2008-6大学院特論ミネラル輸送 鉄体内動態 石橋賢一 TPN施行中の微量元素欠乏症 • • 微量元素 発現までの期間 欠乏症状 鉄 通常2~3年以 上 貧血、運動機能・認知機能の低下 無力性顔貌、注意散漫、神経質、学習能力低 下 14~104日 亜鉛 銅 半年以上 セレン 1カ月 クロム マンガン モリブデン • 顔面や会陰から始まる皮疹 口内炎・舌炎・脱毛・爪変形 下痢・発熱、味覚障害、食欲不振など 白血球減少・貧血・骨粗鬆症 筋肉痛 心筋症 爪床部白色変化 筋肉痛・心筋症・爪床部白色変化 3年以上 耐糖能異常・体重減少・末梢神経障害 代謝性意識障害 窒素平衡の異常 代謝性意識障害・窒素平衡の異常 2年以上 発育障害・代謝性障害・血液凝固能 低下・毛髪の赤色化 1年半以上 • 頻脈・多呼吸・中心暗点・頭痛・ 嘔吐・嘔気、 夜盲症 1 • • • • • • • • 人間の体内には、鉄が約4g存在する 70%はヘモグロビン、3%がミオグロビン 残る約30%はフェリチンとして存在 フェリチンは貯蔵鉄を反映する良い指標となる。 Fe3+は胃液で還元されて、Fe2+となり、 Fe2+は小腸上部で吸収される(1mg/日) 方、糞便や尿中に排泄される(1mg/日) 糞便や尿中に排泄される(1mg/日) 一方 鉄は血漿中で、トランスフェリンと結合、 鉄は細胞内では、アポフェリチンと結合 アポフェリチンと結合するとフェリチン(貯蔵) アポフェリチンが不足するとヘモジデリン(沈着) 赤血球の崩壊により1日20~25mgの鉄が放出。 骨髄に運搬されてヘモグロビンの合成に再利用。 成 成人に必要な鉄量は1mg/日、 必 な鉄量 消化管からの吸収率が10%であり、必要な鉄摂取量は10mg/日、 体外への排泄(消化管粘膜や皮膚細胞の脱落などによる)も1mg/日。 g 鉄の体外への積極的な排泄メカニズムは存在しない。 食物中の鉄は胃液でFe2+に還元されて十二指腸で吸収される。 Fe3+は吸収されない。 Fe3 は吸収されない。 胃酸欠乏では鉄吸収が低下し、ビタミンCは鉄吸収を促進する。 2 緑茶、コーヒー、紅茶は鉄と結合するタンニンを多く含むので鉄の吸収を低下 3 銅代謝 • • • • • • • • • 成人には0.1gほどで、骨、肝臓、脳、腎臓、筋肉、血液に分布 成人には0 1 ほど 骨 肝臓 脳 腎臓 筋肉 血液に分布 血液では大部分がセルロプラスミンの構成成分として存在 血漿中の遊離銅はアルブミンやヒスチジンと結合して運搬される シトクロムオキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、 アミンオキシダ ゼ、セルロプラスミンなどの銅酵素に必須。 アミンオキシダーゼ、セルロプラスミンなどの銅酵素に必須。 リシルオキシダーゼは、コラーゲンやエラスチンの架橋形成に必要 な銅酵素 ウィルソン病は、先天性銅代謝異常症 セルロプラスミンの血中濃度が低下し、肝臓、脳、腎臓、角膜などに 過剰の銅が蓄積する。 過剰の銅が蓄積する メンケス症候群などの銅の先天性腸管吸収障害でも血清セルロプ ラ ラスミン値が低下する。 ン値 低下する。 銅と亜鉛は拮抗するので、亜鉛強化の乳児食で銅不足に 銅不足は、貧血、白血球減少、骨変化、精神発達遅延を来たす。 4 5 6 7 8 9 ※ペ シ ※ペニシラミンがCuをキレートする仕組み が をキ トする仕組 セルロプラスミンと無セルロプラスミン血症 10 11 • • • • • • • • 13 ヘモクロマトーシス Wilson 病 先天性の銅代謝異常によって、全身に銅が沈着 先天性の銅代謝異常によ て 全身に銅が沈着 常染色体劣性遺伝形式40,000:1 発症年齢は 3歳から50歳 発症年齢は、3歳から50歳 copper transporting P type ATPase 肝臓の ATP7B が欠損すると Wilson 病に。 肝臓外の ATP7A が欠損すると Menkes 病に。 病に 「病理」銅を運搬するセルロプラスミン合成障害。 正常ならば銅はセルロプラスミンと結合、本症では、銅がアルブミン と結合:運搬の途中で銅を落してしまう。 結合 搬 途中 銅を落 まう 銅染色(ルベアン酸染色)像 「症状」肝硬変(腹水、黄疸、肝腫、脾腫) Kayser‐Fleischer Kayser Fleischer 角膜輪(角膜デスメ膜に銅沈着) 腎近位尿細管障害(糖尿、アミノ酸尿、アシドーシス) 脳レンズ核変性(振戦、構音障害、知能低下、歩行障害) 「検査」血清セルロプラスミン↓ 血清Cu↓ 尿中Cu↑ 「検査」血清セルロプラスミン↓、血清Cu↓、尿中Cu↑ 即ち、運搬される銅は寡い、排出される銅は多い。 