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光村図書
シーズン・インタビュー
『つなぐ デザイン』
佐藤 卓
第1回 光村図書のロゴマーク
2013年12月,光村図書のシンボルマークとロゴタイプが生まれました。
デザインしてくださったのは,
グラフィックデザイナーの佐藤卓さん。今
回は,
このロゴマーク制作時のエピソードについてうかがいます。
ロゴマークのデザインについては,
「ロゴマークについて」
で詳しくご紹
介しています。
そちらも合わせてご覧ください。
◆ 初めて依頼にうかがったとき,光村図書は佐藤さんの目にどう映っていたのでしょうか。
教科書をつくり続けてこられているということで,
自分でなんとなく抱いていたイメージがありました。
そ
して実際にお話をうかがって感じたのは,
「あ,やっぱりそうなんですね」
ということ。変化したり,新しいもの
が次々と生まれたりする世の中で,守り続けているものがある会社なんじゃないかという想像が外れてい
なかったので,
うれしかったですね。
それに,僕は,子どものための番組づくりに関わるなかで,教育の大切さへの思いを自分なりにもってい
るので,
この出会いはとてもうれしかった。
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でも,
その段階ではまだ見えるものが何もないから,思いが共有できても,
それを最終的にどう形にする
かというプレッシャーは当然ありました。思いに共感すればするほど,
プレッシャーは大きいんですよ。
◆ 今回,かざぐるまをモチーフにデザインしていただきました。かざぐるまは,光村図書の原点と
もいえるものです。
光村図書には,
「かざぐるま」
という,会社にとって
とても意味があり,
多くの人が頭に思い描けるいい
財産がある。
でもだからといって,
それに頼ってし
まっていいんだろうかという気持ちも,
どこかにあり
ました。
「かざぐるまもいいけど,他にもあるんじゃな
いの」
と思われてはいけませんしね。常にそうです
が,本当に,向こう側の見えない森の中を探し回る
みたいな感じです。
昭和 25 年,
光村図書が初めて刊行した小学校国語教
科書「かざぐるま」
読本。
かざぐるまの形にしても,単にそれを絵にするだ
けではどうも納得ができませんでした。
「物語性」が
浅いような気がして。
だけど,
うちの会社のデザイ
ナーと相談しているうちに,
「折り紙を折ることで形
が見える」
ということを発見したんです。
折り紙でつくったかざぐるまに着目。
白地に赤い円を描
いた紙で折ると,美しいかざぐるまの形が現れた。
いつも思っているのは,
「意味のない形に頼らない」
ということ。
よくわからない形を自分でつくるのでは
なく,
ある方法によって形が現れるというデザインでありたいんです。
そこに意味と説得力が生まれるから。
この段階で,意味のある形はできたなと思いました。
でも,
まだ納得できなかった。
◆ 何が足りなかったのでしょう。
20 世紀までのシンボルマークなら,
ここまででよかったんだろうな。
でも今は,
できあがったものをただ
見せつけられるのではなく,
そこから何か動き出すというようなしかけが必要だと思うんです。動きが生ま
れたり,
人と人との間に会話が生まれたり。
シンボルマークのような
「モノ」
との間にも,
インタラクティブな
関係がつくれるのではないか。
それが僕の考え方です。
モノと人との関係は刻々と変化する。
だから,
この
形にももっと可能性があるはずだって思ったんです。
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◆ 「これだ!」と思える瞬間が訪れたのはいつですか。
まずは,歌人・塚本邦雄の話をしなければなりませんね。僕は以前,彼の短歌に感動したことがあるん
です。
「句またがり」ってご存じでしょうか。五七五七七の句をまたいで言葉を乗せるという詠み方のことで
す。
つまり,句の切れ目と言葉の切れ目が異なる。
彼はそれを使って,すばらしい短歌をたくさん詠んでい
ます。初めて出会ったときには,背中がゾクゾクして,短歌で世の中を変えようとしたその志に感動しまし
た。以来,
デザインにもこれと同じことが当てはめられるんじゃないかと,
ずうっと思っていたんですね。
さっきお話ししたように
「このままでいいはずがないな」
と納得できずにいたときに,
そのことを思い出し
たんです。二つが急に頭の中で重なってね。
「あっ!ちょっと待てよ」
と。
そうするともうワクワクするわけで
す。試してみたくてしかたがなくなる。かざぐるまを並べたときの形,
その間をどう取ればいいかを早く見た
くてね。会社に着くやいなや,並べてみました。
かざぐるまを並べ,
そのつながりの部分をシンボライズした。
そして,
「これだ!ここの形だ!これでいける!」
と。
いつも,気づくのは頭の中での
「あっ!」
という瞬間。一
瞬の出来事。
まさに,
「デザインあ」
ですね(笑)。
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◆ 三つの案をご提案いただきましたが,満場一致でこのデザインに決まりましたね。デザインの力
だと思います。
クライアントには,いろいろな方向性のデザインをご覧いただきたいので,
いくつか案をご提案するよう
にしています。
ただ,
無限の可能性が感じられるようなものって,1個見つけられるかどうかという確率だと
思うんです。
だから,
さっきのような瞬間って,
本当に
「見つかった!」
という気持ちなんですよね。
でも,
デザイナーは常に謙虚でいなければなりません。皆さんが本当にそれをいいと思ってくださるかど
うかは,全くわかりませんでした。結果,僕がイメージしたことを感じてくださり,皆さんの気持ちがまとまっ
たのだとしたら,
こんなにうれしいことはないんですよ。本当に。決まったときは,
「やったあ!」
と,
一つにな
れた喜びでいっぱいでした。
こうなるともう,
しばらく幸せでいられます。
だからデザイナーをやめられなく
なっちゃうという感じですよ
(笑)。
◆ 社員一同,大切にしていきます。
うれしいです。
なんとなく,
デザインっておしゃれなもの,かっこいいものをつくることだって誤解されて
いる部分があるんですよね。
でも,
そうではなく,僕は,
デザインって
「間に入ってつなぐこと」
だといつも考
えています。
このロゴマークも,
そういうものになればうれしいなと思います。
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Profile:
佐藤 卓
(さとう・たく)
グラフィックデザイナー。1955年,東京生まれ。1979年東京藝術大学デザイン科卒業,
1981年同大学院修了。株式会社電通を経て,1984年佐藤卓デザイン事務所設立。
金沢21世紀美術館や国立科学博物館シンボルマーク,武蔵野美術大学美術館・図書
館ロゴのデザインなどを手がける。他に,パッケージデザイン,
グラフィックデザインな
ども行う。
また,NHK Eテレ「にほんごであそぼ」の企画メンバーおよびアートディレクター,
「デザ
インあ」総合指導,21_21 DESIGN SIGHTディレクターも務めるなど,活動は多岐にわた
る。著書に『デザインの解剖』
シリーズ(美術出版社)
,
『クジラは潮を吹いていた。』
(DNPアートコミュニケーションズ)など。
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