●我が国で開発されている石炭利用技術(1) 加圧流動床燃焼複合発電技術(PFBC) 加圧流動床燃焼複合発電プロセスフロー 従来の技術では燃焼しづらかった石炭をクリーンに ガスタービン 加圧流動床ボイラ 超高温蒸気タービン 利用できるようにしたのが、流動床燃焼システムです。 (Pressurized Fluidized Bed Combustion)複合発 電システムで、わが国では現在3基の商業プラントが サイクロン ボイラ 空気 高圧 コンプレッサ 低圧ガス タービン 発電機 低圧 コンプレッサ 発電機 灰 高圧ガス タービン 稼働しています。 復水器 石炭 石灰石 灰 圧力容器 1次、2次サイクロン 蒸気タービン 再熱蒸気 容易に利用することが可能になりました。このシステ ムをより高効率・コンパクト化した技術が加圧流動床 主蒸気 圧力容器 セラミックフィルタ このシステムによって、世界中から集められる石炭を インター クーラー 電気集じん装置 冷却水 灰 循環水 ポンプ 燃料スラリー ポンプ 混合機 脱気器 煙突 流動床ボイラー 給水 脱硝装置 石炭バンカー 給水 ポンプ 復水ポンプ 低圧 ヒータ 排ガスクーラー(節炭器) 脱硝装置 排熱給水加熱器 ガスタービン 燃料スラリーポンプ 高度加圧流動床燃焼複合発電技術 (A-PFBC) A−PFBC(Advanced Pressurized Fluidized Bed 蒸気タービン 九州電力(株)苅田発電所PFBCプラント ( 360MW) Combustion)は、PFBC(加圧流動床燃焼ボイラ) を さらに前進させた技術で、石炭を一部ガス化するこ とによって可燃性ガスをつくりだし、ガスタービン入 口で燃焼させ温度を上昇し、より高効率でガスター ビン発電機を回す一方、熱回収によって高温蒸気を つくりだし蒸気タービン発電機を回す複合発電シス テムです。また、生成ガス中の硫黄分は脱硫炉によ って除去し、酸性雨のもとになる硫黄酸化物の発生 を抑えます。 A-PFBC複合発電システムフロー 高温蒸気回収 高温脱硫システム サイクロン クーラ 950℃ 脱硫炉 DeS 中温域セラミックフィルタ 精密脱じん 450℃ SGC 石灰石 ガス化試験実績等の活用 圧縮空気 PFBC(P) 石炭ガス化対応ガスタービン 1350℃級 ガスタービン 石炭 空気 部分酸化炉:PFBC(P) チャー & CaS 中間 サイクロン 排熱回収ボイラ [HRSG] 煙突 PFBC 復水器 蒸気タービン 灰・石膏 酸化炉:PFBC 蒸気 空気 蒸気タービン高効率化 20 流動床セメント焼成技術 従来のロータリーキルン方式(ロータリーキルンにセメ ント原料粉(石灰、粘土等の混合物) と微紛炭を投入 し、造粒焼結させる方法) によらず、セメント原料およ び微紛炭を流動床炉(焼成炉)および噴流床炉(造粒 炉) を組み合わせて造粒焼結させる技術です。これ により、熱効率が向上するためNOxやCO2の排出抑 制がはかれると共に多品種セメントの生産にも対応 できます。 サスペンションプレヒータ 流動床方式と ロータリキルン方式の比較 造粒炉(SBK) サスペンションプレヒータ 焼成炉(FBK) ロータリキルン エアクエンチングクーラ 流動床クーラ (FBQ) 流動床セメント製造スケールアッププラント (焼成量200トン/日) 移動床クーラ (PBC) 流動床方式 ロータリキルン方式 SCOPE21プロセスフロー 石炭高度転換コークス製造技術 (SCOPE21) 粉石炭 高温ブリケッティング 350∼ 400℃ SCOPE21は、生産性を格段に向上し、環境に十分 粗石炭 配慮した、エネルギー消費の少ない革新的なコーク 350∼400℃ ス製造プロセスです。 急 加 速 熱 炉 石炭 運搬コンベア 圧密器 シ ー ル ド 扉 コークス炉 シ ー ル ド 扉 750∼ 800℃ を、350∼400℃で急激に加熱し、その後ブリケット 1000 再加熱 ℃ システム 化してコークス炉に装填します。コークス炉の温度 は750∼850℃で、従来より短時間で乾留を行います。 乾燥器 乾留後のコークスは、1,000℃で改質し、高強度のコ 高温ガス 燃料 このプロセスでは、一般炭を50%配合した石炭原料 排ガス コークス 150∼200℃ 溶融還元製鉄技術(DIOS) ークスとなります。 