プラント配管用ベント管の減肉しない 曲げ加工技術の開発 - 新技術説明会

プラント配管用ベント管の減肉しない
曲げ加工技術の開発
工学院大学 工学部 機械工学科
准教授 宮坂 勝利
研究背景
● プラント配管には多数(エチレンプラントで4万個)の曲がり部継ぎ手があり直管と
繋がれている。この曲がり部には標準・規格型のエルボが使われているほか注
文に応じてベント管が用いられている。
●プラント建設の総費用の内訳
1) 設計に10~15%、調達費に45~55%、建設工事費に30~40%程度と
されている。このうち現地配管工事は据付工事の50%以上を占めるとされて
いる。したがって、現地配管工事の減少は即、コストの削減を可能にする。こ
れがるものが溶接施工に関わる作業である。➦溶接を削減すれば工期
とコストが大きく削減される。
トラブルは溶接部で発生することが多い
再生熱交換器
泊発電所2号機 再生熱交換器胴側出口配管か
らの漏えいに係る調査結果の概要
管台母材部
(軸方向のひび割れ)
サーマルスリーブ溶接部
(周方向のひび割れ)
泊発電所2号機 概略系統図
添付資料(1/2)
原子力発電所に使われたエルボ溶接部に発
生した,ひび割れ。
プラントで事故が起こりやすい場所は配管の
溶接部です。
最高度の溶接技量と品質管理システムで
あっても,溶接部からひび割れリスクを払拭す
ることができません。
エルボを使わないで,溶接か所数を減らせれ
ば,プラントの安全性が高くなります。
2個 の エ ル ボ と 5箇 所 の の 突 き 合 わ せ 溶 接 の コ ス ト
と
2箇 所 の 曲 げ と 1箇 所 の 突 き 合 わ せ 溶 接 の コ ス ト 比 較
工業調査会発行「配管工事コスト積算技術」
Sch80 Elbow+Welding
120,000
Sch80 Bending
→ 配管工事の コスト(円)
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
50
80
100
150
200
250
→ パ イ プ の 外 径 (A)
300
エルボとベント管の特徴
● エルボの特徴
1) エルボは小曲げ半径で構造物をコンパクトにできるが、直管部がないか
あっても高々30mmである。 ➦溶接施工に関わるコストが大きい。
2) 両端を溶接施工で作られるから安全確認のためには十分な検査と検査
書類が必要である。
3) 溶接の自動化がし難い。
● ベント管の特徴
1) 曲がり部をベンド化すると溶接部が減少しコスト削減効果が大きい。
2) 従来技術のベンド管は曲げ半径が大きく、構造物をコンパクトにできず、
エルボの曲げ半径と同じ曲げ半径のベンド管を作ると曲げ外側の減肉が
大きくなる欠点がある。
3) 上記減肉量に見合う厚肉管を曲げる必要がある。➦(重量増加、流路抵抗
の増加・・)
● 増肉するベンド管を作りエルボレスとすることにより溶接箇所が大幅に減り
(約1/5)な工期の短縮化によるコスト削減と配管の信頼性があがる。➦
曲がり部の増肉まで見込んだ管の据込み曲げ加工機を開発する。
増肉ベント管の開発によるエルボレス化する利点
エルボと直管の内外径サイズが異なり面合わせが面倒で段取り時間が長くなる。
1) エルボには直管部がない。あっても高々30mmで面合わせが難しい。
2) 面取り(ベベル加工)の必要がある。
3) 同じサイズの増肉ベント管の使用は面合わせが容易で段取り時間が短い。
4) 任意の位置で溶接施工されるから溶接の自動化も容易化が可能である。
➦ 増肉ベント管の開発は溶接部の削減、工期短縮、配管の信頼性への寄
与は大きい。
鋼管外径の+許容値
エルボ外径の+許容値
フランジ内径の+許容値
鋼管外径の-許容値
エルボ外径の-許容値
フラン ジ内径の-許容値
4
パイプ および エルボの外径と
フランジ内径寸法許容差/mm
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
0
50
100
管の公称外径 /A
150
200
従来技術の問題点
従来技術は曲げ半径を決定する旋回アームを回転中心で支える方式である。
1)大きな減肉が生じる
2) アームにブレーキ力を加えかつ、管に軸圧縮力を加えねばならない。
3) 減肉を抑制するほどの力を加えるとアームが折損するから機械が大型化する。
また、管の掴み代が大きくしないと管がすべり、不要な部分が大きくなる(押し代も含む)。
4) 減肉率12.5%を得ることができる範囲は曲げ半径3Dまででコンパクトな構造物にならない。
5) 厚肉管を曲げて曲げ外側肉厚を確保している。 ➦重量増加、流路抵抗が増える、管端面
の面取り加工が面倒。コストアップ等の問題がある。
6) 従来技術の問題点であった減肉抑制策として ①軸圧縮力、②異形コイルの使用、③均熱加熱局
