Untitled

非実在探偵小説研究会3号 目次
五の 悲 劇
首 切 り パズ ル
桜 居 志 連 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
二丁
麻 里 邑 圭 人 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
読み 切り短 編
フォー ル・バニッシュ
佐 倉 丸 春 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
麻 里 邑 圭 人 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
潜入者
レ ビュー
リ レー 小 説
あ じ さい ク ロー バ ー Z( 筑 地 朱 恵 、皐 月 あ ざ み 、根 倉 野 蜜 柑 、
二 〇 一 一 年 度エ ア ミ ス 研 ミ ス テ リ ラン キン グ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
極 私 的 飛 鳥 部 勝 則 全 短 編 レ ビュー
企画
企 画1
企 画2
羊 毛 邸の 殺 人
二 成 真 司 、桜 居 志 連 、タ イ ガ ー 田 中 ) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
表 紙・扉 ペー ジ イ ラス ト
ウス ダ ア ヤ
私 はこ う 予 想 し た ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「 羊 毛 邸 の 殺 人 」執 筆 陣 に よ る ネ タ バ レ 対 談 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「 羊 毛 邸 の 殺 人 」解 決 編
158 133 30
147
47
127 120 51
4
羊毛邸の殺人
【 序 章】
あじさいクローバーZ
は、いわゆる補習塾であるためその傾向は顕著である。
はっきり言えば、それはこっちが言いたい台詞だ。やる
気のない生徒。成績を上げろ、何としても志望校に合格
ふちだ とうこ
毎 年 、夏 が 近 付 い て く る 度 に 、渕 田 塔 子 は 憂 鬱 に な る 。
させろとうるさい上司。学生はまだいい。勉強していれ
なかった。むしろその逆で、絵に描いたような不良だっ
もっとも彼女自身が中高生の頃はここまで真面目では
ばい い の だか ら 。
今年で三十五歳、一八〇センチを超えるスラリとした
高身長の彼女の職業は、中高生を対象とした塾の講師で
。
ある。世間、主に学生たちが夏休みで騒ぐ間が、この仕
―
たと言っていい。そんな彼女が、何を間違ったか今では
事 にと っ ては 修 羅 場 とな る 。夏 期 講 習
今 や ど の 塾 も 行 う 、夏 休 み の 間 の 集 中 授 業 。こ の 期 間 、
塾講師なんてお堅い職業に就いているのだから、人生何
授業が終われば、いつものように上司から残務を命じ
生徒にもよるが、普段よりも多くのコマ数の授業を受講
増えるため、その分講師の休みが少なくなる。彼女が勤
ら れ 、 結 局 終 電 に 急 い で 駆 け 込 む 。『 リ ク ナ ビ 』 に 書 い
が起 こ る か分 か らな い も の だ。
める塾では、週休二日が一日となり、普段なら夕方から
てあった、就業時間と全然違う!
する生徒が大半だ。講師の数は変わらないが、コマ数が
始まる授業は、朝の九時から夜の九時までビッシリであ
と なっ て は 懐 かし い 。
推理小説
―
。日 々 、ス ト レ ス と 激 務 に 追 わ れ る 彼 女 が 、
空席に座り込むと、彼女は一冊の文庫本を取り出す。
と、思ったことが今
る。
生徒たちも「何故夏休みに塾なんかに来なければなら
ないのか」とやる気のある者は少ない。彼女が勤めるの
羊 毛 邸の 殺人
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赤部光司は波立つ海を眺めながら呟いた。一七〇セン
あかべ こうじ
「 そ れに し て も、 遠 く まで 来 たも ん だ な 」
まで読んでいたので、残るは数十ページ。読む。貪るよ
チの痩せた体格の、今風の好青年である。海上の風が、
数年前に見付けた数少ない癒やし。行きの電車で最終章
うに。仕事が始まるまでに読んでしまいたかったが、読
おさだ
光司」
潮 の香 り を 運ん で く る。
「疲 れ た のか ?
