リグニンの新規機能性物質への変換‐難燃材料の創製‐

リグニンの新規機能性物質への変換‐難燃材料の創製‐
名大院生命農 ○木村恭文、松下泰幸、青木弾、福島和彦
3. まとめ
1. 緒言
バイオマス材料の利用範囲拡大
難燃性を有するバイオマス由来材料の開発
リグニンへ窒素化合物およびリン酸エステル化剤を反応させることで、
リグニンを主とした難燃性を有する物質を合成
これまでの成果
リグニン由来のリン・窒素系難燃剤を混練したポリ乳酸はいずれも
高い自己消火性を有したが、燃焼滴下物による綿への着火により、
リグニンをリン酸エステル化し、
リグニン由来リン系難燃剤を開発 (宮川ら、2011)
V-2規格相当の難燃性
UL94規格の等級V2相当
リグニンのベンゼン環に窒素化合物が結合する誘導体の方が、
リグニンへ結合するリン酸に窒素化合物が結合する誘導体よりも、
熱分解が抑えられ、難燃剤として優れていると予想
より高い難燃性を有するリグニン誘導体が必要
窒素化合物導入によるリグニンの難燃化
発泡炭化層による熱伝導の防止および空気遮断効果
リン・窒素を含有するリグニン誘導体自体の構造も難燃性に影響
本研究の目的
V-2相当
リグニンにリン酸および窒素化合物を導入し、
他樹脂材料に対するバイオマス由来の難燃剤として利用
V-2相当
リン・窒素導入新規リグニン由来難燃剤による
難燃効果向上の検討
etc.
 予想したリン・窒素含有リグニン誘導体の高い難燃性
2. 実験
500oC重量残渣率と熱分解挙動の評価
TG-DTA測定
リグニン誘導体の合成
各試料において高い500℃残渣率と分解開始温度
クラフトリグニンを出発として、三種類の反応経路により
リン酸および有機窒素化合物を導入
第一経路:
誘導体C, Dにおいて発熱ピーク
表2. リグニン誘導体およびポリ乳酸とリグニン誘導体の混練体のTG-DTAデータ
サンプル 500 °C重量残渣 [%]
A
B
C
D
リン酸エステル化
誘導体 A
ヒドロキシメチル化
発熱点 [℃]
54.8
51.6
34.3
53.2
500 °C重量残渣 [%] 分解開始温度 [℃]
―
―
288.1
237.5
(1) TG (mg)
第二経路:
ポリ乳酸 + 15wt% リグニン誘導体
リグニン誘導体
マンニッヒ反応
DTA (μV)
9.4
5.2
5.7
4.4
(2) TG (mg)
400.00
20.00
15.00
200.00
DTA (μV)
200.00
99.6℃
7.11mg
8.00
99.6℃
20.66mg
236.7
230.8
254.8
181.5
6.00
100.00
4.00
500.7℃
11.32mg
10.00
0.00
499.5℃
3.67mg
2.00
0.00
5.00
アミノ化
誘導体 B
リン酸エステル化
100.0
NH2
N
H2N
N
200.0
300.0
温度 (℃)
400.0
500.0
(3)
N
6.00
第三経路:
Lignin
Cl Cl
Cl P
O
H3CO
リン酸アミド化
リン酸エステル化
99.5℃
6.26mg
4.00
Lignin
DTA (μV)
200.00 15.00
288.1℃
146.88μV
337.
5℃8
7.47
μV
2.00
O
Cl
P
Cl
O
0.00
337.
5℃8
7.47
μV
100.0
200.0
300.0
温度 (℃)
499.9℃
2.15mg
400.0
0.00
500.0
200.0
300.0
温度 (℃)
400.0
TG (mg)
99.7℃
15.27mg
100.00 10.00
H3CO
OH
100.0
(4)
TG (mg)
NH2
0.00
500.0
DTA (μV)
200.00
237.5℃
108.80μV
100.00
499.6℃
8.12mg
5.00
100.0
200.0
300.0
温度 (℃)
400.0
0.00
500.0
図2. リグニン誘導体のTG-DTA曲線., (1): 誘導体A, (2): 誘導体B, (3): 誘導体C, (4): 誘導体D
誘導体 C
UL94燃焼試験
誘導体 D
リグニン誘導体の難燃性を評価
自己消火性は見られたが、綿への着火が認められ、UL94規格の等級はV‐2相当
図1. クラフトリグニンへのリン酸および有機窒素化合物の導入
元素分析
誘導体A, Cの試験片における燃焼持続時間において有意な差 (Welch’s t‐test, **P<0.01, n=3)
表2. リグニン誘導体のUL94燃焼試験の結果
リグニン誘導体のリン・窒素含有率の測定
表1. リグニン誘導体の導入した窒素化合物および導入条件, リン・窒素含有率
窒素含有率 [%] リン含有率 [%]
誘導体
窒素導入条件
窒素化合物
A
マンニッヒ反応
ジメチルアミン
3.4
6.6
B
ヒドロキシメチル化
→ アミノ化
メラミン
5.6
6.1
C
リン酸アミド化
ジメチルアミン
3.8
10.3
D
リン酸アミド化
1,1,3,3‐テトラメチルグアニジン
12.3
6.0
サンプル No. t1 [sec] t2 [sec] t1+t2 [sec] 全焼
1
3.2
0.5
3.7
無
A
2
2.8
0.8
3.6
無
3
2.6
2.3
4.9
無
1
8.2
10.2
2.0
無
B
2
5.4
7.2
1.8
無
1
6.7
0.6
7.3
無
C
2
5.9
2.2
8.1
無
3
6.1
3.2
9.3
無
1
2.0
4.7
2.7
無
D
2
1.5
3.0
1.5
無
綿着火
UL94等級
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
V‐2
V‐2
V‐2
V‐2
V‐2
V‐2
V‐2
V‐2
V‐2
V‐2