日時:11月24日(木)、午後7時から午後9時 会場:高崎市総合保健センター、2階、第1会議室 演者:谷山清己院長 (国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター) 演題:『子宮頸部細胞診における従来法と液状細胞診 従来法とThinPrep法の比較―大規模臨床研究 とLSIL進行予測因子解析―』 座長:福田利夫名誉教授(群馬大学) 主催:群馬県、受託:群馬県医師会、群馬臨床細胞学会 子宮頸部細胞診における従来法と液状細胞診ThinPrep法の比較 - 大規模臨床研究とLSIL進行予測因子解析 - 国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター院長 谷 山 清 己 現在、我が国の細胞診断領域で液状細胞診法はかなり普及してきているが、多種類乱立の感も出るほどに、種々の液 状検体法が宣伝され、施設ごとに利用状況が異なっている。従来法を熟知したベテランが新しい液状検体法を始める場 合には、戸惑いが強くなる傾向がある一方で採取法や得られた細胞像に比較対象となる基準(従来法)があって、新旧の 違いを認識しやすい。従来法を良く知らない若手が液状検体法を経験初期から始めると、ベテランが整理した新旧の違い そのものの理解が進みにくにものであり、また、種々の液状検体法を同時に学習する際に液状検体法毎の特徴に注意を払 わなければ、基本知識の整理に混乱が生じる可能性がある。筆者が大規模臨床研究「子宮頸部細胞診検体取扱いに おける従来の擦過細胞診(Pap法)と液状細胞診(ThinPrep法)の比較研究‐多施設共同研究実施計画書‐(CCLBC研究)」の 第1版を作成した2007年4月の時点では、液状細胞診法は一部の地域や限られた施設で行われていた程度であり、 SurePath法が主流であった。その効用を疑問視する意見が強い時代であった。そこで、液状細胞診法の有益性を検証する 目的で研究を企画した。 当時、我が国ではSurePath法より使用経験が少ないThinPrep法を対象とし、特殊な研究者が数字を操作するような研究で はなく、市中で日々細胞診断を行っている細胞検査師の実益に繋がる研究となることを目指した。Evidenceレベルの高い結 果を得るために、1)一万人以上を対象にした大規模臨床研究、2)研究参加者細胞診断力の質担保と診断基準の統一 化、3)各施設の状況に応じた柔軟な研究参加体制構築と中央診断の併存、などに留意した。加えて、得られた結果をさら に昇華させるべく、新知見発見に向けて研究を拡げた。 研究は、2008年度―2010年度にわたって国立病院機構多施設共同研究補助金を利用して行われ、延べ11,092検体が 登録された。参加施設は、国立病院機構以外の一般医療施設が中心であり、その結果、ThinPrep法とPap法の微妙な細 胞所見上の違いが明確となり、細胞診断におけるThinPep法の優位性が明らかとなった。また、新知見として、LSIL病巣の進 行予測マーカーを発見した。これらの結果について、2015年度までに、学会55演題(国際発表13)、論文10本(英文7)が 発表され、細胞検査技師二人が医学博士となった。 本講演では、得られた研究成果の詳細を提示すると共に、大規模臨床研究の構成、一般的な医療施設で勤務する細 胞検査師が研究参加する上での工夫や留意点なども提示して、聴講者が大規模臨床研究を自ら発案する動機、あるい は研究参加を決める後押しとなるように語りたい。併せて、異なる液状細胞診法を利用する際の注意点についても言及する。 連絡先:群馬臨床細胞学会事務局 http://www.jsccgun.jp/ E-MAIL;[email protected]
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