サケ属魚類の発達と成長-2.初期生活期におけるサケの発育段階

5列
角 . と卯口
l990
サケ 属 魚類の発育と 成長
2. 初期生活 期 における サケ の発育段階
山
帰
2@ ,
・
Masahide@ Kaeriyama
Developmental@
1990.@ Development@
stages@ of@ chum@
Hokkaido@Salmon@Hatchery@(159):@
ing@ stage@ (50-80@
from@
fry@ to@ fi gerli
mm@
Oncorhynchus
during@ early@ life@ period . Tech . Rep
salmon@
stages@
of@ chum@ sal
on@
during@ early@ life@period@
d@ into@ egg@ phase , 3evin@ phase@ (20-38@ mm@ FL) , fry@ step@
mm@
FL) The@ fingerling@step@
・
fingerling@step@ (50-120@
秀
45-49
Abstract:@ The@ developmental@
Cassll
and@ growth@ of@ the@ genus@
雅
FL)@ and@
g@ was@
post@
showed@
fingerling@
as@j
veU
サケ は, これまで,胎化してから沖合へ
stage@
was@
(38-50@
mm@
were
FL) 。
divided@ into@ pre-fingeri
(80-120@
mm@
FL) . The@ phase
le
活期の発育過程について述べてみたい。 な
,精細は拙著 (帰山, 1986, 1988a.b)
移動するまでの初期生活期 を一括して「稚
お
届、」と呼称されることが多かっ
を参照していただければ幸いであ る。
発育段階説 生物の個体は,その種の進
これは明らかにおかしなことである。初期
生活期 におけるサケは,その生月、
場所を河
化の歴史を背負いながら,時間の経過の中
川の産卵床から流れの緩やかな細流へ, さ
で環境に適応しながら発育し,成長し,子
らに雪解け水で増水した本流へ,そして海
孫を残して死んでいく。一般に,生物は発
への人口である汽水性の河口域から沿岸域
育に伴って成長し,生活能力の向上に必要
へと広げる。 また,その摂餌 戦略は,産卵
なエネルギー獲得を機能化するために形態
床 では卵黄をエネルギー源とする内部栄養
を変え,さらに生活場所の拡大や変遷をは
・待ち伏
であ るが,浮上後,河川では流れに定位し
て 流れてくる動物を
ぜ , 型戦略をとるし,
, 新たな個体の質的量的変換を
この生物の発育に伴 う 質的変化を発育段階
陸海してか
らは比較的大型で運動性のあ るパッチ状に
、
つ
第 3 版 (岩波書店) によると,発育段階は
分布する餌動物を選択的に探索して摂鈍 す
も
「生物の発育過程の区分で, とくに形態・
生理・生態などが質的に異なるもの」であ
る "広域探索" 型戦m
答へと移行する。
今回は,
生物学辞典
一つの術語で表すにはあ まりに
り,「
角 、 類の発育過程では 生態に関係した
著しいた受 @ 的な変化を示すサケの初期生
エタップ 説と ,その発展といわれる E. K
一 45 一
Balon の跳躍 況卜 aは 如 on theory) が知ら
(1979) に基づく) に属する,僻化してから
れ」ており, 「ふつう形態形成の進行の面
沖合へ移動するまでの サケ の初期生活 期
から形態的に識別される発育過程の 区分」
は ,発育に伴う形態と生態の特徴から体長
を投す発H 段階と区別されている。
(fork length) 約 20mm,
38mm,
50mm,
80mm お
これまでに述べられてきたエタ ソプ況
よび120rnmにおいて段階的な 変化が認めら
(etaps theor 目は次のようにまとめられる。
れる。なお, ここではサケ の発育段階の区
魚 類の発育過程におけるエタップは成長と
分指標として体長と胎化後の時間 @)
発育が生じる過程の生活の 間隔であ り, 同
用いたが,それらが絶対的なものでないこ
一のエタップ内では量的増大はみられるも
とは言う までもない。特に,時間は生育環
のの,生こ 物の構造と機能といった 質的な新
境の水温により 大きく変異する。例えば,
