第 六 十 六 回 刀 剣 研 磨・外 装 技 術 発 表 会 開 催 - 日本美術刀剣

 第 六 十 六 回 刀 剣 研 磨・外 装 技 術 発 表 会 開 催
査員により厳正に審査が 行 わ れ た 。 本
会四階講堂において、延 べ 三 一 名 の 審
受け付け、十一月十五日 ( 金 ) に 当 協
第六十六回刀剣研磨・ 外 装 技 術 発 表
会は、十一月五日から七 日 ま で 出 品 を
入賞三点、入選一一点、白銀の部八点、
点、落選一点、柄前の部一四点、うち
刀装の部四点、うち入賞二点、入選一
の部八点、うち入賞三点、入選五点、
入賞一点、入選五点、落選一点、白鞘
選二点、研磨(平造)の部七点、うち
──表 彰 式 概 要──
年から研磨の部は「鎬造 の 部 」 と 「 平
造の部」に分け、同時に 二 部 門 へ の 出
うち入賞三点、入選五点であった。
篠崎公紀氏、白鞘及び刀装の部を前田
審査員
まで刀剣博物館で公開展示された。
無鑑査及び入選以上の全作品は、十
二 月 三 日( 火 ) か ら 同 月 十 五 日( 日 )
協会役職員
表彰式には審査員及び小野会長、柴
原専務理事、志塚・福本両常務理事が
いて勉強会を行った。
に先立ち、同日午前十時から講堂にお
表彰式は、十一月二十九日午後一時
から当協会講堂で挙行されたが、これ
入賞者の詳細は別掲のとおりである。
幸作氏(当日は欠席のため、飯田学芸
点、うち入賞一三点、入選二三点、落
品が可能となっている。
出品総数は九三点で、 う ち 無 鑑 査 出
品は一四点であり、無鑑 査 を 除 く 受 審
件数は七九点であった。
部門別では、研磨(鎬 造 ) の 部 三 八
小野会長挨拶
参列し、総務部長の経過報告に続いて
部長が代読)
、柄前の部を三谷修史氏、
この後、入賞者に対して賞状及び副
白銀の部を羽川安穂氏がそれぞれ講評
まず初めに、入賞・入選をされまし
た皆様には心よりお祝いを申し上げま
主催者挨拶 会長 小野 裕
会長から主催者挨拶があった。
賞の授与が、入選者に対して入選証書
された。
賞の井上聡氏が答辞を述べた。
最後に出品者を代表して、木屋賞受
の授与があり、引き続き審査員講評が
行われた。
審査員講評は、部門別に研磨の部を
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今回より「平造の部」が新設された訳
さすがによく研がれていました。また、
評をさせていただきます。
着香色革諸撮み巻、鞘は歌仙拵と同じ
その一翼を担うのが、今回の発表会
に出品してくださった無鑑査の方々を
審査をしていて気がついた点としま
して、切先がうまく研げていないもの
角所は栗形さぐりを本歌通りに、また
肥後拵で一番難しいのは鞘の肉置で、
す。また本発表会に当た り 審 査 に ご 尽
が見られました。切先の形の悪いもの、
力をいただきました審査 員 の 皆 様 に は
横手の角度の悪いもの、筋切りで刃か
柄巻も肥後拵の掟通りに仕上げ、よい
は歌仙拵風写しでした。柄は黒漆塗鮫
るようお願いいたします。
ど、三ツ頭などを蹴ってしまったもの
作品でした。
今回は刀装四点のうち優秀賞一点、
努力賞一点でした。まず優秀賞の刀装
当協会は、公益財団法人として、日
本刀という日本国の文化財の保護と伝
などがありました。切先は大変難しい
次に同じく肥後打刀拵ですが、柄は
黒鮫塗燻革で、巻き鞘は茶石目塗鞘肥
ですが、出品数が七点、うち一点が努
統技術の普及振興に寄与するという目
ところですが、切先がよく研げていな
後打刀拵、鞘の丸め方が大変よい出来
力賞とやや期待外れになりました。
的完遂のため、また刀剣界の益々の発
いと、姿に締まりがなく品のない刀に
始めとする職方の皆様であります。
な審査が実施されました 。
展に向けて役職員が一丸となって鋭意
なってしまいます。切先はもう少し慎
栄えでした。
この場をお借りいたしま し て 御 礼 を 申
本発表会は、刀剣類に 関 す る 伝 統 技
術の保存と向上を図り、 愛 刀 家 を 始 め
重に丁寧に研いでいただきたいと思い
し上げます。
とした多くの皆様に現代 技 術 の 優 秀 さ
努力してまいります。
ます。
