脊椎椎体骨折に対するバルーンカイフォプラスティ - 慶應義塾大学医学部

2011.5.12
第1版
脊椎椎体骨折に対するバルーンカイフォプラスティ(経皮的後弯矯
正術)について
実施責任者
整形外科学教室
松本守雄
1. Baloon Kyphoplasty に関して
近年の高齢化社会に伴い骨粗鬆症患者は増加しており、骨脆弱性に伴う椎
体骨折は高齢患者の社会的活動度を著しく障害します。椎体骨折に伴い、疼
痛のみならず後弯変形(背中が丸く湾曲する変形)や時には神経麻痺などの
症状を来します。神経麻痺を来していない場合は、一般的に安静や薬物治療
などの保存的加療を行いますが、安静期間は長期にわたるとその間に筋肉の
萎縮や更なる活動度の低下を招く恐れがあります。また高齢者に対して大き
な手術を行うことはリスクを伴います。
そこで比較的低侵襲に施行でき、かつ骨折部の後弯を矯正し安定化を図る
手技としてバルーンカイフォプラスティ(BKP)が開発され国内でも使用可
能となりました。
本手技は X 線透視下に、皮膚を大きく切開せずに骨に穴を開けそこからバ
ルーンを挿入して骨折した椎体内で膨らませて後弯を矯正しつつスペース
を作成します。そのスペースに専用のセメントを注入して安定化させる方法
です。
日本国内で薬事認証を受け、椎体骨折に対する保険診療の適応のある方法
として認可され 2011 年より使用可能となりました。
当院では 2011 年より導入、開始した新しい手技ですがバルーンを使用し
ない椎体内にセメントや人工骨を挿入する方法は従来から行っております。
また同器材を使用するために必要な講習を受講した医師が施行します。
2. リスクについて
本手技は全身麻酔下で施行します。麻酔に伴うリスクや手術一般に関する
リスクは他の椎体形成術と同等です。即ち手術中、手術後の血圧変動や出血
のリスク、術後肺炎のリスク、また術後血腫や創部感染、これらに伴う再手
術の危険性などは他の方法と同等です。
本手技は比較的低侵襲で骨折を起こした椎体の矯正が可能でセメントを
注入するスペースを従来の方法よりも効率的に作成することができるとい
う利点を有します。海外のデータでは従来の方法(バルーンを使用しないセ
メント注入法)と比較して疼痛改善効果は同等であると報告されています。
また、生活の質の向上は良好でセメントの漏出(本法 8%、従来法 40%)
、肺
塞栓(本法 0.3%、従来法 1.8%)、脊髄圧迫(本法 0%、従来法 0.5%)などの
リスクは従来法と比較して同程度もしくは有意に低いとの報告もあります。
ただこれらのデータは海外のものであり、本邦では 2011 年より使用開始と
なったばかりのため国内の大規模な研究のデータはまだありません。
3.本手技施行の任意性と撤回の自由
本手技施行に関する協力は説明を十分にお聞きになった上で自由意志で
決めて下さい。強制は致しません。同意しない場合には他の治療法を検討し
提示いたしますので不利益を受けることはありません。また、一旦同意した
場合でも不利益なく同意を取り消すことができます。ただし、本手技施行後
の同意取り消しは本手技の特性上できませんのでご了承ください。
4. 問い合わせ先
〒160-8582 東京都新宿区信濃町 35
慶應義塾大学医学部整形外科学教室
松本守雄 細金直文
Tel:03-3353-3812
Fax:03-3353-6597