特集/景観形成における色彩の効果と重要性 第1 7回グッド・ペインティング・カラー最優秀賞(改修部門) 受賞者インタビュー アーチ部を際立たせた2色の塗り分けで 四季を通じて周辺との調和を実現 — 里美大橋 大日本塗料㈱ 建築・構造物塗料事業部 建築塗料MG 宮脇 ひろみ氏 木々に囲まれたアーチ橋 まず、受賞作品「里美大橋」の概要をお教え下さい ― 里美大橋は、茨城県北部の常陸太田市に流れる里川に 架かる橋梁です。茨城県を縦断している国道349号線か ら栃木方面に向かう県道36号線に少し入った場所にあ ります。道路は2車線で、橋の長さは235mありますので、 比較的大きな橋と言えます。 「里美大橋」塗り替え工事のカラープランを手がけた、 宮脇ひろみ氏。 橋が架けられたのは平成9年で、当初は彩度の高い赤 とオレンジ色で塗られていました。それらが経年で色褪 季節によって変化する景色 せてきたため、今回、初の塗り替えを行うことになりま した。 どのようなコンセプトで立案されたのでしょう ― 橋は中路式のアーチ橋と呼ばれる構造です。谷に架 施主様からは、 「紅葉の景色を生かしたい」という基本 かっていることもあって、主桁から下に長くアーチが伸 的なご要望がありましたので、それを出発点として提案 びる特徴的なデザインになっています。 色を考えていきました。ですが、自然の景観には、紅葉 する木々と紅葉しない常緑樹が入り交じっています。つ とてものどかな場所に架かる橋のように見えますが、 まり、紅葉の季節であっても完全に赤や黄色系統の色合 周辺の環境はどうですか ― いになってしまうのではなく、緑の部分が残っていると 写真では大自然の中にポツンと橋があるように見えま いうことです。また、季節によって自然の色は大きく変 すが、周囲には民家が点在し、また交通量もほどほどに 化します。夏には周囲の緑がとても強くなりますし、冬 あり、人気がまったくないという場所ではありません。 になると畑や河川敷などの緑がなくなりやや冷たい感じ ですが、木々や草など植物の存在感はやはり強く、秋に になります。このように一様ではない自然のなかで、紅 なれば紅葉も美しく、季節によって景色が大きく変化し 葉だけを基準にして色を決めると、周りから浮いてしま ます。近くには袋田の滝や竜神大吊橋などの名所もあり う結果になります。ですから、紅葉を念頭に置きつつ、 ますので、観光に訪れる方が利用する橋でもあります。 四季を通して調和する配色をテーマにしました。 里美大橋の色彩計画を手がけることになった経緯をお 2色にすることは、初めからお考えでしたか ― 教え下さい ― 実はこの塗り替え工事の元々の計画では、 「単色」とい 当社の営業担当が、施主様の茨城県常陸太田土木事務 うのが施主様の意向でした。ですが、この橋の独特な形 所様からこの橋の塗り替えの仕事をいただいて、塗料と 状を見た時、少し重たい印象を受けました。それを軽減 セットで色彩計画を提案することになりました。施主様 させたいと考え、2色に塗り分けることを提案しました。 が意欲的で、また観光名所が近いということもあり、塗 最初にもお話ししましたが、この橋はアーチ橋なので り替えの色について思案されていて、それが私たちの提 すが、主桁から下のボリュームが大きく、また、組まれ 案を検討していただける要因にもなりました。 た鉄骨も太く、全体的にがっしりとした印象を受けます。 それを軽快で優雅に見せるために、主桁および主桁から Vol.40 No.476 2015-3 41
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