と、言うのは長田まさしだ。赤部と年齢、身長共にそ
う 変 わ ら な い が 、彼 に 比 べ る と や や 地 味 な 印 象 を 受 け る 。
。余韻に浸
み終える前に駅に着いてしまったため、今日は一日中結
末が 気 に なっ て 仕方 な か っ た。
―
る。今回も、上手に騙してくれた。やはり、この作家に
「そりゃ、多少はな。でも、まだ大丈夫だよ。心配して
本を閉じる。まさか、こう落とすとは
ハズレはない。彼女は本を鞄にしまい込み、携帯電話を
く れて あ り がと う 」
東京から新幹線で岡山まで、更に電車で移動して、今
取り出す。最近買い換えたスマートフォン。そう、推理
は船で瀬戸内海に浮かんでいるのだ。移動に疲れていて
小説を読み終えたら、彼女が必ず見にいくブログがある
のだ。多くの作品を、丁寧に解説してくれている。慣れ
も 不思 議 では な い 。
見 せ て いる 。
ご
み らんと
うはずであるが、快活そうな外見が実際の歳よりも若く
もとい、好中年は五味乱人。二人とは二回りほど歳が違
ナイ スミ ドル
煙草を吹かしながら二人を茶化す中肉中背の好青年、
こ こは 船 なん だ か ら 、行 き 場に 困 る だろ う 」
「おいおい、こんな所でイチャつかないでくれないか。
いる 。
する孤島、通称『黄金島』を目的地とし、航跡を進めて
おう ごん とう
船は岡山の南にある漁村から、南に約7キロ沖に位置
な いフ リ ック 入 力 で 、文 字 を打 ち 込 む。
『 黄 金 の 羊 毛 亭 』。
【 第 一 章】
Ⅰ
空は快晴。海面に照り返した日差しが眩しく、夏の訪
れ を 告 げて い た。
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「い 、イ チ ャ つ く っ て 、何 言 っ て る ん で す か 山 田 さ ん ! 」
もっとも、わざわざあの島に行きたがる奴なんざ、ほと
に 行 く に は 、こ う や っ て 送 っ て や る し か 手 が な い ん だ な 。
」
当然、その
今 はた だ 、変 わ り 者 が邸 を 造っ て 住 んど る だけ だ ぞ 」
や しき
が 、あ の 島 に は 何 も な い 。昔 は 金 山 が あ っ た ら し い が ね 。
「しかし、あんたらも変わってるね。取材とか言ってた
そ れ から 、 まじ ま じ と二 人 を 見て
ん ど い ない ん だ から 、 仕方 な い ん だが
―
五味のからかいに長田は頬を赤らめ、必要以上に焦り
始める。
やまだ たかお
「長田君、仕事の時は、五味と呼べといつも言っている
だろ う 」
五 味 の 本 名 は 山 田 隆 夫 と い う 。彼 は 雑 誌 の 記 者 で あ り 、
五味乱人、というのは彼のペンネームだ。仕事中自分を
―
名前の由来はそこから来ている
江戸時代には金山があった黄金島だが
今では、ただの小さな孤島となっているのだ。そんな島
本名では呼ばないし、周りにも呼ばせないというのが彼
のポリシーらしい。長田は彼の勤める出版社で、バイト
金が掘り尽くされた
のカメラマンを務めており、赤部は五味の助手という形
に 、 わざ わ ざ 邸を 建 て て、 住 んで い る 者 がい る 。
―
で 、 今回 の 取 材に 同 行 して い る。
「 そ の 変 わ り 者 の 、 相 村 薫 さ ん に 用 が あ る ん です よ 。こ
あいむら かおる
「 若い 奴 らは 、 元 気 でい い ねえ 」
れ で も 、ア ポ を 取る の に結 構 苦 労 した ん です よ 」
