開発者側の経験と課題 ②(PDF形式)

平成26年12月15日
PMDAワークショップ 「国際共同治験~医薬品開発において日本ができること~」
3. 開発企業セッション (1)
開発者側の経験と課題 ②
ファイザー株式会社
クリニカル・ファーマコロジー部
三好 聡
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Introduction
 国際共同治験参画への戦略および検討事項の概略
• 国際共同治験に日本が参画するにあたり,参画予定の臨床試
験における用法・用量設定根拠や安全性モニタリングが日本人
にとっても妥当であることを示す必要がある
妥当性 検討 あ り, 本人
デ
基 き,国際
• 妥当性の検討にあたり,日本人でのエビデンスに基づき,国際
共同治験における安全性および薬物動態(PK)について,日本
人と外国人の関係を予測することが重要である
• 今回の事務連絡から,予測に必要なデータおよび留意点につい
て科学的に検討することで,日本人Phase1試験戦略について
様々なオプションを取ることが可能であることが読み取れる
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ファイザーのPhase1試験戦略
 Global Phase 1 Strategy
US Filing
Phase 1
PoC
POC
Phase 2
Phase 3
J-Cohort
Japan
Japan
Japan
Simultaneous
filing
Japan Filing
• 日本がFIHや初期反復投与試験などのPhase1試験に参画し
(Global Phase 1 Strategy),臨床開発の早期に日本人のエ
ビデンスを得る
⇒ ドラッグ・ラグおよび開発ラグの解消
• Phase 2 試験のデザインおよび用法・用量設定根拠の要
素として,日本人データも貢献
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本日紹介する事例
 国際共同治験へ参加する際に実施した国内開発計画に関す
るPMDAとの相談(対面助言,事前面談)の中から,今回の
事務連絡(平成26年10月27日発出)策定における「国際共
同治験SWG」での意見交換で参考とした,以下の3つの領域
における開発化合物での事例を紹介する
• 神経精神疾患(組み換え型ヒト化IgG2モノクローナル抗体)
神経精神疾患 組 換
抗体
• 多関節炎(症)(低分子化合物)
• 炎症性疾患( IgG2型モノクローナル抗体)
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国際共同治験参画のためのPMDA相談
事例1: 神経精神疾患
 神経精神疾患(組み換え型ヒト化IgG2モノクローナル抗体)
• 相談時期: 2010年
• 投与経路: 静脈内投与(注射剤),類似MOA薬あり
• 参画を計画した国際共同治験:Phase 2b試験
• PMDA相談時に討議したデータ
 日本人: 患者における単回投与試験
 外国人: 患者における単回および反復投与試験
• PMDA相談でのファイザーからの提案
 日本人患者における単回投与試験の実施後,国際共同治験へ参画
• 国際共同治験参画前に追加実施を求められた日本人試験
 日本人患者における反復投与試験
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国際共同治験参画のためのPMDA相談
事例1: 神経精神疾患
 国際共同Phase2b試験への開発計画
海外実施試験
国内実施試験
欧米および韓国
が参加し, PK
および安全性は
類似していた
投与速度の変
更はPKおよび
安全性に影響
を及ぼさない
P1 SD
2時間点滴静注
P1 MD
2時間点滴静注
P1 MD
10分間点滴静注
安全性,忍容性
PKの類似性
PKの類似性
の予測
P1 SD
2時間点滴静注
P1 MD
2時間点滴静注
P1 MD
10分間点滴静注
日本人単回投与
データから反復
投与時のPKを
予測
追加実施を求め
られた試験
G-P2b MD
10分間点滴静注
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国際共同治験参画のためのPMDA相談
事例1: 神経精神疾患
 PMDAの見解要旨
• 本剤を日本人に反復投与した時のPKおよび安全性データが不
明で,国際共同治験に参画した時の安全性が十分に説明でき
ない
• 国際共同Phase2b試験の用法・用量が確定していないため,国
際共同治験での日本人被験者の安全性対策について検討でき
ない