く黒漆研出鮫腰刻鞘肥後打刀拵。また
を広く認識していただく と 共 に 、 そ の
皆様には、今後ともなお一層のご理
解とご協力を賜りますようお願いし、
今後とも更なる研鑽を積まれて、名
品と言われる作品を世に出してくださ
技術を後世に伝承してい く こ と 、 ま た
挨拶といたします。
さて、審査経過につい て は 先 ほ ど 事
務局より報告がありまし た が 、 今 回 の
文化財としての刀剣への 関 心 を 高 め て
審査は延べ三一名の審査 員 に よ り 厳 正
いただくことを目的とし て お り ま す 。
ともよい材料で、一見して全部入賞に
次は白鞘の部ですが、今回の白鞘の
出品数は八点でした。鞘の材料は八点
白鞘 刀・装の部講評 飯田学芸部長
見えましたが、審査員が一点一点入念
ぎは古くから伝わる研磨法で、大変味
され、次の世代へと伝承していただき
人でも多くの方が差し込み研ぎを勉強
されて来ていると思います。是非、一
わいの深い研ぎです。近年、大変見直
今回、無鑑査出品を含めて四点に差
し込み研ぎがありました。差し込み研
入選の作品ですが、拵を作るには古
いよい物をよく見て作ってください。
特賞受賞者
研磨の部講評 篠崎 公紀
本日は入選入賞されました皆さん、
おめでとうございます。
三点が特賞に入られました。
今回は、
研磨の部講評 篠崎公紀氏
たいと思います。
以上、簡単ですが講評とさせていた
だきます。
白鞘・刀装の部講評 前田幸作
僭越ながら白鞘の部と刀装の部の講
本日は受賞者の皆様おめでとうござ
います。
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優秀賞受賞者
努力賞受賞者
一人の落選者もなく全員入賞・入選さ
でとうございます。今回も昨年同様に
柄前の部講評 三谷修史
今回受賞されました皆様、誠におめ
なりました。
れました。
その結果、優秀賞二点努力賞一点と
に見て結果を出します。
優秀賞一席の鞘ですが、細身の刀で
材料がよく、
鞘の難しい技「搔き入れ、
出品数も多く、
全出品数一四点のうち、
磨き、目釘、鞘姿」をこなし、品良く
誠に残念ですが、特賞がなく、優秀
賞・努力賞のみとなり、優秀賞が一名
柄前の部講評 三谷修史氏
巻けています。全体に菱もよく整い最
優秀賞二席の入れ子鞘。刀身を入れ
仕上げられていました。
後の留がよく、特に裏側の出来がよい
で努力賞が二名入賞でした。入選者は
優秀賞の「鯨髭組上巻柄前」ですが、
と思いますが、柄形と鮫着せを少し研
子に入れるより、外の鞘に納めるのが
今回初めて見るよい作品です。柄形、
一一名でした。
鮫着せよく、鯨髭を組んで全体に菱も
難しいのです。それを入念に仕上げら
次に努力賞の鞘ですが、優秀賞の鞘
れたよい白鞘でした。
とはほとんど差はありません。材料も
究されてはと思いました。
の違いはありませんが、よく見ると鞘
次に入選の作品です。入賞の作品と
菱も揃って巻けています。また留めも
着せよく蛇腹糸が均一にたるみなく、
戸色蛇腹糸組上巻柄前」は、柄形、鮫
ほどの僅差です。努力賞一席の「鉄納
どちらが一席になってもおかしくない
もの、刀装具と柄糸の色の選択、特に
その違いは柄下地、鮫着せのよくない
が入賞してもおかしくない僅差です。
術的な差はあまりありません。どなた
ませんでしたが、入賞者も入選者も技
ますと、今年は常組糸の入賞者があり
次に入選を含め全体の講評をいたし
よく揃って巻けています。
が少しがたついていました。材料もよ
裏表ともよく出来ています。ただ出し
同じく努力賞ですが、一席と二席は
よく、鞘の姿また搔き入れもよく、特
く、仕上げもよいのですが、自宅の作
刀装具の選択によっては柄巻を駄目に
に鞘の磨き、目釘にいたるまで入念に
業場と協会の四階とは湿度の差のせい
目貫で、目貫がよく見えるよう巻いて
してしまう恐れがありますので注意し
仕上げられ、よい作品でした。
で鞘の木が締まって少し鞘に刀身があ
ていただいたいと思います。
ス、新しい型物の刀装具、また偽物銘
例えば縁頭と目貫の大きさのバラン
いますが、目貫の腰の下と糸の隙間を
下げるか、糸の巻き方をもう少し工夫
見せぬよう鮫着せを目貫の位置の所を