「ふーん。しかし、あんな変わり者を取材して、面白い
船を操縦するのは初老の漁師である。黄金島に行くた
め に、 漁 村 で 船に 乗 せて も ら って い る のだ 。
。今やミステリファンで、この名前を知ら
記事 に な るの か ね」
相村薫
―
「全くです。それにしても、船長。今回は無理なお願い
を 聞 い て頂 き 、本 当 に あり が と うご ざ い ます 」
ぬ者はモグリである、と断言する者さえいるほどの有名
人である。しかし、逆にミステリファン以外には、ほと
吸っていた煙草を携帯灰皿に押しつけ、五味は丁寧に
礼を す る。 赤 部 と長 田 も、 慌 て て 五味 に 続い た 。
んどその名は知られていない。正しく知る人ぞ知る有名
なければ、ミステリ評論家でも、ましてや編集者でもな
人、それが相村氏だ。だが、相村氏はミステリ作家でも
まさ
「いや、いいってことよ。大したことじゃないからな」
色黒 の 漁 師 が無 愛 想に 答 え る。
「あの島には定期の連絡船とかの類はないからなあ。島
羊 毛 邸の 殺人
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ある。
運 営 し て い る ミ ス テ リ ブ ロ グ 、『 黄 金 の 羊 毛 亭 』 な の で
つの記事を掲載するという読者への気配りがある。他の
いる要因の一つに、一作品に、ネタバレ有り、無しの二
大きな影響力を持ち、今も尚多くのファンに支持されて
までの知名度、注目度を誇るブログは珍しい。羊毛亭が
「ミステリのファンなら、大体知ってますよ、相村さん
ジャンル以上にネタバレが致命的になるミステリという
い。相村氏の名を業界に響き渡らせたものは、何と氏が
のことは。多分、目玉の記事になるんじゃないですか」
なく、丁寧に考察された記事を、長期にわたってコンス
ジャンルにおいて、この気配りは嬉しい。手を抜くこと
「そんなもんかね。まあ、俺ぁ、推理小説なんざほとん
タントに更新を続けた結果、徐々に読者の数は増え、ブ
赤 部 が会 話 に 割り 込 む 。
ど 読 ま ねえ か ら 、分 か らな い ん だ けど な 」
では、プロの作家も、自分の作品が氏のブログでどのよ
ログそのものの影響力も自然と大きくなっていった。今
「長田君も、ミステリを読み出したのは最近ということ
うに評されるのかを気にしている、という噂すらあるの
船 長 は投 げ やり に 答 えた 。
だったが、相村さんのブログくらいは見にいったことが
だ。実際、氏のブログで、デビュー作が取り上げられな
に 消え て し ま う、 と いう 都 市 伝説 も あ るほ ど で ある 。
かったり、作品を扱き下ろされてしまった作家は、すぐ
あ るだ ろ う? 」
もとい
長田は他の二人とは違って、ミステリを読み出したの
―
材に向かっているというわけだ。これまでにも、ミステ
そして今回、記者である五味が、相村への初めての取
か け て いる 、 とい う 次 第だ 。
リファンの中では有名であり、ミステリ界における影響
最近ミステリにハマり
がここ数ヶ月と歴が浅い。赤部に影響されて
―
「 は い 、 読 ん だ 本 の 『 ネ タ バ レ 記 事 』 を 読 ん で か ら 、『 ネ
力も大きい彼へ取材しようと試みた者は数多かったが、
彼に半ば強制的に読まされて
タバレ無し』の記事を読んで、次に読む本を探すのが、
り続けてきた。そこで、以前から氏と交友があった赤部
相村氏自身があまり表に出たがる性格ではないため、断
『黄金の羊毛亭』は老舗のミステリブログである。ミ
の コ ネ で 、何 と か 取 材 の ア ポ を 取 る こ と に 成 功 し た の だ 。