DIOS法 予熱炉 従来の高炉法(原料炭をコークスとしたもの及び鉄鉱 石を焼結させたものを原料とし、高炉で溶銑を生産 鉄鉱石 する方法) によらず、粉状または粒状の一般炭と鉄鉱 石をそのまま使用し、銑鉄を生産する技術です。こ れにより生産の弾力性の向上や熱効率の向上がは 予備還元炉 石炭 石炭添加 ガス改質 酸素 かれます。 溶融還元炉 溶銑・スラグ 窒素 21 ●我が国で開発されている石炭利用技術(2) 石炭ガス化複合発電(IGCC) 微粉の石炭をガス化炉に供給して、約3MPa、1300∼ 発電し、その排ガスの持っている熱を回収して蒸気 1800℃の条件で、空気あるいは酸素と反応させて、水 を発生させ、さらに蒸気タービンを回して発電を行 素・一酸化炭素を主成分とする燃料ガスを発生させま います。このガスタービン及び蒸気タービンによる複 す。燃料ガス中のダスト、硫黄化合物および微量金属 合サイクル発電により石炭のもっているエネルギーを などの不純物は、脱塵・脱硫設備などで除去し、きれ 有効に電気に変換できる高効率発電システム (送電 いな燃料ガスにしてから、ガスタービン燃焼器に供給 端効率46∼48%) を構築することができます。 I GCCプラントの概念図 提供:㈱クリーンコールパワー研究所 します。この燃焼ガスの勢いでガスタービンを回して 石炭加圧 供給設備 ガス化炉 脱塵設備 脱硫設備 石炭ヤード ガスタービン 空気分離装置 蒸気タービン ST N2 G GT G O2 排熱回収 ボイラ 煙突 空気昇圧機 石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC) 石炭をガス化し、そのガスを使って燃料電池、ガスタ 固体電解質型等の燃料電池があります。燃料電池を ービン及び蒸気タービンにより発電する技術です。 出た高温高圧のガスを利用してさらにガスタービン 燃料電池は水の電気分解の逆の原理で、陽極に酸 及び蒸気タービンを回して発電します。この発電シ 素を、陰極に燃料ガスを連続的に供給して、電気化 ステムでは、石炭のもっているエネルギーを効率的に 学的に反応させることにより、燃料のもつ化学エネル 電気に変換することができる、IGCCよりさらに高効 ギーを直接電気エネルギーに変換するものです。燃 率な発電システム (送電端効率55%以上) です。 EAGLEパイロットプラント (150トン/日) 提供:電源開発㈱ 料電池には、リン酸型のほかに溶融炭酸塩型および 石炭 石炭ガス化炉 送電端効率(発電): 55% : 31% CO2削減 脱硫塔 石膏回収装置 水洗塔 シンガス クーラ 石膏 再生塔 GGH COS転換器 セラミック フィルター FC AC DC スラグ 排熱回収ボイラー 燃焼タービン 精留塔 廃水処理装置 煙突 蒸気タービン 復水器 26 ハイパーコール利用高効率燃焼技術(Hyper Coal) 石炭を溶剤抽出及びイオン交換処理することで、石 溶剤抽出で得られるハイパーコールは元の石炭の約 炭から灰分やアルカリ金属等を排除した無灰石炭 60∼70%で、残りの30∼40%は灰分を含む残渣炭と (ハイパーコール)を製造し、それを金属、非金属精 なります。この残渣炭は既存の微粉炭火力等で使用 錬用の炭材として、PFBCや微粉炭火力の燃料とし することができ、ハイパーコールと残渣炭の両方を使 て、またIGCCやIGFCの燃料として、更にはガスタ った場合の総合効率は45%となり、既存の石炭火力 ービンで直接燃焼させる複合サイクル発電システム に比べてCO2の排出が15%削減できます。 への利用などが考えられています。 石炭(固形) ハイパーコール製造所 可溶分+溶剤 原炭+溶剤 溶剤循環ライン スプレー ドライヤー 粗脱灰炭 (灰分5%以下) 混合器 セトラー イオン交換塔 回収率 ハイパーコール 60∼70wt% スプレー ドライ ヤー ドライヤー 微粉炭 火力発電所 回収率 残渣炭 30∼40wt% 石炭液化技術(NEDOL法) 水素供与性溶剤のメリットと鉄系微紛触媒による液化 重質油はリサイクルして軽質油のみ製品として取り出 反応の促進効果を両立させた一段液化法で、低品 すので、付加価値の高い製品が得られ、他のプロセ 位の亜瀝青炭に至る幅広い炭種の液化が可能です。 スに比べて高い液体の収率が得られます。 