• したがって,国際共同Phase2b試験で使用される本剤の用法・
用量が日本人においても安全性上特段の問題が無いことが確
認できる用法・用量で,国際共同治験参画前に日本人を対象と
した反復投与試験を実施するべきである
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国際共同治験参画のためのPMDA相談
事例1: 神経精神疾患
 Discussion
• 本剤については抗体薬という観点からだけでなく,日本人からのエ
ビデンスデータである単回投与試験データにおける日本人と外国
人の比較,および複数の人種を対象とした海外の反復投与試験デ
ータから,本剤は安全性やPKについて人種の影響を受けにくいと
考えられる
• 日本人単回投与試験データに基づく反復投与時のPKシミュレーシ
ョンが外国人データと類似していたことも,本剤が安全性やPKにつ
いて人種の影響を受けにくいことを支持する結果である
• したがって,今回の通知に基づくと(別添1. 原則 「被験薬のヒトで
の忍容性は確認されており,民族的要因が被験薬の安全性に大き
な影響を及ぼさないと考えられる場合」),国際共同治験参画前の
日本人データは単回投与時のもので十分であったと考えられる
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MRCT参画のためのPMDA相談
事例2:多関節炎
 多関節炎(症)(低分子化合物)
• 相談時期: 2011年
• 投与経路: 経口投与
• 参画を計画した国際共同治験: Phase 3試験
• PMDA相談時に討議したデータ
 外国人: 健康成人における単回および反復投与試験6試験
およびPhase 2a試験3試験
• PMDA相談でのファイザーからの提案
 日本人健康成人における単回投与の実施後,国際共同治験へ参画
• 国際共同治験参画前に追加実施を求められた日本人試験
 無し(日本人単回投与データを欧米人データと比較することで国際
共同治験へ参画可能)
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MRCT参画のためのPMDA相談
事例2:多関節炎
 国際共同Phase3試験への開発計画
- 国際共同Phase3試験における用法・用量の6~10倍
で実施された外国人Phase1単回および反復投与試
験で,良好な忍容性が確認された
- 線形なPK(腎排泄型,代謝を受けない)を示し,
単回投与時のPKから反復投与時のPKを予測可能
海外実施試験
P1 SD
P1 MD
P2a
P2b/3
N = ~1400
(当時) 実施中
国内実施試験
安全性,忍容性
PKの類似性
PKの類似性
の予測
P1 SD
P1 MD
(当時) 実施予定
G-P3
(複数用量)
日本人単回投与
データから反復投
与時のPKを予測
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MRCT参画のためのPMDA相談
事例2:多関節炎
 PMDAの見解要旨
• 日本人Phase 1試験として,単回投与でエビデンスを得ることで,反復
投与を実施しないという提案について,受入れ可能である
• 日本人における安全性を確保するためにも,Phase3試験において,投
与初期の段階から,visit回数を増やす等を行い,安全性について十分
な観察を行うべきと考える
 Discussion
• 先行する日本人以外の被験者を対象としたPhase1試験で安全域が広
く,PKが人種の影響を受けにくいと考えられる場合は,当該薬剤を日本
人に投与した際の安全性も高いと予測される
• 国際共同Phase3試験が日本人の至適用量を確認できるデザイン(プラ
セボ以外に複数の用量アームを設定するなど)を持つものであれば,
Phase2(用量設定)試験を経ずしてPhase3試験へ直接参画できるであ
ろう
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国際共同治験参画のためのPMDA相談
事例3:炎症性疾患
 炎症性疾患( IgG2型モノクローナル抗体)
• 相談時期: 2012年
• 投与経路: 皮下投与(注射剤),類似MOA薬あり
• 参画を計画した国際共同治験: Phase 2 (PoC)試験
• PMDA相談時に討議したデータ
 外国人: 患者における単回および反復投与試験
• PMDA相談 でのファイザーからの提案
 国際共同治験への直接的な参画,日本人患者のPK検討は
Population PKで実施
• 国際共同治験参画前に追加実施を求められた日本人試験
 無し[国際共同治験への直接的な参画は可能だが,全例(十数