部水冷等単独または組み合わせて精緻な制御を要する。
7) 曲げ半径3D以下で減肉率12.5%~8%の軸圧縮力かけるのがやっとであった。あまり軸力を加え
ると旋回アームが折損してしまう。→大型化する。
偏心据込み曲げの増肉原理
弾性論の短柱に偏心荷重を加えた場合の断面の核を援用する。
断面の核内に圧縮荷重を加えれば全断面が圧縮応力を受けるか
らほぼ理論的に肉厚減少はないはずである。
Z
F
e
y
X
Y
e
F
s = -F / A
c
s M = eFy / I X
s = sC + sM
O
φ
R
弾性部分の応力分布
直管部分に作用している応力分布
-Y
d2
d1
+Y
P
e
V1
σc = -(P/A0)
σm = -(Pey/Iz)
σz = σc+σm
Fix
V2
新技術の特徴と従来技術の比較
● 従来技術は肉抑制策問題があった。①変形抵抗を変える②軸圧縮力を加える等々
1) 従来技術の問題点であった肉抑制策として ①軸圧縮力、②異形コイ
ル使用、③均熱加熱局部水冷等を単独減、または組み合わせて精緻な制御をする
必要があった。それでも
2) 曲げ半径3D以下で減肉率12.5%~8%の軸圧縮力かけるのがやっとであった。
あまり軸力を加えると旋回アーム折損してしまう。→大型化する
3) 従来技術では減肉が大きいため標準サイズの管が使えず厚肉管を用いる必要が
あった。トラブルが起きると管の納期が3ヶ月程度必要となった。
4) 直管とベンド部端面のサイズが異なること、またエルボには直管部がないか、
あっても高々30mmと小さく端面合わせに時間がかかっていた。
● 新技術の適用により軸圧縮力が十分加えられるため荷重オフセットを変えるのみで曲
げ外側肉厚の減少を2%から増肉までほぼ理論的に制御可能になった。
本技術の適用により曲げ外側の減肉がないから
1) 直管と同サイズの管でベント管を用いることができるため、溶接までの段取り時間
が容易となり厚肉管やエルボを用いる場合に比べコストは1/5程度まで削減される。
据え込み管曲げ加工機の概略図と出力図
Bending radius / mm
Bending angle / degree
Pulling force /kN
Pulling speed /mmimin
Feeding speed /mm/min
70
Fig. 3.1 Apparatus for the upset pipe bending by induction heating
60
50
Output
40
30
20
10
0
1
51
101
-10
Time / s
Fig. 3.3 An example of the output data
1: Pipe
2: Heating coil
3: Guide roller 4: wire rope
5: Front retainer 6: Rear retainer
7: Carriage
8: Rail
9: Hydraulic pomp R: Bending radius e: Load offset
F: Pulling force
Fig. 3.2 Schmatic diagram of the experimental apparatus for the pipe bending by
induction heating
151
201
オフセット量の調整法
A
V2
e
F
⑦
A-A
A
⑥ ②
① ⑨
④
⑤
③
⑧
軸圧縮ロープを管の外側に配置した装置
14
16
10
7
4
11
2
5
1
3
19
6
13
4
16
5
7
10
図1B 曲げ前の上面図
15
12
19
4
16
17
15
14
4
e
16
8
8
14
1
e
e
17
8
16
10
10
19
11
2
9
17
図1A
14
5
6
7
図1C
15
4
10
15
3
13
11
19
1
曲げ前の側面図
13
3
V2
V1
14
4
5
12
8
9
6
2
17
7
10
図2
曲げ後の側面図
曲げ加工力解析図
曲げ加工力解析図
圧縮曲げパイプ断面の例
背側の肉厚がほとんど減らず、美しい形状に曲がる
肉厚減少率 -0.95%
楕円化率1.2%
曲げ管の測定位置
軸方向の肉厚分布 e=11mm
3
肉厚増加率 /%
2.5
(a) outer
2
1.5
1
0.5
0
-0.5
S1
S2
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
E1 R/D=1.5
E2
R/D=2.0
R/D=2.5
R/D=3.0
R/D=4.0
肉厚増加率 / %
80
60
40
20
(b) inner
0
S1
S2
1
2
3
4
5
6
-20
測定位置
7
8
9