「治療」 D‐ペニシラミン(銅排泄促進) ペ シ (銅排泄促進) 14 銅制限食(エビ、カニを避ける) 腸での鉄輸送 • 組織障害を伴なう鉄沈着:ヘモジデローシスと区別 • 「分類」 ① 遺伝性ヘモクロマトーシス 第6染色体の HLA-H HLA H 遺伝子( HFE遺伝子)の異常。 HFE遺伝子)の異常 腸粘膜からの鉄吸収が亢進されている。 北欧では、最も多い常染色体劣性遺伝症。 ② 二次性ヘモクロマトーシス 次性 ク ト シ 再生不良性貧血やサラセミアで輸血過剰。 検査」① 血液検査 • 「検査」① 血清鉄↑、UIBC↓↓、血清フェリチン↑ • 「症状」心筋障害(不整脈、狭心症)、関節痛 肝腫大 肝細胞癌 皮膚色素沈着(青銅色) 肝腫大、肝細胞癌、皮膚色素沈着(青銅色) 性腺機能低下(下垂体における鉄沈着による) 糖尿病(Langerhans 島における鉄沈着による) • 「治療」 「治療 鉄キレート剤(デスフェラール) g 瀉血(血液400mlに鉄200mg、Ht<40%に) • セルロプラスミン(Cp)は、血漿中に分泌される分泌方Cpと細胞膜に 結合するGPI(glycosylphosphatidylinositol)結合型Cp • 分泌型Cpは肝臓で生合成されますが、GPI結合Cpは肝臓だけでな く、脳、網膜、肺、心臓、膵臓、腎臓、骨格筋など全身の組織で発現。 • 分泌型Cpはほとんどが血中に存在し、血中の90%以上の銅を含有。 分泌型C はほとんどが血中に存在し 血中の90%以上の銅を含有 • 細胞から血中への鉄の動員は、細胞膜に結合したGPI結合型Cpが フェロポルチンと共同して行う。 • 分泌型Cpは血液脳関門を通過できないので、脳ではアストロサイト で発現しているGPI結合型Cpが鉄代謝の中心的役割を担う。 • 無セルロプラスミン血症はCpのloss-of-functionによる全身諸臓器 への鉄過剰蓄積を来す常染色体劣性遺伝性疾患 • 脳内の鉄はおもにアストロサイトに沈着し、フリーラジカルの産生を 脳内 鉄はおもに ト サイトに沈着し リ ジカ 産生を 促し、脂質過酸化の亢進、ミトコンドリアの障害を引き起こす。 • 神経細胞にも鉄沈着はみられますが、ノックアウトマウスの実験か 神経細胞にも鉄沈着はみられますが ノックアウトマウスの実験か ら、神経細胞にはアストロサイトから鉄が動員されないために鉄欠 12 乏を来し、これによる細胞障害を起こしている。 捻れ毛病Menkes 病 kinkyhair disease 先天性の銅代謝異常により 先天性の銅代謝異常により、 腸管で銅が吸収できない疾患。 「病因」 「病因 原因遺伝子は、X染色体長腕上の、 copper transporting P type ATPase つまり、ATP7をコードしている遺伝子。 肝臓の ATP7B が欠損すると Wilson 病に。 肝臓外の ATP7A が欠損すると Menkes 病に。 「症状」乳幼児期から、毛髪異常、低体温。 精神遅滞、筋緊張低下、易感染傾向。 「検査」血清Cu↓、血清セルロプラスミン↓ 「治療」銅の非経口投与 15 IRE (iron responsive element)と呼ばれるステムループ構造 が存在しており、IRP(iron 存在 おり、 ( regulatory g yp protein)と呼ばれるRNA ) 呼 れる 結合蛋白質が鉄欠乏下においてのみIREに選択的に結合する 16 17 18 19 20 デフェラシロクス(エクジェイド) 慢性C型肝炎の鉄制限療法 • • • • • • • • • • 22 21 慢性C型肝炎では血清フェリチン値・肝内鉄含有が高い 慢性C型肝炎では血清フ リチン値 肝内鉄含有が高い IFN治療でHCVが駆除されると肝内鉄含有量が低下 肝臓で生成されるhepcidinというホルモンが鉄代謝調節に関係 Hepcidinは十二指腸の鉄吸収とマクロファージの鉄放出を抑制す る。 HCVトランスジ HCVトランスジェニックマウスではhepcidinが低下しており、肝細胞 クマウスではh idi が低下しており 肝細胞 レベルではhepcidinの転写活性が低下 肝臓で鉄過剰になると、フリ ラジカル増加して肝細胞障害増加 肝臓で鉄過剰になると、フリーラジカル増加して肝細胞障害増加 慢性C型肝炎に対する瀉血療法:2006年4月より保険適応 1回200~400ml、週1~2回から開始。2~3ヶ月毎に施行。 目標はフェリチン<10mg/mlまたはHb<11g/dl。 標 また 開始2-3ヶ月でGPT低下が認められる。 23 • 鉄キレート剤 • 国際誕生年月2005年11月 • 薬価基準収載年月2008年6月 24
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