しさは決して現れないし,生物の 環境に対
前回の有効積算温度の法則で説明したよ う
する関係も変わらない。エタップの境界で
に (帰山, 1989c),
は多少ともⅡ時に生能の変化を伴う生物の
の水温環境では 115 日で僻 化するのに対し
構造の質的変化がおこる。 したがって, エ
て,
タップからエタップへの移行は飛躍的な性
しまう。
サケの受精卵は 4 で
8@C ではその約半分の64 日で胎化して
サケの発育段階の名称は, B.alon
(197引
質をもつ。新しいエタップヘ移行する基本
的 刊提は光れするエタップでつくられ ,
を
をもとに,初期生活期 全体を pe ㎡ n「とし,
そ
れは継続的でもある。エタ ソプの長さは成
婬 化するまでを 卵期 (egg phase), 体長 20
長 と発育の条件しだいで変化する (7 ス子
一
ツェフ,1946
; ニコルスキⅠ
1964@
%
38mm を什伍、
期 (alevin phase),
homm
を
体長 38 一
稚 任期 け y step) および体長 50 一
者 には, Balon の跳躍 誰 が発育段階の 術
120lmmを 幼各、 朝田 neerllnestep)とし,さら
語の取 密さ @@ えば, perlod, pha ㏄, 曲 ep,
に 幼角.期は体長80mm を境に前期勅任期
韻 age な 切を除いては ,基本的にエタッ
(prト Ⅱ neer
プ 説 と同じ考えかたであるように 宙 える。
fineerllne: staee) に分けられる。 また,椎
ここでは,エタッフ説にもとづいて ,初期
任期 と幼伯期をあわせて幼稚任期 uvenile
生活期 におけるサケの発育段階について述
phase)
べてゆくこととする。
発育段階の区分はほぼサケ属荏類全体に適
初期生活期 におけるサケの発育段階
ケの発育に伴う形態の変化は,
Ⅱ
stage@ と後期 幼 任期 (Post.
り
とした (図 1@
合できるが,以下に,
サ
このような サケ の
白
出生活移行後
@
自脈伸朗) における各発育期の特徴につい
カレイやウ
ナギのような変態を経過するドラマチック
て述べる。
な発育と異なり,形態や色彩などが未発達
仔魚期
この発育期はサケ が卵模を破り
外界へ初めて 出てくる胎化時から産卵床 よ
な状態からほぼ 直進的に成体形に 達する
「直達発達」Wlぺ 日け964) を引用した沖山
一 46
me
り脱出して初めて自分で餌を取り出す浮上
一
球部のま︵二 %こ鱗葉 軽臣川 ・ぎ湘ミ e 十月挺出作 綜
ゆむ檎り二%里曲蚕豆 e 芯廿
-図
五一切
白目
生
上上
時までを表すⅡ丘ぬ、 は 産卵床の中で生活し,
親からもらった卵黄をエネルギー源
@
その摂餌様式は先にも述べたよ う に流れに
部
栄養) として,体組織の造成をはかる" こ
定位して,流下する小動物を無選択に摂食
する待ち伏せ型戦略をとる。
の時期の半ばから,パー・マークが出現す
幼魚期
サケ属魚類の形態は,
この発育
る。仔角期は頭部の発達,膜鰭の退行など
期の初期に生活様式の違いから, スマート
形態の変化が著しく,鰭条数も浮上までに
で群を形成する海洋依存型と体高や尾柄高
はほぼ定数に達し,幽門垂の 出現や肝臓の
の太い淡水依存型に
形成も観察され,各機能の分化が顕著な時
1989d),
分かれ (Kaeriyama,
サケは前者に属する。
期であ る。 しかし,骨格はまだ軟骨のみか
幼魚斯 の サケ は海洋の沿岸域を生息の場
らなり,将来,脊椎骨の椎体となる部位は
とするが,形態形成の程度と沖合移動能力
脊索のままであ り,体の支持構造は弱く,
の 有無によりこの発育期は 2 つ
遊泳ブ J もほとんどない。
る。すなわち,初生鱗の形成から尾骨の骨
稚魚期 この発育期の生活様式に関する
化完了までの前期幼魚期 とその後から内部
特徴は,ェネルギ一の獲得方法が内部栄養
骨格の形成完了までの後期幼魚期 である。
から外部栄養への移行期で ,
その両者に依
前期幼魚期は , 膜鰭の消失,鰹杷数と幽
存する混合栄養期を示すことであ る。形態
門垂数の定数化,客体部分長比の安定,活
的に,稚魚期は体側にパー・マークが顕著
発な骨化など,機能的に摂餌 能力と遊泳力
に現れ,尾鰭の湾人形も完了し,胃の形成,
が著しく強化される時期であ り,幼魚はグ
肝臓の移動など遊泳機能と摂餌機能の基本
