高次脳機能障害学 - 下井研究室 - 国際医療福祉大学

高次脳機能障害学
国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科
下井俊典
前回の講義
「高次脳機能」とは?
「認知」と「行為」・「動作」
認知と行為・動作の関係
脳の機能局在と高次脳機能
-脳機能局在論-
次の展開図を組み立てると、
A~Dのいずれのサイコロとなるか
男
空間能力に優れて
いる
右脳
• 早期に発達
• 男性ホルモン
(テストステロン)
• 狩人として進化
女
よくしゃべる
同時に複数の作業が
こなせる
直感が鋭い
脳梁が発達
男性の1.3倍
女性ホルモン
(エストロゲン)
視覚伝導路
交連切開術患者に関する
Sperryの研究風景
視覚刺激は半透明の
スクリーンに、0.1秒間、
後方のプロジェクタから
投影される
スクリーンの下から、左手で
テーブルの物に触ることが
できる
被検者は周辺視を塞いだ
眼鏡を着用
…
左右大脳半球は独立し、
脳梁で連絡している
優位半球
言語中枢
計算
意味記憶
劣位半球
空間認知
単純な言語理解
非言語的理解
脳の機能局在
-Brodmann areaブロードマンによる大脳新皮質の解剖学・細胞構築学的
区分の通称
大脳皮質組織の神経細胞を染色して、均一な組織構造を
1~52領野(area)まで区分
脳の機能局在の限界
ブロードマンの脳地図の限界
あくまでも「回」における領域であり,皮質の
大部分を占める「溝」の区分ではない
脳の個人差を十分に捉え切れていない
ペンフィールドの子びと
(ホムンクルス)
大脳の血管支配領域
前大脳動脈
(ACA)
中大脳動脈
(MCA)
後大脳動脈
(PCA)
大脳皮質の構造と
空間認知、物体認知
大脳皮質の6層構造
Ⅰ
Ⅱ・Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
第Ⅱ・Ⅲ層: 同・対側の大脳皮質との
「連合」「統合」
第Ⅳ層: 感覚器官・視床から大脳皮質への
求心性連絡
大脳皮質の階層的連絡構造
第一次領域
知覚された情報を構成要素に
分解・コード化
第二次領域 • 第Ⅱ・Ⅲ層が発達
• 複雑な運動プログラムの準備
分解・コード化された情報の
分析・統合、感覚経験の加工、貯蔵
第三次領域
第一次・二次領域の上部構造
39, 40野、頭頂下部領域
視覚伝導路
空間認知と物体認知の経路
1, 2, 3野:体性感覚野
4野:一次運動野
下頭頂小葉後部
背側経路
(dorsal stream)
19野:一次視覚野(V1)
下側頭皮質
腹側経路
(ventral stream)
頭頂葉
• 空間認知(where)
• 空間への能動的動作
例)空間を通って歩く、対象物に手を伸ばす
、
飛んでくるものを避ける
側頭葉
• 対象物の認知(what)
• 適切な感情で対象物への反応
腹側経路(what)と背側経路(where)の解離
(Levine, 1985)
症例1
18歳:交通事故、劣位
側頭葉前部切除
回復後、大学・大学院を
卒業、牧師となる
視力障害(-)
臨床症状
「象」のイメージ描画
動物、時計などを模写できるが、イメージで描画できない
熊とライオンの特徴・違いの説明できない
街を迷わずに行動できる
市内の道順を詳細に説明できる
症例2
脳出血にて頭頂-後頭葉の両側性損傷
視力障害(-)
4フィート(1.2m)先の25セント硬貨がわかる
臨床症状
対象物(物、人の顔、動物)の特徴、色を正しく説明可能
自分の家の中で迷う
5年以上通っていた近所の
店までの道順を説明不可能、
店・店主の特徴は説明可能
地図上の方向を説明・指示
不可能
左:イメージによる「4時30分」の時計
右:時計の模写
KIさん, H18-3
頭頂葉(皮質第3次領域)障害
による空間認知障害
大脳皮質の階層的連絡構造
第一次領域
第二次領域
第三次領域
知覚された情報を構成要素に分解・コード化
• 第Ⅱ・Ⅲ層が発達
• 複雑な運動プログラムの準備
分解・コード化された情報の
分析・統合、感覚経験の加工、貯蔵
第一次・二次領域の上部構造
39, 40野、頭頂下部領域
1, 2, 3野:体性感覚野
4野:一次運動野
下頭頂小葉後部
背側経路
(dorsal stream)
19野:一次視覚野(V1)
下側頭皮質
腹側経路
(ventral stream)
第3次領域の障害
空間認知の障害
空間内の定位能力の障害
左右見当識
構成失行
優位半球
Gerstmann症候群(優位半球頭頂-後頭領域)
健忘失語
劣位半球
身体空間失認、半側空間無視(劣位頭頂-後頭領域)
病態失認(劣位頭頂-後頭領域)
相貌失認(劣位後頭領域)
半側空間無視
USN: Unilateral Spacial Negrect
概念
大脳半球病巣と反対側の刺激に対する、発見・
報告・反応・注視の障害
刺激
視覚刺激、呼びかけ
症状
線分抹消試験
時計描画課題
身体空間失認(半側身体失認)
-hemiasomatognosia概念
自己の半身(主に左半身)の身体像に関する
認知の障害
症状(分類)
麻痺側が存在しないかのように振る舞う
病態失認
麻痺側(主に左側)を自分のものとして扱わない(alienhand syndrome、 「他人の手症候群」 )
不使用
麻痺がないにもかかわらず、(左)半身を使おうとしない
手の人格化
病態失認
-anosognosia概念
片麻痺の存在を無視・否認する症状
例)「私は歩ける」
病態
劣位半球損傷急性期に多い
左重度感覚障害、USN、半側身体失認、全般的
知的障害の合併例が多い
講義のまとめ
認知と行為・動作の関係
「認知」とは
「高次脳機能」とは
脳機能局在論
空間認知と物体認知の経路
頭頂葉障害による空間認知障害