イヌのブルセラ症の新規診断手法の 開発 度会 雅久(わたらい まさひさ) 山口大学農学部 獣医公衆衛生学教室 背景 • ブルセラ属菌は人獣共通感染症の一つであるブル セラ症の原因菌で、人では波状熱、動物では流産・ 不妊を引き起こす。 • 犬のブルセラ症の原因菌はBrucella canisであり、 我が国においても集団感染事例が報告されている 。 • 現在、血清学的診断法として、全菌体を抗原として 用いた試験管凝集反応が行われている。 簡便で特異的な診断法が ない。 B. canisはBSL3に属する細菌 だが、イヌのブルセラ症に関する 法的規制はない。 イヌのブルセラ症の疫学調査 目的 (従来技術の問題点) • 従来の診断法(試験管凝集反応)には、特異 性に問題がある • 特異性の高い抗原を検索し、診断用抗原とし ての有用性を検討 • より正確な血清学的診断法の確立 新技術の基となる研究成果・技術 ー抗原吸着ビーズを用いた血清診断ー z加熱(105̊C, 15分)することにより菌体抗 原を抽出した。 z抗原を直径0.1mmラテックスビーズに吸着 させ、診断液とした。 z診断液50μlと10倍希釈した被検血清50μlを 混合した。 z15分間室温に放置し、凝集像を観察した。 診断用ラテックスビーズを用いた血清反応像 陰性血清 陽性血清 陽性血清(右)は大きな凝集塊が認められ、陽性と判定される。 一方、陰性血清(左)には変化は認められない。 加熱抽出抗原の構成蛋白質 KDa CCB WB specific antigens 50 Antigen 1: Rhizopine-binding protein precursor (RBP) 25 Antigen 2: Unknown 15 Antigen 3: Superoxide dismutase (SOD) 10 Antigen 4: Hypothetical protein SODとRBP抗原を用いたウエスタンブロッティング kDa P N 100 75 RBP SOD 50 CBB P:positive血清 N:negative血清 WB 抗原吸着ラテックスビーズを用いた凝集反応 160 SOD ブルセラ陽性血清 RBP SOD+RBP Control SOD ブルセラ陰性血清 RBP SOD+RBP Control 320 640 1280 新技術の特徴・従来技術との比較 • 精製した抗原を用いているため、診断の特異性が 向上するものと考えられる。 • 従来の診断用抗原(全菌体)は試験管凝集反応に 限られていたが、精製抗原ではその他の方法(イム ノクロマト等)に応用可能である。 • 従来の診断法では研究室レベルの施設が必要だが、 より簡便な診断法が開発できれば誰でも診断が可 能となる。 想定される用途・業界 • • • • イヌのブルセラ症の診断キット。 イムノクロマト法への応用。 より簡便で迅速な特異的診断法の開発。 獣医だけではなく、イヌの飼い主、繁殖業者(ブリー ダー)でも診断可能。 • 国内におけるイヌの飼育頭数は約1,252万頭に達し 、全世帯の1/5がイヌと暮らしている。 • 潜在的需要は非常に高いことが予測される。 実用化に向けた課題 • 新規抗原蛋白質が簡便な診断法に応用可能 かどうか検討の必要がある。 • 診断基準確定のための、実験データの蓄積 が必要である。 • ロット差の克服。 企業への期待 • 簡易診断法の技術を持つ企業との共同研究 を希望。 • イヌの血清を広く収集するのが困難であるた め、イヌの繁殖、飼育、販売を行う企業との共 同研究を希望。 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称:ブルセラ属細菌感染の検出方 法及び診断キット • 出願番号:特願2010-23093 • 出願人:山口大学 • 発明者:度会雅久 産学連携の経歴 • JST平成20年度シーズ発掘試験(発掘型)に 採択。 問い合わせ先 山口大学 ライフサイエンス支援室 産学連携コーディネーター 殿岡裕樹 TEL 0836-85-3062 E-mail [email protected]
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