瀝青炭液化技術(NEDOL法)のプロセスフロー 石炭前処理技術 液化反応設備 液化油蒸留設備 ガ ス 鉄系触媒 石 炭 分離器 循環ガス圧縮機 常圧蒸留塔 水素 スラリー混合機 水素圧縮機 石 炭 ビ ン スラリー 貯槽 予熱炉 170kg/cm2G (16.7MPa) 450℃ スラリー 熱交換器 高圧 スラリーポンプ 高温 分離器 減圧蒸留塔 レッドダウン バルブ 分離器 燃料 残渣 ストリッパー 溶剤水素化 反応塔 加熱炉 予熱炉 溶剤昇圧 ポンプ 溶剤水素化設備 27 水素 110kg/cm2G (10.8MPa) 320℃ (水素供給性溶剤) 灯・軽油留分 液化反応塔 (3基) 燃料 乾燥粉砕機 ナフサ留分 燃料 (重質油留分) 石炭利用CO2回収型水素製造技術 (HyPr-RING) 石炭利用CO2回収型水素製造プロセスの一例 高温高圧 反応器 石炭を高温高圧水(650℃、100気圧以上) で、生成す 冷却水 るCO2を吸収剤CaOで吸収しながら反応させること 水素 熱交換器 により、極めて大量の水素を効率よく生産し、CO2を ポンプ 容易に分離回収することが可能な技術です。 ガス 分離器 このプロセスにより、石炭から未来のクリーンエネル ギーといわれている水素を大量に生産できるので、 CO 2 石炭 そのまま燃料電池、水素ガスタービン、水素自動車及 混 合 機 CaCO 3、 2、 Ca (OH) Char、灰分 水 び化学原料として使うことができます。高温高圧反 固液分離器 CaCO 3 応装置内では以下のq∼eの反応が進行し、総括 CaO & 灰分 反応はr式で表わされます。この式から、生成ガス 素が生成する発熱反応であることがわかります。 石 炭 q CO + H2 O → CO2 + H2 △H°298 = −42 kJ/mol w CO2 + CaO → CaCO3 △H°298 = −178 kJ/mol e C+2H2 O+CaO→ CaCO3 +2H2 水 素 水 △H°298 =132 kJ/mol C + H2 O → CO + H2 熱 力焼炉 CaO & 灰分 は水素のみであり、また1モルの炭素から2モルの水 △H°298 =−88kJ/mol r この考え方に基づき、実際に高温高圧条件で各種反 高温高圧反応装置 応実験を行った結果、水素が生成することが確認さ CaCO 3 CO 2吸水剤 CaO (CaO) CO 2 れ、この原理に基づくCO2回収を含めた石炭利用CO2 回収型水素製造技術の開発が進められています。 ジメチルエーテル (DME:Dimethyl Ether) ジメチルエーテル製造プロセスのフロー パージガス 35m3 N/h DMEは、天然ガス、石炭あるいは炭層メタンなど から製造され、LPGと性状が近いことから、LPG代 CO 2 替としても利用できる、クリーンな合成燃料です。 CO 2 未対応ガス 天然ガス DME 5t /d 炭層メタン DME直接合成プロセス 石炭 高カロリー、低環境負荷のDMEを 安価に効率よく製造するプロセス技術 酸素 スチーム ガス化 気液分離器 〈天然ガス〉 貯蔵や輸送が困難、 中カロリーガス (8,600kcal/m3) 〈石炭〉 固体状態で灰分や 硫黄などのプロセスに 有害な物質を含む リフォーミング CO、CO 2、H 2 合成ガス発生炉 C―O H―H C―O C―O H―H H―H DME直接合成プロセス (新触媒) H H | | | H H メタノール ガス精製塔 DME合成反応器 CO 2 分離塔 DME精製塔 0.8t /d DMEは、その構造式(CH3 -O-CH3)が示す様に、 ピュ アーで水素リッチなクリーン燃料です。また、低沸点 であることからハンドリングがし易く、GTL (Gas To Liquid)と同様一般用燃料や自動車用燃料として利用 することができます。そして、ディーゼル車の排気ガ ス問題も含めて、経済と環境の両面において期待さ H―C―O ―C―H | 反応条件 250∼280℃ 3∼7Mpa 750m3 N/h れています。 DME ◆ 無公害、無毒な高カロリーガス (14,200kcal/m3) ◆ 6気圧で液化、輸送・貯蔵が容易 ◆ クリーンなディーゼル燃料 28
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