最 近の 日 課 に なっ て いま す ね 」
ステリをメインに扱うサイトやブログは数あれど、ここ
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この快挙にデスクは大喜びで、記事が書けた暁には必ず
「 な 、 何 て こ と 言 う ん だ よ …… 縁 起 で も な い 」
を 挟 む。
肩書きが『ミステリブログ管理人』って、収入があると
「と こ ろ で 、相 村 さ ん っ て 、仕 事 は 何 を し て る ん だ ろ う 。
せいでも当然あったのだが、心の何処かでトラブルを求
なかった。それは、最近目覚めたミステリ好きのサガの
呆れ顔で否定する長田だったが、内心はまんざらでも
あき
目玉の記事として大々的に取り上げることを宣言した。
思え な い んだ け ど」
る。
もともと資産家だったのさ」と、五味があっさりと答え
いけ ど 、 やっ ぱ り楽 し み だ よ」
じゃないか。そりゃ、事件が起こってほしいとは思わな
「だ っ て 孤 島 に 浮 か ぶ 奇 妙 な 邸 、っ て 、ま ん ま『十 角 館 』
い。
めてしまう、単純な男心のせいでもあったのかもしれな
「一生暮らしていく分には、困らない財産くらいはある
長 田 が 素 朴 な 疑 問 を 口 に す る と 、「 あ あ 、 相 村 さ ん は
という話だよ。連れ添いに先立たれた上に、子供もいな
「 じ ゅ っ か く か ん …… ? 」
長 田 は その テ ン ショ ン につ い て い けな い 。
興奮気味の赤部に対して、十角館とやらが分からない
じゅ っかっかん
かった相村さんは、これからは一人静かに暮らそうと、
やしき
黄 金島 を 買い 取 っ て 、邸 を そこ に 造 った ら し い」
「 あ あ 、な る ほ ど。 金 持ち な ん で すね 、 要す る に 」
人』って本があるんだよ、綾辻行人って作家の。傑作だ
あやつじ ゆ き と
「 あ あ 、 オ サ は ま だ 読 ん で な か っ た っ け 。『 十 角 館 の 殺
しま う と いう の は、 い か に もミ ス テリ マ ニ アら し い 。
か ら 、 東京 に 戻っ た ら 是非 読 ん でみ る と いい よ 」
そうなったからと言って、わざわざ孤島に邸を建てて
「も っ と も ど う も そ れ だ け で は な い ら し い ん だ け ど …… 」
「おい、二人とも。騒ぐのもいいが、そろそろ到着だ。
十角館も気になるが、それよりも今は、さっき五味が
た。
五味が指をさす方を見ると、島はもう間近に迫ってい
見ろ 」
「 と、 い うと ? 」
五味 の 意味 深 な 言 葉に 反 応し た 長 田で あ った が 、
「それにしても、俺たちが向かっているのは孤島の邸。
し か も 、 そ こ に は 変 わ り 者 の 主 人 が 住 ん で る …… っ て な
ると、ちょっとワクワクしてこないか?」と、赤部が口
羊 毛 邸の 殺人
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「まあ、相村さんが一人で住んでるだけなんだ。使用人
が何人かいるという話だったが、それなら十分すぎる大
言いかけていたことが気になる。彼はいったい何が言い
た か っ た の か 。島 に 着 い て 、一 段 落 し た ら 聞 い て み る か 、
き さ だ ろう 。 ほ ら、 行 くぞ 二 人 と も」
見 え た。
「あ の 二 人 の ど ち ら か が 相 村 さ ん ?
