高分解能・角度分解・大気圧下軟X線発光分光システムの開発 Development of high resolution / angle resolved / ambient pressure soft X-ray emission spectroscopy system 宮脇 淳 1,2,3、山添 康介 1、小瀬川 友香 2、○原田 慈久 1,2,3 (1 東大新領域・2 東大物性研・3 東大放射光) MIYAWAKI, Jun1,2,3; YAMAZOE, Kosuke1; KOSEGAWA, Yuka2; HARADA, Yoshihisa1,2,3 (1Grad. Sch. Frontier Sci., The Univ. of Tokyo; 2ISSP, The Univ. of Tokyo; 3SRRO, The Univ. of Tokyo) 軟 X 線発光分光は、元素選択性、バルク敏感性、電子軌道選択性などを兼ね備え、種々の界 面で実現する電子状態を選択的に観測することのできる手法として世界中で注目され、ここ数年 の爆発的な分解能の向上と角度分解などの導入により、そのニーズは急速に高まっている。そこ で我々は、従来を凌駕するエネルギー分解能 E/ΔE~10000 を有する超高分解能軟 X 線発光分 光装置を開発し、共同利用ユーザーに開放してきた。本 S 課題「大気圧下の角度分解型超高分 解能軟X線発光分光システムの開発(2014~2015 年度) 」では、軟X線発光分光の持つ試料環 境に対する自由度の高さを活かした種々の実験[1-4]に加えて、大気圧下に試料を置いて、真空 隔離窓なしで軟 X 線を照射することが可能な差動排気システムを完成させ、積極的に軟 X 線発 光ならではの環境下で実現する実験を選択的に実施してきた。それと並行して、分光器のみを水 平面内で回転させることにより、固体内素励起の運動量分散の取得を可能にする改良を施した。 運動量分散は可視光励起では得られない固体内素励起の全貌を明らかにし、近年実験とともに急 速に発達しつつある内殻分光計算技術と合わせることで、固体の磁気的、光学的性質、輸送特性 に対する理解を格段に深めることができる。また差動排気と分光器回転の組み合わせにより、従 来の真空隔離膜を用いた手法では不可能であった、溶液、気液界面、固液界面の軟X線回折と分 光の組み合わせによる新たな溶液科学を実現することができる。下図に、差動排気システム (a) と分光器回転架台(b)を示す。 (a) (b) これらのシステムの融合により、軟X線発光分光はもはや超高真空を必要としない、試料を選 ばない、より汎用性の高い手法へと昇華し、来るべき軟X線領域の高輝度光源においても中心的 な分光ツールとなることが期待される。発表では装置開発の到達点についてまとめ、今後期待さ れる利用の方向性について議論する。 [1] D. Asakura et al., J. Phys. Chem. Lett. 5 (2014) 4008. [2] D. Asakura et al., Electrochem. Commun. 50 (2015) 93. [3] H. Kiuchi et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 18 (2015) 458. [4] Y. Nanba et al., Chem. Mater., accepted.
© Copyright 2025 ExpyDoc