関節を
名(82%)であった。
②SDS-PAGE法
伸ばし、肩幅に両足を開き、下肢軸の延長線と躯
負荷前が尿蛋白試験紙陰性であり、負荷後に蛋
幹軸の延長線上の角度を約20°になるよう上体を
白が上昇していた人の尿についてSDS-PAGEを行
後ろに反らせた。
ったところ、負荷後はアルブミンより高分子領域
2.採尿方法
および39.2 kDaと27.7 kDaのバンドが濃染してい
安静時に採尿した尿を負荷前尿とし、約180 ml
の飲水後、前彎負荷試験を行い、安静後採尿した。
た。
③ウエスタンブロット法
負荷時間とその後の安静時間は合わせて35分にな
るよう調整した。
負荷前が尿蛋白試験紙陰性であり、負荷後に蛋
白が上昇していた人の尿について、負荷前後のα
3.測定方法
1
①試験紙法
α1-m、β2-mについては負荷後において、負荷前
-m、RBP、β2-mの分子サイズを確認したところ、
ウロペーパーⅢ栄研(栄研化学)を用いUS1000(栄研化学)で尿蛋白を測定した。
に存在する低分子のバンドが消失し、高分子側に
バンドが見られた。
②各蛋白成分の定量
【まとめ】
自動分析装置(Accute、東芝メディカル)を用
今回、前彎位に負荷をかけることにより、低分
いて、総蛋白、α1-ミクログロブリン(α1-m)、レ
子蛋白が高分子化するという非常に興味深い知見
チノール結合蛋白(RBP)
、β2-ミクログロブリン
が得られた。
(β2-m)を測定した。
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生物試料分析 Vol.35 No.1 2012