切先の張った刀は鞘の搔き入れが一
されてはと思います。
たっていたのが残念でした。
番難しいものですが、搔き入れを丁寧
の刀装具など、注意していただきたい
蛇腹糸ですが、違う所は左右上糸二本
来の作品だと思います、鯨の形態はヒ
最後に鯨髭ですが、協会始まって以
と思います。
を絡めて巻いている所の違いで、よく
巻柄前」ですが、一席の方と全く同じ
努力賞二席の「濃紺色蛇腹糸絡組上
にすればよい出来になります。
次の脇差の鞘ですが、古いよい鞘を
よく見て鞘作りをしてください。
次回の発表会の成果を期待して私の
講評を終わらせていただきます。
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と思います。刀の姿をよく見つめ眼力
刀の姿をよく見せるのも鎺の役目か
くと思います。来年も加州鎺の着せに
方の鑢を研究すればよいところまでい
研究されたと思います。ただ、棟方刃
作り込み、肉置き、色上げがよく出来
を養ってください。
入選一席から五席までの作品は、最
後の仕上げを隅から隅までしっかりと
ていると思います。御当地鎺をかなり
努力賞一席「素銅地金着上貝桔梗紋
透二重鎺」
。 作 り 込 み、 着 せ、 鑢 目 も
高さが低いことと、棟方の踏ん張りが
白銀の部講評 羽川 安穂
よく出来ていましたが、紋透かしの彫
仕上げることを心掛けてください。
ないように思います。
ひげの長さは種類によって違いますが、
りをもう少し研究してください。それ
来年も多くの出品がありますよう念
じております。
どうか次回も上位入賞者を参考に挑
一メートル前後です。
今年度の出品数は八点で、昨年より
本日は入賞、入選の皆様誠におめで
とうございます。
から昨年も話しましたが、地鑢を掛け
戦していただきたいとお願いをして講
素材としての鯨髭は釣 り 竿 、 傘 の 骨
一点多くなりました。出品された作品
ると着せた金がのびます。上貝の着せ
ゲクジラ亜目とハクジラ 亜 目 に 、 大 き
または柄、扇子、ぜんま い ば ね 、 呉 服
を見ますと、かなり技術が向上してい
く分けられて、ヒゲクジ ラ 類 は 歯 を も
尺、着物を仕立てる専用 の 物 差 し の 材
ると思います。優秀賞が一点、努力賞
評といたします。
料(鯨尺と呼ばれる、長 さ の 単 位 ) そ
た金に地鑢を掛けた後は、しっかりと
「 ひ げ 板 」 ま た は「 鯨 髭 」 の こ と で 、
くじら ひげ
して刀の鞘、柄巻など江 戸 時 代 か ら 多
二点、入選五点となりました。審査に
上貝の上下を締め付けて仕上げてくだ
た な い が、 ひ げ と は 上 顎 か ら 生 え た
く使用されていました。 一 昨 年 で し た
は文化庁から二名、協会会長と専務理
さい。
を光栄に思うとともに、先人達に恥じ
私達刀職者は、世界に誇れる文化遺
産である日本刀の仕事に携われること
御指名により出品者を代表いたしま
して御挨拶させていただきます。
まして、心より御礼申し上げます。
席を賜り、丁重な御言葉を頂戴いたし
本日は第六十六回刀剣研磨・外装技
術発表会の表彰式に、皆様方多数ご臨
答辞 出品者代表 井上 聡
挑戦してみてはどうでしょうか。
か、私がよい材料を得る の も 技 の 内 と
事の立会いのもと、いつもながらの公
努 力 賞 二 席「 素 銅 地 一 重 加 州 鎺 」。
平な審査でした。
答辞 出品者代表 井上聡氏
申しましたが、初心者に は 頭 の 痛 い こ
優秀賞「素銅地金着上貝葵紋透二重
鎺」
。作り込みも着せも鑢目もよく作
とと思います。
会場風景
られていました。また紋の仕上げもよ
くなっておりますが、刀身と鎺が何か
しっくりしない感じです。これは腰の
白銀の部講評 羽川安穂氏
ないよう肝に銘じ、精神と技術を錬磨
し、日本刀の保存と発展のために全力
を尽くす所存でございます。
諸先生方始め諸先輩の皆様方には、
今後とも御指導御鞭撻を賜りますよう
よろしくお願い申し上げます。
誠に簡単ではございますが、これを
もちまして答辞とさせていただきます。
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