[普及事項] 新技術名:乾乳期の給与飼料のイオンバランスが - 秋田県

[普及事項]
新技術名:乾乳期の給与飼料のイオンバランスが分娩後の生産性に及ぼす影響(平成10∼14年)
研究機関名
担 当 者
畜産試験場
加賀谷 伸
大家畜部
・ 深澤
乳牛担当
充
[要約]
乾乳牛において飼料に硫酸マグネシウムと塩化アンモニウムを添加しイオンバランス(DCAD)を調
整した結果、DCAD -20meq/100gDM、分娩前4週間給与することにより、分娩後の血中Ca値および肝
機能値が良好な推移を示し、周産期病の予防効果が示唆された。
[ねらい]
近年、乳牛の産乳能力は著しく向上しているが、依然として周産期病の発生は後を立たず生涯
生産性に影響を及ぼしている。この周産期病低減のため、最近、乾乳期の イオンバランス(DCAD)
調節が提唱されているが、乳牛の健康体を維持し 周産期病の予防効果を得るのに適当な 、DCAD調整
飼料の給与期間・DCAD調整値について検討する必要がある。
[技術の内容・特徴]
1.乾乳牛に分娩予定2週間前および4週間前より陰イオン塩を添加した飼料を給与し、分娩時の
状況、血液生化学的性状、乳量・乳成分を調査した。陰イオン塩は硫酸マグネシウムと塩化ア
ンモニウムを用い DCADが、0,-10および-20meq/100gDM/日となるように調整してTMR方式で給
与した。
2.主な供試飼料のNa,K,ClおよびSの乾物中平均含量は、とうもろこしサイレージでそれぞれ
0.10%、1.02%、0.39%および0.22%、オーチャード主体1番草乾草でそれぞれ0.12%、1.03%、
0.40%および0.26%であった。
3.血中GOTはいずれの区も正常値内にはあったが、4週区のほうが2週区に比べ、また -10お
よび-20meq区のほうが0meq区に比べ低値を推移する傾向にあった(図1、図2)。 血中GGTは給与
期間による差は無いが、DCADに関してはGOTと同様、 -10および-20meq区のほうが0meq区に比
べ低値を推移する傾向にあった(図3)。
4.血中カルシウム(Ca)は分娩後、4週区のほうが、2週区に比べ高い値で推移し (図4) 、また -20
meq区では安定した上昇傾向を示すのに対し、0および-10meq区においては推移が不安定であった
(図5)。血中無機リン(IP)は0および-10meq区で分娩1カ月後に大きく上昇し、上限値を上回る傾向
にあった(図6)。
5 .血中総蛋白質、血中総コルステロール、血糖および血中尿素窒素はいずれの区も正常範囲内
にあり、給与期間やDCADによる差は認められなかった。
6.乳量・乳成分についてはいずれの区でも 大差はなく、添加剤による影響はないものと考えられ
た。
7.DCAD調整飼料の給与期間・調整値を検討する上で、乳牛の健康体維持を第一に考慮し、血液
性状値、特にCa値・肝機能値を最重要視したところ、給与期間分娩前4週間、DCAD -20meq/100
gDMが適当であると示唆された。
8.陰イオン塩にかかる費用は4週間給与で1頭当たり1,000円程度であった。
[普及対象範囲]
酪農家
[普及上の留意事項]
1.陰イオン塩は嗜好性が悪いため、 充分に撹拌混合の上給与する。
2.飼料のDCAD調整におけるは陰イオン塩添加量は、農家個々の飼料内容によって異なるので、
ミネラルの解析やDCADの計算については専門機関の指示を受けるようにする。
[具体的データ]
100
給与期間
2週間
給与期間
4週間
80
60
GOT値(IU/L)
GOT値(IU/L)
100
-10meq
60
-20meq
40
40
試験開始時
分娩直前
1カ月後
2カ月後
試験開始時
3カ月後
35
1カ月後
2カ月後
3カ月後
10.5
30
0meq
25
-10meq
20
-20meq
15
Ca値(mg/dl)
GGT値(IU/L)
分娩直前
図2 血中GOT値の推移(DCAD別)
図1 血中GOT値の推移(給与期間別)
10
試験開始時
分娩直前
1カ月後
2カ月後
10.0
給与期間
2週間
給与期間
4週間
9.5
9.0
8.5
3カ月後
試験開始時
図3 血中GGT値の推移(DCAD別)
分娩直前
1カ月後
2カ月後
3カ月後
図4 血中Ca値の推移(給与期間別)
10.5
7.5
10.0
0meq
9.5
-10meq
9.0
-20meq
IP値(mg/dl)
Ca値(mg/dl)
0meq
80
7.0
0meq
6.5
-10meq
6.0
-20meq
5.5
8.5
試験開始時
分娩直前
1カ月後
2カ月後
3カ月後
図5 血中Ca値の推移(DCAD別)
[発表文献等]
第48回秋田県獣医畜産技術研究発表会
秋田畜試研報(2003)第18号掲載予定
試験開始時
分娩直前
1カ月後
2カ月後
3カ月後
図6 血中IP値の推移(DCAD別)