2004.9.10 鉛フリー無電解ニッケルめっき液 (一般めっき編) メルテックス株式会社 研究部第1研究室 1 環境規制 RoHS規制(有害物質使用規制)と WEEE指令(廃電気電子機器の法規制) 施行 2007年1月1日(実質2006年7月1日) 規制金属 Pb , Hg , Cdおよび6価Cr 規制濃度 Pb 0.1wt%以下 (注)車載電気電子機器はELV指令による。 2 リン含有率によるめっき皮膜の特性と応用事例 特殊素材への 密着性 付きまわり 耐磨耗性 Auめっき下地 耐アルカリ性 作業効率 低リン ガラス ITO 応用事例 ポリイミド 耐薬品設備 非磁性 耐食性 高抵抗 中リン 高リン PCB シャフト ピストン 鋳物 チップ抵抗体 ボタン HD基板下地 腐食環境設備 3 無電解ニッケルめっき液の構成成分 成分 ニッケル塩 還元剤 錯化剤 安定剤 pH調整剤 添加剤 例 硫酸ニッケル、塩化ニッケル 次亜リン酸塩、ヒドラジン、 水素化硼素化合物 有機酸あるいはその塩、EDTA誘導体 重金属 カドミウム(海外),鉛(国内) 硫黄化合物 水酸化ナトリウム、アンモニア、硫酸 界面活性剤、光沢剤 等 4 弊社製品例 製品名 浴種 リン含率(wt.%) 用途 メルプレート NI-6505LF メルプレート NI-2250 メルプレート NI-865T メルプレート NI-871 メルプレート NI-2230 メルプレート NI-2290LF メルプレート NI-2295BF メルプレート NI-802 メルプレート NI-6507MF メルプレート NI-6509MF 4~6 4~6 Pbフリー 6~8 6~8 7~9 10~11 有害重金属フリー 10~12 3~6 重金属フリー 4~6 6~8 PCB 一般 PCB 一般 一般 一般 一般 EMI PCB PCB 5 従来の鉛フリー無電解ニッケルめっき浴 環境対応 というわけではなく、皮膜特性を得る手段 (例) 重金属フリー浴 (S系安定剤使用) Pbフリー浴 (代替金属使用) 低リン皮膜 光沢皮膜 6 Pbフリー無電解ニッケルめっき液 • 重金属安定剤 X(法規制なし、毒性有り) • 将来的に規制される可能性あり • 稼動実績多 • 浴安定性良好 • 低リン浴~高リン浴まで対応可能 • 一般めっき~PCB用無電解ニッケルで使用可 • 光沢めっき皮膜 7 有害重金属フリー無電解ニッケルめっき液 • 重金属安定剤 Y(法規制なし、毒性なし) • Yだけでは、浴安定性に欠ける • 低リン浴~高リン浴まで対応可能 • 一般めっきで使用可能 (PCBファインパターンでは困難) • 皮膜応力が、圧縮傾向が強い • 有機光沢剤使用により高光沢めっき皮膜可能 8 重金属フリー無電解ニッケルめっき液 • 硫黄系安定剤使用 • 稼動実績多 • 低リン浴~中リン浴まで対応可能 (高リン浴不可) • 一般めっきでも使用可能であるが、主にPCB用 • 浴安定性良好 • 硫黄系安定剤の管理が必要 9 安定剤の管理 Pbフリー浴 (重金属X使用) 有害重金属フリー浴 (重金属Y使用) 従来のS系安定剤 S系安定剤 めっき液(酸性) 定量が困難 高価な装置が必要 原子吸光分析 or ICP発光分析 =Pbと同じ 重金属フリー浴 (S系安定剤使用) 定量が可能に 10 皮膜への重金属安定剤 の共析 鉛安定剤を使用 Pb2+ Pb2+ Pb2+ Pb2+ 無電解ニッケル/リンめっき 浴中の鉛は無電解ニッケル めっき皮膜中に取りこまれる P Pb Ni Ni Ni P Ni Ni 11 皮膜中の重金属安定剤共析量 ステンレス基板 めっき皮膜 (約30μm)を剥離 無電解Ni-Pめっき液 Ni-P皮膜 熱濃硝酸 めっき皮膜を完全に溶解 硝酸中のPb濃度 を分析(ICP-OES) 12 共析量測定結果 鉛タイプ 鉛フリータイプ 有害重金属 フリータイプ 安定剤 皮膜共析量 (mg/kg) Pb 175~784 X 800 Y 860 各重金属安定剤はニッケルと共析する 共析量は、各安定剤により異なる 13 めっき皮膜中の炭素および硫黄濃度 0.05 mass% 0.04 0.03 鉛フリータイプ 重⾦金金属フリータイプ 0.02 分析方法 炭素:JIS G 1211(赤外線吸収法)準拠 硫黄:JIS G 1215(赤外線吸収法)準拠 0.01 0 炭素 硫硫⻩黄 S系安定剤もめっき皮膜に 取り込まれる。 