アニ ン の皮膚への沈着とつま異化といった
型がほぽできあがる時期である。初生鱗の
顕著な ス モルト化を示す。 この時期,サケ
形成が次の発育期の 区分指標となる。 頭
は沿岸域でも塩分濃度が低く,波浪の影響
長,体高,上顎長などの
客体部分長 に対す
餌生物も陸性昆虫からエ
る体長の割合を表す比成長曲線が変 曲 した
自、 し ,
り, 膜鰭が腹部 に 痕跡的に残るなど,
などの海起源の動物へと変化する。
この
後期幼魚期 において,サケは内部骨格系
時期はまだ形態の変化が観察される。また,
内部骨格では,軟骨がこの 発育期までに形
を
成を完Ⅰする。 さらに,この発育期の終わ
に関連する鰭軌条の分節数を定数化し,遊
り
頃 には,体支持構造の中核としての椎体
完成し,鰭条を骨化,鰭の柔軟性や弾性
泳制御を機能化し,
さらに体支持構造を著
が膜骨として,遊泳推進力の要であ る尾鰭
しく強化してほぽ底角と変わらない外部形
を支持する尾骨ゃ, 摂餌機能の強化と 関係
態を早-するようになる。 この時期に,サケ
する口器関連骨も骨化を開始する。 この日・ き
はパッチ状分布の比較的大型な動物フラン
トンを選択的に探索して摂餌 する広域探索
期の サケの生活様式は産卵床付近からの最
初の分散移動で,
盛んな陸海行動を示し ,
型の摂餌戦略をとるようになり,
一 48 一
それが結
果的に能動的な沖合移動の要因となってい
のサケマスーその生物学と
増殖事業 (久保
るよ
達郎編), 67-73.
う
であ る。 なお,沖合への移動要因に
札幌.
ついては環境に支配された受動的な要因も
帰山雅秀 (1989b)
あ る。いずれにしても,サケはこの発育段
マスーその生物学と増殖事業 (久保達郎
まとめ サケ は, 脾化してから沖合へ移
編), 97-103.
動するまでの初期生活期 において,体長約
38mm,
: 大いなる旅路への序章
一沿岸域における生活様式. 日本のサケ
階で沖合へ移動する。
20mm,
たくぎん総合研究所,
たくぎん総合研究所,札幌.
帰山雅秀 (1989c)
50mnl, 80mm および 120mm に質
: サケ属魚類の発育と成
的な変化が認められ,その発育段階は
卵期 ,
長
仔無期,稚魚期 および幼魚期に ,幼魚期 は
(158), 23-29.
さらに前期と後期に分けられ ,
1 . 発育と成長の 概念. 魚と卵,
Ka ㎡ yama,
また,稚魚
M.
(1989d)
: Comparative
期と幼魚期 をあわせて幼稚魚期 と見なすこ
morpho@ogy
とができる。自由胚体期 の各発育段階期の
species of O@ は orhvnchwS during
形態的・生態的特徴は,
Jap.J. lchthyol@35(4),
仔角、 期が形態変化
と機能分化の著しい産卵床 内生活であ り,
and sca に formation in four
ear げ fe.
445- 452.
沖 m 宏雄 (1979) : 稚魚分類学入門
]. 稚
稚魚期が遊泳・摂餌機能の基本型と 顕著な
ffi..j-@, 勿 ,
魚の定義と利分 @ナ.,
降海移動,前期幼魚期が遊泳・授爵機能の
54-59.
強化と海洋生活への移行, そして後期幼魚
ニコルスキⅠ
期 が形態形成の完了と沖合移動を示す。
(調査課
G.
魚類生態
学 (亀井健三諦).
主任研究官)
たら書房,
米子
ワスネツェフ,V.
引
用
Balon, E. K Ⅰ 1975)
文
献
Bd. Can
‥
32@9). 1663-1670
Balon, E. K Ⅰ 1985)
t0ry
ontoge
Ⅱ
y and
: The
Ⅱ
oⅡ n
類科学・
J. F 尽 h. Res
.
the0 Ⅳ 0f salta
fe history
m0de 尽 re.
viSited. Ea Ⅱ y Ⅲe hist0 ㎡ es of fishes 緯 d.
Balon. E. K. ), 13 イ8.
帰山 雅秀 (1986@
@albaum)
: サケひぱm.hynrhus
姥ぬ
の初期生活に 関する生態学的
研究. さけ,ますふ研報,
個体発生
に於ける分岐と適応,
"
"
: Ter 而nol0gy
[erva ㎏ ln f㎏ h development.
(40), 31 り2.
帰山雅秀 (1989a@ : 発育段階と形態. 日本
一
1 山,
49
一
41 一諾8
訣). 哺乳