女 の人 だ った の ? 」
女が二人、五味たちがいる船着き場に近付いてくるのが
三人が荷物を持って歩き出そうとしたその時、邸から
と そ の 時は ま だ 、長 田 は気 楽 に 考 えて い たの だ 。
Ⅱ
「 じゃ あ 、一 週 間 後 に迎 え に来 た ら いい ん だな ? 」
いが、長田は勝手に、相村は男だと思っていた。インタ
薫という名前ならば、性別がどっちでもおかしくはな
ーネットで有名と聞くと、どうしても相手が男だという
「ええ、よろしくお願いします。わざわざありがとうご
ざ いま し た 」
そうこうしている間に、件の二人は、どんどん五味た
くだん
ぞ 。 さ っき 言 っ てた 、 使用 人 か 何 かじ ゃ ない か ? 」
「いや、俺は実際会ったこともあるけど、男の人だった
前 提 で考 え て しま う 。
「あ あ 、台 風 が 近 付 い と る よ う だ か ら な 。気 を つ け ろ よ 」
五味たちを船から降ろすと、船長は元の漁村に戻って
い った 。
黄金島は小さな島なので、すぐそこには『羊毛邸』の
姿 が見 え る 。
を華麗に着こなした、いかにも仕事ができる女、といっ
ちに近付いてくる。片方はこの暑いのに、パンツスーツ
島には、かつてあったという金山の名残は全く見受け
たイメージの女性だった。歳は二十代の半ばだろうか。
「 船 長 さ ん が 言 っ て た 通 り 、 本 当 に 何 も な い ね …… 」
られない。多少木々が生い茂って、森のようになってい
フォ ー マル 仕 様 の眼 鏡 も実 に 似 合 って い る。
紺のワンピース、ロングのエプロンスカートと、本格指
ド喫茶で見るようなタイプではなく、白いフリルに、濃
も う 一 人 は い わ ゆ る 、『 メ イ ド 服 』 を 着 た 女 性 。 メ イ
る部分が邸の後方に見えるだけで、あとは岩山が広がっ
て いる だ け だ った 。
「邸 も 、 思っ た より も 小 さ いん だ な」
赤 部 は 少し 残 念そ う だ 。
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し れ な い。
ちは幼い。二十代の前半、もしかしたら、まだ十代かも
向(メイド服に詳しいわけではないが)に見える。顔立
ま っ て ご迷 惑 だ った で しょ う か ? 」
「あ、あの、もしかして、こんな大人数で押しかけてし
ら ち らと こ っ ちを 見 て いる よ うだ 。 非 常 に気 ま ずい 。
たまらず赤部がそう尋ねると、芥川が慌てたように首
を 振 っ て 「 い え い え 、 そ ん な こ と は あ り ま せ ん よ 。 ……
「 お待 ち し てお り ま した 。 五 味乱 人 様御 一 行 で すね 」
「え え 、 そう で す」
ただ、貯蔵庫の食料が思っていたよりも足らなくてちょ
なからい よ り こ
まで も な い。
それを聞いて、五味たち三人も不安になったのは言う
「「「…… 」」」
っ と不 安 なだ け で し て」
「私、相村の秘書を務めております、半井依子と申しま
す」
り
と 、 パ ンツ ス ー ツの 女 性 が、
あくたが わ ゆ
と、メイド姿の女性が自己紹介して、二人揃って丁寧
「 私は 、 メ イド の 芥 川 百 合で ご ざ いま す 」
「 え えと 、 相 村さ ん は どち ら に? 」
と、沈黙を破って五味が努めて明るい口調で尋ねた。
な お 辞儀 を す る。
使用人がいるとは聞いていたが、まさか秘書までいる
もっとも、二人はわざわざ船着き場まで(大した距離で
はないが)迎えに来てくれたが、肝心の主人がそこには
とは。有名なブログ管理人とはいえ、果たして秘書が必
要 なの か ?
いないのは解せない。案内するというほどの距離もない
と長 田 は不 思 議 に思 っ た 。
「 あ あ 、 電 話 で 応 対 し て 頂 い た …… 。 初 め ま し て 。 私 が
のだ。
続 き は 、「 非 実 在 探 偵 小 説 研
究 会 3 号 」で お 楽 し み 下 さ い 。
記 者 の 五味 で す」
「 助手 の 赤部 で す 。 よろ し くお 願 い しま す 」
「ど 、 どう も 、 カメ ラ マン の 長 田 です 」
自己紹介を終えた後、何故か半井は何も言わずに長田
と赤部の二人を凝視している。何か悪いことでもしてし
まったのだろうか。更に、芥川と名乗ったメイドも、ち
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