﹁ 西 馬 音 内 盆 踊 り ﹂の 不 思 議 な 魅 力

GCJ
大人のための知的冒険の旅
清家久美子
R O F
I
L
﹁西馬音内盆踊り﹂
の
不思議な魅力
劇団わらび座舞踊講師
P
E
1996年から劇団アート・ボディ・コンディショニ
ングの仕事に就き、養成所研究生や俳優の舞踊を
担当しながら、大学の特別講座「日本の踊り入門
(講義と実技)」講師や、小・中学校、不登校の若
者たちへの「こころと体を拓くワークショップ」、
全国の女性の皆さんを中心とした「からだの中か
ら美しくなる健康教室」、「介護者のため
の健康教室」、地元の民謡を素
材に踊りの振り付けなど
も行っています。
2011/7/20 発行
Global Campus 秋号
221
Vol.
鎌倉時代から700年にわたって踊り継がれる秋田県羽後町の「西馬音
内(にしもない)盆踊り」
(8/16-18)は、他に例を見ない独特の趣があります。
その魅力の秘密は「不調和の調和」といわれています。
勇壮なお囃子と優雅な踊りの対比。不調和なようでみごとに融けあっ
ています。また、ゆっくりとした優雅な舞いの「音頭」に対し、早くて流れ
るような「がんけ」の踊りの対比。そして色彩豊かな「端縫い」衣装に対
し、モノトーンの粋で幽玄な「藍染め」の衣装の対比。さらに「編み笠」と
「彦三頭巾」の対比など、魅力にあふれています。
劇団わらび座では長い間にわたってこの踊りを舞台にあげてきました
が、衣装を着て編み笠を被った瞬間、西馬音内の人になったような昂揚し
た気分になります。この夏は、ぜひごいっしょにその世界に浸りましょう。
(P.2 に続く)
﹁西馬音内盆踊り﹂の不思議な魅力
︵表紙からの続き ……
︶
成年になっていない女性は目だけがでる彦三頭巾をかぶって踊ります
西馬音内盆踊りの起源と特徴
1年の節目としての盆踊り
この盆踊りは約700年前に豊年祈願として
踊り手は編み笠を深くかぶって顔を見せない
踊られたのが始まりとされています。
さらに時代
ようにしています。
黒い頭巾は彦三頭巾といい、
を経て慶長6年
(1601年)
に滅ぼされた西馬音
亡者踊りから受け継がれているものです。
編み
内城主を偲んで家臣たちが踊る
「亡者踊り」
とあ
笠は
「がんけ踊り」
の振りを引き立たせるために
わさって、
いまの形になったといわれています。
前後を跳ね上げた大きな笠になっています。
反
いまの衣装は、
昭和10年に東京で行われた第
り上がった笠の後ろと着物の襟を抜いて見え
9回全国郷土舞踊全国大会に出場したときから
るうなじが一直線になって、
みごとな美しさをか
のものです。
江戸時代、
日本海沿岸を北上して
もし出します。
交易を行った北前船が上方文化を東北に伝え
どの地方の伝統芸能や祭り、
盆踊りもそうで
る役割を果たしていました。
このまちの近くに
すが、
1年のしめくくりがこの盆踊りの時期で、
あった大きな銀山では、
江戸や上方の芝居や踊
心をひとつにして囃し、
唄い、
踊り、
これが終わ
りが上演されていたと伝えられており、
衣装や
れば、
また新しい年に向かってみなで進んでい
踊りの振りには、
江戸や上方の影響もあったと
けるという思いで踊られます。
今年の盆踊りは、
思われます。
未曾有の被害をもたらした大震災で亡くなった
音頭は
「日本のラップ」
といわれる秋田音頭と
方々への鎮魂の思いと、
生き残ったものが強く
同じ様式で踊り手たちの心を開放する役割を
生きていくという決意をこめて踊られるものと
果たしています。
太鼓・笛・三味線のお囃子に
思います。
のって地口といいわれる歌詞が、
世間世情を風
刺したもの、
ユーモアに満ちたもの、
支配層にさ
さやかな抵抗をみせたもの、
など野趣に富んで
います。
♪
「今年の踊り子 揃いも揃うた ほんとに
よく揃うた 手つき足つき 品良く踊れば 嫁
こに世話するぞ」
。
また
「がんけ」
は、
緩やかな哀調のあるお囃子に
のせて優雅に踊られます。
♪
「お盆恋しや かがり火恋し まして踊り
子なお恋し」
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