14 まとめⅠ (安定剤の共析) 重金属安定剤 (Pb , X , Y) めっき浴中の はめっきへ共析する 硫黄系安定剤 共析量は重金属安定剤により異なる 15 鉛フリー無電解ニッケルめっき皮膜の性能評価 ~一般めっきで問われる諸性能~ 評価項目 耐酸性(硝酸浸漬試験) 耐食性(塩水噴霧試験) 硬度(ビッカース硬度) 光沢度 皮膜内部応力 SEM外観 無電解ニッケル 鉛タイプ 鉛フリー 有害重金属フリー 16 耐酸性試験~硝酸浸漬試験~ 鉄ハルセル板 鉛、鉛フリーおよび 有害重金属フリー 中高リンめっき浴 無電解ニッケル皮膜 20℃の試薬1級硝酸 P 10~11 wt.%(5μm) に1分間浸し、水洗後 目視にて評価 17 浸 漬 部 分 参考 浸 漬 部 分 中リン皮膜(P:7~9wt.%) 浸 漬 部 分 鉛フリータイプ 鉛タイプ 浸 漬 部 分 有害重金属フリータイプ • 金属安定剤の影響を受けない • リン含有率に依存 18 耐食性試験 ~塩水噴霧試験~ 評価方法 : JIS H 8502 曝露時間 : 1サイクル(24hr) めっき浴 : 中高リンタイプ 膜厚 : 10μm (P 10~11wt.%) 錆の発生メカニズム ピンホール Ni 下地(鉄) 塩水噴霧 赤錆 下地(鉄) 19 レイティングナンバー 1 多 腐食点 10 なし 浴老化度 レイティングナンバー 鉛タイプ 9以上 鉛フリータイプ 9以上 有害重金属 フリータイプ 9以上 20 硬度測定 試験方法 ニッケル断面を使用し、ビッカース硬度を測定 加熱試験 1時間、400℃ 1200 めっき直後 加熱後 ビッカース⾼高度度(HV) 1000 800 600 400 200 0 鉛タイプ 鉛フリータイプ 有害重⾦金金属フリータイプ ビッカース硬度測定結果 21 ■測定方法 光沢度計 (1MTO毎に測定) ■皮膜膜厚 4~6μm ■浴種 中高リン無電解ニッケ ルめっき浴(S系化合 物および有機光沢剤 非含有) 1000 光沢度度(-‐‑‒ ) 皮膜光沢の測定 500 0 鉛タイプ 鉛フリータイプ 有害重⾦金金属フリータイプ 有害重⾦金金属フリー+光沢剤 0 1 2 3 4 5 6 浴⽼老老化度度(MTO) 皮膜光沢 金属安定剤に依存 22 皮膜内部応力 ■測定方法 テストストリップ法 (1MTOごとに測定) 200 引張り 150 応⼒力力(MPa) ■めっき浴 中高リンめっき浴 (応力緩和剤非含有) 250 100 50 0 2 4 6 0 -‐‑‒ 50 -‐‑‒ 100 -‐‑‒ 150 -‐‑‒ 200 -‐‑‒ 250 圧縮 鉛タイプ 鉛フリータイプ 有害重⾦金金属フリータイプ 浴⽼老老化度度(MTO) 皮膜内部応力 鉛タイプ 圧縮応力→引張り応力 鉛フリー 弱い引張り応力を維持 有害重金属フリー 弱い圧縮応力を維持 安定剤に依存 23 表面観察(SEM) ■中高リンめっき皮膜 (リン含率10~11wt.%) 10μm Pb安定剤タイプ 有害重金属フリータイプ 鉛フリータイプ 24 まとめ(一般めっき性能評価結果) 鉛タイプ (従来品) 鉛フリー タイプ 有害重金属 フリータイプ 耐酸性 良好 良好 良好 耐食性 良好 良好 良好 皮膜光沢 光沢 高光沢 半光沢~光沢(光沢 剤併用で高光沢) 550~600 550~600 550~600 1000~1050 1000~1100 1000~1100 圧縮~引張り 弱い引張り 弱い圧縮 HV硬度 皮膜内部応力 25
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