10
E1
E2
軸方向の肉厚分布 e=13mm
0.2
(a) outer
肉厚減少率 / %
0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1
80
S1
S2
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
7
8
9
10 E1 E2
肉厚増加率 / %
60
E1
R/D=1.5
R/D=2.0
E2
R/D=2.5
R/D=3.0
R/D=4.0
40
20
(b) inner
0
S1
S2
1
2
3
4
5
6
-20
測定位置
円周方向のひずみ測定位置
円周方向位置におけるひずみ e=11mm
1
対数ひずみ
0.5
0
-0.5
(b) R/D =1.5
1-1
1
2
3
4
5
6
7
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
εc
c
0.5
対数ひずみ
8
εl
l
εt
t
0
-0.5
(a) R/D =3.0
-1
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
測定位置
円周方向位置におけるひずみ分布 e=13mm
1
対数ひずみ
0.5
0
-0.5
(a) R/D =1.5
-11
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
εl
ln(l/l0)
対数ひずみ
0.5
εc
ln(l/l0)
εt
ln(l/l0)
0
-0.5
(b) R/D =3.0
-1
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
測定位置
荷重位置の変化と曲げ管外観
Fig. 3.14 Effect of the bending radius exerted on the appearance of the bent pipe at
e=13mm.(V=30mm/min)
R/D=1.5
2.0
2.5
3.0
4.0
R/D=1.5
R/D=1 5
2.0
20
2.5
3.0
25
4.0
30
40
Fig. 3.15 Effect of the bending radius exerted on the appearance of the bent pipe at
e=11mm.(V=30mm/min)
3B Sch40管の曲げ外観
曲げ前の素管にポンチで打刻し、1.5DR曲げ後に長さの
変化を測定。
背側の伸びが殆ど無いことを確認
ダクタイル鋳鉄管の曲げ外観
R/D=3.5
R/D=3.0
R/D=2.5
R/D=2.0
Fig. 7.6 Appearance of the upset bend pipe on ductile cast iron
実用化に向けた課題
●曲げ加工力の低減➦せん断力の付加
●肉厚のスムーズ化制御
●小曲げ半径化(R・D=1.0)、R:曲げ半径、D:管直径
想定される用途と業界
●
●
●
●
●
●
原子力・火力プラントの曲がり部継ぎ手
石油・化学プラントの曲がり部継ぎ手
造船の曲がり部継ぎ手
ボイラーの過熱器管(スーパーヒーター)
水道配管(鋳鉄管)
鋼管加工業
据込み曲げ管の適用効果
アプセットベンド管適用効果
アプセットベンド管適用効果
アプセットベンド管適用効果
アプセットベンド管
構造改善
信頼性向上
曲げ外側肉厚減少抑制
溶接部の低応力化
標準サイズの鋼管使用可能
標準サイズの鋼管使用可能
直管同士の溶接接合
直管同士の溶接接合
溶接の自動化
溶接個所減少
管端面合わせ楽
現地曲げ可能
配管工・溶接工削減
ひずみ減少
非破壊検査削減
開先加工楽
気密・耐圧テスト減少
圧力損失減少
供用期間中の検査削減
任意の角度設計可能
合理的な設計
プラントメンテナンスの減少
官庁申請書類の減少
高品位の配管
工期短縮
工期短縮
大幅なコストダウン
大幅なコストダウン
大幅なコストダウン
本技術に関する知的財産権
●発明の名称 : 鋼管の曲げ加工装置及び
鋼管の曲げ加工方法
●出願番号
: 特願2008-311246
●出願人
: 学校法人工学院大学
佐藤 徹
株式会社菊池製作所
タマティーエルオー株式会社
●発明者
: 宮坂勝利、一柳 健、佐藤 徹
お問い合わせ先
工学院大学総合研究所研究推進課
リエゾンオフィス担当課長 矢島 治夫
TEL:03-3340-0398
FAX:03-3342-5304
E-mail :[email protected]
タマティーエルオー株式会社
研究成果移転事業部
松永 義則
TEL:042-570-7240
FAX:042-570-7241
E-mail:[email protected]