例),一患者ずつ一定の期間を空けて安全性を確認しながら投
与を実施する。安全性およびPK採血のための頻回な来院検査]
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国際共同治験参画のためのPMDA相談
事例3:炎症性疾患
 国際共同Phase2試験への開発計画
海外実施試験
P1 SD and MD
安全性,忍容性
PKの類似性の予測
国内実施試験
P2 (PoC)
P1 無し
• 開発化合物の特徴および外国人Phase1試験データに基
づき,日本人における安全性,忍容性およびPKを予測
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国際共同治験参画のためのPMDA相談
事例3:炎症性疾患
 開発化合物の特徴
• 完全ヒト抗体
 免疫原性が低いと期待される
• IgG2型抗体
 食細胞表面のFc受容体への結合が弱い
 細胞障害活性が低い
• 薬効に関与する受容体タンパク発現プロファイル
 疾患発現部位にほぼ限定,中枢での発現無し
 標的組織外での作用が低いと期待
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国際共同治験参画のためのPMDA相談
事例3:炎症性疾患
 日本人において推測される薬物動態(PK)プロファイル
• 外国人患者におけるPhase1試験の結果
 IgG2型モノクローナル抗体の典型
 Phase2試験の用量範囲では線形なPK
• 民族差
 完全ヒトモノクローナル抗体
⇒民族差の原因となりうる酸化代謝や抱合の関与は無し
日本人において推測されるPKプロファイルは,
外国人の場合と大きく異ならない
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国際共同治験参画のためのPMDA相談
事例3:炎症性疾患
 日本人において推測される安全性
• 薬効に関与する受容体タンパク発現の疾患および組織特異性
 疾患部位および関連リンパ組織が主
• 受容体タンパク発現の民族差(日本人と欧米人)
 受容体タンパクの発現に関与する遺伝子のSNPに顕著な
差は無し
日本人において推測される安全性は,
外国人の場合と大きく異ならない
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国際共同治験参画のためのPMDA相談
事例3:炎症性疾患
 外国人における安全性
• Phase 1,単回および反復投与試験
 プラセボとの顕著な差が無く,用量依存的に発現する有
害事象は認められなかった
 有害事象は原疾患の悪化によるものが主なものであった
 各種臨床検査値,バイタルサイン,心電図データに安全
性上の問題は認められなかった
相談時までに,外国人において安全性上の大
きな問題は認められていない
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国際共同治験参画のためのPMDA相談
事例3:炎症性疾患
 PMDAの見解要旨
• 国際共同Phase 2 (PoC)試験への直接的な参画は可能だが,全例,
一患者ずつ一定の期間を空けて安全性を確認しながら投与を実施す
ること
• 安全性およびPK採血のための頻回な来院検査が必要
 Discussion
Di
i
• 安全性やPKに民族的な影響を受けにくいと推測される開発化合物であ
っても,事前に日本人でのエビデンスが無い場合は国際共同試験の初
期段階でエビデンスを蓄積することが可能である
• Phase1試験も1コホート6例程度で実施されることを考えると,特別なモ
ニタリングは日本人全症例を対象とするのではなく,化合物の特徴に応
じて,最初の数例を対象とする議論が可能と考える
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Summary
• 国際共同治験に日本が参画するにあたり,国際共同治験
における安全性および薬物動態について日本人と外国人
の関係を予測する際に,開発化合物のプロファイルおよび
日本人でのエビデンスに基づき,科学的に検討することが
重要である
• 今回の事務連絡の別添2項を踏まえ
今回の事務連絡の別添2項を踏まえ,どのような日本人の
どのような日本人の
エビデデンスが必要であるかについて,検討を行うことが
大切である
• さらに,自社の経験を蓄積し,ドラッグ・ラグおよび開発ラグ
の解消に向けて,様々な日本人Phase1試験戦略を検討し
ていくことが重要である
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